平成10年6月定例会 第14回岩手県議会定例会会議録

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〇39番(及川幸郎君) ただいまの折居明広議員の質問に関連をいたしまして、お伺いをさせていただきます。御質問は大変格調の高い、しかも多岐にわたっておったわけでありますが、私は、農業問題一点に絞ってのお伺いをいたすものでございます。
 私ども県議会の中に、県政調査会がございます。3年ほど前だったろうと思ってございますが、中央から講師先生をお招きいたし、約2時間ほどお話を拝聴いたした過去がございます。その中でその講師先生いわく、21世紀における花形産業は農業であると言い切っておられました。岩手は御承知のとおり、農業が基幹産業であります。したがって、農業の振興、発展なくしては、岩手の反映、発展はあり得ないというのが私の持論であると再三今日まで申し上げてまいったところであります。しかし、今日、この農業事情も厳しい環境下にあることはどなたも御案内のとおりでありますが、講師先生のお話を拝聴いたしまして、何かしら向こうの方に一点の光を感じたものでございます。しかし、幾ら花形産業といえども、今日このような実態の中においての花形産業はあり得るものではございませんで、もろもろの条件整備がなされて、初めて花形産業と言えるでありましょう。その条件整備に向けて、行政はもとより、団体、農業者挙げて大変な努力を払っておりますことを私なりに承知いたしております。関係者のその御努力に敬意を表するものであります。その条件整備でございましょう、農業者の組織でありまする農協支援についてのお伺いをいたすものであります。
 御承知のとおり、現在、話題となっております6農協の債務超過額37億5、000万円、そして自己努力返済金13億3、000万円、残金につきましては連合会が15億円、関係市町村1億8、000万円、県にあっては先ほどお話ございましたように、52億6、000万円を貸し付けする内容のようでございます。今日まで多年にわたり、組合監督庁としての検査、指導に当たっただろうと存じますが、そのような事態に相なったことはもちろん遺憾に存じますけれども、これは各農協の経営陣の責任は当然問われなければなりません。しかし、一方におきましては、組合監督庁としての検査、指導の甘さもこれまた指摘されなければならないのではなかろうかと存じます。その認識のほどをまず伺っておきたいと存じます。
 いずれ、今般の県内6農協の債務超過問題は、4月からの大蔵省の金融破綻防止、早期是正措置から端を発したところであります。以来、今日まで改善指導がなされていると承知はいたしてございますものの、その時期と各農協の経営状況も異なると思うところから、各農協ごとの経営内容と問題点を明確に願いたいと存じます。
 また、県が公的資金を投入するからには、各農協の債務状況等を明らかにすることは当然でございましょう。さらに、県の行う検査の実態は農協担当者の提出する書類の検査であって、担保物件等の再確認、現場確認等は全くなされていないと伺ってございます。とするならば、債務超過額37億5、000万円はさらに大きくなるのではなかろうかと私なりに思うわけであります。この場合の対応についてお聞かせを願いたいと存じます。
 また、対象農協の経営改善計画の内容等、取り組み状況等についてお伺いをいたします。
 報道によれば、自助努力の形跡が確認されつつあり、そして経営改善計画で合理化と合併を進めて基盤強化をすれば、農協は立ち直れると判断したと。したがって、支援も今回限りと報道をされておりますが、直ちに立ち直れると判断した判断基準を具体的に数字をも含めて答弁を願うものであります。いずれ、多額の財政支援をする以前に、自助努力の確認、責任の所在を明らかにされるように求めます。そして、改善計画の達成には中央会の対策室の常駐、県にあっては指導班による徹底指導検査の充実等がなされるようでありますが、その決意のほどをお伺いいたしておきたいと存じます。
 最後に、農協本来の業務に農業者の技術指導、それから営農指導等があろうかと存じます。しかし、経営が苦境に立てば立つほど、直接収入の上がらないところの指導部分がそのしわ寄せに相なるのではなかろうかと思うときに、したがいまして、県行政にあっては過般、農政部の機構改革がなされたことは御案内のとおりであります。その中で、普及センター部門の後退が感じられてならないわけであります。普及部門の充実こそが不可欠であり、それが農業振興、そして農協支援にあるだろうと存じます。したがいまして、人的な面も含めて御答弁を賜りたいと存じます。
 いずれ今回は、単に6農協の問題ではございませんで、県下すべての農協とは言わないまでも、年々経営実態は苦しくなるであろうことは容易に想像のできるところであります。よく言われますように、農業者の高齢化とか担い手不足、産地間競争の激化、農畜産物価格の低迷等余りにも厳しい環境下にあることは、各位御案内のとおりであります。これからの農業も、いわば国民の食糧の生産であることはどなたも認めざるを得ないわけでありますから、農業は他産業と異なることも事実でありましょう。したがいまして、今後農業に対する一層の理解を求めて、広く運動も展開しておるであろうと思うわけであります。農政部のさらなる指導等を一層お願い申し上げて、私の関連質問を閉じるものであります。ありがとうございました。
   〔農政部長佐藤徳兵衛君登壇〕
〇農政部長(佐藤徳兵衛君) 先生から、ただいま6点ほどにわたった御質問をちょうだいいたしました。前後申し上げるかもしれませんが、失礼申し上げます。
 平成8年6月に成立いたしました、いわゆる金融健全化法、これに対応すべく、平成8年の4月に、県の行政庁としての指導、監督体制を、本庁と地方振興局の体制を強化いたしまして講じたところでございます。従前から、いわゆる農協法に基づく常例検査等を実施し、是正すべき事項については文書で指摘し回答を求め、その早期是正もやってまいりました。それで、いわゆる早期是正関連で、不良債権の分類の厳しい見直し、自己査定を求め、中央会の審査も平成10年3月末までに、超過債務農協につきましては経営健全化計画の提出を求めまして、業務停止命令の回避を行ったわけであります。
 個別農協ごとに申し上げますと、県南におきます住田町農協の債務超過額は約8億2、200万円、二戸市農協約10億200万円、一戸町農協4億400万円、姉帯農協6、800万円、九戸村農協5億7、900万円、軽米町農協8億7、700万円--これは約でございます、100万円単位で申し上げました。こういうような状況で、総額37億5、000万円ほどに相なっております。
 この超過債務の生じた要因、原因でありますけれども、御案内のような畜産物の輸入自由化を端緒といたしまして、農畜産物価格が下落いたしたわけであります。また、景気の低迷など農協をめぐる厳しい経営環境のもとで、特にも設備費の投資額が大きい大規模畜産経営農家の経営が、いわゆる長期低利の資金乗りかえ等々の手当てもいたしましたけれども経営再建に至らず、加えて関係農協の経営基盤も脆弱な面があったと。それからまた、御指摘のような債権保全の不徹底等もあり、先ほど申し上げたような債務超過が生じたわけであります。それで、経営改善計画によりますところの自助努力は、ちなみに申し上げますと、住田町農協2億6、500万円、二戸市農協3億8、200万円、一戸町農協1億5、500万円、姉帯農協2、500万円、九戸村農協1億9、900万円、軽米町農協3億500万円となっております。
 これは金額ベースでありますけれども、その内容のあらましを申し上げますと、まず真っ先に問われるべき役員の責任分担関係でありますけれども、役員の協力金の拠出、報酬カット等これらの役員責任の関係で約3億2、000万円、人員削減、ボーナスの抑制等事業費の節減によりますところが約4億3、000万円、それから組合員の増資が約3億9、000万円、その他不稼働資産の売却等によって13億3、000万円を生み出そうとするものであります。
 それでこれまでの常例検査なり、検査指導の甘さがあったのではないかという最初の御指摘でございましたが、農協法に基づく農協検査は、公益保護の観点から、いわゆる業務処理、財務処理も含めました業務の適法性に重点を置いて実施してまいりました。したがいまして、個々業務の妥当性まで踏み込んだものではございませんでした。この検査でありますけれども、先ほど申し上げましたような処理の仕方において、改善すべきところは改善していただきたい。具体的に口頭も含めまして、役職員の率先垂範意識が希薄である、自己資本が不足しておる、不健全資産の解消整理が進んでいない、大口債権の保全に甘さがあるといったようなことを指摘してまいったところであります。したがいまして、農協法に基づく検査をすべて、すなわち個々の業務内容の妥当性まで踏み込んだことをやらなかったのではないかという御指摘を受ければ、そのとおりであります。
 その次に、債務超過額の算定に問題があるのではないか、もっとふえるのではないかという御指摘がございました。算定のルールでありますけれども、農協の保有する貸出金や経済未収金等の債権につきましては、農業協同組合及び農業協同組合連合会の信用事業に関する省令がございまして、これに基づいて、例えば土地にありましては、鑑定評価額、または直近の路線価、公示価格、基準地価格及び客観的な売買実例等を参考にして評価することとしております。したがいまして、この評価に基づいて算定したものでありまして、御理解いただきたいのは、今回の支援措置は超過債務を早期に解消することを目指しております。マイナスの状態をゼロにまず引き上げていただくと、そういうことでの取り組みでございまして、したがいまして、御心配いただきますように、果たしてこれがうまくいくのかと。この支援措置が関係農協の再建に役立つのかどうかという御懸念、御心配をちょうだいしているわけでありますけれども、まず信用事業におきます不良債権処理、債務超過状況を3年以内、しかもなるべく早期に解消していただきたい、これをまず取り組んでもらいながら、反面において農協の経営基盤、将来におきます新農協の置かれる経済活動基盤、具体的には農業生産振興ということに相なるわけですけれども、その面につきましてもこれとは別に、私どもの農政としては、最善を尽くして生産振興、地域振興、農業振興に努めてまいらなければならない。財務対策と別な形での通常の農政の中の生産振興、これを重点的に関係農協の地域に--具体的には県北地域にありましては、花卉、野菜等の園芸部門の主産地であります。そういうような基幹作物をさらに強固にするような営農活動を支援してまいらなければならないと存じておりますけれども、経営改善計画の猶予期間3年以内に、両面の取り組みを懸命にやっていく必要があろうというふうに認識いたしております。
 それから、その計画達成のための指導の決意でありますけれども、先ほど知事からお答え申し上げましたとおり、個別農協への支援を発動する場合には、改めて経営改善計画の達成状況等を十分見きわめ、確認した上で、支援金の交付を行うことといたしております。
 また、県におきます指導体制でありますけれども、これまで本庁次長をキャップといたしておりましたが、今般の件を契機に、農政部長を本部長として対応することといたしております。
 最後に、地域農業振興のための普及部門の人的な面を含めた充実・強化対策でありますけれども、再編に伴いまして普及員の数を全体として11人増員し、全県下で290人体制としておりますが、県北、二戸、軽米地域におきましては2名増の28人から30人体制といたしております。再編の狙いといたしましては、専門作物担当を複数配置することによりまして、高度専門的な技術、営農指導を行えるような体制づくりを目指したい。限られた人員の中で地区主任ということになりますと、最近の農業経営は少量多品目と申しますか、複合経営と申しますか、いろんな作物を栽培、経営しておるわけであります。そういった点で専門性を十分付加した形で、現地指導体制を強化することが肝要であるという認識のもとに、今申し上げましたような再編という形で取り組みましたけれども、特にも二戸地域の農業振興のために、出先ともども懸命に努力してまいりたいと存じております。
〇議長(那須川健一君) 次に、伊沢昌弘君。
   〔12番伊沢昌弘君登壇〕(拍手)

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