平成10年6月定例会 第14回岩手県議会定例会会議録

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〇20番(折居明広君) 自由公明県民会議の折居明広でございます。
 最初に、知事のノースカロライナ州訪問と成果についてお伺いいたします。
 増田知事は、先月下旬から22日間にわたり、南米3カ国とアメリカ合衆国を歴訪されました。得るところが多く、有意義な旅行であったことをまずもってお喜び申し上げます。
 ことし、創立40周年を迎えたブラジル岩手県人会の記念式典に御招待を受けての訪問であり、関係者に祝意を表するとともに、多くの県民移住関係者を激励し、また移住者の実態を視察するなど、交流を深めてきたとのことでありますが、ブラジルでの御感想をお聞かせ願います。
 サンパウロ市内で記者会見した知事は、留学生、研修生として県人移住者の子弟の本県への受け入れ枠を、さらに拡大していくとの考え方を示したと報じられておりますが、若い世代の交流を促進させたい、県立大学への受け入れ態勢を検討してみたいという知事の姿勢と考え方に共鳴するものであります。知事は、ブラジル連邦共和国訪問を機に、アメリカ合衆国、アルゼンチン共和国、パラグアイ共和国の岩手県人会も訪問しており、県人移住関係者を激励しておられますが、ノースカロライナ州ではジェームス・ハント州知事と、教育や研究分野における大学間の連携や交流の推進について、同州と基本合意に達したと聞き及んでおります。近年、情報化と国際化の進展は目覚ましく、まさにボーダーレスの時代を迎えております。ボーダーレスに情報が行き交う21世紀の社会では、国境という境界線はどんどん薄れてゆき、逆に身近なまとまりである地域を強く意識していくとすれば、必然的に地域間の競争が激しくもなるでしょう。地球規模の競争に生き残っていくためには、共同で事業を推進したり、お互いに長所を生かしたりして役割を分担するなど、国内はもとより、国外の地域との連携や交流も推進していかなければなりません。そういう視点からすれば、県立大学とノースカロライナ州立大学との間で進められる、遠隔講義を中心としたバーチャルユニバーシティ・プロジェクトにもっともっと関心を持つべきかもしれません。
 そこで改めて知事にお尋ねいたします。
 同州との連携・交流はどのような観点に立って進めてきたのでしょうか。また、その基本合意はどのような内容で、今後どのように進めていこうとしておられるのか、ノースカロライナ州訪問の成果についてお尋ねいたします。
 次に、岩手山の火山性地震についてお伺いいたします。
 去る6月24日、盛岡地方気象台は、岩手山の火山活動が活発化しており、今後さらに活発化した場合には噴火の可能性もあるとして、臨時火山情報第2号を発表しました。これは、6月23日から24日にかけて、噴火の前兆となる低周波の火山性地震が観測されたこと、マグマの流動を示す火山性微動があったことなどから発表されたものでありますが、対応は猶予ならない時期にきていると実感するものであります。岩手山の火山活動については、東北大学の地震・噴火予知研究観測センターの地震計が、平成7年10月に火山性地震を観測してから既に2年を経過しております。その間、震源地の移動、火山性地震の急増、マグニチュード2以上の地震が観測されるなど、異常な現象が頻発しておりますし、盛岡気象台がことし3月17日に初めて出した火山情報も、6月19日現在、既に19回にも及んでおります。
 また、地下計測学の専門家が、岩手山の活発な火山活動は、黄色信号から赤信号に切りかわるかどうかの段階と言える。ただ、過去のデータが少なく、今後も予想がつかないと述べておられますが、その矢先の先般の臨時火山情報第2号の発表でありますから、岩手山周辺で暮らしている住民の方々の不安は日増しに増大し、はかり知れないものがあると察するものであります。知事には、このような事態に際して、危機管理体制や危機管理の対応をどのように考えておられるのか、その基本的な考え方をお示し願います。
 次に、総務部長にお伺いいたします。
 県においては、6月24日の臨時火山情報第2号の発表を受けて、直ちに県災害警戒本部を設置し、関係6市町村や学識経験者による会議を開くなど、素早い対応を見せたところでありますが、今後とも危機管理という観点からスピーディーな対応を期待するものであります。なお、県としても、今現在の状況から、場合によっては最悪の状況を想定した対応が必要と考えますが、今後、具体的にいかなる防災対応策を進める必要があるのかお尋ねいたします。
 この問題で、次に、土木部長にお伺いいたします。
 いだずらに動揺を招くような不用意な発言や、必要以上に恐怖感をあおるような言動は慎むべきでありますが、岩手山では山体の形成過程で溶岩流出、火山泥流、水蒸気爆発などあらゆる現象が起きております。もし万一、今、岩手山が噴火したとした場合、最悪の場合、どのあたりまで、どのような被害が及ぶと想定されるのか、あえてお尋ねいたしたいと思います。
 次に、自然破壊が発覚し、工事が中断されたままの県道雫石東八幡平線についてお伺いいたします。
 奥地等産業開発道路、いわゆる奥産道は、山間地、奥地などにおける産業開発の総合的効果を発揮するために、奥産法に基づいて指定された県道及び市町村道であり、全長16・1キロメートルの県道雫石東八幡平線は昭和40年に着工され、整備が進められてまいりましたが、上三ツ石湿原など国立公園内の植生に影響があるとの理由から、自然保護団体の反対によって13年間工事が中断された経緯があります。その後、峰越え部分をトンネルにすることとし、昭和59年に工事を再開、しかし今度は、トンネル工事関連の調査事業中に、受注業者によって原生林が破壊されたために、平成8年7月、工事を凍結、直ちに植生回復のための応急処置に着手し、おおむね完了後の同年9月には、十和田八幡平国立公園三ツ石湿原付近の植生被害復旧に係る技術検討委員会も設置されております。今年度2度目の現地調査が6月に実施されましたが、全体的に緑が広がり、順調に回復している。しかし、回復しているといっても、元に戻るには10年以上かかるだろうという村井委員長談や、表土が保たれているところでは、6月の調査時点に比べて回復ぶりが目立っているなどの所見が報じられておりましたが、一日も早い回復をと願うのみであります。
 また、県道雫石東八幡平線のあり方などを検討する道路検討委員会では、本年2月に公募に応じた14人の中から5人を選び、奥産道建設の是非についての意見発表会を開催しておりますし、6月には動植物の生態や景観、地質など7分野にわたる環境調査の中間報告の概要を公表しており、積極的なその活動に敬意を表するものであります。
 予定ルート周辺では、クマタカなど猛禽類の飛来や昆虫の希少三種の分布などを確認したとか、地滑り地帯があったが土木工学技術でくい止められるとか、第7回の委員会では貴重な自然を守るべきだという慎重論と、地域の振興に役立つと整備に理解を示す意見とに分かれた等々報じられておりましたし、一方、雫石東八幡平奥地産業開発道路促進協議会では、40数年間、いろいろな課題を克服しながら開発促進のために頑張ってきた岩手郡にとっては、ぜひとも必要な道路であり、事業の早期完成を要望していく決意とのことでもあります。道路検討委員会では、周辺に生息する動物の繁殖期での生態調査を7月まで実施し、これまで寄せられた県民の意見を検討するなどして、ルートを延長すべきかどうかの結論を8月上旬を目途にまとめて、最終見解を県側に伝えると報じられておりますが、委員会でこれまでに検討された内容と主な論点は何か、どのような意見が出されているのか、また、県当局では委員会の提言を踏まえ、県としての結論をいつごろまでに出すおつもりなのかをお尋ねいたします。
 次に、中心市街地活性化法についてお伺いいたします。
 近年、ロードサイドショップが増加し、大規模店舗の郊外への進出が増大しております。最近、盛岡市周辺にも複数のビックストアによる大型ショッピングセンターの進出構想が打ち出されて話題となっておりますが、郊外への商業機能の移転は今後とも増加していくものと思われます。そのような中で県内各地の商店街には、売り上げの減少や後継者難などによる空き店舗の増加が見られます。一部の都市では、中心部からの大型店の撤退が商店街全体の衰退に拍車をかけており、今や大きな社会問題とさえなっております。商店街の停滞は、単にそれのみに限った問題ではなく、商店街も含めた中心市街地全体の地盤沈下と空洞化の問題として取り上げられてきております。県内でも住宅地の郊外への展開などから、まちの中心部の居住人口が減少し、また公共施設の郊外移転が進むなど、多様な要因がもとで商店街を含む中心市街地の空洞化現象が深刻な様相を見せてきております。
 昨年、夏に行われた商業統計の調査結果速報によると、昭和59年以降続いている商店数の減少に依然として歯どめがかかっておらず、商店街の衰退も進行中とのことであり、郊外型大型店の進出などで既存商店街を取り巻く環境が一層厳しさを増すと言われております中で、県内の商店街数も3年前に比べて18商店街、割合にして6・5%も減少していることが、県商工会議所連合会など経済4団体が実施した平成9年度の商店街実態調査で明らかになりました。当面している問題として、半数以上の商店が大型店の影響や駐車場不足、後継者難などを挙げておられますが、それはそれとして、みずからも流通環境の変化に積極的に対応していく努力が必要なのではないでしょうか。従来、中心市街地にはさまざまな都市機能が集積し、地域コミニュティーの中核となるなど、いわゆるまちの顔として重要な役割を担ってきておりましたが、近年見られる中心市街地の空洞化、商店街の体力の低下は、地域の一体感を失い、まちのにぎわいやまちづくりの意欲とエネルギーをも失って、地域コミニュティーの崩壊の危機をもたらすのではないかとさえ指摘されております。
 このような現状を踏まえ、国においては通産省や建設省、自治省が連携して、新たに街なか再生事業、にぎわいの道づくり事業、中心市街地活性化建築物整備事業等々進めようとしており、また総合的な観点から中心市街地の活性化対策に取り組むためとして、中心市街地活性化法をさきの国会において成立させております。これから全国各地で、この法律を活用した中心市街地活性化に向けたさまざまな取り組みが活発化していくものと思われますが、本県における取り組みの方向性についてお伺いいたしたいと思います。
 次に、債務超過農協に対する県の支援についてお伺いいたします。
 平成9年度決算によりますと、全国で56農協が債務超過に陥ると見られており、農協経営は全国的にもまことに深刻な状況を呈しております。また、本県の6農協においても、総額37億5、000万円に上る債務超過の問題が発生し、今般、県では支援のため約52億円の資金を無利子で貸し付けることを発表しております。このたびの支援措置について、私は、再建のための財政支援が必要であるとしても、それがだれを救うためのものなのかを明確にし、そしてまた、大多数の県民が納得できるような透明なルールとすることが必要であると思います。また、今回の支援措置が農協経営失敗の敗戦処理にならないことが重要であると思いますがいかがでしょうか。
 知事にお伺いいたします。
 今回の農協支援の基本的な考え方はどうなのでしょうか。また、支援を行うことによる今後の見通しはどうなっているのかお聞かせ願います。
 次に、全県域汚水適正処理構想についてお伺いいたします。
 県では、今年度を環境創造元年と位置づけて、環境共生、循環型社会の実現に向けた取り組みをスタートさせるべく、先般、新・全県域汚水適正処理構想をまとめられました。その新構想によると、県内の汚水処理施設の平均整備率を平成22年度末までに80%にまで引き上げ、県民の5人に4人が下水道、農業集落排水、漁業集落排水、合併浄化槽などの施設を利用することができる快適な生活環境の創造を目指すとされております。平成8年度末現在の県内における汚水処理施設の整備率は37%で、全国平均の62%を大きく下回っております。豊かな清流を守り、県民の住みよい生活環境の確保と環境衛生の向上を図る上からも、市街地、農山村、漁村を問わずに、汚水処理施設は欠かすことのできない重要な生活基盤施設であり、その整備に対する県民の要請がますます高まっていることは御承知のとおりであります。
 本県の豊かな自然環境を、とりわけ豊富できれいな水を次の世代に引き継ぐためにも、さらには観光の振興やグリーン・ツーリズムなどによって来県する多くの人々との積極的な交流を推進するためにも、整備の促進に期待するものであります。厳しい財政状況の中にあって、限られた財源を効率的に使うためには、地方での事業を減らさざるを得ないのではないかという主張を聞くこともありますが、汚水処理施設は暮らしの豊かさの重要な指標の一つでもあり、地方にとっては最重点課題の一つという観点からも整備を急ぐべきであります。
 そこでお伺いいたします。
 県では、今回、平成6年度に策定した全県域汚水適正処理構想を見直して、より一層効率的で適正な整備を進めるとのことでありますが、従前の構想と比べてどのように変わっているのか、その内容と、さらに構想実現に向けて、特に留意する事項はどのようなものかをお尋ねいたします。
 次に、保育対策についてお伺いいたします。
 一人の女性が一生のうちに産む平均の子供数、いわゆる合計特殊出生率が、今までで最も少なかった平成7年の1・42を下回り、過去最低の1・39となって、人口の維持に必要な2・08の間に大きな開きが出ていることが、厚生省の平成9年の人口動態統計概要によって明らかになりました。日本の合計特殊出生率は、先進国の中でも低い水準にあり、一段と深刻さを増してきております。未婚率の上昇や晩婚・晩産化の進行等による出生率の低下や、女性の社会進出、就業率の上昇など、子供と家庭を取り巻く環境が大きく大きく変化しております。昨今、夫婦共働きや遠距離通勤などはごく普通のこととなり、育児に関する多様な需要も生じてきております。働きながら育児に携わっている人たちが、安心して子供を預けられ、仕事と育児の両立が可能となるようにするためには、地域特有の要請にこたえ、または新しい需要に対応した保育施策を講じることが重要であり、このことが少子化への対応としても有効ではないでしょうか。
 先般、総務庁から児童福祉対策に関する行政監察結果と、行政施策の改善についての勧告が出されたことなどが報じられておりました。これによると、働く女性からの要望があるにもかかわらず、3歳未満の低年齢児保育や早朝・夜間の延長保育などの受け入れ体制が不十分であり、特に公立の保育所における立ちおくれが見られるとも言われておりますが、一層きめ細かな保育サービスを積極的かつ弾力的に展開する必要があるとも指摘されております。資料によれば、全国の認可保育園では、定員に対して14%の空きがある一方で、希望しながら入園できないところもあるなど、働く若い母親たちが求める保育の充実という新しい要請にこたえきれていない現実が見えてきます。子供の生育環境が大きく変化している中で、子育ての支援は社会全体の問題でもありますが、本県における低年齢児保育、乳児保育を初めとする特別保育の実施状況はどのようになっているのかお伺いいたします。
 また、保育対策は、基本的には市町村が主体的に取り組むべきものでありますが、子育て環境整備の一環として、今後本県における保育対策の充実を図るために、県としての対応をどのように考えておられるのか、また、認可外保育施設の実態と今後の取り扱い等についてもお伺いいたします。
 次に、少年の非行防止対策についてお伺いいたします。
 子供の姿を見ると、その国の将来がわかるという例えを待つまでもなく、子供たちを健全に育成し、将来の社会を担う人間として育てることは、すべての県民等しく願いとするところであります。しかしながら、全国的に少年非行が深刻化し、戦後第4の上昇期と言われる状況の中で、とりわけ本県における少年犯罪の増加が全国水準を大きく上回っているほか、サバイバルナイフやバタフライナイフなどの使用に係る事件も発生しており、心の痛む状況であります。
 総理府がことし4月に、全国の13歳から19歳の未成年と、20歳以上の成人の各3、000人を対象に実施した、青少年の非行など問題行動に関する世論調査によれば、青少年の非行が増加していると思っている人が90%を超え、中高生の5人に1人が、身の回りにナイフを持ち歩いている青少年がいると答えております。社会的に問題だと思う非行というところでは、ナイフを使った殺傷事件がトップで、続いて、いじめ、覚せい剤やシンナーなどの薬物乱用がその次に多かったと報じられております。
 また、県警がことし2月にまとめた非行少年補導状況によると、県内で昨年1年間に検挙・補導された刑法犯少年は、前年度を397人も上回る1、758人で、増加率が29・2%となっており、この29・2%というのは昭和38年の30・4%に次ぐ戦後2番目の記録とのことであります。殊にも、強盗などの凶悪事件が急増しており、全国的な傾向にある少年の凶悪事件が本県にも波及していることを示しております。このような状況を打開するため、法務省では少年法の改正準備作業を進めていると聞いておりますし、中央教育審議会や内閣総理大臣のもとに置かれた、次代を担う青少年について考える有識者会議では、それぞれ現状における問題等の中間報告を取りまとめるなど、諸対策を推進しているとのことであります。
 一方、県警や関係機関、団体等では、これまでにも適宜多様な施策を展開し、少年の非行防止、健全育成に努力されてきたところでありますが、さらなる御活躍をお願いしたいというのが県民の偽らざる気持ちではなかろうかと考えるものであります。もとより青少年の非行防止、健全育成は、家庭、学校、地域社会など、すべての県民がみずからの問題として真剣に考え、取り組んでいくべきでありますが、当面する少年非行防止対策について、県当局に計画等あるならば詳しくお示し願います。
 これで、私の一般質問は終わるわけでありますが、私は、平成3年の選挙で本議会に議席を与えていただきましてから、きょうで12回目の一般質問となりました。大体その間に160項目ぐらいの質問をしておりますが、その都度知事初め、関係部局長、県警本部長には非常に親切丁寧な前向きの答弁をいただいておりますが、それを励みとして私は職責に専念しておるわけであります。そういうわけで今回もまた、建設的な誠意ある御答弁をお願い申し上げながら、私の一般質問を終わらせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 折居明広議員の御質問にお答えを申し上げます。
 まず、ブラジル訪問の感想についてでございますが、県人移住者など800名を超える参列者で、去る6月14日にサンパウロ市におきまして盛大に挙行されました、ブラジル岩手県人会創立40周年記念式典に出席をいたしまして、多くの方々と親しく懇談をする機会を得たところでございます。県人移住者の皆様方は、それぞれの地域で、農業を初めとして各分野で活躍をしておられまして、着実に地域社会に溶け込んで大変高い評価を受けていることを実感いたしまして、深い感銘を受けてまいりました。また、県費留学生や技術研修員として本県で学んだ県人子弟の二世、三世の方々も、研修などの成果を生かしておられまして、それぞれに活躍をされている姿を見て、大変うれしく思ったところでございます。
 今後は、こうした若い世代の希望も踏まえまして、本県とブラジル県人会を通じた交流を、一層、充実させる必要があると強く実感をいたしたところでございます。
 また、ノースカロライナ州訪問の成果についてでございますが、私は、同じ目的意識を持つ地域と、国内外にこだわらず、お互いに手を携え行動することにより、改めてみずからの地域を見詰め直し、新しい時代に対応した地域社会を築いていくことが重要であると考えております。
 先般訪問いたしましたノースカロライナ州は、地理的条件や自然、風土などの面で本県と共通点を持っておりまして、また、かつて農業が主要な産業であったという歴史を持つ州でございますが、いち早く州立大学を核とする産学官連携に取り組み、また、情報スーパーハイウェイ構想を推進して、現在では、米国を代表する研究機関や先端産業が集積するハイテク州として注目をされておりまして、かねてより、同州の産学官連携による地域の活性化について関心を持っていたところでございます。
 昨年10月の同州のハント知事の来日を契機といたしまして、お互いに情報交換を重ね、本年1月には、同州の情報化の推進者でございますノースカロライナ大学のルチ学長が来県をいたしまして、現在の県立大学学長でございます西澤先生とともに、相互訪問による交流や、県立大学とノースカロライナ大学との間の遠隔授業などを内容とするバーチャル・ユニバーシティ・プロジェクトについて意見交換を行ったところでございます。
 こうした経過を踏まえて、本県としても、高度情報化推進の観点や県立大学の開学の精神にも照らして、こうした取り組みを積極的に推進することとして、今回の訪問におきましては、本県と同州の各大学との間での研究・教育交流を促進するという基本合意に達したものでございます。当面、同州とは、このプロジェクトを中心とした連携・交流を進めていくこととしておりますが、将来的には、他の分野でも協力してプロジェクトを展開していきたいと考えておりますし、同州のみでなく、米国の他の州やヨーロッパなどとの間でも、幅広い連携を図ってまいりたいと考えております。
 次に、岩手山の火山活動の活発化に伴う危機管理体制等の基本的な考え方についてでございますが、まずもって、火山現象による災害から、住民の生命、身体及び財産を保護することが何よりも大切なことであると考えております。そのためには、予知・観測体制の整備を進め、火山情報を迅速かつ的確に収集・伝達する体制を確立することが重要でございます。県におきましては、災害警戒本部を設置し、現在、24時間体制で情報収集に努めておりますほか、庁内情報連絡体制はもとより、専門家からなる岩手山火山活動対策検討会や関係市町村、防災関係機関からなる連絡会議を設置するなど、連絡体制の強化を図っているところでございます。
 しかしながら、万一にも火山活動の活発化により噴火等が発生した場合は、迅速な初動活動を行うとともに災害対策本部を設置し、情報の収集・伝達、交通の確保、自衛隊災害派遣要請、ボランティアの受け入れ態勢、避難・救助及び医療・救護活動、さらには食料や生活必需品の確保など、危機管理への対応を図ることとしております。
 また、現在の予知・観測体制は、気象庁や東北大学、国土地理院などによりまして、かなり充実されてきているものと認識しておりますが、県ではさらに充実強化を図るとともに、将来にわたって現在の観測体制を確保するためにも、今後、県議会ともども、統一要望としてこの岩手山を常時観測対象火山とされるよう、気象庁に要望したいと考えております。
 いずれにいたしましても、火山災害に適切に対応できるよう、危機管理の体制や対応について具体的に再点検するなど、住民の生命、身体及び財産を保護するために万全を期しているところでございます。
 次に、債務超過農協に対する県の支援の基本的考え方についてでございますが、農協の信用事業は、農家の生産物の販売、資材の購入などの経済事業と密接にかかわっておりまして、農協は、こうした事業が一体となって運営される公益的な性格の強い事業体でございます。したがいまして、農協の信用事業が停止された場合の農協諸活動への障害、他の農協への信用不安の波及、地域経済への影響を未然に防止するために、今回の支援措置を講ずることとしたところでございます。
 債務超過農協問題を解決するためには、まずもって、当該農協の徹底した自助努力が必要でございます。このため、県では、退任役員を含めた役員の経営責任の明確化、組合員の増資、常勤・非常勤の別を問わない役員の協力金の拠出、職員の削減を含む事業管理費の節減などを基本とする経営改善計画の達成と、これにあわせまして系統団体による最大限の支援、さらには、広域合併の実現を前提条件として支援しようとするものでございます。この経営改善計画におきましては、平成12年度までの3カ年以内に債務超過状態を脱却することとしておりますが、可能な限り早期に達成されるよう、厳しく指導・監視していくこととしております。
 また、県からの支援スキームとしては、農協中央会の特別会計に52億6、000万円を預託して、その運用益を支援財源に充てることとしておりますが、個別農協への支援を発動する場合には、改めて経営改善計画の達成状況などを十分に見きわめ、確認をした上で支援金の交付を行うこととしております。
 いずれ、平成13年3月までには新生農協として再スタートする運びとなるわけですが、その間に経営体質の改善などにより、経営基盤を強化して合併のメリットを最大限に発揮できるよう、県では農協系統団体と一体となって指導していく考えでございます。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁をさせますので御了承をお願い申し上げます。
   〔総務部長吉田敏彦君登壇〕
〇総務部長(吉田敏彦君) 今後の火山防災の対応策についてでありますが、去る6月24日に発表された臨時火山情報第2号を受けて、県といたしましては、学識経験者等で組織する岩手山火山活動対策検討会を同月26日に開催したところでありますが、岩手山の活動について、現時点では山頂西側の地下数キロメートルのところに震源が集中していることを考えると、過去の噴火事例などから推測して、当面、山頂西側で中規模の水蒸気爆発の可能性が考えられる。しかし、すぐには住宅等に影響を及ぼす活動の可能性は小さいという検討結果をいただいております。
 火山災害における被害を最小限にとどめるには、避難が最も有効であり、情報の把握はもとより、日ごろから火山に関する知識や活動の現況を住民に周知するとともに、避難体制の整備を図っておくことが何よりも重要であります。そのため、県と関係市町村ともども避難所の総点検を実施するなど、火山活動に対して、住民の生命、身体及び財産を守ることを最重点とし、諸準備を行っているところであります。加えて、来る7月1日から、岩手山への入山規制を関係4町村で意思統一を図っているところであります。今後、仮に活動が一層活発化し、住宅地にまで及ぶような災害が発生するおそれがある場合には、住民に対する避難勧告、避難指示、警戒区域の設定をすることとなり、さらには、交通規制、医療・保健対策等あらゆる対策が必要とされますので、関係市町村、警察、消防、自衛隊等の防災関係機関と密接に連携を図りながら、適時、的確に緊急対策を講ずることといたしているところでございます。
   〔土木部長大石幸君登壇〕
〇土木部長(大石幸君) まず、岩手山の噴火についてのお尋ねでございますが、建設省では、平成4年度に雲仙・普賢岳の噴火を契機といたしまして、火山噴火による土砂災害から地域住民の生命の保護と民生の安定を図ることを目的として、火山噴火警戒避難対策事業を創設したところであります。この事業は、火山災害予想区域図の作成、火山活動の状況や異常な土砂の動きなどの監視を行うためのワイヤーセンサー等の機器の配置計画を策定することを目的としております。これを受け、本県におきましても、平成7年度から平成10年度の4年間の計画で、岩手山を対象とした当該事業の調査を実施しているところであります。調査に当たりましては、火山に造Xの深い学識経験者等からなる岩手山火山噴火警戒避難対策検討委員会を設置し、これまで火山災害予想区域の検討を行ってきたところでございます。
 お尋ねの火山噴火の被害や想定区域につきましては、具体的な噴火の位置や形態及び規模等については過去のデータが少ないことなどから、火山専門家におきましても、噴火の予測やその影響範囲を想定することは難しいと指摘されております。しかしながら、本年3月より岩手山の火山活動が活発化してきたことから、岩手山を含む八幡平山系直轄火山砂防事業区域を管轄している建設省岩手工事事務所と協議し、調整の上委員会に諮り、早急に岩手山火山災害予想区域図を作成して公表することとしたところでありますので、御理解いただきたいと思います。
 次に、県道雫石東八幡平線、いわゆる奥産道についてでありますが、今後のあり方につきまして御提言をいただくため、昨年度道路検討委員会を設置したところであります。委員会では、平成9年度において、現地調査や環境調査を進めるとともに、自然保護団体など各種団体と県民からの公募による意見や提言をいただき、また、平成10年度においては環境調査を継続するとともに、道路整備の必要性や効果、地域の将来像等について議論されております。
 これまでの委員会における主な論点は、観光等による地域振興を図る上でもこの道路は大切であり、地域の将来のため通すべきであるという御意見と、良好な自然環境を守るため、道路建設を中止すべきであるという御意見に分かれております。また、そのほかには、利用者のマナーの問題、自然に対する環境容量の問題、自然保護の考え方など、委員の方々からざまざまな御意見が出されており、今後、これらの意見の取りまとめがなされるところであります。その提言の時期は、8月を目標に作業が進められているところでありますが、なお、内容につきましては、これからの委員会の議論の中で集約されるものと考えております。
 県といたしましては、その提言に基づき内容について検討を行い、本年度秋ごろをめどに、奥産道の今後のあり方について最終的な判断をしたいと考えております。
 次に、新・全県域汚水適正処理構想についてお答えいたします。
 従前の構想は、平成6年度に策定したところでありますが、本県の整備状況が全国に比較して大きくおくれていることから、関係部局とともに、全市町村との調整をとりながら見直し作業を行い、このたび新構想を策定いたしたところでございます。
 従前の構想との相違点は、より一層効率的な整備を行うため、事業手法やその対象区域を再検討して、処理区の整理統合や処理場数の節減を行い、さらに公共下水道や集落排水等による集合処理区域を拡大し、合併処理浄化槽による個別処理区域を節減するとともに、整備の効率化を図ることによって、平成22年度までの目標整備率を約73%から80%に引き上げたことの3点でございます。
 実現に向けての留意事項は、特に整備のおくれている中小市町村について、下水道事業の年間整備面積を従来の10%増しで促進するなど、地域間格差の解消に努め、また、処理場管理の共同化を初めとするコスト縮減施策を実行し、効率的に事業を執行するとともに、水洗化の促進や、各家庭での生活排水による水質汚濁負荷の節減等について、市町村と連携して普及啓蒙活動を展開してまいることとしております。
 県といたしましては、広域的な処理場管理の共同化を推進するため、今年度県単独調査事業により、岩手県汚水処理共同管理基本計画を策定し市町村を指導するとともに、市町村に対する財政的・技術的支援を積極的に行い、真に豊かな暮らしを創造する環境共生・循環型の社会の早期実現に努力する考えでございます。
   〔商工労働観光部長小野寺修君登壇〕
〇商工労働観光部長(小野寺修君) いわゆる中心市街地活性化法の取り組みについてでありますが、この新しい法律の趣旨は、地方都市において、空洞化の進行している中心商店街が、郊外の大型店に対抗できるように施設や経営力などを充実し、商店街の求心力を呼び戻すことにあると理解をいたしております。また、この法律によって予定されております政策は、これまでの商店街振興施策を充実強化するとともに、商店街を含む中心市街地全体の活性化を図るため、土地区画整理事業を初め、街路や駐車場、公園等の公共施設の整備、さらには市街地での高齢者向けの住宅の整備など、ハード・ソフト両面にわたる広範な取り組みに対し、関係省庁による総合的かつ柔軟な支援措置が講じられるものであります。さらに、これらの支援措置の導入に当たりましては、まずもって、市町村が歴史や文化など、地域の特色を生かした実効性のある基本計画を策定することになっており、市町村が地元商店街の発展方向を見据え、我がまちをどう発展させるかという将来像を描き、それを実現させるためのマスタープランを策定することが極めて重要になっているものであります。県内におきましては、この法律の活用に向け、既に遠野市におきまして具体的な計画づくりに取り組んでいるほか、盛岡市、花巻市、北上市等においても、事前の調査検討が行われているところであります。
 県といたしましては、これらの市町村の動向に合わせ、庁内関係部によって組織しております中心市街地活性化連絡会議が中心となりまして、市町村の計画づくりに必要な助言を行うなど一体となって取り組んでいるところでありますが、今後とも、市町村の基本計画に盛り込まれた事業の実施に当たりましては、国の助成制度の導入などを図りながら、積極的に支援をしてまいりたいと考えております。
   〔保健福祉部長緒方剛君登壇〕
〇保健福祉部長(緒方剛君) 保育対策についてでありますが、保育の実施状況は、平成10年には認可保育所333カ所に1万9、870人が入所し、入所を待機する児童は平成9年で328人、待機率は1・7%であり、全国の待機率2・5%より低くなっております。また、特別保育事業を実施する保育所は、平成9年度は3歳児未満を対象とする低年齢児保育が176カ所、時間を延長して保育する延長保育が119カ所、保護者の病気等の場合に保育する一時的保育が13カ所、日曜・祝日に保育する休日保育が14カ所で行われ、年々実施保育所が増加しているところであります。
 今後の対応でありますが、21世紀に向けて社会の活力が維持され発展していくためには、少子化への対応は重要な課題であり、特に保育施策は積極的に取り組むべきものと考えております。国においても、急激な少子化の進行は将来の社会経済に深刻な影響を与えることから、その対応は行政改革や経済改革と並ぶ主要課題であるとして、近く取り組むこととされております。
 県としては、本年4月から県単補助のすこやか保育支援事業を拡充し、3人未満の一時的保育事業に対する補助の実施や、延長保育に対する保護者負担を軽減する延長保育料軽減支援事業の創設など、保育対策の充実を図ったところであります。さらに、本年度は、県民6、000人を対象として少子化に対する意識調査を実施し、これをもとに学識経験者による協議会の御意見も伺いながら、平成7年に策定した岩手県子育てにやさしい環境づくり対策指針を見直すとともに、新しい社会福祉基本計画を策定するなどにより、保育対策の推進を図ってまいりたいと考えております。
 次に、認可外保育施設についてでありますが、従業員の子供を対象とする事業所内保育施設を除いた個人経営の認可外保育施設は56カ所、利用児童数は約1、500人であり、一部には保母の配置や施設設備に問題を有する施設もありますが、多様な保育ニーズに応じた弾力的な運営により、認可保育所を補完する重要な役割を果たしていると認識しております。総務庁の行政監察に基づく改善勧告においても、認可外保育施設が果たしている役割を重視し、その位置づけや公的助成のあり方について検討を行うことを求めており、本県としては、国の動向を見ながら前向きに検討してまいりたいと考えております。
   〔警察本部長篠宮隆君登壇〕
〇警察本部長(篠宮隆君) 少年の非行防止対策についてお答えをいたします。
 県内の少年非行は、平成5年以降増加の一途をたどっているほか、ナイフ使用による傷害事件や強制わいせつ事件などに象徴されるように、粗暴・凶悪化しております。これらのナイフ使用事犯防止のため、県及び県警察では、本年2月からナイフ販売店に対し青少年への販売の自粛要請を行っております。また、県では、去る6月19日、青少年のための環境浄化に関する条例に基づき、バタフライナイフ及びサバイバルナイフを青少年の健全な育成を阻害するものとして指定し、18歳未満の青少年に対する販売、貸し付けを禁止しております。
 県警察といたしましては、悪化する少年非行の背景に、少年自身の規範意識、親子の関係、地域社会における連帯感などの希薄化や、社会の享楽的風潮などがあると考えております。このような状況から、少年の健全育成、非行防止にかかわる機関、団体、ボランティアの方々やPTA、中・高校生などで構成する岩手っ子すくすくネットワークを、警察本部及び各警察署単位に発足させることとしております。
 すくすくネットワークの目的は、それぞれの機関、団体などが連携し、情報の交換や協議を進め、県民の総力を結集して非行防止施策を推進しようとするものであります。当面、明6月30日に、警察本部レベルの岩手っ子すくすくネットワークの発足を予定しております。中・高校生の参画は、すべての少年が、少年非行問題を自分たちの問題として考えるとともに、本県に数多くいる正義感に富んだ少年が中心となって、非行を許さない仲間の輪を広げていくことを期待するものであります。学校や家庭の理解のもと、中・高校生と多くの関係機関が連携して活動するという形態は、全国的にも初めての試みであります。
 県民の皆様の御理解と御支援をいただきながら、進めてまいりたいと考えております。
〇20番(折居明広君) 突然再質問に立ちましたけれども、お許しをいただきたいと思います。
 土木部長にちょっと確認したいのでありますが、私は、あえて、万一岩手山が噴火した場合、最悪の場合、どのあたりまで、どのような被害が及ぶと想定されておるのかという質問に対する答えが、非常に難しい問題はあると思いますが、私の考えているような答弁ではありませんでした。しかし、近々、マップをつくるということでありますから、それは良としまして、いつごろまでにそれをまとめて公表されるのか、それをお伺いしたいと思います。
   〔土木部長大石幸君登壇〕
〇土木部長(大石幸君) ただいまの、いつごろまでに予想図を作成するのかという御質問でございますけれども、7月の中旬を一応めどにして取り組みたいと考えております。

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