平成19年2月定例会 第23回岩手県議会定例会会議録

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〇40番(小原宣良君) 政和・社民クラブの小原宣良でございます。
 議案第59号、議案第60号に賛成の討論を行います。
 これらの議案は、県競馬組合の負債総額が330億円になることを受けて、構成3団体が総額330億円の岩手競馬経営改善推進基金を平成18年度に造成して、融資によって競馬事業を支援しようとするものであります。
 今議会は、さながら競馬議会の様相を呈したのでありますが、330億円のうち、盛岡、奥州両市への貸し付け分を含めて297億5、000万円が県の融資分でありますから、まさに議員各位、政治生命をかけた議論となっていることは、けだし当然のことであります。
 さて、この競馬問題が持つ本質的課題は何かという点であります。これは、330億円の巨額の負債処理に当たって、一たん負債総額を整理して、競馬事業を継続するか、それとも今年度末をもって競馬事業を廃止し、構成3団体が372億円ないしそれ以上の額を短期間に分賦によって義務的に負担して処理するか、このどちらを選ぶことが県民負担が少なくて済むか、この1点にかかっているものであります。
 予算特別委員会では、この二つの選択肢以外に対応策はないのか、悲鳴にも似た意見も出されました。金融機関にも貸し手責任があるのではないか、ならば、減免や長期低利資金への切りかえは可能なはずだ、また、県競馬組合が銀行から借り入れできなくても、構成団体が短期で借り入れを起こせば対応できるはずだとの意見もありました。
 残念ながら、これらの対応策は、銀行側から了解をとるには時間がないことだけではなく、銀行側がこれらの話に応じる条件はほとんどないものであります。そもそも民間においては、倒産時における債権の回収には、債務者の支払い能力などから最初から一定の限界を持っているものであります。しかし、公共団体の場合の債務は、約定に基づく支払いを前提としているものであります。もし貸し手側の銀行が減免に応じたなら、取るべき金を取らず銀行に損失を与えたとして株主訴訟が起きる可能性があるものです。こうした事実を踏まえた議論をするべきであります。
 このまま、時間の流れるまま何の手も打たないとすれば、今年度末に返済期限を迎える215億円の償還に対応できず、資金ショートの上、県競馬組合は破産、倒産することとなります。そうした事態になれば、試算されているように372億円ないしそれ以上の額を構成3団体は分賦によって負担する以外になく、重大な事態を迎えることになります。
 確かに330億円の融資によって県競馬事業を存続させることに、県民の目は厳しいものがあると感じております。330億円あったなら、教育や福祉に回せるのに、地域振興に使ったならどれだけ役に立つであろうかと思う心情は理解できますが、しかし、人様から借りたお金は、約定どおり返さなければならないのが地方公共団体のおきてなのであります。
 330億円の融資に賛成する者の一人としてぜひ申し上げたいと思います。
 昭和39年以来43年間続いてきた岩手県競馬が、もしこの議案否決をもって今年度末で競馬事業を廃止することになるなら、その衝撃は余りにも大き過ぎます。来年度の競馬事業開催に向けて準備に当たってきた関係者の皆さんに、余りにも無情で無残な告知をすることになります。1、800人に及ぶ騎手や厩務員の皆さんや関係業務に携わっている皆さんの生活の糧をいきなり奪ってはなりません。馬主の皆さんは愛馬をどうしようとお考えなのでしょうか、心配でなりません。私には、こうした事態になることを承知の上で、否決による倒産に手をかすことは到底できません。
 また、盛岡、奥州両市議会は、330億円融資を了として関係予算を採決したと聞いております。もし県議会で否決となるなら、3月末期限の返済額215億円のうち、構成3団体融資分を差し引いた178億円の負担が出てきます。この負担は分賦割合によるとしておりますから、県が98億円、奥州市が45億円、盛岡市が36億円です。平成18年度分として議決された奥州市の額は15億円、盛岡市の額は17億5、000万円ですから、県議会で否決の場合は融資スキームが崩れますので、奥州市がプラス30億円、盛岡市がプラス18億5、000万円を今月中に追加補正しなければならないことになります。加えて、平成19年度以降の債務償還の方法についても3団体で協議することになると思われます。
 いずれにしろ、この議案が否決の場合は、県議会は、盛岡市、奥州市に対して新たな経費と負担を強いることになります。私は、こうした事態が発生しないことを切に願っておりますし、330億円融資案の方が県民負担が少ないし、競馬事業継続に夢をかける燃える騎手の皆さんや関係者の皆さんの姿を何としてでも残したいと切に願うものであります。
 増田知事は、県競馬組合の最高責任者として、経営悪化に至った責任を明確な形でとるべきであることを申し述べてきました。特にも、多額の単年度赤字が発生したため繰り上げ充用の措置をとった平成12年度において、規約に基づいて損失負担を構成団体に分賦しなかったことです。この分賦措置をとっていたなら、競馬事業の経営実態が県議会、盛岡市議会、旧水沢市議会に直接伝わったであろうし、情報公開も進んだでありましょう。
 一方、我々議会サイドにいる者は、執行者側の日常業務あるいはその成果をチェックする機能が求められているものであります。しかし、管理者なり執行者サイドから、いわゆる権限行使にかかわる情報開示がなければ、本当の意味で対等の立場に立つことはできません。したがって、巨額の債務を抱えるに至った主要な原因の一つとなった平成12年度の繰り上げ充用の措置を、知事はなぜとったのかと問うているのであります。これほどに情報公開は民主的な行政、政治の仕組みの上で大切なものであることを、この1件は大きな代償を伴いながら私たちに教えていると思うのであります。
 最後に、伝統ある岩手県議会の名誉と誇りにかけて、議員各位には、くれぐれも誤りなき判断をいただきますようお訴えを申し上げまして、私の討論を終わります。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
〇議長(伊藤勢至君) 次に、高橋博之君。
   〔2番高橋博之君登壇〕

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