平成11年5月臨時会 第1回岩手県議会臨時会会議録

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〇36番(小原宣良君) 社会民主党の小原宣良でございます。
 私は、我が党会派の菊池雄光議員、伊沢昌弘議員、阿部静子議員、日本共産党斉藤信議員の5名の連署をもって提出したユーゴ空爆の即時中止を求めることに関する決議について、5名を代表して提案理由を申し述べます。
 ことし3月24日に開始されたNATO(北大西洋条約機構)軍によるユーゴスラビア空爆は既に50日に及んでおり、当初コソボに限定されていた空爆はユーゴ全土に及び、攻撃対象もまた軍事目標から市民と経済基盤の破壊へと拡大しております。
 5月7日に起きた中国大使館への誤爆は、この問題解決を一層困難なものとしております。NATOが発表した誤爆件数だけでも9件に達しており、その中には、民家を初め、列車誤爆、路線バス誤爆、病院・市場誤爆などが含まれていると報じられております。戦争、武力紛争とは、常に一般市民の犠牲がつきまとうことをいみじくもこの空爆は示しているものであります。
 一方、ユーゴ側における民族浄化と称するアルバニア系住民への人権侵害もまた直ちに中止すべきであり、中止させるべきものでもあります。
 しかしながら、その手段が空爆という武力行使であるとの大義は、大義たり得るものではありません。セルビア系、アルバニア系などの多くの民族が入りまざり合うバルカン地域にあって何よりも必要なことは、お互いの民族が平和に共存できる社会を築き上げることであります。空爆による和平はむしろ民族間の憎しみを募らせ、民族融和の道を閉ざすものとなるからであります。
 国連憲章は、国際関係における武力の行使または武力による威嚇を行う場合は、安全保障理事会の決議によること、または自衛のためであることとしております。NATO加盟国諸国にとって、これらのいずれにも該当するものではありません。加えて、人道的介入との理由づけもまた、人々を殺させないために別の人々を殺してしまう。大義をもって大義を失うことになると言わなければなりません。
 最近のある新聞社説は、「国連を軸に停止へ動け」と題して次のように述べております。コソボ紛争は、なぜ起き、どう解決されるべきか。人道を掲げての他国への介入とその国の主権はどうかかわるのか。NATOと中国やロシアの主張とは隔たりがある。それを埋める努力こそが必要だ。事件は、NATOの域外行動や日米防衛協力のための指針の具体化に対する中国の警戒感を強めさせ、米中、日中関係にも新たな波乱要因となりかねない。それを回避するためにも国連安保理での調整を主軸としなければならないと述べ、今、国連の果たすべき役割の重要さを指摘しております。
 国連教育科学文化機関であるユネスコの憲章前文は、戦争は人の心の中に生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならないとうたっております。まさに今、このユネスコ憲章の理念に立ってユーゴ問題を考えなければならないと思います。
 本県におけるユネスコ活動は各地で活発に行われており、県教育委員会社会教育課もそうした県民のユネスコ活動を積極的に支援しております。私どもが提案した本決議案は、国政レベルの問題であり、地方自治体議会にはなじまないとの理由から共同提案とはならなかったと聞いております。ならば、なぜに日本国際連合協会岩手県支部や岩手県ユネスコ協会連盟などの県民活動があり、県もまたそうした活動を積極的に支援するかを問いたいと思います。
 我が郷土の先人宮澤賢治は、世界が全体幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ないとの名言を残したではありませんか。まさに本県議会が世界に発信する岩手たる証左として、この決議は大きな意義を持つものと考えます。
 議員各位におかれましては、ただいま申し述べました趣旨を御理解いただきまして、ぜひとも本決議案に御賛同賜りますようお願いを申し上げる次第であります。
 以上で私の提案理由の説明を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〇議長(山内隆文君) これより質疑に入るのでありますが、通告がありませんので、質疑なしと認め、質疑を終結いたします。
 お諮りいたします。ただいま議題となっております発議案第3号ユーゴ空爆の即時中止を求めることに関する決議は、会議規則第34条第2項の規定により、委員会の付託を省略いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇議長(山内隆文君) 御異議なしと認めます。よって、発議案第3号ユーゴ空爆の即時中止を求めることに関する決議は、委員会の付託を省略することに決定いたしました。
 これより討論に入るのでありますが、通告がありませんので、討論なしと認め、討論を終結いたします。
 これより、発議案第3号ユーゴ空爆の即時中止を求めることに関する決議を採決いたします。
 本案は、原案のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
〇議長(山内隆文君) 起立少数であります。よって、発議案第3号ユーゴ空爆の即時中止を求めることに関する決議は、否決されました。
   
   閉 会
〇議長(山内隆文君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 これをもって本日の会議を閉じ、第1回県議会臨時会を閉会いたします。
   午後1時41分 閉 会

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