平成11年6月定例会 第2回岩手県議会定例会会議録

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〇36番(小原宣良君) 社会民主党の小原宣良でございます。
 私は、ただいま上程されました組織犯罪対策関連3法案の廃案を求める決議について提案理由を申し述べ、議員各位の御理解と御賛同を賜りたいと存じます。
 まず、通信傍受法案、いわゆる盗聴法案についてであります。
 この法案は、薬物や銃器などの犯罪が行われたり、引き続き同様の犯罪が行われる高度の疑いがあり、予想される通信を傍受する以外に犯人特定などが著しく困難である場合に、検察官または警察官は、裁判官が出す傍受令状を得て通信を傍受することができるとされているものであります。対象となる犯罪は、薬物関連、銃器関連、集団密航、組織的殺人の4分野とし、対象となる通信は、電話、ファクス、コンピューター通信などの電気通信であり、通信を傍受するときは、通信手段の管理者であるNTT社員などに傍受令状を提示し、同管理者か地方公務員を常時立ち会わせなければならないなどとされているものであります。しかし、この法案は、憲法が定める通信の秘密やプライバシーの権利を著しく侵害するものであるとの疑義が放送界を初め、多くの関係者、国民の声となっていることをよくよく知るべきであります。
 法務省は、犯罪捜査という公共の福祉の要請に基づくものであり、制限、制約は必要やむを得ない範囲に限定されており、憲法上許容される範囲であるとしています。果たしてそうでしょうか。例えば、対象犯罪を4分野に限定したとしておりますが、傍聴される通信の範囲には電話のほかにファクス、電子メール、インターネットなどが含まれております。電子メールの場合、一たん開けば全文を読むことができます。電話のように、犯罪と関係ないとわかった時点で傍受をやめることはできません。また、インターネットのプロバイダー(接続業者)などの場合も、常時立会人が立ち会うことになっていることから、日常的な業務に対する支障やネットワークそのものの信用の低下など、深刻な影響が危惧されております。
 さて、この立会人でありますが、NTT労働組合は、通信傍受法案は、プライバシーの権利や通信の秘密といった基本的人権を侵害するおそれがあり、傍受の範囲が一方的に拡大されるとして、法案そのものに反対の態度であります。また、NTT社員が電話傍受の立会人となることを予定されていることに関して、社員としての責任の重さと過度の負担などが強く懸念され、民間人としての関与の域を超えるものであるとして、NTT社員を立会人から外すことを求めています。このように、直接関係する情報産業最大の労働組合の意見表明は、法案に根本的見直しを迫るものでもあります。
 次に、メディア、ジャーナリストに対する傍受は取材源秘匿の原則に反するという点についてであります。報道の自由を侵害することは許されません。法案は、医師や弁護士などについて、業務上の通話については傍受の対象から除外しております。しかし、メディア、ジャーナリストに対する傍受は除外されておりません。
 ジャーナリズムにはさまざまな団体からの内部告発が寄せられます。その実態を6月3日付毎日新聞「記者の目」の欄で、社会部記者である丸山雅也氏はこう述べています。「暴力団取材は極端な例だと思われるかもしれない。しかし、新聞社には内部告発の電話も来る。問題を公にしてほしいという切実な思いが詰まっている。私も暴力団幹部が絡んだある金融事件で関係者から電話を受け、事件の経緯などを電話で取材し、さらにこの人物と直接会って取材したことがある。詐欺事件に使われた銀行口座の名義人で、詳細を証言した翌日に警察の事情聴取に応じた。こうした内部告発のおかげで事件の報道も多角的になる。だが、告発者が捜査機関の傍受対象となっていたらどうなるのか。匿名で新聞社に訴えたとしても、傍受していた捜査当局には当事者を推測することは可能だ。そもそも捜査当局の傍受の可能性があれば、電話やファクス、電子メールで告発する人はいなくなるだろう。内部告発なしに暴けない深刻な疑惑はやみからやみに消えかねない。ドイツなどでは報道関係者を医師や弁護士らと同様に、通信傍受の対象から除外している。今回の法案がこのまま通ったら、捜査当局の情報に頼った報道となりかねないという危機感を私は持つ」と述べています。
 この法案では、報道の自由、取材源の秘匿は守られないと述べているのであります。現に、新聞労連、民放労連、出版労連、日報労などの労働組合や民間放送連盟もこの法案に反対の声を明らかにしています。
 また、他の2法案におけるマネーロンダリング、証人保護規定の問題点を解明することも、参議院議員審議の重要な課題となっております。さらには、この傍受の制度が国際的な要請であるかのように言われる向きもありますが、果たしてそうでしょうか。傍受の制度を持つ諸外国の実態はどうか。こうしたさまざまな問題があることから、国会に対しては徹底した審議を求めるとともに、広範な国民参加の議論を踏まえ、慎重に対応することを求めます。
 よって、現在、国会で審議されているこれら3法案の廃案を強く求めて、提案理由の説明といたします。
 御清聴ありがとうございました。
〇議長(山内隆文君) これより質疑に入るのでありますが、通告がありませんので、質疑なしと認め、質疑を終結いたします。
 お諮りいたします。ただいま議題となっております発議案第9号組織犯罪対策関連3法案の廃案を求める決議は、会議規則第34条第2項の規定により、委員会の付託を省略いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇議長(山内隆文君) 御異議なしと認めます。よって、発議案第9号組織犯罪対策関連3法案の廃案を求める決議は、委員会の付託を省略することに決定いたしました。
 これより討論に入るのでありますが、通告がありませんので、討論なしと認め、討論を終結いたします。
 これより、発議案第9号組織犯罪対策関連3法案の廃案を求める決議を採決いたします。
 本案は原案のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
〇議長(山内隆文君) 起立少数であります。よって、発議案第9号組織犯罪対策関連3法案の廃案を求める決議は否決されました。
   
日程第26 発議案第10号防災対策特別委員会の設置についてから日程第29 発議案第13号教育問題対策特別委員会の設置についてまで
〇議長(山内隆文君) 次に、日程第26、発議案第10号から日程第29、発議案第13号までを一括議題といたします。
 お諮りいたします。ただいま議題となっております各案件は、各派共同提案でありますので、会議規則第34条第2項の規定及び先例により、議事の順序を省略し、直ちに採決いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇議長(山内隆文君) 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 これより、発議案第10号から発議案第13号までを一括して採決いたします。
 各案件は、原案のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
〇議長(山内隆文君) 起立全員であります。よって、発議案第10号から発議案第13号までは、原案のとおり可決されました。
   
〔参照〕
 防災対策特別委員会
  村 上 惠 三   折 居 明 広
  伊 藤 勢 至   川 口 民 一
  阿 部 敏 雄   佐々木 俊 夫
  藤 原 泰次郎   千 葉   伝
  柳 村 岩 見   田 村 正 彦
  田 村   誠   伊 沢 昌 弘
  斉 藤   信
 地域連携推進特別委員会
  吉 田   秀   藤 原 良 信
  佐々木 一 榮   工 藤 大 輔
  佐 藤 正 春   菅 原 温 士
  中屋敷   十   樋 下 正 信
  飯 沢   匡   及 川   敦
  小 原 宣 良   阿 部 富 雄
 経済対策特別委員会
  那須川 健 一   高 橋 賢 輔
  佐 藤 力 男   佐々木 順 一
  菊 池   勲   谷 藤 裕 明
  水 上 信 宏   佐々木 大 和
  吉 田 洋 治   千 葉   浩
  岩 城   明   菊 池 雄 光
 教育問題対策特別委員会
  及 川 幸 郎   黄川田   徹
  及 川 幸 子   川 村 農 夫
  工 藤   篤   船 越 賢太郎
  小野寺 研 一   照 井 昭 二
  長谷川 忠 久   瀬 川   滋
  上 澤 義 主   阿 部 静 子
  小野寺   好
   
〇議長(山内隆文君) お諮りいたします。ただいま設置されました防災対策特別委員会、地域連携推進特別委員会、経済対策特別委員会及び教育問題対策特別委員会の委員の選任については、委員会条例第5条第1項の規定により、お手元に配付の名簿のとおり指名いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇議長(山内隆文君) 御異議なしと認めます。よって、防災対策特別委員会、地域連携推進特別委員会、経済対策特別委員会及び教育問題対策特別委員会の委員は、お手元に配付の名簿のとおり選任することに決定いたしました。
 4特別委員会は、委員長互選のため、本日、本会議終了後、防災対策特別委員会は第1委員会室に、地域連携推進特別委員会は第2委員会室に、経済対策特別委員会は第3委員会室に、教育問題対策特別委員会は第4委員会室にこれを招集いたします。改めて招集通知を差し上げませんので、御了承願います。
   
   閉 会

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