平成11年6月定例会 第2回岩手県議会定例会会議録

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〇49番(佐々木俊夫君) 佐藤正春議員の質問中、鈴木甚左エ門氏にかかわる問題について、関連して知事並びに部長に質問いたします。時間が10分しかございませんので、早口でやります。
 質問の第1は、平成11年6月15日、山田町の大沢漁業協同組合の臨時総会で鈴木甚左エ門氏と妻ノブ氏、さらに両人がそれぞれ組合長を努める漁業生産組合二つが約98%の圧倒的多数の賛成で除名されましたことは、県漁業界トップの立場にある現職県漁連会長の資格剥奪であり、まさに前代未聞の事件と言えると思うのであります。その除名理由はいずれもほぼ同様であって、甚左エ門氏について要約すれば、これは昭和62年の定置漁業権の免許切りかえ時にさかのぼります。当時は、秋サケの漁獲が急上昇中で、漁民の関心はすべてこれに集中していたのでありますが、この両生産組合が経営する松島漁場と氷場漁場の漁場位置を大きく沖出し移動し、その漁場面積も存分に確保しながら、一般組合員の養殖漁場は10万平米も減らす案が、県及び海区漁業調整委員会から一方的に示されたのであります。松島漁場は約34万平米、氷場漁場は約20万平米を独占しようとする案であります。定置漁業は、漁場としてすぐれた場所で膨大な面積を独占し、他漁民の侵入を阻み、排他的に使用する特権的漁業で、数億円もの漁獲をしますから当然のこと、周辺の漁協や漁民に利害関係が発生します。再三にわたる関係者協議の結果、甚左エ門氏みずから出された代償的条件としては、地元大沢漁協に総漁獲金の3%、関係地区たる織笠漁協と山田湾漁協にそれぞれ1%を協力金として支払うことで決着したのでありました。大沢漁協は、すべての組合員が漁獲の2%を協力金として、組合に支払う約束が古くから実行されておりましたので、甚左エ門氏は当然のこと、これと合わせて5%を納入するものと理解されたのであります。
 ところが、鈴木氏は平成元年、2年、3年はそれぞれ3%、4年、5年は2%、6年、7年は5%を納入したが、8年、9年は再び2%しか納入しなかったのであります。平成9年度の総会で組合員からこのことが指摘されたのに対し、当時組合長であった鈴木氏は、私が間違っているなら5%を出す、その上で生産組合を大沢漁協から脱退させるしかないと高圧的答弁をしたことが議事録に明記されております。この経過の中で、大沢漁協の理事、組合長選挙が行われる前後の6年と7年はきちっと5%を納入しているのでありますから、選挙が終わったから、言うなれば釣った魚にはえさをやらないものだと、皮肉まじりの不満が組合員の間に募っていたのであります。
 加えて、組合長をやめた平成10年は、再三の組合からの請求にもかかわらず、協力金を全く納入しなかったことが今回の大まかな経緯であります。
 私は、漁協と組合員の相互契約履行は、漁協存立維持の基本だと思います。海は、そこに生きる人々の共存共栄の場所であります。海は、祖先から伝えられてきた生活共同体のもとをなす宝であります。ましてや、約40年間、組合長として共同生活維持のために組合員の債権取り立てなど、義務の履行を厳しく取り仕切ってきた方が、そして県下漁協のリーダーをされている方でありながら、少しも共同精神が感じられないだけでなく、君子豹変ともとれる行動には、極めて大きい不信感を感じるのであります。
 さらに、この時期はビックバンと言われ、いわゆる金融大再編を前に金融機関の経営危機がうわさされ、国民の間に不安が強まっておりました。漁協信用事業も、固定化債権対策や今後の事業推進のため県信用漁連への一本化により、危機乗り切りを目指しているときであります。
 知事、あなたの提案で、乏しい県財政の中から多額の血税を漁協に投入することについて我々県議会も賛成をし、危機乗り切り対策が着々と進められておりました。この一連の施策が進行中に、何ということでありましょうか。この方は、数億円もの自分の預金を漁協から現金で引き去ったと言われております。個人資産はどう運用しようが個人の自由ではございます。しかし、知事、あなたが真剣に漁協信用不安対策として貴重な県費を投入しつつあるさなかに、漁協の最高指導者として漁協の財務内容を詳細に知り得る立場にある方が、密かにそしていち早く、自己資産の安全対策をしていたと言われます。もしも当時、これが一般の知るところとなったなら、組合員はもとより、漁協貯金に協力していた一般県民に不安と疑心暗鬼が生じ、いわゆる取りつけ騒ぎに発展する可能性があると思いませんか。知事、どう思われます。
 また、この方は、今、県漁連会長問題で世間の注目を集めております。岩手県下漁協一本化は自分でしかできない、そのために県漁連会長になるのだと豪語しておりますが、岩手県の漁協一本化方針というものは、一個人の力でそんなに簡単に実現できるほど、単純なことだと思っておられますか。
 この会長問題は、進行中の訴訟に関連するなどと言わないで、なぜか明後日の3日には取り急ぎ理事会を開き、会長問題に決着をつけるとの報道がなされておりますが、何をあせっているのでしょうか。県政最高執行者として、知事の率直な考えをお示しいただきたいと思います。また、担当部長は、大沢漁協のこのたびの措置が、水協法、定款、諸規程に沿う適正なものと思うかどうか、お示しいただきたいと思います。
 第2点は、ただいまも出ました鈴木氏の海区調整委員任命問題であります。これは、本議会でも再三取り上げられた古くて新しい問題であります。
 水産庁は、早くから、知事選任委員の中に漁協法の立法趣旨に合わない委員がいるので改めるよう指摘し、特にも平成4年6月1日付で、岩手県知事に対し、この是正を積極的に行われたい。特に兼職が四つを超える者と、長期留任者は好ましくないと、具体的に指導通達をしてきたのであります。この結果でしょうか、甚左エ門氏は平成4年6月30日辞任届を提出し、7月22日、当時の工藤知事はこれを受理、約1カ月の任期を残して辞任したのであります。ところが増田知事、あなたは平成8年8月8日、この方を改めて任命されました。この方以外に県内に適任者がいないと判断されたのでしょうか。それとも、何か理由がありますか。この際、県民、漁民の納得できるような御説明をいただきたいと思います。
 増田知事は、当時、新任早々で慌ただしい最中での任命だったと思うにやぶさかではありません。しかし、これは一人事のささやかな問題でなく、県政の根幹に触れる問題と一般県民にも認識されております。悔いを千載に残さないために、改むるに躊躇、逡巡されることはないと思います。今後の措置について、毅然たる決意のほどをお示しいただきたいと思います。
 第3点は、今回除名された二つの生産組合の実態把握と適正化であります。
 県が発表した資料によれば、一つは、山田定置漁業生産組合の組合長は甚左エ門氏、理事は妻ノブ氏ほか1名、監事は盛岡在住の御子息の妻3人、所在地は山田町大沢8の53、免許漁場は氷場です。他は山丸漁業定置生産組合で、組合長は鈴木ノブ氏、理事は夫甚左エ門氏ほか1名、監事は前の女性3名、所在地は山田町大沢8の46、免許漁場は松島であります。言うなれば、零細な漁民から見れば、巨額な水揚げのある漁場2カ所、合計約54万平米を、夫婦と一族で支配していることを示します。これはもちろん、水協法に基づく県認可の法人ですが、それぞれの組合の所在地と組合の長の住所に問題を感じます。つまり、夫甚左エ門氏の住所は大沢8の53、組合と同じ。妻ノブ氏は、住所は大沢8の46で、これまた同じ。
 プライバシーに立ち入るようですが、御夫妻の住所が8の53と8の46と別々であります。居住の自由は憲法に保障されておりますが、居住地と住民登録地が違うことは、住民基本台帳法の立法趣旨に反するのではないでしょうか。これは、何か意図を持っていなければできない行為であるように思われてなりませんが、いかがですか。
 生産組合は漁業権免許の優先的特典が与えられている反面、組合員、従業員、資本等、法律違反があれば知事は解散命令が出せます。その他、組合のことについて何か頭が二つ、胃袋は一つの怪物ではないのかと、地域では古くから言われております。
〇議長(山内隆文君) 佐々木俊夫君に申し上げます。申し合わせの時間を超過いたしております。議事進行に協力願います。
〇49番(佐々木俊夫君)(続) わかりました、終わります。
 県は平成10年3月、調査したと言いますけれども、これでは何ら調査になっておりません。知事の改めての調査をお願いして終わります。
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 佐々木俊夫議員の御質問にお答えをいたします。
 まず、漁協信用事業についてのお尋ねでございますが、漁協信用事業は、漁業者の経営や生活にとって欠かせないものであると、このように考えております。したがいまして、漁協の信用事業に不安を生じさせないように、漁協の役職員を初め、すべての組合員が一致協力して貯蓄額を増強させるための努力をし、信用事業の財務基盤の安定を図っていくことが望ましいものと、このように考えております。
 次に、鈴木前県漁連会長をめぐります動きについてでございますが、先日の県漁連総会で、同氏の理事資格について論議が交わされまして、結局、理事会では会長の選任に至らず、当面、会長の代行制が敷かれることになったと、このように伺っております。
 現在、水産業を取り巻く環境は、水産資源の減少や魚価の低迷など厳しい状況下にございまして、行政と系統団体が連携を図りながら、本県水産業の一層の振興に取り組んでいかなければならないときと考えております。したがいまして、県内水産団体を指導する重要な役割を担っております県漁連において、早期に正常な執行体制が確立されることを期待しているところでございます。
 次に、鈴木氏の海区漁業調整委員会委員任命についてでございますが、平成8年の知事選任委員の人選に当たりましては、我が国漁業、中でも本県漁業を取り巻く環境がますます厳しくなっているということをまず第一に考慮したところでございます。すなわち、平成8年の7月に国連海洋法条約が締結をされ、平成9年1月から主要魚種ごとに漁獲枠を設定するいわゆるタック制度がスタートしたところでございます。また、サケを初め輸入水産物の急激な増加に伴いまして魚価が低迷するといった、本県水産業にとりまして極めて厳しい状況となっていたところでございます。これらに対処するためには、魚類栽培漁業の展開や資源管理型漁業の一層の推進などを図る必要がございまして、県と漁業団体が従来にも増してより一層協調して、新たな方策を推進することが求められていたところでございます。
 このような状況変化の中で、本県の漁業界をリードし、かつ、全国の漁業団体の役員も経験されるなど、漁業に関し豊富な経験と高い識見を有する方を初めとしまして、いずれも今後の本県漁業の振興に理解を有する方々を知事選任させていただいたところでございます。
 また、今後につきましては、次の改選期が平成12年の8月となっておりますので、海区漁業調整委員会の設置目的や役割、また、その時点における本県漁業の状況などを総合的に勘案しながら厳正に人選をしたいと、このように考えております。
 次に、二つの漁業生産組合の実態把握についてでございますが、漁業生産組合については、水産業協同組合法において、知事の指導監督権限として法令等の遵守状況を把握するための報告の徴収、組合の一般的状況を知るための資料の提出を命ずるいわゆる報告徴収権が認められておりまして、この報告徴収権に基づき事業の実施時期について報告を受けております。
 今後も、水産業協同組合法に定める報告徴収権に基づいて、生産組合の事業運営が法令などに従って適正に行われているかどうかについて、所要の報告を求めてまいりたいと考えております。
 その他のお尋ねは林業水産部長から答弁をさせますので、御了承をお願いいたします。
   〔林業水産部長佐藤克郎君登壇〕
〇林業水産部長(佐藤克郎君) 大沢漁協の組合員除名についてのお尋ねでございますが、組合員の除名につきましては、水産業協同組合法そして組合定款に基づく所定の手続が必要とされておりますが、このたびの組合員除名に当たって、総会への招集手続あるいは議決の方法が法令等に従って行われたものかどうかにつきましては、常例検査で確認する必要があるというふうに考えております。
 なお、水産業協同組合法におきましては、正組合員が正組合員総数の10分の1以上の同意を得て、総会の招集手続及び議決の方法が法令等に違反することを理由として、議決の日から1カ月以内に、その議決の取り消しを知事に対して請求することができることとされておりますけれども、現在、この請求は出されておらないところでございます。
   〔「議事進行について」と呼ぶ者あり〕
〇49番(佐々木俊夫君) 答弁漏れもありますけれども、質問時間が決められておりますので、そこで議長に申し上げますが、本県議会の先例集によりますと、この関連質問は同会派1人、しかも10分、再質問はなしと、こういうふうに決まっています。これは、私の調べたところによりますと昭和48年に決まった前例であります。
 そこで、48年といいますと、ここに51名おる議員どなたも、まだいなかった時代のものであります。しかも、聞きますとその前は15分、またその前は自由と、こういうような歴史をたどってきております。
 そこで、どうしても質問と答弁が一方通行になります。したがって、お互いに不満を残したまま終えなければなりませんので、どうでしょうか、議長、この先例をもう一回この際見直すということをやるべきではないのかと。もし、所感があればいただきたいし、なお、なければ後で検討してください。終わります。
〇議長(山内隆文君) 御発言の趣旨は賜りました。 進行いたします。次に、川口民一君。
   〔21番川口民一君登壇〕(拍手)

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