平成11年6月定例会 第2回岩手県議会定例会会議録

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〇14番(田村誠君) 皆様には、大変御苦労さまでございます。
 私は、大船渡選挙区選出、政和会の田村誠でございます。この4月に行われました統一地方選挙において、多くの支持者の方々の御支援を賜り、諸先輩の血のにじむような努力で築き上げてまいりました栄光の歴史と伝統ある岩手県議会に参画できましたことは、私にとりまして大変名誉であると同時に、この上ない喜びであり、あわせて責任の重大さを改めて痛感しているところであります。今後の与えられました任期を、議会の名を汚さぬよう精一杯努力してまいりますので、山内議長並びに吉田副議長初め、先輩議員各位の御指導と、増田知事初め当局の御指導、御鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
 そして、このたび増田知事が、県民の大いなる期待を受け再選を果たされましたことに、支持者の1人として心よりお祝いを申し上げます。知事の、県民に開かれたわかりやすい県政の推進と現場重視の対話による県民総参加の県政の政治姿勢が、県民に、県政が身近なものとして、新しい岩手づくりの意気込みと熱意が高く評価されたものであり、今後の県政史上に偉業をなし、その名を列する知事として、大いなる御活躍を期待いたします。
 さて、平成11年第2回定例会に当たり、先輩各位の御理解と御配慮をもって一般質問の機会をいただきましたが、県議会での初登壇であり、今回は勉強のつもりでこの場に立たせていただきました。質問が的外れ、あるいは既に取り組んでいるものもあると思いますが、御容赦を賜りながら、以下通告に従い質問いたしますので、当局の前向きで、かつわかりやすい答弁をお願い申し上げます。
 まず最初に、新しい総合計画に関連して幾つかの点でお伺いいたします。
 その一つは、今142万県民があらゆる面で等しくゆとり、豊かさを実感できる県土の構築が強く求められており、県当局としても、県土の均衡ある発展を目指し各般にわたる施策に積極的に取り組んでおるものと存じます。そうした中で、人口動態を見ますと、県全体でも142万をピークに減少してはいるものの、県北・沿岸地域等の減少はこれを上回り、平成2年と10年の比較では93・7%と、人口減少は依然進んでおります。これが高齢化に拍車をかけ地域の活力にも大きな陰りを与えており、県北・沿岸の地域特性でもある農林水産業の後継者不足や学校運営にも大きな影響を与えるなど、人口減少への歯どめ策を早急に講じなければならないものと考えます。また、高齢化率を見ても、県北・沿岸地域は県平均の19・4%を大きく上回り22・5%となっておりますし、所得格差も県平均の82%となっております。加えて、地域間交流の時間的格差、文化面での格差も広がりつつある感さえあります。
 県としても、これらの実態にあわせて、平成8年4月に特定地域振興室を設置し、県北・沿岸地域などの振興を図るべく、道路や港湾、漁港等の整備、農林漁業の基盤整備、さらには地域活性化事業など、地域特性を生かした各般にわたる諸施策を積極果敢に展開してまいられたことは存じており、これに水を差すようで恐縮ですが、私ども県中央部から遠隔の地に住まいする者としては、いまだ格差の解消が進んでいないとの認識があり、県に対する期待には大変強いものがあります。
 まず、これまでの県北・沿岸地域の振興に対する取り組みの成果と現状をどのように認識されているか、そして、今後の県土の均衡ある発展策について、新しい計画の中でどのように位置づけ、取り組まれようとしているか、本議場を通じ夢と希望を与えていただけるようお聞かせ願います。
 その二つ目として、本県の基幹産業の一つとして、県勢発展の原動力を担ってきた第1次産業の位置づけと将来展望についてお伺いいたします。
 県内総生産に占める第1次産業の額は、平成8年度で2、406億2、100万円、構成比で5・1%となっており、うち農業は1、858億2、600万円の3・9%、林業は201億6、700万円の0・4%、水産業は346億2、800万円の0・7%の実績になっております。生産額合計の対前年比では53億5、800万円の減少となっており、6年度と7年度の生産額のみの比較でも315億2、400万円の減少となっております。これらの統計数値は長期的には減少の方向を示すなど、食料、木材供給県を目指す当県にとりましては、諸般の事情はあるとは思いますが、大変残念な数値であり、これまでの投資効果が問われる実態にあります。しかしながら、単に数字のみではあらわしにくい自然環境の保全と潤いのある生活環境づくり、水資源の確保、鳥や動物の生息などの経済効果を数字であらわすことができれば、莫大な財産であり、県民が生活を営む上で大変な恩恵を受けてまいったことも事実であります。そうした観点からも、第1次産業のさらなる振興を推し進めていかなければならないものと存じます。
 そこでお伺いいたしますが、低迷しているとはいえ、農林水産業の第1次産業は、本県産業の根幹をなす重要な産業であり、農林水産業の将来について、それぞれどのように展開されようとしておられるのか、知事の基本的なお考えをお聞かせ願います。
 次に、第1次産業の一翼を担う水産振興についてお伺いいたします。
 日本国民は、年間に1人当たり約70キログラムの魚介類を消費すると言われ、国民全体では約850万トンとなり、生きていく上で欠かすことのできないたんぱく源となっております。しかし、漁業白書によれば、我が国の魚介類の自給率は昭和60年の86%から平成8年には58%に大きく低下し、これを裏づけるように、輸入額は1兆9、000億円に達し、我が国の漁業生産額2兆2、000億円に拮抗するまでになっており、自給率が低下すればするほど漁業と水産加工業は深刻の度合いを増すことになります。さらに、当県の水産は200海里問題以降、沖合漁業の低迷、自営漁業世帯数や漁業従事者数の減少傾向、加えて後継者不足による漁業従事者の高齢化が進んでおります。地域的な水産業の実態を見ますと、大きくは前浜での漁獲を主とする漁船漁業と海面養殖漁業及びこれを商材とする水産加工業から形成されており、資源の減少や海況等による好不漁に大きく左右され、経営は常に不安定な状況となっています。また、流通加工においては、資源の減少による水揚げの減少の中での商材確保や高次加工を高める経営体質への移行、また、今日的な消費市場のニーズとなっている新鮮で安全な水産物の提供、いわゆるハセップへの対応も出てきており、水産業の現状は従来にも増して厳しい状況にあります。
 そこで県は、なお一層の水産振興を図るべく、平成8年に第3次岩手県水産業基本計画の後期計画を策定し、その視点を、一つ、新たなつくり育てる漁業の展開、二つとして、販売戦略の強化、三つとして、活力あふれる漁港・漁村の建設に置き、平成12年度を目標年次としてこれまでに諸施策を進め、特にも第9次漁港整備長期計画に基づき、5カ年で725億円の事業費を投入し、漁村集落環境整備はもちろんのこと、津波から生命、財産を守り、安心して暮らせる町並み整備や漁業振興に大きな成果を上げてまいりました。県においては、新たな水産業基本計画の策定に着手しているやに伺っておりますが、本県は700キロメートルにも及ぶ海岸線と世界3大漁場の一つである三陸漁場を有し、まさに水産振興の基礎となる海洋資源に恵まれた中で、環境、ひと、情報を生かし、水産関係者と一体となり、新たな計画に夢が託せ実効ある振興策を確立していかなければならないと存じます。そこで、以下の点についてお伺いいたします。
 その一つは、今後のさらなる水産振興についてでありますが、前にも述べたとおり、現状は厳しい状況にあります。気仙地方では昔から、浜がよければおかもよい、浜が悪いとおかもだめとの言い伝えがあり、今でも、やはり浜の景気が地域の経済に大きく影響いたしております。ついては、本県の水産業の振興について新たな視点で取り組むことが肝要と考えますが、今後どのような展開をお考えかお聞かせ願います。
 その二つ目は、後継者対策についてであります。
 浜の作業は、厳寒の中、早朝3時ごろより海に出ての収穫作業は大変厳しいものでありますし、自然が相手のため、海況等による好不漁に大きく左右され、経営は常に不安定な状況があり、海が一荒れすればすべての苦労が水の泡となることもあるなど、安定を求める若者にとりましては、漁師は毛嫌われる仕事の一つに数えられ、後継者対策に頭を痛めている実態でありますが、現在県が実施している漁業近代化資金等のみならず、もう一歩踏み込んで、新たに漁業に従事してみたいという気持ちを起こせる支援、制度が検討できないものかを含めて、後継者対策についてお示し願います。
 その3点目は、ハセップ対応への支援策についてお伺いいたします。
 新鮮で安全な水産物の提供が強く求められ、水産のみならず、食品関係者はそれらの対応に大変苦慮しております。従来の作業工程では対応が厳しく、それでなくても経営状況が難しい中で、設備投資や人材の育成を初め予想を超える課題が山積しており、工場閉鎖も含めて今後の対応策を業界関係者で知恵を絞っております。当然、消費者ニーズにこたえて積極的に対応していかなければならないハセップ問題については、県としても検討中とは存じますが、現状認識と今後の指導、支援策についてお聞かせ願います。
 その4点目として、魚市場の水揚げ増強対策についてお伺いいたします。
   〔副議長退席、議長着席〕
 県内14の市場では、水産の玄関口として水揚げ増強対策に関係市町村と一体となり取り組み、成果を上げてまいりました。市場の取扱高状況を見てみますと、海況により年ごとの変化がありますが、10年は14港中、水揚げ量では13魚市場が前年を下回り、金額では11魚市場が前年を下回っておりますし、総体的に見てみますと、平成9年度では量で20万7、036トン、金額で335億1、131万5、000円で、平成10年度は量で13万18トン、金額で302億806万円となり、量で7万7、000トン、金額で33億325万5、000円の落ち込みとなっております。魚種別には、当県管内ではサケ、マス、サンマを中心にスルメ、イサダ等がありますが、魚市場は今後の水産加工を初めとして水産振興になくてはならない施設であり、経営の安定のためには水揚げ増強がぜひとも必要であり、そのためには魚種の拡大や魚市場の環境整備などの対策が求められていますが、今後の水揚げ増強への取り組みについてどのように考えているかお聞かせ願います。
 5点目として、つくり育てる漁業の振興と新たな漁場の造成についてであります。
 つくり育てる漁業は、国、県の各般にわたる取り組みの成果があらわれ、ワカメ、ホヤ、カキ、ホタテ、昆布等の養殖業に加えて、海面漁業では、サケ、アワビ、ウニなどの生産は全国の上位にランクするなど、漁家の生活安定に大きく寄与しており、今後においても、つくり育てる漁業の推進が沿岸地域の発展に大きく貢献するものと思われます。過日、農林水産常任委員会の県内調査の機会をいただき、田老町のアワビ種苗生産施設と中間育成施設、並びに大規模増殖場をつぶさに見学してまいりましたが、野中町長を初め、畠山組合長、そして職員の意欲と自信に満ちた説明をお聞きし、大変感動してまいりました。その内容について申し上げることは割愛しますが、着実にこの5年間でアワビなどの漁獲量も倍増しており、高次加工に向け努力中とのお話もありました。まさに、つくり育てる漁業の真髄を見てまいりました。
 そこでお伺いいたしますが、今後のつくり育てる漁業の振興策について、新たな漁場造成を含めてお考えをお聞かせ願います。
 6点目は、漁業系廃棄物等の処理対策についてであります。
 漁業を営む上で、必ず副産物としてカキ殻、海草残滓の一般廃棄物が排出されますし、船舶を初めとして魚網や発泡スチロールなどの産業廃棄物もあり、不法投棄などにより環境悪化にもつながるものと思います。特にカキ殻、海草残滓などの一般廃棄物は大量に発生し、岩手県沿岸全域の喫緊な問題であると思いますが、どのような観点に立って処理対策を進めるお考えかお伺いいたします。
 7点目としては、共済制度の充実についてお伺いいたします。
 漁業は自然が相手であり、それでなくとも不安定な経営状況にあり、共済制度充実に関係者は躍起となり、加入の促進と保障制度の充実に努めておりますが、ホタテなどについてはまだまだ加入割合が低く、保障についても制約が多く、掛金なども高い実態にあります。市町村によっては助成しながら加入促進を図っておりますが、県としても支援し、一朝有事に備えるべきと思いますが、御所見を賜りたいと思います。
 8点目としては、漁業集落環境整備事業による排水処理施設整備に関連してお伺いいたします。
 公共下水道の普及率向上は、湾浄化対策に数値としても確実にあらわれ、大きく貢献しており、特にも三陸海岸のような地形の場合、地域的整備の方が効率がよく、基幹産業である漁業にとり水質保全上、排水処理対策は重要であるとの認識に立ってはいるものの、町村によっては、過疎地域には該当せず、財政力が乏しく、この種の事業導入に苦慮していることが実態でありますが、今後の促進に向けた指導、支援策についてお聞かせ願います。
 次は、港湾整備についてお伺いいたします。
 岩手県は四つの重要港湾を有し、内陸部との物流の拠点として、地域の活性化はもちろんのこと、その役割は県内全体の経済活動に大きく寄与し、内陸部の工業団地に立地する会社のアンケートなどの調査の結果を見ても、今後の活用に大いに期待が持てるものであり、今後の整備促進が待たれております。さらに、港湾整備の推進は周辺環境や基盤整備にもつながるものであり、投資効果の高いものとなっております。今後の港湾整備計画について、以下の点について県当局のお取り組みをお聞かせ願います。
 その一つは、平成10年度末における港湾整備計画の推進状況と完成目標年次はどうか、また、新たな整備計画について検討しているのか、お示し願います。
 その二つ目は、せっかくつくった港湾も平成10年度は4港とも取扱高が下がってきており、今後の港湾の高度利用を図るためには、内陸工業団地との連携が大切であると思いますが、この連携についてのこれまでの取り組みと今後の港湾利用向上策について、どのように取り組まれようとしているのかお聞かせ願います。
 その3点目は、内陸部の工業団地や都市との連携、港湾の利活用を図る上で、これを結ぶ道路整備が急がれますが、関連する道路整備計画の推進状況と今後の計画についてお聞かせ願います。
 その4点目として、地域的なことになり恐縮でございますが、現在鋭意進めていただいております大船渡港湾整備についてお伺いいたします。大船渡市は国際港湾都市を標榜し、県内最大の工業集積地である県南内陸部地域の物流拠点形成を推進しようと、永浜・山口地区の港湾整備に国、県の御配慮により平成9年度に着工しております。県としても、地域住民の声に意を体しながら整備を進めていただいておりますが、今後計画を推進するに当たり、背後地への工業団地の造成や物流配送用地の確保等を含めて、地域の現状からして現在の主要地方道は狭隘であり、新たに港湾物流基幹道路として多目的に活用できるよう整備し、そして、現在工事が進められている三陸縦貫自動車道路、国道等に直接結ぶことにより、なお一層の投資効果が出てくるものと存じますので、検討すべきと思いますがいかがでしょうか、御所見を賜りたいと思います。
 最後の質問は、環境問題に関連して、産業廃棄物の利活用を含めた処理問題についてお伺いいたします。
 産業廃棄物は、産業活動の中で必ずと言っていいほど排出されるものでありますが、限りある資源の有効活用及び県民の生活環境の保全の立場から、その減量化や適正処理の推進は極めて重要であると考えております。廃棄物の処理及び清掃に関する法律において、産業廃棄物の処理責任はその排出事業者にあるとしていることから、事業者みずからが廃棄物の減量化や適正処理に努めることが原則であります。しかしながら、現状においては、各地で不適正な処理が行われていることなどから、廃棄物の処理を行うことに対して地域住民の不安や反発を招いており、産業廃棄物を取り巻く環境は非常に厳しいものとなっております。特に、新たな処理施設の建設は、周辺住民の信頼が得られにくいことから、その確保は一層困難になっております。このような状況を踏まえ、県として産業廃棄物のリサイクルを含めた処理のあり方や処理施設の設置について、今後どのように指導し、対処しようとしておられるか、お聞かせをいただきたいと思います。
 以上で私の質問を終わります。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 田村誠議員の御質問にお答えします。
 まず、県北・沿岸地域の振興に対する取り組みについてでございますが、県北・沿岸地域は、雄大な自然空間や豊かな農林水産資源に恵まれております一方で、気象条件が厳しく、また、北上高地が内陸部との壁となっているなど地理的・社会的条件が不利な状況にございまして、その克服を本県の重要課題の一つとして長年にわたり取り組んできたところでございます。これまで人、物、情報の交流を促進するため、生活基盤や自立的な発展を可能とする産業基盤などについて計画的な整備を進めてきたところでございます。近年、三陸縦貫自動車道や東北横断自動車道釜石秋田線など高速交通幹線も徐々にその姿をあらわしつつあるほか、野菜や花卉などの園芸品目の生産拡大や、つくり育てる漁業の推進が図られるなど、着実な成果も見えてきております。しかしながら、これらの地域では、依然として若者の流出や県平均を上回る高齢化の進行により地域の活力が低下するなど、今なお厳しい状況にあるものと認識をしております。
 私は、今後の県北・沿岸地域の振興を考えるときに、地域が持つ発展可能性を最大限に引き出し、地域の個性や特色を生かした活力に満ちた地域づくりを進めますとともに、人、物、情報の流れを生み出すネットワークの形成を図ることによりまして、地域間の交流と連携を促進し、広域的、一体的な発展につなげていくことが何より重要であると考えております。新しい総合計画においては、このような考え方のもと、距離の壁を乗り越える時間距離の短縮プロジェクトや、地形の壁を乗り越える中山間地域活性化プロジェクトなどを掲げまして、さまざまな障壁を克服するために、三陸縦貫自動車道の整備や、沿岸部と内陸部の交通アクセス改善に向けた大規模なトンネルの整備、岩手情報ハイウェイなどによるバリアフリーな情報社会の構築、多彩な地域資源を生かした産業興しなど、さまざまな施策に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、農林水産業の将来の展開に当たっての基本的な考え方についてでございますが、本県の農林水産業は日本を代表する漁場と広大な県土に広がる森林や農地を活用した多彩な生産活動が展開され、食品関連産業など、2次、3次産業と結びついて県の経済を支えている重要な基幹産業であると認識をしております。さらに、農林水産業が果たしている県土の保全や水源の涵養など、多面的機能には大変大きなものがございまして、このような意味でも第1次産業は、将来にわたって一層その振興を図っていかなければならないものと考えております。
 まず、農業の振興方策でございますが、経営感覚にすぐれた担い手の育成を柱に、生産基盤の整備を契機とした農地の利用集積、地域に適合した園芸作物の導入拡大による作目再編を加速度的に進めますとともに、環境に配慮した持続的な農業を展開して、米、園芸、畜産のバランスがとれた収益性の高い農業の確立を図り、総合食料供給基地としての地位を確固たるものとしてまいりたいと考えております。
 林業については、森林の公益的機能の発揮と森林資源の利用とが調和し得る持続的な森林経営を実現するために、緑豊かな森林づくり、地域資源を生かした総合的な林産物の供給体制づくりを目指し、間伐の推進、林道網や木材高次加工施設の整備、県産材の需要拡大などを図るとともに、本県の広葉樹資源を最大限に活用したシイタケの産地銘柄化づくりや木炭の生産拠点づくりのほか、地域の森林・林業の担い手の育成・確保に努めてまいりたいと考えております。
 水産業については、恵まれた資源と環境を生かした、つくり育てる漁業の一層の振興を図りますとともに、生産基盤である漁場や漁港の整備、ハセップ方式の導入による流通加工体制の強化などを図り、将来にわたる安全で良質な水産食料の安定供給の役割を果たしてまいりたいと考えております。
 以上のような生産振興に加えまして、生産基盤の整備、農山漁村が有する美しい景観や伝統文化の維持増進を図るとともに、グリーン・ツーリズムなど、都市との多様な交流を一層促進し、活力と潤いのある農山漁村の形成を目指してまいりたいと考えております。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので、御了承願います。
   〔林業水産部長佐藤克郎君登壇〕
〇林業水産部長(佐藤克郎君) まず、水産業の振興についてでありますが、近年の水産業を取り巻く情勢は、議員御指摘のとおり、魚介類の輸入増加による自給率の低下、漁業生産量と魚価の低迷、漁業就業者の減少と高齢化の進行など大変厳しい状況にあると認識しております。このような情勢に的確に対応し、さらなる水産業の振興を図るためには、今後、消費者ニーズに応じたつくり育てる漁業の推進やハセップ方式導入による新鮮で安全な水産物の提供、漁場環境保全活動の促進、漁業系廃棄物の有効利用と適切な処理、そして漁村の生活環境の整備など新しい観点に立った施策の展開が重要であると考えております。現在、新しい水産業基本計画の策定作業を進めておりますが、これまでの成果を踏まえながら、これらの新しい観点に立った施策をこの計画に積極的に反映させてまいりたいと考えております。
 次に、漁業の後継者対策についてでありますが、全国的に漁業就業者の減少と高齢化が進行する中で、本県におきましても、毎年50人前後の新規就業者はあるものの、全体として漁業就業者の減少と高齢化が進んでいる状況であります。こうした中、県におきましては、漁業近代化資金などの制度資金により、新たに漁業に従事しようとする方に対して、経営に必要な資金の貸し付けを行ってきたほか、漁業就業者確保育成事業や岩手県漁業担い手育成基金事業等により、Uターンなどの漁業就業希望者への情報提供や相談窓口の設置を行うとともに、将来、漁業の担い手と期待される沿岸地域の小中学生等を対象に、漁業体験学習等を実施してきたところであり、今後におきましても、これらの事業を積極的に進めながら、後継者の確保に努めてまいりたいと考えております。
 次に、ハセップ対応への支援策についてでございますが、本県はイクラやウニ、一粒カキなどの生で食べられる水産物を多く生産していることから、食品の安全性を確保する上ですぐれた手法とされるハセップ方式を導入することとし、既に漁業者、魚市場、加工業者などの関係者と行政が一体となってハセップ推進協議会を設置し、積極的に取り組んでいるところであり、県といたしましても、本年6月には水産技術センターにハセップアドバイザールームを開設いたしまして、相談・指導に当たっているところであります。また、ハセップ認定の専門機関による魚市場・水産加工場の衛生診断の実施でありますとか、加工場従事者のハセップ専門研修等に対して、県独自の助成措置を講じてきているところでありますが、さらに、魚市場の海水殺菌装置などの整備やトイレの改修・改善を進めるなど、水産物の衛生管理に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、魚市場の水揚げ増強対策についてでありますが、県内各魚市場におきましては関係者が一体となり、県外船の誘致を図るなど水揚げの増強に努めてきているところでありますが、県といたしましても、魚市場や製氷施設、保管施設など水揚げ関連施設の整備につきまして国庫補助事業等を導入するなど積極的な支援を行ってきているところであります。また、新鮮で安全な水産物の供給が市場での競争力を高め、魚市場への水揚げの促進につながるものと考えられますことから、本県魚市場におけるハセップ方式の導入にも取り組んでいるところであります。本県の魚市場は、サケ、サンマ、イカ類の3魚種で総水揚げ量の約6割を占め、これらの魚種の好不漁が魚市場の取り扱いに大きな影響を与えていることから、魚市場の水揚げ増強を図るため、今後一層、資源造成と資源管理につきましても、関係者一体となって取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、つくり育てる漁業の推進についてでありますが、本県のつくり育てる漁業の生産額は漁業生産額全体の6割を占め、漁業者の所得向上に大きく寄与しているところであります。特に、ワカメ、アワビ、秋サケ等につきましては全国有数の生産量を誇り、つくり育てる漁業の成果が着実にあらわれてきております。県といたしましては、さらに沿岸漁業の振興を図るため、ヒラメ、マツカワを対象とした魚類栽培を積極的に推進することとし、平成13年度からのヒラメ110万尾、マツカワ10万尾放流を目指し、現在、大船渡市及び大槌町におきまして種苗生産施設の整備を進めているところであります。また、アワビ、ウニ、ヒラメ等の資源をより有効に育成するためには、優良なすみ場が必要でありますことから、漁場造成を実施してきたところでありますが、今後も海域の特性を生かした、より効果的な漁場造成を行い、資源増大を図ってまいりたいと考えております。
 次に、漁業系廃棄物の処理対策についてでありますが、カキ、ワカメ、昆布等の残滓、いわゆる漁業系一般廃棄物を適正に処理していくことは、環境を保全し、つくり育てる漁業を推進する上で極めて重要であると認識をいたしております。漁業団体におきましては、平成10年度漁業系廃棄物再資源化システム開発基本構想を策定いたしまして、カキ殻等につきましては土壤改良材として、またワカメ等の海藻残滓につきましてはアワビ、ウニのえさとして、それぞれ再利用を図ることとし、本年度はこの構想に基づきまして、これら残滓を効率的に処理するための具体的な実証試験を実施することといたしております。県といたしましても、漁業系廃棄物の再利用を促進するという観点から、この取り組みに対しまして支援を行ってきたところでありますが、今後とも漁業団体と連携を図りながら、漁業系廃棄物の適正な処理と再資源化が図られるよう取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、漁業共済制度についてでございますが、養殖漁業を行っている漁協のうち、漁業共済に加入している漁協は、ワカメ養殖につきましては27漁協のすべてが、昆布養殖につきましては11漁協中10漁協がそれぞれ加入しているものの、ホタテガイ養殖につきましては23漁協中4漁協と低い状況にあります。ホタテガイ養殖の加入率が低迷している要因としては、ホタテガイを対象とする制度が創設されて間もないことから、掛金の引き下げ率が小さく、割高感があるのではないかと考えられます。漁業共済は不測の事態に備え、漁業経営の安定に重要な役割を持つものでありますことから、県といたしましては、関係団体と連携を図りながら、引き続き加入促進に努めてまいりたいと考えております。
 次に、漁業集落環境整備事業による排水処理施設整備についてでありますが、本県におきましては昭和58年度から漁業集落環境整備事業を導入し、漁村における排水処理施設の整備の促進を積極的に図ってきたところでありますが、平成10年度末における整備率は7%と、県全体の42%と比較しても極めて低い状況となっております。県といたしましては、整備率の向上を図るため、これまで市町村の起債償還額に対する助成や技術的な指導等に努めてきたところでありますが、引き続き財政面や技術面での支援を行うとともに、汚水処理施設の維持管理の共同化による市町村財政負担の軽減について指導するなど、今後とも市町村と密接な連携を図りながら、整備の促進に努力してまいりたいと考えております。
   〔土木部長大石幸君登壇〕
〇土木部長(大石幸君) まず、港湾整備計画の推進状況についてでありますが、重要港湾4港の平成10年度末における進捗率は、平成12年度を目標年次とする第三次岩手県総合発展計画において、事業費ベースで約55%となっております。主な事業としては、宮古港の神林地区において本年5月にマリーナの供用を図ったほか、釜石港におけるマイナス11メートル岸壁及び大船渡港におけるマイナス13メートル岸壁などの整備促進に努めてきたところであります。このほか直轄事業により、久慈港及び釜石港において湾口防波堤の整備を進めているところであります。
 次に、完成目標年次についてでありますが、港湾計画は各港ごとに港湾審議会に諮り施設の整備規模を定めているところであり、事業の実施に当たっては長期間の投資を要することから、完成目標年次を特定せず、貨物量などの動向を勘案しながら順次整備をしているところであります。
 また、本県の港湾整備計画につきましては、港湾を物流拠点として、地域振興の核になるものと位置づけ整備することが必要なことから、これまで取り組んできた事業のさらなる重点化、効率化を図りながら、新しい総合計画の中に位置づけてまいりたいと考えております。
 次に、内陸工業団地との連携についての取り組みでありますが、港湾貨物の増大を図るためには、工業が集積している内陸部の企業に対する働きかけが重要と考えているところであります。これまで内陸部の企業に対する県内港湾の利用拡大を図るため、地元自治体と一体となってポートセールスを展開してきたところであり、釜石港において金ヶ崎町に立地する関東自動車工業の完成車の積み出しのほか、大船渡港において北上市のいすゞ自動車関連企業の原材料の陸揚げ等が実現したところであります。今後の利用拡大のためには、安定かつ継続的な輸送が可能となる定期航路の開設が重要であり、既に宮古港では横浜との間で内航フィーダー航路が、釜石港では名古屋港までの混載自動車専用船の定期航路が開設されておりますが、貨物量の一層の増大によりこれらの航路の定着を図るとともに、その他の港についても定期航路開設に向け地元自治体と一体となって取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、内陸部の工業団地や都市との連携、港湾の利活用に関連する道路整備についてでありますが、広大な県土を有する本県においては、沿岸部と内陸部の時間距離の短縮が課題となっており、港湾物流の効率化を支える上でも、四つの重要港湾を有する広域生活圏中心都市と内陸部を結ぶ骨格道路網の形成が重要と考えております。
 お尋ねの道路整備の現状としては、東北横断自動車道東和-花巻間の工事に昨年着手されたところであるほか、その他の道路も多くの未整備区間を抱えている状況にあります。釜石-花巻南インターチェンジ間や宮古-盛岡南インターチェンジ間を例にとれば、移動時間が約2時間程度を要している現状から、円滑な社会経済活動と活発な交流連携に資するために、横軸の道路である東北横断自動車道の整備促進や国道106号等の整備を重点的に進める必要があると考えております。
 なお、これら骨格道路の整備とともに、当面、港湾物流の利活用として、いわゆる40フィートコンテナの通行を考慮し、国道397号などの隘路区間の改修に向けた整備を進めているところであります。
 次に、大船渡港港湾整備に関する県道整備についてでありますが、永浜・山口地区港湾整備事業については、今後、県として重点的に取り組んでいかなければならない重要な事業であると考えております。これに関連する道路につきましても、交通実態を把握しながら適切に対応していかなければならないと思っております。御指摘のこの港湾整備と関連した県道は主要地方道大船渡綾里三陸線であり、港湾物流と関連する区間は国道45号から永浜-山口地区間の延長約5キロメートルの区間で、本年度において完了する街路事業などにより、おおむね全区間2車線で改良済みとなります。現在、一部区間が市街地を通過することから、港湾計画の中において、赤崎町山口地区を海側に迂回するルートを港湾物流に資する臨港道路として検討しております。今後、港湾整備の進捗により、港湾利活用の具体の見通しや、また工業団地構想等の具現化に伴い発生する交通量やその動態が明らかになった時点において、現道においての対応が困難と予想された場合には、県全体の道路整備計画の中で総合的に検討し、この関連県道の整備を進めてまいりたいと考えております。
   〔生活環境部長村上勝治君登壇〕
〇生活環境部長(村上勝治君) 産業廃棄物の処理問題についてでありますが、まず、発生の段階での抑制を図ること、排出された廃棄物については、できるだけ再資源化や再生利用を進めた上で、最終的に焼却、埋立等の処理をしなければならない廃棄物について、適正に処理することが基本であります。これまでも排出事業者に対しましては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律の説明会等を通じて、みずから廃棄物の減量化や再生利用を進め、その上、適正処理に努めるよう指導するとともに、処理業者に対しましても、事前協議や講習会等の際に、適正な処理の推進はもちろんのこと、再資源化、再生利用に配慮した処理が行われるよう、指導に努めているところであります。この結果、コンクリートやアスファルトを破砕した再生材や木くずのチップ化、汚泥の堆肥化などの再資源化や再生利用が行われてきております。
 また、施設の設置につきましては、地元の理解と信頼が得られることが重要であることから、いわゆる廃棄物処理法に定める手続に加えて、平成2年から廃棄物処理に関する指導要綱に基づいて、施設の設置者に対して、周辺の生活環境調査や周辺住民への事前の説明の実施などを指導してきているところであります。今後とも、産業廃棄物の減量化、再資源化や処理が適正に行われるとともに、処理施設の整備に当たっては公害防止協定の締結等を通して、地元の理解と信頼が得られるよう事業者等の指導に努めてまいりたいと思います。
   
〇議長(山内隆文君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後4時37分 散 会

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