平成11年6月定例会 第2回岩手県議会定例会会議録

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〇27番(瀬川滋君) 政和会の瀬川滋であります。
 今定例会に代表質問の機会をいただき、先輩、同僚議員に感謝を申し上げます。
 我が政和会は、昨年の4月に結成されました。時代は地方分権型社会へと移行しており、県民の行政に対するニーズがますます高度化、多様化する中で、チェック機能としての役割を担う県議会が、より高度、専門的な対応が必要となってまいりました。政和会は、このような時代の流れに対応した県議会の果たす役割の重要性を強く認識し、県民こそ地方自治の主権者であり、地域づくりや問題解決の主体であるという住民自治の原点を確固として見据え、県政の諸課題の解決や地域振興に資することを理念とし、活動をしてまいりました。このたびの統一地方選挙において、私たちは勇躍、厳しい選挙戦に挑んでまいりました。その結果、多くの県民の皆様に御支持をいただき、再び政和会として登壇できることに感慨を強くするものであります。
 住民自治の原点を教える記事がありました。スイスの例であります。スイスは、26ある州によって、住民が州の政治に直接参加できる度合いがかなり違うとのことであります。住民参加や地方分権の度合いの異なる州の人々の幸福感について調査を実施したのだそうです。その結果、差は歴然とあらわれ、住民が参加しやすい仕組みになっているほど、地方分権が進んでいるほど住民は幸せに感じていたとのことであります。政治を身近なものにすること自体に意味があり、価値があると思うのであります。
 増田知事も、このたびの選挙期間を通じて、岩手の新時代に向けて本県が着実に歩み始めていることを強く実感したとのことであり、それは県民の皆様の県勢発展への意欲とたゆまぬ努力によるものであり、新しい岩手づくりの主役は県民であるとの思いを改めて確信したとのことであります。まさに地域の活性化は、地域の住民自身の英知と情熱にかかっていると言っても過言ではありません。私は、県民の力を信じる増田知事の姿勢に心より共感を覚えるものであります。新しい任期においても、知事は、県民重視の基本理念を明確にし、県民の幸せのため、各般の施策に積極的に取り組んでいただきたいと思うのであります。
 それでは、順次、通告に従い質問いたします。
 まず初めに、増田知事の所信表明演述についてお伺いいたします。
 私は、演述を聞いて感じましたのは、知事が岩手県のすばらしさを認識し、郷土に限りなく愛着を持っておられるということであります。増田知事は、初めて選挙に立候補したときにも夢県土いわてを公約にし、その実現のために第1期県政を担ってこられました。知事は、長引く景気の低迷や雇用不安が続く中で、窮屈な財政事情にありながらも、環境、ひと、情報と、時代の要請を的確にとらえて施策を展開しておられます。私は、新しい総合計画の策定とそれぞれの事業の実施状況を注意深く見守りたいと思います。
 そこでお伺いいたします。私は、このたびの所信表明は、前期4年間に知事が精力的に行った県民との対話が基本にあると思いますが、どのように評価をされているのかお伺いいたします。
 次に、知事は、いわて地元学の実践を通じて、豊かで美しい環境、多彩で特色ある文化や産業などの財産を守りはぐくみ、21世紀の新しい風と重ね合わせ、真に豊かな地域社会を実現するとありますが、真に豊かな地域社会の姿をどのようにとらえているのかお伺いいたします。
 また、地域と学校の連携のもと、互いの才能や個性を生かしながら学び合う環境づくり21世紀の寺子屋をどのように進めていくのかお伺いいたします。
 次に、地方分権社会への移行についてお伺いいたします。
 現在、通常国会で地方分権一括法案が審議されております。平成7年に地方分権推進法が成立し、地方分権推進委員会の勧告に基づき政府は地方分権推進計画を作成し、現在に至っております。私たちが長年待ち望んだ住民主役の行政制度が、緩やかではありますが着実に近づいてまいりました。これは、地方の自主性が一層重んじられ、結果として自己責任に基づいて行政運営が行われなければならないことと私は理解いたしております。私は、今までの国への依存体質を改め、財政力と行政能力にすぐれた基盤の強い受け皿をつくっていかなければならないと考えます。
 現在、介護保険制度が始まるに当たり、広域での対応が積極的に行われております。私は、地方分権の成果を十分生かし、本格的な少子・高齢社会において高度かつ多様なサービスの水準を確保していくためには市町村合併を推進すべきと思います。国会では合併特例法の改正が審議されており、合併の障害除去、環境整備、合併後のまちづくり支援を考慮した財政措置の拡充を検討しております。
 そこでお伺いいたします。合併特例法は平成17年度末までの限時法になっておりますが、今回の改正では、知事が公益上必要と認める場合に関係市町村に対し合併協議会の設置を勧告する手続等が新たに規定されております。私は、今任期中の知事のリーダーシップに期待するものでありますが、いかがでしょうか。
 新しい総合計画が策定中でありますが、その地域デザインの項で現在の広域生活圏を見直していくことも必要であるとの認識を示しておりますが、それに伴って、県の地方振興局などの出先機関の再編等大胆な改革を検討すべきと考えますが、いかがでしょうか。
 また、地方分権による機関委任事務の廃止に伴う地方事務官制度の見直しによる雇用対策等への影響をどのように考えておられるのかお伺いいたします。
 次に、財政の見通しについてお伺いいたします。
 本県の財政構造は、近年の地方財源不足対策として財源対策債等の発行を余儀なくされたことなどに伴い、県債残高が1兆1、000億円を超え、年々公債費等の義務的経費が増嵩するなど、関係指標が年々悪化してきている状況にあるとのことであります。今年度においても、自主財源の大宗をなす県税収入については個人県民税や法人2税などを中心として87億円余り減る見通しの中にあって、県債に依存せざるを得ない状況にあり、6月現計予算の県債発行予定額は1、222億6、600万円で、構成比が13・7%にもなります。今後においても厳しい財政状況が続くものと見込まれておりますが、一方で国は、景気浮揚のため財政構造改革を凍結し、積極財政に転じたところであります。
 このような状況において、増田知事は、昨年2月に策定した中期財政見通しをことしの夏にかけて見直す必要があるとの意向を示されましたが、その見直しの方向をお示し願いたいと思います。
 あわせて、財政改革と景気対策との整合性をどのように考えているのかお伺いいたします。
 次に、政策評価制度についてお伺いいたします。
 国においては、中央省庁等改革基本法を受けて、2001年から政策評価制度が導入されることになりました。政策評価の基本目的は、説明責任の徹底と業績、効果の改善であります。この制度の導入により、政策の意義とか効果が事前に十分検討されないまま予算化され、期待した効果が発揮されない場合であってもその責任を問われることが少なかった従来の仕組みの改善が期待されているところであります。
 本県では、既に9年度から事務事業評価制度を導入し、各部局において、事業執行後にその事業が所期の目的どおり効果が上がっているかどうかを検証してその調書を作成し、次の予算編成に生かしているとのことであります。昨年、増田知事は、いわゆる奥産道の雫石東八幡平線の工事の中止や北本内ダムの工事の休止を決定いたしました。その理由は、自然環境への配慮、水需要の変化あるいは費用対効果の問題など、社会の状況が大きく変わったために見直したものであると私は理解いたしております。
 一方、この制度の問題点としては、政策評価に費用を要し、全体事業費の増加が見込まれること、事後評価により責任を問われるようになると、効果の予測や特定化が困難な場合に、不確実性を回避するため新規ニーズを先取りする姿勢が抑制されるおそれがあることなどが指摘されております。
 現下の厳しい財政状況の中で、公共事業に対する県民の関心が高くなっております。
   〔副議長退席、議長着席〕
 県は、既に評価プロセスと結果を公表しており、予算化にしても、各部局の要求段階からの情報を公開し、透明性が確保されてきており、その姿勢を評価するものであります。
 そこでお伺いいたします。既に実施された事務事業評価をどのように予算編成に生かされたのかお伺いいたします。
 次に、難しい判断を強いられる政策決定がなされる過程や判断材料、判断基準などをできるだけわかりやすい形で県民に示していくべきであると考えますが、いかがでしょうか。
 また、国においては、外部に第三者機関を設置し評価を行うとか、省庁再編とともに各種審議会の整理合理化を進めるやに伺っておりますが、県としては、第三者機関の設置や審議会の整理合理化についてどのように考えておられるのかお伺いいたします。
 次に、岩手山防災対策についてお伺いいたします。
 火山性微動を観測してから1年以上が経過し、その対応に、県を初め、周辺の市町村の職員の皆様は毎日緊張の連続でお疲れのことと思います。岩手山地震情報、21日17時現在5回、6月累計215回の報道に、ただただ何も起こらなければという祈りでいっぱいでございます。
 雫石町では、岩手山の状況を実際に山に入って調査、観測する岩手山火山活動特別調査隊を編成し、計器類で判断できない自然環境の変化や異常現象を定期的に観測し、安全対策への資料にするとのことであります。
 県におきましても、岩手山の火山防災対策の指針となる緊急対策ガイドラインに火山情報の受理、伝達体制の構築、避難住民の安否情報の提供、災害医療体系の構築が盛り込まれておりますが、これらが順調に進んでおられるのかどうかお伺いいたします。
 また、治山ダムや砂防ダムの整備計画はどのようになっているのかお伺いいたします。
 岩手山の活動や地震などによる北上川清流化事業施設への防災対策がなされているのか、あわせてお伺いいたします。
 次に、花巻空港臨空都市構想についてお伺いいたします。
 花巻空港は、東北縦貫道、東北新幹線、東北横断道釜石秋田線の高速交通体系の結節点に位置いたしております。空港ターミナルビルの前を国道4号が通り、利用客にとっても便利な空港であります。今年度から滑走路の延長工事が本格的に始まりました。大型機の就航が可能になり、海外への直行便が大幅にふえていくものと期待いたしております。
 しかし、残念ながら平成10年度の花巻空港の利用者数は前年度に比べ5・6%減の51万8、700人で、5年ぶりに減少いたしました。利用客の大半は観光客で占められております。花巻空港周辺には、地域振興整備公団による流通業務団地の整備が進められております。臨空都市構想では、空港を核とした地域について、空港機能と直結する地域、航空需要が最も期待されるとともに、空港機能を広域的に支援することができる地域、空港機能の波及を今後一層促進させる地域に区分し、それぞれの地域特性に応じて空港機能を活用した地域づくりを進めるとのことであります。
 そこでお伺いいたします。私は、ターミナル地域の中心となる新しいターミナルビルの機能に注目するのでありますが、臨空都市構想の中で新ターミナルビルの機能をどう位置づけているのかお示し願いたいと思います。
 また、航空需要が最も期待される地域には、空港機能と結びついた産業の振興、観光の振興が必要と思いますが、その取り組みの方法についてお伺いいたします。
 それに伴って、私は、どうしても花巻空港に税関、出入国管理、検疫体制、いわゆるCIQの強化が必要と考えますが、いかがでしょうか。
 次に、男女共同参画社会の実現についてお伺いいたします。
 社会の状況がさま変わりしてまいりました。20代、30代の若い家庭においては、子育てを夫婦が協力してやっていかなければなりません。40代、50代になると、職場や地域社会においては中堅として忙しい毎日を送っております。
 最近、家庭においては、親の介護という切実な問題を抱えている世帯がふえてまいりました。子育て中の若い夫婦を見てますと、保育園の送り迎え、諸行事への参加など、大変協力的であります。だんだんと共同の意識が芽生えていると思われます。しかし、現状を直視すると、日本の男性が家事に費やす時間は女性の6%にすぎず、育児で20%、介護でも11%にとどまり、米国の家事49%、育児49%、介護100%などに比べ、先進国で最低水準にあるということであります。
 1979年に国連は、男女の性別役割分業を根本から見直すようにとの条約を各国に求めました。同じくしてILO--国際労働機関--も、男女がともに職業と家庭を調和させ、健康で平等に働く社会を目指すよう条約を制定し、各国政府に勧告いたしました。以来20年を経過し、我が国では6月15日に、あらゆる分野で男女が対等な立場で責任を担う社会の実現を目指す男女共同参画社会基本法が成立いたしました。男女が対等な立場で、国や自治体における政策や民間団体における方針の決定に参画する機会が確保されるということであります。また、家族を構成する一員として、子育てや介護など家庭生活における活動の責任を男女がともに負うことになります。
 そこでお伺いいたします。この法律で都道府県の男女共同参画計画を策定することが義務づけられておりますが、県として、いつまでに、どのような計画をつくろうとしているのかお伺いいたします。
 一方、家庭生活においても共同作業の時間が必要になってまいります。子育てや介護に関し、男女が平等に役割を担うことができるよう支援していくことが重要と考えますが、いかがでしょうか。
 また、介護の問題を例にとると、女性介護の方がよいという問いに、好ましくはないが現状では仕方がないとの答えが男女とも40%であります。女性も現状を認めている状態が岩手県の意識調査でわかりました。この実態を憂うと、男女共同参画社会を実現するための施策を総合的に推進する拠点として県立の男女共同参画推進センターが必要になると思いますが、いかがでしょうか。
 次に、介護保険制度の施行準備についてお伺いいたします。
 介護の苦労は当事者になってみなければなかなか理解されるものではありません。今でこそ特養ホーム、老健施設で大部分の方々がお世話になることができます。10数年前の実態を思い出しますと、当時は、介護は家族でするもの、家族へ負担が重くのしかかっておりました。施設整備が追いつかない自治体では、せめて介護をする人に感謝状を出したらいかがかと議会で話題となったことがあります。
 ようやく介護が必要な高齢者を社会全体で支えようとする介護保険制度が来年4月に実施されます。そして、10月からは介護保険の給付申請が始まり、その準備のために、市町村において行政区ごとの説明会の開催などを行っていると聞いております。私は、施設入所を希望する待機者が数多くいることを考えると、介護保険制度が予定どおり始まるよう願うものであります。県におきましては、この制度が万全の体制のもとでスタートできるよう、市町村を支援していただきたいと存じております。
 そこでお伺いいたしますが、本年10月からの要介護者の認定が円滑に行われるよう、県はどのように市町村を支援されるお考えでしょうか、お伺いいたします。
 あわせて、実施主体となる市町村の保険料の住民負担額をどのように把握されているのかお伺いいたします。
 また、市町村の保険財政運営の安定化のために県に設けられることになる財政安定化基金はどのように運用され、その規模の見通しをどのように考えておられるのかお示し願います。
 最後に、県立高等学校新整備計画案についてお伺いいたします。
 県教育委員会は、県立高等学校新整備計画案をまとめるに当たり、長期構想検討委員会やブロック別懇談会等の席上、広く意見を聞いてまいったものと承知いたしております。しかし、ブロック別懇談会での意見交換では、具体的な学校名に触れることはなかったと聞いております。新整備計画案は、生徒の著しい減少に対応するものであることを私も理解いたしております。したがって、統廃合が現実のものとなり、幾つかの学校の歴史が中断することを心配いたしておりました。
 中学卒業後の進路などに関する意識調査を見ますと、中学校2年生の学科希望比率と公立高校の定員比率は、農業学科が定員比率8・5%に対して希望比率2・6%、商業科が11・1%に対して8・0%、水産科が1・1%に対して0・5%になっており、普通科を希望する生徒が多く、このままでは専門高校の定員割れが恒常的になります。また、生徒の個性化、多様化への対応のために総合学科や総合的な専門高校、総合選択制の高校の導入を図りたいとのことであります。それに基づいて、新整備計画案は地域を中心に再編を考えていただいたようでありますが、残念ながら、地域がよって立つ産業、文化が必ずしも尊重されたものとはなっていない面もあるのではないかと私は感じるのであります。
 本県は、水稲を初め、畜産、園芸作物など活発な農業生産を通して我が国の食糧供給県として確固たる地位を築いております。本県基幹産業の人材を育成する農業高校の再編をもう一度考えてみる必要があると考えますが、知事は、このたびの高校再編(案)についてどのような所感をお持ちなのか、お伺いいたします。
 国づくりは人づくりと言われます。人づくりの根幹は教育であります。まさに教育は、国家百年の大計と言っても過言ではありません。100年の風雪に耐え、岩手の農業を支え、文化をはぐくみ、世界に向けて岩手を発信できる数少ない学校も、今、ここに存続の危機に縦しております。県民は、果たして納得するのでしょうか。増田知事の総合調整に期待を申し上げ、私の代表質問を終わります。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 瀬川滋議員の御質問にお答えを申し上げます。
 まず、県民との対話についてでございますが、私は、知事就任以来、県民に開かれたわかりやすい県政の推進を基本姿勢として掲げ、可能な限り県民の皆様の活動の場に出向き、また、さまざまな機会を通じて県民の皆様との直接の対話に努めまして、県政に対する御意見、御提言をお聞きしながら、新しい岩手づくりに向け全力を傾けてまいりました。そして、このような日々の取り組みを通じて、岩手・新時代を担う主役は県民であるとの思いを強くし、生活者の視点、地域の視点に立った県政を進めることの重要性を強く認識したところでございます。こうしたことを踏まえ、これからの県政運営に当たりましても、それぞれの現場でしっかりとその実情を把握しながら、地域の視点で地域づくりを考え施策を行う現場重視の地域経営を推進いたしますとともに、政策形成過程への住民参加の仕組みづくりを積極的に進めるなど、県民一人一人と県行政の距離を縮める顔の見える県政を推進してまいりたいと考えております。そして、こうした生活者主権、地域主権の社会を見据えた行政システムの改革を着実に実行に移しながら、新しい岩手づくりに向けたさまざまな施策を展開してまいりたいと考えております。
 次に、真に豊かな地域社会の姿についてでございますが、21世紀を目前にした時代の変革期にあって、真の豊かさとは何かが問い直され、豊かな人間性や生活の質が求められるなど、新たな時代に対応した多様な価値観が模索をされております。
 一方、岩手には、こうした価値観につながるゆとりと結びつきの心、豊かで多様な自然、多彩な地域文化といったすぐれた特性が先人から確実に受け継がれてきております。このため、私は、そうした本県のすばらしい財産をいわて地元学などの実践を通じ、はぐくみ発展させるとともに、新しい時代に対応するため、環境、ひと、情報の三つの視点に立った施策をこれに重ね合わせながら、本県の発展可能性を十分に引き出すことに全力を傾注してまいりたいと考えております。そして、地域とそこに暮らす人々が、それぞれの夢や可能性に向かって、その個性や能力をさまざまな形で十分に発揮し、そのことが地域の発展に結びついていくような誇りと愛着の持てる真に豊かな地域社会、すなわち夢県土いわてを県民と手を携え、ともにつくり上げてまいりたいと考えております。
 次に、21世紀の寺子屋についてでございます。
 私は、ふるさと岩手を新しい時代の我が国をリードする真に豊かな地域社会にするために、人づくりを重要な柱に据え諸施策を推進することとしております。新しい自分を創造する人づくりのステージは、家庭であり、学校であり、地域社会でございます。従前から学校や公民館などは地域の集いの場であり、知恵の宝庫であり、子供と大人がともに学び、成長する場でありました。また、森や川などの自然、ふるさとの歴史や祭り、民話などの伝統文化、食などの生活文化、さらには一人一人の幅広い人生経験に至るまで、自然や人、文化は地域づくりの重要な財産であります。したがいまして、私は、岩手の恵まれた自然や身近な暮らし、文化を教材とし、人と人とのつながりを大切にしながら、自然から学び、人から学び、文化から学ぶ21世紀の寺子屋を、地域と学校との連携のもとに展開して、県民一人一人の個性や能力を生かす環境づくりを推進してまいりたいと考えております。
 次に、市町村合併に対する取り組みについてでございますが、市町村の合併については、地域における自主的取り組みが前提となるものでありまして、自治の担い手である住民が地域の現状や課題をともに考え、将来の望ましい姿を描きながら、市町村が自主的に判断することがまずもって必要でございます。その一方で、市町村が地域の総合的な行政主体として分権型社会における役割を担うためには、市町村の自主的な合併を推進することが要請されておりまして、今回の合併特例法の改正案においても、知事の勧告に関する規定の整備など、これまで以上に県の役割が期待をされているところでございます。
 県といたしましては、現在、合併パターンを含めた広域行政推進指針を策定するため、県立大学の協力を得ながら、調査・研究事業に取り組んでいるところでございまして、今後、これらの成果を市町村や住民に提示するとともに、地域の実情に応じたきめ細かな助言や情報提供を行うなど積極的に市町村を支援し、県としての役割を果たしてまいりたいと考えております。
 次に、広域生活圏の見直しに伴う地方振興局などの再編についてでございますが、私は、地方分権が実行段階を迎えている今日、生活者主権、地域主権の時代を見据えた県と市町村の新しいパートナーシップを構築していくことが重要であると認識しておりまして、こうした中で、地方振興局は、現地における地域経営の戦略拠点として、また、市町村に対してはその自立を促進し主体的な特色ある地域づくりを支援する拠点として、一層大きな役割を果たしていくものと考えております。
 一方、新しい岩手づくりを実践する舞台となる県土の地域デザインの方向性を考えるときに、地方分権の進展、広域行政の展開、経済活動の一層の広域化などの環境の変化を背景に、広域ゾーンの見直しがこれからの課題となってくるものと考えられます。したがいまして、地方振興局の今後のあり方につきましては、地方振興局の今後果たすべき役割を十分に踏まえるとともに、このような広域ゾーンの見直しの方向性や、本庁の組織再編も含めた行政システム改革の進捗状況などを勘案しながら検討を進めてまいりたいと考えております。
 次に、地方事務官の廃止に伴う雇用対策への影響についてでございますが、御案内のように、現在、国会で審議されておりますいわゆる地方分権一括法案によりますと、職業安定関係の機関委任事務は廃止されまして、職業紹介、職業指導、雇用保険などの事務は国が直接行うこととなっておりますが、職業訓練、職業能力開発などの事務は、これまでどおり県も行うこととなります。また、このたびの法案によりますと、地方公共団体は国の施策と相まって、当該地域の実情に応じ、雇用に関する必要な施策を講ずるよう努めることとされておりますことから、地域における雇用対策の重要性にかんがみ、関係機関との連絡調整会議を設けるなど、国と密接な連携を図りながら、雇用対策が停滞することのないよう努めてまいる考えでございます。
 次に、県財政の中期見通しについてでございますが、現在の中期見通しは、平成14年度までの財政運営や予算編成の参考とするために昨年の2月に策定したものでございますが、その後、国の財政構造改革の凍結や税制改正などの大きな情勢変化もありましたことから、本年8月ごろに策定する新しい総合計画の実施計画の内容や経済指標の動向等を踏まえて見直しを行い、遅くとも来年度の予算編成方針を決定する10月ごろまでにはお示しをしたいと考えております。
 また、財政改革と景気対策の整合性についてでございますが、財政改革については、本県財政が、県債残高が増加し、公債費等の義務的経費が年々増嵩するなど、今後一層、厳しさが増していくものと見込まれることから、将来のさまざまな行政需要に適切に対処できる財政構造の確立を目指し、財政の健全化に鋭意努めているところでございます。
 一方、景気対策につきましては、これまでも県内経済の活性化を図る観点から、国の対策とも呼応し、その時々の経済情勢を踏まえながら、迅速かつ機動的に対応をしてきたところでございますが、今後におきましても、景気回復を図る上で必要な対策につきましては適切に対応していくべきものと考えておりまして、その実施に当たっては、限られた財源を重点的、効率的に活用をするとともに、国庫補助事業の効果的な導入や後年度の元利償還に交付税措置のある県債を選択的に充当するなどによりまして、財政運営の健全性にも十分配意しながら取り組んでいくべきものと考えております。
 次に、事務事業評価の予算編成への反映についてでございますが、事務事業評価は厳しい財政環境の中にありまして、職員がコスト意識を持ち、事務事業を不断に見直すことにより、限られた財源の効率的かつ効果的な活用を図ることを目的として、平成9年度から実施をしてきているところでございます。これにより、これまで502件、事業費ベースで約120億円の事務事業について縮減、合理化を図る一方で、医療費助成や保育施策の拡充などの県民福祉の充実や、住宅、下水道などの県民に身近な基盤の整備など、優先度と緊急度の高い施策について重点的な配分を行ったところでございます。
 次に、政策決定がなされる過程の公表についてでございますが、私は、情報公開の目的は、県民と県が情報を共有し、互いに責任を分かち合い、新しい岩手づくりに向け、ともに行動していくことにあると考えております。そのため、政策形成の段階からさまざまな情報を積極的に県民の皆様に提供して、また、御意見をちょうだいしながら、県民の皆様の意思を適切に県の施策に反映させていくことが県政のあるべき姿であると考えております。こうした考え方のもとに、本年の3月、情報提供施策の総合的な推進に関する要綱を定めまして、県が保有するさまざまな行政情報を、県民が、よりわかりやすい形で、迅速かつ容易に入手できるようにしたところでございますが、今後とも、その趣旨を職員一人一人に徹底して、施策の立案過程や実施段階における県民の参画に努めてまいります。
 また、第三者機関を設置しての評価や審議会などの整理合理化についてでございますが、平成10年度から導入した公共事業評価制度の中で、学識経験者などで構成される公共事業評価委員会を設置し、評価の客観性や透明性の確保に努めてまいりました。
 今後の県政推進に当たりましては、施策や計画の評価においても、学識経験者などの外部の第三者の専門性や知識・技術を広く活用していく考えでございます。
 なお、審議会などの整理合理化につきましては、平成8年度に審議会等の運営に関する留意事項を定めまして、その適正な管理運営の確保などを進めてきたところでございますが、本年の2月に策定をした岩手県行政システム改革大綱に基づき、審議会等の整理合理化を計画的に進めますとともに、県政に対する県民の幅広い意見の反映や専門的な知識の導入など、審議会等がその役割を十分に果たすことができるよう、その運営のあり方の見直しを進めてまいります。
 次に、岩手山火山防災対策についてでございますが、緊急対策ガイドラインは、たとえ噴火が起こっても災害は防げる、このような基本認識のともに、国、県、周辺市町村や関係機関が緊急に実施すべき対策を示したものであり、国の協力を得て全国で初めて策定したものでございます。ガイドラインの策定後、岩手山の火山活動に関する関係機関連絡会議などを開催して、周辺市町村や関係機関にハード・ソフト両面の取り組みを踏まえた対策の再構築を進めるよう要請をするとともに、県としても、おおむね8月末を目途に、発災から48時間以内に対応し、行動すべき具体的対策の策定に向け、鋭意、取り組んでいるところでございます。
 火山防災対策は、人的被害を抑えることが最大の目標でございまして、そのためには、国、県、周辺市町村や関係機関、さらには地域住民のそれぞれが果たすべき役割を十分認識の上、これらの具体的対策への取り組みと並行して、避難対策や自主防災組織の確立など、取り組めるところから速やかに実行に移していく必要がございます。
 今後とも、火山と共生する防災先進地域の実現に向けて、国、周辺市町村や関係機関と密接な連携を図りながら、火山防災対策に一丸となって取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、治山ダムや砂防ダムの整備計画についてでございますが、岩手山火山防災マップに基づき、国等が設置いたしました岩手山火山治山計画検討委員会、そして岩手山火山砂防計画検討委員会で検討を重ねてまいりました。その結果、土石流の発生が予想される40溪流のうち、18溪流については林野庁の所管事業により66基の治山ダムを、また、残る22溪流については、建設省所管事業により28基の砂防ダムと9基の遊砂地を整備することとしたところでございます。本年度は、治山ダム10基と砂防ダム4基の工事を行うこととしておりまして、事業の実施においては連携を密にし、対策に万全を期してまいりたいと考えております。
 次に、北上川清流化事業施設への防災対策についてでございますが、事故・災害等の緊急時における即応体制を確立するために、新中和処理施設緊急事故等対応マニュアルを策定いたしまして、金属鉱業事業団など関係機関による情報伝達、現地参集訓練を実施してきているところでございます。また、昨年度、新中和処理施設の配管変更工事を行いまして、旧坑道から排出される強酸性水の処理能力の向上を図りますとともに、中和剤、可搬式発電機などの資機材の備蓄を行いまして、不測の事態への対応も進めているところでございます。
 今後におきましても、北上川清流化事業の重要性にかんがみまして、国等の関係機関との連携のもとに、施設の防災対策につきましては万全を期してまいりたいと考えております。
 次に、花巻空港臨空都市構想についてでございますが、この構想におきましては、花巻空港を中心とする半径40キロメートル圏域を航空需要が最も期待される臨空都市地域と位置づけまして、滑走路延長を初めとする一連の拡張整備により拡充・強化される空港機能を最大限に活用して地域振興に結びつけていくとともに、その効果を全県的に波及させていくための基本的な方策を取りまとめております。
 新ターミナルビルにつきましては、県内の文化・産物のPRや展示・販売、観光関連情報の提供、県内各地における最新情報の国内外への発信、地域の多目的イベントや国内外との多様な交流の場の提供など、さまざまな機能を導入することとしておりまして、これにより単なる旅客の通過地点としてではなくて、旅客、県民双方の多様なニーズに応じられるような魅力ある空間として整備し、地域とのかかわりを一層推進することとしております。
 また、臨空都市地域における産業、観光の振興についてでございますが、この地域には、人口、産業などの集積が進んでおりまして、歴史、文化、産業、観光等のすぐれた地域資源と空港が有する人、物、情報の交流拠点としての機能を最大限活用した地域振興を進めていく必要があると考えております。このため、高速交通体系を生かした花巻流通業務団地の整備や先端技術産業の一層の集積によりまして活力ある産業の振興を図るとともに、温泉、スキー場など、地域固有の自然系の資源や宮澤賢治に代表される文化的資源など、恵まれた地域特性を生かした観光の振興を図ることとしております。
 また、花巻空港における税関、出入国管理、検疫体制のいわゆるCIQ体制につきましては、国際化の進展に対応して、国際交流の推進や国際チャーター便の運航拡大を図っていく観点から、今後とも関係機関との十分な連携を図るとともに、その体制整備について引き続き国に対して要望するなど、本県の国際化を支える空港のCIQ体制の強化に努めてまいりたいと考えております。
 次に、男女共同参画社会の実現についてでございますが、少子・高齢化の進展、経済活動の成熟化などの社会経済情勢の変化に対応するためには、女性が男性と対等な立場で社会のあらゆる分野に参画し、その能力と個性を十分に発揮できる社会を実現することが緊要な課題となっております。このため、県では、現在のいわて女性さわやかプラン策定後の社会経済情勢の変化や、男女共同参画社会基本法など国の法律等の整備、本県の女性が置かれた特性などを踏まえながら、男女平等に向けた意識改革や、政策・方針決定過程への女性の参画の促進、雇用の場における均等な機会と待遇の確保、職業と家庭・地域生活の両立支援や女性の人権の擁護などを主要な施策と位置づけ、21世紀初頭を展望した総合的な計画を今年度中に策定してまいりたいと考えております。
 また、家庭生活における男女の共同参画についてでございますが、御指摘のとおり、日本の男性が家事や育児に費やす時間は欧米に比べ確かに短いのですが、昨年の少子化に関する県民意識調査によると、多くの父親は育児に参加していることが示されていることから、育児教室への父親参加の促進など、父親の育児参加が一層進むように支援をしてまいります。
 また、介護につきましては、介護保険法の施行により、現在、主として家庭内で女性が担っております介護が社会化をされますことから、これまで女性に集中していた介護の負担が軽減されるものと考えております。このような状況にあって、男女共同参画社会を真に実現するためには、市町村や関係機関に対するさまざまな情報の提供やネットワークの構築、女性リーダーの養成、総合的な相談や各種団体の交流の場の提供、自主的な活動の支援等を行う拠点施設の整備が必要であると考えております。このため、今後、県民の皆様から御意見をいただきながら、男女共同参画を推進するための拠点施設のあり方について検討をしてまいりたいと考えております。
 次に、介護保険制度の施行準備についてでございますが、この制度において、要介護認定は、介護を必要とする高齢者それぞれの保険給付水準を決定する重要な手続でありますことから、公正で客観的な審査・判定が求められております。このため、県といたしましては、要介護認定が適正に実施できるよう市町村の審査体制の広域化を進めますとともに、今後におきましても、審査会委員、調査員等の研修を実施するなど、本年10月からの要介護認定が円滑に行われるよう、市町村を積極的に支援をしてまいりたいと考えております。
 次に、保険料についてでございますが、現在、市町村では、昨年実施した高齢者の実態調査結果や国の指針などに基づいて、介護サービスの見込み量とこれに基づく保険料率の算定を行っているところでございまして、今後、これらを市町村介護保険事業計画の中間報告として取りまとめる予定としておりますことから、これらがまとまった段階で、各市町村の保険料率のおおよその見込みをお示しできるものと考えております。
 また、財政安定化基金につきましては、市町村において見込みを上回った介護給付費や保険料の収納不足によりまして、保険財政に赤字が生じた場合に基金から資金を貸し付け、または交付することによりまして、市町村の保険財政が安定的に運営されるよう支援してまいりたいと考えております。
 なお、財政安定化基金の規模につきましては、この基金が平成12年度から14年度までの3カ年の全市町村の保険給付費見込み総額の0・5%を標準に、県の条例で定める拠出率に基づいて算定された額を、国、県、市町村がそれぞれ拠出して設置されることとなっておりますことから、基金の造成額につきましては、成案を得た段階で御提案を申し上げたいと考えております。
 次に、県立高等学校新整備計画案についてでございますが、21世紀を担う子供たちが、今後ますます変化する社会に的確かつ柔軟に対応して新しい時代を切り開いていくためには、豊かな人間関係に恵まれた活力ある学習環境の中で、一人一人がその個性や創造性を伸ばし、さまざまな可能性に挑戦できる学びの環境の整備が必要でございます。このため、教育委員会においては、子供たちが目的意識を持って主体的に学び、その進路希望を実現できるよう、教科・科目の選択の幅を拡大することや、農業などの産業に関する教育が質的に一層向上するとともに、県内各地に伝わるさまざまな伝統文化などについても理解を深められることなどを目的として、総合学科や総合的な専門高校など、新しいタイプの高等学校を設置するなどの整備計画案を策定したものと認識をしております。
 県教育委員会におきましては、全県的な視野に立って、学校ごとの具体的な計画案をお示しした上で関係の皆様の御意見を伺っているところでございまして、今後、地域の皆様との十分な議論がなされ、理解が深められることを期待しているところでございます。
   
〇議長(山内隆文君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後4時14分 散 会

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