平成11年6月定例会 第2回岩手県議会定例会会議録

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〇知事(増田寛也君) 本日、ここに第2回県議会定例会が開催されるに当たり、今後の県政運営について、所信の一端を申し上げます。
 私は、このたび、県民の皆様から多くの御支援をいただき、再び県政を担当することとなり、その責任の重大さを痛感いたし、身の引き締まる思いがいたしております。
 さきの選挙を通じて、多くの県民の皆様が、その置かれた現実の中で課題を直視し、真摯に努力している姿に接し、皆様の地域づくりに向けた熱意や県政に対する期待を肌で感じてまいりました。そうした熱意や期待にこたえ、新しい岩手づくりを進めていくためには、それぞれの現場でしっかりとその実情を把握し、地域の抱えるさまざまな課題について県民とともに考え、行動していくことこそが重要であるとの思いを強くいたしました。
 私は、第2期県政の運営に当たり、引き続き県民一人一人と県行政の距離を縮める顔の見える県政を進め、新しい岩手づくりのために、また、現下の喫緊の課題である本県経済の活性化や景気の回復のために、全力を尽くしてまいりたいと考えております。
 21世紀を目前に控えた今日、日本や世界で進行している経済社会の変化は、これまで私たちが経験したことがないほど大きく激しいものとなっており、時代はまさに大きく転換しつつあります。こうした時代の大きな流れは、21世紀に向けて、岩手に暮らす私たちの考え方や生き方、地域へのかかわり方などにも大きな影響を与えてまいります。とりわけ、ボーダーレス化や情報化の進展により、私たちの地域や暮らしが世界と直結するようになると、逆に地域そのものの個性や魅力が問われ、そこにしかない固有の文化や価値を磨くことが重要になるものと考えております。
 また、右肩上がりの経済成長が見込まれない状況にあって、さまざまな規制の緩和や民間、行政の役割分担の見直し、地域主権社会へ向けた仕組みや体制の整備等、これまでの我が国を支えてきた、いわば階層型の社会システムを生活者や地域の視点に立って、より水平型のものへと見直していくことが必要であります。21世紀の扉は、今まさに開かれようとしております。世界の中の岩手、日本の中の岩手という広い視野を持ちながら、民間と行政、地域や世代、性別や障害の有無などのさまざまな垣根を越え、みんなで、新しい岩手づくりに向け、確かな足取りで歩み始めたいと考えております。
 私は、新しい岩手づくりに向けて、その可能性を最大限に引き出し、夢県土いわてをつくり上げていくため、20世紀から21世紀へのかけ橋となるこれからの4年間を変革と創造の4年間として位置づけたいと考えております。そして、生活者主権、地域主権の社会を見据え、さまざまなシステムの改革を実行に移すとともに、新しい岩手の土台づくりを、県民一人一人と手を携えながら、みずからが先頭に立ち、率先垂範の行動をとることによって、推し進めてまいります。
 岩手には、先人から受け継いできた、豊かで美しい環境、心豊かな県民性、多彩で特色ある文化や産業などがしっかりと残されております。私たちの暮らしや地域を足元から見詰め直し、いわて地元学の実践を通じて、これらのすばらしい財産を守りはぐくみながら、これに21世紀の新しい風を重ね合わせることにより、私たちのふるさと岩手は、新しい時代の我が国をリードする真に豊かな地域社会を実現することができるものと確信しております。
 このため、私は、21世紀最初の四半世紀あたりまでを見据えながら、新しい岩手づくりのシナリオとして、本年8月ごろに新しい総合計画を策定し、その着実な実行を図ってまいります。
 この計画においては、環境、ひと、情報の三つの視点を新しい岩手づくりの大きな柱に据え、さまざまな施策を推進してまいりたいと考えております。
 まず、環境については、本県のすぐれた財産である環境を守り育てるとともに、産業経済や地域の活性化などの面においても環境がより大きな力を発揮する可能性を持つことを視野に入れていく必要があります。このため、環境分野において全国に先駆けた取り組みが行われ、環境に関してのさまざまな情報が集まり、また発信する、日本の環境首都を目指してまいります。
 そして、その中枢機能を果たす環境保健センターを整備し、環境モニタリングシステムにより、安全な環境についての科学的な知見を深め、県民への総合的な環境情報を提供するとともに、国を上回る二酸化炭素の削減目標を設定して、環境負荷の低減に向けた先導的な取り組みをすべての県民の参加と連携のもとに進めてまいります。
 また、国連大学等の関係機関との協力のもと、海洋環境の国際的な研究拠点の形成を図るほか、農林水産業や新エネルギーを生かした環境関連産業の振興やゼロエミッション型の工業団地の形成に取り組むとともに、学校、家庭、地域の連携による環境教育の充実により、いわて環境市民の育成にも力を注いでまいります。
 さらに、いわて地元学の実践を通じ、県内各地での環境日本一づくりを推進するほか、住民が地域の環境を守り育てるグラウンドワーク活動を積極的に支援するなど、だれもが感動と誇りを持つことができる美しい岩手づくりを進め、いわば全県生活・環境博物館(エコミュージアム)とも呼べる環境を実現してまいります。
 また、いわて健康院構想を策定し、だれもが岩手の自然や歴史、風土、人情に触れ、物と心の美しさを体感することにより、心身がいやされるような環境を整備、提供してまいります。
 次に、ひとについてでありますが、これからの地域づくりを進めるに当たっては、困難な時代にあっても人づくりを大切にしてきた土壤の上に、誇りを持って地域社会を支えたり、創造性や感性が豊かで、世界や日本に貢献する、たくましい岩手のひとを育てていくことが必要であります。また、すべてのひとが、人生のそれぞれの段階で、みずからの夢に向かってチャレンジできるような舞台づくりも重要であります。
 このため、地域と学校の連携のもと、コミュニティーの拠点としての学校を活用し、地域の自然や風土、文化を教材として、互いの才能や個性を生かしながら学び合う環境づくりを、いわば21世紀の寺子屋として県内各地で進めてまいります。
 また、子供の想像力を育てる夢をはぐくむ教育を推進するため、自然との触れ合い、ボランティア体験や世界の子供たちとの交流をこれまで以上に進めるとともに、21世紀を担う人材に不可欠なコミュニケーション能力の向上に向け、各学校へのインターネット接続を早期に完了し、積極的な情報教育を地域の協力も得ながら進めてまいります。
 他方、全県的な図書・文化の情報提供ネットワークシステムや県立大学のサテライト機能の充実など、生涯にわたり、また仕事や子育てをしながらでも学ぶことができる環境づくりを推進するとともに、NPO活動などのさまざまな社会活動や高齢者、障害者の社会参加を支援するなど、県民一人一人が、生涯の各段階において、新しい可能性にチャレンジできる環境づくりを進めてまいります。
 また、生涯スポーツ、競技スポーツの実施や科学的トレーニング方法の研究・研修などの総合的な機能を持った拠点施設の整備についての調査検討を進めるとともに、世界に通用するスポーツ選手の育成と国際的、全国的な競技大会の誘致を目指してまいります。
 さらに、県立大学を中心とするエリアの研究学園都市機能の充実に向け、産学官の連携による研究機能や国際的な学術交流機能の強化などに取り組んでまいります。
 次に、情報についてでありますが、岩手のすばらしい環境やひとを生かす仕組みとして、情報は重要な意味を持っております。岩手の個性をさまざまなネットワークによって再構築することにより、新しい文化や産業、価値の創出に結びつけていくことが可能であります。
 このため、21世紀の幕あけである2001年にいわて情報ハイウェイの運用を開始いたします。
 いわて情報ハイウェイの上に多様な情報ネットワークや各種のデータベースを構築し、生活の利便性の向上や産業の活性化を促進する魅力ある情報生活空間づくりを進めてまいります。
 とりわけ、県内外の医療機関との情報ネットワークを整備し、このネットワークを使った遠隔医療や診療支援を推進するなど、保健・医療・福祉面での情報化によるサービスの向上に取り組んでまいります。
 また、映像による迅速かつ確実な災害情報の提供など防災面での情報化の推進に力を注ぐほか、公共サービスを地域的な格差なく受けることができるような環境の整備に取り組んでまいります。
 さらに、高齢者や障害者を含め、だれもが高度情報化の恩恵を受けることができるよう、公共施設への端末設置を進めるほか、地域における情報教育の機会の拡充やだれもが利用しやすい情報機器の普及など、サポート体制の充実を図り、バリアフリーな情報化社会の構築を目指してまいります。
 このほか、環境、ひと、情報の三つの視点を取り入れ、ボランティアなどさまざまな交流活動への支援や学習環境の提供、情報発信、国際交流など多様な拠点機能を有し、広く県民に活用される、新しい岩手づくりを進めるための中核となる複合施設を盛岡駅西口に整備をしてまいります。
 一方、夢県土いわてを実現する上で障害になっている物理的、社会的な制約、いわば壁を乗り越えていくための取り組みを進め、広い意味でのバリアフリー社会を構築してまいりたいと考えております。
 距離の壁、すなわち、移動時間の制約を解消する取り組みについては、県土軸形成の観点から、三陸縦貫自動車道の整備を初め、沿岸部と内陸部の冬季も含めた交通アクセスの改善のため、北上高地の峠道の克服に向けて仙人峠、早坂峠などの大規模なトンネルの整備などに積極的に取り組み、90分構想の着実な推進とともに、地方中心都市間について、可能な限り60分交通の実現を目指してまいります。
 地形の壁、すなわち、中山間地域などの持つ立地条件による制約を解消する取り組みについては、農業分野における国の直接支払い制度への対応を進めるとともに、多彩な地域資源を生かした地域産業興しや情報通信基盤の先行的整備、生活基盤の重点的整備を進める新しい田舎づくりへの取り組みを推進してまいります。
 産業の壁については、とりわけ、これからの岩手経済を牽引する核となる力強い産業形成を図る観点から、試験研究機関相互や産学官の連携強化による実用化に向けたネットワーク型の研究開発を推進するとともに、基盤的技術産業の一層の集積、発展や新規成長分野及び自然活用型の産業の育成を図るための総合的な支援体制の充実強化に努めてまいります。
 人の壁、すなわち、年齢や性別、障害の有無などによる障壁をなくす取り組みについては、男女が対等なパートナーとなる社会を確立するため、活動支援機能の充実に努め、さまざまな学習機会や交流の場を提供するほか、男女平等に向けた意識改革や審議会等の政策・方針決定の場への女性のより一層の登用を進めるとともに、女性リーダーの育成や仕事と育児・介護の両立に向けたきめ細かな支援を行ってまいります。
 また、安心して子供を産み育てることのできる結の心・子育て環境日本一を目指し、地域ぐるみで子育てを支え合う岩手ならではの環境づくりを進めるとともに、保育サービスの充実や子育てネットワークの形成、すこやか子どもランドの整備などを進めてまいります。
 さらに、だれもが生き生きと安心して生活できる環境を整備するため、人々の意識からまちづくりまで、住民参加によるバリアフリーを総合的に推進するための枠組みづくりに取り組むほか、高齢者や障害者がその能力を社会で十分発揮できる環境づくりを目指し、リカレント教育や在宅勤務などの自己実現のためのさまざまなプログラムを提供するとともに、21世紀型の居住空間づくりを目指したバリアフリー・モデルタウンの整備に取り組んでまいります。
 県境、国境の壁を乗り越え、交流・連携を推進する取り組みについては、北東北三県の連携による広域観光エリアの形成や環境施策の積極的推進を図るとともに、JICA国際センターの誘致を進め、世界に貢献する開かれた岩手づくりを進めてまいります。
 次に、このような施策を推進し、夢県土いわてを実現していくためには、これまでの行政運営の仕組みを抜本的に見直し、生活者や地域から始まる新しい行政システムを確立していく必要があります。このため、私は、以下四つの方針に沿って、改革を推進してまいります。
 第1に、県民とともにつくる開かれた県政の推進であります。
 徹底した情報公開などにより、県民と行政の情報の共有化を推進するほか、県民への説明責任を果たすため、バランスシートによる財務状況の公表など、さまざまな情報提供の充実を図るとともに、立案過程において、県民から広く意見を求めるパブリック・コメント制度を導入するなど、住民参加への取り組みを積極的に推進してまいります。
 第2に、生活者の視点に立った県政の推進であります。
 県民満足度の向上を目指し、総合政策部門の整備、地方振興局の機能強化など、新しい総合計画を効果的に推進できるよう、部局の再編を初めとする全庁的な組織体制の整備に着手をしてまいります。
 また、さまざまな行政サービスについての県民満足度の測定手法を確立することにより、不断のサービス向上に努めてまいります。
 第3に、地域の視点に立った県政の推進であります。
 今後の地方分権推進一括法の成立や、いわて情報ハイウェイの構築など県と市町村をめぐる新たな時代の到来を踏まえ、市町村への権限委譲や補助金の総合交付金化など、市町村との間に適切な機能分担と支援協力関係に基づいた新しい体制づくりを進める一方、地方振興局への予算、人事等の権限委譲をさらに進めて、県行政の分社化を推進してまいります。また、社会情勢の変化を勘案しながら振興局相互の機能分担や所管区域についての検討を進めてまいります。
 第4に、機動性と柔軟性を重視した県政の推進であります。
 限られた資源を最大限有効に活用しながら社会経済情勢の変化に即応した行政運営を行うため、民間企業の経営管理の考え方も導入し、政策の効果の点検、改善を行う政策評価システムの確立や優先度に応じた事業の重点化を進めるとともに、組織のフラット化等により、時間的価値の重要性を強く意識したスピードのある行政運営を進めてまいります。
 さらに、職員一人一人が、県庁株式会社の一員として、常に県民の視点に立ってサービスの提供を行うよう職員の意識改革の徹底を図るとともに、地域経営を担うにふさわしいすぐれた創造性と経営感覚を有する職員を育成してまいります。そして、2001年度までの3年間に、これらの改革を集中的に実行し、生活者主権や地域主権の社会にふさわしい行政の体制づくりに全力を傾注してまいります。
 次に、今回提案いたしました補正予算におきましては、厳しい財政環境にありながらも、新しい総合計画の方向性を踏まえ、環境、ひと、情報の視点に立ち、地方振興局からの地域課題に対応した予算要求についても十分に意を配りつつ、限られた財源の効果的な活用を図りながら、事業の重点化などにより緊急度と優先度の高い施策を可能な限り計上したところであり、今後、その着実な執行に努めてまいります。
 なお、国、地方とも、行財政を取り巻く環境は、極めて厳しい状況にありますことから、行財政運営の徹底した簡素効率化などに努めるとともに、多様化かつ高度化する行政需要に積極的に対処してまいります。
 以下、新しい総合計画の中間報告において、岩手が目指す将来像として掲げた五つの社会ごとに平成11年度の主要な施策について申し上げます。
 第1に、自然と共生し、循環を基調とする社会の実現に向けた施策についてであります。
 まず、環境に優しい地域社会の実現に向けて、県みずからが率先し、ISO14001の認証取得に取り組むほか、地球温暖化防止実行計画を策定するとともに、国連大学等の関係機関との海洋環境に関する共同研究に着手をしてまいります。
 また、人と自然がともにある環境の保全に向けて、自然環境保全指針の活用を図るとともに、県版レッドデータブックを作成し、野生生物の保護対策の充実に努めてまいります。
 さらに、資源循環型社会を形成するため、廃棄物の適正処理や再生利用を促進するとともに、ダイオキシンや環境ホルモン等の化学物質による環境汚染対策に万全を期してまいります。
 また、県営施設への太陽光発電設備の先導的な設置や風力発電に向けた風況調査を進めるなど、新エネルギーの利活用の促進に努めるとともに、来年6月の世界地熱会議については、その成功に向け鋭意取り組んでまいります。
 なお、昨年の北東北知事サミットにおける合意事項に基づき、子ども環境サミットの開催や白神山地から奥羽山系に至る森林の連続性と生態系の保全を目的とした緑のグランドデザインの策定を進めてまいります。
 第2に、快適に安心して暮らせる社会の実現に向けた施策について申し上げます。
 まず、快適な暮らしの実現に向けて、省エネルギーやバリアフリーなど環境や人に優しい良質な住宅の供給や普及に努めるとともに、上下水道の整備をさらに促進してまいります。また、都市の慢性的な交通渋滞の解消を図るとともに、盛岡駅西口地区の県有地における複合施設の整備に向けて、県民意向の把握のための調査等に取り組んでまいります。
 次に、健やかで安心できる暮らしの実現に向けて、地域医療や高度救急医療支援の情報ネットワークづくりについての基本計画を策定するとともに、引き続き一戸・北陽病院や大迫病院を整備してまいります。
 また、市町村のボランティアセンターへの支援や結いの心を生かした福祉コミュニティーの形成を進め、高齢者や障害者などの日常生活への支援やひとにやさしいまちづくりを一層推進してまいります。
 さらに、高齢者の健康づくりや社会参加を促進する拠点を整備するとともに、介護保険制度が円滑に実施されるよう、介護支援専門員の養成や認定審査会委員等の研修など、その準備を遺漏なく進めてまいります。
 また、障害者の授産施設や作業所、グループホームなどを整備し、能力に応じた就労の促進に努めるなど、障害者が地域の中で自立して生活できる環境の整備を図ってまいります。
 次に、安全な暮らしの実現に向けて、盛岡東警察署の新築整備を図るとともに、昨年、浸水被害が多発した北上川流域の河川事業を推進するほか、岩手山の火山活動などに対応した防災体制の充実強化を図ってまいります。
 第3に、創造性あふれ、活力みなぎる産業が展開する社会の実現に向けた施策についてであります。
 まず、農業については、各地域で中心的役割を担う経営感覚にすぐれた農業者を育成するとともに、適地適作を基本とし、米、園芸、畜産を基幹とした産地形成を図ってまいります。また、低コスト生産を目指すための基盤づくりや環境に配慮した展開を図るとともに、マーケティング活動の強化や安全な食料の提供を図ってまいります。
 林業については、間伐の推進、林道網や木材高次加工施設の整備、県産材の需要拡大により、森林資源の循環的な育成・利用を推進するほか、シイタケ、木炭等の特用林産の振興や豊かな森林を支える林業の担い手の育成・確保に努めてまいります。
 水産業については、つくり育てる漁業を積極的に推進し、漁業に夢と意欲を持った担い手の育成や漁港、漁村の整備を進めるとともに、ハセップ方式の導入などによる新鮮で安全な水産物の流通体制の整備やその消費拡大を推進してまいります。
 地域産業の振興については、中心市街地の活性化に向けた商店街の整備やイベント等のソフト事業を支援するほか、21世紀のいわてブランドの確立や海外も視野に入れた県産品の販路拡大に取り組んでまいります。また、依然として厳しい経営環境にある中小企業については、金融対策の充実を図るほか、国際規格の認証取得やコンピューター西暦2000年問題への対応を支援してまいります。
 科学技術の振興については、先端科学技術研究センターにおける独創的な研究開発や米国ノースカロライナ州など海外との科学技術交流を推進するほか、本年10月には、第12回国際超電導シンポジウムを開催いたします。
 工業の振興については、産業支援機関のネットワーク化による総合的な支援体制を構築するほか、本県独自技術の確立に向けた研究開発や先進的マルチメディア・ソフトの開発などを進め、新産業の創出に努めるとともに、研究開発型企業や産業支援サービス業、基盤的技術産業の集積を図り、本県工業の高度化を推進してまいります。また、北東北の物流拠点として、花巻流通業務団地の整備を促進してまいります。
 観光の振興については、地域提案型の旅行企画を支援するとともに、地域の特性を生かした魅力ある観光地づくりを進めるほか、北東北三県によるグリーン・ツーリズムや外国人観光客の来訪などを促進してまいります。
 働く環境の整備とひとづくりについては、離職者の求職活動を支援するほか、産学官連携による人材育成などを促進してまいります。
 第4に、ネットワークが広がり、交流・連携が活発に行われる社会の実現に向けた施策について申し上げます。
 まず、内外に開かれた交流・連携ネットワークの形成に向けて、地域主体のいわて地元学の実践活動を促進するほか、広域連合の運営支援など、市町村が自主的に推進する広域行政を支援してまいります。また、アジアや南米を初め世界各国との多様な交流や研修生の受け入れの拡充を推進するほか、外国人が暮らしやすい環境の整備を進めてまいります。
 次に、交通ネットワークの形成に向けて、東北横断自動車道釜石秋田線の釜石-花巻間、三陸縦貫自動車道八戸・久慈自動車道や地域高規格道路等の整備を促進してまいります。また、花巻空港滑走路2、500メートル延長の早期完成に努めるほか、東北新幹線盛岡以北の建設を促進するとともに、盛岡・八戸間の並行在来線の沿線住民の利便性の確保に努めてまいります。
 また、情報ネットワークの構築に向けて、いわて情報ハイウェイの整備に向けた具体的な検討を進めるとともに、県民サービスの向上や行政事務の高度化を目的とした新しい行政情報システムの構築に着手するほか、携帯電話の利用可能エリアの拡大に努めてまいります。
 第5に、個性が生かされ、ともに歩む社会の実現に向けた施策についてであります。
 まず、学校教育については、幅広い経験やすぐれた知識・技術を持つ社会人を非常勤講師として招くとともに、情報教育や国際理解教育を推進してまいります。また、いじめや不登校などの問題については、指導・相談体制を充実し、関係機関や地域と一体となって取り組んでまいります。
 さらに、県立高校の新しい整備計画や入学者選抜のあり方、新しい教育課程で創設される総合的な学習の時間についての検討を進めてまいります。
 岩手県立大学においては、平成12年4月の大学院設置を目指すとともに、国内外の大学との遠隔授業の本格実施に向けたバーチャル・ユニバーシティ・プロジェクトを進めるなど、教育研究機能の一層の高度化を推進してまいります。生涯学習については、図書情報総合センターの整備に取り組んでまいります。
 さらに、文化の振興に向けて、いわて文化白書を作成し、文化活動の現状と、その振興方策を示すとともに、総合的な文化情報提供システムの検討や北東北三県の文化交流を推進してまいります。また、平成13年の開館に向け、県立美術館の整備を着実に推進してまいります。
 スポーツの振興については、この8月に本県で開催される全国高等学校総合体育大会の成功に向けて万全を期すとともに、スポーツ国際交流員の招致やスポーツ指導者の海外派遣を進めてまいります。
 さらに、男女共同参画の推進については、いわて男女共同参画プランを策定し、これに基づく諸施策を総合的に推進してまいります。
 なお、現下の厳しい経済状況への対応は、何よりも喫緊の課題でありますので、国の対策にも積極的かつ機動的に対処し、引き続き全力で取り組んでまいります。
 以上、今後における県政運営の基本方針と平成11年度の施策の概要について申し上げました。
 かつて、宮澤賢治は、当時の盛岡中学校校友会雑誌への寄稿を求められ、「生徒諸君に寄せる」と題した詩を残しておりますが、賢治はこの詩の中で、「諸君はこの時代に強ひられ率ゐられて 奴隷のやうに忍従することを欲するか むしろ諸君よ 更にあらたな正しい時代をつくれ 宙宇は絶えずわれらに依って変化する」と、このように呼びかけております。
 21世紀を目前にした時代の変革期にあって、私は、この言葉の意味を改めてかみしめるとき、これからの新しい岩手づくりに向け、何より重要なことは、県民一人一人が、21世紀の岩手の歴史は、みずからの手でつくり上げるという気概を持ち、行動することであるとの思いを強くいたします。
 21世紀の岩手の歴史、それは、一人一人の努力や地域の頑張りによってつくられる私たち自身の物語であります。ふるさと岩手に生まれ、育ったことへの誇りと自信を持ち、地域の願いやみずからの夢の実現に向け、世代をつなぎ、地域をつなぎながら、岩手・新時代に向けた力強い第一歩が求められていると、このように思います。
 私は、こうした私たちの県土を舞台にしたさまざまな取り組みを積極的に応援する夢をつくり、夢をつなぐ県政を進めながら、県民一人一人としっかりと手を携え、夢県土いわての創造に向け、全力を傾けてまいる決意であります。
 どうぞ、議員の皆様の一層の御理解、御協力と県民の皆様の新しい岩手づくりへの積極的な参加を心からお願い申し上げ、私の所信表明を終わります。(拍手)
   
日程第4 議案第1号平成11年度岩手県一般会計補正予算(第1号)から日程第27 報告第10号道路の管理に関する事故に係る損害賠償事件に関する専決処分の報告についてまで
〇議長(山内隆文君) 次に、日程第4、議案第1号から日程第27、報告第10号までを一括議題といたします。
 提出者の説明を求めます。武居総務部長。
   〔総務部長武居丈二君登壇〕
〇総務部長(武居丈二君) 本日提案いたしました各案件について御説明いたします。
 議案第1号は、平成11年度岩手県一般会計補正予算であります。
 予算編成の基本となる本年度の主要な施策につきましては、ただいま知事から申し上げたとおりであります。
 本年度におきましては、統一地方選挙が予定されていたため、当初予算は骨格的予算として編成したところであり、今回の補正は、新しい総合計画の方向性等を踏まえ、新規または政策的な事業について計上するとともに、国庫支出金の確定に伴う事業費の変更等、事業執行上、今回計上を要するものについて、総額200億600余万円を補正しようとするものであります。
 補正の主なものは、地区合同庁舎建設事業費7億5、600余万円、農業大学校施設整備費7億4、600余万円、ほ場整備事業費6億1、900余万円、ふるさと農道緊急整備事業費5億1、900余万円、中心市街地活性化推進事業費8億200余万円、地域産業活性化企業設備貸与資金貸付金9億円、凍雪害対策事業費9億6、600万円、緊急地方道路整備事業費7億9、700万円、産業教育施設建設事業費6億800余万円等であります。
 財源の主なものは、地方交付税48億5、800余万円、国庫支出金69億2、700余万円、特別会計からの繰入金10億8、900万円、県債51億2、800万円等であります。
 なお、債務負担行為の補正は、環境保健センター(仮称)整備事業ほか3件を新たに追加しようとするものであります。
 また、地方債の補正は、環境保健センター整備事業ほか3件を追加し、家畜保健衛生所施設整備ほか18件の起債の限度額を変更しようとするものであります。
 議案第2号は、平成11年度岩手県港湾整備事業特別会計補正予算でありますが、これは、事業計画の変更に基づいて所要額を補正しようとするものであります。
 議案第3号から議案第7号までの5件は、予算の補正に伴う建設事業に要する経費の一部負担及び一部負担の変更に関し議決を求めようとするものであります。
 議案第8号は、岩手県介護保険審査会の公益を代表する委員の定数に関する条例でありますが、これは、介護保険法第185条第1項の規定により、岩手県介護保険審査会の公益を代表する委員の定数を定めようとするものであります。
 議案第9号は、学校医、学校歯科医及び学校薬剤師の公務災害補償に関する条例の一部を改正する条例でありますが、これは、公立学校の学校医、学校歯科医及び学校薬剤師の公務災害補償の基準を定める政令の一部改正に伴い、介護補償の額を引き上げようとするものであります。
 議案第10号は、古物営業許可等手数料条例の一部を改正する条例でありますが、これは、古物営業法施行令の一部改正に伴い、古物営業の許可等の手数料の額を増額しようとするものであります。
 議案第11号は、高等学校定時制課程及び通信制課程修学資金貸付条例の一部を改正する条例でありますが、これは、高等学校定時制課程及び通信制課程修学資金の貸付対象者の範囲を拡大するとともに、あわせて所要の整備をしようとするものであります。
 議案第12号及び議案第13号は、財産の譲渡及び処分に関し議決を求めようとするものであります。
 議案第14号は、公平委員会の事務の受託の協議に関し議決を求めることについてでありますが、これは、規約を定めて公平委員会の事務を一関地方広域連合から受託しようとするものであります。
 次に、報告第1号から報告第5号までは、平成10年度一般会計及び特別会計の繰越明許費の繰り越し及び事故繰り越しについて報告するものであります。
 報告第6号から報告第8号までは、公営企業会計予算に係る支出予算及び継続費の繰越額の使用計画について報告するものであります。
 報告第9号は、職員による自動車事故に係る損害賠償事件に関する専決処分について報告するものであります。
 報告第10号は、道路の管理に関する事故に係る損害賠償事件に関する専決処分について報告するものであります。
 以上のとおりでありますので、よろしく御審議の上、原案に御賛成くださるようお願いいたします。
   
〇議長(山内隆文君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後1時50分 散 会

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