平成12年6月定例会 第6回岩手県議会定例会会議録

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〇9番(川村農夫君) 自由党の川村農夫でございます。
 本定例会におきまして、一般質問の機会をいただきましたことに感謝申し上げ、通告に従いまして質問させていただきます。
 まず、岩手県広域行政推進指針についてお伺いします。
 去る5月22日に公表された広域行政推進指針は、市町村や地域住民が自主的に判断するための資料提供、広域行政推進に向けた機運の醸成、新たなまちづくりへの契機、さまざまな広域連携の可能性の提示という目的と性格を有するものとして示されました。合併の一般的な効果、行財政上の具体の効果、合併による経費の節減効果、合併の課題または懸念される事項、現状の行政サービスの状況など資料編も含めて、目的にかなったものと評価するものであります。
 その中で、住民が懸念する事項の一つとして、合併して中心部だけがよくなり、周辺の地域は取り残されるのではないかとの意見があると書かれておりますが、実際にそのような住民の声を地域で多く聞きます。広域的な合併によるくくりは、合併後の自治体があたかも同心円のように、波紋が広がる形のように中心部から整備が進められていく印象を与え、外周地域にはいつまでたっても何も来ないかのように住民に思われがちです。
 例えば、盛岡広域圏と岩手中部広域圏の境目に位置する紫波、石鳥谷はどうなるのか。私は、広域圏と隣接広域圏の外周の接点に当たるような地域は、合併後の自治体で何を担えばよいのか、どう変わっていくのか、その方向が見えてこないと住民の意識は全体として合併の機運に向かわないのではないかと考えるものであります。広域圏と広域圏の接点に当たる地域が、今の町村の壁を越えて地域交流や意識交流を図り、この地域が合併後も着実に発展していく方向を明確に示すことが必要であると思うのでありますが、知事の御見解をお伺いいたします。
 次に、福祉行政についてお伺いします。
 介護保険の実施から3カ月が経過しましたが、るる先輩議員から質問がありましたので、重複は避け、私からは福祉施設関係について1点お聞きしたいと思います。
 最近、福祉施設の建設に当たって、ある施設の理事長さんからこんなお話をお聞きしました。それは、入所者がゆったりと生活ができるような施設を目指して建設計画の策定や設計を行っても、国の基準が1ランク低くなっているので、そのとおり建設できない。廊下も、車いすがゆとりを持ってすれ違えるように入所者の利便を思い希望の幅にして建設したところ補助対象外となり、自己資金が予定を大幅にオーバーして大変苦労したとの内容でした。国の財政上の問題もあって補助基準の改善が容易ではない事情も理解できないわけではありませんが、経営者の皆さんの御苦労がしのばれ、強く印象に残りました。
 そこで、県としては、心身障害児施設や特別養護老人ホームなどの福祉施設等の需要や実態から見て、国の補助基準の実情をどのように評価されているのかお尋ねいたします。
 次に、農業問題について4点お伺いします。
 第1点は、土地改良区の運営基盤の強化方策についてであります。
 本年の稲作は、春先に不順な天候が続き心配されておりましたが、田植え後は晴天に恵まれ、順調なスタートと感じております。青々とした早苗のそろった水田と網の目のように張りめぐらされた水路を見るとき、長い間の農民や土地改良区の方々によるたゆまぬ御努力と御苦労に改めて思いをいたさざるを得ません。しかし、近年は、農村の混住化が進むにつれ、集落での施設の管理力が減退していることに加えて、農業用水路に流入する生活雑排水等の増加やごみの不法投棄なども目立ち、水質の悪化が急速に進んでおります。また、農作業の軽減のために施設自体も高度化し、これらの維持管理に大変苦慮しております。
 私は、地域のすべての農民が参加し、水利用の秩序を形成してきた土地改良区は、世界でも冠たる公共性のある農村の地域共同体であると考えております。こうした土地改良区が、農産物価格の低迷や転作の強化、農地の転用などにより財政基盤が悪化の一途をたどり、運営基盤が弱まっていることを心から危惧するものであります。今、田園の豊かな自然環境の確保や美しい農村景観の維持、保全の重要性が一層高まっている中にあって、これを担う土地改良区の組織体制の充実と運営基盤の強化が重要と思うのですが、当局の御所見をお伺いいたします。
 第2点は、農業農村整備事業の推進についてお伺いします。
 最近の河川工事では、地域の声をできるだけ取り入れようと努力されていることが強く感じられ、住民の評価も高まっているところであります。河川工事では河川断面の大規模化が常でありますが、例えば、橋の上から消防ポンプの吸管が水面に届かないという苦い経験を踏まえ、消防車が低水敷までおりられる坂を設置するなど地域事情が配慮され、ふるさとの水辺が身近に戻ったように感じるという声もあります。
 一方、農業基盤整備事業を見ると、農業者の意見を広く取り入れて推進されてはいるものの、例えば、私の住む農村地帯で火災が発生したのを契機に消防水利マップを作成したところ、消火栓、防火水槽にしか頼れない実態が浮き彫りになりました。パイプライン化と用排分離により昔からの小川や水路のほとんどが水なし川となり、しかも、非かんがい期には一滴の水もないのであります。消火栓や防火水槽の設置は、コミュニティー単位で3年に1カ所程度しか増設されない現状を思うと、集落の不安はどう解決していけばよいのでしょうか。ふるさとの水辺は、かんがい期のみならず、春も秋も常に潤っていてほしいものです。
 農村は、若者が、あるいはそこに生まれ育った者にとって本当にふるさととして帰りたいところとなっているのか、いま一度見詰め直す時代が来ているのではないでしょうか。このようなふるさとの創造に極めて重要な役割を果たし、また、期待も大きい農業農村整備事業においては、農村の若者を含む住民の農村への関心を高め、農村への愛着を真に高めるプロセスを大切にし、農村地域を丸ごと住民とともにつくり上げていく、そんな取り組みを行っていただきたいと思うのでありますが、御所見をお伺いいたします。
 第3点は、農産物の販売対策についてお伺いします。
 国は、食料・農業・農村基本法において、国民への食料の安定供給を基本理念に据え、国内農業生産の増大と食料自給率の向上を目標に掲げたところであり、この方向づけは、農業を基幹産業とする本県にとっては大きな追い風であります。幸い本県は、広大な農地や多彩な気象条件を背景に、農業者の方々の御努力により全国有数の農業生産県に成長し、今後、まさに我が国の食料自給率向上の一翼を担って大いなる発展が期待されます。その意味で、本県の総合食料供給基地宣言はまことに時宜を得て心強い限りでありますが、現実の農産物流通を見ると、国内外の産地との競合が一層厳しさを増しており、先行きにいささか不安を持つものであります。
 このような中で、本県が優位に立ち、売れる農産物の生産拡大を図りながら有利販売を展開していくためには、さまざまな積極的対策が求められます。それらの対策があって初めて産地体制の強化や本県農産物の評価の向上、販路の拡大が図られ、農家の方々の所得向上が実現するのではないでしょうか。加えて、今後は、農業者がこれまで以上に消費者の視点に立って、より消費者に喜んでもらえるような農産物の生産に一層意欲を持って取り組むことがより大切であると考えますし、販路、流通についても、農協系統との連携はもとより、他方では、多彩なチャンネルの調査、検討もこれまで以上に必要になっていくのではないでしょうか。
 そこで、知事は、この熾烈な競争時代における本県農産物の販売対策をどのように展開しようとしておられるのかお尋ねします。
 第4点は、農業後継者の育成であります。
 農業高校で学んでも、卒業後は両親が若いうちは会社勤めをしてというパターンから、若者が後を継がない現状にあります。私は、これを打破するためには、例えば高校卒業後の3年間を、将来、専業農家を目指す者に限って初任公務員並みの手当を支払い、専業農家で働きながら学ばせるなど、自立できる農業者としての経験と研究を積ませ、経営の核心を体得させるようなことが必要だと考えております。環境、ひと、情報、日本の食料基地、夢県土いわて、その実現はすべて人にかかっています。新しい岩手の農業者を育てるために、農業高校卒業者を農業経営に自信を持った若者に育て、自立させるような対策に具体的に取り組んでみるお考えはないでしょうか、当局の御所見をお伺いいたします。
 次に、林業振興について2点お伺いいたします。
 第1点は、県産材利用の基本的考え方についてであります。
 森林には、国土保全や水資源の涵養などの多様な機能を幾重にも発揮できるすぐれた特性があるほか、木材は、住宅や家具等に利用することで炭素を長期間固定することができ、地球の温暖化防止にも寄与するとされております。このような木材の特性にもっと目を向け、木材の利用促進や木材産業の振興を一層図るべきと思うのであります。
 しかし、現実の県内の木材需要は、新設住宅着工戸数を見ても、最近は1万数千戸程度と低い水準にあります。県においては、平成10年度に岩手県木材利用推進方針を策定し、公共施設の木造化等に取り組み、一定の成果を上げているとは思いますが、さらなる取り組みが望まれてなりません。
 本県の森林資源は、21世紀には人工林の成熟により順次収穫期を迎えます。森林が環境保全対策上重要な機能を期待されていることは重々承知しております。しかし、幾世代にもわたって県民の地道な努力によって営々として県土に蓄積されてきた森林資源を県産材として有効に利用することは極めて重要と思うのでありますが、知事の御見解をお伺いします。
 第2に、県産材の利用実態についてお伺いします。
 本県では、県内各地で森林組合が広大な森林を活用し、良質木材の生産と公益的機能の高い森林を育成するために伐採跡地の更新を積極的に進めるとともに、下刈り、間伐、天然林改良など森林整備に努力されており、その御努力に敬意を表するものであります。
   〔副議長退席、議長着席〕
 また、林業水産部におかれては、県産材のネームプレートを着用するなどそのPRに努めておりますが、さらに広く普及を図ってほしいものであります。加えて、公共土木工事等においても県産間伐材の利用拡大が図られ、自然生態系に優しい、人が親しみを持てる川を取り戻すために、県内各地で間伐材を活用した工法を取り入れていることは、環境首都の取り組みとも相まって、先進的な取り組みとして評価するものであります。
 その中で1点、県内の間伐材を活用した木工沈床の工法を実施した際の例を取り上げたいと思います。県内森林組合の間伐材カラマツの穴あけ加工、皮むき等の見積価格が県外の加工物より割高となっているため、宮城県や秋田県で加工したものを利用している現状があります。農林水産省などのデータでは、県産材単価そのものは東北各県と比べて低いようでありますが、森林組合に加工施設がないためか、あるいはほかの事情があるのか、結果として他県よりコスト高になっていることは確かであります。このことについて現状をどのように把握され、対策をどう考えているのか、当局の御所見をお伺いします。
 次に、教育問題について2点お尋ねいたします。
 第1点は、社会や職場の中における教育のあり方についてであります。
 教育の結果としてあらわれてきたものなのか、最近の若者の凶悪な犯罪の多いことに、私も同年代の息子、娘を持つ親として、かつての子育てのころの日々を振り返りながら、大いに関心を寄せております。
 私は、25年間サラリーマン生活を送ってきましたが、10年ほど前から職場の態勢や空気が変わってきたように感じました。バブルの好調期であったからか、あるいは電算機器の導入が進んだためか、仕事を通じての職場での会話が減少してきていると感じました。入社当初は上司や先輩から教えられなければ仕事をこなしていけなかった私たちの時代とは異なって、現在は大抵の計算や検討課題はパソコンでパターン化しており、そのプロセスや背景にあるものがわからなくてもある程度の成果品は打ち出されてくる。それに伴い機械に向かう時間のみがふえ、職場での会話が希薄になる傾向が顕著になってきたと思ったのでありました。上司と接することも少なく、反面、後輩を指導することもない。したがって、人に仕えることもなければ人を動かすこともない。個々人が自分らしさを持って仲間や友人と過ごす時間も少ないことに気づきました。1日のうち通勤と職場に多くの時間を費やし、寝顔だけの子供に触れ、現実の息子や娘が何を考え、どんな悩みを持って学校に行っているかさえ知るよしもないのです。こうした職場には、昼の会話にも家族の顔は見えてきません。
 私は、職場に活気と快活な話題を呼び戻そうと、職場に趣味やスポーツのクラブをつくることを提言し、各人の経験を生かして多くのクラブの結成に取り組みました。その結果、職場での話題が豊富になり、世代を越えて活気が出て、慢性的な残業の生活からめり張りのある生活へのリズムが徐々に生まれ、交流試合や遠征などにも家族連れが目立つようになり、家族丸ごとの交流に発展してまいりました。クラブの活動は、さらに親子でのボランティア活動にもつながったのですが、このような中で、親の話題も子供の教育や性格、暮らし方などにも発展しました。一方で、子供たちも、自分の親とよその親の違いや職場での親の姿を意識の中に明確に刻み込んでいったのではないかと確信した次第であります。
 そこで教育長にお尋ねしますが、今の親の多くは子供ばかりに目を向ける反面、現実の親の姿やみずからの生き方を子供に見せるなど、いわば親子そろっての社会参加の中で子供を育てるという視点が欠けているのではないかと思うのですが、お考えをお伺いします。
 また、社会の中での教育といえば、社会教育、地域の教育力でと言われて久しいのですが、生涯学習社会にある今日、子供のみならず、社会人としての若者や親も職場や社会の中で学んでいくという姿勢が重要であると思われます。この視点をより重視し、明確にこれからの社会教育に盛り込んでいく必要があると考えますが、御所見をお伺いします。合田教育長は、昨年度は企業内教育を行う責任者も務められ、現在は、学校教育、社会教育の責任者であるわけでありますが、人間を複眼的な視点で見て取り組みを行っていただきたいと思い、御所見を伺った次第であります。
 第2点は、子供の教育に自然体験や生活体験を取り入れることの意義についてであります。
 このことについては、その重要性がいろいろな機会に言われておりますが、今年度からは農政部が提案しました一学校一農園事業がスタートし、16カ所で実施されると聞いております。また、教育委員会では、豊かな心をはぐくむ教育推進事業をスタートさせており、今年度もこれを活用し、体験農園に取り組む小・中学校があるようであります。さらには、岩手県農業担い手育成基金も農業担い手確保の一環として世代間交流事業を実施し、今年度は46校で農業体験学習に取り組むようであります。この事業は、JA青年部が主体となって実施しているものや、PTAにその主体を移行し、活動を継続しているところもあります。
 このようにさまざまに取り組みがなされておりますが、これらの体験教育は文部省でも推奨しており、市町村の教育関係者からは積極的に進めたいとの声が聞かれます。しかしながら、農地の確保や栽培管理の分までは手が届かないのも実情で、課題も多々あるように思います。
 そこでお伺いしますが、学校農園のような自然体験や生活体験学習の意義について、教育長はどのように認識され、どのように進めようとされているのかお考えをお伺いします。
 また、今年度から始まる一学校一農園事業は、農政部と教育委員会の連携のもとに自然体験等の学習を進めるという新しい試みであると評価し、その成果に期待するものでありますが、教育長としては、農政部とどのように連携しながら事業の実効性を図っていくお考えなのかお尋ねいたします。
 次に、岩手県PTA連合会の法人化について申し述べます。
 岩手県PTA連合会は、小・中学校におけるPTA活動を通じて社会教育や家庭教育の充実に努めるため、各種の研究大会や研修会の開催などの事業を積極的に展開しております。また、本年4月には岩手県PTA学校安全互助会を統合し、財政基盤の確立と事業の一層の充実を図ったところであり、この8月には設立50周年を迎えることになりました。これを契機に責任体制の明確化を図るなど、より強固な組織を確立し、一層地域社会に貢献できる事業の展開を図るため、社団法人岩手県PTA連合会として法人化の準備が進められているところであります。この間の県教育委員会の特段の御指導に対し、関係者として敬意を表しますとともに、今後一層の御指導、御助言を賜りますよう、最後にお願い申し上げる次第であります。
 以上で私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 川村農夫議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、岩手県広域行政推進指針についてのお尋ねでございますが、市町村の広域的な連携につきましては、昭和40年代に設定されました広域市町村圏、これを基礎的な単位にするわけでございますが、この広域市町村圏と、それから一部事務組合制度、これを組み合わせまして、こうしたものを活用して、これまでも一部の市町村の間では圏域を越えて水道やごみ、し尿などの広域的な処理が行われていると、こういう県内の状況でございました。圏域の中心か否かにかかわりなく、一定の行政水準の確保が図られているところでございます。
 また、本年4月から実施されました介護保険の施行を契機として、平成11年3月に一関地方広域連合というものが設立されました。一部事務組合からさらに広域連合という地方自治法上の新たな制度ができたわけで、これを使って介護保険事務を処理しようということでございまして、こうした市町村の自主的な取り組みによりまして、また、新たな別の広域連携というものが展開をされているということが現状でございます。
 今後、市町村が多様化、高度化する住民ニーズに的確に対応していくためには、情報ネットワークの活用などによって、それから、あとあわせまして、当然、道路などのインフラの整備ということが必要になってくると思いますが、こうしたことによって、時間・距離を克服しながら、関係市町村が連携して地域の行政体制の整備を図っていく必要があるものと考えております。
 こうしたことから、県では、市町村合併を含む広域行政の方向性について幅広く市町村や地域住民の間で議論が行われる際のたたき台として、先般、先ほど議員からお話がございました指針を策定し公表したところでございますが、これを契機として、圏域が隣接している地域のあり方をも、これをも含めて、地域の将来についての議論がそれぞれのところで深められますとともに、広域行政を進める上での具体的な課題とその対応ということがその中で出てくるわけでありますので、それについてさらに活発に論議されることを期待しているわけでございます。また、そうしたことを経て市町村合併が具体化すると、合併協議会などの設立の方向の兆しが見えてきたような場合には、関係市町村がそれぞれの地域の特性を生かしたまちづくりを進めていくために、その後、合併後のまちづくりのマスタープランとなる市町村の建設計画というものの策定に移っていくわけですが、そうした作成を通じまして、県でも新たなまちづくりを支援する県事業、これいろいろ考えられるわけでございますが、そうしたまちづくりを支援する県事業を導入するなどして、地域全体としての均衡ある発展が図られるように積極的に対応していく考えでございます。
 次に、県産農産物の販売対策についてでございますが、農産物需給が全体としては緩和傾向にございまして、国内外の産地間競争が非常に激化をしているという状況でございます。その中で、本県の県産農産物の有利販売を促進していくためには、まず消費者の考え方、消費者は今、安全、安心そして新鮮なものを志向しているという、そうした消費者の考え方をつかむということ、そうした消費者の食料消費の質的な──量的ではなくて質的な変化というものをよくつかむということ。それから、市場の今の取引が、相対取引が非常に大きくなってきているというそのこと、それから、市場を通さずに市場外流通の拡大といったようなこともふえてきておりまして、やはり農産物流通が非常に多様化しているという現状がございます。こうしたことに、それぞれ一つ一つに的確に対応していくということが重要でございます。
 こうしたことから、本県ではまずそうした消費者ニーズに対応していくために、一方で本県の状況は広大な農地や多彩な気象条件など、他県よりも比較してすぐれた生産環境や県産農産物の食味の優位性、そして安全性の高さというものがございますので、こうしたものをわかりやすく数値化、指標化したいわて農業純情度というものをつくりました。これを前面に打ち出して、いわて純情ブランドというものによります販売促進を今、図っているところでございます。
 こうしたことが昨年とられておりましたことでございますが、これに加えまして県産農産物の評価向上を図るために、本年度から大消費地でございます首都圏を中心にして、量販店に県産野菜を継続的に販売するサラダ特約店というものを設置いたします。京浜地区に19店舗を量販店に契約して、サラダということでございまして、1品目ではなくて野菜、さまざまな野菜の組み合わせでそれをそちらの方に送り込んで、そして大きな看板もつくりまして、消費者にそうしたものをお求めいただくということ、このサラダ特約店というものを設置したり、県産農産物への意見、提言を寄せていただくいわて純情ファンクラブというもの、これを設立をして、その人たちにも県産農産物の情報をさまざま提供する、逆にまたいいところ、悪いところ、本県の農産物への御意見、提言を寄せていただくと、ダイレクトにそれをすると。そして、それをまた生産者の方に戻して、それを踏まえた農産物づくりに励んでいただくと、こうした本県の産地と消費者の顔が見える関係というのを新たにまた構築をしていきたいと、このように考えております。
 さらに、市場流通の対応についてでございますが、この部分が非常に変革が激しいわけですけれども、流通情報を活用した効率的な配送や予冷施設の整備など、品質管理のための施設整備を促進するとともに、近年活発化してきております産直、それから宅配などのネットワーク化や食品産業との連携強化など、できるだけ少量にもこたえられるようなきめ細かな販売活動を促進することによりまして、新たな流通チャンネルの開拓にも努めていきたいと考えております。
 こうした中で、私も農業者の皆さん方と一緒に首都圏の市場関係者や消費者に直接PRする機会というものを今後設けるように計画してございまして、来月にも何カ所か計画してございます。それから9月、それから10月と、できるだけ毎月首都圏の方に足を運んで、向こうの消費者の皆さんに直接本県の生産物をPRする機会というものを設けて、そして大いに県産農産物の有利販売につなげていきたいと、こんなふうに考えているところでございまして、これからもこうした生産、食料供給基地としてつくるというところだけでなくて、流通販売にも積極的に取り組んでいきたいと、こういうふうに考えております。
 次に、県産材利用の基本的な考え方についてでございますが、地域の森林資源を適切に利用するということは、林業・木材産業の活性化を促すわけでございまして、山村の振興さらには資源循環型地域社会の構築というところまでにもつながる意義を持っていると考えておりまして、また、健全で活力のある森林の整備とともに、公益的機能、この森林の持っております公益的機能の高度発揮にも寄与するものと、このように考えております。
 特にも、岩手県下を見渡しますと、先人の方々の努力によりまして、杉、アカマツ、カラマツなど、多様な森林資源が育成、利用されてきてございまして、これら県産材の付加価値を高めるために、これまでにも木材加工体制の整備というものを鋭意進めてきたわけでございますし、総合的な木材の需要拡大対策にも取り組んできたところでございまして、お話しにございましたように、公共施設の木造化や公共土木事業の資材などにおける利用という面で年々着実にその成果があらわれてきたと、このように考えております。また、今年度から新たに緊急間伐5カ年対策ということで、間伐の量をかなり多くするということでございますので、こうしたことから、間伐材の供給の増大が当然見込まれるわけでございます。こうしたものを利用するということが必要となってきますので、さらに一層の木材の需要拡大を図ることが必要となってまいります。
 先般、県内の全市町村を対象に木材利用・間伐推進キャラバンというものを実施して、そうしたことについての御理解を関係者の方々にいただくべく努力したところでございますが、やはり今後とも集成材など木材の高次加工施設の整備、これは県内にも大断面の集成材がつくれるような、そういう加工施設などの整備が進んできていますが、その中でさらに建具だとか家のはりなどにも使えるような、そういったものの施設の整備をまた本年度もさらに進めていく、そして間伐材のそこの利用を促すといったようなことを進めてまいりますし、また、モデル木造施設事例集というものをつくって、それによってこういうところに木造のものを使えるということを多く見せるということで、木材利用の普及啓発をさらに行っていきたいと、そして加工度の高い県産木材製品の需要の拡大につなげていきまして、貴重な森林資源の有効利用を促進していきたいと、このように考えているところでございます。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁をさせますので、御了承をお願いします。
   〔保健福祉部長関山昌人君登壇〕
〇保健福祉部長(関山昌人君) 福祉施設の整備の国庫補助基準についてでありますが、社会福祉施設の整備につきましては、障害者や高齢者など、それぞれの施設の種類に応じて必要とされる建物の構造や1人当たりの居室面積、各種設備、廊下幅等、具体的な整備基準が法令によって定められており、この基準を満たすことによって国庫補助の対象となるものであります。この国庫補助基準については、特別養護老人ホームや身体障害者養護施設における個室整備や、児童養護施設における不登校児童等治療室の整備のための面積加算措置など、福祉施設の運営実態や利用者ニーズに応じた改善が図られてきているところでありますが、県内の心身障害児・者施設や特別養護老人ホームなどの社会福祉施設の整備状況を見ますと、その大部分が国庫補助基準を上回る内容で整備されているのが実情であります。このため、県におきましては、社会福祉法人等が社会福祉施設を国庫補助基準を上回って整備する場合に、必要に応じて、その上回る部分の一部について県単独の補助を行うとともに、全国知事会などを通じて、社会福祉施設の整備について的確な財政措置を講じるよう、国に要望しているところであります。
   〔農政部長佐藤克郎君登壇〕
〇農政部長(佐藤克郎君) まず、土地改良区の運営基盤の強化についてでありますが、農業用水利施設は農業生産を支える基本的施設であると同時に、また、生活用水や親水空間など、地域用水としての機能や水資源の涵養、そして集落内の排水や洪水防止など、多面的機能を有しております。土地改良区におきましては、これらの農業用水利施設の適正な維持管理を通じた農村の環境や景観の保全など、新たな役割が期待されているところであります。一方、厳しい農業情勢のもとで、土地改良区の運営基盤が脆弱化しつつあるというふうに認識をいたしているわけでございます。
 県といたしましては、農業用水利施設の定期的な整備・補修や農業用ダム、頭首工、そしてポンプなどの管理に対する補助事業の活用により維持管理費の軽減を図るとともに、地域住民活動と一体となった土地改良施設の保全活動についても支援しておるわけでございますが、こうした取り組みとあわせて土地改良区の組織体制の整備と運営基盤の強化を図るため、ことし3月に策定いたしました土地改良区統合整備基本計画に基づきまして、同一水系や同一行政区域での合併を一層促進するとともに、適切な水管理技術や水利施設の操作あるいは管理技術の向上に向けました研修指導を充実してまいりたいというふうに考えております。
 次に、農業農村整備事業についてでありますが、圃場整備やかんがい排水などの事業の推進に当たりましては、従来から関係農家の合意をもとに進めてきたところでありますが、今日、農村の混住化が進む中で、関係農家にとどまらず、広く地域住民が主体的に参加して、完成後の施設の管理体制でありますとか費用負担のあり方にも配慮しつつ、事業の計画立案に取り組んでいくことが重要になっていると考えております。このため、豊かな自然と伝統文化にはぐくまれた農村地域全体を田園空間ととらえ、地域住民の話し合いによって先人の築いた石積水路、由緒あるため池などの伝統的農業施設や道祖神、一里塚など、地域に残された史跡の復元、活用を進める田園空間整備事業など、地域住民参加型の事業をモデル的に実施をしているところでございます。
 今後におきましては、ふるさとの水と土保全活動でありますとか、地域用水機能増進事業などの取り組みにより、農村の自然や水辺への触れ合いを促進し、施設愛護の機運を醸成しながら、広く地域住民のアイデアなどを積極的に取り入れた事業を推進してまいりたいと考えております。
 次に、農業後継者の育成についてでありますが、青年等新規就農者は、近年、年間70名前後で推移し、そのうち農業高校卒業者等の新規学卒者は30名程度となっております。もとより、活力ある農業・農村を構築していくためには、意欲ある若い担い手確保が何よりも重要でありますので、平成10年3月、岩手県農業担い手育成中長期ビジョンを策定し、その担い手確保について、目下、鋭意取り組んでいるところでございます。
 御指摘もございましたように、就農に意欲ある農業高校卒業者等の後継者につきましては、実践的研修の積み重ねにより、技術力と経営力を身につけさせることが何よりも重要であると考えております。このため、県におきましては、農業大学校等の施設における教育を初めといたしまして、指導農業士や農業生産法人等の協力を得た研修、あるいは国内外での先進地研修などが受けられるよう、農業改良普及センターが相談窓口となり、将来の営農希望に沿った研修情報の提供や、あるいはまた相手先の紹介などを行っているところでございます。あわせて、これらの就学や研修に必要な資金の無利子融資を行うとともに、償還免除する県独自の措置も講じながら、後継者の研修支援に努めているところであります。
 今後におきましても、市町村や農業団体、農業担い手育成基金等と連携を密にしながら、次代を担う若者が自信と気概を持って就農できるよう、後継者育成に取り組んでまいりたいと考えております。
   〔林業水産部長本山芳裕君登壇〕
〇林業水産部長(本山芳裕君) 土木用材としての県産材の利用についてでありますが、土木用木材の価格は工事内容により、多様な寸法規格や加工度の異なる部材が要求されることなどのため、例えば財団法人建設物価調査会発行の建設物価によりますと、コンクリート2次製品などに比べ、汎用性のあるくい丸太など、限られた製品についてのみ単価が定められております。また、土木工事においては、低コスト化や経費の節減が要請されていることから、資材の調達に当たっては安価なものが広域的に調達されている場合のあることが想定されます。
 このような中で、議員御指摘のとおり、本県の杉の原木価格につきましては、農林水産省統計情報部の資料によりますと、東北の他県に比べやや安い状況にあるものの、加工木材につきましては、岩手県森林組合連合会の情報によりますと加工体制が未整備であるなどのため価格が高く、競争力の弱いものが一部に見られております。このことから、加工度の高い土木用資材を低コストで安定的に供給し得るよう体制整備を推進するため、今年度から林業構造改善事業により、原木を一定の寸法の円柱に加工する丸棒加工機や、同時に複数のボルト用の穴あけができる多軸用ボール盤などの導入を図ることといたしております。さらに、このような加工体制の整備とあわせまして、県関係部局、地方振興局、林業関係団体、建設業団体を構成員としております県産材中小径材利用推進ネットワークの機能強化を図るなど、今後とも、県産間伐材などの利用推進に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
   〔教育長合田武君登壇〕
○教育長(合田武君) まず、親子共同の社会参加による子育てについてでありますが、近年、都市化や核家族化、少子化などの進行に伴い、子供たちが育った環境は大きく変化し、家庭や地域の教育力の低下が指摘されております。こうした中で、子供たちの社会性や豊かな心をはぐくむためには、議員御指摘のとおり、家庭や学校、地域社会においてさまざまな活動を通し、人と人との触れ合いを体験させることが重要であり、それを支えていくことが、親を初め大人の責任であると認識しております。このような認識のもと、県教育委員会といたしましては、たくましく心豊かな子供の成長を願い、親や大人がそれぞれの立場から手を携え、ともに学び、ともに歩む活動として教育振興運動を推進しているほか、地域で子供を育てる環境づくりを進める全国子供プラン関連事業を県内各地で展開しながら、子供ともども、大人がともに活動するさまざまな機会を提供しているところであります。さらに、県内の各青少年の家において、親子の共同体験交流事業を実施し、家族が一緒に活動し、感動体験を共有するとともに、他の家族との交流を図るなど、親子の体験活動の拡充に努めております。
 今後とも、子供の心を豊かにはぐくむために、親や大人が、子供たちとともに家庭や地域社会においてさまざまな活動が体験できるような機会の提供に、なお一層努めてまいりたいと考えております。
 また、職場や社会における学習についてでありますが、生涯学習社会である今日、多くの若者や親たちが学習の機会を職場を含めたさまざまな場に求め、みずから学び実践することは、子供の成長や地域の教育力を高めるのみならず、地域づくりにも結びつくものであり、極めて重要なことであります。このような観点に立って、県教育委員会といたしましては、各市町村や高等教育機関等と連携しながら、大学開放講座等多様な学習機会を提供するとともに、来年度には約1万9、000件の学習情報を提供できるインターネットホームページを開設し、県民一人一人に行き渡る情報提供に努めることとしております。
 また、市町村におきましても、職場に出向いて子育て等に関する学習機会を提供するいわゆる出前講座を実施するとともに、職業を持った方々を対象とした各種講座の実施に当たっては、土曜日あるいは夜間の開催に配慮するなど、だれでもが学習できる環境整備に取り組んでいるところであります。
 今後とも、関係部局や市町村、さらには高等教育機関、企業等との密接な連携を図りながら、若者や親の学習活動を支援してまいりたいと考えております。
 次に、子供の教育に自然体験や生活体験を取り入れることの意義についてでありますが、児童生徒の体験的な学習や問題解決的な学習は、みずから学びみずから考える力、すなわち生きていく力をはぐくむものであり、特に学校教育において農作物の栽培などの自然体験や生活体験学習を行うことは、生命を尊重する心、他者への思いやりなどの豊かな人間性をはぐくむ上で、極めて重要であると認識しております。このことから、小中学校においては、豊かな心をはぐくむ教育推進事業を、高等学校においては、魅力ある学校づくり推進事業を活用し農業・林業体験学習等を行っており、今後さらに特別活動や教育課程に新設された総合的な学習時間により、自然体験、ボランティア体験等の学習の充実を図ってまいりたいと考えております。
 また、一学校一農園事業は、子供たちの豊かな人間性をはぐくむとともに、食文化や農業への理解を深めることを目的として、学校、教育事務所、農業改良普及センターの3者の連携により今年度から既に実施しているところであります。現在、県下の小学校16校を指定し、農業改良普及センターの積極的な協力を得て、米づくりやソバ、トウモロコシ、ブドウの栽培などの農業体験学習を行っております。
 今後におきましては、今年度における実施状況を踏まえ、課題等を明らかにし、農政部との連絡会議等を通じて、より連携を密にしながら一学校一農園事業を円滑に推進し、その目的が十分達成されるよう努めてまいりたいと考えております。
   
〇議長(山内隆文君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後4時27分 散 会

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