平成12年6月定例会 第6回岩手県議会定例会会議録

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〇35番(高橋賢輔君) 自由党の高橋賢輔でございます。
 増田知事におかれましては、環境、ひと、情報をキーワードとする新しい総合計画のもと、夢多き県土の形成に向けての御努力、大いに期待するものでありますが、最近の県政の課題について、以下、順次質問をさせていただきます。
 まず、キーワードのトップである環境と密接な関係のあるエネルギー問題に関連し、先般、開催された西暦2000年世界地熱会議についてお尋ねいたします。
 環境に優しい地熱エネルギーの利用促進をテーマとして5月末に大分県で開会した世界地熱会議は、会場を移動し、6月5日からは本県滝沢村のアピオにおいて全体会議や各分科会などが開催され、7日の閉会式においては、世界地熱会議宣言、通称岩手宣言が採択されるなど、成功裏に終了いたしました。まずもって、この大会の運営に尽力された関係者、知事を初め、運営スタッフやボランティアの方々に深く敬意を表する次第であります。
 この会議が、地熱開発に関する世界最高水準の頭脳が参集し、その研究成果が発表される国際学会であることから、地熱開発に関しての高度、専門的な情報の共有化がなされ、岩手宣言として世界中に情報発信されたことは大きな意義を持つものであり、また、環境の世紀と言われる21世紀を目前として、我が国の環境首都を目指す本県においてこの会議が開催されたことは、国際貢献の観点からも極めて有意義なものであったと高く評価するものであります。
 私は、この会議を一過性のイベントに終えることなく、新たな時代のエネルギー問題について、本県から全国にその情報を発信すべく、この会議の貴重な成果を本県においても十分活用し、新たに発展させていく必要があると思いますが、この点について、知事はどのような御所見をお持ちでしょうか。特に、国際学会という性格上、一般県民にとってはいささか縁遠いイベントであったと感ずるのでありますが、これを契機に県民のエネルギーや環境についての関心を高めるべきと思うのでありますが、今後どのように啓発を進めていくのかも含めて御答弁願います。
 また、アピオ会場では、先般の北欧への海外視察を踏まえ、その技術導入に意を強くしておられるとも伺っている地熱ヒートポンプのデモンストレーションもあったようですが、この技術の導入に対しての御所見についてもあわせて御答弁いただきたいと存じます。
 さらには、本県の大学、研究機関、民間企業などでの地熱利用に関する技術開発の促進にも取り組むべきではないかと提案するものでありますが、いかがでしょうか。
 次に、自主財源の確保に向けて、地方税制度のあり方に対する県の検討状況についてお尋ねいたします。
 東京都の法人事業税への外形標準課税の導入を契機として、全国的に国と地方の税制度についての論議が高まり、本県でも2月県議会定例会においてさまざまな質疑が交わされたことは御案内のとおりであります。その後、大阪府においても法人事業税へ外形標準課税を導入することを決定するなど、地方分権時代の地方税体系のあり方をめぐって各方面での議論がますます活発化しております。
 本県におきましても、当県を含む12県の知事により構成する国と地方の税制を考える会に発足当初から参画するとともに、外形標準課税導入をめぐる諸課題の検討を行う全国知事会地方制度調査委員会の専門委員に総務部長が選任されるなど、地方税制度の諸課題に対する調査研究を積極的に行っているやに聞き及んでおります。特に、知事が出席されている国と地方の税制を考える会におきましては、現在、どのような視点での議論が行われているのでしょうか。また、外形標準課税導入の方向性についての議論はどうでしょうか。私は、地方分権の時代を迎えた今、独自の税源を求め、本県財政運営の安定化に努めるべきと考えるのでありますが、知事の御所見をお聞かせ願います。
 次に、広域合併の推進についてお尋ねいたします。
 県では、この4月以降、市町村合併を中心とする広域行政のたたき台とも言うべき広域行政推進素案を県内各地域に提示して説明会を開催するなど、広域合併推進に向けた方向性を明らかにしたところであります。
 私は、本格的な地方分権時代の開幕とともに、より力強く、自立した市町村をつくり上げていく必要はもとより、財政の硬直化や少子・高齢化による行政需要の増大、生活圏域の拡大に伴う新たな地域づくりなど、時代の変化に的確に対応していくためにも、市町村の合併は避けて通れない重要な課題であると考えております。また、北上市の合併の際には旧和賀町議会議員としてその推進に携わり、全国でも高い評価を得ている新北上市の誕生のお役に立てたものと自負いたしております。こうした経験から申し上げますと、合併は、何よりも地域住民、とりわけ住民代表である議会議員がその気になることが肝心であります。北上市での合併では、長年にわたって議員同士の論議が深められ、住民各界各層にもその意識が浸透していったのであります。
 このたびの推進指針は、現地での説明会などが行われておりますが、県の支援はあくまで案の提示にとどまっているように見受けられますが、これではいつまでたっても具体的な動きにつながらないのであります。直接議員を集めてその望ましい姿や利点を訴え、市町村がどうすべきかをはっきりとさせることが必要であります。私は、県のより具体的かつ強力な市町村に対する働きかけが必要と考えるものでありますが、今後、県では、指針の実現に向けてどのように取り組むのかお伺いいたします。
 次に、第三セクターのあり方についてお尋ねいたします。
 今、官民が共同出資して設立した第三セクターの経営破綻が相次いでおり、今年は、全国で既に19社が解散や特別清算などの憂き目に遭ったと伝えられており、過去最多であった昨年の29社を上回るのは確実な情勢と報じられております。経営難に陥っている会社の赤字補てんも地方公共団体の財政難では限界があり、また、出資企業側では連結決算の導入によって撤退を促されているのが実情であります。破綻の多くは、リゾート関連やテーマパークなど、そもそも民間にゆだねるべき業種が中心となっております。本県でも、沿岸部や県南部の第三セクターが破綻しております。
 そこでまず伺いますが、県内市町村が設立している第三セクターの経営の現状についてどのように把握しているのかお示し願います。
 また、今、県内の民間宿泊施設は、第三セクターや市町村の公的施設と競合し、この不景気のもと、限りある客を取り合いしている状況にあるとの指摘もあります。こうした民間と競合し、経営も困難な第三セクターや公的施設については、思い切ってこれを廃止するよう指導すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
 次に、観光振興の観点からお尋ねいたします。
 まず、本県におけるグリーン・ツーリズムの推進方策についてであります。グリーン・ツーリズムの推進については県議会においてさまざまな議論が行われてきたところでありますが、本年度から国のソフト事業が統合され、都市農村交流対策事業として、一体的に全国的な展開を図ることとなったと伺っております。
 具体的に申し上げますと、全国事業としては、人、情報、物の交流など都市側への支援を行う全国交流ネットワーク推進事業と、体験民宿の支援や交流を生かした村づくりの支援など農村側への支援を行う全国グリーン・ツーリズム支援事業とに体系化され、都道府県事業及び市町村事業についても──本県の当初予算においても措置されていることから詳細は省略いたしますが──都道府県交流ネットワーク推進事業や市町村が実施するグリーン・ツーリズム推進地域育成事業などに対する補助制度が施策として体系化されております。
 県の施策体系においては、これらに加えて北東北グリーン・ツーリズム推進協議会負担金や岩手県グリーン・ツーリズム推進協議会負担金、広域PRパンフレット等作成事業などが県単独事業として予算措置されております。ここまでは県の施策体系として理解しておりますが、現在、これら以上に多種多様な取り組みが行われているのが地域活性化事業調整費などを活用した各地方振興局単位あるいは各市町村単位での各種振興施策であります。
 私は、地域特性を生かした個性的な取り組みは今後とも積極的に推進すべきであると高く評価しておりますが、一方、各地域で共通的要素のある施策、具体的に例示しますと、管内モデルツアーの実施や体験インストラクターの育成に対する支援などは国の施策体系の整理に倣い県施策として吸い上げ、再構築すべきではないかと考えるものであります。県庁の分社化により本庁の政策形成能力の低下が市町村からも懸念されている現在、そのような懸念を払拭すべく積極的に対応すべきではないかと存じますが、県当局の御所見はいかがでしょうか、お伺いいたします。
 次に、温泉施設の衛生確保対策についてであります。
 先日、県内の温泉施設で、肺炎などを引き起こす可能性のあるレジオネラ菌が検出されたと報道されました。県内の温泉経営者は、このような汚染によるイメージダウンをおそれ、自主的な検査に努めているところであります。県内観光における温泉の持つ重要性は改めて指摘するまでもないことであります。本県では、数年前にもこの菌による感染事例が発生しており、抜本的な対策を講じなければ、一温泉施設どころか県内の温泉地すべてのイメージが損なわれかねないのであります。
 県では、このレジオネラ菌汚染についての対策はどのように進めていく考えでしょうか。単に汚染された温泉施設の使用自粛を求めるだけではなく、汚染防止の技術指導や技術の開発にも取り組み、県内外の観光客が安心して温泉を楽しめるよう配慮すべきと考えますが、いかがでしょうか。
 次に、産業技術力強化法についてお尋ねいたします。
 この法律は、大学の研究成果を産業界で活用する道を広げることを目的とし、具体的には、国公立大学の教官や国公立試験研究所の研究員が研究成果を事業化する場合に人事院等の承認に基づいて民間企業の役員を兼務でき、また、企業が国公立大学と共同研究を行う場合に、大学は民間から研究費を弾力的に受け入れることができる制度の導入などを内容とするものであります。特に、情報通信、バイオテクノロジー、環境など、今後の我が国経済のリード役とされている分野で、大学が持つ高度な研究能力や人材を活用した技術革新が進むことが期待されるのであります。
 本県でも北上川流域を中心として先端技術産業が立地し、関連する多くの企業も集積しております。しかしながら、地元企業では、研究開発の必要性は感じていても、その経営規模から思い切った投資が困難であると聞いているところであります。このような中、大学などが持つ技術を直接移転できるこの法律の制度は、こうした企業に対して大きな意義を持つものと思われるのであります。
 本県でも岩手大学が積極的に産学共同路線を進めているところでもあり、これら制度の導入の下地は十分に整っているものと思います。県では、本県産業技術の高度化に向けて、民間企業に対してこれら制度の導入を働きかけていくべきと考えますが、御所見はいかがでしょうか。
 次に、農政問題について2点お尋ねいたします。
 まず、農山村における環境に配慮した農業の推進についてであります。
 昨年9月に県が策定した岩手県農業・農村基本計画を拝見しますと、自然循環機能を活用した持続的な農業の推進という柱があり、具体的方策として、地域有機質資源を活用した土づくり、環境に優しい農業技術の普及、地域における持続的農業への支援などが記載されております。私は、これらの施策は積極的に推進すべきものと評価しておりますが、特に地域有機質資源を活用した土づくりについては、耕種農家と畜産農家の連携による土づくりのシステムがうまく構築され、運用できるのかが重要なポイントとなります。
 国では、家畜排せつ物を適切に処理することにより有機物として活用することが可能なことから、家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律を昨年11月より施行しております。この法律により、家畜排せつ物の管理の適正化のための措置としては、農林水産大臣による管理基準の創設、畜産業を営む者による管理基準に則した家畜排せつ物の管理、知事による必要な行政処分等の実施などが定められるとともに、家畜排せつ物の利用の促進のための措置として、農林水産大臣による利用促進に関する基本方針の策定、税制上の支援措置などとともに、都道府県計画の策定が盛り込まれております。
 畜産県である本県では、現在、家畜排せつ物処理施設の不足などから各地域において野積み状態となっているものも多く、私は、我が国の環境首都を目指す本県としては、早急に解消すべき課題であると考えるものであります。
 お伺いいたしますが、県計画はいつ策定され、具体的目標数値としてどのようなものを盛り込む予定であるのか、また、この計画の策定と関連して、各地域における堆肥利用システムを今後どのように構築していくのか、当局の答弁を求めるものであります。
 さらに、このような具体的な取り組みのほか、そもそも農村の持つ国土保全や環境保全の役割にこそ注目すべきであり、こうした観点からの総合的な農地と農村整備を図っていくべきと考えるのでありますが、知事の御所見はいかがでしょうか。
 第2は、財団法人岩手生物工学研究センターにおける遺伝子組換え研究についてであります。
 財団法人岩手生物工学研究センターは、県が設置する試験研究機関のバイオテクノロジー応用化研究を支援、促進するために、遺伝子組換え、細胞融合、組織培養などの最先端のバイオ技術を用いた基礎的研究を行い、県の農林水産業、食品工業等の振興に寄与することを目的として平成4年4月に設立されました。毎年度県からの委託を受け、江井所長のすぐれた指導手腕のもと、遺伝子組換え作物の作出研究などに数々の特許出願を行うなど、極めてすぐれた業績を上げていることは御案内のとおりであります。また、この基礎的研究の上に、近年、再編整備された県の各試験研究機関が実用化を目指した応用化研究を昼夜行っており、今後の成果に強い期待が持たれているところでもあります。
 しかしながら、私が最近深く憂慮しておりますのは、これらの成果が実用化され、生産物として市場に流通した場合の消費者の反応であります。すなわち、近年、一般消費者や全国消費者団体から、遺伝子組換え農産物及びその加工食品について安全性についての疑念が主張され、我が県議会においても、平成9年3月、岩手県消費者団体連絡協議会が提出した遺伝子組み換え食品の表示義務措置を求めることについて請願を意見書発議により関係機関に要望することとして採択したところであります。また、今般、農林水産省においては遺伝子組換え食品の表示対象を定めたところであり、このような状況下では、せっかく県で実用化しても生産者が栽培するのかどうか、また、栽培されたとしても市場で消費者が購入するのかどうかなどと心配する農業関係者の声を踏まえて、県は、技術開発の方向について早急に検討すべき課題に直面しているのではないかと考えるのであります。
 県は、この点に関し、農産物の遺伝子組換え研究についてどのようなテーマで取り組まれているのか、また、安全性についてどう対応されているのか、基本的な考えをお伺いいたします。
 最後に、地域課題についてお尋ねいたします。
 まず、北本内ダムの今後の進め方についてであります。
 県では、県内のダム事業について、特に利水面からの緊急性について検討を加え、10年度、北本内ダムについては休止という判断を示したところであります。和賀川は、昔から洪水が頻繁に発生するいわゆる暴れ川であり、抜本的な治水対策の実施が地域から熱望されていたところであり、湯田ダム、入畑ダムの建設に続き、北本内ダムの建設が最後の対策事業となっておりました。しかしながら、北本内ダムにつきましては、水道需要の低迷と建設事業費の増嵩から、残念ながら休止となったものであります。このため、当該河川の治水対策としては、ダム建設より河川改修で行う方が適当であるという判断から、現在、河川改修案を含む河川整備計画を策定中であると聞いております。そしてまた、最近では中止の方向で検討しているとも伝えられております。
 そこでお伺いいたしますが、いつの時点で休止から中止に移行するのでしょうか。また、流域住民に対してはどの時点で説明が行われるのでしょうか、あわせてお示しいただきたいと存じます。
 また、このダム建設とあわせまして、地元仙人地域の環境整備についても北上市を中心として計画されており、地元住民はダム建設とともに大きな期待を寄せていたところでもあり、ダム建設についても協力してきた経緯があります。この仙人地域の環境整備については、県においても北上市と協力しながらぜひ実現すべきものと考えますが、いかがでしょうか。
 次に、北上農業高校と花巻農業高校の統合問題についてお尋ねいたします。
 この二つの農業高校は、県立高校新整備計画に基づいて平成15年度に統合の予定となっており、現在、その設置場所について検討されていると聞いております。設置場所については、通学生徒の利便性や教育環境に配慮するのはもちろんであります。加えて、私は、新時代の農業の担い手の育成のためにも、また、バイオテクノロジーを初めとする新産業の従事者を養成するためにも、例えば生物工学研究所や農業研究センターとの連携が容易に図られ、先端の現場や技術に直接触れ、学習意欲が高まるよう検討すべきと申し上げたいのでありますが、教育長の御所見をお伺いいたします。
 以上で私の質問を終わります。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 高橋賢輔議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、先日開催されました世界地熱会議の成果の今後の活用策についてのお尋ねでございます。
 この会議におきましては、地熱は、豊富で再生可能かつクリーンなエネルギー資源であり、地球と融和した社会の持続的な発展に欠くべからざるものである、今、申し上げましたような大会宣言が出されまして、日本で初めての地熱発電所を持つ岩手県といたしましては、地域開発のさらなる促進について思いを新たにしたところでございます。
 この会議で示されました新しい地熱利用技術などの貴重な成果を取り入れながら、本県は、環境首都を目指して全国に先駆けて地熱エネルギーの活用を図りますとともに、太陽光や風力など環境に優しい新たなクリーンエネルギーについても積極的に導入してまいります。
 また、県民に対する環境に優しいエネルギーの啓発についてのお尋ねでございますが、これまで、平成9年度策定の新エネルギービジョンに基づきまして、県民、事業所、市町村などと一体となって全力で取り組む姿勢を、その後に策定いたしました岩手県総合計画、岩手県環境基本計画の中で明らかにしてまいりました。さらには、今後、順次策定予定の市町村版新エネルギービジョンにおきましても、住民への啓発が促進されるように要請をしてまいります。
 次に、地熱ヒートポンプ技術の導入についてでございますが、今回の世界地熱会議の期間中、会場地でございますアピオでモデル施設をつくりまして展示をいたしましたこの技術でございますが、その間あるいはその後の実証試験の間におきましても、我が国におきまして、十分、導入が可能であるということが実証されたところでございます。まだ、現在そのままモデル施設を残しておりまして、ことしの秋の住宅フェアあるいはいわてめぐみフェアの時期まで、ずっとデータをとりたいというふうに思っておりますが、導入が可能であるということが既に実証されているところでございます。
 今後におきましては、経済面でまだ問題がございまして、特に地中の熱交換器の設置コスト、これは地中に穴を掘らなければならないんですが、この設置コストが現在かなり費用がかかります。このコストの大幅削減が課題となっておりますので、アメリカも盛んでございます、先進地スイスを初めとした欧米の技術に学びながら、県内企業との連携のもと、その実現に向けてさらに研究を進めていく考えでございます。その上で、県営施設にも導入するなど、普及に向けて努力をしてまいりたいと考えております。
 なお、その他の地熱利用に関する技術開発の促進についてでございますが、地下の4、000メートル級の深部地熱の利用や原熱水の直接利用の研究などにつきまして、今回の会議の誘致・開催を通じて築き上げました国際的な人的ネットワークも活用しながら、国を初め県内の大学、研究機関、民間企業との連携のもとに積極的に取り組んでいく考えでございます。
 次に、地方税制度のあり方に対する検討状況についてでございますが、先ほど議員お話しございました国と地方の税制を考える会、この会は私を含めまして共通の認識を持つ12の県の知事によりまして、この4月に発足をしたところでございます。この会は、21世紀の地方自治の確立に向けまして、より一層の地方税収の安定的な確保を図りながら、自主的、自立的な地域経営を行うために、必要な国と地方の双方の税制について幅広く研究することを目的といたしておりまして、具体的なそこでの調査研究課題といたしまして国と地方の税財源配分の見直し、現行制度の枠内における財源確保の方策、新たな行政課題に対する政策税制、こういったものを掲げているところでございまして、現行の制度の枠内での問題、あるいはその制度改革を含めたもっと新たな課題についての研究テーマといったものについて、次回の第2回以降、具体的に内容の検討を深めていくと、こういう予定でございます。
 一方、法人事業税の外形標準課税につきましては、全国統一的な制度として導入することが望ましいと、このように考えておりまして、こうした考え方に立ちまして、全国知事会の中に地方制度調査委員会というものがございます。その中のメンバーに私も入っておりますし、こちらも12でございますが、12の府県の知事が構成メンバーとなっておりまして、この地方制度調査委員会におきまして、現在、その導入に向けて検討を進めているところでございます。その12の府県のこれまで関係各県の担当部長レベルで専門的な討議を重ねているところでございまして、この調査委員会として望ましい外形標準課税のあり方についての基本的な考え方というものを、一昨日の6月27日に取りまとめたところでございます。外形標準のあり方、それから外形標準課税導入の進め方、導入する場合に留意すべき事項といったことについてを骨子とした調査委員会としての取りまとめを一昨日行ったところでございます。これを今後、7月18日に開催予定の全国知事会がございますので、そちらの方に報告をすることになっておりまして、全国知事会の場で、知事会としての考え方を取りまとめるということとしてございます。
 次に、県独自の税源ということについてのお尋ねでございますが、これは具体的には地方税の中の法定外普通税、法定外目的税ということになろうかと思います。具体的にその可能性についてこれまでに税務担当部に検討させた経緯がございまして、このうち法定外の普通税につきましては、本県においてはなかなか容易に独自の税源を見出すことは難しいというふうに、そのような状況にあるわけでございますが、導入の可能性があるものとして高いものとしては、受益と負担の間に明確性のある法定外目的税、こちらがより導入の可能性が高いと、こういうふうに考えております。この場合におきまして、初めにこうした独自税制の導入ありきという姿勢ではなくて、政策全体をさまざまな角度から分析、検討した上で、そうした政策目的を達成するための政策税制ということでこうした独自税制が必要ではないかと、こういう検討を行って、そして必要ありというふうに判断される場合にその導入を検討すべきというふうに考えておりまして、今現在では一つの例として、環境分野におきましてその他のさまざまな環境施策とあわせて、その導入の可能性について検討していく考えでございます。
 次に、総合的な農地と農村の整備についてでございますが、農村は食料の供給や生活の場というのが本来の役割でございますが、そのほかにも農業生産活動を通じて洪水防止などのいわゆる県土、国土の保全という機能、水源の涵養、そして自然環境の保全、さらには人々の安らぎの場というような、今申し上げましただけでも多面的な機能を有しておりまして、農村の持っておりますこのような役割を、一層、維持・増進していくことが重要であると考えております。こうしたことから、農業生産基盤の整備に当たりましては、自然環境を保全するために一定の区間を土水路、土を使った土水路とした農業用水路や水生植物を保護したため池など、動植物の生息空間に配慮した整備を推進しております。
 また、農村生活環境の整備に当たりましては、緑地などを配しまして、周辺の自然環境と調和をした農村公園や集落排水施設の整備による水質の保全を図りますとともに、親水や潤い空間の創造など、それぞれの地域特性を生かした美しい田園空間の維持・形成に努めていくこととしてございます。さらに、中山間地域におきましては、農地や排水路の整備によりまして、耕作放棄の防止と農地の確保を図るとともに、定住を促す生活環境の整備を総合的に推進していくこととしてございます。
 今後とも、農村が果たしている先ほど申し上げました多面的な役割、こうした役割の維持・増進について、広く県民の皆様方の理解と協力を得ながら、総合的に農地と農村の整備を推進していく考えでございます。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁をさせますので、御了承をお願いします。
   〔企画振興部長佐藤徳兵衛君登壇〕
〇企画振興部長(佐藤徳兵衛君) まず、広域合併の推進についてでありますが、市町村合併を含む広域行政の推進及びその選択については、もとより地域のあり方は地域で決めると、この地方自治の基本的な考え方を踏まえ、自治の担い手である住民が地域の現状や課題をともに考え、自主的に判断することが極めて重要であると考えております。特に、市町村合併につきましては、市町村の区域という地方自治の根幹にかかわることであり、地域住民の関心も高いことから、新北上市の合併に至る事例のように、住民の代表者である市町村議会の議員の方々の間において理解が深められ、十分な議論が行われることが望ましいことは、議員御指摘のとおりでございます。
 こうしたことから、指針の内容について、市町村議会議員への十分な周知が必要と考え、町村議会議長会主催の議員研修、それから個別の市町村議会や各地域の議会協議会の研修の場において説明を行っておりますが、今後とも地方振興局主催の説明会を開催するなど、指針の説明に努めてまいりたいと考えております。
 今後におきましても、各地方振興局を中心に、地域の実情に応じた詳細な情報の提供を初め、地域での議論を深めていただくための支援を講じてまいりたいと考えております。
 次に、市町村が出資している第三セクターの経営状況等についてでありますが、本年の4月1日現在の調査によりますと、143法人のうち、全体の46%に当たる66団体が平成10年度決算で累積収支が赤字となっており、これを業務別に見ますと、観光・レジャー関係が24団体で赤字法人の36%、農林水産関係が22団体、33%という状況にあり、第三セクターの経営状況は全体として厳しいものがあると認識しております。
 なお、第三セクターの経営状況のいかんによっては、市町村財政に重大な支障を及ぼすことが懸念されるところでもありますので、昨年の5月に自治省から示されました第三セクターに関する指針、これにおきましても、地方公共団体は第三セクターの経営状況の点検評価を行い、深刻な経営難にある場合には第三セクター方式での存廃そのものも含め、抜本的な改善策を検討すべきであるとされているところでございます。したがいまして、県といたしましては、市町村が指針の趣旨を踏まえ、社会経済情勢の変化に対応した第三セクターや公的施設の使命、役割、これについて改めて点検するとともに、財政運営に与える影響などを十分見きわめながら、自主的、主体的な判断のもとに事業の廃止も含めた適切な対応をされるよう、今後ともタイムリーな情報提供や助言に努めてまいりたいと考えております。
   〔農政部長佐藤克郎君登壇〕
〇農政部長(佐藤克郎君) まず、グリーン・ツーリズムの推進方策についてでありますが、グリーン・ツーリズムは農村地域の活性化を図る効果的な手段の一つであり、地域が主体的に取り組んでいくことが何よりも重要であると認識をしております。例えば、西和賀地域における子供たちの農業・農村体験交流等の先進的実践活動、安代町の首都圏でのそば道場の開設等のキャンペーン活動、二戸地域における冬場の高原体験ツアー等のモデルツアーの開催など、地域の創意工夫を生かした多彩な取り組みが行われているところであります。県といたしましては、こうした地域における取り組みが全県的に広がるよう、平成9年6月に岩手県グリーン・ツーリズム推進協議会を組織いたしまして、グリーン・ツーリズムの普及・啓発や活動の中心となる体験インストラクター等の人材の育成、インターネット等による都市住民への情報発信などを全県共通の取り組みといたしまして行っているところでございます。さらに、広域的な取り組みとして、北東北グリーン・ツーリズム推進協議会を設立いたしまして、北東北3県合同による情報発信や観光分野との連携によるPR活動の展開など、効率的なグリーン・ツーリズムの推進を図ることとしております。
 今後におきましても、県グリーン・ツーリズム推進協議会の活動を中心にいたしまして、地域の推進組織や北東北各県と密接に連携しながら、本県グリーン・ツーリズムの普及・定着に努めてまいりたいと考えております。
 次に、家畜排せつ物に係る県計画についてでありますが、この計画は家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律に基づき、平成20年度を目標に、環境に配慮した持続的農業の推進を図る観点から、完熟堆肥化による農地還元を行うことを基本として策定したものでございまして、現在、国と協議中でございます。
 具体的な目標数値についてでありますが、広域堆肥センター、共同利用堆肥処理施設そして個人施設につきまして新たに約1、700カ所整備する計画でございます。現在、法律の対象となっております畜産農家から排出される家畜排せつ物量は約354万トンと見込まれており、うち約77%が堆肥舎などで適正に処理されておりますが、残りの約23%が野積み、素掘りといったいわゆる不適切な処理となっております。これらの状態を解消するため、当面、法律の定める期限、平成16年の10月までに堆肥処理施設を約670カ所整備する計画であります。
 次に、堆肥利用システムにつきましては、平成12年3月、岩手県たい肥生産利用促進対策実施要綱を定めまして、県内各地域に関係機関で構成する地域たい肥生産利用推進協議会を設置することとし、この7月中には全体で12の協議会が発足する予定であります。この協議会では、堆肥需給マップの作成、畜産部門と耕種部門との需給調整による利用促進、さらには耕種農家への運搬や散布を実施する作業受委託の調整を行うなど、有機リサイクルネットワークを実現し、地域ぐるみで家畜排せつ物の適正処理と利用の促進を図ってまいることとしております。
 次に、遺伝子組換えの研究についてでありますが、遺伝子組換え技術は、商品性の高い独自品種の開発や県産農産物の高付加価値化を図る上で革新的な技術であり、激化する産地間競争に打ち勝っていくためのキーテクノロジーであると考えております。こうしたことから、全国に先駆けて生物工学研究センターを設置したところであり、現在、いもち病抵抗性や低温発芽性にすぐれた稲や斑点落葉病に抵抗性を持つリンゴ、また、新しい色のリンドウなどの遺伝子組換え系統の作出に取り組んでいるところであります。一部の系統につきましては、温室での安全性評価試験の段階に来ております。
 遺伝子組換え作物の開発・実用化に当たりましては、その安全性の確認が何よりも増して重要でありますことから、科学技術庁や農林水産省の安全性評価指針に基づいて、環境や生態系への影響など一つ一つ確認することとしております。さらに、食用に供するものにつきましては、食品衛生法で定められた安全性審査を受けるなど、実験室段階から実用化段階まで、幾重にも及ぶ安全性の確認に万全を期しながら研究を進めていくこととしております。
 県といたしましては、今後とも研究施設の公開やセミナーの開催、また、研究内容の公表など常に県民との情報交換の機会を持ちながら、遺伝子組換え研究について社会的理解を深めるとともに、安全性の確認を徹底した上で、実用化を推進してまいる考えでございます。
   〔生活環境部長村上勝治君登壇〕
○生活環境部長(村上勝治君) 温泉施設のレジオネラ属菌の汚染防止対策についてでありますが、平成8年に本県でレジオネラ症の発生があったことを契機に、関係団体を通じてレジオネラ属菌防除指針に基づいて、入浴施設等の適切な維持管理や自主検査の指導を図ってまいりました。また、レジオネラ属菌による汚染があった場合には、その情報が県民の健康にかかわるものであるという認識から、県民へ適切に情報を提供するように努めているところであります。このような中、本年、静岡県と茨城県の入浴施設でのレジオネラ属菌の感染の疑いが強い患者が集団発生しておりますことや、今般、県内の二つの温泉施設で基準を上回る菌が確認されましたことを重く受けとめ、関係業界に対しましてレジオネラ属菌による汚染防止のさらなる注意喚起をするため、温泉施設管理者を対象に6月26日から県内6地区におきまして、最新の技術研究に基づいた新しい防除指針の内容について講習会を開催するとともに、保健所が定期的に立ち入り、施設の維持管理などの指導を行い、今後とも県内外の多数の皆様に本県の温泉施設を安心して利用していただくよう、対処してまいりたいと考えております。
   〔商工労働観光部長鈴木清紀君登壇〕
〇商工労働観光部長(鈴木清紀君) 産業技術力強化法についてでありますが、技術革新に対応した新事業の創出や産業競争力の強化を図っていくためには、大学などの先進的な知識や技術を民間企業に移転し、産業化を促進していくことが重要であると考えております。県におきましては、中小企業と大学との共同研究を促進する産学官共同研究促進事業を実施いたしまして、これまでにドングリの粉末による鉱工業排水からの重金属イオンの回収技術を初め、83テーマの共同研究開発を支援してきております。また、岩手大学と工業技術センター、地域企業の3者によります研究共同体、この共同体を地域コンソーシアムとも言っておりますが、この3者による研究共同体を組織いたしまして、次世代金型製造や軽量で強靭な鋳鉄の開発など、先端的な共同研究を推進してきているところであります。さらに、大学、企業、行政の関係者約760名が参加しております産学官交流組織の岩手ネットワークシステムにおきましては27の研究部会を設置いたしまして、産学官協力による研究開発や技術交流が活発に行われております。
 このように、岩手県におきましては、全国有数の産学官連携が展開されておりまして、産業技術力強化法に基づく制度を効果的に活用できる環境が醸成されつつあるものと認識しております。
 県といたしましても、岩手大学や県立大学、それからいわて産業振興センターなど関係機関と連携しながら、民間企業のニーズに応じてこれらの制度の紹介や相談に対応してまいりますし、また、民間企業と大学等との共同研究のコーディネートを行うなどいたしまして、大学や試験研究機関から民間企業への人材活用や技術移転を促進してまいりたいと考えております。
   〔土木部長中山隆君登壇〕
〇土木部長(中山隆君) まず、北本内ダム建設事業の今後の進め方についてでございますが、平成10年8月に事業の休止を発表して以来、これまで治水、利水の両面から検討を行ってまいりました。貯水池予定地内での地滑り対策工や原石山ののり面対策工などに予想以上の費用が必要となりました。こういったことで、ダム建設費が大幅に増加し、治水につきましては、河川改修で対応した方がより経済的であるという結論に至ったものでございます。また、利水につきましては、利水者でございます岩手中部広域水道企業団が、将来の水需要予測の見直しを行った結果、当初計画より水需要の伸びが大幅に鈍化したことから、北本内ダムで確保すべき水量が減少する見込みとなりまして、不足する水量につきましては、入畑ダムの工業用水の一部を転用することが可能であるとの見通しが立ったものでございます。
 中止を決定する時期でございますが、平成12年度岩手県公共事業評価委員会が6月20日に開催され、北本内ダム建設事業について委員会に付議したところでございますが、県といたしましては、委員会からの意見を受けまして、8月末までに事業の対応を決定したいと考えております。
 次に、流域住民に対します説明会についてでございますが、事業休止発表前の平成10年8月に、地元の説明会を実施したところでございます。県といたしましては、平成9年度の河川法の改正に伴い、和賀川の河川整備計画を策定することにしております。策定するに当たりましては、流域の自然環境、農業、漁業などに関します有識者と住民代表の方から構成されております和賀川流域懇談会を設置し、平成12年7月に第1回の懇談会を開催することにしております。この懇談会では、一般住民の参加もいただきながら意見を伺うことにしておりまして、その際、ダム建設事業中止につきましても説明してまいりたいと考えおります。
 また、和賀川流域の河川環境整備についてでございますが、これまでも河川環境整備事業などを進めてきたところでございますが、今後、策定予定の河川整備計画に基づきまして、地元北上市と連携、協力しながら、流域の環境整備に努めてまいりたいと考えております。
   〔教育長合田武君登壇〕
○教育長(合田武君) 北上農業高校と花巻農業高校の統合問題についてでありますが、本県中部地区に予定しております農業高校の設置場所につきましては、現在、両校の校長や同窓会、PTAの代表者、北上、花巻両市の教育長や行政関係者などを委員に委嘱した検討委員会で、学科のあり方などとともにさまざまな角度から検討をいただいているところであります。
 県教育委員会といたしましては、今後、この検討委員会における御意見も参考にし、生徒の通学の利便性、現有の施設設備の有効活用、周辺の環境条件などの観点から総合的に検討し、決定してまいりたいと考えております。
 なお、高校生がコンピューター制御された最先端の農業施設やバイオテクノロジーなどの高度な技術に直接触れ、学習できることはこれからの教育にとって重要であることから、試験研究機関など地域のさまざまな関係機関との連携などについては検討する項目の一つと考えているところであります。
〇議長(山内隆文君) 次に、柳村岩見君。
   〔5番柳村岩見君登壇〕(拍手)

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