平成13年2月定例会 第9回岩手県議会定例会会議録

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〇15番(岩城明君) 政和会の岩城明でございます。
 生活者、地域の視点を盛り込んだ新しい計画における主要施策、事業を中心に編成された平成13年度当初予算案について議論する今議会に、一般質問の機会をいただき、先輩、同僚議員に対し心から感謝を申し上げる次第であります。
 私は、県議会に議席をいただき今回が2度目の登壇となりますが、最初の質問は平成11年9月の定例会でありました。まさに新しい総合計画が策定され、県民に対し公表された直後の本会議であります。私はその質問の中で、21世紀の県土づくりのシナリオである新しい総合計画が、多くの県民参画のもとに策定され、これから岩手という舞台で、総指揮者増田知事の指揮のもと、各市町村、県民が、いわばオーケストラの一員としてそれぞれの地域特性という楽器を演奏することになるだろうと申し上げました。知事が指揮台に立ち懸命に指揮棒を振ろうにも、それぞれの地域に奏でる楽器がなければ演奏は成り立ちません。いわば、厳しい財政事情の中にあって、新たに政策評価制度などを導入しながら精査し今予算案に盛り込まれた事業は、指揮者増田知事がそれぞれの地域特性を踏まえ購入しようとしている楽器ではなかろうかとも考えます。
 私は、その際取り上げた課題を踏まえ、県北・沿岸の地域課題、特にも久慈地域に絞った項目を中心に順次質問を行いたいと思いますので、誠意ある答弁をよろしくお願いいたします。
 まず、指揮者である知事は、私の生活する久慈地域は無論のこと、広い県土を精力的に回り、それぞれの地域における各界・各階層の方々との懇談を行っております。楽器を演奏する立場にある各市町村、県民という団員の声に耳を傾けることは指揮者として当然であります。その精力的行動力には敬意を表するものであります。
 久慈地域は厳しい自然環境の中にあって、また社会基盤がいまだ整備がおくれている状況の中で、住民の方々は何とかして地域の活性化を図りたいと一生懸命努力をしており、その姿は知事も御承知のとおりであります。地域格差という表現は、特にも新しい総合計画が策定されて以降余り語られなくなりました。それぞれの地域の個性、特性を大切にしながら、その地域が自立しなければならないという方向になっております。私はこのスタンスは、これまでの国や県が何かをしてくれるという受け身の姿勢から大きく意識を変えなければ、これからの厳しい行財政には対応できないという意味において、極めて大切なことであると考えております。
 知事は、こうした団員である住民の意識を変えながら演奏の指揮に当たろうと、懇談会を精力的に展開しているものと理解しております。もちろん、新しい総合計画における実施計画、あわせて策定されました地域計画などで取り組むべき課題、つまり演奏曲目は、ある程度は示されております。総合計画に示されているシナリオどおり各般の施策が進められることが望ましいことは、申すまでもありません。
 知事は前回、私の質問に対し、県北・沿岸地域は地理的、社会的条件が不利で地域の活力が低下しているという厳しい認識の上に、新しい総合計画では、距離、地形、気候を壁としてとらえ、これを克服するための施策をプロジェクトとして位置づけ、重点的に、効率的に展開してまいるとした決意のほどを明らかにしております。
 この決意を踏まえ私がお聞きしたいのは、ますます厳しくなる行財政事情の中にあって、政策評価制度、費用対効果、つまりコスト、効率性が前面に出た議論が主流を占め、その結果、地域の個性を生かす、地域の自立という名のもとに、県北・沿岸地域がますます立ちおくれることはないだろうかという危惧があるからであります。あえて地域格差という言葉を使わせていただきますが、県央部と比べ交通網、産業面で格差という現実の中での生活を強いられている県北・沿岸地域の振興は、いわば県政の大きな課題であります。地域の発展なくして県勢の発展はありません。
 そこで知事にお尋ねいたします。一つは、指揮者である知事の県北・沿岸地域の住民の方々に対する基本的認識であります。知事は、この地域の活力を高めるためには、地域の元気や一人一人の生活の意欲を大切にしながら、自律的発展を図ることが肝要であると私の質問に答えております。総合計画を策定した直後でもあり、それはそれで知事の県北・沿岸地域に対する認識として理解しておりますが、問題は、そのために具体的にどのような行動を期待し、県としてその行動をどのような形で支援していくお考えなのかということであります。
 二つ目は、今般の予算編成に当たって、県政懇談会等を通じ得られた県北・沿岸住民の方々の意向をどのような形で総括し、その結果を今般提案されている予算案に施策、事業として具体化させるために、どんな手順を踏み反映をさせたのか、お伺いいたします。
 なお、予算編成に当たっては、政策評価等により施策の重点化を図ったということでありますが、結果として、人口集積の薄い県北・沿岸地域の評価が低くなることがないように、県北・沿岸地域の振興に配慮されるべきであると考えるものであります。この点につきましては、先日我が会派の千葉議員が質問されたところであり、重ねての質問は控えますが、県土の均衡ある発展を図るためにも、県北・沿岸地域の実情が酌み取られ相応の配慮がなされるよう、強く要望するものであります。
 次に、指揮者、団員の関係を絡めてお伺いいたしますが、舞台での演奏を効果あるものにするためには、いわゆる裏方の存在も極めて重要であります。つまり、指揮者である知事の演奏活動を陰ながら支え、いかに演奏効果を高めるかと努力している県職員の役割は、その裏方に当たるものではないかと考えるものであります。
 私は、幸いにも住民の方々からの御支持をいただき、こうして議員活動を行っておりますが、それまでは30年間市職員として裏方の仕事に従事してまいりました。団員である各市町村、県民を指揮しハーモニーを奏でるためには、裏方である県職員との間に、言うなればあうんの呼吸というか、意思の疎通も大事なことではないかと考えます。知事の意気込み、姿勢とは裏腹に、職員には少しばかりの戸惑いはないだろうかと感じられることがあります。昨年相次いで発覚した一連の不祥事の影響もあろうかとは思いますが、県職員は総じて元気をなくしているようにも見受けられます。
 私は、総合計画により知事が示した夢県土を実現するためにも、また自治体職員として同じ釜の飯を食った仲間でもあった県職員に対し、頑張れとエールを送るものであります。行政品質向上運動などの各種研修、また幹部職員との懇談等を通じ、意識の啓発、向上にもみずから率先して取り組んでいるようでもありますが、その労は多とするものであります。
 そこで知事にお尋ねいたします。夢県土という舞台の裏方である職員に対し最も期待しているものは何かということであります。意識改革なのか、失敗をおそれない行動力なのか、職員との日ごろの接触の中で受けとめている職員に対する認識とともに、最も期待したいものは何なのか、率直なお考えをお示しいただきたいと思います。
 次に、指揮者である知事の意向、つまり夢県土実現というシナリオに基づき、地域特性を生かそうと取り組んでいる地域課題についてお伺いいたします。
 まず、アレン国際短期大学の経営再建問題についてであります。
 申し上げるまでもなく、同短大は本県の誇る新渡戸稲造先生の考えに共鳴した故タマシン・アレン女史により昭和45年に創立をされ、これまで県北唯一の高等教育機関として幾多の有為な人材を輩出してまいりました。しかしながら昨年来、アレン短大が少子・高齢化の中にあって入学生が減少し、経営危機が表面化したことから、短大側では経営陣の大幅な刷新を断行するとともに、再建に向けて現在懸命の自助努力を行っております。
 また、地元の関係者からは、アレン先生の崇高な理念の灯をこの県北・沿岸地域から消すなという声が起き、久慈管内6市町村を初め地域主要公共機関・団体から成るアレン国際短期大学協力会が立ち上がり、学生募集等の支援活動を地域ぐるみで展開しております。
 久慈市においても、厳しい財政事情の中、入学生に対する授業料の補助を初めとする支援を行っております。私学、特にも短大の入学生減少の傾向は全国的問題でもあり、その対策には県当局としても大きな制約があるということは私なりに理解しているつもりでありますが、故タマシン・アレン女史の崇高な理念に基づいた同短大の活動は、これまで県北地方の人材、文化の向上に大きな役割を果たしてまいりました。知事の唱える21世紀の県土づくりのキーワード、環境、ひと、情報、特にもひと、情報の分野における先駆的取り組みであったのではなかろうかと私は考えております。
 そこで、県北・沿岸地域における故アレン女史の功績をどのように評価し、その再建に向けて懸命に努力している短大関係者、地元関係者に対し、どのような指導、支援を行う考えであるのかお示しいただきたいと思います。
 次に、農林水産業の振興策についてお伺いいたします。
 申し上げるまでもなく、この4月からは本庁機構の再編により、農林水産部として本県農林水産業の振興策が横断的に推進されることとなっております。特にも海、山に広大な資源を有する県北・沿岸地域にとりましては、極めて重要な体制整備と認識しており、4月以降の取り組みを関心を持って見守りたいと思っております。
 そこでお尋ねいたします。昨年青森で開催されました北東北3県知事サミットで、北東北3県は食料基地としての構想を持とうと3県知事で合意され、合意事項についてそれぞれ具体化が図られているとお聞きいたしております。
 私の住む県北・沿岸地域の住民にとりましては、八戸、つまり青森県との交流が日常的に行われているせいか、3県交流については余り意識してまいりませんでした。しかし、厳しい自然環境、食料輸入の自由化といった時代の流れの中で、畑作、畜産、水産振興、つまり農林水産振興施策で地域振興を図ろうと懸命な努力をしている地元関係者は、この3県知事が合意した食料基地宣言には重大な関心を持っております。
 そこで、この宣言を踏まえ、本県の食料供給基地としての役割をどう果たしていかれるのか、今後における取組方針を含め、知事のお考えをお示し願いたいと思います。
 次に、県営ほ場整備事業、大川目地区の事業の今後の見通しであります。
 この事業につきましては、平成7年に大川目地区水田営農を考える会が組織されて以来の懸案事業であります。大川目地区は、久慈市内におきましてはある程度の規模で水田耕作が可能な地域でもありますが、小区画、道路の幅員が狭いなど効率の悪い稲作経営を余儀なくされている状況にあり、その基盤整備が急がれる地域であります。
 そこでお尋ねいたします。整備事業への取組状況と今後の事業の見通しについてお示しいただきたいと思います。
 あわせて、ほ場整備事業と関連し、現在大きな課題となっている農村環境整備である農村集落排水事業について、この地域に導入する考えがあるのか、計画の有無を含め考えをお示しいただきたいと思います。
 次に、県北地域の立地特性を生かしたホウレンソウなどの園芸作物の生産振興についてであります。
 先般久慈市におきまして、久慈地方耕種と畜産の連携大会が開催されました。私も大会の様子を拝見いたしましたが、県内ではこうした連携大会が初めてであると聞き、まさに時宜を得た大会であったとその企画を高く評価するものであります。
 園芸作物の生産性を高めるには、土づくりによる地力の維持増進が不可欠であります。また、久慈地域は、御案内のとおり畜産地帯でもあります。家畜排せつ物法の施行に伴い、畜産農家には家畜排せつ物の適正管理が求められてきております。したがいまして、野菜生産農家など、いわゆる耕種農家と畜産農家の連携協力のもとに、良質堆肥の生産とその流通による土づくりは、久慈地域はもとより、本県農業全体の発展に極めて重要な取り組みと思います。
 そこでお尋ねいたします。こうした連携策を今後具体的にどのように展開するお考えなのか、組織等を検討しているのか、その取組方針をお示しいただきたいと思います。
 次に、林業・水産振興についてお伺いいたします。
 林業の振興にとって大きな課題となっておりますのが、間伐に対する取り組みであります。県当局においては、昨年8月、岩手県緊急間伐5カ年計画を策定し、計画の中で補助制度を活用し間伐を計画的に促進することや、各市町村に緊急間伐団地を設定し先導的に促進するといったことを掲げております。
 そこでお尋ねいたします。計画に掲げられております補助制度活用あるいは緊急間伐団地の設定について、県北・沿岸地域においては具体的にどう展開するお考えなのか、その取り組み状況についてお示し願いたいと思います。
 あわせて、間伐材を活用し、環境に優しい地域特産として地元の大きな期待を受け取り組んでおりますいわて森のトレー生産協同組合の事業の進捗状況についてお尋ねいたします。
 御承知のとおり林業構造改善事業を導入し、木材加工施設を整備し、木製トレーを生産する事業であり、事業規模等から地元の関心も非常に高いものがありますが、いまだ本格生産に入っていない状況と聞いております。つきましては、生産協同組合の組織体制は確立されているのか、本格生産体制の時期はいつごろなのか、販路の見通しとそのための対策についてはどのような取り組みが進められているのか、明確にお示し願いたいと思います。
 次に、漁業振興策についてであります。
 まず、漁業集落排水施設の整備促進についてお伺いいたします。
 県では、下水道や集落排水等の汚水処理施設の整備を積極的に推進することとしております。特にも沿岸地域における汚水処理については、良好な集落環境を図るためにも急がれる事業であると考えております。
 そこで、沿岸地域における整備の状況と久慈管内における状況についてお示しいただき、あわせて、今後その整備を促進するため具体的にどのような対策を講じる考えなのかお伺いいたします。
 次に、魚類栽培事業の推進についてであります。
 平成12年4月に、ヒラメなどの魚類栽培の推進を図るため久慈地区魚類栽培事業協議会を設立し、事業化に向けた推進体制を整備したと伺っております。つきましては、同協議会における検討状況と今後の対応についてどのような方針で取り組むお考えなのか、お示しいただきたいと思います。
 次に、東北新幹線盛岡以北開業に伴う広域観光、物産、情報の発信についてお伺いいたします。
 この課題につきましては、平成11年9月定例会で質問を行った際、私は、東北新幹線の開業を控えた今、千載一遇の機会として、久慈、二戸、八戸地域を一つの地域としてとらえ、各種イベントを積極的に展開し、観光、物産、情報発信を進めることが県北・沿岸地域にとって極めて重要な取り組みであると主張いたしました。県御当局の配慮により、これら地域間のネットワークの形成に係る各般の事業は、振興局などの連携により、特産品の開発、人材の育成、交流等に取り組まれており、一定の成果も上げてきているように受けとめております。しかし、その意気込みとは裏腹に、例えば、体験型観光としてグリーン・ツーリズムを推進したくても、現行の法規制等がネックとなり思うように展開できないという関係者の悩みも聞いております。また、宿泊施設を見ても、久慈管内では収容人数に限りがあり、十分な対応ができないのが現状であります。
 観光振興を大きな産業の一つとして位置づけ、それを推進する体制整備の一つとして、去る1月に県観光連盟と県観光開発公社両組織の統合締結調印が交わされ、4月には財団法人県観光協会として発足すると伺っております。私は、まさに時宜を得た対応であろうとその取り組みを評価するものでありますが、問題は、申し上げましたような地域の要望、関係者の声にこの組織が具体的にどのようにこたえてくれるかという組織の内容、機能ではないかと考えます。
 そこでお尋ねいたします。統合され、再スタートを切る仮称財団法人岩手県観光協会は、こうした地域の観光振興における課題に対し、具体的にどのような機能、役割を有するのか、また本庁における観光課あるいは振興局における地域観光振興業務との間で、どのような役割、機能分担で行おうとしているのかお伺いいたします。
 私は、知事を指揮者に例え、各市町村、県民は楽団員であり、県職員はその演奏を支える裏方としての役割を持っているという認識のもと、今後の県政運営について議会人の立場から発言を行ってまいりたいと申し上げました。そこで最後に、私なりに気がかりな事項を申し上げ、質問を終わらせていただきます。
 ある会合で知事は、環境とか情報化を中心に今後の県政を推進すると話しておりますが、人口集積も希薄で、厳しい地理的条件、産業集積もなく、道路事情を初め、必ずしも基盤整備が進んでいない県北・沿岸地域は、環境保全とか情報インフラの整備などを理由に、こうしたハード整備は急ぐ必要がないと切り捨てられることはないだろうかという発言がありました。私は、いわゆる情報化が進めば進むほど、人の流れ、物の流れが促進するものと考えており、地域の基幹産業である農林水産業の振興を基盤に、観光、物産といった産業の振興が、情報化とともにますます活性化することとなるのでその心配はないと答えておきました。しかし、前述のような危機感を有している方々も少なからずこの地域に存在していることもまた事実であります。
 今般の本庁の機構再編に伴い、県北・沿岸振興のための特定地域振興室が地域振興課の一組織に統合されます。特定地域振興室の役割、果たしてきた機能については議論のあるところではありますが、県北・沿岸地域の関係者にとっては大きなよりどころであったことは間違いがありません。つきましては、こうした動きはあくまでも効率的県政推進上の措置であり、今後とも県北・沿岸振興に向けての積極的施策の展開にはいささかも変わりはないことと存じますが、これまでに2度久慈地域に勤務された経験のあります千葉副知事から、県北・沿岸地域に対する思いの一端をお伺いし、私の質問を終わらせていただきます。
 御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 岩城明議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、県北・沿岸地域の住民の行動に対する期待と支援についてのお尋ねでございますが、私は、同地域には、豊かな自然や豊富な海山の幸、脈々と受け継がれている生活文化などのすぐれた地域資源があり、このような資源を発掘、活用しながら新たな視点で産業振興を図り、地元雇用機会を拡大して地域の活力を高めていくことが重要であると考えております。したがいまして、例えばホウレンソウ等の寒締め栽培の取り組みや木質バイオマス資源の活用、工業分野における産学官連携の取り組み、さらには、風力発電等新エネルギーの導入やグリーン・ツーリズム等の体験型観光の振興など、県北・沿岸地域等で現在進められているこれらの新たな動きに大いに注目しておりますし、今後においても、全国農村アメニティ・コンクール最優秀賞を今年度受賞した久慈の山根地区のように、地域のよさを見詰め直し、大いなる気概を持って取り組むさまざまな活動がさらに活発化していくことを期待しているところでございます。
 県では、地域の意欲をしっかりと受けとめて、市町村と密接に連携しながら、地域活性化事業調整費などを活用してこうした住民の皆さんの活動を支援するとともに、距離や地形の壁を克服する道路交通網、情報通信基盤の整備や情報関連、環境共生型の企業誘致など、地域振興に向けた取り組みを積極的に展開してまいりたいと考えております。
 次に、県北・沿岸地域住民の意向の把握と予算案への反映についてでございますが、本年度は、これまで同地域において県政懇談会を20回開催して、349人の方々から291件、それから銀河系いわてモニターの方々から51件、合計342件の御意見、御提言をいただいたところでございます。
 その内容といたしましては、農林水産業の振興や生活基盤整備、ひとづくりなど実に幅広い分野にわたっているわけでございますが、いずれも地域の皆さんの生活実感に基づいた御意見でございまして、いただきました御意見につきましては、速やかに関係部局に指示をして、可能な限りその実現に、今、努めているところでございます。
 こうした地域の方々の御意見等を踏まえて、平成13年度当初予算の編成に当たりましては、県北・沿岸地域の地域づくりを支援するために、県道や農道、林道を一体的に整備する地域振興支援道路ネットワーク整備事業の創設や、過疎地域などにおいて合併処理浄化槽の整備を促進する下水道事業債償還基金補助金の拡充、さらには、県北地域の広域的な交流・連携拠点として東北新幹線の二戸駅に整備される──仮称でございますが──二戸広域センターに対する支援措置などについて予算化を図ったところでございます。
 次に、職員に対する認識と期待についてでございますが、私は、これまで行ってまいりました職員との対話などを通じて、県政において地方分権時代に対応した新たな行財政システムの確立や総合計画に掲げる諸施策の積極的な展開が求められる中で、職員は、業務上の目標を達成すべく、日々職務に精励、努力しているものと認識しております。また、今後、生活者や地域の視点に立った県政を推進していく上で、職員の皆さんにはもっと現場に1歩も2歩も深く入っていってほしいと思いますし、また、それにふさわしいチャレンジ精神、リスクや失敗を恐れない精神力、そして責任感、さらには、常に県民のためによりよいサービスを提供していくという意識と、さまざまな局面で解決策を見出していく自立心を持って自己の職務を着実に遂行し、成果を上げていくことが大切であると考えております。そして、このような成果が県民満足度の向上につながって、職員みずからも、真に県民のための県政を行っていることを強く実感してまた新たな意欲の向上にもつながる、この繰り返し、積み重ねによって公務に対する職員の意識も一層高まっていくことを期待しております。私自身、このような思いを職員に語りかけ、また、対話を重ねながら、夢県土いわての実現に向け、職員の意欲が一層向上し、活気のある職場が形成されるよう努力してまいります。
 次に、食料基地としての本県の役割についてでございますが、我が国の食料自給率が大きく低下している中にあって、北東北3県は豊かで恵まれた農林水産物の供給力を有しておりまして、我が国の食料供給基地として極めて重要な役割を担っている地域でございます。先般開催された第4回北東北知事サミットにおきましては、北東北3県が将来にわたり、県民はもとより、国民への健康・安全な食料の安定供給を担う重要な地域としてさらに発展していくため、北東北食料基地宣言を採択して、3県が連携して取り組むこととしたところでございます。
 この具体的な取り組みとしては、水田を活用した小麦、大豆の品質の向上と安定多収のための栽培技術の開発を初めとして、つくり育てる漁業に関する研究、学校単位や県民を対象とした食農教育に対する啓発運動の展開、農林水産業への新規参入者の受け入れのための情報発信などについて3県共同で進めることとしてございます。さらに、これに加えて、農林水産物の首都圏以外への流通、販売に3県が連携して取り組んでいくことなども必要ではないかと考えております。
 私は、このように隣接する3県が共通する課題について連携を強化するとともに、各県がそれぞれの立地特性を最大限に生かした独自の取り組みを行うことによりまして、この両者が相まって相乗効果が発揮され、北東北3県の食料基地としての地位がより強固なものになると、このように考えているところでございます。
 その他のお尋ねにつきましては、副知事及び関係部長から答弁させますので、御了承願います。
   〔副知事千葉浩一君登壇〕
〇副知事(千葉浩一君) 県北・沿岸地域に対する思いについてでございますけれども、私は、久慈地方に2度勤務いたしました。最初は野田村役場でございます。2度目は久慈県税事務所でございます。久慈県税時代の昭和55、56年には、連年にわたりまして冷害に見舞われたときでございます。その対策に奔走したときでもございます。また、一方では、国家石油備蓄基地の誘致や県単高速関連道の第1号として盛岡・久慈ルートの整備が始まるなど、県北・沿岸地域の振興に向けた戦略プロジェクトが動き始めた時代でもございました。
 県北・沿岸地域は、市町村民所得は、全国との格差が縮小しているものの、依然として県内陸部との格差は拡大傾向にございます。また、若者の流出や過疎化の振興に歯どめがかかっていない状況にございます。しかし、21世紀を迎えた今日、大量生産、大量消費の経済至上主義から、真の豊かさを目指した新たな価値観が問われる時代となってまいりました。このような中にありまして、全国的にも高い評価を得ている久慈の山根六郷地区を初め、地域の資源や人々の心の豊かさに着目した個性と特色ある地域づくり活動が大変活発化してきております。私は、このような取り組みが今後ますます活発になり、ITを活用した新たなコミュニティ・ビジネスの展開などによりまして、県北・沿岸地域ならではの魅力と価値が一層高まり、活力ある地域社会が形成される可能性があるものと期待しているところでございます。
 私自身、2度の久慈地方勤務によりまして、地域の方々から大変な御支援と御協力をいただきました。したがいまして、私は、久慈地域に対しまして特別の感慨を持っておりますし、また、思い入れもございます。したがいまして、今後とも県北・沿岸地域の振興のため精いっぱいの取り組みをしてまいりたいと考えております。
   〔総務部長武居丈二君登壇〕
〇総務部長(武居丈二君) アレン国際短期大学の経営再建問題についてでございますが、故タマシン・アレン女史は、キリスト教の精神に基づいて、国際社会にふさわしい豊かな教養と、実生活に役立つ専門の学術を有する人材を養成するという崇高な建学の理念のもとにアレン国際短期大学を設立したものでございまして、当短大は、これまでも多くの人材を社会に輩出し、地域に貢献してきているものと認識しております。
 しかしながら、近年、少子化の進行や短大離れなどの影響から定員割れの状況が続いているなど、その経営は厳しい状況にあると伺っております。
 このような状況のもとで、当短大の再建を図るためには、まずもってみずからが魅力ある大学づくりに向けた経営再建計画を策定し、その計画を着実に推進するなどの経営努力をしっかり行っていただくことが何よりも肝要であり、それを基本としながら、地域が一体となった支援の取り組みを進めていただくことが必要であると考えております。
 県といたしましては、このような取り組みに対しまして、国との役割分担など制度上の制約もありますが、将来、学科再編の計画もあると伺っておりますので、必要に応じ現行の経営資金等に対する融資制度や施設整備に対する助成制度の活用なども含め、アレン国際短期大学からの相談に応じて必要な助言等を行ってまいりたいと考えております。
   〔農政部長佐藤克郎君登壇〕
〇農政部長(佐藤克郎君) まず、県営ほ場整備事業大川目地区の事業推進についてでありますが、本地区は、久慈川に沿った比較的平たん部にある水田地帯でありますが、御指摘ございますように、区画が小さく、道路幅員も狭く、効率的な営農に支障を来しているところであります。このため、農家の方々からほ場整備事業の導入の要望が出され、県では平成8年度から調査を行ってまいりました。その後、推進協議会を初め、関係者の並々ならぬ熱意と御努力により事業実施の合意形成が図られ、現在、土地改良法に基づく事業申請の手続を行うとともに、平成13年度、新規地区として国に採択申請を行っているところであります。本事業は、85ヘクタールの区画整理や用水路のパイプライン化等を事業内容とし、総事業費約15億円、工期は平成13年度から5カ年間を予定しております。
 なお、地元では、本事業の導入を契機に作業の受委託の促進を図るなど、地域の担い手農家に農地の利用を集積して、効率的で安定した営農の実現と、稲作と大豆、野菜等を合理的に組み合わせ、生産性の高い農業の展開を図ることとしております。
 また、大川目地区の農業集落排水事業でございますが、久慈市の意向を踏まえ、ほ場整備地区内に汚水処理施設用地を換地により創設することとしており、今後とも久慈市との連携を図りながら、県としても事業の具体化に向けて支援してまいりたいと考えております。
 次に、耕種農家と畜産農家の連携による堆肥生産と土づくりについてでありますが、野菜など園芸作物の連作障害や地力低下を防止し、安定的生産を確保していくためには、耕種と畜産の連携強化により、その基本となる土づくりに取り組んでいくことが重要であると考えております。このため、今年度、地方振興局単位に地域たい肥生産利用推進協議会を設置いたしまして、家畜排せつ物の処理施設の計画的整備を進めるとともに、耕種農家と畜産農家の堆肥活用に対する共通の認識が高まるよう、土づくり交流会の開催でありますとかたい肥需給マップの作成、さらには堆肥を活用した優良事例の紹介等を行っているところでございます。
 また、久慈地域など県下3地域にモデル地区を設置し、たい肥生産組合と耕種農家においてたい肥流通協定を締結いたしまして、堆肥の生産から運搬、散布までの実証を行っているところであります。
 今後は、こうした取り組みの成果を踏まえ、各地域の協議会を核として、堆肥の需給や運搬・散布作業の受委託の調整を行うなど、有機物リサイクルのネットワーク化を図り、地域ぐるみで家畜排せつ物を活用した土づくりを促進し、園芸作物等の生産振興に努めてまいる考えでございます。
   〔林業水産部長本山芳裕君登壇〕
〇林業水産部長(本山芳裕君) まず、間伐に対する取り組みでありますが、県北沿岸地域、特に久慈・二戸地域におきましては材価の低いアカマツ林が多く、また、林道等の整備がおくれていることから、伐採・搬出コストの低減を図りながら間伐を推進することが重要となっております。このため、国の補助事業である水土保全森林緊急間伐対策事業等を活用しながら、アカマツ材等の利用促進が図られるよう、作業道の開設や高性能林業機械による低コスト化に取り組んでいるところであり、緊急間伐5カ年計画においては、県北地域において県全体のおよそ2割に当たる約1万5、000ヘクタールの間伐を予定いたしております。
 しかしながら、森林の公益的機能の高度発揮や効率的、一体的な間伐を行う緊急間伐団地の設定につきましては、間伐材による収入が見込まれないことなどから森林所有者の理解が得られにくいなどの理由により、対象地の選定が必ずしも円滑に進んでいない面もあり、今年度末までに久慈・二戸地方振興局管内の11市町村中5市町村での設定見込みにとどまっております。このため、今後、新たに地図上に間伐対象地が表示できる市町村森林資源管理システムを活用しながら、県、市町村、森林組合等で組織した地区間伐推進協議会が中心となって間伐団地の円滑な設定を推進する等により、県北沿岸地域の間伐が計画どおり推進されるよう取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、いわて森のトレー生産協同組合の事業についてでありますが、当該事業は、健康や環境に対する国民の関心が高まっている中で、発泡スチロール製トレーなどの代替として天然素材である木製のトレーの生産施設を整備し、木材利用への新たな取り組みにより、間伐の促進と地域の林業、木材産業の振興を図ろうとするものであります。
 その進捗状況につきましては、県としても補助事業の円滑な推進等の観点から、随時、協同組合の動向の把握に努めているところであり、機械施設の整備が3月末をもって完了し、4月から本格生産に入る見込みのもと、現在の従業員28名体制を今後必要に応じて増員し、組織体制の強化を図るとともに、製品の販路については、包装関連流通業界を対象とするテスト販売や首都圏で開催される各種イベントに積極的に参加するなどにより、その確保に努めている旨確認しております。
 県といたしましても、これまで地方振興局の地域活性化事業調整費や国の補助事業等を活用しマーケティング調査などを行ってきたところであり、今後とも、市を初め、関係機関・団体と緊密に連携し、事業目的が早期に達成されるよう引き続き適切な指導を行ってまいりたいと考えております。
 次に、漁業集落排水の整備促進についてでありますが、県におきましては、新・全県域汚水適正処理構想に基づき、下水道等の関連分野と連携しながら効率的な汚水処理施設の整備に取り組んでおります。
 沿岸地域の漁業集落排水施設の整備状況は、これまでに23地区で事業を実施し、平成12年8月現在、9地区で供用を開始しており、漁業集落排水施設整備事業の計画対象人口で見た整備率は11%となっておりますが、平成22年度には整備率63%、おおむね40地区での供用開始を目標に事業を実施する予定であります。
 久慈管内では7地区で実施し、4地区で供用を開始しており、現在、整備率は9%となっておりますが、平成22年度末の目標は66%と、県平均をやや上回る見込みであります。
 県といたしましては、この目標を着実に達成するため、引き続き市町村への技術的な支援や起債償還額に対する助成とともに、新たに平成13年度に創設される予定の漁業集落排水施設整備の都道府県代行制度を導入するほか、市町村と連携して地域の課題を具体的に把握する漁村生活環境改善推進運動を展開するなどの取り組みにより、漁業集落排水施設の整備を積極的に促進してまいる考えであります。
 次に、久慈地区魚類栽培事業協議会における検討状況と今後の対応についてでありますが、久慈地区は、これまでサケ、ウニ、アワビを中心とした栽培漁業において一定の成果を上げており、さらに漁家の所得向上を図るため、当地区の遠浅で砂地という環境を生かし、ヒラメ、カレイ類を対象とした栽培漁業の推進が重要であると考えております。このため、平成13年度から全県で予定されている110万尾のヒラメ種苗の本格的な放流事業開始に向け、久慈地区魚類栽培事業協議会におきましては、昨年4月及び本年1月の2回会議を開催し、久慈地区における種苗の放流方法や漁業者からの水揚げ協力金の徴収方法を中心に検討が行われてきております。具体的には、種苗の放流について、放流後の生残率を高めるため、稚苗の生育に適した場所にできるだけ数をまとめて放流することを基本に、箇所ごとの放流数等を9月の放流時期までに決定することとしており、また、漁業者からの水揚げ協力金については平成15年度から徴収することとし、その後はヒラメ資源の造成状況を見ながら検討していくこととしております。
 今後とも漁業者の意見を十分に踏まえ、全県組織である魚類栽培運営委員会と連携を図りながら、ヒラメ放流事業の円滑な推進に努めてまいりたいと考えております。
   〔商工労働観光部長鈴木清紀君登壇〕
〇商工労働観光部長(鈴木清紀君) 東北新幹線盛岡以北開業に向けました仮称財団法人岩手県観光協会の機能等についてでありますが、新しい県観光協会は、多様化する観光ニーズに民間が主体となって対応していこうとするもので、民間の力やノウハウを活用し、幅広い誘致宣伝活動や観光客の皆様を温かく迎えるホスピタリティーの向上などに取り組むこととしております。一方、地方振興局は、地域の特性を生かした受け入れ態勢の整備や充実、また、本庁は、隣接県と連携した広域観光や国際観光の推進などを総合的に推進してまいります。
 新幹線盛岡以北の開業に向けまして、県観光協会では、盛岡以北延伸対策事業として、久慈・二戸地域を中心に、雑穀などの食文化や地域ならではの体験などの旅行商品化に向けまして、旅行代理店等の久慈・二戸地区への招待会、それから、日本旅のペンクラブによります観光取材会などを通じましてその魅力を全国に向けてPRしていくこととしておりまして、さらに、14年12月の開業に向けて、八戸地域を含む広域的観点から具体的なキャンペーンの展開を検討することとしております。また、久慈地方振興局におきましては、目下開業を見据えまして、広域観光ルートの検討や八戸地域を含む観光物産展南部展の実施など、地域情報の発信に取り組んでおります。
 今後、新幹線盛岡以北の開業を観光振興の大きな機会ととらえまして、県観光協会や地方振興局を初め、関係者一致協力いたしまして、県北地域の観光資源の全国発信に取り組んでまいりたいと考えております。
〇議長(山内隆文君) 次に、小野寺研一君。
   〔6番小野寺研一君登壇〕(拍手)

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