平成13年6月定例会 第10回岩手県議会定例会会議録

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〇2番(飯沢匡君) 政和会の飯沢匡でございます。
 本日、先駆けの栄を賜りましたことに感激しているところでございまして、先輩・同僚議員各位に心から感謝申し上げます。
 それでは、議長のお許しをいただきましたので、順次、通告に従い質問をさせていただきます。
 経済財政諮問会議による経済財政運営の基本方針、いわゆる骨太の方針がまとまり、閣議決定され、小泉内閣が掲げる聖域なき構造改革が本格的に動き出すことになるようであります。国と地方との関係も、個性ある地域の発展を目指すことを目標とし、地方交付税は客観的かつ単純な基準で交付額を決定するような簡素な仕組みとすること、国からの税源移譲を含め、地方の税源配分について根本から見直すという、抜本的な改革を主題にした内容であります。地方交付税は、地方自治体間の財源の不均衡を調整し、一定の行政サービスの水準を提供できるよう、財源を保障する制度として機能してきましたが、その認識を一変する内容であります。
 地方分権の声が高まる中、以前より真の地方自治を推進するには、何よりも国から地方に税源を移譲する、地方自主財源を増強することに主眼を置くべきとの議論がありました。増田知事も適切な税財源の配分のあり方について、自主的、主体的に施策を展開するためには、自己決定、自己責任の地方自治の歳入面における地方自治を確立することを目指す方向として示されておりました。その意味において、地方税の税源移譲が明確に盛り込まれたことは、大きな前進と受け取れます。しかし一方で、岩手県のような歳入総額中に占める地方税の割合が20%に満たない地方自治体にとって、何らかの税源移譲がなされたとしても、現実的に税源の偏在を是正するには、まだまだ交付税のような財源調整制度は必要であります。この点が、これから国と地方との間で大きな議論になろうかと思いますが、まず、国の基本方針を受けて、適切な地方交付税配分の方向性について御所見を知事にお伺いいたします。
 今回の交付税にかかる税源移譲の方針は、いわばカードゲームに例えると、今まで親が全く札を見せずに裏返しで子に渡していたものが、ようやく1枚ほど表を見せて渡すようになり、ゲームらしくなってきた様相には見えるが、いまだ肝心の残された親の手のうちは隠されているので、子の札の切るタイミングをはかるのに、子同士が顔を見合わせて、いまだ進行していない状況であるように思われます。地方交付税総額自体が、その原資である所得税、法人税などの国税5税では賄い切れず、たび重なる交付税特別会計からの借入金で補てんされている現状をかんがみれば、親である国の手のうちの内情は余裕のある内容ではないにせよ、交付税と、上からの合併をセットで強力な札を切ることも想定しながら、事に対処しなくてはならないと思います。私は、そのためには、地方からの発信と地方自治体の財政や政策面での自立性を高める、みずからの努力が一層必要になると考えます。
 地方分権推進において、国と自治体は対等・協力関係にあるものと位置づけられており、財政調整制度の運用に当たっても、将来的には自治体みずからが行うことが望ましい関係と言えます。こうした関係を築くのは、なかなか困難な道のりであると考えますが、対等な関係と位置づけられたならば、この改革実行の機をとらえて、先般、地域から変わる日本の知事メンバーで共同緊急アピールをしたような、アクティブな発信姿勢がますます重要になると考えます。今までのような受け身の姿勢から脱却して、政策、事業評価システムの導入による自治体みずからのアカウンタビリティーを明らかにする努力をするなどの、行政みずからの改革も重要であります。分権推進のため、税財政改革が今、提起され、国と地方がようやく同じテーブルに着いて議論ができる状況が整ったと考えますが、国に憶することなく対等に議論することが、これからの地方自治体の将来にとって大きなかぎとなる気がいたします。
 以上、述べました有効な発信と自治体みずからの改革についての御見解をお伺いいたします。
 次に、今後の地方振興局の強化について数点お伺いいたします。
 今年度からの本庁部局再編により、企画振興部から地域振興部へと名称がかわり、地域により一層踏み込んでいくという、県当局の積極的な姿勢があらわれたものと、県民からも大きな期待が寄せられているところであります。地方振興局は、まさに地域と接する重要な拠点であり、地域の声の受け皿であります。知事は、地方振興局の強化すべき機能として、地域の視点に立って地域住民や市町村とともに地域づくりを考えていくには、地方振興局の自主的、自立的な政策立案機能、予算、人事などを含めた総合調整機能の強化と、地方振興局の総合性と自己完結性を一層高めていくことが必要と申されております。
 調整機能においては、介護保険における広域事務処理の各市町村間のコーディネーションを初め、近々の例を挙げれば、東磐井郡の千厩地方振興局で主体運営されている東磐井体感フェスタの企画と実行は、今までには単独町村間ではなし得なかった東磐井6町村のイベントを有機的につなげ、さらに発展させた画期的なものであると高い評価を受けておるなど、その役目を十分発揮していると認識しております。しかしながら、自己完結性を高めるには、いまだ道険しの印象がぬぐい切れないのは事実であります。
 多くの権限委譲がなされ、また、市町村補助金制度の創設などの今までの御努力には敬意を表します。しかし、例えば、特に要望の多い土木案件等において、B/Cだけでははかれないプラスアルファ分の地域の事情を理解しているのは、現場を預かっている地方振興局の職員であり、地方振興局の主体的な判断に基づく施策の展開を図れるような真の自己完結性を高めるには、もう一歩大きく踏み込んだ権限委譲も必要と考えます。また、私は、この自己完結性を高めることは、職員のさらなる意識の向上につながり、地方振興局自体の活性化にもつながると考えるわけですが、権限委譲について、現状の課題と今後のさらなる強化策についてお尋ねいたします。
 2点目は、部局編成と呼応した地方振興局内の組織編成のスケジュールについてであります。
 あえて本庁の部局編成と時期を同じくしなかったのは意図的なものがあると思いますので、その点を含めてお知らせ願います。
 記憶に新しい雷波少年の事件は、今後の現場サイドの環境行政に対する教訓を与えたと私は感じております。廃棄物処理の問題が、従来の縦割り組織で処理されていた結果が、あのような結末になったわけでありまして、決して職員のみを責められる問題ではないと思うのであります。地方振興局内での環境問題に、また、廃棄物処理の問題に、即座に対応でき得る新たな体制づくりも必要かと思いますが、組織編成問題とあわせてお伺いいたします。
 3点目は、最近発表された事務事業の一部市町村への権限移譲に関連してお伺いいたします。
 事業に沿った県職員の市町村への人的支援は画期的なものであり、財源が不足している市町村にとって、事業遂行の円滑化にはかなりの効果が期待されるものですが、ややもすれば事業は丸ごと地方振興局をスキップしてしまい、現時点での情報を知る限りにおいては、地方振興局の強化とは背反する印象もございます。
 本事業と地方振興局の役割の相互関係は、明確にしておく必要があると考えます。どのように役割の分担を図ろうとするのかお知らせ願います。
 次に、木質バイオマスの今後の導入等についてお尋ねいたします。
 木質バイオマスエネルギーの利用は、森林の活性化、地域経済の振興、木質系廃棄物の処理、化石燃料の節約による二酸化炭素の排出削減に寄与するなどの環境と調和するエネルギーとして注目を浴びているのは、御案内のとおりであります。本県においても、岩手県新エネルギービジョンの中に、地域特性を生かしたバイオマスエネルギーの積極的な活用を図ることを明確にしておりますし、昨年から先駆的に木質バイオマスに取り組むスウェーデンとの交流により、調査・情報収集を図り、さらに昨年、民間を中心に発足した岩手・木質バイオマス研究会とも意見交換をしながら研究を重ねていると伺っております。
 ところで、私たち政和会の議員計4名は、先月、木質バイオマスの先進地であるスウェーデン・ベクショー市を視察する機会をいただきました。スウェーデンでは、1次エネルギーに占めるバイオマスのシェアが20%近くにも達し、高い率の炭素税や硫黄税の導入でバイオマスが価格競争の面で著しく有利になり、工場残材のみならず、森林から生産される林地残材の利用が急激に伸びてきたそうであります。
 また、通常の素材生産の中に、燃料用チップの生産が円滑に組み込まれるようになったこと、森林バイオマス用の各種インフラが整備されたこと、学習効果、企業統合などで取引費用が低下したこと、木質燃料の分野でも市場の自由化で競争力がついたことにより、森林バイオマスのコストも20年ほどの間に大幅に低下しているそうであります。制度的な環境や住民の地球温暖化に対する環境意識の違いを十分に実感いたしましたが、我が県においても実行でき得る可能性も十二分に感じ取ってまいりました。
 そこでお伺いいたしますが、1点目は、今年度から3カ年の事業で木質バイオマス資源普及促進対策事業が始まり、木質バイオマス活用計画の策定が練られるわけですが、今後の県の導入に向けてのアクションプランが、現時点でどうなっているのかお尋ねいたします。あわせて、県立施設での木質バイオマスの導入について、プランがありましたらお示しください。
 2点目は、具体的取り組みの実践方策であります。
 岩手県に限らず、我が国での導入の際に大きな課題になるのは、燃料源になる木質バイオの輸送コストであります。あくまで、大がかりで木質バイオの利用を考えた場合、その課題解決は容易なものではありませんが、盛岡にも来ましたベクショー市の方からも、岩手で今すぐでき得る一つの選択肢として、地域暖房という御示唆をいただきましたが、原料を安価で調達できる範囲内で、木質バイオマスによる地域暖房計画をモデル設置して行うのが最も可能性があると考えますが、いかがでしょうか。
 現時点では、ようやく研究段階から実行段階の緒に入ったばかりでありますが、全国で岩手県は第2位の森林面積を持つ林業県で、将来、この木質バイオマスエネルギーの実践的活動において先取りの精神を持って取り組むことは、林業関連産業の活性化はもとより、多面的に多くの影響力を持つと考えられるものであります。ひいては、県北地域において既に木炭から木酢液を取り出し、新たな木材需要の掘り起こしを図っていることもあわせ、木質バイオ基地の建設という大きな夢も膨らむものでありますが、どのようにお考えでしょうか、御所見をお伺いしたいと存じます。
 次に、県産農産物の流通問題についてお伺いいたします。
 生産者の方々は、とにかく良質な作物をつくろうと頑張ってきた。しかし、できたものを確実に売っていかなければ、生産者への付加価値は戻ってこない。あえて定義せずとも、農産物流通問題の根本は、この点に帰着することは自明の理であります。最近の消費者マーケットの多様化、多元化を肌で感じるときに、農産物の流通問題には農業団体のみならず、県もより一層、本腰を入れてこの対策に取り組まねばならないと私は強く思うのであります。
 岩手県の流通においては、市場流通や系統団体の流通機能を活用しての販売が主流を占めてまいりました。現在まで、消費者や流通業者に安定的に商品供給する意味においては、大切な役割を果たしてまいりましたし、首都圏マーケットをにらんだ流通手段においては、これからも有効かつ重要と認識しております。しかし、農業団体を取り巻く環境は急激に変化しており、岩手県の場合、その流通手法において強力な牽引力となった農業経済団体が全国組織への併合を来年に控えるなど、外的環境が大きく変化しております。現時点での体制が180度大転換することは考えにくいことですが、物流体制が将来、全国組織の中の枠組みに入ることにより、さまざまなメリット、デメリットが生じることが予想されます。メリットとしては、輸送コスト合理化が図られ、その結果、生産者にコスト削減部分が還元されますでしょう。しかしながら、将来、コントロール本部が岩手外部に位置した場合、岩手初という独自性が失われはしないか、それが岩手ブランドをさらに定着し発展するのに影響しないか、心配な面がございます。まず、この外的変化をどのように認識し対応なさるのかお尋ねいたします。
 また、情報化の進展により、インターネットを通じた取引も加速的に見込まれるなど、流通を取り巻く情勢が大きく変化しております。特に新しい農業や食品開発に挑戦する農業者には、現在の流通方式では対応できないと考えます。特定顧客との1対1の相互取引の例も増加するなど、多種多様な流通方式がこれからも予測できるのであります。増田知事もこの問題に大きな関心を寄せていると週刊雑誌に掲載されておりましたが、的確なマーケットの把握や物流手段の高度化、輸送費が割高な大都市向けの産直農産物などに対応する流通対策の検討が急がれると思いますが、お考えをお聞かせください。
 次に、食品産業との連携についてお伺いをいたします。
 近年、消費スタイルの変化等により、中食や外食の進展に見られる食の外部化やサービス化が進み、外食産業や食品流通等に支出する飲食費の割合が高まっていると報ぜられております。平成7年の統計で、最終消費された飲食費は80.4兆円で、その帰属割合は、関連流通業が33.5%、食品工業が28.3%、外食産業が19.1%、農水産業が19.1%となっており、食品関連産業の比重の高さを数字でも反映しております。また、加工原材料における国産農水産物の割合は近年大きな変化はないものの、約66%を占めております。このように、農産物の販路は食品産業と密接にかかわっております。私は、流通段階において、食品産業との連携が新たな農業のあり方とも結びつくと考えますが、今までの取り組みと、今後どのように進めていくのかお知らせください。
 また、関連して、農業ビジネスの創出という観点からお伺いいたします。
 現代は24時間眠らない社会へと変貌いたしました。
 コンビニエンスストア業界の流通業界における席巻ぶりは、その象徴であります。結論から申せば、私は、眠らない都市圏をマーケットに絞った、タイムリーに夜つくって朝届く農産物の加工を主としたビジネスを創出できないものかと考えるものであります。最近、店頭に並ぶ商品を見ても、生活スタイルの多様化などから、例えば調味料のように少量のパッケージのものが、逆に値段が高いという商品を見かけることができます。このような現象こそ、現代消費社会の鏡でありまして、岩手ながらの食材の豊富さを生かし、新たな付加価値をつけて売り込む、この姿勢がこれから農業の進むべき一つのポイントとなるかと思いますが、どのようにお考えでありましょうか。
 また、先ほど述べました食品産業との連携において、食品加工の企業誘致も視野に入れていってはどうかと考えますが、この部門における取組状況と今後の展望を商工労働観光部長にもお尋ねしたいと存じます。
 次に、家畜排せつ物対策についてお伺いいたします。
 先般、農林水産部長の視察に便乗させていただき、藤沢町で稼働されるバイオガスプラントの試験運転を見学いたしました。本格稼働はことし秋とのことでありまして、排せつ物処理の最先端の部分であるこの実験プラントの経過と実績を、じっくりと見守りたいと思います。将来においても、このような先端事例を導入でき得るのはごく一部、大規模経営の経営者であります。現実的に多数を占める法的規制にかかるボーダーライン規模の畜産経営者は、この排せつ物問題に対し、いまだに不安を抱いているのが現状であります。
 いみじくも、東山町での県政懇談会においても、この問題について質疑が交わされたところでありました。県では、国庫事業である家畜ふん尿処理整備の予算重点配分等の措置や県の単独支援措置として利子補給制度を創設しておりますが、市町村への周知は徹底しているでしょうか。あわせて、畜産経営者への指導体制の整備状況はどのようになっておりますでしょうか、お知らせ願います。
 畜産経営者並びに酪農経営者が不安を抱く最大の要素は、紛れもなく設備投資額の大きさにあります。この実態を踏まえ、処理における低コスト化が今後の課題となりますが、その対策はどのようになっておりますでしょうか。
 また、排せつ物のうち、固形物においては堆肥利用促進協議会の設置や耕種農家との連携を図る堆肥需給情報のネットワーク化は着々と進行しているようではありますが、尿処理においては液肥としての利用をしているものの、これを散布する自己用地の不足や周囲環境の悪化を懸念して新たな脱臭装置の設備投資を余儀なくされている事例があると伺っております。これからは、地域との共生を図りながらこの問題の解決を図ることが大前提となると思いますが、具体的対策はとられておりますでしょうか。県においては、地方振興局単位の地域別に、地域の背景を考慮した処理対策目標を掲げております。この施設設備の方向を定めたものは素直に評価いたすものであります。
 私は、過去に何度となくこの問題を取り上げ、この問題のハードルをクリアしないと、これまで培ってきた岩手のイメージを損なうばかりか、その地位さえも危うくなると警鐘を鳴らしてまいりました。生産者の生産マインドが冷えることなく、地域の特性を十二分に生かされた畜産業が将来も営まれるよう、きめ細やかな対応が必要と考えるものであります。
 最後に、教育問題にかかわり教育長にお尋ねいたします。
 最近、常識的な知識を身につけない、例えば漢字の読み方や熟語の意味がわからないなどの無知であることが世間において恥と思われない、まことにおかしな世の中になってしまった気がしてなりません。
 一部に、青少年の物を知らないことが逆に個性と履き違えられているケースや、そんなもの知らなくても生きていけると開き直るケースも見受けられます。中央民放テレビ番組が、テレビの視聴率稼ぎのためかどうかはわかりませんが、よく言えば娯楽性の高い、悪く言えば内容の薄っぺらな、お笑いタレントを起用した番組がゴールデンタイムに連ねてその風潮をあおっているのも私は問題であると感じておりますが、将来において、このようなお気楽極楽な価値観が通用し続けるとは絶対にあり得ないのであります。
 人間は、壁を越えて大きくなると申します。壁を越える前にギブアップするような風潮は、まことに危険極まりないと感ずるのであります。家に帰っても勉強しない子供がふえたなど、国全体で学力低下が叫ばれ、大学に入っても分数を理解できない学生がいるなどの報道を耳にすると不安が募ります。国においても教育改革の動きが報ぜられておりますが、岩手のたくましい人材を育てるには、基礎学力の習得を再認識する必要性はもとより、この風潮を打破し、子供たちがみずから主体的に学ぶ心の育成を図るため、岩手らしい取り組みが必要と考えます。教育長の御見解をお伺いいたします。
 6月2日に行われた森は海の恋人シンポジウムの中で、増田知事は、環境に恵まれた岩手のよさを実感させ、より大きな心を持たせるのに岩手の子供たちをどんどん野山に送り込むと申しておりましたが、まさにこの考えに基づいた取り組みがなされるよう大きな期待を寄せるものであります。
 以上で私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 飯沢匡議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、地方交付税制度の見直しについてでございますが、経済財政諮問会議のいわゆる骨太の方針でございますけれども、その中ではこのような形になっております。個性ある地方の競争という基本的な方向のもとに、地方財政制度の抜本改革として、起債に対する交付税措置の縮小など、みずからの選択と財源で施策を推進するような地方交付税制度の見直しと、その算定基準の簡素化、地方税の充実確保を掲げておりますほか、地方財政計画の歳出の徹底的な見直しを図る、骨太の方針の中ではこのようなことがうたわれております。
 地方交付税制度の改革に当たりましては、私は、まずもって地方歳出に対する国の関与の廃止、縮減を行うことがまず一番大事なことではないか。国の方で地方の行います事務にいろいろな義務づけなどを多数行っているわけでございまして、そうしたことに対して財政的にそれを措置するというのが地方交付税制度でございますので、まず、そもそもそうした国の関与ということがこうした地方自治体にとって必要なことなのかどうかということを十分に吟味することが必要なのではないか。そして、その上で、国庫支出金──これは補助金などでございますが──などの国からの財源を地方税に振りかえることによって、地域偏在性が少なく、安定性を備えた地方税体系を構築していくことが必要である。地方税を中心とした体系を構築していくべきであると思いますし、それでもなおまだ生じると予想される自治体間の財源格差についての財政調整機能を確保していくことが重要であると、このように考えております。
 今、議員の御指摘にございましたとおり、制度改革の一方で、もちろん地方みずからが財政や政策面などにおける自立性を高めていくことは極めて重要であると考えておりまして、本県では、これまで行ってまいりましたこととして、税源の涵養や超過課税などによる自主財源の確保、そして政策評価などに基づく施策の重点化、公共事業についての費用対効果分析などによって優先度を踏まえて効率的にこれを実施していくようなやり方など、さまざまな努力を傾けてきたところでございます。こうしたことについては、国が今考えております以前からもう既にやってきた実績がございます。
 今後、さらに本県としての分権を推進していくためには、先駆的な施策や事例の研究などを鋭意進めて、政策提案として取りまとめ、国において制度改革に向けた具体的な検討がなされていく中で、こうした本県の考え方を機会あるごとに提言をしていくなど、積極的な発信、発言を行っていきたいと考えております。
 次に、地方振興局の権限委譲の現状と今後の強化策についてでございますが、過去をさかのぼりますと、平成8年度以降、本庁から地方振興局に大幅な事務の委譲を推進いたしますとともに、平成11年度には、地方振興局のいわゆる予算要求の権限や人事権を認めるなど、その強化に今まで一貫して努めてきたところでございます。
 今後におきましては、これまでに既に委譲した事務について、全県的な調整の必要性、そして専門的知識や経験の必要性などの観点からもう一度再検証を行いたいと思っておりますし、これとともに、住民に身近な行政はできる限り住民に身近な市町村が行い、そして、市町村を越えた広域的な業務や県の責任で行うべき事務については県の中でも地方振興局において行うということを基本として、地域の自己完結性を高める観点から、さらに権限委譲を進めて地方振興局の機能の強化を検討していきたいと考えております。
 また、今後予定しております地方振興局の組織の再編につきましては、今進められております地方分権が進展していく中で県と市町村との関係が大きく変わろうとしておりますので、その方向を的確に見定めますとともに、本庁と地方振興局の役割分担をさらに明確にする必要がございますので、ことし4月から行っております今般の本庁再編とは切り離して検討することとしたものでございます。
 また、御指摘のございました雷波少年の問題でございますが──これはテレビ番組で取り上げられた雷波少年でございますが──これは関係機関の連携不足により発生した面がございまして、今後、環境問題に限らず、総合的な連絡調整が必要な課題への的確な対応ということが一層求められておりますので、これから行います地方振興局の組織再編に当たりましても、関係機関の連携、協力をさらに強化する観点からの体制づくりが必要と、このように考えております。
 次に、県事務の市町村への一括移譲と、そして、地方振興局の役割についてでございますけれども、私は、今後の地方行政というのは、従前から繰り返し再三述べておりますが、市町村を中心として行われていくのが一番いい姿だろうと思っておりまして、現在、検討を進めております県事務の市町村への一括移譲も、こうした市町村中心の行政システムを構築するために、さらに必要な人的支援を伴って試行的に実施するものと、このように考えております。
 先ほど、県の仕事はできるだけ住民に近い地方振興局において行いたいと、このように申したわけでございますが、地方振興局の強化というのを最終的な目標ととらえるのではなくて、県の中では住民に近い地方振興局を大事にして、そのことによって地域の自立性を高めたいわけですが、最終的には、その先に市町村の強化ということがはっきりと出ていなければいけないと思っておりまして、そういうことをあわせて進めていきたいと思っています。この試みが定着して市町村行政の強化が図られますと、地方振興局の役割というのは、より広域的な地域振興施策の立案など広範な市町村支援機能を担う方向に質的に変わっていくわけでございまして、こうしたことによってその地域全体の自立性が高められていくものと、このように考えております。
 次に、県産農産物の流通問題についてでございますが、平成14年度に予定されております県の経済連と全国農業協同組合連合会──いわゆる全農でございますが──との統合は、そのねらいとするところは、県内JAの広域合併の動向をも踏まえながら、JAグループ全体として重複している機能を排除したり、管理部門の集約化による合理化、効率化を図って、傘下の組合員が最大限のメリットを享受できる事業運営の確立のために行うと、そのように聞いております。この場合にありましても、これまで行っております営農指導や純情産地いわてブランドによる宣伝販売などの地域独自の機能につきましては、統合と同時に現経済連が組織がえとなって新たに発足する全農岩手県本部がみずからの主要機能として担うこととされておりまして、これによって県本部自体の独自性が確保されると、このようにお伺いしているところでございます。
 県では、新たに設置される県本部との十分な連携のもとに、全国に及ぶネットワークの情報力など、今回統合されることによって新たなメリットが生じますので、こうした統合された後のメリットを積極的に生かしながら、すぐれた生産環境など本県ならではの地域特性を前面に打ち出して、全国的な販売戦略の展開に努めていく考えでございます。
 次に、流通対策についてでございますが、多様化する流通方式の対応については、基本線は、生産者と消費者の顔の見える関係づくりがより重要であると、このように考えております。
 そのため、いわて純情ブランドによる米の重点地域での指定販売、いわゆるエリアマーケティングや県産野菜を品ぞろえした常設店舗、いわゆるサラダ特約店の展開など──これは本県が独自で行っている販売対策でございますが──に加えて、新たに消費者と生産者相互の理解と交流に基づく、いわゆる地産地消の推進を広く県民運動として取り組み始めたところでございます。
 また、生産者の努力が所得として適正に報われるように、産地みずからの判断と責任において、流通コストを含めたトータルコストを念頭に置いて、その中で市場出荷や量販店との相対取引、電子受注システムによる取引──これはインターネット利用での取引なわけですが──、こうしたものは大いなる可能性を秘めていると思いますので、こうした多様な流通チャネルの中からそれぞれの産地にとってより有利な形態を選択していくことが肝要であると、このように思っております。
 このため、現行の流通ルートや流通コストをまず徹底的に検証して、その結果をもとに、生産者と消費者双方にとってよりメリットのある流通の仕組みづくりに向けて、関係者ともども一層の努力を傾注してまいりたいと考えております。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔農林水産部長佐藤勝君登壇〕
〇農林水産部長(佐藤勝君) まず、木質バイオマスの今後の導入等についてでありますが、本県は全国有数の森林県でありますが、この豊かな森林資源を再生可能なエネルギーとして積極的に活用することは、まさしく環境の時代と言われる21世紀にふさわしい取り組みであると考えております。
 このため、県といたしましては、今年度から実施しております木質バイオマス資源普及促進対策事業におきまして、具体的な利用に向けた基本方針を策定するための検討委員会を去る6月20日に発足させたところであります。
 また、林業技術センターにおきましては、地域別の資源供給可能量の調査や木質燃料としての仕様基準に関する調査に着手いたしておりまして、検討委員会では、これらの調査結果等も参考にしながら、本年12月を目途に基本方針を定めることにいたしております。
 さらに、県といたしましては、これと並行してモデル地域を想定してのコスト試算などを行いまして、木質バイオマス活用計画を策定し、まず、県の施設でモデル的に実証を検討してまいりたいと考えております。
 また、木質バイオマスにつきましては、住田町など、新エネルギービジョンを策定した市町村におきまして取り組みを既に始めております。エネルギーの利用形態といたしましては、発電や地域暖房、一般家庭用燃料などが考えられますが、今後の利用につきましては、資源が少量分散的に発生すること、運搬にコストがかかることから半径数十キロメートルの範囲が資源供給の目安であるとの報告もありますので、一定のまとまりのある地域で熱エネルギーを共同で利用する形の地域暖房も御指摘のとおり有力な選択肢と考えております。
 県といたしましては、今後におきましても、森林資源を再生可能なエネルギーとしてさらに利活用する方法、木質バイオマスの実用化に向けまして積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、食品産業との連携についてでありますが、近年、市場規模が拡大している食品産業は、農産物の安定した供給先として大変重要であります。
 これまで県におきましては、食品産業への産地情報の提供や産地交流の実施、契約栽培の促進などを図ってまいりました。米飯やカット野菜、漬物用として食品業者への継続的な供給など、多くの分野で連携が進んでおります。しかしながら、供給時期や供給量、取引価格などの課題もありまして、これらを解決いたしまして食品産業との取引拡大に結びつけていくことが大変重要だと感じております。
 このため、今年度から推進している地産地消運動におきましては、食品産業への県産農林水産物の利用促進を大きな柱の一つとして掲げまして、生産者と実需者とが取引量や価格などの直接交渉できる場を新たに設けるとともに、県産の食材を原料とした特色ある加工品の開発や外食店舗における県産食材利用メニューの提供、さらには産地交流の拡大などを進めていくことにいたしております。
 次に、農業ビジネス、いわゆるアグリビジネスの創出についてでありますが、県では、アグリビジネスを促進するため、これまで産直活動推進フォーラム、あるいは農村女性の起業化に向けた研修会の開催、さらには産直施設等の整備に対する支援を行ってきたところであります。既に県内各地では、農業者等による産直活動や加工品製造、グリーン・ツーリズムと連携した農家レストラン、農家民宿経営などが取り組まれております。こうした取り組みを今後拡大いたしまして、多角的な生産販売により所得の向上を図るために、さきに岩手県アグリビジネス振興方針を策定したところであります。
 今後におきましては、この方針に沿って、アグリビジネスの実践者をネットワーク化し、新たなビジネスチャンスも視野に入れ、経営感覚にすぐれた農業者等の起業化を促進していくことにより、農業生産の高付加価値化を実現する魅力ある農業の振興を図ってまいる考えであります。
 次に、家畜排せつ物対策についてでありますが、御案内のとおり、一昨年の家畜排せつ物法の施行に伴い、畜産農家は、平成16年10月までに家畜排せつ物を適正に処理するための施設整備が必要となりました。このことから、県といたしましては、畜産振興の最重要課題としてとらえ、その対策に当たってまいりました。
 まず、市町村への周知についてでありますが、法の趣旨についての理解を深めるとともに、家畜排せつ物処理施設の整備に係る国庫補助事業や県単独の助成措置についての浸透を図る必要があることから、市町村ごとの説明会をいち早く開催するなど、その徹底に努めてきたところであります。
 また、畜産農家への指導体制につきましては、地方振興局ごとに、県、市町村、農業団体で構成する地域たい肥生産利用推進協議会を設置し、個別農家ごとの意向を掌握するとともに、その意向に即した施設整備について助言、指導をしているほか、県や農業団体の職員の中から環境対策の専門技術者を養成しながら、個別巡回などにより、悪臭防止、汚水処理対策、良質な堆肥の製造技術等の普及、指導に当たっているところであります。
 次に、家畜排せつ物処理の低コスト化対策につきましては、個々の経営状況に応じた弾力的な施設整備が可能になるように、国の2分の1補助つきリース事業や、今年度、大幅に改善、拡充いたしました県単独の地域有機物資源活用促進事業などの活用により、パイプハウス堆肥舎や、あるいは中古の堆肥攪拌機などの導入、共同による施設の整備などを推進し、投資額の軽減に努めているところであります。
 次に、尿処理対策でございますが、液肥として利用する場合は自己利用草地への散布が一般的であるということから、経営規模に見合った草地を確保する必要があります。規模の拡大とともに草地が不足する際には、国の事業である農地利用集積実践事業などを活用いたしまして、地域ぐるみの話し合いによる農地の利用集積を推進しているところであります。
 さらに、今年度から、県北地域において関係機関・団体一体となって、より使いやすい液状のコンポスト化に向けた現地試験に取り組んでいるところであります。
 今後におきましても、農家はもちろんのこと、市町村や農業団体と相談を重ねながら、地域や個別の実情に応じたきめ細かな対策、普及に努め、周辺環境と調和のとれた畜産の振興に取り組んでまいる考えであります。
   〔商工労働観光部長鈴木清紀君登壇〕
〇商工労働観光部長(鈴木清紀君) 食品加工部門における企業誘致の取り組みについてでありますが、食品加工関連企業の誘致は、これまでに36社の立地を見ているところであります。これを最近の10カ年について見ますと13社の立地となっておりまして、県北地域におきましては、地域特産の野菜を原料とする加工食品の製造、沿岸部におきましては、魚介類加工や水産総菜の加工を行う企業が立地しているなど、地域の1次産業と密接な関係を有しております。
 また、立地に当たっての企業のニーズは、地域において原料となる農林水産物が安全であること、それから安定的な供給体制が整っていること、そして食品製造に欠かせない良質な水が確保されていること、この3要件が加工分野では重要とされておりまして、他の業種に比較して、地域特性や農林水産業との結びつきがより強い傾向となっております。
 したがいまして、県内1次産業の展開方向を見据えながら、加工分野はもちろんのこと、今後は、研究開発、流通、販売など多分野にわたるアグリビジネス関連企業の誘致も視野に入れまして、農林水産部門との連携を図りながら、食品加工関連企業の誘致に取り組んでまいりたいと考えております。
   〔教育長合田武君登壇〕
〇教育長(合田武君) 岩手のたくましい人材を育てるための取り組みについてでありますが、岩手の将来を担う子供たちを育成するためには、ゆとりある教育活動の中で基礎・基本を確実に身につけさせるとともに、体験的な活動や問題解決的な学習などを通し、みずから学び、みずから考える力などの生きる力をはぐくんでいくことが重要であると考えております。
 このことから、県教育委員会といたしましては、しっかりとした学力の定着のため、子供一人一人に基礎・基本を繰り返して指導するとともに、個別指導やグループ別指導、チーム・ティーチングなど、個に応じたきめ細かな教育の実現に努めているところであります。
 また、豊かな自然や温かい県民性、人づくりを大切にしてきた風土の中で、子供たちに主体的に学ぶ心やたくましさ、創造性などを身につけさせるため、学校が地域と連携し、キャンプやいかだづくりなどの野外活動、水生生物調査や野鳥保護などの自然体験活動、米づくりやサケの新巻づくりなどの農林漁業体験活動、神楽や剣舞などの地域の伝統文化を継承する活動など、さまざまな体験活動の充実に取り組んでいるところであります。
 県教育委員会といたしましては、今後とも、よりよく問題を解決する資質や能力などを育てることをねらいとした総合的な学習の時間の充実に取り組むなど、岩手の自然や地域の教育力を生かした教育の推進に努めてまいりたいと考えております。
〇議長(谷藤裕明君) 次に、柳村岩見君。
   〔5番柳村岩見君登壇〕(拍手)

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