平成14年6月定例会 第14回岩手県議会定例会会議録

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〇23番(斉藤信君) 日本共産党の斉藤信でございます。
 議案第4号、第6号、第17号、並びに請願受理番号第77号の一部不採択に反対の討論を行います。
 議案第4号は、住民基本台帳法施行条例であります。本会議でも質問しましたが、住民基本台帳法そのものが、個人のプライバシーを侵害するおそれがあるとして、改正法の附則として、この法律の施行に当たっては、政府は、個人情報保護に万全の措置を期すために、速やかに措置を講じるとされていたものであります。当時の小渕首相も、政府としては、民間部門を含む個人情報のあり方を総合的に検討し、法を含めたシステムを速やかに整備することが前提であると認識していると答弁していたものであります。しかしながら、包括的な個人情報保護の法律も体制も確立していないのが現状であります。本人確認情報は、国の16省庁で93の事務で活用されることになっています。この中には、防衛庁も含まれます。防衛庁は、情報公開請求者のリストを作成し、それを庁内情報通信網に流していたことが大問題となっていますが、後から情報漏れ、目的外の使用があったでは、取り返しがつかない問題であります。三重県議会は先日、住民基本台帳ネットワークシステムの延期、凍結を求める意見書を可決しています。国会でも、野党は共同して、住基ネットの延期、凍結を求めています。日本弁護士連合会、岩手弁護士会も実施の延期を求めています。
 きょう報道されている共同通信社による全国世論調査では、83.2%が8月5日の実施日を知らず、延期し再検討すべきが51.1%、中止すべきが23.2%、合わせて74.3%となっています。住民基本台帳ネットワークシステムを実施する国民的合意は全くないことを示しています。
 こうしたもとで、住民基本台帳ネットワークシステムを8月5日から強行実施するべきではありません。実施の延期と凍結こそ求めるべきであります。
 議案第6号は、低開発地域工業開発地区における県税の課税免除に関する条例を廃止しようとするものであります。この課税免除は、昭和37年から昨年までの40年間実施されてきましたが、最近の5年間でも、法人事業税で15億8、600万円余、不動産取得税で9億400万円余の課税免除額となっているものであります。県自身がこの制度により、低開発地域における工業の育成がなされ、地域間の産業振興の格差是正、税収の増大、雇用の確保等に大きく寄与し、地域経済の活性化に重要な役割を果たしてきたと評価しているものであります。この廃止は、地方交付税の減収補てん制度の廃止によるものですが、深刻な不況のもとで、この廃止は地域経済の活性化に逆行するものであります。県は、関係部局との協議を含め、地方分権の立場からもこれを継続すべきではないでしょうか。
 議案第17号は、花巻空港用地造成工事の請負契約を締結しようとするものであります。利用客が減少、停滞する中で、278億円余の花巻空港整備事業そのものが再検討と見直しを求められています。昨年の定期便の旅客数は50万人を割りました。この整備事業に当たって行われた利用予測調査では、2年後の2004年には、82万7、900人の利用客が予測されています。昨年の実績と比べれば、33万2、000人の乖離が生じています。これは59%にしかなりません。費用対効果分析は、この現実離れした利用予測を前提としたものであります。全国でも問題になっていますが、過大な利用予測調査をやり直し、費用対効果分析も見直すべきであります。岩手県の県債残高は、昨年度末で1兆2、973億円、県民1人当たり92万円になる深刻な状況であります。こうしたもとで、不要不急の大型開発、大型公共事業の見直しは、県民の暮らし、福祉、教育を守る上でも欠かせないものであります。
 また、この契約案件は45億円余の大型公共事業ですが、落札金額は設計金額に対し94.7%となっており、昨年の用地造成工事の78.72%と比べても異常に高いものであります。適正な競争が行われたとは考えにくいものであります。
 請願受理番号第77号は、若者の引きこもり自立支援を求めるものであります。
 4項目の請願のうち1項目の、県は、関係機関で引きこもり対策検討委員会(仮称)を設置されたいが採択をされたことは評価いたします。しかし、その他の3項目が不採択となったことは問題であります。その内容は、若者の自立までの就労援助資金対策、若者の自立のための就労訓練所を伴う共同宿泊施設の設置、青少年自立支援センターポランの広場への助成措置を求めるものであります。
 若者の引きこもりは全国で100万人に及ぶと言われ、県内でも3、000人以上と言われる深刻な問題であります。厚生労働省も昨年、引きこもりの全国調査を行い、社会的引きこもり対応ガイドラインを示しました。やっと対策に着手したというのが現状であります。
 県内の青少年自立センターポランの広場は昨年4月に開設され、この1年間で450件の相談を受けましたが、その6割が若者の引きこもりの相談でありました。県の総合福祉センターからの紹介も含まれています。若者の引きこもりの問題は、その規模からも、解決の長期化と家族の苦悩という点でも、未来を担う青年の自立という点でも、今、行政自身が真剣に対応すべき課題であります。既に長野県と長野市は、若者の居場所のアトリエ虹へ600万円の補助をしています。埼玉県でも引きこもり専門の相談窓口を開設するとともに、県下2カ所の居場所へ23万円の補助を行っています。
 きょうの新聞報道によれば、岩手県も若者の引きこもり対策のプロジェクトチームの設置を決め、早期発見から自立に向けた総合的サポートのあり方を探るとしています。若者の自立に向けた就労訓練やNPO法人の活動支援も検討課題とされています。
 今回の請願の一部不採択は、引きこもりで苦しむ青年とその家族の願いに背を向けるもので、極めて残念であります。また、ボランティアで頑張っている民間の努力に対する冷たい対応と言わなければなりません。今後の抜本的対策の強化を改めて強く求めるものであります。
 以上、私の反対討論といたします。御清聴ありがとうございました。

〇議長(谷藤裕明君) 以上で通告による討論は終わりました。
 これをもって、討論を終結いたします。
 これより議案第4号、議案第6号、議案第17号及び請願陳情中、受理番号第77号を一括して採決いたします。
 各案件は、委員長の報告のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕

〇議長(谷藤裕明君) 起立多数であります。よって、議案第4号、議案第6号、議案第17号及び請願陳情中、受理番号第77号は、委員長の報告のとおり決定いたしました。
 次に、議案第1号から議案第3号まで、議案第5号、議案第7号から議案第16号まで、議案第18号、議案第20号から議案第26号まで、及びただいま議決いたしました請願陳情を除く請願陳情を一括して採決いたします。
 各案件は、委員長の報告のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕

〇議長(谷藤裕明君) 起立全員であります。よって、議案第1号から議案第3号まで、議案第5号、議案第7号から議案第16号まで、議案第18号、議案第20号から議案第26号まで及びただいま議決いたしました請願陳情を除く請願陳情は、委員長の報告のとおり決定いたしました。
   
日程第27 委員会の閉会中の継続審査及び継続調査の件

〇議長(谷藤裕明君) 次に、日程第27、委員会の閉会中の継続審査及び継続調査の件を議題といたします。
   
〔参照〕
総務委員会
 平成14年度政策評価結果について
 岩手県市町村合併支援プランについて
環境福祉委員会
受理
番号
件名
78介護老人福祉施設の増床、介護報酬の改善及び低所得者への施策、介護予防、虚弱高齢者向け福祉関連施設などの整備促進を求める請願

商工文教委員会
議案
番号
件名
19岩手県立盛岡農業高等学校産業教育施設改築(建築)工事の請負契約の締結に関し議決を求めることについて

受理
番号
件名
64増田知事の私学振興公約の早期実施等を要望する請願
6630人以下学級実現を中心とする、ゆきとどいた教育をすすめる請願
76教育予算の拡充、学級編制基準・教職員定数の改善、義務教育費国庫負担制度の堅持を求める請願

農林水産委員会
 森林整備地域活動支援交付金制度について
県土整備委員会
住民と行政等との協働のまちづくりに関する本県の取組状況について
   

〇議長(谷藤裕明君) お諮りいたします。委員会の閉会中の継続審査及び継続調査の件につきましては、先ほど各委員長から報告のとおり申し出がありましたが、委員長からの申し出のとおり、閉会中の継続審査及び継続調査に付することに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

〇議長(谷藤裕明君) 御異議なしと認めます。よって、本件は委員長からの申し出のとおり、閉会中の継続審査及び継続調査に付することに決定いたしました。
   
日程第28 発議案第1号岩手県議会情報公開条例及び政務調査費の交付に関する条例の一部を改正する条例から日程第38 発議案第11号第60回国民体育大会冬季大会スキー競技会の開催に関する決議についてまで

〇議長(谷藤裕明君) 次に、日程第28、発議案第1号から日程第38、発議案第11号までを一括議題といたします。
 お諮りいたします。ただいま議題となっております各案件は、各会派共同提案及び委員会提案でありますので、会議規則第34条第2項の規定及び先例により、議事の順序を省略し、直ちに採決いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

〇議長(谷藤裕明君) 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 これより、発議案第3号高速道路網の整備促進と道路特定財源の確保についてを採決いたします。
 本案は、原案のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕

〇議長(谷藤裕明君) 起立多数であります。よって、発議案第3号高速道路網の整備促進と道路特定財源の確保については、原案のとおり可決されました。
 次に、発議案第1号、発議案第2号及び発議案第4号から発議案第11号までを一括して採決いたします。
 各案件は、原案のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕

〇議長(谷藤裕明君) 起立全員であります。よって、発議案第1号、発議案第2号及び発議案第4号から発議案第11号までは、原案のとおり可決されました。
   
日程第39 発議案第12号個人情報保護法案の撤回を求めることについて

〇議長(谷藤裕明君) 次に、日程第39、発議案第12号個人情報保護法案の撤回を求めることについてを議題といたします。
 提出者の説明を求めます。斉藤信君。
   〔23番斉藤信君登壇〕

〇23番(斉藤信君) 個人情報保護法案の撤回を求める意見書案の提案を行います。
 この提案は、日本共産党と社会民主党の共同提案でございますが、私から提案させていただきます。
 個人情報保護法案の撤回を求めるこの意見書は、今国会で審議をされている個人情報保護法案は、小泉首相自身が、審議前から修正を検討してほしいと指示したことに見られるように重大な欠陥法案であります。その内容は、個人情報保護を名目にしながら、言論・表現の自由に政府が介入する道を開くものとなっていることであります。
 個人情報保護法案では、利用目的の制限、適正な取得、正確性、安全性、透明性の確保という五つの原則を報道機関や政党、個人にも適用するとしています。これでは、鈴木宗男議員のような政治家の汚職・腐敗やスキャンダルの報道も、本人が関与し許可しなければ報道が困難になります。防衛庁の個人情報リスト作成や鈴木議員の外務省介入の内部文書の暴露も、適切な方法で取得したのか問われることになります。新聞、放送、出版業界や作家など、報道・言論にかかわる人々が一致して反対しているのもこのためであります。
 特に重大なことは、防衛庁によるリスト作成問題であります。国民の思想・信条から病歴まで組織的に調査する重大な人権侵害が起きても、行政機関を対象とする個人情報保護法案では処罰されません。国民が自分の情報は自分でコントロールする権利も明記していません。これだけ政権与党の疑惑・スキャンダルが噴出しているときに、政治腐敗や権力犯罪の追及を妨げ、言論・表現の自由に重大な制約を課す法案をごり押しすることは言語道断であります。
 個人情報保護は真剣に検討すべき課題ですが、それを口実に言論規制に走るのは、世界の流れにも反しています。EU、いわゆる欧州連合では、95年10月に個人情報保護指令が制定されていますが、報道や芸術、文学的表現の目的のための個人情報の処理は適用除外となっています。憲法が保障する言論・表現の自由を危うくする法案は、部分的な修正ではなく、きっぱりと撤回して抜本的に見直すべきであります。
 以上が個人情報保護法案の撤回を求める意見書案を提案した理由であります。皆さんの御賛同をよろしくお願いいたします。(拍手)

〇議長(谷藤裕明君) これより質疑に入るのでありますが、通告がありませんので、質疑なしと認め、質疑を終結いたします。
 お諮りいたします。ただいま議題となっております発議案第12号個人情報保護法案の撤回を求めることについては、会議規則第34条第2項の規定により、委員会の付託を省略いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

〇議長(谷藤裕明君) 御異議なしと認めます。よって、発議案第12号個人情報保護法案の撤回を求めることについては、委員会の付託を省略することに決定いたしました。
 これより、討論に入るのでありますが、通告がありませんので、討論なしと認め、討論を終結いたします。
 これより、発議案第12号個人情報保護法案の撤回を求めることについてを採決いたします。
 本案は、原案のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕

〇議長(谷藤裕明君) 起立少数であります。よって、発議案第12号個人情報保護法案の撤回を求めることについては、否決されました。
   
   閉 会

〇議長(谷藤裕明君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 これをもって本日の会議を閉じ、第14回県議会定例会を閉会いたします。(拍手)
   午後1時48分 閉 会


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