平成14年6月定例会 第14回岩手県議会定例会会議録

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〇36番(小原宣良君) 社会民主党の小原宣良でございます。
 質問に先立ち、船越賢太郎先生の御去を悼み、心から御冥福をお祈りいたします。
 それでは、通告の順に以下、お伺いをいたします。
 質問の第1は、地方分権。主権の立場から見逃すことのできない有事法制の問題についてであります。
 会期が延長された第154国会で審議中の武力攻撃事態法案、自衛隊法改正案、安全保障会議設置法改正案のいわゆる有事関連三法案は、これまでの我が国の防衛政策を根本的に転換する重大問題法案であると受けとめております。特にも、地方公共団体と密接に関係づけられていることから、この際、知事の所見を伺うものであります。
 まず、武力攻撃事態法案でありますが、同法第5条地方公共団体の責務は、地方公共団体は、当該地方公共団体の地域並びに当該地方公共団体の住民の生命、身体及び財産を保護する使命を有することにかんがみ、国及び他の地方公共団体、その他の機関と相互に協力し、武力攻撃事態への対処に関し、必要な措置を実施する責務を有するとし、第7条国と地方公共団体との役割分担では、地方公共団体においては、武力攻撃事態における当該地方公共団体の住民の生命、身体及び財産の保護に関して、国の方針に基づく措置の実施、その他適切な役割を担うことを基本とするものとするとしております。こうした地方公共団体の責務と役割を規定した上で、同法第14条対策本部長の権限では、対処基本方針に基づき、地方公共団体等が実施する対処措置に関する総合調整を行う権限が、同法第15条内閣総理大臣の権限第1項においては、別に法律で定めるところにより、関係する地方公共団体の長等に対し、当該対処措置を実施すべきことを指示する権限が定められております。さらに同条第2項においては、前項の指示に基づく対処措置が実施されないとき及び事態に照らし緊急を要すると認められるときは、別に法律で定めるところにより、関係する地方公共団体の長等に通知した上で、みずからまたは当該対処措置に係る事務を所掌する大臣を指揮し、当該地方公共団体または指定公共機関が実施すべき当該対処措置を実施しまたは実施させることができると定め、いわゆる国による代執行権が定められているのであります。
 こうした内容を持つ武力攻撃事態法案は、著しく地方自治権を侵害するものと言わなければなりません。知事は、このように、地方自治体ががんじがらめにされようとしている武力攻撃事態法案をどう受けとめているでしょうか。
 私は、近隣諸国から武力攻撃を受けることを想定する前に、まずもってやるべきことは、平和、友好の精神に基づいた国の外交や自治体による姉妹友好都市間交流や民間団体による文化交流などを通じて、外国の軍隊が大挙攻め込んでくるなどといった不穏な事態を起こさないことこそ、まさに備えと考えるものでありますが、知事の御見解を承りたいと存じます。
 次に、自衛隊法の改正案についてでありますが、これは実に具体的であります。自衛隊の防衛出動時における物資の収用等に係る規定の整備においては、自衛隊法第103条により、土地を利用する場合において、当該土地の上にある立木その他土地に定着する家屋を除く物件が自衛隊の任務遂行の妨げとなると認められるときは、都道府県知事は当該立木等を移転することができることとされ、さらに事態に照らし、移転が著しく困難な場合は、当該立木等を処分することができるとされております。この処分を行う場合には、都道府県知事は、政令で定めるところにより、公用令書を交付して行わなければならないとされているようであります。こうしたことは、知事が県民に対して私権の制限や強要に通じるものであり、知事にはこうした強権的な行為に手を貸してほしくはありません。
 さらに、知事権限にかかわっては、防衛出動時における関係法律の特性があります。道路法、道路交通法、海岸法、河川法、森林法などは、すべて協議ないし許可から事前通告に変更されているものであります。
 このように、有事法制において、地方自治体は完全に国及び自衛隊の指揮下に入ることとなります。知事は、こうした知事権限の抑制をどう受けとめているでしょうか。国からは、これらの法案について、県や市町村に対してどのような説明があったのでしょうか。
 以上、お伺いいたしましたが、知事には、ぜひ、これらの法案が不十分な説明のもとで今国会で成立することのないよう、県内市町村議会の動向をも踏まえ国に対して意見表明をすべきと考えますが、改めて知事の所見を伺うものであります。
 次に、住民基本台帳ネットワークシステムについてお伺いいたします。
 住民基本台帳は、地方自治法において、市町村は、住民たる地位に関する正確な記録を常に整備しておかなければならないとの定めにより整備されているものであります。さらにこの事務は、市町村固有の事務、自治事務であり、住民基本台帳は市町村と住民の固有の財産でもあります。
 平成11年8月に成立した改正住民基本台帳法は、国民全員に11けたの番号を付し、市町村、都道府県、国とを専用回線で結び、ネット上で住民票の記載情報を交信するシステムを可能といたしました。この法律は、平成10年3月に国会に提出されて以来、さまざまな議論がなされてきました。結果として、衆議院は、附則第1条に、この法律の施行に当たっては、政府は、個人情報の保護に万全を期するため、速やかに所要の措置を講ずるものとするとの修正を加えました。同時に、附帯決議は、住民基本台帳ネットワークシステムの導入に当たっては、データ保護及びコンピューター・セキュリティーの確保等について徹底した管理に努め、責任体制を明確化する等、プライバシー保護に十分の措置を講ずることにより、住民が信頼するに足る制度の確立を図ること、国の機関等による住民基本台帳ネットワークシステムの利用目的を厳格に審査するとともに、定期的に利用状況を検証すること、また、システム利用の安易な拡大を図らないことなど、5項目の附帯決議がなされました。しかし、附則で修正された個人情報保護に関する所要の措置として今国会で審議されている個人情報保護法案は、その目的を大きく逸脱し、メディア規制など本来の法律の性格を変えたことにより国民の反発を受け、今国会での成立は断念せざるを得ないと、政府・与党幹部が発言せざるを得ない状況となっております。また、防衛庁のいわゆるリスト問題も、国民の国に対する不信感を強めることとなりました。
 さて、県は、今議会に住民基本台帳法施行条例案を提案しておりますので、この際、幾つかの点についてお伺いをいたします。
 第1点は、述べましたとおり、ことし8月の改正住民基本台帳法の施行には、衆議院の修正にあるとおり個人情報保護法が前提となるものであり、これらが未整備の段階で同法を施行するべきではないと考えますが、なぜ県は、住民基本台帳法施行条例案を今議会に提案したのでしょうか。
 第2点は、市町村間を結ぶネットワークと市町村、都道府県、国を結ぶネットワークでは、情報の種類が異なるようでありますが、ネットワーク上、完全に分離できるのでしょうか。住民票コードが国にも送られるようでありますが、目的外利用に歯どめはかかるのでしょうか。この点について、日本弁護士会、岩手弁護士会は、情報の不正利用だけでなく、外部からの侵入で漏れた情報が、脅迫や成り済まし犯罪に使われるおそれがあるとコンピューター管理の危うさを指摘し、ことし8月からの住基ネットの稼働延期を求めております。どうお考えでしょうか。
 第3点は、総務省は、住基情報を利用できる事務件数を93件に限定したようでありますが、岩手県が利用する事務件数とその事務内容はどのようなものでしょうか。また、最近、国は、自動車の登録事務など11省庁、264事務に追加、拡大する法案を今国会に提出したようでありますが、心配されている利用範囲の拡大が早くも現実となっております。こうした国の動向を県はどう見ているでしょうか。
 第4点は、住基ネットワークシステムに要した経費、これから要する経費でありますが、本県を含む全国ネット分、市町村を含む本県分に分けてお知らせ願います。
 次に、本県経済・雇用の現状と対策についてお伺いいたします。
 政府は本年5月の月例経済報告で、我が国の景気の現状について、依然厳しい状況にあるが底入れしているとして、底入れの判断をしたと報じられております。岩手経済研究所がことし4月に行った岩手県内企業景況調査によりますと、前期に比べマイナス幅が7.2ポイント縮小し、県内企業の業況は、若干ながら持ち直しの動きを示したとのことであります。一方、県内の雇用状況でありますが、ことし4月の県全体の新規学卒者を除き、パートタイムを含む有効求人倍率は0.38倍となっておりまして、この数値は残念ながら青森県、沖縄県に次いで下位に位置している現状にあります。
 そこでお伺いいたします。
 第1点は、本県経済の動向でありますが、業種別に見た場合、本県経済のリード役はどの業種と見ているでしょうか。いずれ、地域で頑張っている企業は、地域にとっては働く場であると同時に、地域での生活を支える場でもあることから、中小零細企業への経営安定対策を強く求めるものでありますが、現状と今後の対策についてお伺いいたします。
 第2点は、厳しい雇用状況のもとで、国、県、市町村は、一体となって緊急地域雇用創出特別基金事業やいわて緊急雇用対策事業を実施しているところでありますが、これらの事業の推進状況はどうなっているでしょうか。特徴的な成果や課題についてお知らせ願います。
 第3点は、雇用対策としての職業能力開発についてであります。特に、若年労働者の就労状態でありますが、近年、急激に若年者の失業、未就労とアルバイト化が進んでいると言われておりますが、県はどう認識しているでしょうか。これらの傾向は、地域経済の活性化と将来の地域社会の形成という面で深刻な事態であります。こうした点から、職業能力開発は、中高年のみならず若年者対策も緊要な課題と思われますが、対応策をお示しいただきたいと存じます。
 次に、インランド・デポの本県設置に向けた取り組みについてお伺いいたします。
 このことにつきましては12月議会でも触れ、知事からも力強い答弁をいただいたところでありますが、改めてお伺いいたします。
 この施設が持つ地域経済に与える効果は、山形の場合などを見ましても物流拠点機能整備が進み、港湾、空港利用による輸出入の活発化が期待されるところであります。本県にあっては、平成11年5月に、日本通運北上支店が大蔵省函館税関から認可を得て、保税蔵置場と通関営業所を開設し業務を行っているところであります。しかし、現状では、取扱件数が認可基準件数に達していないことから、税関署を伴うインランド・デポの設置に至っていない現状にあります。今後においては、大口の取扱企業のめどもあることから早期設置を期待しておりますが、現状の施設において、輸入品目も取り扱うことが可能であれば取り扱う件数はさらに増大し、地域経済への波及効果も高まるものと思われます。
   〔副議長退席、議長着席〕
 ジェトロ盛岡貿易情報センターの1999年の資料によりますと、本県の輸入量は年々増大傾向にあります。輸入、輸出の活発化は、本県経済活性化には欠くことのできない要素であり、こうした物流に合わせた貿易インフラの整備は極めて重要であります。
 そこでお伺いをいたします。
 インランド・デポ設置に向けた輸出量の確保は、県の強力な支援のもとに、関係企業の協力を得て必要件数確保に引き続き努力することとしながらも、輸入品の通関取り扱いを可能とするために函館税関に強く要望していただきたいのですが、どうお考えでしょうか。これが可能となれば、インランド・デポ設置に弾みがつきますし、何よりも輸入品は加工、流通、消費へと動き、場合によっては輸出品として海外へ出ることも可能となります。ぜひ、積極的な対応を願う次第であります。
 次に、BSE対策についてお伺いいたします。
 肉骨粉を原料とする飼料の購入、販売の禁止や死亡牛の検査を義務づけるなどのBSE対策を盛り込んだBSE対策特別措置法が6月7日に成立いたしました。昨年9月に初の感染牛が発見されて以来、農林水産省の不適切な対応などから混迷をきわめ、結果として、生産者や加工、流通、小売、焼き肉店などは深刻な打撃を受けてきました。今回成立したBSE対策特別措置法は、これらの対策に法的な裏づけが与えられることとなり、より効果的な対応が期待されているところであります。
 内容としては、新たに飼育中に死亡した2歳以上の牛が検査対象となったこと、また、風評被害を防ぐために、国と自治体にはBSEについての正しい知識を普及させることも義務づけられると同時に、生産者や外食産業への支援策も盛り込まれたようであります。県では、これまでにBSE対策にいち早く対応し、県単独事業などで対応を図ってきたところでありますが、今後、生産者等に対しどのような対策を推進しようとしているのか、これまでの対策の現状を踏まえお伺いする次第であります。
 次に、介護保険制度についてお伺いいたします。
 介護保険制度がスタートして2年が経過いたしました。この間、介護保険事業の運営主体である市町村は、この制度の内容を地域住民に周知するとともに、該当者に対するサービスの提供に鋭意努力してきました。県もまた、市町村の介護保険事業計画の策定とその実施に当たって必要な支援を行うとともに、国に対する要望の窓口として積極的に取り組んできたものと考え、その労を多といたします。
 さて、今年度は第2期介護保険事業計画の策定年度であります。まずもって、利用者を初め地域住民からサービスのあり方について意見を聞き、実態把握に努めることが肝要であります。市町村は既にこの調査を実施しているようでありますので、以下お伺いをいたします。
 第1点は、地域のケア体制についてでありますが、介護支援専門員の役割は、利用者が自分の望むサービスを受けられるためには、介護現場でその役割が十分発揮できるよう支援することが大切でありますが、県の支援体制は十分でしょうか。
 第2点は、介護保険施設の整備についてでありますが、国では、第2期計画の策定に当たって、目標年度における施設利用者数の標準を定めているようでありますが、国の基準を上回る施設入所希望者がある場合、どう対処するのかお伺いいたします。
 第3点は、介護予防・生活支援事業でありますが、県はこの事業に対して補助を行い支援しておりますが、どのような活用状況になっているでしょうか。
 なお、市町村には福祉、介護等に係る制度や要綱などが繁に改正される関係から実施要綱等が複雑になっており、現場対応に戸惑いがあるとの声があります。県はこうした声にどう対応しているのか、お伺いいたします。
 次に、奥地産業開発道路、沢内村道安ヶ沢線の道路建設休止に伴う県代行路線の新たな設定についてお伺いいたします。
 奥産道、沢内村道安ヶ沢線は、沢内村と秋田県太田町を結ぶ路線で、昭和47年に奥産道の指定を受け、秋田県側は昭和48年度から、岩手県側は昭和50年度から沢内村が事業に着手し、昭和55年度から県代行事業として進めてきたものであります。この間、和賀川源流部を西側に越えた地点で極めて急峻な地域に入り、工事は難航をきわめました。同時に、この地帯は、環境庁の自然環境保全基礎調査における特定植物群落和賀岳のブナ林Aに指定されていることや、青森営林局は奥羽山脈縦断自然樹林帯として設定するなど、すぐれた自然樹林帯であることから、県においても環境影響調査委員会を設置し調査を行ってきたものであります。こうした経緯や、平成12年10月の公共事業評価委員会の意見をも踏まえ、県は本路線の休止を決めたところであります。
 そこでお伺いいたします。
 本路線は、岩手側、秋田側とも県代行事業で進められてきたものであり、工事休止に当たっては当然両県の協議がなされたと思いますので、その経緯をお知らせ願います。
 また、沢内村では、現在、主要地方道盛岡横手線の代替道路としての役割を持つ東側幹線道路の整備を補助事業として実施しております。この路線は、ことし8月開通予定の花巻大曲線に接することから、内陸と西和賀を結ぶいわゆる8の字ルートを補完する重要な役割を持っているものであります。私は以前から、県代行路線を村道安ヶ沢線より緊急度の高い東側幹線を事業実施すべき旨、伺ってまいりました。このことについて当時の竹内土木部長は、本路線を県代行事業によって整備すべきかどうかについては、村による用地買収の進捗度合いなど、今後の熟度の高まりなどを勘案して判断したいと答えておりましたが、現状はどうなっているでしょうか。私は、豪雪地域でもある実情から、緊急度と必要度の高い東側幹線に県代行事業を早期に実施すべきと考えますが、御見解を承りたいと存じます。
 次に、産業廃棄物対策についてお伺いいたします。
 二戸市と青森県境の原野に不正に搬入された産業廃棄物の処理対策についてでありますが、平成11年の事件発覚以降に実施した岩手・青森両県の調査で、27ヘクタールに約82万立方メートルという全国最大規模の量と、鉛、ダイオキシン、ジクロロメタン等の有害物質が含まれていることが、継続して測定している地下水調査で明らかになりました。環境汚染とあわせて地域住民の健康被害が懸念されることから、存在が明らかになっている有害物質を含む廃棄物については、へい壁で封鎖する案も出されていますが、最終的に全量を撤去することが必要であると考えます。しかし、撤去作業や処理を行う際の技術的な問題と費用負担のあり方について検討すべき課題が多く指摘されており、これらの課題については、6月15日に設置された青森・岩手県境不法投棄事案に係る合同検討委員会での論議を踏まえ、青森県との統一した対策を進めていくものと思われますが、岩手県として青森県との合同会議に臨む基本的な姿勢をお伺いいたします。
 また、産廃の不適正処理の防止を図るためには、県内における産廃排出事業所や産業廃棄物処理業者に対する監視指導体制の強化を図り、優良な事業者を育成するとともに、公共関与による施設の建設が急務であり、第2のクリーンセンター設置を早急に進めるべきと考えますが、御所見をお伺いいたします。
 次に、教育問題についてお伺いいたします。
 第1点は、教育教材の整備推進についてでありますが、国では、平成14年度から小・中学校において新しい学習指導要領が実施されることに伴い、教材整備計画や学校図書整備計画を策定し、所要経費に対して地方財政措置を講ずるとしたようであります。これらの整備計画策定作業はどのように進められているのか、お伺いいたします。
 また、新たな学校図書整備計画にあっては、当然のこととして学校図書館に専任の司書教諭を配置すべきと考えますが、どのように対応するお考えでしょうか、お伺いいたします。
 第2点は、30人以下学級の取り組みでありますが、各県にあっても、それぞれ独自の取り組みがなされているようであります。東北6県においては、福島県のうつくしまっ子未来プラン、教育山形さんさんプランなどがあります。こうした他県の30人以下学級に近づく例を見ますと、本県のすこやかサポート推進事業は、30人以下学級の実現を基本目標に据えたものかどうか、明確でないように思われてなりません。予算措置を含め抜本的な対策を期待いたしますが、どのような対策をお考えかお伺いをいたします。
 第3点は、北東北国立3大学の教員養成系学部再編・統合問題であります。
 これまで岩手大学教育学部は、本県教育振興の基盤をなす人材養成に多大な実績を残してきました。工藤巌前知事は教育立県を標榜し、殊さら熱心に教育の大切さを説かれてきました。情熱あふれるものがありました。もし、ここで岩手大学から教育学部がなくなるとしたら、今はなき前工藤知事に対し、申し開きができないと私は思うものでございます。岩手大学教育学部が引き続き存続されるよう強く求めるものでありますが、知事の御所見を承りたいと存じます。
 以上で本席からの質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕

〇知事(増田寛也君) 小原宣良議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、有事法制の問題についてでございますが、我が国の平和と安定の確保のためには、日常における諸外国との対話、交流、協力を通じた信頼関係の増進が第一であることはもちろんでございますが、万が一の有事に備え、その対処方法や手続などについてあらかじめ法を整備しておく必要があると考えておりまして、有事法制そのものの必要性は認めるものでございます。
 こうした認識の上に立ちまして考えますと、今回の武力攻撃事態対処法案などのいわゆる有事関連法案につきましては、有事のとらえ方をどのように考えるのか、また、地方自治体は、住民の避難あるいは他地域からの被災者の受け入れなど、有事におけるさまざまな国民保護のための措置に当たりまして大きな役割を果たすことになっておりますが、国の判断と地方自治体の判断の整合性をどう図るのかなどの具体的内容が現時点で明らかにされておりませんで、国民や我々地方自治体にとりましてもわかりにくい内容になっていると感じております。
 国民の生命等の保護、そして国民生活等への影響を最小にするための措置を規定する法制、これは国民保護法制とこの中で呼ばれておりますが、この国民保護法制は、武力攻撃事態対処法案が成立した後2年以内に整備するとしているわけでございますが、私は、この国民保護法制、これも基本法でありまして、全体が一体となっているもの、そしてその中には国民の主権や地方自治にかかわる極めて重要な内容を含んでいるものと考えているところでございます。したがって、国におきましては、国民保護法制の具体的な内容を、2年以内ということではなく、もっと早い時期、できる限り早期にその内容を明らかにし、その上で有事法制全体について一つ一つきちんとした議論を積み重ねて、広く国民の合意を得ることが必要と考えております。
 また、自衛隊法改正案では、自衛隊の防衛出動時などにおける関係法律の特例措置が規定される一方で、内閣総理大臣の指示や代執行に関する要件などは今後定める法律で規定するということで別法にゆだねられておりまして、その内容によりましては、その指示や要件が無制限なものとなるおそれもあると懸念しているところでございます。
 当法案に関する国から県への説明会は、担当課長に対するものも含め合計4回開催されまして、政府側から法案の概要や国会での審議状況等の説明がございましたが、今月12日に開催されました政府と全国知事との意見交換会には私も出席いたしまして、ただいま申し上げました趣旨につきまして、政府の方に、福田官房長官と中谷防衛庁長官、片山総務大臣、そのほか政府の関係者がおりましたので、その皆さん方にただいまの趣旨につきまして直接意見を申し上げたところでございます。
 また、市町村につきましては、国からは全国市長会及び全国町村会に対して同様の説明が行われておりますけれども、県の方でも、県内の各市町村に対しましては我々の持っている情報はすべて提供しているところでございます。
 私は、今後も、地方自治体の長の立場で、県民の生命、身体、財産の保護の観点から、あらゆる場で必要な意見等を申し上げていきたいと考えております。
 次に、産業廃棄物対策についてでございますが、青森・岩手県境不法投棄事案に係る合同会議を設置したわけでございますが、この合同会議に臨む基本的な姿勢につきましては、住民の健康被害の防止と安心感の醸成を図る、このような視点に立ちまして、両県が連携しながら不法投棄現場の環境再生に取り組んでいく必要があるものと考えております。
 本県では、まず、現場から有害な廃棄物を除去することが必要と考えておりまして、具体的な除去方法などにつきましては私どもの方で調査を実施することとしております。その結果を踏まえまして、先ほど申し上げました合同検討委員会の提言をいただきながら、住民の健康被害の防止と安心感の醸成を図ることを基本姿勢として、両県、そして地元市町で構成する合同会議におきまして必要な検討を行って具体的な方策を決定し、すぐに実行していきたいと考えております。
 次に、今後の産業廃棄物の不適正処理防止対策につきましては、監視指導体制に関しては、従来からいわゆる産廃Gメンの増員や資源循環推進課への警察併任職員の配置など体制強化を図っておりますが、このほか、各保健所の産業廃棄物不適正処理情報ネットワークによる不法投棄に関する情報提供の受け付けや、北東北3県が連携したヘリコプターによるスカイパトロールなどもあわせて行っておりまして、逐次これらの拡充を図るなど、今後も厳格な監視・指導に努めてまいりたいと考えております。
 優良事業者の育成につきましては、昨年度から社団法人岩手県産業廃棄物協会の研修や事業相談事業への補助を行っておりますし、それから、現在検討中の循環型地域社会の形成に関する条例整備の中でも業者の登録制度の創設などを検討しております。そうしたことによって優良業者を育成する仕組みというものを検討しているところでございます。
 また、公共関与による廃棄物のモデル施設につきましては、資源循環を目指した事業実施の可能性などについて検討するため、今年度、処理対象廃棄物の需要見込み、リサイクル技術、リサイクル製品の需要、回収エネルギーの活用、それから事業主体、採算性など、その立地に向け必要な調査を実施することとしておりまして、この結果を踏まえてその具体化に取り組んでいきたいと考えております。
 次に、北東北における国立3大学の教員養成系学部の再編・統合の問題についてでございますが、岩手大学の教育学部は、公立学校教員の養成など、本県の教育振興に現在まで多大な貢献をしてきたわけでございます。今現在、北東北の国立3大学が、国立大学の構造改革の方針――例の遠山プランですが――を踏まえて、国際競争力のある大学を目指して、全学部を対象とした再編・統合について検討を開始しているわけでございまして、県では、3大学の研究・教育機能の充実・強化が図られ、その上で地域社会に対する貢献度が高まるような形での再編・統合について、各大学内、そして、その上で3大学間で十分な検討が行われることが望ましいと考えております。
 教員養成系学部の再編・統合につきましても、教育・研究機能の充実・強化や地域社会への貢献など総合的見地から、三つの大学の間で検討が行われ、優秀な教員の養成や現職教員の再教育など、本県の教育振興に貢献していくような体制が確保されることが重要であると考えておりまして、県では、このような認識に立った上で、今後も適切な対応を図ってまいりたいと考えております。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁をさせますので、御了承お願いします。
   〔地域振興部長飛澤重嘉君登壇〕

〇地域振興部長(飛澤重嘉君) まず、住民基本台帳法施行条例を提案した理由についてでございますが、改正後の住民基本台帳法は8月5日に施行することと定められておりますことから、本人確認情報の保護対策について調査、審議等を行う審議会の設置など、同法の規定により県が条例で定めなければならない事項等につきまして住民基本台帳法施行条例を制定しようとするものでございます。
 次に、市町村間を結ぶネットワークと市町村、都道府県、国を結ぶネットワークの分離ということでございますが、市町村間で送信、受信される情報は、国、都道府県、指定情報処理機関には送信されないシステムになっておりまして、国、都道府県、指定情報処理機関には、別に限定された情報のみが送信されるというシステムになってございます。
 また、個人情報の目的外利用についてでありますけれども、改正住民基本台帳法によりまして、都道府県、指定情報処理機関はもとより、国につきましても、受領した本人確認情報を法定の利用事務以外の目的に利用することが禁止されておりまして、また同時に、関係職員には守秘義務が課せられております。さらに、その違反行為に対しましては、同法の規定によりまして2年以下の懲役または100万円以下の罰金という、国家公務員法の守秘義務違反――国公法の方は1年以下の懲役または3万円以下の罰金となっておりますが――に比較しましても非常に重い罰則が科せられておりまして、厳格な情報漏えい防止措置が講じられております。
 さらに、ネットワークへの外部からの不正アクセス等に対しましては、専用回線を用いた情報の送信、受信情報の暗号化あるいはファイアウオールによる不正アクセスの防止あるいは監視システム、さらに本人識別カードやパスワードを用いた情報端末を操作する職員の認証チェック、そういった技術面での高度な防止措置が講じられているところでございます。また、セキュリティー確保のためのマニュアルを策定しますとともに、職員への周知徹底を図るなど、8月5日と定められております改正住民基本台帳法の施行に向けまして準備を進めてまいりたいと考えております。
 それから、本県において利用を見込んでいる事務の件数ということでございますが、本人確認情報の利用が認められております27の事務のうち、改正法施行時におきましては児童扶養手当の認定など13事務の利用を見込んでいるところでございます。
 また、この住基情報を利用できる事務を追加、拡大する法案についてでございますけれども、これら法案につきましては、今後、国会の審議の中で議論が尽くされるものと考えております。
 次に、住民基本台帳ネットワークシステムの構築に要する経費ということでございますが、このシステムが完成する15年度までで全国分が約365億円、うち市町村を含めた本県分が4億9、000万円余りと見込んでいるところでございます。
 それから、今後の運営に要する経費ということでございましたけれども、単年度当たり、試算値でございますけれども、全国分が約190億円、うち市町村を含めた本県分が2億7、000万円余りと見込んでいるところでございます。
   〔商工観光労働部長照井崇君登壇〕

〇商工観光労働部長(照井崇君) まず、本県経済をリードする業種と中小企業の経営安定対策についてでありますが、本県経済におきましては、北上川流域を中心に集積するエレクトロニクス産業や関連業種が多く、すそ野の広い自動車関連産業などがその出荷額や雇用の面で全体のリード役を果たしているものと考えております。
 また、中小企業の経営安定対策につきましては、これまで経営相談や金融対策などさまざまな支援策を講じてきたところでありますが、今後は、現下の厳しい経済情勢の中で、経営の安定を図りさらなる発展を遂げていくためには、中小企業者がみずからの経営課題に果敢にチャレンジしながら経営の革新に取り組んでいくことが重要と考えております。このため、向こう3カ年で県内中小企業者の約1%に当たる500社が主体的に経営革新に取り組むことを目指して、本年4月に策定した岩手県経営革新推進計画に基づき、経営革新講座の開催による経営革新計画の策定能力の向上や専門家の派遣による新商品の開発、マーケティングなどの経営支援をきめ細かに展開し、環境の変化に対応できる元気な中小企業の育成に努めてまいりたいと考えております。
 次に、緊急地域雇用創出特別基金事業といわて緊急雇用対策事業の推進状況についてでありますが、この二つの事業は平成14年1月から実施され、13年度におきましては、両事業あわせて99事業、新規に雇用された人員は589人となっております。また、平成14年度におきましては、255事業、事業費20億7、000万円余で新規雇用1、832人を計画しており、5月末現在で64事業が着手され、新規に雇用された人員は516人となっております。
 その特徴としましては、教員補助者や生活学習指導員の配置、観光地、道路等の除草や不法投棄物の撤去、公有林の下刈り、除間伐など、県内各地で雇用の創出に向けた各般の取り組みが行われているところであります。
 さらに、課題といたしましては、この事業による臨時雇用をどのように常用雇用につなげていくのか、また、地域の求職の実態に応じた事業をどう創出していくのかなどが挙げられております。
 次に、若年労働者の就労実態についてでありますが、厳しい雇用環境と若年者の職業意識の変化から、本県においても未就労の高校卒業生や若年者が近年増加傾向にあります。若年者が技能やキャリア形成が不十分なままにあることは、本人にとっても社会にとっても大きな損失になるものと危惧しております。
 また、若年者の職業能力開発につきましては、県立職業能力開発施設において学卒者を引き続き積極的に受け入れるとともに、離転職者訓練につきましては、雇用・能力開発機構と協調、連携しながら進めることとしており、雇用情勢に対応して、今年度はOAビジネスや介護サービス、建設機械運転等の県の離転職者訓練の定員を130名から230名にふやしたところであります。また、平成16年度に本県で開催される技能五輪全国大会に向けた取り組みを通じて若年者の技術・技能への関心を高め、就労意欲の向上を図ってまいりたいと考えております。
 次に、インランド・デポの本県設置に向けた取り組みについでありますが、北上市の保税蔵置場につきましては、国が許可基準として定めている所轄税関官署からの路程がおおむね25キロメートル以内にあることという場所的要件を満たしていないため、輸出貨物のみを蔵置する施設として許可を受けているものであり、現行の基準では、輸入貨物の取り扱いの許可を得ることは難しいものと考えております。しかしながら、本県内陸部において輸入貨物に係る通関業務を取り扱うことが可能となれば、輸送コストの低減等企業活動への直接的メリットが生じるとともに、企業誘致の面での本県の立地優位性の向上や港湾利用の促進など本県経済の活性化を図る上で大きな効果が期待されることから、できるだけ早い時期に函館税関を訪問し、許可要件の緩和等について要望いたしたいと考えております。
 また、現行の要件にあっては、内陸部における通関実績を着実に高め、税関機能の誘致を図ることが肝要でありますので、これまでの北上地区の取り組みが県内陸部を中心に官民一体となった幅の広いものに発展するよう、北上インランド・デポ設置促進協議会が実施するセミナーなど各種事業への支援を行いながら、県内企業や関係市町村の機運の醸成に努めてまいりたいと考えております。
   〔農林水産部長佐々木正勝君登壇〕

〇農林水産部長(佐々木正勝君) BSE問題の発生に伴う生産者等への対策についてでありますが、県といたしましては、極めて重大な事態との認識のもとに、生産者を初め、関係事業者の経営対策など、生産から流通、消費に至る各般の対策を講じてきたところであります。とりわけ生産者対策につきましては、まず、資金繰りが悪化した生産者を支援するため、国が創設いたしましたBSEつなぎ資金について、市町村と協調して無利子とし、本年3月までに延べ255件、総額約16億円が融資されたところであります。
 一方、生産者価格の低落に伴う収入の減少に対する措置といたしましては、肥育経営安定のための補てん金や肉用子牛生産者補給金など、3月末までに約44億円が交付されております。また、本年度、国が新たに創設いたしました償還期限を2年とするBSE対応畜産経営安定資金について、BSEつなぎ資金と同様に無利子とするための予算補正を行い、その専決処分の承認につきまして本議会に提案させていただいているところであります。
 さらに、本年11月以降に償還時期が到来するBSEつなぎ資金について、一括償還が困難となる生産者も見込まれることから、返済を容易にするため、本県独自の無利子の借換資金を融通することとしております。
 今後におきましても、BSEの影響により本県の大家畜畜産が縮小することのないよう、経営の維持・拡大について万全を期してまいる考えであります。
   〔保健福祉部長関山昌人君登壇〕

〇保健福祉部長(関山昌人君) 介護保険制度についてでありますが、県では、介護支援専門員の業務や活動を支援し、ケアマネジメントの質の向上を図るため、現任研修や福祉用具、住宅改修等の実務的研修、ケアプラン指導研修チームの派遣による助言指導体制の整備のほか、県に介護支援専門員支援会議を設置し、資質向上への支援方策の検討等を行ってきたところであります。
 今年度は、介護支援専門員がより専門的な課題に的確に対応できるよう、専門研修課程の新設、地域における指導者の養成や他の都道府県に先駆けたケアマネ支援センターの設置によって支援体制の強化を図るなど、地域のケア体制の構築に向けて積極的に支援しているところであります。
 また、次期介護保険事業計画の策定に当たっては、国からサービスの供給量を見込むに当たっての基本的な指針いわゆる参酌標準が示されており、これを標準としつつ、地域の実情を踏まえて施設サービスの目標量を設定することとされております。
 県といたしましては、まず、各市町村において、在宅サービスを重視しつつ、施設入所のニーズを的確に把握し、参酌標準等を踏まえて施設サービスと在宅サービスのバランスのとれた基盤整備が図られるよう、適正な給付水準の確保とそれに見合った適切な保険料の設定について住民参加のもとで議論、検討がなされることが必要であると考えており、今後とも必要な助言等を積極的に行ってまいりたいと考えております。
 次に、介護予防・生活支援事業についてでありますが、県では、高齢者の方々の自立と生活の質の確保が図られるようその積極的な推進に努めているところであり、平成13年度の市町村の取組状況は、生きがいデイサービスが全市町村で、緊急通報体制等整備事業が53市町村で取り組まれるなど、延べ516事業が実施され、年々内容の充実が図られてきているところであります。
 また、市町村の事業運営に当たっての県の支援についてでありますが、担当者会議を通じた制度の説明や各種の照会へのきめ細かな対応のほか、市町村の意見を聞きながら、制度、業務の簡素化がなされるよう国に要望してきているところであります。
   〔県土整備部長猪股純君登壇〕

〇県土整備部長(猪股純君) まず、沢内村道安ヶ沢線の県代行事業の休止に至るまでの秋田県との協議の経緯についてでありますが、平成10年12月に沢内村が同年の災害状況なども勘案し秋田県の太田町に工事の一時休止の申し入れを行い、それを受け、平成11年1月には、両県及び関係市町村が参加する奥羽山系大曲太田~花巻沢内間地域連携軸整備推進協議会におきまして、今後の対応について協議を行ったところであります。さらに、平成12年7月に安ヶ沢線環境影響調査委員会からいただいた最終提言をも踏まえ、同月末に同協議会において工事を休止するという方向性で合意に達したところであります。その後、同年10月の公共事業評価委員会の審議を経た後、同年11月に県として正式に休止の決定をしたものであります。
 次に、沢内村道東側幹線の現状と県代行事業の取り組みについてでありますが、村においては、平成11年度から13年度にかけて順次計画区間の調査設計を行ってきたところであり、平成13年度からは道路整備に必要な用地の買収及び補償に着手し、現在はそれらの用地補償が進捗していると伺っております。
 この道路は、村の活力ある地域づくりを進めるための役割を担う主要な路線であり、県としては、昨今の厳しい財政環境ではありますが、緊急性、必要性などの事業の評価も踏まえて、当該路線の整備のあり方について検討してまいりたいと考えております。
   〔教育長五十嵐正君登壇〕

〇教育長(五十嵐正君) まず、教育教材の整備推進についてでありますが、教材整備については、新学習指導要領の実施に伴い、国においては、総合的な学習の時間等に対応した新たな教材整備計画を策定し、平成14年度からの5年間で総額4、300億円程度の地方財政措置を講ずることとしたところであります。
 また、学校図書の整備については、子どもの読書活動の推進に関する法律の施行に伴い、学校図書整備計画を策定し、平成14年度からの5年間で、総額650億円程度の地方財政措置を講ずることとしたところであります。県教育委員会といたしましては、これらの計画に基づき、各市町村教育委員会がこのような財政措置を活用しながら、新学習指導要領の趣旨を踏まえた教材の整備・充実及び豊かな感性や情操、思いやりの心をはぐくむための学校図書の整備・充実を計画的に行うよう、指導・助言してまいります。
 さらに、学校図書館に専任の司書教諭を配置することについては、学校図書館法の改正により、平成15年度から、12学級以上の学校には司書教諭を置くこととなりましたが、国においては、このための新たな教職員の配置が予定されておらず、専任の司書教諭を配置することは難しい状況にあります。県教育委員会といたしましては、これまで現職教員に対する司書教諭資格者の養成確保に努めてきたところであり、平成14年5月現在で、小・中学校、高等学校、盲・聾・養護学校をあわせて、発令必要数208名に対して資格を有する者が620名を数え、今後、これらの有資格者を、該当する学校に適切に配置するよう努めてまいりたいと考えております。
 なお、司書教諭等必要な教職員の新たな定数措置については、今後とも、全国都道府県教育長協議会等を通じて、国に要望してまいりたいと考えております。
 次に、30人以下学級の取り組みについてでありますが、県教育委員会といたしましては、今年度、県単措置によるすこやかサポート推進事業に加え、国の財政措置による少人数指導加配や緊急地域雇用創出特別交付金による学校いきいきプラン推進事業の三つの柱で少人数指導支援事業を実施し、30人を超える学級を有するすべての学校、延べ378校に対して、509名の本採用教員や常勤講師あるいは非常勤講師などを配置したところであります。本県におけるこのような取り組みは、子供や教科等の特性に応じて、少人数のグループ分けの中できめ細かな授業を行ったり、特に配慮が必要な子供に対してチームティーチングにより手厚く対応できるなど、多様な指導が可能となります。
 今後、国の第7次定数改善計画の方針を踏まえ、各学校における成果や課題を十分に検討しながら、少人数指導をさらに充実してまいりたいと考えております。

〇36番(小原宣良君) 再質問をさせていただきます。
 知事、先ほど答弁がありましたが、有事法制にかかわることでありますけれども、有事のとらえ方をどう考えるかということが大事だという意味でお話がございました。全くそのとおりでありますが、そうしたこともそれぞれに有事とはこういうものではなかろうかみたいな感じでとらえているとすれば、これは大変大きな問題であります。国民保護法制についても2年以内ということでありまして、それが定かになっていないという中での議論でありますので、確かに知事が言われるように、杳としてその中身がわからないというのが集約して言えることではないかというふうに思います。
 そこで1点お伺いしますけれども、6月12日に都道府県知事が、これは首相官邸でその会議は行われたようでありますが、その際に、先ほど知事は、福田官房長官、中谷防衛庁長官、片山総務大臣という皆さんにお話をしたと。小泉首相が入っていないですよね。これはどういうことなんですか。おいでにならなかったんですか。その辺、感想を含めてお伺いをしたいと思います。
 そこで、先ほどの2年後になる国民保護法制ということに関連をするわけで、細かなことを言われてもよくわからないという状況にあるのだと思うんですが、先ほども知事からもお話がありました、例えば避難、誘導、こういったことがどのようになされていくのだろうかと。仮にそういうものが定まったときに、だとすれば、それはもう訓練が必要であるというので、それぞれ国の機関や県や市町村、民間、事業者を含めて総動員で訓練が始まると。こんなのが繁にやられたら日常生活に影響を与えますよ。こういうこともどんなふうになるのだろうかということも杳としてわからないからなかなか言えないわけですけれども、心配の向きとしてはあるということをお話し申し上げ、もしお話しできる点があったら、何か国から聞いている点でわかる点があったら教えていただきたい。
 自衛隊法103条による立木等これの処分でありますけれども、公用令書を交付して行わなければならないというわけです。これも政令がまだ定まっていないから杳としてわからないという話になると思うんですが、これはもう強制執行ですよね。強権発動です、知事としての。これも杳としてわからないということなので、ただ、法律にはそう書いてありますね、現実に法案には。この点をどうとらえておりますか。
 それから、県内市町村議会では今3月議会、6月議会がほぼ終了の時期でございますけれども、有事関連法案に反対をする意見書、あるいは有事関連三法案の慎重審議を求める意見書というのは今まで23市町村ほどで採択をされて、国に送付されているようでございます。こういう状況。慎重審議ということは当然でございますし、基本的に疑義ありという部分を含めての形態であります。
 そこで、県内市町村議会のこうした動向を踏まえて、国においてあるいは国会において、これらの法案は慎重の上にも慎重な審議を必要とするものというふうに私は考えますし、知事も多分そうお考えになっているのではなかろうかというふうに先ほどの答弁を承りましたので、改めて御見解をいただきたいというふうに思います。
 それから、住民基本台帳ネットワークシステムについてでございます。
 この住民基本台帳に基づく個人情報を利用する事務に関しましては、県の事務内容は先ほど説明がありました。不十分ですが、私も総務委員会でこの条例がかかっておりますから、当該委員でありますのでその際にもお聞きをいたします。時間の関係で今はその説明をそのまま受けとめます。
 問題は、国の機関が使用する事務内容、これを県は承知しておるでしょうか。なぜそういうふうにお聞きするかというと、先ほども申しましたけれども、この住民基本台帳、この基本情報というのは市町村の固有の資料なんですね。固有の事務にかかわる資料であるということからして、やはり市町村の立場の中でこれを考えていくべき必要がある。国は確かにこれを必要とする、使いたい。しからば何に使うのか。その範囲も拡大の一途をたどる。さまざまな心配はないというふうに先ほど部長はお答えになったんですけれども、心配の向きはいっぱいあるわけです。その心配の向きをどちらの立場の中で我々はとらえていくのか、県が特に。国の立場の中で、利用者の立場で物を考えるか、あるいは市町村の固有の事務としてしっかりと、その共有財産として持っているそうした資料を大切に使っていただきたい。万が一にも間違った使い方はされては困ると、してもらいたくない。要すれば、市町村、地域住民の立場の中で県は考えるべきではなかろうか。そういう立場に県はあるのだというふうに申し上げたいわけであります。その立場さえしっかりしておれば対応は違ってくると。
 先ほどの部長の答弁は心配ないと。一切心配ないと、こういうふうに私は受けとめたんですけれども、そういうことはないと。事は情報なんです。日進月歩の情報の中で、さまざまな物を考える人はいっぱいいる。そうしたものから、しっかりとこの基礎情報を守っていくのだという決意がないといけないというふうに私は考えているわけでして、そこの県の今立場というものをしっかりと受けとめていただきたいというふうに思います。したがって、個人情報の活用というのは、プライバシー保護と一体のものでなければなりません。もしプライバシー保護が担保されないということであるならば、この個人情報、住基情報を使う資格がないというふうに申し上げたいです。それだけの重要な関係にあるというふうに思います。
 今回提案をされております県の条例、5条からなる極めて簡略なものであります。先ほど言いましたように、この際、県の責務あるいは知事が講ずるべき措置というふうなことについては明確に定める必要があると。これは今議会に無理でありますから、これからの課題ということになります。場合によっては、我々がその条例案を提起してもよろしい。いずれ、これからの課題として、このことは真剣に受けとめていく必要があるというふうに思います。
 例えば、県において、本人確認情報の管理体制、これは十分かというふうなこと、これは条例でそうしたものをきちっと定めておく。それから、本人確認情報への不正アクセス行為の防止です。先ほども部長から答弁がありました。心配ないというわけですけれども、これはやはり不正アクセス防止、行為の防止、これをしっかりしたものにしていくということを条例で定めていく、方法を含めて。
 それから、本人確認情報に係る目的外使用などの不正行為、これも先ほど答弁にございました。これらへの対応策、何をもってこれを万全なものにしていくのかという姿勢が必要だということを先ほど以来申し上げている。そういった条例というものを、しっかりと岩手県においても確立をする必要があると。それが重要な住基情報を県や国が限定された項目とは言いながらも、住民行動を添えてそれぞれ出ているわけですから、これについては万全を期する必要があるし、その万全を期する決意を込めた条例というものが必要だというふうに私は考えるわけでありますが、それに向けた考えはいかがでしょうか。
 あわせて、県はこの際、住基情報を利用する事務の範囲というものを条例で定めてはどうかと思うんです。必要によって拡大することもあるかもしれない。しかし、そのときはきちっと条例で、この範囲の中で使用しますというものを、先ほどの措置を含めて明確にするべきではないかというふうに考えますし、私ども県議会において、一定の議論が可能になり透明度も高まるというふうに思います。それだけの内容のものであるというふうに私は申し上げたいわけでありますが、いかがでしょうか。

〇知事(増田寛也君) 有事法制の関係についてお尋ねがございましたが、まず、小泉総理は当日、あいさつをされてすぐ退席をされました。したがいまして、直接地方公共団体の意見を申し上げる機会、総理の方でお聞きする場面というのはございませんでしたので、残念でございましたけれども、担当する3人の閣僚、それから安倍官房副長官ほか政府の関係する責任者は全員出てきておりましたので、地方公共団体の持っております考え方、空気というものは、そうした閣僚を通じて確実に総理に伝わっていると、このように考えております。いずれにいたしましても、時間の制約がありましたので知事の中でも発言ができたのは限られていますが、今、私が申し上げましたような意見を申し上げて、それで官房長官とそれから防衛庁長官からはそれについての考え方の回答もありましたが、まだいずれにしても国民保護法制の方に個別の内容はゆだねるといったようなことでございましたので、私自身はそういったものも明らかにした上で全体として国民的な合意をとるべき筋合いのもの、災害等におきます対応におきましても、やはり地方公共団体がそういった場合には中心になってこういったものの成果を上げていくわけでありますので、そこの整合性というのは十分図る必要がありますし、やはりせっかくつくるのであれば、効果的なそして国民から支持されるものである必要があると思いますし、今議員の方でもお話がございましたが、慎重の上にも慎重を尽くして、議論を尽くしてこの法案を考えていくべきものと、このように考えております。これはこれからもまたそういったことを申し上げる場面もあると思いますので、そういう地方公共団体の長としての県民の生命、財産等を守るという立場からの意見は確実に申し上げていきたいと、こんなふうに思っております。
   

〇議長(谷藤裕明君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
   

〇総務部長(小原富彦君) まず、有事法制に関しまして武力攻撃事態における避難、誘導策あるいはその際の訓練についてのお尋ねでございますが、法案の国民保護に係る部分については、警報の発令あるいは避難の指示、それから被災者の救助、施設及び設備の応急の復旧、保健衛生の確保等の措置が適切そして効果的に実施されるようにするというふうな規定になっておりますが、具体の内容につきましては、先ほど来出ているとおり今後の国民保護法制において定めることとされており、現時点では明らかにされておりません。
 次に、公用令書の交付につきましては、自衛隊法の改正案によれば、自衛隊の任務遂行の妨げになると認められるときは、知事は、施設の管理、土地・家屋・物資の使用、それから収用、保管命令、立木等の移転などの処分を行うことができるとされ、その際に相手方にこの公用令書を交付することというふうにされております。この公用令書については、現在の法律で規定しているのは、災害救助法、災害対策基本法、大規模地震対策特別措置法等がありますが、本県でこの公用令書を交付した例は今まではございません。
現行の自衛隊法においてこの公用令書につきましては、災害救助法の規定を準用するというふうな規定になっておりまして、今回の改正で記載事項など、具体的に明示して規定することにしたというふうな説明を受けているところであります。

〇地域振興部長(飛澤重嘉君) 住民基本台帳法施行条例に関する議員のただいまの御意見、お気持ち、私、十分理解をし、また、しっかりと受けとめまして心して対処してまいりたいと、そういうふうに思っております。
 その上でお答えを申し上げたいと思いますが、まず、住民基本台帳ネットワークシステムにより国の機関が使用する事務内容ということでございますが、国におきましては、恩給法による年金受給者の現況確認事務など68事務につきまして、従来義務づけておりました現況届の提出でありますとか、住民票の写しの添付にかえてこのシステムによる本人確認情報を利用することによって、本人の生存の事実あるいは居住関係を確認するというふうにされております。これらの事務につきましては、平成11年の改正住民基本台帳法に個別具体に規定されているところでございます。
 それから、お話がありましたとおり、市町村が情報を知り得るのかというお尋ねでございましたけれども、市町村が県、国におきます住基情報の利用の実態を把握するということについてでございますが、県は同法の規定に基づきまして、指導情報処理機関に、本人確認情報処理事務の実施状況に関する報告を求めることができることになっております。県といたしましては、市町村からの求めに応じまして、県における本人確認情報処理事務の実施状況、あるいは指定情報処理機関に報告を求めた国における本人確認情報処理事務の実施状況等につきまして市町村に情報提供をしてまいりたいと、そのように考えております。
 それから、県が保有する本人確認情報の保護に関する県の責務と、あるいは知事が講ずるべき措置というお話でございました。住民基本台帳法施行条例に明示すべきではないかというお尋ねでございますけれども、これらの事務につきましては、住民基本台帳法の規定に明示されておりまして、先ほど質問の中で御説明申し上げましたとおり、いろんなマニュアル、管理規定、そういったものを準備させていただくというふうにしているところでございます。
 それから、本人確認情報に係る管理体制、不正アクセス行為の防止、あるいは目的外使用などの不正行為等についてでございますが、その対応措置を条例化すべきではないかというお尋ねでございますけれども、県におきましては、法の施行に向けまして、組織、入退室管理、アクセス管理等に関するセキュリティーの関係規程を整備する予定でございまして、これらの規程は個人情報のセキュリティーに深くかかわるものでございまして、広くこれらの規程を公表しますと、かえって不正アクセス等が懸念されるということで、一般に情報セキュリティーに係るマニュアル等につきましては秘密事項として取り扱うのが通例でございますので、条例により規定する予定はないということでございます。また、県が利用する事務につきましても、住民基本台帳法の規定中に明示されているところでございます。
 なお、いろいろ委員から御提言等もございましたので足らざる部分はないか、なお一層勉強をさせていただきたいと、そのように思います。

〇36番(小原宣良君) 常任委員会の機会もありますのでそこに譲りますが、私はマニュアルをつくったらどうだと言っているのではないですよ。これは誤解しないでくださいよ。それぐらい私もわかりますからね。泥棒にかぎを渡すようなものですからね、そんなことは要りません。
 そこであと4点お伺いしたいんですが、高弥建設の民事再生法適用に伴い、県、市町村の工事の実施施工への影響はどのようなものになっているでしょうか。また、再生計画はいつごろまとまるというふうに見ておりますか、お伺いします。
 この高弥建設の事態を受けて、連鎖倒産防止対策としての関連融資の活用状況はどうなっているでしょうか。
 保健福祉部長より答弁がありました。1点お伺いしたいんですが、痴呆対応型共同生活介護事業としてのいわゆるグループホームでありますけれども、この事業には利用者あるいは事業者としての施設運営希望がかなり多い状況にあるようです。そこで、この希望を満たすための枠拡大が望まれておりますので、この件に関しどういう見通しをお持ちか、お伺いをいたします。
 それから、教育長にお伺いいたしますが、一つは、ことし3月に卒業した高校生の就職状況、これはどのようにとらえておりますか。職を探したんだけれどもなかなかなくてということで、時間が経過している生徒さんもおられる、卒業したとは言いながらも、その辺のフォローアップ体制というものについてどうなっておりますか、お知らせください。
 それから、先ほどの専任の学校図書の司書の配置、これは難しいというふうにたしか教育長はおっしゃったんですが、ちょっとあきらめが早いんです。そうではなくて、やはり子供たちの読書意欲を高めるというのは、これは専門の司書の知識というのは、それはその司書の資格を持っている学校の先生もいるから、その人を充てればいいというふうに聞こえたんですけれども、これはまた違うんですよ。重々おわかりだと思うんですが、したがって、この司書の配置についてはこれからも十分御検討いただきたいというふうに申し上げておきたいと思います。
 以上です。

〇県土整備部長(猪股純君) 高弥建設の民事再生法適用に伴う県、市町村の工事の施工への影響についてでございますが、県営建設工事23件、これは工事費の持ち分が約76億円でございます。高弥建設から情報がありました市町村の工事、これは7件、工事費持ち分約18億円、これらにつきましてはすべて継続されているということで、このうち県営建設工事につきましては23件のうち、きょう現在7件が完成になっているなど、今までのところ、おおむね順調に進んでいるというところであります。
 また、再生計画についてでありますが、裁判所が決定しました裁判所への再生計画の提出期限、この提出期限は9月19日までとなっております。再生計画はその後の債権者集会において決議されることになりますけれども、高弥建設では5月7日に債権者説明会を開いておりますが、その中でその決議が本年11月ごろの見込みと説明しております。その後に、裁判所が再生計画を認可するということになります。
   〔「議事進行」と呼ぶ者あり〕


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