平成14年6月定例会 第14回岩手県議会定例会会議録

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〇35番(高橋賢輔君) 自由党の高橋賢輔でございます。
 通告に従い順次質問させていただきます。よろしくお願いいたします。
 増田知事は、知事として2期目の最終年度を迎えておられます。いわば総仕上げの年となるわけでありますが、この3年間の県政運営をどう評価し、最終年度にどうつなげていくかが知事に課された任務ではないでしょうか。
 確かにここ数年、増田知事は各種世論調査でも高い支持を得ていますし、北東北サミットなどに代表されますように、県枠を越えた精力的な対外活動などには一定の評価を惜しまないものであります。しかし、日本の厳しい経済情勢あるいは農業環境がそのまま映し出されているとはいいますものの、昨年来、本県において誘致企業の工場閉鎖、撤退が相次ぎましたことはまことに不本意なことであります。さらにこれに拍車をかけたのは、今年に入ってからの食品関連企業のパート従業員らの大量解雇であります。
 申すまでもなく、こうした実体経済、雇用情勢を反映して、県内の有効求人倍率は、昨年6月以降11カ月間、0.5倍を割り込む近年かつてない低水準を推移してまいりました。特に、新規学卒者の就職戦線は殊のほか厳しいものがありました。雇用問題は、社会が安定的に機能するための欠かせない基盤であります。離職者の生活基盤を根底から揺るがすだけでなく、各企業で培われた技術者ら貴重な人材の県外流出の懸念も大きな問題であります。
 新しい総合計画において行政の基本姿勢の一つに掲げられているのは、生活者の視点に立った県政であります。増田知事も常々その推進に意欲を見せており、私は、増田県政を語る上での一つのキーワードとして理解しております。もちろん、国の施策とも連動し、さまざまな雇用対策がとられていますが、雇用対策で問われるのは、まさに生活者の視点であります。全国の完全失業率は依然5.2%と、5%以上の月が10カ月も連続する過去最悪の事態となっており、雇用情勢は依然深刻で、先行きも決して明るいものではありません。あってはならないことですが、仮にBSEの影響による消費者の牛肉離れが1年、2年と続いた場合、本県農業を大きく支える畜産農家の転廃業などの実態も想定されかねません。各種対策も含めて、ここで必要なのは生活者の視点であります。県独自の施策だけで解決できるものではありませんが、今後の県政運営の核として、改めて生活者の視点を取り上げてみてはいかがでしょうか、増田知事の御所見を伺うものであります。
 次に、相次ぐ大型店の閉鎖問題についてお尋ねいたします。
 最近、県内の商店街から大手流通業の店舗撤退が相次いでおります。いずれも集客力のある核店舗でありまして、地域経済への影響は大きく、大変な損失であると認識しております。このところ、盛岡市では郊外への大型店進出に対応しての中心市街地対策が焦点となっているようですが、他の地区では大型店の撤退という新たな難問を抱えております。特に、経営不振の大手流通業が再編を迫られる中で不採算店舗の整理が進んでいるということであり、これには、本県にあります店舗が次々に閉鎖の対象となっていることであります。今は商店街は、ただでさえふえ続ける空き店舗対策に頭を痛めているのが実態であります。これまでの経過から見て、例えば、仮に地元が大型店に閉鎖の撤回や延期を訴えても、まず実現の見込みがないことであります。まして、経営を引き継ぐ業者も簡単には見当たらないのが現実であります。これまで大手が採算ベースに乗せられなかった店舗を果たして再生できるのか、このことは全国的に見ましても大変難しく、効果的な処方せんを打ち出せないでいるようであります。
 そのような中で、注目される試みとしてマスコミが取り上げておりましたのは、県外で閉鎖した大型店の従業員らが私財を投じて新会社を起こしたという話題でしたが、これも、あくまでも経営ノウハウなどのこれまでの経営基盤があった上でのことと紹介されておりました。また、県内では、遠野市の中心市街地核店舗創成事業により、この12月の新装開業を目指してテナントの募集が始まったとのことであります。これには、各方面から再生のモデルになり得ると注目が集まっているようであります。
 県では、相次ぐ大型店の閉鎖への対応について、今後どのようにしてリーダーシップをとっていくのかお伺いいたします。
 次に、二戸市と青森県にまたがる産業廃棄物の不法投棄事件についてであります。
 この事件は、県民にとってのショッキングなニュースとして伝えられ、今後の成り行きが注目されるところであります。全国最大規模の投棄量と言われ、なぜここに至るまでわからなかったのかと疑問視する声さえ聞かれますが、ここでは、許可を与えた県に監視する義務があったのではないかと思われます。既に両県での話し合いが持たれ、対応策が協議されているようでありますが、両県での食い違いが露呈しているのが実態のようであります。特に、汚染レベルの評価は、本県が望ましい環境を基準とした環境基準で、これに対し青森県は排水基準で評価しており、一般に排水基準は環境基準の10倍程度に設定されていると聞いております。あくまでも厳しい基準が安全に結びつくことは明らかであります。それが住民にとって安全な暮らしができるというものであります。
 ここで問題なのは、青森県側が主張する緊急的囲い込み後の恒久対策にあると思われます。申すまでもなく、本県と青森県は、秋田県とともに北東北3県の連携強化のあり方を探っているところでもあり、今回のような産廃不法投棄の対応をめぐっての今後の両県の連携姿勢が注目されるところであります。
 そこで、本県としての、生活環境を守る視点を第一にした対策についての基本的な考え方をお聞かせ願います。
 次に、食の安全が大きく揺らぎ、今なお深刻な影響が続くBSE(牛海綿状脳症)の問題についてであります。
 御存じのように、県内の畜産農家に大きな打撃を与え、さまざまな対策が講じられているところであります。この問題につきましては、昨年9月にヨーロッパ以外で初めて日本がBSE汚染国となって以来、食の安全性が問われてまいりましたが、その一方で、消費者の牛肉離れは依然回復していないのが現状であります。これらの影響は生産者にとどまらず、加工、流通、販売、外食産業など広範な関係業者に及んでいるのが現実であります。特に、BSEの発生後も感染牛の肉や骨が焼却処分されていなかったことが判明したことから、積極的な情報公開で消費者の信頼を回復しなければならないはずの農林水産省のその後の対応におくれがあったように見えたことはまことに遺憾であります。さらには、消費者の不信をさらに増幅させたのは、相次ぐ大手食品会社などによる牛肉、鶏、豚などの食品偽装事件であります。消費者の信用を失えば、生産者は生き残れないという厳しい現実が待っております。
 本県においては、これまでに市町村や関係機関との協議を重ね、対応策を協議した経過が報告され、前向きな対応がとられているようであります。特に、4頭目がBSEに感染していたと確定診断されたことから本県ではBSEの生体での検査を強化しているようですが、あくまでも生産現場から消費者に届くまでの安全確保が大切だと思われます。県は、マスコミ報道にもありますようにさまざまな対策を講じられてきたようでありますが、今後の安全確保のためにどのような施策を講じていかれるのかお伺いします。
 次に、最近、少子化を見据えての高等学校の統合改編計画が進められていることについてお尋ねいたします。
 まず、県教育委員会から示された計画案についてでありますが、いま一つ理解と納得のしかねる内容になっていることであります。その中での、農業の専門高校と総合学科高校のあり方についてであります。特に、(仮称)中部農業高校につきましては、校舎、校名問題を含めさまざまな検討をされてまいりましたが、具体的に質問させていただきますと、新しく開校されます総合学科高校と農業高校の学科が類似しているということであります。当初、本県農業の将来を見据えての魅力ある農業高校への改編ということでありましたが、それぞれの学科を比べ、将来の進路を選択しようとする子供たちの立場に立った場合、甚だ疑問に思えてなりません。
 まず、人づくりの基本となるのは学校教育であります。生徒たちに農業の魅力を感じさせ、学ぶことの楽しさを体験させ、学習意欲を高めさせるためにも今回の統合改編はまさに新しいスタートでありますが、また、本県農業の将来を占うものでもあります。
 そこで、岩手の農業教育をどう位置づけておられるか、県教育委員会の基本姿勢をお伺いいたします。
 次に、介護保険についてお尋ねいたします。
 高齢社会の安心の道の一つとして介護保険がスタートしてからちょうど3年目を迎えましたが、果たして県民の期待にこたえるには、どのようにして介護を受けるお年寄りや家族の声を反映させた制度に仕上げることができるかということがかぎであります。
 県長寿社会課の調べによりますと、本年3月末現在の県内の65歳以上の高齢者である第1号被保険者は31万7、000人でありまして、この中で、要支援、要介護の認定者は12%強の約3万9、000人となっております。実際、介護保険のサービスを利用した皆さんの声を聞きますと、大半の人が満足しているという答えが出ておりました。
 ただ、この2年間ではさまざまな課題が取りざたされているのも事実のようであります。特に、これから先は財源問題が大いに心配されると思われます。申すまでもなく、介護保険の財源は半分が40歳以上の国民の保険料からでありまして、4分の1が国の負担、残りを県、市町村が公費で支えているのが実情であります。しかし、今後の厳しい経済情勢から見て、国はもとより、県としても財政悪化は避けて通れない問題となってくると思われます。特に、財政の悪化により、これから介護保険を利用しようとする人のサービスが低下するようなこととなったり、あるいは高齢者の負担だけがふえるようなことになれば、新しい制度が長続きしないと思われます。
 そこで、介護保険制度の3年目がスタートした中での財源の見通しについて、県としての所見をお伺いいたします。
 次に、観光振興についてお尋ねいたします。
 まず、観光資源の活用についてでありますが、御案内のとおり、本県は、自然や歴史、文化、温泉などの観光資源が豊富にあります。観光は、私たち日本人にとって生きがいと安らぎを生み出し、ゆとりと潤いのある生活を与えてくれます。そして、人と人とのきずなを強め、歴史や文化に触れることにより多様な価値観に対する理解を助け、視野を広げてくれると言っても過言ではないでしょう。言うまでもなく、平泉文化に代表されるような岩手の観光資源は、広い県土に点在しております。さらに、県内には、このほかにも今後活用すべき観光資源が多く見られると思われますので、もっともっと隠れた観光資源の発掘に力を入れ、本県らしい工夫を凝らした観光振興を深めることが重要であると考えます。
 また、地域にとっての観光は、固有の文化や伝統を大切にし、魅力ある地域づくりを通じて地元の活性化に大きく寄与するものであります。その上、観光は、幅広い分野を包括した産業であることから、すそ野が広く、地域の経済にとってもその波及効果は極めて大きいものと確信するものであります。
 しかし、近年の観光を取り巻く環境を見ますと、産業構造の変化、地域間競争の激化、急速なIT革命や少子・高齢化の進展、環境意識の変化など大きく変動しており、経済や社会環境の変化に適切に対応することが今最も求められております。
 そこで、県内の観光地の集客については、各市町村や地方振興局との連携を密にして、県内各地における観光資源の掘り起こしを進め、県外からの誘客に努めるべきだと考えます。県としての観光振興における今後の取り組みについてお伺いいたします。
 次に、県のバランスシートについてであります。
 県の2000年度の連結バランスシートが先ごろ発表されましたが、この県財政の状況が果たして県民に受け入れられるものかは甚だ疑問が残るものであります。これは、県の一般・特別会計に三つの地方公営企業会計及び27の法定地方公社、財政援助団体の会計を加えた財務内容を明らかにしたものです。言うまでもなく、既存の社会資本に対して将来必要となります財政負担は1兆3、044億円にも膨らみ、1世帯当たりの負担として見ますと271万8、000円に達することになり、県民の負担がふえたことになります。また、これら公営企業や出資法人などの負債が県全体の財政負担増を余儀なくしている実情であります。特に、公表されております負債のうち、県債残高は1兆2、963億円を占めております。今回計上された法定地方公社と財政援助団体の借入金は528億円であり、すべて県の外郭団体であります。これまで県予算の枠の外にありました出資法人などを連結させたことにより、将来の財政負担がさらにふえたこととなったのであります。
 そこでお伺いしますが、県の出資法人の経営状況はどうなっているのでしょうか。また、多額の累積欠損を計上している法人に対して、県としてどのように指導していくのかあわせてお伺いします。
 次に、県道の整備についてお尋ねいたします。
 広い岩手県におきましては道路整備が県政の重要課題の一つであり、これまでも幾多の歴史を経てその整備に力を入れてこられたわけでありますが、今なお早急な整備が待たれているわけであります。私が感じますのは、県のソフト面での施策は非常にきめ細かく、いずれの地域であっても余り格差が見られないわけでありますが、ハード面では、生活基盤、生活環境とも中山間地域にかなりのおくれがあるように見受けられます。現実に、広大な県土には、県道でありましても危険箇所がたくさんあると思われますので、一日も早くその実態を把握されまして早期の整備、改良を望むものであります。
 私の住む和賀地方につきましては、これまでにもお尋ねした経緯がありますが、最近の道路整備では、幻の県道と言われました花巻から沢内に通ずる花巻大曲線がこの夏8月に暫定開通する見通しが立ったものの、このほかにも多くの整備、改良すべき箇所、路線が残されております。県としては、財政難などから事業箇所の絞り込みが必要であるとは思われますが、県内には、これまで後回しにされてきている老朽化した橋梁、狭い道路などが散見されるところであります。一例を挙げますと、冬の観光としてスキー客でにぎわう夏油スキー場への道のりは、危険を多く伴うものとして不評を買っているのも事実であります。
 そこで県は、道路の整備状況についてどのように認識し、今後どう進めていくかお答え願います。
 次に、森林の整備について伺います。
 本県は、県土の77%を森林が占める森林県であります。このうち66%が民有林で、34%が国有林となっております。環境問題がクローズアップされる中で、森林に対する関心が高まっております。これは、森林が持つ機能と、その果たす役割が改めて見直されているからであります。申すまでもなく、森林の水源涵養機能など公益的機能は広く知られるところであります。また、光合成で二酸化炭素を吸収・固定することから、近年は、地球温暖化防止の面でも森林の保全と整備が重要視されております。国民が求める森林の役割は、今や木材生産から環境財へと変わりつつあります。
 ところで、公益的機能を高度に発揮させるには、流域ごとに国有林と民有林の一体的な整備と管理が求められてきますが、実態を見ますと、割安な輸入材が大半を占め、国産材が太刀打ちできない状態が何年も続いております。木材の値段の低迷から、作業員の人件費さえ賄えないため、間伐も計画どおり進まないのが実態であります。さらに、5年ぐらい前からは、人工林を伐採しても跡地への再造林を見送るケースが多くなっていると聞き、林政への取り組みの弱さを感ずるものであります。特に、1998年度からは森林整備に対する市町村の役割が強化され、主導的な役割を果たすよう求められておりますが、残念ながら専門職員のいる自治体は少ないと聞いております。
 そこで、地方分権が進む中での森林整備の現状と将来展望についてお伺いします。
 次に、市町村の広域合併についてであります。
 大船渡市と三陸町との合併に続き、先行する形になっている一関市の広域合併問題、さらには、花巻地区広域行政研究会に見られるように、さまざまな論議を醸し出し、また多くの反響を呼んでおり、市町村によって住民の考え方に大きな食い違いも見られます。
 申すまでもなく、合併の是非を最終的に判断するのはあくまでも市町村あるいは住民でありまして、啓発の取り組みなどの環境整備が果たす役割は決して小さくありません。先ほど申し上げました事例にも見られますように、合併への関心が徐々に高まっているようですが、全県的な機運となりますといま一つ盛り上がりに欠けるものがあり、動き出している市町村間の温度差も歴然としております。また、理念、目的なき合併は過疎や新たな疲弊を招き、将来に禍根を残すと言われており、国主導の強制合併反対の立場を貫く全国町村会が政府などに提出した意見書もあります。
 合併は、将来のまちづくりへの地域住民の思いの投影であり、その意思が最大限尊重されなければなりません。財政支援などの多くの優遇措置が盛り込まれております合併特例法の期限切れは2004年度末であります。そう多く時間が残されているわけではありませんが、県はもっと市町村合併に積極的な姿勢を見せ、地域における温度差解消をどう進めていくかお伺いします。
 最後に、新学習指導要領における成績評価についてお尋ねします。
 この4月からの新学習指導要領実施に伴い、小・中学校の子供の成績評価が、他との比較で評価する相対評価から一人一人の学習到達度を見る絶対評価に切りかわりました。これは、知識偏重路線からの方向転換でありますが、大いに喜ばしい限りであります。しかし、これまで相対評価一辺倒の教育現場にとっては大転換でありますが、果たして教育現場にジレンマや戸惑いはないものなのか、疑問を感ずる者の一人であります。
 今、県教育委員会、学校に求められるのは、子供の学習到達度を適切に評価する、全教師が一体となった体制づくりであります。ここで最も基本になりますのは絶対評価ということになりますが、重要なのは、学力調査や日々の授業を通して子供たちを評価する姿勢ではないでしょうか。
 そこで教育長にお伺いします。新学習指導要領が示されてからはや2カ月余りが経過しましたが、子供たちの評価について学校現場に戸惑いはないのか、また、今後どのように指導していくつもりなのか御所見をお示し願います。
 以上で私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕

〇知事(増田寛也君) 高橋賢輔議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、今後の県政運営の核としての生活者の視点についてですけれども、これまで、県行政を推進する上での基本姿勢として、住民の生活実感を大切にする生活者の視点に立った県政の推進など四つの方針を掲げて新しい岩手づくりに取り組んできたところでございます。今、議員御指摘のとおり、完全失業率が依然として高い数値で推移するなど雇用情勢は極めて厳しい状況にあるわけでございますが、県では昨年度、年度途中ではございましたけれども、議会の方にも予算補正をお願いいたしまして雇用創出のための基金を造成するなど、失業者や離職者の雇用を促進するための対策を緊急に実施してきたところでございます。
 また、今年度も、雇用対策を最重点課題としてとらえまして、内発型産業の育成や新しい産業の創出に向けた取り組みなど、今、施策を鋭意進めてきているわけでございますが、引き続き、生活者の視点に立ちまして、それぞれの地域の実情や雇用の実態などを十分に把握しながら、また、地方振興局や市町村の連携を一層密にして、きめ細かく、さまざまな角度から検討を重ねて十分な対策を推進していく考えでございます。
 また、こうした分野のみならず、今後の県政の推進全般にわたりましても今申し上げました生活者の視点を大切にして、私自身も県内各地に足を運んで直接県民の皆様の声に耳を傾けながら、また、県としても地域の実情を十分把握するように努めて、地域が抱える課題について、県民の皆さんとともに考える姿勢を貫いていきたいと考えております。
 次に、大型店の閉鎖問題についてでございますが、マイカル東北の会社更生手続の開始などに伴います一連の大型店の閉鎖は、中心市街地の一層の空洞化につながるものと深刻に受けとめているところでございます。
 このような状況の中で、まちの活気やにぎわいを失わせず、魅力あるまちづくりを推進していくためには、まちづくりの中核となるまちづくり機関――俗にTMOと呼んでおりますが、タウンマネジメント機関です――や関係市町村はもとより、県や商工会議所や商工会など関係機関がそれぞれ適切な役割分担のもとに、地域の特色を最大限に生かした中心市街地の活性化に取り組んでいくことが重要と考えております。
 このため、現在、大型店が閉鎖される地域のTMO構想について、TMOや地元市町村やいわて産業振興センターなどで構成するTMO構想推進チームに県も参画して、そこで店舗閉鎖後の施設の有効活用策などを盛り込んだ構想の見直しを今進めているところでございます。
 さらに、TMO構想推進チームにおきましては、この構想を具体的に推進するために、歩行者の通行量ですとか年間販売額、空き店舗数などの目標を設定した事業推進計画――アクションプランですが、このアクションプランを作成して、この計画に基づいた実効性のある取り組みを展開していくこととしております。
 県では、TMO構想を着実に推進するため、商店街のアーケードや駐車場などの整備、空き店舗対策など、ハード、ソフトの両面にわたりまして、これらの取り組みを積極的に支援して、地域の特性を生かした中心市街地の活性化を図ってまいりたいと考えております。
 次に、青森県境における産業廃棄物不法投棄事件についてでございますけれども、この不法投棄現場の環境再生に向けて、住民の健康被害の防止と、さらに安心感の醸成が最も重要であるという認識に立ちまして、両県が一体となって原状回復に取り組んでいるところでございます。
 県では、早期の原状回復を図るためには、まず有害廃棄物の除去を行うことが必要であると考えておりまして、具体的な除去の方法や除去による周辺環境影響について、詳細調査を実施することとしております。その結果を踏まえまして、本県と青森県が共同で設置をいたしました青森・岩手県境不法投棄事案に係る合同検討委員会というものがございますので、そこでの提言をいただきながら、先ほど申し上げました住民の健康被害の防止と安心感の醸成に向けて取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、市町村の広域合併についてのお尋ねでございますけれども、市町村合併は、これは全県一律に進めるという性格のものではなくて、住民合意というのを前提としながら、それぞれの地域の実情というのが異なっていますので、その実情に応じた議論を尽くした結果として、やはり最終的には自主的に選択されるべきものと考えています。
 また、平成17年3月の合併特例法の期限をにらみますと、本年がこれからの市町村のあり方を決める大変重要な年であると思っておりまして、こうした住民の暮らしに直接かかわる問題につきましては、やはりすべての市町村におきまして、住民の皆さんと議論を深めていただくことが喫緊の課題であると考えております。
 県では、このような考え方に立って、それぞれの市町村におきましては、合併の要否を含めた地域の将来像など住民の皆さんがやはり判断できるような材料となる情報を積極的に住民の皆さんに提供した上で、今後一層、住民の皆さんと議論を深め、早期に結論を見出していただきますように、こちらの方でも促していきたいと思いますし、市町村みずからが行財政長期見通しを作成して、住民へより具体的な情報を提供できるようにするために、合併シミュレーションなどを含む市町村合併支援プランを8月を目途に策定して公表することとしております。今その作業を進めているところでございます。
 また、実践的な合併論議を行うことによりまして合併の機運を一層盛り上げるために、国と県などの共催によるシンポジウムを開催することを予定しておりまして、今準備を進めておりますが、この場には市町村長初め、住民の皆さんにも広く積極的に参加していただくように呼びかけていきたいと考えております。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので、御了承願います。
   〔農林水産部長佐々木正勝君登壇〕

〇農林水産部長(佐々木正勝君) まず、BSEの発生に伴う今後の安全確保対策についてでありますが、我が国で初めてのBSEの感染牛の確認によりまして、牛肉の消費が急激に減退し、それに伴う生産者価格の低迷により、生産者は大きな打撃を受けたところであります。
 県といたしましては、市町村、農業団体等と一体となり、牛肉の安全性の確保や生産者の経営安定のための諸対策を講じてきたところであります。こうした取り組みの結果、牛肉の消費量や生産者価格は、ともに回復基調にありますものの、いずれもBSE発生以前の水準には完全には回復し切れていない状況にありますので、今後とも、いわて牛普及推進協議会との連携のもとに、牛肉の安全性についてのPR活動や消費拡大のためのキャンペーンなどを積極的に展開してまいる考えであります。
 また、全国に先駆けて導入した、県産牛肉のトレーサビリティーシステムにつきましては、より多くの消費者が牛肉の生産履歴を確認できますよう、現在70の実施店舗を、早い時期に100店舗を目標に拡大することといたしております。我が国におきますBSEの清浄化には相当の年数を要しますことから、この間は飼料給与の適正化指導や、中枢神経症状を呈する牛についての病性鑑定など、引き続き、気を緩めることなく取り組んでいかなければならない、そのように考えております。
 さらに、国は、今般、牛海綿状脳症対策特別措置法を制定し、来月7月4日から、24カ月齢以上の牛が死亡したときは、獣医師または所有者は県への届け出を義務づけられたところであり、また、今後、県において死亡牛のBSE検査も必要となってまいりますので、生産者等への周知の徹底を図りますとともに、適切に対応してまいる考えであります。こうした生産から流通に至る一連の安全確保対策への取り組みを通じて、安全、安心な牛肉の供給に努めてまいる考えであります。
 次に、地方分権が進む中での森林整備の現状と将来展望についてでありますが、国におきましては、地域の実情に応じた森林の整備を図るためには、最も地域に密着した行政主体である市町村が、林業行政に従来以上に主導的な役割を果たす必要があるとして、平成10年に森林法の一部を改正したところでございます。この改正法によりまして、市町村森林整備計画が、造林から伐採に至る総合的な計画へ拡充され、森林施業計画の認定及び伐採届の受理など、森林計画業務の一部が県から市町村に委譲されたところであります。
 一方、近年、自然環境の保全に対する県民の関心が高まり、森林の持っている多面的な機能の高度発揮、とりわけ地球温暖化防止対策を推進する上からも、森林の適切な整備に対する要請が高まってきており、市町村森林整備計画に基づく造林や間伐など保育の計画的な推進が一層重要となっております。
 このように市町村の森林整備に対する役割が従来にも増して大きくなってきておりますことから、県といたしましては、市町村の業務が円滑に推進されるよう、今後とも市町村の林業担当職員を対象とした研修をさらに充実し、林業技術習得や森林施業のコーディネート能力の向上を図るとともに、市町村森林整備計画の作成に当たりましては、県の保有する森林資源情報を提供するなどの支援を行うこととしております。さらに、今年度から実施することとなっております森林整備地域活動支援交付金制度の有効な活用を通じまして、地域の実態に即した、きめ細かな森林の整備が図られるよう支援してまいる考えであります。
   〔保健福祉部長関山昌人君登壇〕

〇保健福祉部長(関山昌人君) 介護保険についてでありますが、介護給付費等に要する費用については、その2分の1を保険料で負担し、残りを国、県、市町村の公費で負担することが法律上定められており、県といたしましても所要の財源の確保に努めているところであります。
 市町村における介護保険財政につきましては、スタート2年目である平成13年度の決算については現在のところ未確定でございますが、速報値によりますと、介護サービス給付実績値は、市町村介護保険事業計画に対して、県平均で約86%の給付実績となっており、現在のところおおむね健全な保険運営がなされているところであります。なお、計画を上回る給付実績となっている市町村もあることから、保険財政の安定を図るため、1村に対し県の介護保険財政安定化基金からの貸し付けを行ったところでありますが、全国の貸付状況を見ますと本県の貸付保険者数の割合は低率となっております。
 今後におきましては、現在、来年度からの次期介護保険事業計画の策定に当たっているところであり、介護保険財政の見通しを述べられる段階に至っておりませんが、各市町村における計画策定に対し、適正な給付水準の確保とそれに見合った適切な保険料の設定などについて、県としても的確な助言を行い、適切かつ安定的な保険運営が図られるよう、必要な支援を行ってまいりたいと考えております。
   〔商工労働観光部長照井崇君登壇〕

〇商工労働観光部長(照井崇君) 観光振興における今後の取り組みについてでありますが、観光ニーズが多様化し、旅行形態の小グループ化が進展する中にあって、岩手の観光をさらに発展させていくためには、岩手の売りとなる観光資源を明確にし、岩手ならではの観光メニューを効果的に提案していくことが重要であると考えております。そのため、これまでにもいわて四王国事業や三陸夢紀行創造事業などにおいて、地域の特性を生かした旅を提案してきたところでありますが、今年度におきましては、市町村や関係団体と連携して、県内各地に残る農村風景などの自然景観、豊富で新鮮な食材やこれらを生かした郷土料理などの食、農林水産業や伝統的な行事などに根差した生活文化などの体験型観光メニューや、観光ボランティアガイドを活用した旅、新たな観光ルートなどの掘り起こしに努めているところであります。
 今後は、これら新たに掘り起こした農作業や海の収 穫体験、自然観察や郷土料理体験などの具体的な観光メニューを、首都圏などの旅行代理店に対して情報提供し、旅行商品造成の働きかけを行うとともに、本年4月に運用を開始したホームページ岩手の旅などを活用し、広く県内外に情報を発信してまいりたいと考えております。
 さらに、観光客を温かく迎えるおもてなしの向上を図るため、観光事業従事者を対象とした研修会を開催するなど受入態勢の充実に努めながら、二度三度と繰り返しおいでいただけるような環境客の誘致拡大に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
   〔総務部長小原富彦君登壇〕

〇総務部長(小原富彦君) 県出資等法人の経営状況及び累積欠損を計上している法人に対する指導についてでありますが、さきに公表いたしました連結バランスシートの対象とした50%以上の出資法人に県が4分の1以上を出資している法人などを加えますと、平成12年度末現在で県出資等法人は48法人で、平成12年度決算において27法人、56.2%は財務内容が健全と認められるところでありますが、初期設備投資資金の償還途上にあるものや、個人消費低迷による売り上げの減少などによって当期損失を計上した法人が18法人、37.5%、累積欠損を計上した法人、これにはただいま申し上げた当期損失と重複する6法人も含めますが、9法人、18.7%となっているところであります。
 県では、県出資等法人に対して適切な指導監督を行う上での基本的事項を定めた県出資等法人指導監督事務要綱に基づき、それぞれの法人所管部局において、法人の自主性を尊重しながらも業務の適正な運営が図られるよう運営全般について、毎年度評価を行っているところであります。特にも、累積欠損を計上している法人につきましては、事務・事業の見直しや経営改善計画の策定を指導しているところでありますが、今後におきましても、事業内容の妥当性、財務の健全性及び組織体制の効率性などを検証しながら、改善計画に基づき経営健全化に向けた具体的な措置が講じられるよう、所管部局とともに、適時適切に指導してまいりたいと考えております。
   〔県土整備部長猪股純君登壇〕

〇県土整備部長(猪股純君) 県道の整備状況についてでありますが、平成12年4月現在、県道は主要地方道、一般県道合わせて246路線、延長は3、005キロメートルであり、その改良率は80.0%、舗装率は81.4%となっております。これらの値は、平成5年に比べまして、改良率で6.3ポイント、舗装率で4.9ポイント上昇するなど、県道の整備は着実に進んでおりますが、東北6県の平均値に比べますと、改良率は2.7ポイント上回るものの、舗装率は8.4ポイント下回っているという状況にございます。県道には、地域間交流、救急医療活動などの妨げとなっております、幅員が狭く急カーブ、急勾配が連続する峠道や、道路防災総点検の結果、対策が必要な箇所など、いまだに整備を要する箇所が数多く残されていることから、今後も引き続き、交流、連携が活発に行われる、快適で安全な県土の創造に向けまして、県道の整備を着実に進めていく必要があると認識しております。
 このため、県では、距離、雪、峠の克服を道路整備の課題に掲げ、道路改築事業や道路災害防除事業などの国庫補助事業に加え、地域活性化支援道路整備事業や地域振興支援道路ネットワーク整備事業など本県独自の施策を展開し、国道や市町村道と一体となった体系的な道路ネットワークの構築に鋭意取り組んでいるところであります。現在、経済・財政環境は非常に厳しい状況にありますが、今後、公共事業評価などによって事業の重点化を図るとともに、地域の皆様方の御意見、御要望を十分にお伺いしながら、それぞれの地域が目指す将来像の実現に向けて、効率的な道路整備に努めてまいりたいと考えております。
   〔教育長五十嵐正君登壇〕

〇教育長(五十嵐正君) まず、岩手の農業教育についてでありますが、自然を愛する心を醸成し、農業の産業としての役割等を理解させ、さらには本県農業の担い手養成のためにも、学校における農業にかかわる教育は、重要な分野であると認識しております。このため、高等学校の農業学科にあっては、農業に関する基礎的、基本的な知識や最新の農業技術の習得を通して、将来のスペシャリストを養成することとしているところでございます。こうした視点に立ち、高等学校新整備計画においては、農業学科は、社会の変化に対応できる農業経営や農産物の生産、加工、流通に関する教育、情報、バイオテクノロジーに関する教育等を充実させ、地域の実態を踏まえながら、生産科学、生物工学等特色ある学科への改編と教育内容の一層の充実を図り、地域の農業を支える担い手の養成など専門的な教育を進めてまいることとしているところであります。
 一方、総合学科においては、各学校ごとにその教育方針や内容を工夫していくものでありますが、岩手中部地区に予定されている総合学科高校にあっては、草花、果樹、生物活用などの科目を設置し、こうした科目の学習を通して、できるだけ多くの生徒が広く農業への興味や関心を深め、将来にわたって自然や環境などを守り育てようとする意欲や態度を高めることを目指しているものであります。こうした農業に関する専門的な教育と総合学科で行う学習との違い等については、学校説明会等において中学生と保護者に説明をし周知することとしております。
 県教育委員会といたしましては、今後とも地域社会や関係機関との連携を図りながら、農業教育の一層の充実、発展に努めてまいりたいと考えております。
 次に、新学習指導要領における成績評価についてでありますが、学習指導要領に示す各教科の目標に照らして、その実現の状況を評価する、いわゆる絶対評価の考え方については、平成3年3月の文部省通知により示されており、県教育委員会では、教育課程説明会や総合教育センターにおける研修会等を通じて、その考え方の趣旨と評価の仕方について各学校に対して指導してきたところであります。このため、今般、いわゆる絶対評価が一層重視されたことに対しても、各学校の対応は適切に行われるものと考えておりますが、まだ一部に理解が十分でない学校もあることから、さらに現在、その具体的評価のあり方についてわかりやすく説明した授業改善実践事例集等を活用しながら、各学校がより適正な評価を行うための評価規準の見直しに取り組んでいるところであります。
 また、8月には、すべての小・中学校の校長、教務主任等を対象に教育課程地区別説明会を開催し、一学期の評価をどのように行ったかについて、各学校の具体的な取り組みをもとにした研究協議を行うこととしており、今後とも各学校において児童生徒の評価が適切に行われるよう、指導してまいりたいと考えております。

〇議長(谷藤裕明君) 次に、佐々木大和君。
   〔18番佐々木大和君登壇〕(拍手)


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