平成14年6月定例会 第14回岩手県議会定例会会議録

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〇15番(岩城明君) 政和会の岩城明でございます。
 初めに、去る5月16日に御去された故船越賢太郎議員のみたまに対しまして、謹んで哀悼の意をささげ、心より御冥福をお祈り申し上げます。
 さて、質問の機会を与えていただいた同僚議員に感謝を申し上げるとともに、以下、順次質問をしてまいりますので、当局の誠意ある御答弁をお願いいたします。
 まず第1に、地域の個性ある発展についてお伺いいたします。
 国土の発展の基本命題として、全国一律に地域の均衡ある発展を目指してきた20世紀型の国土政策は、均質な地域振興策ゆえに地域の個性ある発展を妨げ、地方は画一的な様相を呈しているとの批判が昨今聞かれるようになってまいりました。右肩上がりの経済は終えんし、成長がすべてを解決できた戦後の日本社会は、経済不況、高まる完全失業率、高齢化に伴う増大する年金や医療費負担など社会保障の将来についての不安等、あらゆる面で閉塞状況にあり、この状況を打破するためには、従来の価値観を払拭し、経済成長システムに依存しない社会体制を構築することが求められております。
 このような情勢のもと、画一から多様への流れの中で、自立した地方がそれぞれの多様な個性と創造性を十分に発揮し、互いに競い合う中で、経済社会の活力を引き出す新たな地方の自立・活性化プログラム、個性ある地域の発展、知恵と工夫の活性化が政府の方針として示されております。
 私は、それぞれの地方が活性化し、地域において人々が安寧に定住でき、また、地域のよさに気づき、その資源を生かし、特色のある地域づくりがなされて力強い生活の場の提供が可能となることは、今後の地域社会の形成にとって望ましい姿であり、地域が醸し出すハーモニーによってすばらしいオーケストラができ上がることと思います。地方自治の目指すところであり、基本的にはこの政府のプランに賛意を示すものであります。
 しかしながら、市場原理を追求し地方が競い合うためには、まず、道路、下水道などの基幹的生活・社会資本整備が均等に行われ、また、地域の特性に合った産業政策が行われていることが前提としてあるものではないかと考えております。
 本県の状況を見ると、例えば、県北・沿岸地域の社会資本整備は、新幹線の八戸延伸により高速交通網は飛躍的に改善されるものの、新幹線につながるアクセス道の整備、八戸・久慈自動車道の整備の将来の方向、おくれている下水道の整備、停滞する地域の製造業など、地域が互いに競い合ってできるような土俵の整備がいまだ達成できていないのが現実ではないでしょうか。
 知事は、今後どのような基本的な考え方のもとで地域政策を進めていくお考えなのか、また、岩手におけるそれぞれの地域の特色をどう伸ばし、個性ある地域として他の地域と競い合えるようにしていくお考えなのかお伺いいたします。
 次に、市町村合併についてお伺いいたします。
 少子・高齢化の進展、国、地方を通じて財政の著しい悪化など、市町村を取り巻く環境は大きく変化をしてきており、また、国の構造改革に伴い、基礎的自治体である市町村の権限が大きくなることが予測される中で、市町村がみずからの創意工夫により効率的で質の高い行政を行うためには、行財政基盤を強化していくべきことは論を待たないところであり、そのためには合併も一つの方策でもあると考えております。
 県では、平成12年5月に広域行政推進指針を策定し、また、昨年度末に広域圏ごとに合併支援の啓発資料を配布するなど、合併への機運の醸成に努めているところであると認識しております。全国の状況を見ると、全市町村の7割に当たる2、200の市町村が数年内の合併を視野に、研究会、協議会を設置し始めております。しかしながら、この合併論議は本来の合併の道筋ではなく、税財源の移譲が進まない中で、国の合併特例法に定める地方交付税の特例措置と特例地方債の発行という優遇措置が、財政難にあえぐ市町村にとって好機に映り、財政確保の面からの議論が先行している面も否めないのではないでしょうか。
 本来、市町村合併は情報の提供が豊富な中で、合併過程の透明性が高く、多くの住民が参加、議論のもとで、あるべき市町村の姿、まちづくりのグランドデザインを住民が納得して策定した後にあるべきものと考えております。
 平成15年4月に合併することを定めた静岡、清水両市は、当初から4年予定の法定協議会を設置し、各界各層から39人の委員を選び、合併するかどうかを含め多くの時間をグランドデザインの構想に費やし、その結果、合併のメリットが大きいと判断し、今中長期の数値目標が計画化されていると聞いております。
 私は、市町村合併は目的ではなく手段であり、この手段を使って新しい地域をどのようにしてつくり上げるのか、さまざまな論議を進めていくべきものと考えております。
 知事は、先ほど行われた地方振興局長会議において、8月までに県の市町村合併支援プランを策定し、来年の早い時期に合併の要否について回答を求める旨の発言をなされておりますが、市町村合併のあるべき姿に対する基本的な考えについてお伺いをするとともに、県内市町村の合併動向をどのようにとらえておられるのかお伺いいたします。
 次に、合併に関連して、小規模町村の取り扱いについてお伺いいたします。
 平成13年6月に閣議決定された今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針、いわゆる骨太の方針によると、人口数千の団体と数十万の団体が同じように行政サービスを担うという仕組みを見直し、団体規模に応じて仕事や責任を変える仕組みをさらに検討するとされており、例えば、人口30万人以上の自治体には一層の仕事と責任を付与し、小規模町村の場合には仕事と責任を小さくし、都道府県が肩がわりなどを行うとされております。
 また、政府はこの6月2日までに、小規模自治体の権限を縮小して都道府県に肩がわりをさせるなど、基礎的自治体のあり方を抜本的に見直す方向で検討する方針を固め、首相の諮問機関である第27次地方制度調査会において審議を始め、この小規模自治体については、1、周辺都市が事務の一部を担う水平補完、2、都道府県が事務を担う垂直補完、などが盛り込まれる見通しとなっていると報道されているところであります。
 全国3、218市町村の約半数が人口1万人未満の市町村となっており、平成12年の国勢調査結果で本県を見ると、人口1万人未満の町村数は24となっており40.7%となっております。市町村合併の動向いかんにもよりますが、これらの町村が合併せずに残った場合、国が現在検討している制度に当てはめると、これらの市町村に対していかなる支援策がとられていくのでしょうか。
 知事は、県町村会政調懇談会で講演し、地方分権時代にそれが本当に成り立つかということもあるが、小規模市町村の取り扱いについて、一部事務の県代行制度を考えざるを得ないとの発言もなされております。合併の行方を大きく左右しかねないこの制度について、どのような基本認識を持って進めていかれるのかお伺いをいたします。
 次に、人口問題に関連いたしまして幾つかお伺いいたします。
 平成14年3月、国立社会保障・人口問題研究所が発表した都道府県の将来推計人口を見ると、我が国の総人口は4年後の平成18年にはピークを迎え、以後長期の減少過程に入るとされ、一方、国勢調査の結果を見れば、平成7年から平成12年にかけて既に23道県で人口が減少しており、今回の推計によれば、人口が減少する都道府県は今後も増加を続け、平成17年から平成22年にかけては36道府県、平成27年から平成32年にかけては滋賀県、沖縄県を除く45都道府県で人口が減少し、以後平成42年度までほとんどの都道府県で人口減少が続くとされております。
 当推計によれば、本県の2030年の人口は123万2、000人で、基準年次である2000年に比べ18万4、000人、およそ14.9%減少する見込みとなっており、また同推計によると、年少人口比率は11.8%であり、老年人口比率は32.2%となっているなど、人口構造は確実に少子・高齢化に速いスピードで向かっております。
   〔副議長退席、議長着席〕
 この人口構造の変革は、経済面においては労働力人口の減少による経済成長率の低下や高齢化の進展による現役世代の負担の増加をもたらし、また、社会面では、過疎化の進行により基礎的住民サービスの提供が困難になるなど、さまざまな社会変革をもたらすことが予測されていることから、21世紀において持続可能な地域社会を形成する上で念頭に置かなければならない重要な要素であり、それに対応する施策を着実に推進していくことが求められていると考えております。とりわけ男性の平均寿命が79.68歳、女性の平均寿命が87.86歳、老年人口比率が30%を超える社会が予想される中で、要介護者が増加する一方、介護する家族の介護力が女性の社会進出や少子化により低下し、また扶養負担が増加するなど介護や社会負担の課題が生じてくることから、これに的確に対応するとともに、年齢を重ねてもなお生きがいを持って生き生きと暮らすことが可能となる社会を形成するための施策を、今から着実に進めていくことが求められていると考えております。
 介護保険施行以来、介護老人の施設入所待機者が急激に増加していることなどが報じられておりますが、将来の超高齢化社会を迎えるに当たり、知事は、施設福祉や在宅福祉をどのように進めていくお考えなのか、とりわけ介護保険導入時に比較して3倍に急増し、20年待ちとも言われる施設入所待機者に対応する施策はいかにしていくのかお示し願います。
 一方、高齢者が社会にどのように参加し、生きがいを持って暮らせる社会をいかに形成しようとしておられるのか、あわせてお伺いいたします。
 また、高齢化と表裏一体をなす少子化対策についてお伺いいたします。
 少子化の要因は、育児への負担感や仕事との両立の負担感などによる未婚率の上昇や女性の経済的自立や子供を持つ意義の変化、個人の価値観の変化など、さまざまな要因が考えられており、国のエンゼルプランなどにより少子化対策がとられておりますが、本県においても、子育て支援ネットワークなど種々の施策が展開されているところであります。
 私は、少子化対策を考えるとき、まずもって進めなければならないことは、子供が健やかに育つための小児医療体制の整備や子育てに不安を持たず、健全な家庭環境のもとで子育てが可能となるような体制の整備を進めていくことだと考えております。
 しかしながら、児童虐待に関する事件が相次ぐなど、果たして子育て環境は健全なものになっているのでしょうか。児童虐待は身体的虐待のみならず、直接的でかつ連発的な言葉のダメージにより傷つける心理的虐待、保護の放棄や育児の拒否、食事を与えないなどのネグレクトなどさまざまな形態があり、日本小児保健協会が約6、900人を対象に行った調査によれば、子供を虐待しているのではと思うことがあると答えた親は18%で、4人に1人は育児に自信を持てないと答えているとされております。
 少子化とともに家族構成も核家族化が進み、子供が思うように育たず、あせりからストレスがたまり、相談する相手もなく、孤立し、不安感が募っているのが現状なのではないでしょうか。また、子供時代に虐待を受けた経験のある父親の70%、母親の81%が、自分の子供に虐待を行っているという世代連鎖もあると言われております。
 児童虐待は本県においても増加傾向にあり、その予防対策とあわせて、虐待関係になった親子あるいは世代連鎖を絶つためにも、相談窓口の体制の強化を図るとともに、医学的見地から的確なアドバイス、心のケアを行う専門のカウンセラーの養成が急務であると思いますが、いかがでしょうか。児童虐待の本県の現状と今後の対策について、専門職員の養成を含めお伺いいたします。
 次に、人口問題に関連して、中山間地域の農業振興についてお伺いいたします。
 人口減少が続き過疎化が進む中で、中山間地域においてはその置かれた農業条件、社会・経済条件の不利性からの人口減と高齢化が著しく、農業の担い手の脆弱化、耕作放棄農地の増加、農業集落の消滅がもたらされていると言われております。
 中山間地域の人口減少は山間地帯が最も著しく、その主たる産業である農業の振興を図るとともに、土砂崩壊の防止、水源涵養、大気浄化やレクリエーションの提供の場としての公益的機能を評価し、その保全に努めていくことが急務であると考えております。特に西日本においては、中山間地域でも山間農業地域においては約2割に近い市町村が30%以上の人口減となっており、また、水田率の低い畑地型地帯では過疎化と高齢化が急速に進んでいるとされております。
 また、中山間地域の定住人口の維持要件については、人口当たりの課税所得等が大きな要素であると言われていることから、畑地帯における準高冷地作物の高付加価値化を進め、農業所得の向上を図るとともに、耕作放棄地の適正な管理による国土保全を進めていくことが必要であると思います。
 中山間地域における野菜の高付加価値化にどのように取り組んでいかれるのか、また、他県においては中山間地域の資源管理の一形態として、農地の荒廃を防ぎ、農家にかわって農地管理を行う法人を設立し、多くの集落で組織を中心とした集落完結型の水田管理が行われている事例も見られますが、本県においては中山間地域の農地の保全をどのように進めていくお考えなのかお伺いいたします。
 次に、青森県境の不法投棄についてお伺いいたします。
 二戸市と青森県田子町にまたがる産業廃棄物不法投棄は、投棄量が全国的に問題となった四国の豊島をはるかにしのぐ82万立方メートルと全国最大規模に上り、その処理方法について青森、岩手が設置する合同検討会において、産業廃棄物の撤去の技術的方法や費用の財源補てん、現場の環境再生など、広範な問題について検討されることとなっているところであります。
 この不法投棄は、知事が現地視察でもおわかりのとおり、現場はがけや山林に囲まれ地上から見えにくい場所であり、それゆえに不法投棄が発見されにくかったものと思われますが、その処理費用は岩手県における投棄量約15万立方メートルに係る分のみでも約100億円に上ると言われ、一度自然を破壊し再生をするためには、多額の費用と年月を要し、再びこのような事件の発生を生じないために、不法投棄を許さない体制の整備と制度の創設が求められております。
 知事は、先ごろ行われた国に対する提言活動においても、最重点課題として国の補助制度や新たな費用負担のあり方について提言をしたところであります。また、豊島はこれを契機に新たな環境産業の創出に向かって地域の活性化を図ることとされておりますが、知事は、産業廃棄物不法投棄に対する今後の制度のあり方や環境産業の創出による地域の活性化、さらには不法投棄の監視体制をどのように強化していくお考えなのかお示し願います。
 次に、食の安全性の確保についてお伺いいたします。
 平成13年9月10日、日本で初めてBSE感染と見られる牛が発見されてから、雪印食品による食肉偽装事件、スターゼンの食肉偽装事件、全農チキンフーズの鶏肉偽装事件、丸紅畜産の鶏肉偽装事件が相次ぎ、最近では協和香料化学による無認可添加物使用食品の自主回収が行われるなど、食の安全に関する信頼を損ねる事件が続発しております。
 このような情勢のもと、国は食品行政の中枢を担う食品安全委員会(仮称)を設置し、食への信頼回復に向けた本格的取り組みを行うこととしているところであります。一体、食の安全に対するモラルはどこに行ってしまったのでしょうか。経済の利潤性を求め、また、生産振興を主眼とする企業や行政の観点を見直し、行政主導で消費者の立場での商品生産を行おうとしたならば、このような事態は生じなかったのではないでしょうか。
 一方、本県は我が国の総合食料基地であり、改めて食の安全性を武器に他県の生産物との差別化をねらい、市場に打って出る絶好の機会が訪れていると言っても過言ではないと考えております。この食の安全性の確保に対する県の基本的な考え方と市場への優位性をいかに進めていくお考えなのかお伺いいたします。
 最後に、農業問題に関連して、久慈市大川目地区における農業農村整備事業についてお伺いいたします。
 本地区は、久慈川に沿った比較的平坦な水田地帯で、久慈市において大型圃場の整備が可能な数少ない地域でありますが、区画が小さく、道路幅員も狭く、効率的な営農に支障を来している地域であります。このことから、現状の水田や農道を改善し、大型機械の導入により労働時間を短縮するとともに、担い手の農地の利用集積などによる生産性の向上を図るため、関係者による事業の合意形成が積極的に行われるなど、事業の実現に向けた努力が重ねられてまいりました。そのかいあって、平成13年度には圃場整備事業が、今年度には農道整備事業が採択となりましたが、地元では、働きやすく効率のよい水田や農道を生かした営農を一日も早く実現させるため、事業の円滑な実施を支援する組織を設立するなど、両事業の早期完成を待ち望んでおります。
 そこでお伺いいたしますが、本地区における県営圃場整備事業及びこれと関連する農道整備事業の進捗状況と今後の見通しについてお伺いいたします。
 以上で私の質問を終わります。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   

〇議長(谷藤裕明君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
   
   〔知事増田寛也君登壇〕

〇知事(増田寛也君) 岩城明議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、地域の個性ある発展についてでございますけれども、これについては、私はそれぞれの地域が相互に連携をしながら、それぞれが魅力的な地域づくりを目指すと、そして自立的に発展していくということが重要でございまして、そのためには、それを可能とする基礎的条件の整備を進めるとともに、実際にそれぞれの地域で行われる地域づくりの取り組みに対して、県が積極的に支援を行うことが基本であると考えております。このため、現在、具体的には東北横断道釜石秋田線や三陸縦貫自動車道を初めとする交通ネットワークの整備、下水道などの生活基盤の整備、さらには情報ネットワークの構築などを今進めているところでございます。
 また、こうしたインフラ整備の上に立って、地域特性を生かした農林水産業や商工業の振興、情報・技術などの知的資本の集積、医療・福祉や環境などの新たな分野における産業創出など産業振興策を積極的に展開するとともに、さらには、それぞれの地域の文化や資源を見詰め直して、それを大切に育てていく地域づくりの取り組みでございます地元学を推進しているところでございます。さらにつけ加えますと、県が今制度化をしております地域活性化事業調整費や市町村総合補助金という、こういうものがございますが、こうした制度は市町村などが行う自主的で特色ある地域づくりを支援していく上で極めて有効であると、このように考えております。
 今後におきましても、こうした取り組みにさらに工夫を加えまして、県内のそれぞれの地域の魅力が高まり、個性ある発展を遂げられるように努めてまいりたいと考えております。
 次に、市町村合併についてでございますが、これからの行政の中心的な役割を担うべき市町村が、そのみずからの判断と責任によって自立した行政を展開していくためには、その役割を果たすにふさわしい効率性や専門性を備えた行政体制を整備して行財政基盤を強化していく必要がございまして、この市町村合併というのは、今申し上げましたようなことのための有効な方策となるものと考えております。
 もとより、こうした市町村合併は全県一律に進めるというものではなくて、それぞれの地域の置かれている条件も異なりますので、住民合意を前提としながら、それぞれの地域の実情に応じた議論を尽くした結果として、やはり住民の自主的な選択、それによるべきものと考えておりますが、平成17年3月に合併特例法の期限が来るということを考えますと、ことしがあるいは今年度がこれからの市町村のあり方を決める重要な年であると、このように考えております。
 この半年間の県内各地の状況を見ておりますが、この6月に各市町村の議会などにおいても具体的な動きが出てきているものと感じておりますが、市町村におきましては、合併の要否を含めた地域の将来像など、住民の皆さんの判断材料となる情報を積極的に提供していただきまして、今後一層、住民の皆さんと議論を深め、早期に結論を見出していただきたいと、このように期待をしております。
 県では、こうした考え方に立ちまして、市町村みずからが行財政長期見通しを作成し、住民へより具体的な情報を提供できるようにするために、合併シミュレーションなどを含む市町村合併支援プランを、8月を目途に策定して公表することといたしております。
 次に、高齢化対策についてでございますが、介護サービス基盤の整備に当たりましては、介護を要する状態になっても、できる限り住みなれた地域で自立した生活が送り続けられる社会の実現が重要であると考えております。しかし、介護保険法施行後、施設への入所希望者が増加傾向にありまして、介護老人福祉施設への入所を希望している在宅の要介護者はことしの3月末現在で1、492人と、このようになっております。このため、在宅サービスを重視しながらも、施設入所のニーズを的確に把握して、痴呆性高齢者グループホームや生活支援ハウスなどのいわゆる施設系サービスの多様化に留意しながら、身体拘束の廃止などサービスの質的向上を目指して、こうした施設サービスと在宅サービスのバランスのとれた基盤整備が図られるように、現在、市町村とともに平成15年度からの第2期介護保険事業支援計画の策定に取り組んでいるところでございます。
 また、高齢者の皆さんが健康で生きがいを持ち、長年培いました豊かな経験・知識・技能を十分発揮できるように、高齢者の健康づくりの充実はもとより、本年度におきましてはいわてシルバーカレッジの新設による学習機会の充実や、地域での社会貢献活動を支援するシルバーパワーネットの整備を行うなど、これはやはり市町村と連携する必要がございますので、そうした連携を図りながら、高齢者の多様な社会参加を支援して、心豊かで活力に満ちた明るい長寿社会の実現を目指していく考えでございます。
 次に、青森県境の不法投棄についてですけれども、不法投棄を未然に防止するために、この事件を教訓として、新たな制度づくりというものに今取り組んでいるところでございます。このため、循環型地域社会の形成に関する条例整備懇談会、こういう有識者の皆さん方の懇談会がございますので、この答申に基づきまして、優良事業者の育成や県外から搬入される産業廃棄物の事前協議の義務化などについて今具体的な検討を進めておりまして、今年度中には成案を得たいと考えております。
 また、国に対しては、不法投棄された県、すなわち青森の事例などでいいますと岩手と青森ということになりますが、こうした不法投棄をされた県が原状回復についての費用を一方的に負担することのないように、新たな制度づくりを今提案しているところでございます。
 次に、環境産業の創出による地域の活性化についてでございますが、青森・岩手県境不法投棄事案に係る合同検討委員会、こういう委員会におきまして、地域の環境再生に向けた計画策定の中で、環境産業の振興や地域振興方策についても検討をいただくこととしておりまして、今後、合同検討委員会の提言をいただいて、青森県とも連携しながら、その具体化に取り組んでいきたいと考えております。
 さらに、不法投棄の監視体制についてでございますが、不法投棄の未然防止の一層の強化を図るために排出事業者の責任を明確化して、これに対し厳格な対応をすることが重要であると、このように考えております。その制度化を目指して、今検討しているわけでございます。
 また、この事件を契機に、本県そして青森県、秋田県の保健所による合同立入調査を実施しているところでございますが、さらに現在、これに宮城県の参加を呼びかけているところでございまして、今後とも監視体制の一層の強化に努めてまいりたいと考えております。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔地域振興部長飛澤重嘉君登壇〕

〇地域振興部長(飛澤重嘉君) 小規模町村についてのお尋ねでございます。
 去る6月6日に、第27次地方制度調査会専門部会における論点整理についてというものが公表されまして、その中で小規模町村のあり方などについても取り上げられているところでございます。
 その内容を申し上げますと、小規模町村が基礎自治体としての責務を担うことができない場合には、一定範囲の事務について、県が町村の権限を代行するような垂直的な補完方式とするか、あるいは周辺の市町村にその権限をゆだねるような水平的な補完方式とするかなどにつきまして検討していく予定というふうに公表されております。今のところ論点整理の段階でございまして、具体的な内容につきましては今後地方制度調査会におきまして、来年秋ごろまで議論されるものと伺っております。
 県といたしましては、地理的な状況等によりまして、合併が困難な小規模町村への県のかかわり方につきましては重要な課題というふうに考えておりまして、国、県による関与が必要とされる小規模町村の規模あるいは想定される関与の方法など、小規模町村のあり方について現在検討を進めているところでございまして、8月をめどに県としての方向性を整理したいというふうに考えております。
 また、具体的な関与のあり方によりましては、市町村の仕事や責任が小さくなり、地方自治の根本にかかわる問題となることも想定されますので、今後、国、市町村とともに、十分な議論を行う必要があるものと考えているところでございます。
   〔保健福祉部長関山昌人君登壇〕

〇保健福祉部長(関山昌人君) 少子化対策についてでありますが、児童相談所で受け付けた児童虐待相談件数は平成13年度では173件で、前年度と比べ62件増加しております。また、主たる虐待者は実母で、身体的虐待が最も多く、虐待の対象は小学生以下の児童が約9割を占めております。このため、県といたしましては、身近なところで気軽に子育ての不安や悩み等の相談ができるよう、電話相談体制の整備、子育てサークルや地域子育て支援センターの設置を推進するほか、虐待の早期発見が図られるよう、今まで705名の地域協力員の養成を行うとともに、各地方振興局に管内の市町村、教育機関、警察等で構成する児童虐待防止地域連絡会議を設置するなど、広域生活圏域単位での児童虐待防止対策のネットワークづくりに努めてきたところであります。しかしながら、増加の一途をたどっている児童虐待の実態を踏まえ、昨年11月に児童虐待防止いわて宣言を行い、本年2月には児童虐待防止対策指針を策定し、その指針に基づき、県においては、本年度新たに福祉総合相談センターに心理療法担当職員の配置や東北で初めて虐待対応専門チームの設置を行ったほか、精神科医と弁護士による専門家チームを福祉総合相談センター等に設けるなど、相談・保護体制の強化を図るとともに、県本庁に児童虐待対策に係る専任職員を配置するなど、児童虐待防止対策の充実・強化を図ったところであります。また、これら児童虐待の相談に携わる専門職員については、国で今年度から実施する研修会に参加させるなど、その技能の向上を図ることとしております。
 一方、市町村においては、児童虐待の未然防止と再発防止においてその役割が極めて重要なことから、本年度各市町村において児童虐待対策の担当者を選任してもらい、民生・児童委員等関係機関と連携しながら、市町村単位に児童虐待防止対策のネットワークの構築を進めているところであります。
 今後とも、県民、市町村等と一体となって、児童虐待防止が図られるよう積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
   〔農林水産部長佐々木正勝君登壇〕

〇農林水産部長(佐々木正勝君) まず、中山間地域の農業振興についてでありますが、中山間地域が活力を持って維持発展していくためには、賦存する農地や気象条件を生かした農業の振興、特にも収益性の高い野菜の一層の振興により、新たな就業機会の拡大と農業所得の向上を図ることが極めて重要であると考えております。こうした観点から、県といたしましては、比較的平坦な地域では労働集約的な施設型野菜の導入拡大、標高が高く農地がまとまっている地域では、土地利用型野菜の団地化による規模拡大を促進しているところであり、既に久慈市や大野村におけるホウレンソウの200棟規模のハウス団地、岩手町のキャベツの大規模経営、東磐井地域のエコファーマー集団によるトマトの生産など、県内各地において地域特性を生かした取り組みが行われてきております。
 今後とも、このような先進事例の一層の普及・拡大を図るため、低利用農地をリストアップしその有効活用を図るとともに、施設や機械の整備、雇用労働力確保のためのグリーンヘルパー体制の整備などを積極的に支援してまいりたいと考えております。
 次に、農業労働力の不足する地域の農地の保全につきましては、地域の話し合いをもとに農地や労働力などの地域資源を高度に活用する地域ぐるみ農業の推進を図ってきたところであり、江刺市の小田代地区では集落の大半の農地を耕作・管理する特定農業法人が設立されましたが、他の地域でもこうした法人の設立の動きが出てきているところであります。また、宮守村の宮守川上流地区では、生産組合が中心となって一集落一農場の実現を目指すなど、農地を高度に活用する取り組みが見られてきております。さらに、12年度から実施されております中山間地域等直接支払制度の活用により、低利用農地での大豆、ソバ、山菜の栽培など、県内各地で農地の維持管理に効果を上げているところであります。
 農地を保全し有効に利用していくためには、地域ぐるみでの活動が何よりも重要でありますので、今後とも地域の実情に応じた取り組みを支援し、中山間地域の農地の維持保全を図ってまいる考えであります。
 次に、食の安全性の確保と市場優位性をいかに高めるかについてでありますが、BSEの発生等を契機に、食の安全、安心に対する消費者の期待が一段と高まっておりますことから、これまで以上に消費者の視点に立ち、県産農林水産物の安全性を重視した生産・流通・消費の仕組みを構築する必要があると考えております。このような安全性への対応を強化することにより、これまでの定時・定量・定質出荷の取り組みと相まって、県産農林水産物の市場優位性をさらに高めていくことができるものと考えております。
 こうした観点から、生産面におきましては、本県のすぐれた生産環境を生かしながら、土づくりを基本に、減農薬、減化学肥料など、環境に優しい栽培技術の普及、エコファーマーの育成などを一層進めてまいります。また、ハセップ方式の導入、漁場の環境調査や貝毒検査など、食の安全性を確保するための衛生・品質管理を強化していくこととしております。
 一方、流通・消費面におきましては、消費者が食品を安心して選択できますよう、JAS法に基づく表示の適正化を推進するとともに、牛肉で実施しておりますトレーサビリティーシステムを米や青果物など他品目にも導入するよう、検討を進めてまいりたいと考えております。また、生産者と消費者の相互理解を深めるため、農林水産関係団体が一体となって消費者との触れ合い懇談会を開催するほか、県産農林水産物の安全性を積極的にPRしてまいる考えであります。
 総合食料供給基地を標榜する本県といたしましては、こうした一連の取り組みを通じまして、全国に誇り得る生産条件を最大限に生かしながら、生産・流通・消費にわたる総合的な安全・安心のフードシステムを早期に確立し、これを前面に打ち出すことによって、市場における県産農林水産物の優位性を高めてまいりたいと考えております。
 次に、久慈市大川目地区における農業農村整備事業についてでありますが、本地区では、圃場整備の実施を契機に、担い手への農地の利用集積による生産性の向上を図るとともに、転作作物としてホウレンソウを中心に園芸作物の生産拡大を目標に掲げております。あわせて、換地により創設される用地内に、久慈市では初めてのライスセンターや育苗施設、さらには産直施設の設置が計画されております。
 このように、当地域は、市の農業拠点として今後大いに期待されておりますことから、圃場整備事業につきましては、平成13年度、受益面積85ヘクタール、総事業費15億2、000万円で国の採択を受け、地区全体の詳細設計を行ったところであり、本年度においては12ヘクタールの面工事を実施することとしております。また、幹線農道につきましては、一般農道整備事業として、本年度、全長1.6キロメートル、総事業費2億7、000万円で国の採択を受けましたので、今後、全線の詳細設計を行うこととしております。
 今後におきましても、圃場整備事業と農道整備事業との一体的な施工により、効果の早期発現が図られるよう努めてまいりたいと考えております。
   

〇議長(谷藤裕明君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後5時14分 散 会


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