平成15年9月定例会 第4回岩手県議会定例会会議録

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〇24番(阿部静子君) 社会民主党の阿部静子でございます。
 商工文教委員長から御報告がございました受理番号第6号教育基本法改正に反対する意見書採択のための請願は、不採択でございました。私は、委員長報告の不採択に対して反対討論を行います。
 20世紀は、戦争によって人類が苦悩した世紀でございました。第1次世界大戦、第2次大戦が終わることによって、戦争という最悪の被害と犠牲を子供たちにもたらしたことを反省し、国連は児童憲章を制定し、1989年、世界の子供の憲法と言われる子ども権利条約を制定いたしました。日本政府は1994年にやっとこれを批准し、ことしは9年目を迎えております。
 私たちはその間、国連憲章の、戦争は人の心の中に生まれるものだから人の心の中に平和のとりでを築かなければならないという理念、子どもの権利条約の第3条子供の最善の利益、第12条の子供の意見表明権、第31条の休息、余暇、遊び、文化、芸術の権利、教育基本法の前文、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成、男女差別撤廃条約第10条教育の男女平等等を具体的に実践し、生活に生かす取り組みの運動を続けてまいりました。
 しかるに、2003年の3月20日、中央教育審議会は、新しい時代にふさわしい教育基本法のあり方、教育振興基本計画の策定の最終答申を行い、これを受けて政府は、教育基本法改正案づくりに着手いたしました。その主な内容は、伝統文化の尊重、国を愛する心の涵養、公共に主体的に参画する意識態度の涵養、家庭教育力の回復、心豊かでたくましい日本人の育成というものでございます。
 この答申案は、国が愛国心や個人の考え方、家庭の役割まで規定したり介入したりすることを容認するものであり、憲法に抵触することは明らかでございます。中でもそのねらいの中心が、中曽根さんの教育勅語論や森さんの神の国発言に象徴される日本人としての愛国心の育成であることは明白であります。これは、私たちが最も危惧するところでございます。
 ちなみに、愛国心について内村鑑三さんは、義務としての愛国心を呼称する国民は、愛国心を失いつつある国民なりと、また、本県の誇る世界的・国際的先達の新渡戸稲造博士は、愛国心より憂国心をという言葉を残しておられます。
 教育基本法は、全11条の条文の中に、国民主権によって民主的で文化的な国家を建設して世界平和と人類の福祉に貢献しようという日本国憲法の理想を実現するためにつくられた法律であります。そして、その前文で、憲法が示した理想の実現は根本において教育の力にまつべきであるとうたい上げております。まさに教育基本法が第2の憲法であり、教育の憲法と言われるゆえんであります。
 平和なくして教育はありません。私は、現行の教育基本法のもと、子供たち一人一人の可能性が豊かに開く教育、平和と民主主義の担い手が育つ教育を願い、改正に反対する請願の趣旨に賛同いたします。政府が改正法案を国会に提案しようという状況の中で、今議会において、教育基本法改正に反対する意見書採択のための請願が委員長報告のとおり不採択になりましたことはまことに残念であります。
 よって、以上、請願不採択への反対の意見を申し上げました。どうか議員の皆様方、御理解をいただきまして御賛同賜りますようにお願いを申し上げ、反対討論といたします。ありがとうございました。(拍手)

〇議長(藤原良信君) 次に、斉藤信君。
   〔26番斉藤信君登壇〕


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