平成15年12月定例会 第16回岩手県議会定例会会議録

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〇36番(伊沢昌弘君) 社会民主党の伊沢昌弘でございます。
 ただいま上程されました議案のうち、議案第2号から議案第8号及び議案第10号から議案第13号に反対の討論を行います。
 これらは岩手県人事委員会から、本年10月に岩手県議会議長と岩手県知事に出された職員の給与等に関する報告及び勧告と岩手県行財政構造改革プログラムに基づいて、一般職員の給与条例の改正条例議案と減額調整の結果に生じる各会計の補正予算議案であります。
 今回の給与改定条例は、過去最大の引き下げとともに、例年に比べてまことに複雑な内容を含んだものとなっています。人事委員会の勧告では、給料表が人事院勧告に準じて平均1.2%の削減となっているものの、県内公民較差相当分を解消するため、較差率の1.9%を4月から11月までの給与と、6月に支給された期末手当等から12月の期末手当で調整することとなっています。加えて、岩手県行財政構造改革プログラムに基づいて、16年1月から17年3月まで、部長級5.8%、課長級3.8%、一般職1.8%をさらに減額する内容を含んでいるからであります。職員1人当たりの実質減額は、40歳の係長級で約23万円となるものであり、県全体の総額で約70億円の減額となり、県内経済に及ぼすマイナスの波及効果は、県職員分だけでも106億円と試算されているわけであります。
 民間企業が厳しい経済状況に置かれている現状のもとで、勧告制度を尊重すべきものとは承知をするものですが、市町村職員分や関連する外郭団体職員の減額分を考えれば、県内経済に及ぼす影響ははかり知れない大きいものとなるものであります。
 反対をする理由は、給与条例の施行期日が公布の属する翌月の初日、すなわち、平成15年12月1日であるにもかかわらず、国の1.07%を上回る県内公民較差率1.9%での減額調整を行うという、実質的には4月にさかのぼっての給与返還とも言うべき措置がとられることであります。
 県人事委員会報告及び勧告の中には、本年の給与改定は公務員の給与水準を引き下げる改定であるため、官民給与を均衡させるための所要調整措置を講じた上、遡及することなく実施するの一文があります。これはまさに詭弁と言わざるを得ないものであります。
 昨年と同様に、改定給料表の施行月日を12月1日としながら、12月の期末手当から本年4月にさかのぼって現行給料表との差額を差し引く措置は、実質的な4月1日遡及を意味するものであり、不利益不遡及の原則に反するものであります。
 昨年度における同様の措置に対して、県職員から当該措置の撤回を求める措置要求書が人事委員会に提出されていることの重みを受けとめれば、少なくとも減額調整については、今般の条例提案から除外すべきであったと考えるわけであります。
 昨年の国会質疑において内閣法制局は、国民の権利、利害を侵害するような遡及適用については、刑罰法規については憲法第39条により禁止しているが、刑罰法規以外についても法的安定性等の観点から、みだりに行うべきではないと述べているとおり、不利益不遡及の原則は社会規範の重要な要素をなすものであります。
 昨年に引き続いて行われる今回の不利益遡及の行為が、今後、社会において、まさにみだりに行われる風潮を助長することにならないかと危惧するものであり、決してあってはならないと思うものであります。このことは、日夜、県行政の推進に努力をしている職員の労働基本権の一部が制約されている公務員制度そのものが、今問われているものと考えます。
 また、知事は、行財政構造改革プログラムによる給与減額措置について職員団体と直接会って話し合いを行い、減額措置そのものについて理解を得たことを先ほど明らかにしております。
 公務員の賃金決定は、基本的に人事委員会勧告によらなければならないことは周知のとおりであり、今回の給与削減はこの原則に反することは明らかであり、本来果たすべき人事委員会の機能が損なわれたものと言わなければなりません。しかし、職員団体との話し合いを重ね、職員団体側が苦渋の判断として最終提案を受け入れたことは、議会として重く受けとめなければならないものと考えます。
 交渉においては、単に賃金カットを受け入れただけではなく、労使交渉での確認事項としては、一つ、知事の責任問題を追及すること。二つ、かかる事態を二度と発生させないこと。三つ、他へ波及させないことであると聞き及んでいます。したがって、労使交渉事項を尊重する意味でも、一つとして、知事の報酬・退職手当等をさらに減額を検討すること。二つ目として、県事業の厳選等による効率的な財政執行の審査を行うとともに、国等関係機関に対して地方分権、財源移譲の推進を働きかけること。三つ目として、地域経済に悪影響を及ぼさない観点から、関係団体への趣旨説明を行い、同様の賃金カットを導入しないように県として働きかけることが必要だと考えるわけであります。このことを県当局は重大に受けとめ、その実現に向けて最大限の努力をすることを私は要請するものであります。
 以上、議案第10号から議案第13号までの一般職員の給与関係条例の一部を改正する条例には、実質的な不利益の遡及となる調整措置が含まれていることから賛成できないものであり、関連する議案第2号から議案第8号の各会計の補正予算に対する反対討論といたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)

〇議長(藤原良信君) 次に、斉藤信君。
   〔26番斉藤信君登壇〕


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