令和5年12月定例会 第3回岩手県議会定例会会議録

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〇24番(ハクセル美穂子君) いわて県民クラブ・無所属の会のハクセル美穂子です。
 請願陳情受理番号第12号安全・安心を無視した無秩序なライドシェアの導入に反対し地域公共交通を守る施策の推進を求める請願を採択とした委員長報告に対して、反対の立場から討論をいたします。
 昨今、ドライバーのなり手不足が全国的な社会問題となっています。タクシードライバーを例に挙げると、2010年からの12年間で全国のドライバー数は約40%、人数にして約15万人減少し、有効求人倍率は4倍を超えています。
 利用者の減少、新型コロナウイルス感染症拡大の影響、加えて、燃料高騰による経営コストの上昇等が、タクシー事業者のみならず、長年にわたり地域の足として活躍してきたバス路線にも暗い影を落としています。特に、岩手県においては、不採算バス路線の減便や廃止の増加による地域公共交通のサービス水準低下が、さらなる利用者の減少を招く負のスパイラルに陥っており、その進行が深刻な課題となっています。私が住む地域でも、一つまた一つとバス路線が廃止され続けています。
 また、タクシーも、ドライバー不足の影響で台数が減り、地域の方々が利用したくとも、希望の時間に利用できないという深刻な状況になっています。頼みの綱であった自治体のデマンド交通ですら、利用者の減少が進んでおり、事業を受託運営するNPO法人も、今後の事業継続に大きな不安を抱いています。
 このような全国的な移動手段不足の課題解決に向けて、政府は先月13日と30日、規制改革推進会議の地域産業活性化ワーキンググループにおいて、ライドシェアについて議論を行いました。その結果、複数の委員の連名で、自家用有償旅客運送制度の適用範囲の拡大や二種免許の取得要件の緩和、安全対策を踏まえたライドシェアを新たに位置づける法律の制定を検討するべきであるとの意見が提出されています。これを受けて、ライドシェア等の喫緊の課題に対する対応策の議論が加速されているところです。
 本請願では、アメリカやカナダで行われているTNC型と呼ばれる配車アプリ運営事業者が、運転手や運行管理を行うライドシェアをライドシェアと定義し、アプリ運営事業者と登録ドライバーの雇用関係がないこと、需給状況や運送対価がドライバーごとに変動する等の点により、安定したサービス提供が見込まれないと懸念されています。
 しかし、実際に世界各国で導入されているライドシェアは、アメリカやカナダなどで導入されているTNC型と、EUやロシア等で導入されているPHV型の二つに大きく分けられ、さきに延べたTNC型は、配車アプリ運営事業者に運転手の管理や運行管理を義務づける法規制、PHVと呼ばれるライドシェアは、運転手に対して登録や車両運行管理を義務づける法規制がなされ、一言にライドシェアといっても、その事業形態も法規制のあり方も世界各国で違っております。
 さらに、PHV型の中には、運転手と車両に加えて、アプリ運営事業者にも規制がなされているタイプや、健康状態や犯罪歴の確認、語学能力等の試験を課しているタイプなどがあり、それぞれの国の置かれている状況にあわせて、利用者の安全・安心が確保される形でライドシェア法制が検討、導入されているのが実情です。
 当然、日本政府も、利用者の安全・安心の確保を大前提にしたライドシェアを導入するための議論を、まさに今行っていると私は考えます。
 そして、本請願において安全性に問題があるとされているTNC型ライドシェアが普及しているアメリカパロアルト市においては、配車アプリ事業者と自治体が連携して運営するパロアルト市独自のライドシェアサービスが新たに開始されています。この新しいライドシェアサービスは、従来、決まったスケジュールで決まった経路を走る市運営のシャトルバスを廃止し、かわりに、乗客がアプリから好きな時間に好きな場所で呼べるオンデマンド型の乗り合い送迎サービスを市の事業として開始したものです。
 このアメリカのカリフォルニア州パロアルト市のモデルケースのように、地方自治体と配信アプリ業者が組んで独自のライドシェアサービスを運行する事例は、長野県茅野市ののらざあなど、既に日本でも実施されております。
 また、ライドシェアではなく、乗り合い送迎サービスの事例ですが、本県においても、二戸市と民間タクシー会社が組んで事業化されたデマンド交通チョイソコにのへの取り組みが行われており、人口減少が急加速する中山間地域の地域公共交通を維持、継続していくためのさまざまな挑戦が全国各地で始まっています。
 本請願は、世界で行われているライドシェアのほんの一握りの例についてしか言及せず、その危険性について反対をするものですが、先ほど述べたとおり、ライドシェアのあり方は千差万別で、利用者の安全・安心を担保し、秩序あるライドシェアを実行している地域も既に存在しています。
 そのような状況の中で、議論の深まりを待たず、一部の事例をもとにライドシェアに反対することは、時期尚早であり、日本の地域公共交通におけるライドシェアの可能性を狭めることになりかねません。
 これから先も持続可能な地域公共交通を模索していく中で、ライドシェアが持つ大きな可能性は、岩手県においても例外ではありません。現に、たっそ拓也マニフェストプラス39においても、達増知事は、岩手県におけるライドシェアの可能性に着目し、39の政策の中の一つとして、導入に積極的に取り組む旨を言及されています。
 このことからも、広大な県土を抱え、深刻な人口減少に直面している岩手県を支える重要な施策として、県はライドシェアの導入を積極的に模索し、研究していく必要があるのです。そのような中で、岩手県議会として、ライドシェアに対してこのような認識で反対表明をするべきではないと私は考えます。
 以上の理由から、請願陳情受理番号第12号及び関係する発議案第2号について、委員長報告に対し反対いたします。
 議員各位の御賛同をお願い申し上げ、反対討論といたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〇議長(工藤大輔君) 次に、高田一郎君。
   〔25番高田一郎君登壇〕

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