令和5年9月定例会 決算特別委員会会議記録

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令和5年10月23日(月)
1開会 午前10時4分
1出席委員 別紙出席簿のとおり
1事務局職員
事務局長 小 畑   真
議事調査課
総括課長 昆 野 岳 晴
議事管理担当課長 藤 平 貴 一
主任主査 佐 藤 博 晃
主任主査 増 澤 綾 子
主任主査 及 川 雄 也
主査 阿 部 真 人
主査 堀 合 俊 彦
主査 三 浦 訓 史
1説明員
知事 達 増 拓 也
副知事 菊 池   哲
副知事 八重樫 幸 治
企画理事兼
保健福祉部長 野 原   勝
会計管理者 木 村   久
会計課総括課長兼
会計指導監 今 雪 博 貴

政策企画部長 小 野   博

総務部長 千 葉 幸 也
財政課総括課長 佐 藤 直 樹

復興防災部長 佐 藤 隆 浩

ふるさと振興部長 熊 谷 泰 樹

ILC推進局長 箱 石 知 義

監査委員 五 味 克 仁
監査委員 中 野 玲 子
監査委員事務局長 藤 澤 良 志
監査第一課
総括課長 及 川 博 英
監査第二課
総括課長 佐々木 良 生
〇小畑議会事務局長 御承知のとおり、委員長が互選されるまでの間、委員会条例第7条第2項の規定により、年長の委員が委員長の職務を行うこととなっておりますので、年長の委員を御紹介申し上げます。
 出席委員中、千葉伝委員が年長の委員でありますので、御紹介申し上げます。
   〔年長委員千葉伝君委員長席に着く〕
〇千葉伝年長委員 ただいま紹介のありました千葉伝でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、ただいまから決算特別委員会を開会し、直ちに本日の会議を開きます。
 また、五日市王委員は療養のため欠席とのことでありますので、御了承を願います。
 これより委員長の互選を行います。
 委員会条例第7条第2項の規定により、委員長の互選の職務を行います。
 お諮りいたします。委員長の互選の方法につきましては、先例に基づき、指名推選の方法によりたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇千葉伝年長委員 御異議なしと認めます。よって、互選の方法は指名推選によることに決定いたしました。
 お諮りいたします。指名推選の方法につきましては、当職において指名することにいたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇千葉伝年長委員 御異議なしと認めます。よって、当職において指名することに決定いたしました。
 決算特別委員長に柳村一君を指名いたします。
 お諮りいたします。ただいま当職において指名いたしました柳村一君を決算特別委員長の当選人と定めることに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇千葉伝年長委員 御異議なしと認めます。よって、ただいま指名いたしました柳村一君が決算特別委員長に当選されました。ただいま当選されました柳村一君が委員会室におられますので、本席から当選の告知を行います。
 柳村一委員長、委員長席にお着き願います。
   〔決算特別委員長柳村一君委員長席に着く〕
〇柳村一委員長 ただいま決算特別委員長に選任されました柳村一でございます。
 御推挙をいただき大変光栄に存じておる次第でございます。委員各位の御協力をいただきまして職責を全うしたいと考えておりますので、御協力をよろしくお願い申し上げます。挨拶とさせていただきます。(拍手)
 引き続いて副委員長の互選を行いたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇柳村一委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。
 これより副委員長の互選を行います。
 お諮りいたします。副委員長の互選の方法につきましては、先例に基づき、指名推選の方法によりたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇柳村一委員長 御異議なしと認めます。よって、互選の方法は指名推選によることに決定いたしました。
 お諮りいたします。指名推選の方法につきましては、当職において指名することにいたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇柳村一委員長 御異議なしと認めます。よって、当職において指名することに決定いたしました。
 決算特別副委員長に佐々木宣和君を指名いたします。
 お諮りいたします。ただいま当職において指名いたしました佐々木宣和君を決算特別副委員長の当選人と定めることに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇柳村一委員長 御異議なしと認めます。よって、ただいま指名いたしました佐々木宣和君が決算特別副委員長に当選されました。
 ただいま当選されました佐々木宣和君が委員会室におられますので、本席から当選の告知をいたします。
 佐々木宣和副委員長、御挨拶をお願いいたします。
〇佐々木宣和副委員長 ただいまは副委員長に選出をいただきまして、まことにありがとうございます。
 柳村一委員長を補佐いたしまして、委員会の円滑な運営に努めてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)
〇柳村一委員長 お諮りいたします。当決算特別委員会に付託されました決算15件及び議案2件についての審査の方法でありますが、お手元に配付してあります日程案のとおり、本日及び明日は、知事、副知事、企画理事、会計管理者及び関係部局長等の出席を求め総括質疑を行い、明日の総括質疑終了後、24日から27日まで及び30日から11月1日までの7日間は、会計管理者及び関係部局長等の出席を求め部局ごとに質疑を行うこととし、決算15件及び議案2件に対する意見の取りまとめと採決につきましては、11月1日の県土整備部関係の質疑が終わった後、世話人会の意見調整を経た上で行いたいと思います。
 なお、7日目の農林水産部の審査については、第1部を農業関係、第2部を林業、水産業関係とし、それぞれ区分して審査することといたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇柳村一委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。
 これより議事に入ります。
 認定第1号から認定第15号まで、及び議案第22号から議案第23号までの以上17件を一括議題といたします。
 これより、会計管理者に決算の総括説明を求めます。
〇木村会計管理者 令和4年度歳入歳出決算の概要について御説明いたします。
 令和4年度歳入歳出決算書、歳入歳出決算事項別明細書など8件の法定書類のほか、説明資料として、令和4年度歳入歳出決算説明書をお配りしておりますので、便宜、この説明書に基づき御説明させていただきます。
 それでは、説明書の7ページをごらん願います。
 第1、令和4年度歳入歳出決算の概況、1、決算の状況ですが、令和4年度の当初予算は、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策を徹底し、東日本大震災津波からの復興を進めるとともに、人口減少対策などにより、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわての着実な実現につなげていくコロナ禍を乗り越え、復興創生をデジタル・グリーンで実現する予算として7、922億3、585万円が措置され、前年度の当初予算に比べ182億4、094万円、2.3%の減となりました。また、その後9回にわたる補正予算において、新型コロナウイルス感染症対策やコロナ禍における原油価格、物価高騰等への対策として、生活者支援や事業者支援のほか、防災、減災、国土強靱化等の公共事業により640億2、928万円の増額補正が行われています。これに前年度からの繰越額1、114億766万円を加えた最終予算額は9、676億7、279万円となり、前年度に比べ1、310億1、756万円、11.9%の減となりました。
 次に、この予算に対する決算について、一般会計の収支の状況を御説明します。11ページをごらん願います。
 下段の2、決算収支の項目中、一般会計歳入歳出決算収支の状況の表をごらん願います。一般会計の歳入総額は8、986億6、248万円余、歳出総額は8、459億3、180万円余であり、前年度比で歳入歳出とも減少しました。歳入総額から歳出総額の差引額は527億3、067万円余であり、この差引額から翌年度へ繰り越すべき財源をさらに差し引いた実質収支額は197億7、326万円余の黒字となりました。
 次に、歳入決算状況を御説明いたします。少し飛びまして、54ページと55ページをごらん願います。
 第2表、一般会計歳入決算状況の表中、一番下の合計欄をごらん願います。左から三つ目、令和4年度の収入済額は8、986億6、248万円余となり、その右に二つ参りまして、収入未済額は主に諸収入でございますが、260億4、687万円余で、この結果、55ページ左から二つ目、対調定収入率は97.2%となりました。また、その右隣の収入済額の前年度との比較増減額は984億3、713万円余、9.9%の減少となりました。
 続いて、歳出決算状況を御説明いたします。62ページと63ページをごらん願います。
 第7表、一般会計歳出決算状況の表中、一番下の合計欄をごらん願います。左から二つ目、令和4年度の支出済額は8、459億3、180万円余となり、その右隣の翌年度繰越額は主に土木費や農林水産業費などで849億263万円余、その右隣の不用額は、主に商工費や衛生費などで368億3、835万円余となりました。
 この結果、右隣の対予算執行率は87.4%となりました。63ページ左から二つ目支出済額の前年度との比較増減額は936億1、487万円余、10.0%の減少となりました。
 次に、決算の特色を御説明します。戻りまして恐縮ですが、7ページをごらん願います。
 ページ中段の決算の特色をごらん願います。なお、前年度比較につきましては、便宜、増減率で御説明させていただきます。
 まず第1でございますが、決算規模が前年度を下回ったことでございます。歳入は、国庫支出金や県債等の減により、前年度に比べ9.9%減少し、歳出は、総務費、土木費や災害復旧費等の減により、前年度に比べ10%減少しております。この結果、決算規模は2年連続で、歳入歳出とも1兆円を下回ったところです。
 第2に、県税収入の減少でございます。税率改正の平準化の影響により、地方消費税譲渡割が7.7%減少したほか、復興関連工事の需要の落ち着きに伴い、軽油引取税が6.3%減少したことなどにより、前年度に比べ2.0%減少し、1、315億9、150万円となりました。
 第3に、投資的経費の減少でございます。投資的経費の普通建設事業費は、道路、橋梁の維持、新設、改良に伴う事業等の減により、前年度に比べ29.5%減少し、また、災害復旧事業費は、復旧復興事業の進捗に伴い、前年度に比べ42.3%減少しました。この結果、歳出総額に占める投資的経費の割合は前年度に比べ5.1ポイント減少し、16.0%となりました。
 第4に、翌年度繰越額の減少でございます。復興関連事業や災害復旧事業が進捗したことなどにより、前年度に比べ23.8%減少し、849億263万円となりました。
 第5に、県債残高の減少です。県債残高は、県債発行額が県債償還に充てられる公債費の元金償還額を下回ったことから、前年度に比べ2.1%減少し、1兆2、283億3、671万円となりました。
 続きまして、特別会計の決算を御説明いたします。飛びまして、43ページをごらん願います。ページ中段の特別会計歳入歳出決算収支の状況の表により御説明申し上げます。
 特別会計全10会計の歳入総額は2、794億9、056万円余で、前年度に比べ56億8、946万円余の増となり、続いて、歳出総額は2、762億3、065万円余で、前年度に比べ57億2、229万円余の増となりました。増減の理由は、歳入歳出ともに公債管理特別会の増などによるものです。また、実質収支につきましては、各特別会計とも黒字または収支均衡となっております。
 以上で、令和4年度歳入歳出決算の概要説明とさせていただきますが、決算内容の詳細につきましては、審査日程に従いまして、担当の部局長から御説明申し上げることとなっております。
 なお、監査委員から御意見のありました事項につきましては、関係部局において所要の措置を講じております。
 説明は以上でございます。よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。
〇柳村一委員長 ただいまから総括質疑に入るわけでありますが、議会運営委員会の決定に基づき、総括質疑は、各会派及び会派に属さない議員に質疑時間を配分して行うこととなっております。質疑時間につきましては、まず、希望いわてが37分、次に、自由民主党が37分、次に、いわて新政会が17分、次に、いわて県民クラブ・無所属の会が15分、次に、日本共産党が9分、次に、会派に属さない議員は、社民党木村幸弘委員、公明党小林正信委員、無所属田中辰也委員の順にそれぞれ7分となっております。
 各会派は、配分された時間の範囲内で複数の委員が質疑することができること、この場合におきましては、会派として続けて行うこととなっておりますので、御了承願います。
 また、議会運営委員会の決定及び世話人会の申し合わせにより、基本的感染対策として換気のため、午前は1回、午後はおおむね1時間半ごとに休憩いたしますので、御協力をお願いいたします。
 なお、総括質疑は、明日の遅くとも正午までに終了することを目途にいたしたいと思いますので、御協力をお願いいたします。
 これより総括質疑に入ります。名須川晋委員。
   〔名須川晋委員質問者席に着く〕
〇名須川晋委員 希望いわての名須川晋でございます。会派を代表いたしまして、決算特別委員会の総括質問に臨ませていただきます。なお、後段10分は千葉秀幸委員にお願いしております。
 さきの一般質問で触れられた項目も多数ございますが、通告どおりに進めさせていただきます。よろしくどうぞお願いいたします。
 まずは、令和4年度決算、新型コロナウイルス感染症発生以降の財政の総括についてということで、2020年2月、横浜港に入港したダイヤモンドプリンセス号での新型コロナウイルス感染症の集団感染という衝撃的ニュースが日本を襲って以来、この未知の病に恐怖を抱きながら、私たちは生活を大きく変え、自由にならない日々を過ごしてきました。
 発生以来3年が経過し、日本では、この5月に感染症法上の分類が5類へと引き下げられ、やっともとの生活に戻りつつありますが、社会経済のありように大きな影響を及ぼしました。この3年間、財政においてどのような影響があったか、歳入歳出両面からお示し願います。
〇達増知事 新型コロナウイルス感染症発生以降の令和2年度から令和4年度の3年間で、感染対策や原油価格、物価高騰対策に要した経費は合わせて3、126億円となっております。その財源のうち、一般財源は31億円、全体の約1%となっており、国庫支出金を初めとする特定財源が3、095億円と大宗を占めております。
 県税収入については、新型コロナウイルス感染症発生前の令和元年度の1、300億円と比較し、令和4年度で1、316億円となっており、また、実質的な普通交付税についても、令和元年度の2、328億円と比較し、令和4年度で2、312億円と、いずれも大きな変動は見られていないところであります。
〇名須川晋委員 次に感染症対策について伺います。
 昨年度は、新型コロナウイルス感染症の感染者が特にこれまでと比較にならない規模で増加した年でありました。オミクロン株による、いわゆる第6波の感染者数が下がり切らないまま4月を迎え、一旦は減少を見せたものの、夏場にかけての第7波、そして、年末の第8波と、流行の波が繰り返し、1日の感染者数が全国で20万人、本県も2、000人を超える日が多くありました。
 令和4年度歳出決算の中には、令和3年度に引き続き、感染症等健康危機管理体制強化事業費、感染症予防費など、大きな規模の感染症対策の事業が散見されますが、中には、感染症法上の位置づけが5類に移行したことに伴い、現在では、制度や取り扱いが変更されているものもあろうかと思います。
 県として、今後も必要な対策はしっかり継続していくこととあわせ、制度の変更等について、特に県民向けにわかりやすく周知していく必要があると考えるものですが、感染症法上の位置づけ変更に伴う主な変更点と変わらない点についてお示しください。
〇野原企画理事兼保健福祉部長 新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴う制度の変更等につきましては、県ホームページやさまざまな広報媒体を通じまして、患者の自宅療養や濃厚接触者の自宅待機などの行動制限がなくなること、医療費の自己負担などが発生することなどについて、県民向けに周知を行ってきたところであります。
 一方、継続するいわて健康フォローアップセンターなどの相談体制や、5類移行後も変わらない新型コロナウイルス感染症の特性や、場面、場面に応じた基本的な感染防止対策などについては、移行前と同様に、周知しているところであります。
 県としては、令和6年4月からの通常医療体制への完全移行を見据え、医療提供体制の充実に取り組むとともに、新型コロナウイルス感染症に係る必要な情報について、引き続き、県民への適時、適切な周知に努めてまいります。
〇名須川晋委員 次に、原油価格、物価高騰対策について伺います。
 令和4年度歳出決算額は8、459億3、180万円と、前年度から10%の減少となっておりますが、新たに県民の生活を脅かす危機として浮上してきた原油価格、物価高騰の問題に対し、県が正面から向き合ってきた証明となる決算となっているのではないかと考えます。
 令和4年度の原油価格、物価高騰対策について振り返り、その総括と評価をお願いいたします。
〇達増知事 令和4年度は、累次の補正予算の編成により、158億円規模の予算を計上し、例えばひとり親世帯や子育て世帯等の経済的負担を軽減するための特別給付金や特別支援金の給付、中小企業者の事業の継続と雇用を維持するための緊急支援金の支給、畜産農家等の負担を軽減するための配合飼料の購入に要する経費補助など、生活困窮者や子育て世帯への生活者支援、中小企業者、農林漁業者、運輸、交通事業者等への幅広い支援を実施してきたところであります。
 令和4年度においては、コロナ禍による県内経済の停滞、足踏みが見られる中で、臨機に対策を講じており、県民の暮らしや仕事の下支えに一定の効果があったものと考えております。
〇名須川晋委員 税収についてお伺いします。
 令和4年度の国の税収は71兆円を超え、過去最高の税収となりました。新型コロナウイルス感染症の影響からの企業業績の回復、物価高騰を反映した消費税収の増加が要因とのことです。
 地方税についても、地方全体では、令和3年度を上回る決算額が見込まれておりますが、翻って、本県税収に目を転じると、前年度に比べて2.0%、26億円余の減少となっております。それぞれに状況が違い、一概に比較できるものではないことは承知しておりますが、全国との傾向の違いについては、把握、そして、分析が必要であることは言うまでもありません。
 そこで伺いますが、当局は、全国の状況との違いや本県独自の事情について、どのように分析をされておりますでしょうか。
〇千葉総務部長 令和4年度の本県の県税収入決算額は1、315億9、000万円余で、前年度と比較して26億5、000万円余、2.0%の減となりましたが、全国の税収額は4.3%の増となっており、全国と比較して6.3ポイント低い状況となっております。
 その要因といたしましては、法人事業税が全国の10.5%の増に対し、本県は1.4%の増と9.1ポイント低くなっており、これは、全国的には景気回復を反映して堅調な税収でしたが、県内に主たる事務所を有する法人におきましては、他県における法人よりも企業業績の成長が緩やかであったものと考えております。
 地方消費税は全国の4.0%の増に対しまして、本県は7.4%の減と11.4ポイント低くなっております。これは、全国的に円安等の影響により、輸入取引に課税される貨物割が大幅に増加いたしましたが、地方消費税に占める貨物割の割合が、全国の34.6%に対し、本県は1.0%と低いことから、地方消費税全体の増収要因にならなかったものと考えております。
〇名須川晋委員 税は、地方自治体が住民サービスを提供していく上での根幹であり、地方自治の礎でもあります。これの増収を図ることは、県民により充実したサービスを提供することにつながるものであり、税収増のため、県として産業振興を初めとした総合的な取り組みが求められるものと考えますが、県は、今後、具体的にどのような方策をもって税収を確保していこうとするのか、お示しください。
 また、物価高騰による税収増の要素もあると思いますが、あわせて、今年度の見込みを伺います。
〇小野政策企画部長 県税収入を確保し、安定的、持続的な財政基盤を構築することは、さまざまな県民サービスを提供していく上で、根幹になるものと認識しております。
 そのためには、まず、現下の原油価格、物価高騰への対策が重要でございますが、その上で、国際競争力の高いものづくり産業、岩手県の地域の特性や資源を最大限に生かした農林水産業や観光産業など、いわゆる域外市場産業について、地元調達や付加価値を高めながら強化するとともに、商業やサービス業を通じて地域内経済循環を拡大していくような、総合的な産業政策をとることが重要でございます。
 こうしたことから、いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランにおきましては、自動車・半導体関連産業の一層の集積を図るとともに、産業のDXの促進やリスキリングの推進等によるさらなる生産性向上や高付加価値化、若者、女性が活躍できる職場環境づくりや起業、スタートアップ支援、食料供給県としての役割を高める農林水産業の振興など、本県の強みを生かしたあらゆる施策を盛り込んで、足腰の強い産業の振興を図り、産業全体の底上げと地域経済の持続的な成長を促し、あわせて、人口減少対策に取り組むことを通じて、税源の涵養を図ってまいります。
 また、令和5年度の県税収入の状況についてでありますが、直近の9月末現在の現年課税分の調定額の状況は、県税全体で918億8、100万円、前年同期比1.8%の減、本年度の当初予算においても、同一の1.8%の減を見込んでいるところでございまして、ほぼ見込みどおりで推移しているものでございます。
〇名須川晋委員 令和4年度は、いわて県民計画(2019〜2028)第1期アクションプランの最終年度でありました。令和4年度主要政策の成果に関する説明書によると、政策推進プランで確定している75のいわて幸福関連指標のうち、達成、おおむね達成となっているのが、全体の52%となっており、家族・子育て、歴史・文化、参画といった分野で、比較的高い達成割合となっている一方、居住環境・コミュニティ、健康・余暇などといった分野においては、残念ながら低い割合にとどまっているようです。
 知事は、この結果をどのように受けとめ、今年度スタートしている第2期アクションプランの推進にどのように反映させていこうと考えておられるのか伺います。
〇達増知事 いわて幸福関連指標については、県はもとより、市町村、団体、企業などのあらゆる主体が一体となって達成を目指していくものであり、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた見直しによらず、毎年度の政策評価に基づき、課題等の整理を行うこととしています。
 いわて幸福関連指標の達成状況について、生活、政策分野別に見ますと、家族・子育てや参画分野で達成度が高くなっている一方、居住環境・コミュニティや仕事・収入分野において、コロナ禍に伴う行動制限の影響を強く受ける指標が多いことなどにより、達成度が低くなっており、政策分野の達成状況にばらつきが生じたものと受けとめております。
 第2期政策推進プランの策定に当たっては、令和3年度までの評価結果をもとに、新型コロナウイルス感染症の5類移行を見据えた上で、目標値の設定を行っており、今般の評価結果については、今後予定している政策形成支援評価により課題等を明らかにした上で、来年度予算の編成過程を通じて施策に反映させてまいります。
〇名須川晋委員 日本経済の現状と中期財政見通しについて伺います。
 IMF―国際通貨基金の世界経済見通しによると、2022年の我が国の経済成長率は先進国地域と比較して、非常に低い水準にとどまっています。2013年6月、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略という3本の矢を柱に掲げたアベノミクスは、円安、株高をもたらしたものの、岸田総理が認めるように、労働者の実質賃金の増加をもたらすことはなく、10年後の今でも、経済の好循環は生まれておりません。
 結果として生じた国内外の金利差は、極端な円安を長期固定化させ、物価高騰の一因として、現在、生活者の暮らしを苦しめています。
 それに加え、経済成長が長期に停滞したままのいわゆる失われた30年、少子高齢化に伴う労働者不足等、日本経済を覆う課題は深刻さが年々増しており、先行きは、極めて危機的であると認識せざるを得ません。
 最近は、日本の若者が海外に出稼ぎに行き、日本の何倍もの月収を得、一方で、これまで来日していた外国人労働者、技能実習生は日本を選択してくれないだろうとの報道も目立つようになってまいりました。いよいよことしGDPはドイツに抜かれ、世界第4位になる見通しで、凋落ぶりが一層明らかになってまいりました。
 知事は、この日本経済の現状及び将来をどのように捉えているか、所感を伺います。
〇達増知事 本年10月にIMF―国際通貨基金が発表した世界経済見通しによれば、2022年の実質GDPの伸びは、米国を初めとする先進国の平均が2.6%であるのに対し、日本は1.0%にとどまっています。
 これは、バブル崩壊以降、低い経済成長率が続いていた中、新型コロナウイルス感染症に伴う打撃に加え、ロシアによるウクライナ侵攻や金融緩和の維持に伴う内外金利差の拡大による急激な円安の進行、世界的な要因による原油や穀物等の価格高騰などが、家計や企業に大きな影響を及ぼしているものと捉えております。
 また、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い、経済回復への期待が高まっている一方、エネルギーや物価の上昇、日本の平均賃金が先進国よりも低いことや、少子高齢化に伴う労働人口の減少など、地方経済が危機に直面する今こそ、国として思い切った財政出動が求められていると考えます。
 さらに、内需拡大型の経済構造改革や地方重視の経済財政政策を積極的に進めることで、持続可能な経済成長と地方それぞれの自立的で持続的な社会の創生につながるものと考えております。
〇名須川晋委員 先ごろ公表された岩手県中期財政見通しは、令和6年度以降、102億円〜153億円程度の収支ギャップが生じ、その全額を財政調整基金の取り崩しで対応した場合、令和9年度には枯渇するという試算を示されました。試算方法については、中長期の経済財政に関する試算等により推計したなどとされております。
 先ほど申し上げたように、私自身は、日本経済の先行きに対しポジティブとなれる要素をなかなか見出すことができず、かなり悲観的な見方で考えざるを得ないと思っております。
 中期財政見通しについても、国による資産のみならず、さまざまな要素を勘案した上で、中長期的な日本経済の動向見通しを定め、それを踏まえて作成する必要があるのではないかと考えますが、当局の見解をお伺いいたします。
〇千葉総務部長 中期財政見通しは、現行の地方財政制度や国による試算等を踏まえ、一定の前提条件のもとで機械的に試算した財政シミュレーションとしております。
 名須川晋委員御指摘のとおり、経済動向には、国の試算には織り込まれていないリスクや不確実要素も想定されますが、現行の地方財政制度や本県の財政構造を踏まえれば、現時点で財政見通しの精度を確保するためには、中長期の財政見通しなど、国の試算等を基本とすることが有効と考えております。
 一方、人口の動向を県税や普通交付税の推計に反映させるなど、本県の実情を勘案した算定も行っているところでございます。
 今般の新型コロナウイルス感染症や原油価格、物価高騰のような不測、喫緊の課題への対応につきましては、財源の見通し等も立てつつ、補正予算の編成など、臨機に対応してまいります。
〇名須川晋委員 続いて、深刻化する労働者不足、働き方改革等への対応について、幾つかの角度から質問させていただきます。
 2024年問題について、働き方改革の一環として、改正労働基準法が平成31年4月から順次施行されており、時間外労働の上限規制の適用が猶予されていた業務への適用が来年4月から開始され、残業時間の規制が強化されます。原則1カ月の残業は45時間、1年で360時間以内とされ、建設業は月100時間未満、1年で720時間以内、自動車運転業及び医師は1年で960時間以内となります。
 まず、県立病院における医師の時間外労働の現状、また、働き方改革に向けたこれまでの取り組みと今後の対応についてお示しください。
〇八重樫副知事 来年4月から適用される医師の時間外労働時間の上限規制に向け、医師の確保を図るとともに、国のガイドラインに基づく時間外労働時間短縮計画を作成し、医師から他職種へのタスクシフトやタスクシェアなどの働き方改革を進めてきたところです。こうした取り組みにより、昨年度に、時間外労働が年960時間を超えた医師は60人と、前年度に比べ20人ほど減少しています。
 今後においても、適正受診に係る県民の理解と協力を得ながら、医師の働き方改革をさらに進めるとともに、来年4月以降も一定期間、救急対応などにより、上限規制を超えて勤務せざるを得ない医師がいる一部の基幹病院においては、特定労務管理対象機関の指定に向けた手続を進めているところであり、救急など、地域医療に大きな影響が出ないように取り組んでまいります。
〇名須川晋委員 運送業について伺います。
 県内の物流、運送業界への影響についてどのように把握しているでしょうか。また、県としての取り組みについてお示しください。
〇菊池副知事 物流は、国民生活や経済を支える重要な社会インフラであり、国においては、トラックドライバーの働き方改革を推進し、物流産業をより魅力的な職場とするため、トラックドライバーの働き方改革に関する法律が来年4月から適用されることとなります。
 一方、いわゆる物流の2024年問題については、国の推計によると、このまま対策を講じなければ、2024年度には、輸送能力が約14%不足し、さらに、2030年度には約34%不足するとされておりまして、早期の対応を要する課題と受けとめております。
 また、物流の停滞は、運輸事業者のみならず、配送コストの上昇、納品スケジュールの見直し、また、宅配等の遅延、遅滞など、荷主企業や消費者を含めた社会全体への影響が懸念されるところでもございます。
 県では、本年8月に全国知事会として、自動車運送事業者の経営の安定やトラックドライバーの待遇改善を支援し、人手確保を図ること。大消費地から遠距離にある地方の競争力の低下が懸念されることから、その競争力の維持に向けた支援策を実施することなどを盛り込んだ、物流の2024年問題の解決に向けた緊急要望を取りまとめ、国に強く求めたところでありますし、加えて、10月早々には、物価高騰に対応する総合経済対策に向けた提言において、同様の要望を行ってまいりました。
 国においては、ことし10月に、物流の効率化、荷主、消費者の行動変容、商慣習の見直しを三本柱とした物流革新緊急パッケージを公表したところであり、必要な予算の確保も含め、緊急的に取り組むこととされております。
 県内の取り組みといたしましては、公益社団法人岩手県トラック協会では、県の補助金を有効活用し、トラックドライバーの荷役作業などの軽減や効率化を図る取り組みや、消費者の行動変容を促すCM制作などを行っているところであります。
 また、貨物輸送の安全、安定した運行を維持するため、トラック運輸事業者に対する原油価格高騰に係る県の支援金の支給も図っているところです。
 引き続き、国によるいわゆる緊急パッケージなどの具体的な対策の早期実施を求めていくとともに、県内においては、岩手県トラック協会など関係機関、団体と一層連携し、運輸事業者と荷主企業の相互理解が進むなど、円滑なトラック物流が図られるよう取り組んでまいります。
〇名須川晋委員 いわゆる2024年問題の最も深刻な影響を受けると目される分野の一つが農林水産物であるとの指摘があります。全国の生産地から消費地や全国各地の市場へ輸送されていることから、鮮度が命の商品の輸送が滞れば、生産者や農業団体などの産地、販売者にとっても深刻な事態となります。商品価値が従前より下がることがあってはならず、不利益が出ないよう、県として対応していく必要があると考えますが、いかがでしょうか。
〇菊池副知事 いわゆる2024年問題につきましては、県産農林水産物においてもさまざまな影響があるものと受けとめているところでございます。このため、県では、先ほど御答弁した全国知事会としての要望に先立ち、6月の政府要望において、国に対し、効率的な流通体制の構築に向けた卸売市場が行う流通の効率化、省力化への支援などを要望してきたところでございます。
 また、全農岩手県本部等で組織する青果物生産出荷安定協議会において、農産物の品目ごとにフォークリフトを活用した作業が可能となるよう、ダンボールの規格統一など、ドライバーの出荷、荷おろし等に係る拘束時間の短縮に向けた取り組みなどを進めているところでございます。
 さらに、農業団体におかれては、それぞれのJAが輸送してきた農作物を集約して輸送する実証試験などを行っているところであり、県としては、今後も、関係機関、団体と連携しながら、鮮度管理が行き届いた県産農林水産物を適時に消費地に届けることができるよう取り組んでまいります。
〇名須川晋委員 リスキリングについて伺います。
 コロナ禍や歴史的な物価高、そして、賃金の引き上げの流れの中、個人の意識や就業構造、産業構造が大きく変化しており、一人一人がそれぞれの考えに基づき、そのキャリアを選択する時代になりました。こうした社会の動きも背景に、骨太の方針2023では、職務ごとに要求されるスキルを明らかにすることで、労働者がみずからの意思でリスキリングを行い、職務を選択できる制度に移行していくことが重要とされ、リスキリングによる能力向上支援等の必要性について触れられています。
 本県の第2期アクションプランにおいても、第1期アクションプランにはなかったリスキリング教育の充実といった内容が盛り込まれており、その今日的な課題に対応しようとする姿勢を評価するところですが、学び直しの場の不足などの課題もあるのではないかという懸念も聞こえており、実際に県内でどういう形でリスキリングの取り組みが行われているのか、県の施策とあわせてお示しください。
〇菊池副知事 働いている方が、技術革新、産業構造の変化等に対応する高度な技術及び知識を習得するため、国の外郭団体である高齢・障害・求職者雇用支援機構、また、県の産業技術短期大学校及び高等技術専門校から成る県立職業能力開発施設などにおいて、さまざまな職種や求めるスキルレベルに応じた能力開発セミナーを実施しているところでございます。
 このうち、高齢・障害・求職者雇用支援機構においては、ものづくり産業関連を中心に、高度なスキル取得を目指す方々を中心に、機械加工技術や制御技術等152のセミナーを有料で実施しております。
 県においては、幅広い職種を対象に、主に基礎的レベルの習得を目指す方々に対し、若手社員、中堅社員、管理職等の階層別やITスキルの習得を初め、県内6カ所で125のセミナーを無料で実施しているところでございます。
 加えて、今年度は、企業の生産性向上や地域産業のDXを加速させるため、新たにデジタルリスキリング推進事業を県内2会場でそれぞれ初級、中級のセミナーを実施しておりまして、デジタル人材の育成を進めているところでございます。
 引き続き、DXの急速な進展に対応したリスキリングの充実を図り、企業における人への投資や、労働者の主体的な能力開発を促進しながら、個々の特性や希望に応じて、持てる能力を最大限に発揮できる職業能力の開発に取り組んでまいります。
〇名須川晋委員 県庁で働く職員についても、能力向上の支援、研修等が行われているものと思いますが、リスキリングの観点からの取り組みはなされておりますでしょうか。
〇千葉総務部長 行政需要や県民ニーズが複雑化、多様化する中、より高度で専門的な職務遂行が求められますことから、職員の能力開発を組織的に進めていくことが重要であると認識しております。
 このため、県では、職員研修の体系化や内容の充実強化を通じて一層の能力向上を図っているところであり、新採用職員研修を初めとした職場外の研修に加え、職場内における研修、いわゆるOJTにより実際の業務を通じた指導、育成に取り組んでおります。
 名須川晋委員御指摘のリスキリングの観点につきましては、職員が現在従事する業務にとどまらず、自身の将来を見据えて主体的に能力開発に取り組むことが重要と考えており、幅広いスキルの向上を促す選択型の研修に加え、情報セキュリティ、システム開発などの資格取得や通信講座の受講、大学院での修学などの支援を重層的に展開しております。
 このような考え方により、職員が望む知識や技能を習得できる環境の整備を一層進めますとともに、研修体系の構築や内容の見直しを不断に行い、職員の成長を支える能力向上の機会の確保に取り組んでまいります。
〇名須川晋委員 ここ最近、チャットGPTを代表とする生成AIに関する報道を目にする機会が急激にふえてまいりました。幅広い分野での活用が既に始まっており、働き手不足、省力化、働き方改革といった社会的課題を抱える我が国において、解決に向けた大いなる手段の一つと言えます。
 ある調査では、8月末現在、日本において、生成AIを業務で日常的に活用する利用者は、4月の7%から一気に拡大し、20%に上ったとのことで、今や、使う使わないの議論ではなく、どう活用していくかにフェーズが移りました。
 そこで伺いますが、当局は生成AIの活用に係る県内の状況をどのように把握されておりますでしょうか。また、県当局における活用について、現状はどうなっておりますでしょうか。
〇熊谷ふるさと振興部長 まず、県内の現状についてでございますが、市町村では、一関市、奥州市、久慈市、遠野市、軽米町の5市町において試行に取り組むとともに、民間企業では、例えば金融機関におきまして、業務効率化や生産性向上などに向けた生成AI活用の実証実験が開始されるなど、さまざまな分野で取り組まれていると認識しております。
 次に、県庁内での活用についてでありますが、本年6月から専用端末を用意して、チャットGPTの試行を開始し、7月からは職員1人1台端末から利用できるBing AI CHATを追加して試行しているところでございます。生成AIの利用に当たっては、業務の効率化や省力化の効果が見込まれる一方で、信憑性や著作権等の問題もありますことから、利用時の遵守事項等を定めた生成AIの利用ガイドライン暫定版を策定し、利用促進を図っているところでございます。
〇名須川晋委員 私自身は、生産性の向上や業務の効率化に資するものとして、生成AIの積極的な導入を進めるべきと考えます。フェイクニュースの懸念、著作権や肖像権、情報漏えいの問題など、リスクや留意すべき事項があることも確かですが、使わないという選択肢はもはやゼロであり、いかに効果的に新しいツールを使っていくか、常に前向きに考えていく必要があると考えます。SNSなど新しいツールをいち早く活用されてきた知事に、生成AIの今後の活用の方向についてお伺いいたします。
〇達増知事 生成AIは、多様な課題解決へのヒントや、新たな文書などが即座に作成され、業務の効率化や省力化に資するほか、通常思いつかない言葉など創造的な回答が得られ、新たな気づきをもたらす効果も期待されると考えます。
 一方、生成AIの情報は、信憑性や著作権等の問題を初め、検索側の情報が収集される可能性があり、利用に当たっては、これらの課題を十分に理解し、適切に使いこなしていく必要があると考えております。
 このため県では、生成AIの利用に係るガイドラインを策定し、生成AIのメリットを最大限発揮させる活用を進めております。新たな技術の導入に当たっては、その長所、短所を十分に見きわめて、業務の効率化から創造的な業務の推進まで図っていくという考えであります。
〇柳村一委員長 この際、名須川晋委員の質疑の途中でありますが、世話人会の申し合わせにより10分ほど休憩いたします。名須川晋委員、御了承願います。
午前10時58分 休憩
午前11時11分再開
〇柳村一委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。
〇名須川晋委員 認知症施策について伺います。
 本年6月、超党派議員による議員立法、共生社会の実現を推進するための認知症基本法が成立しました。認知症の方が尊厳を保持しつつ、希望を持って暮らすことができるよう、認知症施策を総合的かつ計画的に推進するものとされています。地方公共団体としても、法の基本理念にのっとり、認知症施策を策定、実施する責務を有すると規定されました。
 本県の認知症高齢者は、平成25年の4万326人から本年3月の5万5人と、この10年で約1万人増加しており、施策を強化していく必要があると考えますが、令和4年度歳出決算のうち、認知症関連施策の実績について、まずはお示し願います。
〇野原企画理事兼保健福祉部長 認知症施策の令和4年度実績についてでありますが、認知症対策等総合支援事業によりまして、全ての2次医療圏に設置している認知症疾患医療センターにおいて、専門的な医療相談や診断を行ったほか、関係団体と連携し、医療、介護従事者に対する研修を26回開催し、人材の育成に取り組んだところであります。
 また、高齢者総合支援センター運営事業により、認知症サポーター養成講座などを14回開催し、認知症の正しい知識と理解促進のための普及啓発を行うとともに、地域包括ケアシステム基盤確立事業によりまして、認知症地域支援推進員などに対する研修や連絡会議を開催し、先進事例の紹介や情報交換の機会を提供するなど、地域で効果的な活動が行われるよう、市町村を支援してきたところであります。
〇名須川晋委員 認知症基本法には、国の施策推進基本計画の策定とともに、努力義務として、県市町村においても、認知症の人や家族等の意見を聴取した上で計画を策定することが定められました。法の名称に、共生社会の実現を推進するためと明記されたことに加え、基本理念に、全ての認知症の方が基本的人権を享有する個人として、みずからの意思によって日常生活及び社会生活を営むことができると掲げられており、高齢の親を持つ者にとっては大変切実な法律であります。
 これは、いわて県民計画(2019〜2028)の基本目標、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわてに通ずるものと感じるところですが、法の成立を受けた知事の所感と、県計画の策定も含め、今後の取り組みをどうするのか伺います。
〇達増知事 国の推計によると、2025年には約700万人、高齢者の5人に1人が認知症になると推計され、認知症は誰もがなり得る疾患となっています。こうした中、認知症の方を含め、国民一人一人がその個性と能力を十分に発揮し、相互に人格と個性を尊重しつつ支え合う共生社会の実現を推進するため、認知症基本法が成立したことは大変大きな意義があると受けとめております。
 県では、いわていきいきプランに基づき、認知症の正しい知識の普及、相談、診療体制の充実や、認知症ケアに関する医療、介護連携の推進などに努めているところであり、さらに、第2期アクションプランにおいても、県が取り組む具体的な推進方策に、認知症施策の推進を掲げ、認知症の方や御家族を支える地域支援体制づくりの充実に向け、市町村の支援を行っております。
 また、認知症基本法で、地方自治体の努力義務とされている認知症施策推進計画については、令和6年度からの次期いわていきいきプランを同計画と位置づけ、認知症の方及び御家族等からの御意見もお聞きしながら、法の基本理念と趣旨を踏まえた計画となるよう策定を進めております。
 県では、認知症になっても、できる限り住みなれた地域で自分らしく安心して生活できるよう、市町村や関係団体等と連携し、認知症施策を着実に推進してまいります。
〇名須川晋委員 次に、不登校、いじめ等への対策について伺います。
 先ごろ、文部科学省から、児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果が公表されました。これによると、小中学校の不登校の児童生徒は全国で29万人余り、本県では小学校617人、中学校1、388人となり、過去最多となっています。また、本県の高等学校の不登校生徒数は前年度からわずかに減少したものの583人でした。県教育委員会では、これらの結果について、その要因をどのように分析され、どういう対策をとられているのかをお示し願います。
〇菊池副知事 令和4年度の児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査によりますと、本県の不登校児童生徒数は、名須川晋委員御指摘のとおりの状況でございまして、小中高校合わせて2、588人、昨年度より318人増加しているところでございます。また、1、000人当たりの不登校児童生徒数は小学校11.3人、中学校46.5人、高等学校20.1人となっており、いずれも近年、増加傾向にあります。
 不登校の背景や要因は多岐にわたり、個々の児童生徒の状況も多様でありますが、文部科学省では、小中学校における不登校について、長期化するコロナ禍による生活環境の変化により生活リズムが乱れやすい状況が続いたことや、学校生活においてさまざまな制限がある中で交友関係を築くことが難しかったことなど、登校する意欲が湧きにくい状況にあったことなども背景として考えられるとの見解を示しているところでありまして、本県においても同様と認識しているところでございます。
 県教育委員会では、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置、24時間子供SOSダイヤル相談窓口の設置、教育支援センターやフリースクール等民間団体との連携を図る不登校児童生徒支援連絡会議の開催など、これまでの不登校対策に加え、今年度からは、新たに、教育事務所管内を統括するエリア型カウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置、いじめ対応不登校支援等アドバイザーの常勤化、1人1台端末等を利用したこころの相談室の開設、市町村の教育支援センターのさらなる設置による相談支援体制の強化などに取り組んでいるところでございます。
〇名須川晋委員 最近、知人の小学生の息子さんが、夏を前に突然学校に通えなくなってしまったという話を伺いました。息子さん自身も大変気を落とし、悩まれたそうですが、病院を受診したところ、起立性調節障害と診断されたとのことです。本人はむしろ病気でよかったと安堵し、適切な治療によって早期に通常の生活に戻ることができたとのことであります。この3年にもわたるコロナ禍によって身体、精神的に影響したのかもしれないとのことで、至ってナーバスでセンシティブな範疇ですが、解決には、時に、積極的に医師の診断を受けることも重要であるという事例でありましょう。
 不登校対策には、経験豊富なスクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーの方々が携わられておりますが、医療機関等への相談、連携はどのようになっているか伺います。
〇菊池副知事 各学校においては、日ごろから学級担任や養護教諭などが、家庭との連携のもと、児童生徒の健康状態や生活の様子に目配りしながら、校長のリーダーシップのもと児童生徒一人一人に対し、組織的にきめ細かに対応しております。
 名須川晋委員から具体の事例を紹介いただいたところでございますが、県教育委員会においても、スクールカウンセラーが、心身や生活上に支障があると認められる生徒に対し面談した結果、対応に苦慮している母親への支援が必要だとわかり、スクールソーシャルワーカーが当該母親と面談することにより、生徒の医療機関受診につながった例もあると聞いております。
 日ごろの児童生徒の様子から心身の不調等が疑われる場合には、学級担任や養護教諭が、家庭との連絡、相談のもと、医療機関の受診の勧奨等をするほか、養護教諭が中心となって、学校医、医療機関等と連絡調整、情報交換等に当たっておりますが、特に心の不調が疑われる場合や、福祉的な支援が必要な場合には、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーと連携していくことは重要でございまして、引き続き、適切な対応に努めてまいりたいと考えているところでございます。
〇名須川晋委員 この調査結果では、コロナ禍の影響などにも触れられておりますが、本県におけるこの影響をどう分析されておりますでしょうか。
 また、ウィズコロナの生活や、感染症法上の5類引き下げによって世間の感覚も変化してきておりますが、コロナ禍を理由とする児童生徒の長期欠席者数の推移はどうなっているか伺います。
〇菊池副知事 先ほども御答弁申し上げましたとおり、不登校の背景や要因は多岐にわたり、個々の児童生徒の状況も多様でありますが、コロナ禍による影響も大きかったものと、県教育委員会では認識しております。
 新型コロナウイルス感染回避を理由とした長期欠席は、本県においては、令和2年度100人、令和3年度111人、令和4年度255人となっており、本県の新型コロナウイルス感染症の感染状況を反映しているものと考えられます。
 県教育委員会には、新型コロナウイルス感染症の影響が続き、感染を予防しながらの生活の中、不安や悩みを相談できない子供たちがいる可能性や、子供たちの不安や悩みが、従来とは異なる形であらわれたり、一人で抱え込んだりする可能性等も考慮しまして、今後も、市町村教育委員会と連携して、児童生徒の状況を注視してほしいと考えているところでございます。
〇名須川晋委員 本県のいじめの認知件数については、小学校6、611件、中学校1、185件、高等学校341件、特別支援学校119件ということでした。この中には、いじめ防止対策推進法に規定する重大事態も15件含まれているとのことであり、その重大性や当事者の苦痛などの影響が懸念されますが、これらいじめの実態や傾向などをどのように把握し、対策をとられているのか伺います。
〇菊池副知事 県教育委員会では、毎年度、文部科学省が実施する問題行動等調査によって、全国におけるいじめの動向や本県の状況、経年での変化や特徴などを継続的に把握しているところでございます。
 また、教育、医療、福祉、法律、警察など、いじめ問題にかかわる関係機関、団体等で構成される岩手県いじめ問題対策連絡協議会において、本調査結果を報告、協議し、いじめ防止対策にさまざま御助言をいただくとともに、構成機関等の取り組みを共有し、連携して対応に当たっております。
 県立学校の個別のいじめ事案については、県教育委員会が各学校からの報告をもとに把握し、重大事態の疑いや、学校からの支援要請がある場合には、教育委員会の指導主事や専門家で構成するいじめ問題解決支援チームを派遣し、解決に向け、実態の把握や各学校における対応の支援を行っているものと承知しております。
 また、市町村立小中学校の個別のいじめ事案につきましては、各学校からの報告をもとに、市町村教育委員会が把握し、県教育委員会では、市町村教育委員会からの要請に応じて、先ほど申し上げましたいじめ問題解決支援チームを派遣し、解決に向けた、必要な助言を行っているものと承知しております。
〇名須川晋委員 調査からわかるように、さまざまな悩みや問題を抱えた児童生徒は増加しております。こういった子供たちの一つの受け皿となり得るのがいわゆるフリースクールですが、県はその現状をどのように認識しておりますでしょうか。
〇菊池副知事 不登校児童生徒の多様な居場所の確保や教育支援センターやフリースクール等、民間団体との連携を図るため、令和3年度から不登校児童生徒支援連絡会議を設置し、不登校児童生徒の支援に係る課題等について、意見交換や情報共有を図ってきているところでございます。
 この連携会議を通じて把握した本県のフリースクール等民間団体は、令和5年8月現在において、10団体、利用している不登校児童生徒は合計で198名となっており、その運営形態や規模、活動内容はさまざまでございます。
 これらのフリースクールは、子供たちの居場所としての役割を担うほか、不登校児童生徒だけでなく、放課後学習支援も行う団体や、児童生徒の学習や取り組み状況について、市町村教育委員会との情報共有や、学校との連携を図るなど、児童生徒の状況等に合わせた取り組みを行う団体もあると承知しております。
 今後も、県教育委員会においては、不登校児童生徒の学びの場や、居場所の確保を図っていくため、引き続き、フリースクール等民間団体と連携しながら、適切な支援に取り組んでもらいたいと考えております。
〇名須川晋委員 私は、これだけ社会が多様化する中で、教育のあり方も、より多様にならざるを得ない、むしろなるべきと考えます。先ほど取り上げたフリースクールしかり、矢巾町の星北高等学園しかり、全国的な通信制高校で、生徒数最多のN高等学校、S高等学校等もそうでありますが、教育のあり方が多様性を増せば増すほど、未来を担う子供たちのエンパワーの場がふえていく、多様性を増していくのではないでしょうか。既存の学校制度はもちろん重要ですが、これからは、それのみにこだわらない教育のあり方も、幅広く考慮をしていくことが求められるのではないかと考えるところですが、知事の御所見を伺います。
〇達増知事 本年3月に文部科学省が取りまとめた、誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策COCOLOプランにおいては、行政や学校、フリースクールのほか、地域社会、各家庭、NPO関係者等が相互に理解や連携をしながら、子供たちのために、それぞれの持ち場で、取り組みを進めることの必要性が示されています。
 不登校に関連して、自分の教室で授業を受けることを希望しない場合であっても、自宅等で1人1台端末等を用いて配信された教室の授業を受講する等の支援や、教育支援センターの支援機能等の強化も必要とされています。
 こうした中、県教育委員会では、フリースクール等民間団体や市町村教育支援センターの職員なども参加する岩手県不登校児童生徒支援連絡会議を開催し、不登校児童生徒の支援のあり方等の情報交換や共有を図ったところであります。また、不登校生徒を受け入れている県内の専修学校では、県外の高等学校と連携し、ICTを活用しながら、高卒資格単位取得に必要な授業を行っていると伺っております。
 引き続き、こうした学校の取り組みや関係機関と連携した教育機会の提供等により、児童生徒一人一人に寄り添った居場所が、確保できるような仕組みが構築されるよう、環境を整備してまいります。
〇名須川晋委員 GXについて伺います。
 新たな県有林J-クレジットの発行についてでございます。CO2など温室効果ガスの排出量削減量を売買可能にする仕組みであるカーボンクレジットは、本県では、平成22年より県有林J-クレジットとして5、594トン発行、令和5年6月、1トン当たり税抜き1万5、000円、約8、977万円を県内企業などに販売し、全ての販売が完了しております。
 国は、令和4年8月、伐採後の再造林や伐採木材を木材製品として利用した場合の炭素固定に係る二酸化炭素吸収量をクレジット算定できるよう、認定基準を緩和しておりますが、県は、その認証要件の見直しを踏まえ、県有模範林のうち、どの程度の面積がクレジットの対象となるかなど精査を行っているでしょうか。
 また、ことし6月の定例会一般質問において、当会派の関根敏伸議員の質問に対し、当局から、新たな県有林J-クレジットの発行に向けた取り組みを、着実に進めていくといった答弁があったところですが、新たなクレジットの発行に係る検討状況について、具体的にお示しください。
〇菊池副知事 県有林J-クレジットは、これまで県内2カ所の県有模範林のうち、間伐を実施した森林約100ヘクタールの二酸化炭素吸収量約5、600トンをクレジットとして発行し、その販売金額は約9、000万円となっております。新たな県有林J-クレジットは、県内10カ所の県有模範林のうち、間伐を実施した森林約300ヘクタールの二酸化炭素吸収量に加え、認証要件の見直しにより、新たに対象とされた主伐後の再造林や伐採した木材の利用による二酸化炭素吸収量をクレジットとして申請することとしております。
 県では、来年度のクレジット発行に向け、現在、県内10カ所の県有模範林の森林資源量の調査を進めるなど、新たな県有林J-クレジットの発行に向けた取り組みを着実に進めてまいります。
〇名須川晋委員 東京証券取引所においては、昨年度の技術的実証事業を踏まえ、今月11日、カーボンクレジット市場を本格開設いたしました。初日は3、689トン分の取引があったということです。
 GXを重点事項の一つに掲げている岩手県にとって、本県の森林資源が有するポテンシャルや価値を活用するまたとないチャンスと考えるところですが、県はこの間の実証期間の成果をどう捉えているでしょうか。
 また、新たな市場の活用の可能性や課題等をどのように捉えているか、あわせて伺います。
〇達増知事 国が昨年度実施したカーボンクレジット市場の実証では、クレジットを、省エネルギー、再生可能エネルギー、森林に分類し、183の企業や地方公共団体等の参加のもと、二酸化炭素量で約15万トンの取引が行われ、うち森林由来のクレジットは約60トン、1トン当たり1万円から1万6、000円で取引が行われたと承知しております。
 この実証事業では、市場取引による透明性の確保や契約手続の簡素化などが図られたものの、クレジットの発行者や創出した地域などの情報を加味した取引は行われなかったところであります。
 本県では、これまで、県有林J-クレジットについて、岩手県の県有林が由来であることを付加価値として相対取引により、1トン当たり約1万7、000円で、県内外の企業等に販売を行ってまいりました。
 森林は二酸化炭素の吸収のみならず、水源涵養などの公益的機能を有しており、こうした森林の価値やクレジットを創出した地域の価値もあわせて評価していくことが重要と考えております。
 東京証券取引所において、今月11日からカーボンクレジット市場が本格的に開設されており、県としては、市場における森林由来クレジットの取引動向を注視するとともに、本県森林の価値もあわせて評価されるクレジットの販売について、市場の活用も含めて検討していくこととしております。
〇名須川晋委員 次に、デジタルと科学技術の活用について伺います。
 私がDXの関係で注目しているのは、スマートメーターの活用についてであります。これは従来のアナログメーターと異なり、デジタルで電力等の消費量を測定してデータを送信するといった機能を有するものですが、この電力データが民間企業や自治体に開放されました。
 自治体の活用方法としては、例えば避難所が不足しているエリア、災害時に営業しているコンビニエンスストアなどの店舗の特定や、停電で機能を停止している病院の早期発見など、災害時の活用などが考えられるとのことで、いずれ、岩手県地域防災計画への反映も検討が必要になりそうです。
 また、災害時だけでなく、電気が使われていない空き家がふえているエリアを把握し、見回りの回数をふやして、地域の防犯対策に使うこと、遠く離れた家族の見守りや子育てサービスの展開なども挙げられております。
 東北電力株式会社では、来年2月からデータ活用が可能になるとされており、スマートメーターを例に御紹介いたしましたが、こうした新たなデジタルツールは、行政のさまざまな場面での活用が想定され、生産性の向上や新たな価値の提供に役立つものと考えます。
 県では、この3月に岩手県DX推進計画を策定し、行政、産業、社会、暮らしなど、あらゆる場面でのDXを進めていくこととされておりますが、スマートメーターのような、新たなデジタルツールの全庁的な活用を積極的に検討してはいかがでございましょうか。県の対応について伺います。
〇熊谷ふるさと振興部長 DXの推進には、データ及びデジタル技術を有効に活用することが重要でありますことから、岩手県DX推進計画に、交通ビッグデータなど各種データを把握、分析、活用するためのデータ基盤の整備や、デジタル技術の活用による業務の効率化などを盛り込み、取り組みを進めております。
 名須川晋委員御指摘のスマートメーターにつきましては、自治体における脱炭素の取り組みに向けたデータの収集や、在宅判定による配送業の効率化などの活用の可能性が示されております。
 また、県では、新たなデジタルツールとして、人流ビッグデータ分析ツールを活用したバス運行経路、乗降データや人流データの可視化、分析、いわて観光データ・マネジメント・プラットフォームを活用した観光客データの集約、分析など、さまざまな分野で活用しており、今後も、住民サービスの向上や業務の効率化に有効なデジタルツール、スマートメーターも含めまして、積極的に活用してまいりたいと考えております。
〇名須川晋委員 次に、次世代放射光施設、ナノテラスについて伺います。
 令和3年6月定例会一般質問において、本県企業のこの施設へのかかわりについてお聞きいたしたところです。当局からは、さまざまな産業分野での活用が期待されており、県として、施設の特徴や可能性を地域企業へ周知し、付加価値の高い製品の開発につなげていくよう取り組むという答弁がありました。
 この間、仙台市において、既存の放射光施設を活用してイノベーションを創出することを目的としたトライアルユース事業が実施されておりました。これに参加した県内企業について把握されておりますでしょうか。
 また、いよいよ施設の稼働が迫ってまいりましたが、県としてどのように施策を進めていくつもりかお伺いをいたします。
〇熊谷ふるさと振興部長 仙台市に整備が進められている次世代放射光施設、ナノテラスは、物質の状態を原子レベルまで識別することができる、東北地方に初めて設置される放射光施設でございます。仙台市のトライアルユース事業は、中小企業等が試験的に活用する場合の支援制度であり、岩手県内の企業1社が令和3年度から2年間、この事業を活用し、開発製品の評価を行ったと承知しております。
 また、岩手大学では、ナノテラスを活用した学術研究及び産業振興に資する県内の企業等との共同研究に向けた検討を行っております。来年度からの本格運用に向けて、仙台市と東北経済連合会では、中小企業等が低廉な価格で利用できる仕組みを創設するなど、利用促進に関する取り組みを進めております。
 県といたしましては、県内企業等がこれらの制度を活用しながら、ナノテラスを効果的に利用できるよう、大学や産業支援機関などと連携し、ナノテラスの特徴や、活用事例に関するセミナー等により周知を行い、県内企業等による付加価値の高い製品開発につなげていくよう取り組んでまいります。
〇名須川晋委員 次世代空モビリティ、ドローンやいわゆる空飛ぶクルマの開発が世界で進められており、誰もが思い描いたことのある未来の都市像が実現する日はそう遠くもなさそうであります。
 経済産業省が設立した空の移動革命に向けた官民協議会が示した最新のロードマップによれば、現在は、試験飛行、実証実験、そして、商用運航の開始の過渡期にあり、2025年4月開幕の大阪・関西万博を皮切りとして、2020年代後半までに商用の社会実装が目標とされております。万博開催時に、尼崎市臨海部と夢洲をつなぐ3キロメートルの路線を就航予定と、兵庫県知事が8月の定例記者会見で発表いたしました。万博を機に商用運行の導入に向けて、一気に利活用が進められていく工程となっています。
 知事、そして、私たちの議員の今任期中に大きく変化を遂げる分野であり、地域公共交通網の新たな要素となり得るものだと考えますが、本県は、どのような情報収集を行い、これに対する取り組みをどう考えているでしょうか。県土の広い本県は、観光、二次交通や救急活動にも資するはずであり、まちづくり、都市の形成にも大きくかかわる転換です。考えてみれば、いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランにも盛り込んでいくべき内容であったとも思えますが、県として、どのように公共交通政策に落とし込んでいくのか、あわせて伺います。
〇熊谷ふるさと振興部長 電動、垂直離着陸型、自動操縦などによる空の移動を可能とするいわゆる空飛ぶクルマは、都市部での移動時間の短縮や山間部での移動の利便性向上など、新しいサービスの展開や各地の課題解決につながる取り組みと認識しております。
 2025年日本国際博覧会協会は、大阪・関西万博での空飛ぶクルマの2地点間運航の実現を目指しており、ことし3月に大阪城公園内で操縦者が乗り込む国内初の実証実験が実施され、さまざまな飛行パターンを試すとともに、風や騒音など、実用化に向けたデータを収集したと聞いております。
 国が定めた空の移動革命に向けたロードマップにおきまして、地域公共交通への導入は、万博以後、二次交通から域内交通、地域都市間交通へと段階を踏んで拡大することとしております。国内において、地域公共交通についての実証実験等はまだ行われておらず、環境整備や技術開発が課題とされているところでありますが、広大な県土を有する本県の公共交通にとって、その効果が期待されるところもあり、今後の社会実装に向けた取り組みの動向を注視してまいります。
〇名須川晋委員 私からは最後の質問になります。産後ケア施設の整備について伺います。
 遠方の病院に通う妊産婦の負担軽減のため、産後ケア施設の宿泊型の整備が必要と言われております。現在、県内市町村において、宿泊型のサービスを受けることができるのは奥州市のみとのことですが、分娩待機妊婦の入院滞在や、災害時の妊産婦専用の福祉避難所として、また、産後ケア利用後も気軽に利用できるよう、子育て支援センターとの協働など、宿泊型産後ケア施設を拡大していくため、岩手県としての指針が必要ではないかと考えますが、当局の御所見を伺います。
〇野原企画理事兼保健福祉部長 産後ケア事業は、市町村において、関係法令や国が示す産後ケアガイドラインに基づき実施しているところでありますが、宿泊型は、助産師等の看護職を24時間体制で配置する必要があり、医療機関の空き病床または入院施設を有する助産所のほか、居室そのほか必要な設備を有する施設で実施することとされております。
 そのため、宿泊型の実施に当たりましては、設備及び人員の体制を確保する必要がありますことから、実施主体である市町村の意向を踏まえつつ、地域の実情に応じた産後ケア事業のあり方について、医療機関や民間事業者、助産師など、地域の関係者と議論を深めていく必要があると考えております。
 こうした中、国では、本年6月にしましたこども未来戦略方針に、産後ケア事業の実施体制の強化を掲げており、今年度、産後ケアの体制整備に関する調査研究事業を実施した上で、ガイドラインの見直し等も検討する方針であると聞いております。
 県といたしましては、国の動向も注視しつつ、宿泊型産後ケア事業の拡充に向け、圏域ごとに開催しております連絡調整会議の場などを活用し、市町村や地域の関係者との意見交換を行いながら、各地域の実情に応じた事業のあり方について、議論を進めていく考えであります。
〇名須川晋委員 御答弁ありがとうございました。後半については、千葉秀幸委員に継投をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 以上で終わります。ありがとうございます。
〇柳村一委員長 次に、千葉秀幸委員。
〔千葉秀幸委員質問者席に着く〕
〇千葉秀幸委員 それでは、名須川晋委員に続きまして、暫時、質問させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、私からは、まず、県財政について伺いたいと思います。
 初めに、持続的な財政構造の構築の観点から、先ごろ公表された実質公債費比率の見通しについて伺います。
 これによりますと、令和4年度決算に基づく比率は12.8%で、かつて20%を超えていたころと比較するとかなり低下しているように思いますが、一方、今後に目を向けてみると、令和9年度には、単年度で16.0%の見通しとなっております。
 この夏に、新潟県が18%を超え、起債許可団体になったことが大きく報道されました。かつて本県も平成24年度決算で18%を超え、平成30年度決算で下回るまで当該団体であったことを御記憶の委員も多いと思います。
 第2期アクションプランや知事の掲げるマニフェストプラス39の推進に影響を及ぼすことがないよう、公債費の水準については、常に配意していく必要があると思いますが、実質公債費比率が上昇に転じる原因と今後の県の対応について、まずお伺いいたします。
〇達増知事 令和5年度以降、単年度の実質公債費比率が上昇に転じる見込みとなっており、この原因としては、臨時財政対策債を初めとする交付税算入額が減少し、自主財源で負担する公債費が増加することが第一に挙げられます。
 加えて、平成28年台風第10号、令和元年台風第19号からの復旧事業や国の防災、減災、国土強靱化対策などの経済対策に対応して事業を実施したことにより、比率の分子となる県債発行額が増加したこと、人口減少等を背景として、比率の分母となる県の実質的な一般財源が縮小傾向にあることなども要因となっています。
 今後、一層厳しい財政状況が見込まれることを踏まえ、交付税措置のある有利な地方債やグリーン/ブルーボンドなどの低利な資金を活用しながら、事務事業の精査を通じためり張りある予算編成などにより、公債費負担の縮減に努めてまいります。
〇千葉秀幸委員 ぜひ、県の施策に支障を来すことのないよう、今後ともよろしくお願いしたいと思います。
 今般の代表質問でも、今後の財政運営に当たっての財源確保策についてさまざま御答弁があったところでございますが、私からは、決算特別委員会の趣旨も踏まえ、その具体策について伺います。
 私が着目しているのは、ふるさと納税の魅力化と資金運用の拡充であります。いずれも、現在の社会経済情勢にかなう取り組みであり、ぜひ強化していくべきと考えるところですが、それぞれの令和4年度の実績と取り組み強化に伴う今後の見通しについてお示しください。
〇千葉総務部長 まず、ふるさと納税についてでありますが、令和4年度の受入額は約1.9億円となっております。令和5年度は、返礼品の質、量の充実、県内の宿泊施設等での利用可能なポイントを付与する返礼品の活用促進など、取り組みを強化しており、令和4年度の1.5倍となる約2.8億円の寄附を見込んでおります。
 次に、資金運用についてでありますが、令和4年6月から債券運用を開始したところであり、令和4年度は81億円を運用し、その利息収入は約700万円となっております。
 令和5年度は、年間60億円程度を追加して運用することとしており、運用額140億円余、利息収入は約8倍の5、500万円を見込んでいるところでございます。
〇千葉秀幸委員 それでは次に、私が現在の岩手県における最重要課題と捉えております子ども、子育て分野について伺ってまいります。
 令和4年の本県の合計特殊出生率は1.21、全国で39番目となりました。全国の傾向などにも影響されているものであると思いますが、いわて県民計画(2019〜2028)第1期アクションプランに掲げる令和4年度1.58という目標から、残念ながら乖離した実績となっております。
 当局から、今後、岩手県ふるさと振興総合戦略について、期間延長も含めた改訂が予定されるといった説明を受けましたが、まずは、本県の合計特殊出生率の現状に対する県の評価を伺います。
〇達増知事 合計特殊出生率の低下は、出会いの機会の減少、仕事と子育ての両立の難しさ、子育てや教育にかかる費用負担の重さなどの要因があり、背景には、結婚、出産、子育てにおけるさまざまな生きにくさの問題があると認識しております。
 本県の特徴として、若い女性の社会減を含めた女性人口そのものが減少しているほか、男性は50歳時の未婚割合が高く、女性は30歳以上の有配偶出生率が低い状況にあることから、出会いや結婚を取り巻く環境や、仕事と子育ての両立の難しさなどが影響していると考えております。
 さらに、コロナ禍の影響として、本県においては、令和2年に婚姻件数が急減し、その後、回復が見られないことが、令和4年の出生数の減少につながったものと考えており、令和4年度版少子化社会対策白書においても、行動制限等により、生活意識や行動が変化する中で、若者や子育て世代の結婚、子育てに関する意識も変化している可能性が指摘されております。
 合計特殊出生率の低下の背景には、コロナ禍を含め、社会経済的な環境の悪化による個人の生きにくさの増大があり、さらなる低下は、労働供給や地域、社会の担い手の減少など、社会経済に大きな影響を及ぼすことから、さまざまな主体と連携し、子どもを生み育てやすい環境の整備など、県民のエンパワーに取り組んでまいります。
〇千葉秀幸委員 令和5年度の当初予算は、知事がいわて県民エンパワー予算と名づけ、子ども子育て分野を初めとして、県の喫緊の課題に対し、重点的に予算措置をされた予算であると認識しております。合計特殊出生率の低迷も含め、現状の危機感をまさに反映した予算であり、全国トップレベルの子育て支援策に、私も大いに期待しているところであります。
 今年度も半ばを過ぎましたが、令和4年度の決算も踏まえ、これらの施策を推進することにより、どういう成果が生まれることを期待しているのでしょうか。出生率の向上に結びつくことが一つの目標ではないかと考えるところでございますが、知事のお考えを伺います。
〇達増知事 県では、令和4年度に新たに産後ケア利用料の無償化、幼児教育センターの設置に取り組んできたほか、全国4県のみで行っている妊産婦医療費助成や妊産婦のアクセス支援、認定こども園等の施設整備等により、子育て支援に取り組んでまいりました。
 国の調査によると、子育てや教育に係る経済的負担が、出生数減少の主な要因であり、複数の子供を養育するには、さらに負担が増すこと、夫婦の理想の子供数が2.25人に対して、最終的な出生子供数は1.90人と、0.35人のギャップがあること等が示されています。
 このため、現状で、支援が手薄で、優先度が高いと考えられる、第2子以降の3歳未満児を対象とした所得制限を設けない保育料無償化と在宅育児支援金を総合的に実施することで、全国トップレベルの子育て施策を推進しているところであります。
 これにより、これまで以上に、子育て世帯の経済的負担の軽減が図られ、県民の皆さんが希望する子供数を実現できる環境の整備が進むことを期待しており、こうした施策の展開や県民運動等の取り組みにより、県民の機運醸成を図ることで、出生率の向上へと結びつくものと考えております。
〇柳村一委員長 この際、千葉秀幸委員の質疑の途中でありますが、昼食のため午後1時まで休憩いたします。千葉秀幸委員、御了承願います。
午前11時57分 休憩
午後1時1分再開
〇柳村一委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。
〇千葉秀幸委員 知事から、全国トップレベルの子育て支援策について御答弁をいただきました。これは、知事を先頭に、市町村と協力しながら、理解をいただきながら進めているものでございますので、どの程度成果につながるのか、今後も、私も注視をしてまいりたいと思っております。
 続いて、昨年度、持続可能で希望ある岩手を実現する行財政研究会において、有識者から、岩手県の強みとして指摘された、医療と教育の分野について伺います。
 まず、医療分野についてです。本県の地域医療を支えてきた県立病院ですが、新型コロナウイルス感染症対応にあっても、欠かすことのできない大きな役割を果たしておられます。こうしている今もなお続いている、関係者の御尽力、御努力に心から感謝を表するものであります。
 病院の経営という観点で考えたときに、コロナ禍前の令和元年度決算が純損失計上であった一方、令和2年度以降に純利益計上に転じたように、多くの影響があったのではないかと推察いたしますが、その具体の影響について伺います。
 令和4年度決算のうち、新型コロナウイルス感染症関連の補助金収入はどうであったか、金額とその内訳をお示しください。
 また、感染症法上の分類が5類に移行されましたが、それに伴い、今後、そういった収入が減少していくことが見込まれます。どのように収入を確保し、安定的な病院経営を図っていくおつもりなのか、あわせてお答え願います。
〇八重樫副知事 令和4年度決算のうち新型コロナウイルス感染症関連の補助金収入については、空床確保やワクチン接種業務などの収益的収支に係る補助金が62億8、000万円余、また、医療機械や、備品などの資本的収支に係る補助金が2億7、000万円余、合わせて65億6、000万円余の補助金収入となっています。
 千葉秀幸委員御指摘のように、空床確保補助金は、今年度、大幅な減少が見込まれる中、安定的な病院経営に向けては、収益、費用の両面からの取り組みが必要であり、具体的には、地域の医療機関や介護施設等との連携による入院患者の積極的な受入れや、上位、新規施設基準の取得による診療単価の向上といった収益の確保に加え、病床利用率が低い病院の病床数の見直しや薬品及び診療材料の適正管理、廉価購入、エネルギー消費量の削減等、費用面での取り組みを進めてまいります。
〇千葉秀幸委員 本県の県立病院に対しての繰り出し額が、年間200億円を超えているということでございますので、それでもこれを岩手県の強みとしているわけでございますので、継続的な、また、維持できるために安定経営に努めていただきたいと思っております。
 新型コロナウイルス感染症が感染症法上の分類上、5類に引き下げられてから5カ月が経過をいたしましたが、この夏から秋にかけて、新たな感染の波が押し寄せました。このことからも、5類への移行云々にかかわらず、十分な医療体制を確保し、備えていく必要があると私は思います。
 また、今後、再び起こり得るであろう新たな感染症への備えも重要です。3年以上にわたる新型コロナウイルス感染症への対応は、前例にないこと、想定にないことに直面しながら、その都度、必要な判断を下していくことの連続であったと思いますが、特に医療体制の構築を確保していく上で、新型コロナウイルス感染症対応を通して、どういう教訓を得られたのか、また、その教訓を次の感染症の対応にどのようにして生かしていくおつもりなのかについても、県の認識をお示しください。
〇野原企画理事兼保健福祉部長 新興感染症の発生、まん延に備えまして、現在、これまでの新型コロナウイルス感染症対応を踏まえた岩手県感染症予防計画の改定を行っているところでございます。
 今般の新型コロナウイルス感染症対応においては、医療関係者と行政で、岩手県新型コロナウイルス感染症医療体制検討委員会を組織し、新型コロナウイルス感染症対応と一般医療との両立を図るため、症状等に応じた、医療機関の役割分担に基づく連携協力体制を構築し、オール岩手で対応してまいりました。
 特に、医療体制検討委員会に設置した入院等搬送調整班においては、2次医療圏を越える調整や、患者個別の症状に応じた受入先の調整など、本県の入院調整に重要な役割を果たしてきたところであり、岩手県感染症予防計画の改定におきましても、入院調整などの行政支援について、国の基本指針で示す内容よりも、より具体的に記載する予定としております。
 また、高齢者施設等での施設内感染が課題であったことを踏まえ、本県独自の対応として、高齢者施設等職員への研修に関する項目を、岩手県感染症予防計画において指標化し、平時からの備えを構築していくこととしております。
 このほか、医療関係者や学識経験者等で構成される岩手県感染症医療体制部会において、いただいた御意見を岩手県感染症予防計画に反映させ、今後の新興感染症の発生、まん延に備えた体制を構築していくこととしております。
〇千葉秀幸委員 教育分野について伺います。
 本県においては、高等学校79校のうち、県立が65校を占めており、私は、この分野においても、県の役割が非常に重要であると認識しております。未来を担う児童、生徒を育んでいくという観点からも、こちらも財政的な安定が求められる分野と考えるところでございますが、教育費の決算額が1、300億円台であり、広い県土と小規模校が多いことから、経費のかかり増しが発生し、交付税措置で補えない額が、173億円から192億円に拡大ということが、本年2月の当会派の岩渕誠議員の一般質問において紹介されたところでございます。
 そこで、お伺いいたします。令和4年度の教育費の決算額と交付税措置分との乖離額はどうなっているのでしょうか。また、乖離があるとすれば、これを是正する取り組みがあってしかるべきと考えますが、県として、どのように取り組んでいくのか、あわせてお示しください。
〇千葉総務部長 教育費の決算額は1、353億円余となっており、そのうち、経常経費を充当した一般財源等の決算額1、058億円余に対して、普通交付税措置額が849億円余となっており、その乖離額は209億円余と、さらに拡大しております。
 乖離の要因として、本県は、広大な県土に多数の条件不利地域を抱え、修学機会を確保するための小規模高等学校の維持に係るかかり増し経費が生じている一方、普通交付税にそれらの財政需要が適切に反映されておらず、高等学校費において、79億円余の乖離が生じていることなどが挙げられます。
 県では、これまでも、普通交付税の算定における、小規模高等学校のかかり増し経費の適切な反映等について、要望を行ってきたところであり、本年9月にも、地方交付税法に基づく改正意見を国に対して提出しております。
 今後も、広大な県土を抱える本県の財政需要が的確に反映されるよう、引き続き、国に対して強く要請してまいります。
〇千葉秀幸委員 本県は、先ほど御紹介にもあったとおり、小規模校も維持されているわけでありまして、学校規模あるいは生徒数の計算を適切に見直してもらうように、引き続き、これは要望していただきたいと思っております。
 その上で、令和5年の本県の全日制県立高等学校62校のうち32校、実に51.6%がいわゆる小規模校、1学年3学級以下の高校です。残念ながら、少子化の進行により、当面の間は、生徒数の減少が続くことが見込まれますので、このままでは、小規模校が増加する傾向も同様に続いていくことを覚悟せざるを得ません。
 さきに挙げた持続可能で希望ある岩手を実現する行財政研究会の報告書においては、学校規模の維持に向けた学区やブロックなどの圏域を超えた県全体での適正規模や適正配置の検討についても触れられておりました。小規模校を維持することの是非、学校規模を維持していくことの是非、いずれも議論があることだと思いますが、少子化が進む中で、県立高等学校のあり方をどのように考えているのかについてお伺いいたします。
〇達増知事 県立高等学校は、広大な県土を有する本県にあって、どの地域に居住していても、高等学校教育を受けられる機会を保障し、学びの場や人材育成の場として、大きな役割を果たしてきました。
 県教育委員会では、人口減少社会に対応した教育環境の整備に向け、新たな県立高等学校再編計画後期計画を策定し、再編を行いながら、多様な学びを確保し、地域等との連携を図ることで、高等学校を地域の人材育成の拠点にしようとする取り組みを展開しており、このことは、持続可能で希望ある岩手を実現する行財政研究会でも評価を得ています。
 中学校卒業者数の減少により、今後、学校のさらなる小規模化が見込まれる中、将来の子供たちのため、教育の質の確保や、よりよい教育環境の整備を図っていくことが重要な課題であると考えております。
 現在、県教育委員会では、後期計画の終期を見据え、外部有識者を構成員とする県立高等学校教育の在り方検討会議を開催し、10年先、15年先を見通した高等学校教育のあるべき姿について議論が行われていると承知しており、そうした議論を踏まえて、将来の子供たちのために、よりよい教育環境の整備に努めてまいります。
〇千葉秀幸委員 さきに触れた県立病院もそうであります。そして、県立高等学校においても、多くの予算を措置しているわけでございます。
 今後、どのような形に変わっていくかということに関しても、研究会など、さまざまなところで議論していくのだと考えておりますが、県民の要望を最大限に配慮できるように、引き続き、よろしくお願いを申し上げまして、総括質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
〇柳村一委員長 次に、神崎浩之委員。
   〔神崎浩之委員質問者席に着く〕(拍手)
〇神崎浩之委員 自由民主党の神崎浩之です。会派を代表して総括質疑をいたします。
 まず、5期目の就任を果たされた達増知事に対する初めての決算特別委員会総括質疑であります。質疑に入る前に、まず、知事御自身の県政の評価の表現の仕方について確認してまいりたいと思います。
 知事は、御自身の成果の出し方として、岩手県の中での過去と現在の数値を比較して、数値がふえたからよくなっているとよく話されます。これは選挙前からですが、それに対し、他県と比較してどうなのか、全国の順位は東北地方での順位で見たらどうかという視点で、自由民主党会派では知事の成果を見ております。
 確かに県の過去の数字から見れば、向上している項目もありますが、実はその数字や成果が全国で最下位だったり、40番台であったり、低位だったりしております。こういう我々の全国と比較してどうなのかという切り口での質問について、知事はどう思われているか、お伺いいたします。
〇達増知事 県としての行政の評価は、毎年、法律や条例にも基づいて、行政評価の形で県議会に提示し、また、県民の皆さんにも示しているところであります。議会のさまざまな質問で、達増県政の成果を、4期16年の成果とか、こうした質問に対して一、二分で答えようと思いますと、毎年度の県から正式に出している行政評価、その全てをお答えすることはできませんので、主なものとか、また、特に危機を希望にということで、この1期目当選をさせていただき、当時、そのままにしておけば、この岩手県の経済や雇用や医療などが、底が抜けたように悪化していくところを、持ち直して、今に至っているという状況を簡単に説明するための例を幾つか示してきたところであります。
 他県等の比較や、また、どのような御注文でも質問いただければ、特に事前に通告をいただければ、どのような質問にも答えは用意するつもりであります。
〇神崎浩之委員 この他県との比較でありますけれども、知事の他県との比較をしないスタンスが、県職員にも広がっているのではないかという心配がありまして、私も何度も県職員に質問しても、他県との比較をしない、他県の先進的な取り組みを見ないという仕事の仕方にたびたび遭遇しております。これについて、知事の御所見をお伺いしたいと思います。
〇達増知事 本会議での代表質問や一般質問にもお答えいたしましたけれども、16年前のことを考えますと、岩手県の有効求人倍率が0.5ぐらいであり、就職を希望する人の半分が県外に出なければ仕事に就けなかったというような状況を、いかにして1人でも多く希望する人が県内で働けるかというような問題意識から、さまざま取り組んでおりますので、この岩手県の中において、県民の皆さんがどう苦労してこられたか、どう希望を持ってそれを実現してきたかという、県民目線になったときに、自然に、岩手県における過去と未来ということを比較することが多くなったと思われます。
〇神崎浩之委員 今後も、こういう点から質問していくと思いますので、よろしくお願いいたします。
 知事みずからが、成果が上がっていると説明した場合、それを聞いている県職員も、今の政策が正しいとなり、結果、他県との比較が埋まらない、格差が広がっていく要因にもなりかねないのではないかと心配しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、令和4年度決算の総括について、政策評価指標の見直しについてお伺いいたします。
 今定例会で報告された幸福関連指標の達成状況を見ると、目標を達成できなかった指標が散見されます。一方、例えばサケの回帰率は、海水温の影響などの外的要因に左右される指標でもあり、また、県民の幸福感、主観的幸福感は、個人の価値観、感覚で判定しますが、これらは県の施策、取組を評価する指標として果たして適切なのか。県が幸福という文言を用いだした当初から、私は疑問に思っておりました。
 これら外的要因に左右される指標、それから、個人の価値観、感覚によって、評価する県民の幸福感が指標設定として妥当なのか、また、政策評価結果が適切に県の施策、取組の見直しに寄与しているのかお伺いいたします。
〇達増知事 いわて県民計画(2019〜2028)においては、幸福実感をもとに10の政策分野を設定し、県はもとより、市町村、団体、企業など、さまざまな主体が一体となって取り組むことを前提とした客観的指標であるいわて幸福関連指標を掲げています。
 また、各政策分野の目指す姿の達成に向けて、県が主体的に取り組む推進方策の実績を把握する具体的推進方策指標を設定していますが、神崎浩之委員御指摘のように、県の推進方策に対して、環境変化により大きな影響が生じる事例もあるところであります。
 一方、主観的幸福感については、県民がどの程度幸福を実感しているかといった状況を、毎年度実施する県民意識調査により把握しているものであり、有識者で構成する県民の幸福感に関する分析部会において、幸福実感と関連が強い要因などについて、分析を行うものであります。
 政策評価に当たっては、客観的指標の達成状況に加え、分析部会で得られた分析結果等も踏まえ、課題と今後の方向を整理し、次年度の政策に反映しているところであり、今後においても、県民一人一人に寄り添った政策を推進してまいります。
〇神崎浩之委員 これらの指標の達成状況等については、実際に業務に生かすのは一般の県職員となるので、その点から質問いたします。
 いわて幸福関連指標は、縦割り行政を排し、部局や分野の縦串に横串を刺す、こういう発想はすばらしかったと思います。
 一方で、この考えが県職員にしっかり浸透しているのか、現場における日常業務や翌年度の施策、事業を検討する過程など、さまざまな場面で反映されているのか、生かされているのかお伺いいたします。
〇小野政策企画部長 いわて幸福関連指標の着実な推進に当たりましては、部局横断的に解決策を図ることが重要でございまして、10の政策分野ごとに設置しております政策推進クロスファンクショナルチームにおきまして、指標の達成状況、それから、社会経済情勢等を踏まえまして、政策分野ごとの評価、それから、翌年度以降の政策立案の検討を行っているところでございます。
 また、今、神崎浩之委員からお話ございました、職員が日々の業務の中で、政策体系を意識しながら、担当する事務事業に取り組むこと、これが重要でございます。そのため、毎年度、外部の専門家をお招きいたしまして、指標設定の意義、それから、実績測定を踏まえた問題の解決策、ロジックモデル、EBPMなどをテーマとした実践的なセミナーを開催しております。
 こうした取り組みによりまして、いわて幸福関連指標の十分な理解のもとで、施策等の推進に当たる職員の意識の定着を図りますとともに、政策評価制度に基づくPDCAサイクルをしっかりと機能させるということで、効率的かつ効果的な行政を進めております。
〇神崎浩之委員 行政は縦割りなので、いかにして横割りにしていくのかということが重要であります。一般の職員は真面目ですから、縦割りに仕事をしていると思うのです。そういうこともあるので、ぜひ、横串を刺して、さまざまなキーワードの中で、部局横断で連携をとりながら、一体的に仕事をしていただきたいと思っております。
 続いて、新型コロナコロナウイルス感染症対応の決算額と評価についてお聞きいたします。
 令和4年度も新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう年となり、医療提供体制の確保、経済活動の維持、再開に向けて、9回に及ぶ補正予算を編成し、県議会も臨時会に柔軟に応じるなど、県民の生命、生活を守るため、さまざまな施策を展開してまいりました。
 令和4年度の一般会計決算額8、459億円には、これら新型コロナウイルス感染症対策に要した経費が相当含まれております。令和2年度から令和4年度までにおける、新型コロナウイルス感染症に対応した決算総額と、主な財源内訳、特に新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の交付実績額と、主な活用状況、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金の交付実績額と主な活用状況についてお伺いをいたします。
〇千葉総務部長 3年間で要した新型コロナウイルス感染症対応経費の総額は3、126億円となっており、主な財源は、国庫支出金が1、187億円、制度融資に係る元利収入などが1、908億円となっております。国庫支出金のうち、地方創生臨時交付金の交付総額は459億円であり、令和2年度は、観光宿泊施設緊急対策事業費など経済対策等に109億円、令和3年度は、地域企業経営継続支援事業費補助など、中小、小規模事業者等への支援に76億円、令和4年度は、いわて子育て世帯臨時特別支援金給付事業費補助など、物価高騰に直面する生活困窮者等への支援に41億円を充当するなどしたところでございます。
 緊急包括支援交付金の交付総額は569億円であり、令和2年度から令和4年度までの3年間で、空床確保支援に294億円、宿泊療養施設の確保に55億円、ワクチン接種体制支援に38億円を充当するなどしたところでございます。
〇神崎浩之委員 先ほど名須川晋委員への答弁の中で、令和2年度から令和4年度まで、3、100億円の新型コロナウイルス感染症対策を行ったという答弁がありました。そのうち、県として支出したのが1%程度だというお話もありまして、大災害だと当初言われておりました。それに対して、金額というか事業というか、県の手出しが少ないのではないかと思っております。
 他県の例から言えば、財政調整基金を切り崩しながらも対応したという県もあるのですが、岩手県の説明であると、ほとんど国の交付金で賄ったと。後から財政調整基金の話はさせていただきますけれども、岩手県の新型コロナウイルス感染症の対応は大災害だと言っていた割には、県の手出しというか、事業がなかったという思いがあるのですけれども、先ほど、国に対しては、思い切った財政出動をという知事の答弁もありましたが、今回の新型コロナウイルス感染症に対しても、もっと思い切った経済対策も含めて、事業や予算が必要だったのではないかと思うのですが、知事の所見をお伺いしたいと思います。
〇達増知事 最初の年、2年目、そして、去年のこの3年目と、新型コロナウイルス感染症対策を講じる中で、さまざま予防の対策、そして、感染の疑いのある場合の検査、そして、陽性者の方々の治療や入院、その後には自宅療養があり、また一方で、行動制限や、また、自粛などから、経済社会活動が落ち込み、事業者の皆さん、そして、生活に困っている皆さんへの支援、また、文化活動やスポーツの行動が抑制されていることへのさまざまな支援などなどやってきましたけれども、その都度、国からの財源や県の財源を活用しながら対応できてきたものと思います。
 岩手県の場合は、他県に比べまして、感染の水準が低かったこともあり、Go To トラベルや、それと同種の旅行支援について、感染拡大を理由にした中断をすることなく続けることもできまして、そういうところで、国のスキームに沿って予算を多めに使うことができて、この県内経済の下支えもできたものと、今、思い出しております。
〇神崎浩之委員 感染対策についてはやっていただいたと思っております。今、ゼロゼロ融資が始まって、昨今、県内の大手企業も大分厳しい状況であるということで、もう少し経済対策を思い切ってやってもよかったのではないかという気がしております。
 次に、評価についてでありますが、令和4年度は、15回に及ぶ対策本部会議を開催され、さまざまな新型コロナウイルス感染症対策を講じてきました。県民や関係団体等からどのように評価されていると考えていらっしゃいますか。総括的にお伺いいたします。
〇達増知事 県では、新型コロナウイルス感染症対策本部を設置して、令和2年2月から本年5月まで70回の本部員会議を開催し、医療の逼迫を避けるための岩手緊急事態宣言の発出、基本的な感染対策の徹底などの協力要請や各種対策の調整など、感染症対策の総合的な方針決定等を行ってまいりました。
 本部員会議は全て公開で行い、決定事項や協力要請の内容については、知事メッセージとともに、新聞、テレビ等を通じて、丁寧に情報発信してきたところであり、県民や関係団体の皆様の御理解と御協力、さらには、医療関係者、介護、福祉、教育関係者の皆様の懸命な努力もあって、人口10万人当たりの新規感染者数を全国で最低水準に抑えることができ、感染拡大の防止と社会経済活動との両立につなげられたと考えております。
 これまで県が講じてきた対策については、医療分野では、患者の症状に応じて診療医療機関を調整する病院間の連携体制を構築したこと、県医師会に県職員を常駐させ、速やかにワクチン接種体制を構築したことについて、評価をいただいております。
 また、事業者に対しては、いわて旅応援プロジェクトやいわての食応援プロジェクト、いわて飲食店安心認証制度など、現場の声を聞きながら取り組みを進め、一定の評価をいただいたものと考えております。
 これらのほか、さまざまな分野で対策を講じてまいりましたが、県では、現在、今後の新興感染症の発生に備え、これまでの対応の振り返りを進めており、改善が必要な事項などを含め、市町村や関係団体等に意見聴取を行って、年度内にその結果を取りまとめることとしております。
〇神崎浩之委員 そういう成果の裏には、現職の職員の皆さんの努力もそうでありますけれども、新型コロナウイルス感染症の疫学調査の急増で、急遽、頭を下げてお願いし、先月で終了となりましたが、退職した保健師の活用、そして、現職の皆さんのほかにも、感染制御の桜井先生や、入院調整の真瀬先生など、大変な状況のときに踏ん張ってもらった方々がいらっしゃいます。その方々に対する知事の思いや感謝を直接伝えたのかどうかをお伺いいたします。
〇達増知事 令和2年の発生時から、今、名前を挙げていただいた皆さんには、ある時は先頭に立ち、ある時は縁の下の力持ちの役割を担っていただいて、特に、テレビ、新聞などを通じて、県民の皆さんに、新型コロナウイルス感染症の特徴や、また、その対策の仕組みなどについてアピールしていただいたことも大変助かったと感じております。
 それぞれ昔から存じ上げている方でもあり、プライベートでは、食事をともにする機会なども設けたりしているところもあるわけでありますけれども、公の形での表彰、感謝状は、新型コロナウイルス感染症対応に関しては、県として、今のところ行っていないところであると記憶しておりますけれども、先ほど申し上げましたように、さまざま関係者に意見も求めながら、新型コロナウイルス感染症対策の振り返りをしておりますので、その作業を進めながら、感謝の仕方についても検討をしたいと思います。
〇神崎浩之委員 感染症法上、5類になってということですが、先月退職したのにお願いして、いろいろとやっていただいた保健師等がいます。知事から直接声がなかなか届かないとは思いますけれども、ぜひ、そういう思いを込めて感謝を伝えていただきたい。
 それから、今後について取りまとめということで、私も、今回見て、次のためにやっておかなければいけないことがあった。よかった点もたくさんあります。部局横断で対応できたこと、それから、オンラインの会議の活用等々、今回の新型コロナウイルス感染症対応だからこそ拍車がかかったということもあると思います。その中で、他県との情報共有や、それから、専門職の確保、未来へ引き継ぐ、そういうことも含めて、ぜひやっていただきたいと思っております。
 次に、コロナ禍における財政調整基金残高の推移についてお伺いいたします。
 新型コロナウイルス感染症対応に要した経費は、国費による財政支援があり、県は、この財源を活用して対策を講じてまいりました。一方、財政制度等審議会―財務大臣の諮問機関の資料を見ると、コロナ禍で、地方自治体の財政調整基金残高が増加しており、国の交付金が使われず、貯蓄として積み上がっているのではないかとの意見が出されているようであります。
 令和2年度から令和4年度における財政調整基金残高の推移と、その増減要因をお伺いいたします。
〇千葉総務部長 財政調整基金残高は、コロナ禍前の令和元年度末で183億円だったものが、令和4年度末で297億円と、114億円の増となっております。
 この要因は、財源対策として3カ年で268億円活用した一方で、決算剰余金の法定積立216億円、令和3年度、4年度の普通交付税の後年度精算に備えた積立152億円等を行ったことによるものでございます。
〇神崎浩之委員 これから、県立病院も、焼け太りしたのではないかとか、いろいろな言われ方もあると思いますけれども、きちんと説明していただければいいと思います。ただ膨れ上がったというわけではない、返さない部分もあるということもあって、この財政調整基金の推移だけ見ると、コロナ禍で貯金がたまったのではないなという印象もありますので、よろしくお願いしたいと思います。
 それから、災害直後の緊急的な措置や、今般の青森県の物価高騰対策のように、財政調整基金を取り崩して対応する場面も想定され、そのためには、財政健全化の取り組みを進めていくことが必要であります。
 県は、財政目標に、財政調整基金残高の177億円維持を掲げておりますが、東日本大震災津波の発生後における取り崩し額が120億円であったことと、標準財政規模に対する財政調整基金残高の割合の全国平均が4.2%で、本県の4.5%と同程度であったことを勘案して設定したものと聞いております。
 財政調整基金177億円を維持するためには、財政健全化に向けた取り組みが求められますが、令和4年度の具体的な成果と今後の方針を伺います。
〇達増知事 令和4年度においては、まず、9月補正予算において、公共施設等の適正管理を推進するため、公共施設等適正管理推進基金を創設し、120億円を積み立てたほか、2月補正予算において、普通交付税の追加配分等を財源に、財政調整基金及び退職手当基金にそれぞれ50億円積み立てたところです。
 また、今後の公債費の増高を抑制するため、県債を26億円繰上償還したほか、退職手当債28億円の発行を取りやめるなど、基金積立とあわせて270億円を超える規模で財政健全化に取り組みました。
 今後も、いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランやマニフェストプラス39を推進するため、限られた財源の重点的かつ効果的な活用に努め、財政調整基金の残高維持を初めとする四つの財政目標のもと、財政健全化に着実に取り組んでまいります。
〇神崎浩之委員 次に、県庁の建てかえについて伺います。
 先日、その結果が示されたところであります。今般の一般質問でも、さまざまな質疑が行われました。当面は、改修と建てかえの具体的な比較などを、科学的知見の裏づけに基づいた検討に着手しているということでありました。
 整備手法の決定時期は不明でありますが、いずれ、相当の事業規模となることが見込まれ、大半を県債、借金で賄うことから、将来世代の県民に多大な負担を強いることになります。
 先日、盛岡市役所の建てかえについて、市民の声をさらに聞く必要があるということで、答申が延期されました。県庁舎についても、必要な情報を公開し、県民の意見を丁寧に聞くべきと考えますが、今後の整備手法の検討に向けて、どのようなプロセスや手続を経ていくのかお伺いいたします。
〇千葉総務部長 県庁舎は、昨年度から今年度にかけて実施した耐震診断の結果により、庁舎の強度や補強の程度、残存期間などが判明したことから、現在、改修と建てかえの具体案の比較など、具体的なデータや科学的知見の裏づけに基づいた検討に着手したところでございます。
 さきの総務委員会で、耐震診断結果と改修と建てかえの比較検討案を御報告いたしましたが、改修と建てかえでは、建築基準法等による制限や規模、機能、整備費用において大きな違いがあり、移転建てかえについても検討に加える必要があることから、今後は、中長期的な県庁舎のあるべき姿や、具体の比較検討案などについて、専門的見地から評価いただくことが必要と考えており、議会棟のあり方についても、議会の皆様から御意見を頂戴したいと考えております。
 こうしたプロセスにより検討を進め、一定の方向性がまとまった段階で、パブリックコメント等により、広く県民の皆様からも御意見をいただきながら、できるだけ早期に、改修または建てかえの判断を行ってまいりたいと考えております。
〇神崎浩之委員 県施設の延べ床面積の目標についてでありますが、県では、平成28年3月に、公共施設等総合管理計画を策定し、令和4年の改訂版によれば、公共施設等の維持、更新に係る経費として、今後、30年間で6、050億円、年平均202億円が見込まれており、これは、過去5年間の平均投資額約149億円の1.4倍に相当する規模となっております。
 県は、延べ床面積を2040年までに85%にするという目標を設定しております。この目標達成に向けた、検討状況と対応についてお伺いいたします。
〇千葉総務部長 将来的な人口減少を見据えた公共施設の施設規模、総量の適正化を進めるため、県では、公共施設のうち、建築から50年以上の老朽化した施設や利用度が低調な施設を中心に、集約化や転用、廃止など、全庁的に今後のあり方検討を進めているところでございます。
 具体的には、各部局において、施設の現況に合わせた財産台帳の整理、老朽化が進行し、著しく利用度が低調な施設の用途廃止、類似施設がある場合の施設の集約化、複合化、転用などの検討を進めており、こうした取り組みが具体的に実行されることにより、延べ床面積の削減が進んでいくものと考えております。
〇神崎浩之委員 一方、マニフェストに箱物整備を盛り込んだ考えについてお伺いいたします。
 先日公表された中期財政見通しによれば、令和6年度から公債費が増加に転じ、また、実質公債費比率を増加していくことが見込まれます。一方で、延べ床面積を減少させていくという県の目標も設定しております。
 そのような状況において、達増知事のマニフェストには、新たな箱物整備が盛り込まれており、唐突感を持って受けとめた方も多いと思います。一般質問等でも、マニフェストに対応した財政運営をどう進めるのか、財源確保をどうするのかとの質疑があり、県は事務事業の精査に努める、財源確保に努めるとの趣旨で答弁をされておりました。これら費用に相当する財源を捻出していくことは容易ではないと考えます。
 今回の選挙戦で有権者に提示したマニフェストの実現可能性は低いのではないか、責任あるマニフェストと言えるのか、箱物整備をマニフェストに盛り込むに至った知事の考えをお伺いいたします。
〇達増知事 これまで、岩手県公共施設等総合管理計画に基づき、公共施設の計画的な更新や長寿命化などを行ってきておりますが、人口減少や高齢化の進展など社会情勢の変化による生じる課題や施設の老朽化に対応していくには、各施設のあり方について、整備更新を含め検討が必要な状況にあり、マニフェストプラス39においても、県民からの声を受けとめて、幾つかの施設関係の内容を盛り込んだところであります。
 マニフェストプラス39に盛り込んだ内容を実施するに当たり、実施方針や規模等については、今後、具体的に検討してまいります。
〇神崎浩之委員 今後、検討ということでありますけれども、それでは、いつまでに提示するのか。マニフェストは県民との約束であり、早期に方針をすべきであると思いますが、この点はいかがでしょうか。
〇達増知事 箱物についてもですが、道路など公共インフラについても、マニフェストプラス39には盛り込まれておりますし、ハードではないソフト関係の施策も、また、財源を必要とするものもございます。
 一方、マニフェストプラス39に盛り込んだ内容は、それぞれ県民の皆さんの中に、ニーズ、必要である、あるいは、それを求める声があるものでありますので、ここを、さまざま既存の政策と調整を図り、財源の確保に努めながら、実行に移してまいりたいと思いますけれども、それぞれ県の正式な計画や予算案の中には、いまだ盛り込んでいないものでありますので、基本的には、来年度予算の中で、実現できるものは来年度予算、より時間をかけたほうがいいと思われるものはそれ以降という形で進めていくこととなると考えます。
〇神崎浩之委員 一方、昨年、持続可能で希望ある岩手を実現する行財政研究会を組織し、御意見をいただきました。この研究会は全国的に著名な有識者で構成され、行財政全般を、多角的、分析検討する全国的にも例の少ない先進的な取り組みだったと評価するところであります。
 一方、議論の内容、報告書の内容を見ると、私個人とすれば、例えば県立病院や県立高校の適正配置等は、我々議員も含めて、県職員も問題意識をずっと持っていたものであったのではないかと感じる部分もあります。研究会における議論を通じて、県が新たに認識した課題、想定していなかった課題などが見つかったのか、具体的に、有識者の意見を反映させた県の施策、取り組みについてお伺いいたします。
〇千葉総務部長 持続可能で希望ある岩手を実現する行財政研究会では、日本の第一線で活躍する地方行財政の有識者の方々に、未来を見据えた岩手県のあるべき姿について、熱心に御議論いただいたところでございます。御指摘のあった県立病院や県立高等学校につきましては、人口減少率に応じた一律の集約化等とは異なり、住民や生徒の目線に立って、人口減少時代に対応した、より質の高い医療や教育を提供するための施策や、それらを支えるための行財政基盤の構築に向けた取り組み等について議論が尽くされました。
 例えば県立病院については、ハイボリュームセンターの整備の必要性等が、県立高等学校につきましては、一定程度の学校規模の維持を前提とした、ハード、ソフト両面における学びの環境の充実の必要性等が言及されております。
 このほか、前例にとらわれないあらゆる歳入確保策を実施していく必要があるとの提言を踏まえ、令和5年度当初予算においては、部局横断によるふるさと納税の魅力化を進めることとしたほか、持続可能な行財政基盤の構築に向けて、グリーン/ブルーボンドの発行、電気事業会計の剰余金のさらなる活用を初めとするあらゆる歳入確保策に取り組んだところであり、今後も、歳入確保に最大限努めてまいります。
〇神崎浩之委員 この研究会の議論や報告の内容は、特定の部局、特定の職員だけではなく、全ての県職員、組織がこれを理解し、実施に努めていくことが重要だと思っております。
 この研究会の議論、報告書の成果を、引き続き、県の施策、取り組みに反映させていく方法、それから、全県職員が意識して仕事をするような仕掛けはあるのでしょうか。よろしくお願いします。
〇千葉総務部長 御指摘のとおり、この行財政研究会の議論、報告書の成果を、県の施策、取り組みに反映していくことは非常に重要であり、今後、取り組みの性質に応じて対応していく必要があると考えております。
 まず、報告書において重点テーマとしている県立病院や県立高等学校のさらなる充実に向けた施策については、それぞれの枠組みの中で、県民や関係者等との丁寧な議論を積み重ね、高度、専門的な医療を安定的に提供できる体制確保のための、中核となる病院への一定の機能集約の検討や、県立高等学校教育の在り方検討会議による検討などが進められているものと承知しております。
 また、重点テーマを推進するため、必要となる持続可能な行財政基盤の構築に向けて、設定した財政目標につきましては、第2期アクションプランの行政経営プランの指標として位置づけたところであり、毎年度の予算編成等において、広く県民の皆様に達成状況等を公表し、検証することにより、実効性を確保してまいります。
 さらに、令和5年度当初予算において取り組んだ、持続可能な行財政基盤の構築に向けた歳出水準の適正化、あらゆる歳入確保策などの予算編成を通じた取り組みについては、引き続き取り組んでまいります。
 財政目標やあらゆる歳入確保策などの持続可能な行財政基盤の構築に向けた取り組みは、全庁で情報共有を図りながら、総務部において進捗管理を行っておりますが、引き続き、部局横断の取り組みを進めながら、さまざまな手段により、報告書の内容の全職員、組織への浸透を強化してまいります。
〇神崎浩之委員 財政の硬直化を招かないためには、義務的経費の水準を抑制していく必要があります。私がよく説明に使う総務省の自治体戦略2040年構想研究会の報告によれば、より少ない職員で効率的に事務を処理する体制へ転換、AIなどを活用してということもあります。サービス提供の対象となる住民が減少し、税収も減となれば、自治体職員を減らすことは当然であり、職員体制を見直す必要があると思われます。
 今後の職員定数及び出先機関を含めた組織体制の見直し、それを実現するためのAI等の活用の考えについてお伺いいたします。
〇達増知事 人口減少下にあっても、県民サービスを安定的、持続的に提供していくためには、行政需要に応じた機動的な組織体制の整備や、柔軟な人員配置とあわせて、より効果的、効率的に業務を推進できる体制を構築することが必要です。
 こうした認識のもと、県では、業務の一層の効率化を図るため、AIチャットボットによる照会回答の自動化やRPAを活用した教育事務所における旅費支給事務の自動化、電子決裁、文書管理システムの導入、時間や場所にとらわれないリモートワーク環境の整備など、行政におけるデジタル技術の積極的な活用を進めてきており、今後も、電子契約の導入や行政手続オンライン化の拡大など、さまざまな分野でDXを一層展開し、業務の変革、効率化を図っていくこととしています。
 こうしたDXの取り組みは、業務の効率化のみならず、出先機関を含めた県の組織体制のあり方を変革する可能性もあることから、引き続き、導入による諸組織体制への効果等を検証しながら、持続的に県政の重要課題に対応し得る、最適な組織体制の構築を進めてまいります。
〇神崎浩之委員 総務省では、2040年まで、職員が半分でいいという言い方もされております。
 次に、この行財政研究会で定年引き上げに伴う定員管理について報告されております。定年引き上げに伴う人件費の増が見込まれ、その影響は、令和5年度と令和9年度を比較すると63億円となっております。収支ギャップを悪化させる一つと考えられております。
 定年引き上げの対象職員に見合うポストや担当業務の見通しはあるのか。また、退職する職員数が確定するのは年度末、翌年度の採用職員は、年度中盤に内定しております。この場合、次の年度に配置すべき職員数と、実際に配置する職員が一致しないなど、さまざまな課題がありますけれども、対応方針についてお伺いいたします。
〇千葉総務部長 定年引き上げの対象となる60歳に達する職員は、翌年度から原則非管理職として職務に当たることになっております。その担当業務につきましては、職員が有する知識や経験を次世代に継承しつつ、その専門性を生かしながら組織に貢献できるよう、例えば税務や福祉、法務、会計などの分野で、経験に裏打ちされた知識、技術を要する困難業務や、若手職員に対する指導などに当たるほか、管理職経験者については、培った人脈や専門的な知見を生かし、民間企業との折衝や外部有識者との調整など、高度な企画業務を担うことも想定しております。
 また、さまざまな事情により、定年前に退職する職員が生じ、翌年度の現員数の把握が困難となる等の懸念がございますことから、60歳以降の勤務に係る意向調査を毎年実施し、継続勤務の意向を丁寧に把握しながら、採用計画や人員配置に反映させるなど、中長期的な観点から適切に人員管理を行うこととしております。
 今後も、能力と意欲ある高齢層の職員が最大限活躍できる組織、職員体制の構築を着実に進め、高度化、複雑化する行政課題に適切に対応し、安定的な行政サービスの提供に努めてまいります。
〇神崎浩之委員 なかなか難しい新たな調整だと思いますので、よろしくお願いします。
 次に、総務省では、本年3月、社員が常駐する拠点である強みを生かし、郵便局を活用した地方活性化方策を提言しております。過疎地域を多く抱える本県として、小規模町村への支援の強化のために、郵便局を積極的に活用していくことが重要だと思います。
 既に33市町村において、日本郵便と包括連携協定を締結しております。宮古市や一関市など、プレミアム商品券の取り扱い窓口ということで郵便局にお願いして、市民から大変好評な、そういう事例もあります。
 こういうことについて、県では、市町村に対して側面から投資するための取り組みを求めたいと思いますが、いかがでしょうか。
〇熊谷ふるさと振興部長 神崎浩之委員御指摘の郵便局を活用した地方活性化方策の取り組みにつきましては、郵便局が持つ強みを生かしたさまざまな取り組みが提言されております。総務省では、今年度、自治体に対する周知や先進事例の収集などに取り組んでいるところでございます。
 県内では、全市町村が郵便局と包括連携協定を締結しており、その中で、高齢者や子供の見守り活動の実施、道路損傷の情報提供、災害発生時の被災者支援などの取り組みが既に行われております。郵便局での自治体窓口業務等の取り扱いも可能となっており、県内でも、二戸市や遠野市等において、公的証明書の交付等の窓口業務を委託している事例がありますが、御指摘のとおり、一部の団体にとどまっていると認識しております。
 市町村の窓口業務等を郵便局へ委託する場合、個人情報に係る取扱実施要領の策定や、対象となる郵便局の職員研修実施など、法令上の基準に適合する必要があることに加え、日本郵便株式会社との協議や議会の議決が必要となります。
 県といたしましては、さまざまな機会を通じて、郵便局を活用するための手続などについて、情報提供を行うとともに、取り組み事例の横展開を図りながら、市町村の実情に応じた、郵便局の連携の促進に努めてまいります。
〇神崎浩之委員 どんどん進めていただきたいと思います。
 次に、広域振興局体制であります。知事は令和3年4月に、年度初めの県職員向け訓示において、広域振興局では、市町村や関係機関、団体と密に連携し、地方支部会議での個別具体的な感染対策や飲食店への個別訪問を行うなど、答えは現場にあるを実践していますと発言されておりました。
 ただ、私が実際に広域振興局の活動現場を見た印象は反対であって、広域振興局と市町村との意思疎通が弱く、現場の声を広域振興局が本庁に伝えない、むしろ、本庁だけを見て仕事をしているという場面をよく見てまいりました。
 現場主義を徹底するために、広域振興局に期待する役割とその評価、現場の意見を本庁と共有させるための仕組みづくりについて、考えをお伺いいたします。
〇達増知事 広域振興局は、広域性と専門性を旨とする県が、市町村と連携しながら、地域経営を担い、現場主義に立脚した施策を進めることを、いわて県民計画行政経営プランにおいても位置づけており、広域振興局長には、完結性の高い広域行政を推進することができるよう、その裁量で執行できる予算を措置し、地域の課題に即した、より実効性の高い施策を展開できるようにしています。
 広域振興局では、東日本大震災津波からの復旧、復興への対応を初めとした自然災害への対応のほか、新型コロナウイルス感染症対策においては、保健所への職員派遣や、検体輸送、患者輸送等の応援体制を講ずるなど、広域振興局のスケールメリットを生かした機動的な対応を行いました。
 本庁と広域振興局との共有については、圏域の広域行政の責任者である広域振興局長が庁議や政策会議など、県政の重要な政策形成過程に常時参画するほか、市町村要望を踏まえた地域の重要課題について、知事、副知事等と共有する仕組みを構築しているところであります。
 現下の最重要課題であります、人口減少対策に当たっては、広域振興局が中心となり、管内市町村と連携した取り組みも進めているところであり、引き続き、現場に密着している広域振興局を拠点として、地域課題の解決に取り組んでまいります。
〇神崎浩之委員 時間外勤務時間を見れば、広域振興局は本庁よりも少ないということであります。業務の適正配分という観点においても、本庁業務を広域振興局の業務に回す等々、職員、機能を、もう少し活用すべきである。権限移譲も含めて、見直したほうがいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
〇熊谷ふるさと振興部長 広域振興局につきましては、広域性、専門性を活用し、市町村と連携しながら地域経営を担うという考え方のもと、業務の完結性を高め、利便性の向上を図るという観点からも、本庁から広域振興局に、事務移管や権限移譲を行うとともに、全県的な調整を要する業務等については本庁で執行するなど、県全体として、効率的な業務の推進体制を構築してきたところでございます。
 また、組織、職員体制については、行政課題が複雑化、多様化する中で、効果的に施策を展開できるよう、毎年度検討を行い、職員の適正配置に努めてきております。
 今後は、県政の最重要課題である人口減少対策を初め、小規模自治体への支援など、市町村相互や県市町村との連携、協働を一層推進することが重要となる中で、広域振興局が果たすべき役割も大きくなるものと認識しております。県における役割をしっかりと検証しながら、広域振興局の機能や職員の持つ能力のさらなる活用を図り、地域課題に即した施策を展開できるよう努めてまいります。
〇神崎浩之委員 かつての12の振興局体制の場合は、隣の県と出先機関が物理的な近さもあり、職員相互のやりとりなど円滑に行われていた印象でありますが、四つの振興局体制となり、本局が遠くなってしまったため、他県との観光や産業振興などの連携が弱くなっているのではないかと思っております。
 例えば観光、物流、医療、道路、河川、それから、災害、鳥インフルエンザ等、県際、他県との連携が必要だと思いますけれども、今後の県境連携、県際連携の強化に向けた県の方針を伺います。
〇達増知事 県境地域の相互の発展のためには、県境を越えた隣接圏と連携した取り組みにより事業を展開していくことが重要と認識しており、これまでも4広域振興局が、宮城県、秋田県、青森県の地方事務所等と連携した取り組みを進めております。
 例えば県南広域振興局と沿岸広域振興局においては、宮城県の栗原地域事務所など三つの県事務所と、岩手・宮城県際連絡会議を組織し、農林、水産、観光、人口問題等、県境における諸課題の解決に向けて取り組みを進めているほか、県北広域振興局では、青森県三八地域県民局、八戸市、久慈市、二戸市とナニャトヤラ連邦会議を組織し、防災、産業経済、広域観光等に取り組んでおります。
 県境を越えた連携については、その重要性から、各圏域の地域振興プランにも掲げているところであり、引き続き、広域振興局が中心となり、県境を含めた広域的な連携に積極的に取り組んでまいります。
〇神崎浩之委員 先ほど、他県との比較が少ないという話を冒頭にさせていただきましたけれども、まさに農林水産、土木も含めて、県際との協議は、一緒になった取り組みが必要だと思います。知事に、この際、一関地区合同庁舎に県境連携の先端組織を設置する考えはないかお伺いいたします。
〇達増知事 今は、御提案ということで受けとめさせていただきます。
〇神崎浩之委員 お願いします。
 私は、一関工業高等専門学校―一関高専との連携強化が必要だと思っております。一関高専は、東京大学と連携してAI人材の育成事業を行っており、これ以外にも、半導体の人材育成など、さまざま人材を輩出し、それから、県内企業の育成という点で、非常に重要な組織だと思っております。
 一方、一関高専の研究成果、システム開発の効果が、県外企業に活用されてしまう事例もあり、目指す姿としては、県内企業との連携を進めて、一関高専を卒業した後も県内に定着できるような支援、例えば受け皿となる魅力ある企業の育成が重要であります。
 優秀な人材を県内に定着させ、県内企業の成長を促すためにも、一関高専との連携、活用を強化するべきであり、県でも、いわて高等教育地域連携プラットフォームを立ち上げ、県内の人材の育成に取り組んでおりますけれども、今後の対応方針についてお伺いいたします。
〇熊谷ふるさと振興部長 一関工業高等専門学校は、令和4年度に開催された全国の高等専門学校生が参加するディープラーニングコンテストにおいて、認知症の早期発見につながるアイデアにより最優秀賞を受賞し、その後の起業につなげるなど、新たなテクノロジーに関する知見を有し、高度で実践的な専門技術者を育成している学校と承知しております。
 人口減少が進み、社会経済環境が大きく変化する中、こうした人材が県内に定着し、地域課題の解決や企業の付加価値創出に寄与できる体制を構築することが重要であると考えております。
 いわて高等教育地域連携プラットフォームでは、地域ニーズを踏まえた地域との連携による人材育成や高等教育人材の地元定着、地域企業への就職率向上など、テーマに応じたワーキンググループを設置し、企業や学生を対象とした県内定着に係る人材育成ニーズの把握や、企業と大学学生とのマッチング支援などを進めており、一関高専には人材育成ワーキングに参画いただいております。
 県としても、引き続き、プラットフォームの場を通じて、一関高専の取り組みを初めとした各企業、大学等の先進事例を共有、展開するとともに、産学官の連携により地域企業のニーズを踏まえた人材育成、地元定着につながる取り組みを推進してまいります。
〇神崎浩之委員 一関高専が開発した陸上養殖システム、新聞、テレビでも報道されておりましたが、県の政策メンターも務める上野裕太郎さんが代表を務めている会社で、システムの普及を行うなど、まさに一関高専やその学生が持っている高度な知識、能力が発揮された事例も見られますが、残念なのは、これと連携する企業が首都圏等の県外であることであります。
 一関高専や県内大学の優秀な理工系の学生が、今後も、県内企業で活躍するためには、研究開発型の企業を育成、誘致していくのが必要だと思いますが、県の方針を伺います。
〇達増知事 県では、雇用や税収の大きな製造部門の誘致とあわせて、設計開発から生産までの一貫体制構築を目指した企業の誘致や、研究開発部門を含む本社機能移転に向けた取り組みを支援しているところであります。
 また、いわて戦略的DX・GX等研究開発推進事業や、今年度新たに措置したヘルステック等製品化促進事業費補助金などにより、地場企業等の研究開発の取り組みを支援しているところです。こうした取り組みを通じ、大手コネクタメーカーが盛岡市に先進的な生産技術開発のための拠点整備を進めているほか、今年度、車載用メーターやディスプレイの世界的なメーカーが開発拠点を設置するなど、誘致企業、地場企業を問わず、多くの企業が研究開発に取り組んでいるところであります。
 これら企業は、本県ものづくり産業の高度化のみならず、大学生や高専生など、高度な知識を有する若手人材の県内定着や、U・Iターンの大きな推進力となるものであり、引き続き、高い付加価値を生み出す研究開発型企業や、企業の研究開発部門の誘致と、地場企業の成長を支援してまいります。
〇神崎浩之委員 今回のこの陸上養殖システムにつきましては、私も一関高専の教授と、校長先生にもお話ししたのですが、自分たちは何もアピールしてない。けれども、向こうからいろいろとアクションを起こしてくるのだということで、岩手県はアンテナが低かったのではないかと、残念に思っております。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
 次に、知事と市町村長との宣言関係について伺います。
 令和5年1月、新聞のインタビューで、知事は、人口減少対策の強化に向け、県と県内30市町村との共同宣言を行う考えを示しました。そこから9カ月が経過しておりますが、現時点で共同宣言は出されておりません。人口減少対策に対し、オール岩手で取り組むとの答弁がある中で、共同宣言が出せない理由、背景がどういうものがあるのか。県内市町村との調整状況と、今後の見通しについてお伺いいたします。
〇達増知事 市町村と県の実務者間で調整を進める中で、市町村からさまざまな御意見をいただいたことから、市町村への説明や具体的な議論を丁寧に進めていくため、去る6月に事務レベルの会議を開催し、市町村、県が連携して取り組むべき事業等について意見交換を行い、8月には、町村長と人口減少対策について意見交換を行ったところです。
 現在、岩手県市長会との意見交換に向け、市長会側の意向を確認しているところであり、市町村と県が連携した、人口減少対策に向けた効果的なメッセージについては、丁寧に議論を重ねてまいります。
〇神崎浩之委員 1月に宣言をされてということで、選挙前だったということもあって、うがった見方をしてしまうのですけれども、ぜひ、人口減少対策について、市町村と取り組んでいただきたい。
 次に、産業振興についてお伺いいたします。
 まず、自動車産業であります。先日の報道で、全米自動車労組のストライキがありました。原因は、エンジン車よりも大幅に少ない労働者で生産できる電気自動車の普及が挙げられております。エンジン車が電気自動車にかわると、部品数が3万点から1万点に減ると言われており、県内企業への影響も懸念されます。2035年には、ハイブリッド、それから、電気自動車100%を目指すという政府目標もありますが、県内関連企業に対して、将来を見据えた支援が必要と考えますが、県の方針を伺います。
〇菊池副知事 政府が目指す電気自動車―これはいわゆるEVやハイブリッド車、水素自動車も含みます―などの普及拡大により、電気、電子部品の需要がふえることから、もともと電気、電子部品の製造にかかわってきた多くの企業がありますので、自動車関連産業への新規参入も含め、取引の獲得、拡大のチャンスでもあると捉えているところでございます。
 こうした中、県では、令和4年度に、東北で唯一、いわて産業振興センターが国から受託して設置した地域支援拠点と連携し、相談窓口の設置や専門家派遣などにより、県内企業電動車部品製造への参入や、カーボンニュートラルに向けた取り組みなどを支援しております。
 トヨタ自動車東日本株式会社岩手工場では、年内に高級ブランド、レクサスの新型ハイブリッド車が生産開始される見込みでありますが、この生産に当たっては、来年4月から、早池峰発電所のグリーン電力が利用されることとなっております。
 この電力は、将来的に県内サプライヤー、いわゆる県内企業にも供給される計画であると伺っておりますが、この取り組みは車両の電動化のみならず、生産過程においてもカーボンニュートラルに取り組む必要がある自動車産業において、カーボンフリーのものづくり企業群の構築が進み、県内企業に対する信頼性が向上し、取引の獲得、拡大につながるなど、本県自動車関連産業の持続的な発展をもたらすものと、期待しているところでございます。
〇神崎浩之委員 次に、半導体についてお聞きします。
 キオクシア岩手株式会社、株式会社デンソー岩手など半導体関連の業容拡大が継続しております。一方、昨年9月、キオクシア岩手株式会社が減産するとの報道もあり、不確実性があることが明らかになりました。
 県は、50億円の財政支援や、200億円を投じた新北上浄水場を整備したほか、北上市も25億円の財政支援を行うなど、キオクシア岩手株式会社に大型の財政支援を行っております。
 今後、雇用面、税制面において業績拡大を期待するところでありますが、半導体産業後の今後の見通しと支援に対する考えをお伺いいたします。
〇菊池副知事 国においては、デジタル化の進展や経済安全保障を取り巻く環境の大きな変化等を踏まえ、令和3年6月に、半導体関連産業の強化に関する政策の方向性を定めた半導体・デジタル産業戦略を策定したところでございます。半導体市場は、生成AIなど、デジタル技術の急速な進展や自動車の電動化など、カーボンニュートラル社会の実現に向けた動きを背景として、その需要が拡大していることから、中長期的に、さらなる成長が見込まれるところでございます。
 こうした中、フラッシュメモリーを生産するキオクシア岩手株式会社が第2製造棟を建設しているほか、株式会社デンソー岩手や株式会社富士通ゼネラルエレクトロニクスが、エネルギー効率を高める半導体製品の量産を開始しております。また、半導体製造装置を生産する東京エレクトロンテクノロジーソリューションズ株式会社が、生産、物流拠点の増設を行うこととし、関連サプライヤーの立地も進んでいるところであり、地場企業の参入拡大もさらに期待されるところでございます。
 本県では、産学官金の連携組織であるいわて半導体関連産業集積促進協議会が中核となり、商談会や技術支援等による取引の拡大や、企業ニーズに沿った人材の育成と確保などに、積極的に取り組んでいるところでございます。
 県としては、関係機関との連携のもと、いわて半導体関連産業振興ビジョンに基づき、取引の拡大や人材の育成、確保に向けた支援とあわせて、半導体関連産業の業容拡大に必要なインフラの整備を進めるなど、さらなる集積に向けて、引き続き、取り組んでまいります。
〇神崎浩之委員 次に、2024年物流問題についてお伺いいたします。
 これは、逆に言えば、岩手県の赤字事業に対しては、大チャンスではないかなと思っております。IGRいわて銀河鉄道の経営に対する影響、働き方改革法案によりドライバーの労働時間に上限が課され、1人当たりの走行距離が短くなり、長距離で物が運べなくなると言われております。
 一方IGRは、貨物鉄道の需要が高まっており、JR貨物からの線路使用料が、IGRの営業収入の6割を占めているということであります。これを伸ばす大チャンスだと思っておりますが、県は、例えばJR貨物への働きかけ等が必要と思いますが、県の方針について伺います。
〇熊谷ふるさと振興部長 物流の2024年問題などの課題に対応するため、国は、物流革新緊急パッケージにおいて、物流の効率化の一環として、鉄道や内航海運の輸送量を、今後10年程度で倍増するとしております。JR貨物の輸送量が増加することは、いわて銀河鉄道線を運行する貨物列車の増加につながり、IGRの主な収入源である貨物線路使用料の増収に働くことが期待されます。
 県といたしましては、並行在来線を使ったJR貨物の貨物列車が増便された場合には、JR貨物からIGRに対して、貨物線路使用料が充分かつ安定的に支払われるよう、並行在来線を所管する各道県と国等へ働きかけてまいります。
〇神崎浩之委員 大きい収入で、追い風であるということでありますので、ぜひ早めに働きかけていただきたいと思います。
 それから、もう一つ、宮古-室蘭フェリー航路の再開についても、この関係で大チャンスだと思っております。フェリー輸送の需要も高まるということで、令和2年3月末で休止となっておりますが、この再開について、これも多大な投資をしているということでありますので、苫小牧-宮古航路も含めてアプローチしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
〇八重樫副知事 宮古-室蘭フェリー航路の再開に向け、三陸沿岸道路等の利便性や機能強化の状況、内陸部の大規模物流拠点の整備状況等を、今月開催しました宮古-室蘭フェリー航路連絡調整会議において共有するとともに、今年度は、企業訪問の対象を首都圏まで拡大し、荷主企業等26社に宮古港の優位性などを PRしてきました。
 現時点で、再開の具体的な見通しを確認するには至っておりませんが、引き続き、宮古市等と連携しながら、企業訪問を行い、新たな貨物の掘り起こしに努めるとともに、得られた企業動向等をフェリー運航会社と共有し、航路再開に向け、全力で取り組んでまいります。
〇柳村一委員長 この際、神崎浩之委員の質疑の途中ではありますが、世話人会の申し合わせにより10分間ほど休憩いたします。神崎浩之委員、御了承願います。
午後2時23分 休憩
午後2時41分再開
〇柳村一委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。
〇神崎浩之委員 宮古フェリーターミナルは8億4、500万円、そして、年間維持費が1、000万円弱でありますので、この物流問題に対応するため、IGRいわて銀河鉄道、それから、フェリー航路の再開について、ぜひ早急に形にしていただきたいと思っております。
 次に教育関係について伺います。
 ICTの利活用でありますが、持続可能で希望ある岩手を実現する行財政研究会でも、広い県土を有する本県においては、ICT化が有効であるということであります。ハード面の整備は進んでおりますが、今後、さらに、活用できる教員の育成を進めていくことが重要であります。
 一部報道では、4万5、000円の文鎮と批判され、全国最下位という報道もありました。これを積極的に活用するためには、教員に対する研修体系の充実が必要だと思いますが、今後の方針についてお伺いいたします。
〇菊池副知事 ICT環境の整備は、児童生徒に対してよりよい教育的効果をもたらすものであり、ICTの活用を通じた質の高い学習活動を実施するため、教員のICT活用指導力の向上を図ることが重要であると考えております。
 このため、県教育委員会では、多くの教員がICTを活用することができるよう、初任者研修や中堅教諭の研修等を設けておりますが、これは年代あるいは職位等によってその対象となる人はみんな受けなければいけないという基本研修です。いわゆる悉皆の研修に、ICT研修を導入するなど、78のICT研修講座を設け、タブレットや大型提示装置を使用した授業での実践につながる研修を行っていると承知しております。
 一方、教員のICT活用指導力をより一層向上させていくためには、あらゆる年代層のより多くの教員に研修を受講していただくことや、活用能力や指導力などに応じた多様なニーズに対応していく必要もあります。県教育委員会では、オンラインを含む研修機会の拡大や、研修内容の充実を図ることを検討していると聞いております。
 引き続き、学校において、ICTの利活用が進むよう、教員の指導力の向上に取り組んでもらいたいと考えております。
〇神崎浩之委員 同じく小規模校に対する支援でありますが、この行財政研究会でも、県立高等学校の統廃合について話題になっております。一方、出生数が減少していることは事実でありまして、小規模校でも、学びの質を確保するために、その対策として、遠隔授業を積極的に取り組むべきと考えますが、いかがでしょうか。
〇菊池副知事 いわゆる遠隔教育は、小規模校の教育の質の保障や、多様な学びの充実などに有用な方策であり、県教育委員会では、県立高等学校において、令和3年度から、国の事業であるCOREハイスクールネットワーク構想事業を活用し、総合教育センター内に授業配信拠点を設け、今年度は、小規模校5校に対し、延べ11科目の双方向型の遠隔授業を実施しております。
 先般、国の中央教育審議会が公表した高等学校教育のあり方ワーキンググループ中間まとめにおいて、地理的状況や学科等の別にかかわらず、いずれの高等学校においても、多様な学習ニーズに対応し、柔軟で質の高い学びを実現するため、遠隔授業の活用が有効であり、一層の推進が重要とされたところでございます。
 県教育委員会によりますと、県内の遠隔授業未実施の小規模校からも、生徒のニーズに応じた科目の開設により、教育課程の充実を図りたいとして、遠隔授業の配信を望む声があることもあり、遠隔授業のさらなる拡充が必要であると考えております。
 今後、県教育委員会においては、小規模校における学びの機会の保障と質の保証に向け、遠隔教育の一層の充実に取り組んでもらいたいと考えております。
〇神崎浩之委員 次に、よく議論になります不登校に悩む児童生徒についてであります。
 不登校の児童生徒の居場所づくりにつきましては、令和5年2月定例会でも取り上げさせていただいておりますが、本年5月に、総合教育会議で不登校対策が議論されております。総合教育会議の主宰者である知事に、本年5月の総合教育会議の議論も踏まえて、不登校の児童生徒の居場所づくり等をどのように進めていくのかお伺いいたします。
〇達増知事 本年5月の総合教育会議では、各委員から、不登校を未然に防ぐための学校のあり方、フリースクールやオンライン授業を初めとした柔軟な学びの機会の提供など、児童生徒一人一人に寄り添った支援の必要性について御意見をいただきました。
 こうした中、県教育委員会では、魅力ある学校づくりによる不登校の未然防止や、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置、市町村の教育支援センターのさらなる設置による、相談、支援体制の強化などに取り組んでいます。
 フリースクール等民間団体や市町村教育支援センターの職員なども参加する連絡会議を開催し、今年度は、国の動向や参加団体からの実践発表を通じた児童生徒への支援のあり方等の情報交換や共有を図ったところでもございます。
 こうした県教育委員会による、児童生徒の居場所が確保できるような仕組みの構築に向けた環境を整備するとともに、不登校等を経験した生徒の受入れを行っている私立学校も複数ありますことから、多様な学びの機会の確保のため、必要な支援を継続して行ってまいります。
〇神崎浩之委員 不登校の関係で、教員の皆さんとお話ししたのですが、無気力な子供たちがふえていると。睡眠不足とスマートフォンということもありまして、学校生活、家庭生活を整えること、それから、就学前の生活習慣、こういうこともありますので、学校現場だけでなくて、総合的に取り組む必要があると感じたところであります。
 次に、私学助成の拡充について伺います。
 不登校生徒の受け皿として、星北高等学園などに対する私学助成を拡充していく必要があります。県では、これまでも、私立学校の授業料の無償化に伴って、590万円から620万円の世帯に対する上乗せを講じておりますが、青森県では710万円未満、山形県では910万円未満までの世帯と、ばらつきがあるところであります。
 県内では、高校生の4人に1人が、およそ7、000人が私立高校で学んでおり、私立高校は本県の公教育の発展に大きく貢献しているところであります。私学教育の充実のため、私学助成全般を拡充していく必要があると考えますが、今後の方針についてお伺いいたします。
〇達増知事 私立学校は、それぞれが独自の建学の精神や教育理念に基づき、特色ある教育に取り組み、本県の公教育における重要な役割を担っています。
 県では、学校運営の経常的な経費に対する支援を行っており、国庫補助単価及び地方交付税単価の改定に合わせて必要な増額を図ってきたほか、特色ある教育に対し、県単独事業による上乗せ補助を行っています。
 さらに、県独自の取り組みとして、私立高等学校に通う年収590万円以上620万円未満の世帯を対象として、授業料減免補助を行っているほか、令和5年度から、私立専修学校高等課程に対する運営費補助の大学入試資格付与校に係る生徒1人当たり補助単価を倍増するなど、社会経済情勢の変化に対応した支援を行っております。
 これら、本県の運営費補助や授業料減免補助に係る単価は、他県に引けをとらない水準となっていますが、私学助成の充実については、毎年度、関係団体から要望をいただいているところであり、国や他県等の動向を参考にしながら、引き続き、可能な限り効果的な助成や支援に努めてまいります。
〇神崎浩之委員 4人に1人が私立学校ということで、非常に大きいウエートだなと、改めて感じたところであります。
 最後に、医療局の諸課題についてお伺いいたします。
 黒字体質への転換についてでありますが、現在、県立病院の経営のために、一般会計から200億円を超える多額の繰出金を出していると。県民負担が非常に重いということであります。
 コロナ禍で、近年は黒字に転換いたしましたが、感染症法上の5類移行に伴って、国の財政支援も平時に戻ると想定されております。令和5年度の黒字化は厳しいのではないかと推察するところであります。
 本県の医療を県立病院が支えており、これを安定的に経営していくためには、一般会計の繰出額を抑制することも重要でありますが、経営効率化に向けて取り組むべきであり、例えば手術の件数をふやすとか、高度医療を実施していくとか、そういう攻めの経営を目指すべきではないかなと思いますが、病院事業の黒字化について対策をお伺いいたします。
〇八重樫副知事 病院事業の黒字化についてでありますが、まずは、収益面の取り組みとして、地域の医療機関や介護施設等と連携した入院患者の積極的な受入れや、上位、新規施設基準の取得による診療単価の向上に取り組むとともに、神崎浩之委員御指摘のように、高度な医療や手術の実施によって、医療の質を向上していくことが、経営改善にも効果的であると考えています。
 こうした高度医療を安定的に提供していくために、医療機能の集約を行う等、各病院が担うべき役割や機能を改めて見直し、専門人材や高度医療機械等についても、一定の集約を図っていくことが今後必要になってくると考えています。
 また、収益確保の取り組みに加え、病床利用率が低い病院の病床数の見直しや、薬品及び診療材料の適正管理、廉価購入、エネルギー消費量の削減等、費用面での取り組みもあわせて行うなど、持続可能な経営基盤の確立に努めてまいります。
〇神崎浩之委員 医業はさまざまな科がありまして、これは収益というか売上が上がる業務、そうでない業務、さまざまあります。医師が多くあればいいわけですが、医師1人に対して、周りのスタッフを整備することによって、もう少し収益が改善する、売り上げが改善するような仕組みもあるはずでありますので、医師の確保も重要でありますけれども、その周りの体制を整備して、黒字化に向けていただきたいと思います。
 次に、知事選挙における争点について。県立病院についてお伺いしたいと思います。
 知事はマニフェストで、全県的な医療提供体制と県立病院の体制等の一層の充実、ハイボリュームセンターの整備などを掲げました。ある政党の機関紙において、対立候補が、20の県立病院の維持は非常に難しくなると発言したことに対し、岩手県の強みの医療を、さらに充実させるという知事の発言を取り上げ、あたかも、県立病院の削減と維持が争点化しているような記事を掲載いたしました。
 このような記事は、適切なものであったのかどうか。知事の考えを伺います。
〇達増知事 医療は県民の生活に不可欠なもので、誰もが地域で必要な医療を受けられる体制を構築していくことは、極めて重要な県政課題の一つであり、県民意識調査においても、必要な医療を適切に受けられることを重要と感じる県民が9割を超えるなど、県民の関心や期待も非常に高いと分析されているところです。
 知事選挙に際し、私も、いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランにおいて、医療を担う人づくりや、質の高い医療を受けられる体制の整備を、医療体制を充実させるための方策に掲げていることを踏まえ、全県的な医療提供体制と県立病院の体制等の一層の充実を訴えたものであります。
 県立病院のあり方については、多くの県民が関心を持っており、候補者がどのような考えを持っているかということを比較したいと考える有権者は少なくなかったと考えます。今般の知事選挙で、県立病院のあり方が一つの争点になっているという考え方はあり得るものと考えます。
〇神崎浩之委員 この記事を別にして、現在20の県立病院があるということで、私は集約化が必要だと考えております。知事は、この県立病院の20の体制は、維持できるものであるとお考えなのかどうか、お伺いしたいと思います。
〇達増知事 現行維持するという医療局経営計画のもとに、県立病院を経営しているところであります。再来年に新しい経営計画となるわけですが、そういう意味で、ことし、来年削減などということはあり得ないわけでありますし、まさに今回の選挙戦を通じて、先ほど神崎浩之委員は削減したほうがいいとおっしゃったようにも聞こえましたが、この削減するべきという声は、私はあまりそういうことは聞かず、むしろ、この充実強化ということで、多くの支持をいただいたところであり、そうした県民の意見が、次期医療局経営計画の策定に反映されていくものと考えます。
〇神崎浩之委員 私は、削減をすべきだという話をしているわけではありません。確かに、県民の皆さんはそれを望んでおります。ただ、それが、今後、継続してできるかどうかというのは、大所高所から見ていかなければならない、誘導していかなければならない。それも、岩手県の医療を担っている知事の方向性だと思っております。
 ことし、来年はないというお話をされましたけれども、それ以降について、今の体制のまま、20の県立病院を維持することは可能かどうか、もう一度お伺いしたいと思います。
〇達増知事 具体的には、再来年策定の県医療局の計画に盛り込まれるところでありますけれども、これは、今定例会で、まさに県政の争点になっている重要課題でありますので、代表質問への答弁や一般質問への答弁でもお答えしたところでありますけれども、高度な医療の確保と同時に、地域地域で、最初の受診ができるような部分も、県立病院が役割を果たしていかなければならないことは、ずっと答弁しているとおりであります。
〇神崎浩之委員 20の維持と、20の集約というか、それがハイボリュームセンターの動きではないかと思うわけですが、その動きは、どのように整理していけばいいのか、教えていただきたいと思います。
〇達増知事 人口減少や医療の高度化、専門化等医療を取り巻く環境の変化の中で、限られた医療資源を効率的に活用し、県内で高度専門的な医療を安定的に提供できる体制を確保していくことは急務であり、まずは、がんや脳卒中などの疾病ごとに、既存の中核的な病院に高度、専門的な手術機能等を集約し、疾病ごとに症例数の確保を図りながら、ハイボリュームセンターとしての役割を果たしていくことを検討いたします。
 具体的に、どういった病院に機能を集約していくかということについては、次期保健医療計画における疾病、事業別医療圏の設定等も踏まえ、医療局において、専門的見地から検討してまいります。
 こうした取り組みを着実に進めながら、症例数の状況や手術件数の推移等を分析し、将来のさらなる施設整備について、検討していきます。大規模な投資が必要となる場合には、病院事業債の発行で対応することとなるため、将来の起債償還に備え、経営改善の取り組みを進め、持続可能な経営基盤の確立を図っていくことが重要と認識しております。
〇神崎浩之委員 いろいろ細かいところを聞きたいところではありますが、最後に総括して、マニフェストに関連して、知事は、希望郷いわて、その先へというフレーズを利用されます。この希望郷いわて、その先へというのはどういうものなのか、お伺いしたいと思います。
〇達増知事 抽象的な表現が適当であると考え、そのような抽象的な表現をしているところではありますけれども、基本的には、希望郷いわての実現を目指すというような、希望郷いわてのありようが、はるかかなたにあるというようなことではなく、この希望郷いわてであることを守っていくことが今の課題となり、そうしますと、希望郷いわての先に向かって進んでいくというのが、県政の進む方向としての基本的考え方になるかと思っております。
 東日本大震災津波の経験に基づき、引き続き、復興に取り組みながら、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわてということが、今、かなりの程度実現していると考えておりまして、その先ということを目指していくべき段階に来ているのかと考えております。
〇神崎浩之委員 もう一つ、今定例会の知事演述の最後で、岩手県の持つ価値や魅力を最大限に磨き上げ、誇りを持って世界に発信し、希望郷いわてのその先にある、まだ見たことのない景色に向かって、歩みを進めましょうと述べておられます。
 知事が言う、まだ見たことのない景色とは、具体的にどのようなイメージなのでしょうか。また、知事は、そのイメージを県民、市町村と共有できていると認識しているのでしょうか。
〇達増知事 毎年度の具体的な県の事業については、予算を通じて県民の皆さんに示しますし、今後4年間の基本的な県の施策についてはいわて県民計画(2019〜2028)のアクションプランで示しているところでありますけれども、まずは、このアクションプランと、年度ごとの事業をきちんと進めていくことで、今まで、岩手県が経験しなかったような産業の発展とか、今まで言われていなかったようなビジネスの展開とか、今まで岩手県になかったような、インバウンドの振興、外国人と岩手県民が一緒になって、岩手県の地域資源を共有し、さらに、これを開発していくことが、実現していくと考えております。
 知事演述においては、まずは、そうなったときに、それがまさに新しい景色を示そうということで、予告編のように示したところでありますが、1年目のスタートにおいては、予告編でありますけれども、2年目、3年目となっていくに従って、これがそうだということを確認していけると思っております。
〇神崎浩之委員 ありがとうございました。(拍手)
〇柳村一委員長 次に、吉田敬子委員。
〔吉田敬子委員質問者席に着く〕(拍手)
〇吉田敬子委員 いわて新政会の吉田敬子でございます。会派を代表して質問させていただきます。
 初めに、子供を生み育てる環境についてお伺いいたします。
 生きにくさを生きやすさにかえ、子供を生み、育てたいという県民の希望に応えるため、全庁的な情報共有や各部局のさらなる連携を進めることにより、結婚、妊娠、出産、子育て支援の施策を総合的、効果的に推進し、安心して子供を生み育てる環境を充実させるため、いわてで生み育てる支援本部を令和4年度に設置されました。
 新たな取り組みとして、産後ケアの利用料無償化を行う市町村への補助、いわて幼児教育センターの設置、妊娠、出産や不妊に関する知識の普及啓発などを盛り込みましたが、令和4年度の事業実績をどう評価しているか、さらなる連携で、具体的にどのような取り組みと成果があったのかお伺いいたします。
〇達増知事 結婚、出産などのライフステージに応じた総合的かつ効果的な取り組みと、これらを支える基盤づくりを推進することを取り組みの方向性とし、令和4年度は、吉田敬子委員御紹介の事業に加え、リトルベビーハンドブックの作成、配布、妊娠、不妊に関するマンガの作成、妊婦や子育て世帯の県営住宅入居に係る収入要件の緩和などに、新たに取り組んだところであります。
 あわせて、県民、市町村、企業、関係団体など多様な主体の参画により、社会全体で、安心して生み育てられる環境づくりの機運を醸成することが必要との観点から、公募により、いわての子みんなでつくる大きなゆりかごのキャッチフレーズを決定し、いわてで生み育てる県民運動を展開するなど、実効性の高い子育て支援施策の推進が図られたと考えております。
 本部会議における全庁的な議論を踏まえ、令和5年度はさらに取り組みを加速すべく、国の施策を待たずに、積極的に県独自の施策、支援策に取り組むこととし、第2子以降の3歳未満児を対象とした所得制限を設けない保育料無償化や、在宅育児支援金を創設するなど、全国トップレベルの子育て環境の実現に向け、新たな取り組みを展開しているところです。
〇吉田敬子委員 実効性の高い子育て支援策というところについては、後ほどの質問で触れさせていただきたいと思います。
 脆弱な周産期医療体制の中で、妊産婦アクセス支援などに取り組まれてまいりました。令和4年度実施の実態調査の結果、圏域をまたいだ妊婦の受療動向等の分析から、院内助産や助産師外来の今後の方向性、それに伴う今後の助産師の育成について、どのように考えているかお伺いいたします。
〇野原企画理事兼保健福祉部長 県内における院内助産は、令和4年度に2病院で実施しており、院内助産を標榜していない分娩取り扱い医療機関におきましても、ハイリスク以外の妊婦の正常分娩において、陣痛から分娩直前までを対応する例も多くあるところです。また、助産師外来は10医療機関で実施しているところです。
 院内助産や助産師外来の取り組みは、妊娠から出産、産後までの手厚い支援にもつながる有効な取り組みであり、これらを担う助産師の確保、育成が重要であると考えております。
 県では、助産師確保、育成のため、看護職員修学資金に助産師特別枠を設けているほか、潜在助産師の復職研修、資質向上研修などに取り組んでいるところであります。
 助産師は、分娩介助に加え、院内助産や助産師外来、産後ケアなどにおいて、大きな役割を担っていることから、引き続き、人材確保に取り組むとともに、専門職としてのより多くの経験を積むことで、スキルアップが図られるよう、関係機関と協議をしながら取り組んでまいります。
〇吉田敬子委員 これまで、助産師出向システムやアドバンス助産師等のさらなる研修、育成について、常任委員会も含めて取り上げさせていただいておりますけれども、もっと具体的な取り組みを今後期待しております。
 その中で、産前産後サポート、産後ケアの取り組みについてお伺いいたしますが、各市町村の産前産後サポート、産後ケアの取り組み実績、県の市町村への補助によりどのような効果があったと分析しているか。また、事業に対し、市町村や事業体からはどのような声が上がっているか、お伺いいたします。
〇野原企画理事兼保健福祉部長 子育て経験者や助産師などによる相談支援を行います、産前・産後サポート事業については、現時点で、17市町村において実施しているところです。また、産後ケア事業は32市町村が実施しており、そのうち12市町において、令和4年度から、県の独自事業として実施した産後ケア事業利用促進事業費補助を活用し、利用料の無償化が図られているところであります。
 これにより、従来から、各市町村の規定等により利用料を無料としている19市町村と合わせ、現在、31市町村において、産後ケア利用料が無償化されているところであります。
 産後ケアの無償化に伴い、利用者の経済的負担軽減が図られたことなどから、新たに無償化を実施した市町村において、利用件数が4割以上ふえており、さらに、サービスを受けた多くの利用者からは、満足であるとの回答を得るなど、産後ケア事業の取り組みの充実や、利用促進に寄与しているものと考えております。
〇吉田敬子委員 4割以上利用がふえて、満足度も高くなっていて、そういう取り組みがふえているのですけれども、これまでも各市町村の取り組みに格差があります。事業の内容は、宿泊型とデイサービス型、アウトリーチ型の三つがあるわけですけれども、これまで岩手県では、アウトリーチ型は、大体の市町村が実施されていて、デイサービス型、宿泊型は、先ほど名須川晋委員も取り上げられていましたけれども、奥州市のみということになっております。
 その宿泊型産後ケアセンターの設置については、これまで提言させていただいた際、まずは単独で実施が難しい市町村には、広域での連携を提案すると御答弁いただいておりますが、各市町村では、人材など資源確保に課題がある中、広域連携につながる事例など、県の取り組みをお伺いいたします。
 また、産後ケアの今後の方向性について、どのように考えているかお伺いいたします。
〇野原企画理事兼保健福祉部長 産後ケア事業の広域連携についてでありますが、吉田敬子委員御指摘のとおり、利用状況において、市町村で差異がある中で、今後、サービスの拡充を図っていくためには、複数の市町村が一つの産科医療機関等を共同で利用する広域連携も有効な取り組みであると考えております。
 各保健所圏域で設置しております連絡調整会議等の場で、産後ケア事業のあり方について議論を行っているところであり、広域連携を検討する意向がある圏域に対しては、先行事例として、釜石市及び大槌町が、令和4年度から実施している県立釜石病院でのデイサービス型事業の取り組み等の紹介を行っているところであります。
 一方で、医療機関など地域資源の有無や、産後ケア事業の利用率の違いなど、圏域ごとに抱える課題が異なることから、先行事例も参考にしながら、引き続き、医療機関や民間事業者、助産師などの関係者と、地域の実情に応じた事業展開について議論を深めていく必要があると考えております。
 県としては、妊産婦が身近な地域で、きめ細やかなケアを受けられるよう、利用料無償化への補助などを通じまして、産後ケアのさらなる利用促進を図るとともに、全ての市町村が、利用者ニーズに即した事業を実施できるよう、引き続き、市町村を支援してまいります。
〇吉田敬子委員 圏域をまたいだ妊婦の受療動向等の調査も、周産期医療の関係で令和4年度に実態調査把握をしていただいて、周産期医療圏も含めた課題を、今後検討していく中で、産後ケアをどうしていくかということについて、先ほど野原企画理事兼保健福祉部長がおっしゃったように、地域のニーズに応じた事業ということで、せっかく無償化の事業をやっていただいている中で、もっと踏み込んで、アンケートも含めた実態調査をしていただきたいと思っています。
 令和4年9月から10月にさまざまな全国調査があって、宿泊型、デイサービス型、アウトリーチ型で、実は、全国で宿泊型が67.5%、デイサービス型が68.3%、アウトリーチ型が55.5%ということで、岩手県とは逆のパターンで、他県ではデイサービスと宿泊型が多いことが全国調査でわかっています。
 地域の実情に応じてではありますけれども、今回、無償化に伴って、産後ケアの一つとして調査するのではなく、宿泊型、デイサービス型、アウトリーチ型それぞれ三つについて実際に使っている方の人数を分けて、実態把握としてやらないと、何がニーズとしてあるのかがわからないのではないかと思います。県に資料請求しましたけれども、宿泊型、デイサービス型、アウトリーチ型それぞれでは、実人数は把握されていないということでした。これでは、どのサービスが地域で需要があるかということがわからないのではないかと私は感じているのですが、それに関しての御所見をお伺いしたいと思います。
〇野原企画理事兼保健福祉部長 吉田敬子委員御指摘のとおり、特に宿泊型については、県内では奥州市のみということで、担い手となる医療機関や、宿泊できるような助産院の資源の不足が背景にあろうかと思うのですが、いわゆる宿泊型がなかなか進んでいないという状況がございます。
 また、産後ケア事業は全ての市町村でかなり進んだのですが、その利用率が、市町村でかなりばらつきがあるという実態も、我々は認識しておりまして、多分、宿泊型のニーズは、各市町村それぞれあろうかとは思うのですけれども、各地域のニーズと、あとは、各圏域で、どのような部分で着手できるのか。遠野市、奥州市、花巻市、北上市など、それぞれ特色ある取り組みを進めておりますので、各地域の資源、連携体制、それに応じた実効性がある、利用していただけるような産後ケアの事業のあり方を、今後、関係者と議論を重ねて、進めてまいりたいと考えております。
〇吉田敬子委員 次に、特定妊婦の状況と支援体制について、県はどのように把握しているか。若年妊娠、望まない妊娠などの課題も増加する中で、相談や産前産後サポート、産後ケア事業など、十分な支援に結びついているか、課題認識についてお伺いします。
〇野原企画理事兼保健福祉部長 特定妊婦の状況と支援体制についてでございますが、県内の各市町村要保護児童対策地域協議会で支援対象となっている特定妊婦の数は、令和2年度は173件、令和3年度は178件、令和4年度は151件と、150件程度で推移しております。
 また、令和4年8月から開設しております民間のにんしんSOSいわてにおける令和4年度の相談件数は60件であり、若年者からの相談が多い状況と聞いております。
 特定妊婦は、望まない妊娠やこころの問題、経済的な困窮など、さまざまな背景を抱えていることから、これまで、各市町村要保護児童対策地域協議会において個別のケース検討を行い、家庭訪問や産後ケアなどの必要な支援につなげてきたところであります。
 これに加えて、民間の取り組みであります、にんしんSOSいわてにおいても、妊娠に関するさまざまな不安への相談支援等が行われてきたところであります。
 こうした中、令和6年4月から、市町村にこども家庭センターが設置され、母子保健と児童福祉の一体的な相談支援体制が強化されることとなっており、市町村要保護児童対策地域協議会や民間団体等との十分な連携のもと、個々の家庭や実情に応じた包括的な支援が行われるよう、県としても、その取り組みを支援してまいります。
〇吉田敬子委員 若年妊娠、10代の方々の相談もふえているということで、ここは、常任委員会等を通じて、引き続き注視していきたいと思います。
 次に、子育て支援サービスの充実について伺います。共働き世帯での家事、育児の負担は、依然、女性に偏っています。総務省の社会生活基本調査によると、2021年に、6歳未満の子供がいる共働き世帯の1日当たりの家事関連時間は、妻が6時間32分で、1時間57分だった夫の3.4倍に上ります。
 女性が過重な家事負担を負うことなく、仕事と家庭の両立を可能にするためには、男性の主体的な家庭生活への参画や、長時間労働是正等働き方改革の取り組みを進める施策に加えて、家事育児負担軽減の外部サービスが必要と提言し続けています。
 国では、企業主導型ベビーシッター利用者支援事業におけるベビーシッター派遣事業を、平成28年度から実施しています。国は、この事業を公益社団法人全国保育サービス協会に委託していますが、岩手県内には登録事業者は数える程度しかなく、サービスを利用している岩手県に本社を置く会社もゼロの状況です。このようなサービスを担える人材や事業体の育成、県民への情報提供が必要ではないでしょうか。知事の考える全国トップレベルの具体的な子育て支援策の展開、拡充について、お伺いいたします。
〇達増知事 子育て支援サービスの充実についてでありますが、核家族化の進展、共働き家庭の増加、ひとり親家庭や自分の生まれ育った地域以外で子育てをする家庭など、子育て家庭を取り巻く環境は多様化しており、子育て家庭が、それぞれ必要とする支援にアクセスでき、安心して子供を生み育てられる環境整備が重要です。
 県ではこれまで、保育の受け皿整備はもとより、市町村が実施する延長保育や一時預かり、病児保育、ファミリーサポートセンター事業など、地域子ども・子育て支援事業の取り組みを促進し、子育て家庭の多様な保育ニーズに対応してまいりました。
 吉田敬子委員御紹介の国のベビーシッター派遣事業は、雇用労働者がベビーシッターサービスを利用した場合に、その利用料金の一部または全部を国が助成するものですが、県内には、ベビーシッターの登録事業者や、本事業を活用する企業が少ない状況にあることから、県としては、まずは、県民や企業等に対し、事業の周知に努めていく必要があると考えております。
 今後の子育て支援策の充実に向けては、岩手県人口問題対策本部会議において、本県の少子化要因の詳細な分析結果等を踏まえ、仕事と子育ての両立に向けた、子育て支援サービスの充実などを取り組みの方向性として掲げたところであり、現在実施している事業の効果や課題等を検証しながら、施策の一層の充実を図ってまいります。
〇吉田敬子委員 家事育児負担軽減策の外部サービスは、私はずっと訴えさせていただいて、検討しますとか、今回は、検証しますということをずっと言われるのですが、いつまで検討しているのでしょうか。私は、もっと踏み込んだ支援が必要だということでいつもお伺いしているのですけれども、先ほど、国の事業も一つ例として挙げたのですが、こういう事業も、岩手県は恩恵がほとんどないわけです。こういうサービスを国はやっているのですけれども、岩手県で私たちは使えません。そういう事業を利用できるようにしてほしいということをずっとお話しさせていただいておりますが、具体的な踏み込んだ支援策を、改めてお伺いしたいと思います。
〇野原企画理事兼保健福祉部長 吉田敬子委員から今回御紹介いただきました国のベビーシッター事業については、知事から御答弁申し上げましたとおり、県内の担い手の方たちが少ないということで、利用したい方が、なかなかアクセスができないという状況になっています。
 これは、先ほど委員から産後ケアのお話をいただきましたけれども、共通の課題だと考えております。
 子育て支援サービス、いわゆる公的な支援として、知事から御答弁申し上げました、延長保育や一時預かり、病児保育、ファミリーサポートセンターなど、13事業を市町村で展開しており、県としては、こういった公的な市町村の取り組みをきちんと展開をしていくと。プラス、国が今回展開いたしましたベビーシッター事業をそれぞれの利用者の方々が一番利用しやすいような形でアクセスできるという姿を目指して、我々もさまざま関係機関と連携しながら、取り組みを進めてまいりたいと思います。
〇吉田敬子委員 現金給付型の在宅育児支援金もありがたいと思うのですけれども、給付型サービスを選べるような仕組みをつくっていただきたいのです。
 お金をいただくのはありがたいのですけれども、いつも言われるのが、家事育児負担軽減策ということで、いかに家庭と仕事を両立するかということが、今、私たち子育て世代の負担になっている。そのお金を使ってサービスを利用したいという子育て世代はたくさんいると思いますので、子育て支援策が全国トップレベルということでありますから、次に期待したいと思います。
 令和5年度設置の少子化対策監は自然減の対策を担っていると考えますが、なぜ農林水産部や県土整備部には配置されていないのか、お伺いいたします。
〇野原企画理事兼保健福祉部長 少子化対策監についてお尋ねをいただきました。
 令和5年度の組織体制整備に当たりましては、子ども子育てに係る経済支援対策を含む少子化対策全般を、集中的に進める役割を担う企画理事を設置したほか、少子化対策監を設置し、いわてで生み育てる支援本部において決定する自然減対策に係る取組方針等をもとに、子育て支援等に向けた、具体的な政策立案を行っているところであります。
 自然減対策については、知事を本部長とし、副知事と農林水産部長、県土整備部長も含む本庁各部局長等で構成するいわてで生み育てる支援本部において、総合調整を図りながら、全庁を挙げた取り組みを推進しているところです。
 そのため、少子化対策監を配置していない部局等におきましても、支援本部において決定する取組方針等に基づいて、所管する少子化対策に関連する事業推進の役割を担っており、全庁を挙げて、少子化対策を推進していく体制を整備しているところであります。
〇吉田敬子委員 次に、教育関係についてお伺いいたします。
 教育支援センターについてお伺いしたいと思います。不登校児童生徒を支援する県が設置する、高校生のみを対象とした教育支援センター―ふれあいルームがありますが、これまでに、来所相談において、学習活動や体験活動を通じて、自立支援を受けている児童生徒はおりますが、ふれあいルームを継続的に利用するに至ったケースは、平成29年3月の高校生1件のみと伺っています。広島県の教育支援センタースクールSは、小中学生も支援対象とし、200人もの児童生徒が通っています。
 これまでの相談件数の推移、利活用に当たっての課題をどう捉えているかお伺いいたします。
〇菊池副知事 県の総合教育センターでは、電話、来所等による相談に対応しておりまして、相談件数は、令和2年度1、812件、令和3年度1、634件、令和4年度1、319件、そのうち不登校の相談件数は、令和2年度504件、令和3年度225件、令和4年度344件となっております。
 校種別の相談件数の内訳は、令和4年度は小学生329件、中学生414件、高校生466件、その他110件となっており、そのうち不登校の相談件数は、小学生81件、中学生178件、高校生85件となっております。
 このように校種を問わず不登校を初めとする多くの相談に対して、学校心理士の資格を有する研修指導主事や自立支援相談員等が、個々の事案に応じて、助言や支援を行っているところでございます。
 一方、児童生徒の居場所であるふれあいルームは、これまで利活用されておらず、不登校の悩みや不安を抱える児童生徒や保護者への、さらなる周知に取り組んでいく必要があると認識しております。
 今年度、県教育委員会では、総合教育センターのホームページをリニューアルする中で、改めて、ふれあいルームの周知を行ったほか、さまざまな機会を捉え、各学校に対して情報提供するなど、支援を必要とする児童生徒の利活用の促進に努めていくと聞いているところでございます。
〇吉田敬子委員 23の市町が設置済みの教育支援センターの在籍児童生徒数は、一番多い盛岡市が12人、ほとんどが1桁台で、3市町が0人となっていて、利用者が少なく、充実した事業とは言えないと思います。
 県は、今年度新たに二つの市町に教育支援センター設置への補助を行いますが、利用されないセンターを設置しても意味がないのではと感じます。人材も場所も既に確保された、既存のフリースクールへの補助を行う等、支援、育成、連携を図っていくことも重要と感じます。
 県の教育支援センターは、小中学生への対象拡大やオンライン対応など、また、各教育支援センターも、機能の見直しや強化が必須だと考えますが、県の所感をお伺いいたします。
〇菊池副知事 教育支援センターの機能強化に係る御質問と受けとめておりますが、県のふれあいルームは、原則、高校生を対象としており、小中学生については、市町村の教育支援センターで支援してきているところでございますが、小中学生についても、相談内容等に応じて、県のふれあいルームで対応する環境を整えているところでございます。また、高校生には、1人1台端末等を利用した、オンラインによる授業の実施も可能な体制を整えているところです。
 吉田敬子委員御指摘の市町村が行う教育支援センターの設置や機能強化に対する支援についてでございますが、小中学生へのケアの充実が必要なことから、今年度は、二つの市町に支援を行い、平泉町においてはセンターの新設を、花巻市においてはセンター機能の強化を図ったところでございます。
 花巻市の例について申しますと、家庭訪問やフリースクールとの連携に加え、多様な場を活用し、相談を行うアウトリーチ型支援の充実のためであると聞いているところでございます。
 県教育委員会では、市町村の教育支援センターが、学校や家庭、フリースクール等の民間団体等との連携を一層促進できるよう支援するとともに、ふれあいルームについても、利用促進や関係機関とのさらなる連携に向け、機能の見直しを図っていくと聞いているところでございます。
 今後も、市町村と連携して、誰一人取り残さない、学びの保障に向けた、学びの場や居場所の確保に取り組んでもらいたいと考えております。
〇吉田敬子委員 次に、いわての森林づくり県民税を活用した、子供たちへの取り組みについてお伺いいたします。
 令和4年度のいわての森林づくり県民税の税収額は7.5億円程度、そのうち7.2億円程度を基金に積み立てておりますが、それを積み立てた基金は、令和4年度末で約19.7億円の残高が生じています。持続可能で、希望あるいわてを実現するための行財政改革に関する報告書でも、創設から約15年が経過し、この間、県の重点テーマとしてのグリーン社会の実現などの行政需要の変化や、今般の森林環境税の創設等の動きを踏まえると、森林づくり県民税のさらなる使途拡大、条例の趣旨や目的の見直しも含めて、検討する時期に来ていると提言されています。
 ことし6月に陸前高田市で行われた全国植樹祭は、本当に私も感動いたしました。子供たち世代へ豊かな森林資源を託す取り組みはもちろんですが、森林や自然環境への身近な学習機会の確保こそ重要ではないかと感じています。県内の緑の少年団活動も減少し、大変残念に感じておりますが、木育の推進や学習会の開催、森林公園の機能強化など、これまでも、使途拡大を図ってきていただきましたが、令和4年度の県民税を活用した子供たちへの取り組み実績を、どう評価しているかお伺いいたします。
〇菊池副知事 県では、児童生徒等の森林への理解醸成を図るため、これまで、森林環境学習の機会提供や、教育施設等への県産木材製品の導入、森林公園の機能強化などに取り組んできたところでございます。令和4年度は、9市町村17団体が、児童生徒を対象に実施した森林環境学習等を支援したほか、15市町村の小中学校27校において、森林学習会を開催したところであります。
 また、いわて子どもの森や保育所など18施設に、木製玩具等を導入したほか、県民の森など3カ所の森林公園、就学前の幼児も木製品と触れ合うことができる、木育スペースを整備したところです。
 こうした取り組みにより、新たに小学校8校が森林環境学習に取り組んだほか、昨年度の森林公園の利用者は、親子連れを中心に、前年度の1割増の14万人となっており、子供たちの森林環境学習への参加や、木材に触れる機会の増加など、木育の推進や森林づくりへの理解醸成につながっているものと評価しております。
〇吉田敬子委員 令和元年10月から、幼児教育、保育無償化が実施され、保育、幼児教育の質の向上が要請されています。平成30年10月には、森と自然の育ちと学び自治体ネットワークが設立されて、岩手県もその年から加入し、これまでの質疑では、県民税を活用した森のようちえん事業を私は提言させていただいております。滋賀県や長野県等では、自然保育、幼児教育へ県民税を活用した事業がありますけれども、不登校児童生徒を対象にした自然体験課外活動への補助や幼児教育など、県教育委員会とも連携し、子供たちへの投資としての事業の使途拡大も、検討していただきたいと考えておりますが、県の所感をお伺いいたします。
〇菊池副知事 豊富で多様な森林を有する本県におきましては、森林からさまざまな恩恵を受けており、児童生徒を初め県民が森林への関心を高め、理解を深めていく取り組みは重要と考えております。御提案の森林等を活用した自然体験活動は、子供たちの森林への関心や保全意識を高めるとともに、主体性や協調性を育む教育的効果が期待される一方、子供たちの野外での安全な活動を確保するためには、サポートする引率者のスキルやリスクマネジメント力を高めていくことも課題となっております。
 県では、これまでいわての森林づくり県民税を活用し、児童生徒を対象とした森林環境学習を334回、指導者を対象とした研修会を24回開催したところでございます。
 また、ハード面では、県内5カ所の森林公園が、森林環境教育の拠点となるよう、遊歩道805メートルや木育スペース4カ所の整備などを進めてきたところでございます。
 さらに、森林環境学習の機会を提供するため、いわて森のゼミナール推進事業の対象に、令和3年度から保育関係団体も対象となるよう拡充したところでありますし、今年度は、新たにフリースクールも参加を予定しているなど、県としては、今後とも、幼児を含め幅広い年齢層の県民が、森林の役割等を学ぶ機会を得られ、また、子供たちの豊かな体験活動の充実が図られるよう取り組んでいく考えでおります。
〇吉田敬子委員 ひとにやさしいまちづくりについてお伺いいたします。
 県では、平成7年に制定されたひとにやさしいまちづくり条例に基づき、随時、推進計画を策定してきています。ひとにやさしいまちづくりの推進の基本となるのは、高齢者や障害者だけでなく、妊産婦、子供、外国人、性的マイノリティ、けがや病気を持つ方など多様な方へ、超高齢社会、人口減少、少子化、性の多様性など、社会変化に応じた更新がなされてきたと認識しております。
 多様な主体の社会参加を進めようとする中、暮らしやすいまちや使いやすい建物がより一層求められておりますが、本県のまちづくりユニバーサルデザインガイドラインは、平成16年に初めて制定されて以降、更新されないままであります。平成16年3月策定のまちづくりユニバーサルデザインガイドラインを更新していくべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
〇八重樫副知事 このガイドラインは、全てのひとにやさしいまちづくりを実現するため、設計者や施工者等の手引書として、平成16年に策定したものであり、ガイドラインの活用により、まちづくりにおけるユニバーサルデザインの普及促進を図ってきました。ガイドライン策定から20年近くが経過し、個人の生き方やニーズが多様化する中、利用する方々の潜在的なニーズ等を踏まえるとともに、インクルーシブなどの新たな視点も取り入れる必要があると承知しています。
 県としては、来年度、県の行動指針となるひとにやさしいまちづくり推進指針の策定を予定していることから、まちづくりユニバーサルデザインガイドラインの内容を検証し、更新について検討を行ってまいります。
〇吉田敬子委員 知事は、所信表明で、多くの公共施設の老朽化が進む中、更新に当たっては、インクルーシブなどの新しい視点を取り入れますと発言されましたが、インクルーシブとは、具体的にどのような構想を描いているのかお伺いいたします。
〇達増知事 公共施設の改修や更新においては、高齢者や障害者等の障壁をなくすバリアフリー化や、誰もが使いやすい仕様とすることが重要であることから、公共施設等総合管理計画に基づき、ユニバーサルデザインを踏まえた整備に取り組んできましたが、これからは、個人の多様性にも根ざして、全ての方々がともに利用できる、インクルーシブの考え方を取り入れていくことも必要と認識しております。
 このため、例えば、福祉総合相談センターの移転整備に当たっては、利用者一人一人の特性に応じた施設となるよう、児童居室の個室化や専用の相談室の整備を検討しているほか、障害者支援施設中山の園については、入所者本位や地域との共生に配慮し、地域に開かれた施設として、具体的に検討を進めていく予定です。
 今後の公共施設の整備においても、施設ごとの中長期的なあるべき姿を整備しつつ、障害のある方、高齢者、外国人といった、実際に利用する方々の課題や潜在的なニーズを踏まえ、誰もが使いやすいデザインを生み出す、インクルーシブの考え方も取り入れながら、あり方を検討していきたいと考えております。
〇吉田敬子委員 公共施設はもとより、公共的施設もそのとおりですし、今回、まちづくりユニバーサルデザインガイドラインを新たに更新していただくということで、大変感謝していますが、都市公園などを更新する際に、今、例えば花巻広域公園や御所湖広域公園で、遊具が老朽化している中で、遊具を更新する際には、インクルーシブの視点で、例えば障害があっても利用できるような遊具というのが、今は全国的にふえているので、そういう視点に立ってつくっていっていただきたいということを、これまでも取り上げていただいておりますが、まちづくりユニバーサルデザインガイドラインを策定する際には、そういう姿勢が必要だと思います。知事はインクルーシブの視点でということで、公共施設も取り上げておりますので、そこについても期待させていただきます。
 次に、グローバル人材の育成についてお伺いいたします。
 ふるさと振興部国際室では、高校生を対象にした海外派遣研修を平成25年度から、大学生を対象にした研修を平成29年度からやっております。県教育委員会では、国の補助金を活用し、高校生を対象とした留学支援を平成26年度から、小中高生を対象としたオンラインによるイングリッシュワークショップを令和4年度から行っております。
 これまでの取り組み実績をどう評価しているのかをお伺いいたします。
〇熊谷ふるさと振興部長 県では、北米等への海外派遣事業及び中国雲南省との相互交流事業を実施しており、これまで、高校生132名を派遣しているところであります。また、県教育委員会では、国の補助金を活用した、高校生の留学支援事業により、これまで、86名の海外留学を支援。外国人講師や参加児童生徒と英語で未来を語り合う、英語で未来を拓くイングリッシュワークショップを令和4年度から実施し、62名の参加者があったところであります。参加した生徒においては、英語力の向上や異文化の理解を深めるなど、成長が見られたと伺っております。
 また、いわてグローカル人材育成推進協議会による、大学生の留学支援については、これまで23名の学生の海外留学を支援してまいりました。現在、卒業者13名のうち5名が県内企業等に就職するなど、一定の成果が得られているものと考えております。
〇吉田敬子委員 知事は、所信表明で、今こそ岩手の価値や魅力を全国海外の人と共有するため、世界に打って出るときです。岩手の持つ価値や魅力を最大限に磨き上げ、誇りを持って世界に発信し、希望郷いわてのその先にある、まだ見たことのない景色に向かって歩みを進めましょうと発言されました。
 若者の意識調査では、アメリカ、イギリス、韓国、ドイツでは、5割以上が留学を希望する一方、日本は5割超がしたいと思わないと答えています。また、国の平成22年調査では、留学を経験した高校生の84%が再び留学したいと答えております。大学に入ってからでは遅いということで、国は、高校段階の留学目標を設定しております。
 諸先輩方の時代は、女性の船など、さまざまな海外派遣事業があったと私は記憶しています。いろいろ資料を調べていただいたのですが、かなり昔のため出てこないということでしたけれども、かなりあったと私は記憶しております。
 今の若者や子供たちのために、岩手県政150周年記念としても、これまでの事業を総合的にブラッシュアップさせた、産学官連携の組織を設置してはと考えますが、知事の御所見をお伺いいたします。
 姉妹都市もりおか市民会議からも、こういった若者、子供たちへの提言があったと伺っておりますが、知事の御所見をお伺いいたします。
〇達増知事 ニューヨークタイムズ紙で盛岡市が注目され、海外で活躍する本県出身選手が連日ニュースで取り上げられるなど、岩手県が世界とつながる機会がふえてきており、グローバル社会で活躍するとともに、外国人県民も暮らしやすい地域づくりを担う若い人材を育成、活用する必要性が高まっています。
 県では、青少年を対象とした海外派遣、外国人講師とのワークショップを通じ、英語力の向上やグローカル人材の育成に取り組んでいるほか、県内の産学官連携組織である、いわてグローカル人材育成推進協議会を設立し、学生の留学支援などを実施してきております。
 また、県内では、海外の姉妹都市との青少年交流など、市町村や学校単位、あるいは各種団体が、それぞれの問題意識やニーズに基づき、さまざまな取り組みが行われていますが、多様な主体が、岩手県の持つ価値を改めて認識し、誇りを持って世界に発信していくことが重要です。
 県としても、こうした取り組みと連携を図るとともに、いわてグローカル人材育成事業の拡充について検討するなど、若者の海外への挑戦をエンパワーしてまいります。
〇吉田敬子委員 グローカル人材育成については、拡充していただけるということで、大変ありがたいですが、具体的に何を拡充されるおつもりなのか、もしあれば、お伺いしたいと思います。先ほどの質問でもお話しさせていただきましたけれども、昔は、女性の船など、皆さん公的資金で海外に行かれていたのですが、今、子供たちも含めて、若い人たちが行かれるような状況にない中、岩手県政150周年記念としても、大学生までですけれども、20代、30代も含めた事業を考えていただきたいと考えておりますが、最後に改めて知事にお伺いしたいと思います。
〇達増知事 女性の船、また、青少年の船ですか、私より上の世代に、その経験者の方々がいらっしゃって、この経験を、地域振興や、また、特に地域の国際化などに活用され、活躍している皆さんがいらっしゃいまして、そうした皆さんの経験を引き継ぎ、そして、その志も引き継いでいくことが重要なのだと思います。
 今、交通や通信技術につきましては、その当時とは、比べ物にならないくらい発展しているわけでありまして、今を生きる我々が、これをフルに活用しながら、岩手県と世界が一つになって、岩手県の地域資源を海外の皆さんとも共有しながら、岩手県を開発していくことが可能になっておりますので、特に岩手県の若い人たちが活躍しながら、そういうことがどんどんできていくように進めていきたいと思います。
〇柳村一委員長 次に、ハクセル美穂子委員。
   〔ハクセル美穂子委員質問者席に着く〕(拍手)
〇ハクセル美穂子委員 いわて県民クラブ・無所属の会のハクセル美穂子でございます。会派を代表して総括質疑をいたします。どうぞよろしくお願いいたします。
 初めに、このたびの選挙で5期目の当選を果たされた達増知事に敬意を表したいと思います。おめでとうございます。
 選挙中、知事は、先進的な子育て支援策を行い成功された元明石市長の泉房穂さんと、県内各地で演説されていました。泉元明石市長のように積極的な姿勢で財源を確保し、人口減少、少子化対策に取り組んでくだされば、合計特殊出生率1.21という大変厳しい状況の岩手県にも本当の希望の光が見えてくると思っていますので、誠意ある御答弁をどうぞよろしくお願いいたします。
 これまで我が会派では、子供の医療費助成を少子化対策、子育て支援策の一つとして捉え、県の助成要件を拡充するべきだと知事に訴えてまいりました。そして、このたび達増知事は、全国トップクラスの子育て支援策の展開と拡充を岩手県で実行することを公約に掲げて5期目の選挙に挑み、当選されました。
 これは、令和4年度までの政策が十分ではなかったという御認識が知事のお考えの中にあって、このような公約を打ち出されたのだと私は感じました。これまでにない積極的な子育て支援策を展開していくのだという決意で、子育て支援を選挙公約の一番目に掲げられた知事の子育て支援策に対するお考えを御確認いたしたいと思います。
〇達増知事 県では、これまでも、安心して子供を生み育てられる環境をつくるため、妊娠、出産、子育て期にわたる、切れ目ない支援体制の構築や、子育てにやさしい職場づくりなど、さまざまな取り組みを進めてまいりました。
 令和4年度には、新たに、産後ケア利用料無償化を行う市町村への補助、いわて幼児教育センターの設置、全国4県のみで行っている、妊産婦医療費助成や妊産婦のアクセス支援、結婚サポートセンター―i-サポによる結婚支援などに取り組んでまいりました。
 しかしながら、本県の合計特殊出生率は依然として低下傾向が続いており、その背景には、仕事と子育ての両立の難しさ、子育てや教育に係る費用負担の重さなどさまざまな要因があり、さらに、コロナ禍における行動制限等が、結婚や出生の動きに影響した可能性もあると認識しております。
 こうした状況を受けとめ、これらのさまざまな生きにくさを生きやすさに変えていく、子ども子育て支援策の一層の充実が必要であると考えたところであります。
〇ハクセル美穂子委員 令和4年度、子供の医療費助成の県補助実績は3億6、227万円余でした。5年前の平成29年度が近年で一番補助額が高かった年ですが、その年の補助実績は5億1、756万円余で、その差は1億5、528万円余です。
 該当する子供の数も、助成額と比例し、大きく減少しています。平成29年度は、受給者証交付者数の月平均が6万8、726人で、令和4年度は6万1、372人、この5年間で、月平均で7、354人も補助に該当する子供が減っております。この子供の医療費助成の減少要因を、知事はどのように捉えられているのでしょうか。また、5年間で減少したこの1億5、528万円余について、さらなる子供の医療費助成の拡充にとお考えにならなかった理由について、お伺いいたします。
〇達増知事 平成29年度と令和4年度の実績を比較しますと、子供以外の妊産婦、ひとり親、重度心身障害児・者の医療費助成全体の受給者証交付人数は16%の減、補助額は10%の減であったのに対し、子供医療費助成については、受給者証交付人数は11%の減、補助額は30%の減となっており、他の制度よりも補助額の減少幅が大きくなっています。
 この要因としては、5年間で対象年齢となる子供の人口が減少したことに加え、国の審議会では、コロナ禍において、特に、小児科や耳鼻咽喉科の医療費が減少していることが報告されており、子供において、強い受診控えが生じたことが影響していると考えられます。
 子供医療費助成の拡充については、本県財政を取り巻く環境が、人口減少等を背景とした歳入の減少や、高齢化等に伴う社会保障関係費の増加により、当面、厳しい状況が続くと見込まれていることもあり、県の政策全体の中で、総合的に検討する必要があるものと考えます。
〇ハクセル美穂子委員 拡充を考えなかった理由については、御答弁いただいていませんので、御答弁をいただきたいと思います。
〇達増知事 コロナ禍による受診控えであったとすれば、これは、本来、受診すべき子供たちには受診してほしいところであり、そうなった場合には、この医療費助成が活用されるものと考えます。
〇ハクセル美穂子委員 コロナ禍による受診控えではないという事実が、今年度と比べて出た場合、減っている場合は拡充されるのでしょうか。
〇達増知事 子供医療費助成の拡充については、県の政策全体の中で、総合的に検討する必要があるものと考えます。
〇ハクセル美穂子委員 今の答弁では、そもそもこの拡充を考えてないということで、よろしいでしょうか。
〇達増知事 今年度の予算で示したような施策を考え、そして、予算化したところであります。
〇ハクセル美穂子委員 今年度は増額になっておらず、特に拡充されていませんので、拡充は考えてないということだと思います。
 それを踏まえてお聞きしますけれども、これまでの私の質問への答弁を振り返りますと、達増知事は、令和4年12月定例会での子供の医療費、所得制限に関する質問に対しまして、所得制限で対象にならない方々は、比較的所得があるという認識をお答えになっています。
 しかし、令和4年、賃金構造基本統計調査における本県の一般労働者の賃金は月額25万2、000円余です。この金額は全国で下から4番目の水準であり、賃金水準は、他県と比較しても低いと言わざるを得ません。また、この調査で、本県と同程度の賃金水準である沖縄県は、子供の医療費助成の所得制限がなく、賃金水準が低い県において、あえて、子育て中の御家族を支援するという考えで、所得制限を撤廃しているという事例もあります。
 知事は、子供の医療費助成制度で、岩手県が設けている所得制限の金額は、適切な金額とお考えでしょうか。お伺いいたします。
〇達増知事 県の医療費助成は、昭和48年度から重度心身障害児・者や妊産婦を対象とした、いわゆる福祉的な制度として始まったものであり、社会的公平を図るため、受益者の応能負担の考えを取り入れ、一定の所得制限や自己負担額を設けて、実施してきたものであります。
 子供の医療費助成についても、同様の考え方に基づき、現在は、一定以下の所得のひとり親家庭等に支給される児童扶養手当の所得上限をベースに設定しているものであります。
〇ハクセル美穂子委員 県は、子育て支援というよりは、福祉的制度というお考えの中で、助成をしているという御答弁だったと思います。
 それをベースに考えているので、県は、相変わらず現物給付のみの拡大ということでやっておりますけれども、今年度は、県内の市町村の思い切った努力のかいがあって、子供の医療費助成の助成要件がさらに進んできました。
 市町村が支援の拡充に踏み切った理由について、これはどういう理由でと、知事はお考えでしょうか。お伺いいたします。
〇達増知事 子供の医療費助成の拡充は、少子化対策や子育て支援策の一環として、人口減少が深刻な小規模町村が先行して取り組み、現在は、全ての市町村で、それぞれの政策的判断により、助成対象の拡充に力を入れて取り組んでいるものと認識しております。
〇ハクセル美穂子委員 市町村は、子育て支援の延長の部分も考えて、子供の医療費助成を拡充してきていると私は思っていますが、先ほどの御答弁だと、知事も同じ考え方ということでよろしいですか。
〇達増知事 子供の医療費助成の拡充は、少子化対策や子育て支援策の一環として、人口減少が深刻な小規模町村が先行して取り組み、現在は、全ての市町村で、それぞれの政策的判断により、助成対象の拡充に力を入れて取り組んでいるものと認識しております。
〇ハクセル美穂子委員 市町村は、子育て支援策としてのサイドを見ながら、この子供の医療費助成制度をそれぞれの市町村の考え方で広めているということで、県は、医療費の給付という福祉的な考え方なので、所得制限については、広げていくことは考えてないということだと思います。
 全国トップクラスの子育て支援とうたいながら、今回当選された知事ですけれども、子供の医療費助成に関し、全国都道府県とこの医療費助成制度を比較してみますと、岩手県が実施している小学校就学前よりも、助成要件をさらに拡充している県は、全国で既に23県あります。
 そして、本県と同様に、小学校就学前までの助成としているのですけれども、所得制限を撤廃している県は8県あります。31県は、確実に岩手県よりもよい助成要件で子供の医療費助成制度を実施しています。
 子供の医療費助成制度だけ見ますと、岩手県は、全国でもトップクラスではなくて、平均以下ということです。私は、全国トップクラスの子育て支援の展開という公約を拝見したときに、当然、子供の医療費助成についても何らかの拡充があるものと考えていましたが、この点は、いまだに拡充はありません。
 現物給付と県の助成が拡充されたということは違いますので、知事、全国トップクラスの子育て支援というのは、3歳未満保育料の無償化と在宅育児資金だけを示しておられるのか、それをもって全国トップクラスの子育て支援とするという、その根拠を改めてお伺いしたいと思います。
〇達増知事 全国トップクラスの子育て支援についてでありますが、本年2月の令和5年度当初予算案の公表時におきまして、第2子以降の3歳未満児に対する保育料の無償化や、在宅育児支援金の支給、医療費助成の高校生等への現物給付拡大などの施策を通じて、全国トップレベル水準の子ども子育て環境の実現を目指すと発表いたしました。その後の知事演述等においても、そのような趣旨で全国トップクラスの子育て支援と述べてきたところであります。
 なお、子供医療費助成における所得制限については、33市町村のうち、28市町村で所得制限なし、5市町で一部所得制限なしと、市町村が所得制限なしの医療費助成をしておりますので、子育てをしようとする県民にとりましては、この岩手県においてかなりの子育て支援を受けることができるようになっておりまして、そのことは、ぜひ県民の皆さんに知っていただき、特にこのコロナ禍によりまして、婚姻数の急減や、また、出生数の急減、さらに、小児科の利用とか、また、先ほどの議論の中では、不登校の要因にも、コロナ禍ということが指摘されていて、そうしたコロナ禍によって、経済的にも困り、また、心理的にも社会的にも行動が制限されているような皆さんに、希望する行動をとっていただきたいと思うものであります。
〇ハクセル美穂子委員 市町村の努力で、子供の医療費助成の所得制限の撤廃とか、それから、現物給付の仕組みについては、県がそれに乗っかってやりましたけれども、各県内の各市町村がかなり努力して、子供の医療費助成については、拡充してくださっていますと言ってもいいぐらいやってくださっています。
 また、今年度もかなり進んできました。でも、全て市町村がその財源も確保して、所得制限の撤廃とか、それから、受給者負担の撤廃もやっているところもあります。たくさんの市町村が一生懸命この財源を見つけてやってくださっている。だから、全国トップクラスに見えるけれども、これは市町村の力でやっている全国トップクラスの医療費の支援だと私は思っているのですけれども、知事もその認識でよろしいですか。
〇達増知事 私も、機会あるごとに、県と市町村が連携して、保育料の無償化や在宅育児支援金の支給もそうでありますし、現物給付の拡大もそうでありますし、もちろん、子供医療費助成についても、県と市町村が力を合わせてやっていることは、機会あるごとに訴えているところであります。
 そして、基本は、結婚しよう、出産、子育てをしようという世代の方々、また、それを取り巻く皆さんが、県や市町村によって、そのような支援をされているという、これをよりよいものにしていくことだと思いますので、県と市町村が連携しながら、さらに、充実を図ってまいりたいと思います。
〇ハクセル美穂子委員 例えば努力をしていても、なかなか財源が見つからなくて、できないでいる市町村が、いまだに、令和3年でも3市町ありますけれども、そういったところは、市町村の努力が足りないということになってしまうのでしょうか。生きにくさを生きやすさに変えていくということをテーマにしている知事は、手助けはしないのでしょうか。そこについてお伺いします。
〇達増知事 基本的には、いかに県民に寄り添い、また、市町村住民に寄り添いながら、子ども子育て支援を行っていくか、拡充していくかということだと思いますし、それぞれの市町村、例えば人口がむしろふえているという市町村などの特殊事情もございましょうから、さまざま市町村によっていろいろな判断があるのだと思います。そういう市町村の判断もそれぞれ尊重しながら、県と市町村が連携していくことが必要なのだと思っております。
〇ハクセル美穂子委員 市町村の判断にお任せするので、県は、判断したことに対してはやるけれども、こちらから手は出さないということでよろしいですか。
〇達増知事 ことしの保育料無償化、在宅育児支援金の支給、そして、高校生等への現物給付拡大など、これは、県の新たな財政措置、予算措置があるものでございますし、県は県で、さまざま子育て支援に財政出動を行い、市町村もそれぞれ財政出動を行い、それをうまくすり合わせながら、それぞれの議会に対して了承をいただき、それぞれの住民、県民に対して責任を果たしていくことが求められていると考えます。
〇ハクセル美穂子委員 それでは、参考までに、私の選挙区の市町の子供の医療費、令和4年度決算額を御紹介したいと思いますけれども、雫石町の場合は、令和4年の決算額3、833万6、233円、うち県の助成額は331万648円です。これは18歳までの所得制限の撤廃をしている町ですので、10倍以上の額になっていて、そこは町単独で措置してやっているということです。
 そして、隣の滝沢市は、18歳まで所得制限を撤廃とか全くできないところです。3歳未満児までは所得制限は撤廃していますが、それ以降は県と同じ要件で所得制限があるところなので、ほとんどの御家庭はお金を払っているという状況ですが、それでも、滝沢市の子供の医療費助成の令和4年の決算額は9、503万円余、このうち県の助成額が2、434万円余。18歳まで、所得制限なしに滝沢市でやろうとしたら、本当に多額の金額がかかるということで、なかなかできないので、ずっと市町村要望の最初に滝沢市は、県の助成拡充を置いてきています。
 こういったところ、生きにくさは本当にたくさんあると思うのですけれども、そこは、県は手助けされないのですか。知事としてはどういうふうにお考えですか。
〇達増知事 明石市長は、とにかく市としてやったということだったと思いますけれども、ただ、県は、財政上厳しいという市町村事情については、日ごろからそれぞれ伺っているところで、市町村からの要望の中にも、さまざま市でやっている事業について、県の財源でということは受けておりまして、それらは機械的に拒絶するものではありません。それぞれの市町村、財政的に困っていることについては、さまざまその理由や背景なども理解しながら、ともに取り組んでいくべきことと考えております。
 そういう中で、今年度におきましては、保育料無償化、在宅育児支援金支給、医療費助成の高校生等の現物給付拡大ということを行いまして、医療費助成に加えて、今申し上げた三つによって、全国トップレベル水準ということを公言できるような、岩手県の子ども子育て支援になったと思っておりますので、そういう意味では、市町村のおかげでそこまで来られているところもありますので、引き続き、県と市町村が連携しながら、子ども、子育て支援に取り組んでいきたいと思います。
〇ハクセル美穂子委員 市町村のおかげでという言葉が今出ましたけれども、そうであればこそ、この5年間で、減額した1億5、000万円は、私は、子供の医療費助成に少しでも再投資していくような考え方を持っていただきたかったと思っています。
 小学校就学前までの県の助成要件を所得制限なしとした場合に必要な金額というのも1億5、000万円程度です。18歳までできないならば、少しやるだけでも市町村に対するかなりの手助けになっていますし、滝沢市のように、なかなかできないところにとっても、この部分だけ、小学校就学前までは、きちんと全ての子供さんたちが医療費の助成を受けることができると、県内でも、大きな格差があるところを是正することができたと私は思っているのですけれども、それをしないで、保育料の無償化に手をつけた。これだって2分の1補助ですから、2分の1は市町村が財源をプラスで確保しなければならない。そして、所得制限もありません。なぜ医療費のほうは所得制限ありで、保育料の無償化は所得制限なしなのでしょうか。そこはどういう整合性があっての制度設計なのか、その点についてもう一度、知事にお伺いしたいと思います。
〇達増知事 子供を生みたくても生めないという大きな理由が、経済的な理由、そして、希望する子供の数は2人以上であるにもかかわらず、実際には、2人未満になっているという実態から、2人目以降の保育料、そして、在宅育児支援金の無償化を行い、かつ、子供の医療費助成の現物給付を高校生までということで、もともと賃金がなかなか伸びない。
 また、若い皆さんの税や社会保険料などの負担はふえ、賃金は横ばいですので、自由に使えるお金はどんどん減ってきているという実態。そこにコロナ禍があって、物価高騰もあるということで、それを乗り越えて、出生率を引き上げ、また、社会減の現象にもつなげていくことができるようにと考えて、そういう事業を実施しているところであります。
〇ハクセル美穂子委員 賃金が伸びないという点で、先ほど、私は沖縄県の例をお話しさせていただきました。賃金が伸びないからこそ、医療費のところでも、所得制限を撤廃している県もあると。そして、そういう理由もプラスして、市町村はそういう所得制限撤廃しているところもあるのですけれども、できないところもある。やりたくても、なかなか財源が見つからなくてできない。そこの格差がどんどん開いているという状態をよしとしているのかということ。あわせて、なぜ所得制限ありとなしなのか、もう少しはっきりとした理由をお聞きしたいと思います。
〇達増知事 滝沢市とそのほかの市町村との間の格差ということをおっしゃっているように聞こえているのですけれども、滝沢市における子育て環境と、それ以外の市町村における子育て環境の間に、格差がどのくらいあるのかということなのだと思います。滝沢市としても、さまざま保育園、幼稚園の整備状況とか、まさに子供を預かるような体制の状況とか、また、賃金水準とかもあるのかもしれません。いろいろなことを考慮して、市として政策を決定し、市議会の議決を経て、そのような予算を決定しているものと理解しております。
 もちろん、財政上の大変さということに関しては、その支出をしている市が、財政的な格差はあり得るのかもしれませんけれども、ただ、その財政上の格差は、また、どれだけ住民税があるのかとか、固定資産税があるのかとか、そういうこととの関係もあると思いますので、市町村財政については、県でも滝沢市も含めきちんと見ておりますので、随時、必要な協力はしていきたいと思います。
〇ハクセル美穂子委員 随時、必要な協力をということで、その協力を毎年滝沢市は言っているという点、どうぞしっかりと見ていただきたいと思います。
 特に、今回の選挙の中で知事はツイートをされているのです。岩手県は、市町村と協力して、今年度から、高校生まで医療費無料化と第2子からの保育料無料化を全県的に行う体制になり、明石市の五つの無料化に追いつきつつありますが、というようなXのツイートをされています。これを見た滝沢市の方が本当に驚いて、無料化になるのですかと私に聞いてきました。残念ながら違いますと、そこは違うのですという説明をしましたけれども、本当に申しわけなくてしようがなかったです。
 こういう誤解されるようなツイートをしては、私は今の答弁からだと、だめなのではないかと思います。こういう答弁をされるのであれば、こういうツイートだって、医療費に関しては、市町村のおかげでやっている部分がある。ただ、ほかの部分は拡充していきますとか、そう言わないといけないと思います。
 そうでもないのに、全国トップクラスの子育て支援だとか、そういうことを言い続けていると、本当にオオカミ少年みたいになってしまいますので、ぜひ、しっかりとした支援策をやっていただきたいと思います。
 最後に、もう一つお話ししますけれども、知事、子供の医療費については、本当に福祉として考えていらっしゃると思います。なぜならば、県で出している、子ども子育て支援室の令和5年度の対策の中には、少子化対策の推進のほうに、子供の医療費は入っていませんでしたので、福祉としてやっている。けれども、きちんと財政的な支援もしてほしいと思いますので、よろしくお願いをして、終わりたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
〇柳村一委員長 この際、世話人会の申し合わせにより10分間ほど休憩いたします。
午後4時20分 休憩
午後4時37分再開
〇柳村一委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。次に、斉藤信委員
   〔斉藤信委員質問者席に着く〕
〇斉藤信委員 日本共産党の斉藤信でございます。県政の緊急課題について、公約実現の立場から、知事に質問いたします。
 物価高騰から県民の暮らしと営業を守ることは、最も切実な課題であります。あらゆる分野で物価が高騰しています。物価高騰の現状と県民への暮らし、事業者の営業に与えている影響、医療、介護施設等社会福祉施設に与えている影響を、どう把握しているでしょうか。
〇達増知事 県が先月公表した岩手県の景況では、県内の景気は、緩やかな持ち直しの動きが続いているとしているものの、盛岡市の消費者物価指数は、食料品や光熱費等の上昇の影響を受け、令和4年10月以降、プラス3%を超える水準で推移しており、直近は4%を超える上昇となっています。
 また、県が商工指導団体と連携して実施しているエネルギー価格、物価高騰等に伴う事業者の影響調査においても、光熱費や原材料費の高騰で利益が減少しているという声が多く寄せられているほか、岩手県社会福祉協議会が行ったアンケート調査からも、電気代や燃料費、食材費等の高騰により、社会福祉施設は厳しい経営環境にあると受けとめており、県民や事業者、社会福祉施設等への影響は、非常に大きいものと認識しております。
〇斉藤信委員 物価高騰がとりわけ深刻になっている背景には、30年間にわたって賃金が上がらず、経済の停滞と衰退が続き、消費税増税が3回にわたって行われ、社会保障と教育費の負担が大きくなったことがあると考えますが、知事の認識をお聞きします。
〇達増知事 日本は、バブル崩壊後の1990年代初頭から現在まで、高度経済成長期、安定成長期のような成長が見られず、経済の低迷や景気の横ばいが続いており、失われた30年と呼ばれています。その間、斉藤信委員御指摘のとおり、3回にわたる消費税増税を初めとした税負担増に加え、年金、医療、介護等の保険料の増加や、国立大学の授業料増加等に伴う、子供1人当たりの年間教育費の増加などが、国民生活、県民生活に大きな影響を与えています。
 また、経済協力開発機構―OECDの調査によれば、2020年における日本の平均賃金は、先進国の下位に位置しているとともに、1990年以降、1世帯当たり平均所得金額は伸びておらず、家計における可処分所得が減少してきている状況です。
 このような中、最近の消費者物価指数の内訳を見ると、食料や被服、家具、家事用品など、生活必需品の高騰が著しく、これが物価高騰の深刻さを招いていると考えております。
〇斉藤信委員 具体的な課題について質問します。
 第1に、令和5年4月28日の臨時会で、全国に先駆けて実施した物価高騰対策は積極的なものでした。基本的には、4月から9月までの6カ月分の対策でした。その後、さらに物価高騰は進みました。物価高騰対策の継続と拡充が早急に必要と考えますが、いかがですか。
〇達増知事 物価高騰対策は喫緊の課題であることから、これまで、低所得世帯及び子育て世帯を初めとした生活者支援、中小企業者や運輸、交通事業者、介護、福祉、医療施設や農業者等への幅広い事業者支援などを実施してきたところであり、今定例会においても、追加対策として補正予算を計上し、議決いただいたところです。
 まずは、これまで実施してきた支援策を、必要な方に、迅速かつ確実に届けていくとともに、全国知事会の枠組みも利用しながら、現在、検討が進められている国の経済対策の実行を促し、これに呼応した補正予算案の編成を含め、速やかに対応をするなど、今後も、物価高騰対策を強力に推し進めてまいります。
〇斉藤信委員 ぜひ、継続と拡充の立場で。国の対策は余りにも遅過ぎるので、並行して一定程度見通しが立ったら、直ちに補正予算案を提出するということで頑張っていただきたい。
 第2に、県民の暮らしを守る課題では、最も困っているのは、ひとり親世帯や低所得世帯です。灯油価格の高騰で、1缶18リットル当たり2、000円前後となっています。福祉灯油助成は、請願が採択されましたが、昨年度の6、000円から1万円に引き上げる必要があるのではないでしょうか。
〇野原企画理事兼保健福祉部長 県では、毎年、灯油価格の動向や国による財政支援の状況、市町村の意向などを勘案し、福祉灯油助成事業の実施の有無を判断しており、昨年度は、市町村が、生活困窮者に対し、冬期間の灯油購入費や防寒用品等を助成する場合に補助を行ったところであります。
 県の補助金額は、1世帯当たり6、000円といたしましたが、9市町村において、2、000円から9、000円の上乗せが行われるなど、市町村の状況に応じた助成が行われたところであります。
 今年度におきましては、今後明らかとなる国の経済対策なども踏まえながら、県としても、必要な対応を行ってまいります。
〇斉藤信委員 ぜひ、請願採択を重く受けとめて、今の物価高騰に対応するような施策をやっていただきたい。
 異常な暑い夏の選挙戦で痛感したのは、エアコンもない高齢者、低所得者世帯の問題であります。命にかかわる問題ですから、緊急に、市町村と連携して、エアコン設置への補助を実施することが必要ではないでしょうか。
〇野原企画理事兼保健福祉部長 高齢者世帯、低所得者世帯等が、エアコンの購入及び設置を行う場合は、生活福祉資金の借入れを利用することが可能であり、県社会福祉協議会に確認したところ、今年度は、9月末までに12件、計98万1、000円の貸付実績がありました。
 全国では、独自の補助を実施する市町村があると伺っておりますが、例えば、省エネ家電への買いかえ促進や、地域内での購入などの条件をつけずに、高齢者、低所得者のみを対象とした補助制度を導入した場合、既にエアコンを所有する低所得者等との公平性の課題があると考えております。
 県では、エアコン設置補助に関する市町村からの要望等は、現時点では受けていないところではありますが、まずは、生活福祉資金制度の周知を行うとともに、高齢者、低所得者に対する支援のあり方を検討していきたいと考えております。
〇斉藤信委員 こんな暑い中の選挙で、私は、本当に痛感したのです。暑くてもエアコンがない。買えないからです。買えない人に借金でと言ったって、それは全然現実的ではないです。
 本当に、誰一人取り残さないと言うのだったら、エアコンも買えない人に、きちんと補助すると、そのぐらいの気持ちは必要なのではないですか。もう一回聞きます。
〇野原企画理事兼保健福祉部長 確かに、ことしは猛暑で、緊急搬送された方が本当に多く、ことし1、278人緊急搬送され、そのうち高齢者が822人という形で、大変な猛暑の影響があったと、我々も認識しております。
 一方で、繰り返しの答弁になりますけれども、生活困窮者、生活保護などに関しては、さまざま福祉の制度がございますので、こういうところをきちんと活用していただいて、実態としては、省エネ家電の促進といった施策はあるのですが、低所得者世帯の選択としては、さまざまな視点で研究すべき課題があろうかと考えています。
〇斉藤信委員 借金はたった12人しかなかったのではないですか。この事実も見て、やっていただきたい。
 LPガスの負担軽減、この実績と継続実施の準備はされているでしょうか。
〇佐藤復興防災部長 LPガス価格高騰対策費についてでございますが、LPガスを使用している世帯等の約97%、35万4、000件余が支援対象となっており、原則として、9月検針分の請求額から値引きするため、実績額は確定していないものの、県全体の値引き額は9億円余と見込んでおります。
 事業の延長については、LPガスの価格が高どまりしている中、これから冬期を迎え、使用量の増加が見込まれることや、電気、都市ガスに対する国の支援が延長されたことも踏まえますと、LPガス使用世帯等への対応を検討していく必要があると考えております。
 一方、本事業は、物価高騰に対応した国の交付金を財源として実施しており、現在、検討が進められている国の経済対策の動向を見きわめながら、対応してまいります。
〇斉藤信委員 国は、都市ガスの軽減はやると言っていますから、今、答弁あったように、35万4、000件でしょう。LPガスを活用しているのは県内世帯の半分以上ですよ。本当に国の対策は遅過ぎる。このことをそっちに向いて言っておきます。
 第3に、医療、介護施設の現状は、これまでに例を見ないほど深刻な状況です。昨年度以上の支援が必要ではないでしょうか。
〇野原企画理事兼保健福祉部長 医療、介護施設は、診療報酬や介護報酬の公定価格により運営されており、物価高騰による影響を価格に添加することができず、経営努力のみでは対応が困難であると認識しており、関係団体からも要望をいただいているところでございます。
 こうしたことから、現在、検討が進められている国の経済対策の動向を見きわめつつ、県としても、これに呼応をし、患者、利用者等に安心、安全で、質の高いサービスの提供が維持できますよう、医療、介護施設への必要な支援について、速やかに対応してまいります。
〇斉藤信委員 これは、令和5年10月16日付の新聞報道です。全国老人福祉施設協議会の調査結果、特別養護老人ホームの6割は赤字、赤字の法人がコロナ禍前の倍になった。本当に深刻です。私、さっきも少し紹介したけれども、これは、社会福祉団体が県に要望した文章で、これまでに例を見ないほど深刻、こういう県への要請なのです。そこで、私は、昨年度以上の支援が必要だと言いました。
 実は、今年度前期の支援は、去年1床当たり1万円だったのが、6、000円になってしまったのです。いわば電気代が高騰しているときに、支援は減らされてしまった。だから、私は、昨年度以上の支援が必要ではないかと聞いたので、そのことにしっかり答えてください。
〇野原企画理事兼保健福祉部長 私どもも、団体から要望をいただきまして、切実な状況は十分に認識しているところでございます。先ほども答弁いたしましたとおり、国の経済対策を十分見きわめながら、必要な対応を、速やかに行ってまいりたいと考えております。
〇斉藤信委員 第4に、中小企業、小規模事業者に対する支援も切実な課題であります。事業継続緊急支援金支給事業は、売上原価が上昇し、収益が減少している。この状況を踏まえて、売上減少の基準を緩和し、給付金を引き上げること。市町村との連携を強化することが必要だと考えますが、これまでの実績を含めて示してください。市町村が連携したところも示してください。
〇菊池副知事 現在、実施しているこの事業でございますが、本年4月から9月までの期間の売上高や経費の状況に応じて、支援金を支給するものでありまして、11月末を期限として、申請受付を行っているところでございます。10月6日時点の申請者数は4、534者、そのうち3、112者に対し、3億4、000万円余が支給済みとなっており、また、市町村と情報共有等を図りながら予算化したこともあり、9市町で県事業への上乗せ等が行われているところでございます。
 今後、対象となる事業者に確実に支給できるよう、事業のさらなる周知、徹底を図りながら、適切に、支給事務を行ってまいりたいと考えております。
 新たな支援策については、中小企業、小規模事業者の経営課題を的確に捉えつつ、商工指導団体等の声もよく確認しながら、国の経済対策の動向を見きわめつつ、市町村とも連携し、適時、適切に展開してまいりたいと考えております。
〇斉藤信委員 第5に、酪農、畜産危機の取り組みの実績と、今後の支援の必要性をどう捉えているのでしょうか。
〇菊池副知事 県では、これまで、酪農家等の経営安定に向け、飼料等の価格上昇分を補填する国事業の活用を積極的に進めるとともに、県独自に、類似の補正予算により、飼料や肥料の購入費、酪農経営への影響を緩和するための支援を実施してきました。
 また、酪農家の経営課題に応じた支援を強化していくために、農業普及員が酪農家の約9割となる580戸の訪問を行い、自給飼料の一層の生産拡大や、1頭当たりの生乳生産量の増加など、個別課題に応じた実地の指導を実施してきているところでございます。
 本年8月現在の飼料価格を見ますと、高騰前の令和4年に比べ、約4割高く、また、和牛子牛の平均取引価格は約2割低下しており、依然として厳しい経営環境に置かれております。
 このため、これまで措置した支援策を迅速かつ確実に実施するとともに、さらに、必要となる対策について、現在、検討が進められている国の経済対策の動向も踏まえながら、臨機に対応してまいる考えであります。
〇斉藤信委員 100頭規模の大規模酪農家、去年は1頭当たり10万円の値上がりだった。年間1、200万円です。ことしは、1頭当たり15万円、ますます飼料代、電気代、その他、こういう状況ですから。本当に酪農家を守るということで、しっかり対応していただきたい。
 次に、福島原発事故による汚染水、処理水の海洋放出によって、中国、香港が日本の水産物の輸入を中止しました。昨年度、全国では、836億円余、県内でも6億8、000万円余の輸出実績がありました。既に、出荷停止などの実害が出ています。速やかに損害賠償を求めるべきですが、どうなっているでしょうか。
〇菊池副知事 ALPS処理水海洋放出の影響への対応についてでありますが、本会議でも御答弁申し上げましたとおり、県といたしましては、知事が、全国知事会農林商工常任委員長として、内閣府等関係省庁に対し、令和5年8月31日に緊急申し入れを行ったほか、今週中にも、改めて、損害が出ている事業者に対し、迅速かつ確実に賠償が行われるよう、国と東京電力が責任を持って対応することを求めるなど、強く働きかけることとしております。
 また、同じく今週中になりますが、経済産業省と農林水産省に対し、県単独で、迅速かつ確実な損害の補填を求めるとともに、水産物等の消費拡大に向けた取り組みの強化や、持続可能な水産業の実現に向けた取り組みへの支援などを要望することとしております。
 なお、これまでの調べによりますと、輸出を予定していたイナダやスケソウダラ等の在庫の発生、これまで出荷していたイクラの商談の停止、大連市内での岩手県産の水産加工品や加工食品の売上減少などの影響が確実に出始めているところでございまして、今後の拡大を懸念しているところでございます。
 県が設置する漁業者及び事業者向けの相談窓口には、10月16日時点で受け付けた相談は5件でございますが、3件が損害賠償請求に関する相談となっております。引き続き、関係機関、団体等と連携しながら、事業者等が確実に賠償を受けられるよう対応をしてまいる考えであります。
〇斉藤信委員 県福祉総合相談センターと県民生活センターの合築による整備について。
 県内のモデル施設として、太陽光発電を設置するZEB基準で新築整備をすべきと考えますが、グリーンボンドの資金の活用も含めて、知事はどう考えているでしょうか。
〇達増知事 県福祉総合相談センターと県民生活センターの合築についてでありますが、県では、脱炭素社会の実現に向け、本県の温室効果ガス排出量を2030年度に2013年度比で57%減、2050年度までに実質ゼロとすることを目標に掲げ、事業者等に対する省エネ、再エネ設備の導入支援などの取り組みを進めております。
 今般、この削減目標の達成に向けた取り組みを加速するため、県有施設等の脱炭素化に向けた基本方針を新たに策定し、新築建築物の基準について、政府実行計画が、原則省エネ性能の30%以上のZEB Oriented相当以上としているところ、本県においては、省エネ性能を50%以上のZEB Ready相当以上とし、より高い基準を採用したところです。
 お尋ねの両施設の合築については、この方針により建物の性能をZEB Readyとしたところでありますが、省エネ性能を50%以上とするとともに、太陽光発電設備の導入も検討するなど、本県のモデル施設として、施設の脱炭素化を積極的に推進したいと考えております。
 また、グリーンボンドの発行は、脱炭素化等の本県の取り組みについて、県内法人等の参画による政策推進に向けた機運醸成や、新たな投資家の獲得による資金調達基盤の強化など、財政面への効果が期待されるところであり、当該施設整備への活用について、積極的に検討を進めてまいります。
〇斉藤信委員 いい答弁でした。よろしくお願いいたします。
 新型コロナウイルス感染症対策について質問します。
 9月上旬には、全国一の感染拡大となりました。第9波の感染状況はどうだったのでしょうか。第8波と比べて、ピーク時は、ほぼ同じレベルの感染状況ではなかったでしょうか。冬に向けて、第10波の可能性があるのではないかと考えますが、いかがでしょうか。
〇達増知事 県内における令和5年7月からの感染拡大時においては、定点報告数が1定点当たり、全国最大の35.24人となったところですが、第8波のピークだった令和4年12月下旬は、厚生労働省の公表資料によると、37.81人相当であり、定点報告数としては、おおむね同等の感染状況と認識しております。
 今夏の感染拡大時における県の医療提供体制については、入院医療については、一部の医療圏において負荷が高まったものの、個別の病床拡大により対応ができ、また、外来医療についても、受診困難といった状況が見られなかったところです。これは、感染症法上の位置づけが5類移行後、全ての医療機関で対応するとの原則のもと、事前に構築していた医療提供体制が、有効に機能したものと考えております。
 今後の見込みについては、これまでも冬季に感染が拡大しており、今冬の感染再拡大や、季節性インフルエンザとの同時流行の可能性があることから、県では、医療機関との連携を密にし、県医師会等の関係者の協力のもと、オール岩手の体制で、引き続き、県民が安心して、医療を受けられるよう取り組んでまいります。
〇斉藤信委員 ピーク時の入院患者の数は、第8波391人、第9波406人でありました。学校における学級閉鎖、学年閉鎖、これも第8波を超えておりました。
 私は、そういう点で、県の情報発信が弱かったのではないか。感染状況について、感染者数、クラスター発生状況、入院患者の状況など、科学的データに基づいた感染状況についての情報発信がなされたでしょうか。弱かったのではないでしょうか。なぜ、死者数を把握し、公表しないのでしょうか。
〇野原企画理事兼保健福祉部長 県では、新型コロナウイルス感染症の5類移行後、毎週水曜日に、岩手県感染症情報センターのホームページで、国の感染症発生動向調査による、定点医療機関における新規感染者数の公表を行っているほか、県独自で調査しているクラスターの発生状況や、10月4日からは入院患者数についても公表し、平時から、最新の感染状況の発信に努めているところであります。
 また、8月下旬の県内で、定点医療機関による新規感染者数が30.42人になった際には、私のほうからマスコミに対するブリーフィングを行い、感染状況や医療機関の状況などについて、広く県民に情報発信をしてまいりました。
 死亡者情報の公表につきましては、5類移行前は、感染症法に基づく患者の発生届により、個々の患者を確認したところであり、感染した方が死亡された場合は、御遺族等の同意を得た上で、公表を行ってまいりました。
 5類移行後につきましては、医療機関からの発生届提出の法的根拠がなくなり、死亡者についても、県として、把握ができなくなったことから、公表していないところであります。
 県といたしましては、引き続き、感染状況の把握に努め、県民に向けて、発信に努めてまいります。
〇斉藤信委員 私、さまざま調査をいたしました。県央保健所長からも、聞きに行ったら、大変詳しい説明をいただいて、そのときに、県央保健所が推計をしたら、第9波は盛岡医療圏で第8波を超えていると。私は聞いてびっくりしました。そういう情報は何も発信されていませんでした。
 先ほど学校の状況もお話ししましたけれども、あなた方の対応は、もうピークを越えてからやっているのですよ。一番大事な感染拡大の状況の中で、的確な情報発信はなされなかった。そういう反省はありますか。
〇野原企画理事兼保健福祉部長 5類移行後に関しましては、それまで毎日、いわゆる全数報告という形で感染者数を公表させていただき、そのときの医療機関の逼迫状況、クラスターの状況なども、毎日、公表していましたので、報道等で、県民の方々も目にする機会が多かったと思います。
 5類移行後につきましても、先ほど御答弁申し上げましたとおり、毎週の感染状況について公表させていただいたところであり、必要な情報については、県として県民の皆様方に発信をしてきたところであります。なるべく多くの方々に感染状況を知っていただいて、そのとき、そのときの感染対策をしていただくことが趣旨でございますので、必要な情報提供の発信に努めてまいりたいと考えております。
〇斉藤信委員 反省が足らないと思います。毎週、毎週ホームページに掲載するだけなのです。記者会見もしないのです。だから、県民は、今の第9波という受けとめになっていない。個人、個人が感染防止を徹底する。それは正確なデータが示されて初めてできるのです。その反省が足らないのではないか。
 そこで、感染状況を把握するために、神奈川県、山梨県でやっている下水サーベイランスを、私は岩手県でも実施すべきだと。これは最も正確にウイルスの拡大量を把握できます。これをやったらどうですか。
〇野原企画理事兼保健福祉部長 新型コロナウイルス感染症の下水サーベイランスは、現在、複数の自治体において実施されているほか、厚生労働省におきましても、自治体への下水サーベイランスの委託事業について、来年度―令和6年度からの実施に向けて検討を進めているところであります。
 県としても、新型コロナウイルス感染症の流行状況の把握のため、下水サーベイランスは有効であると考えていることから、環境保健研究センターでの実施について、検討をしているところであります。
〇斉藤信委員 ぜひやっていただきたい。
 最大の感染者数となった第8波は、12万6、000人、死者430人、高齢者施設内の死者は124人でありました。この第8波の検証と、今後に生かすべき教訓、課題は、どう分析、整理をされているのでしょうか。
〇野原企画理事兼保健福祉部長 令和4年10月から令和5年3月まで続いた第8波においては、それまでの感染者数、死亡者数を大きく上回る感染拡大が生じたところでありますが、症状等に応じた医療機関の役割分担と連携による入院調整、県医師会との協力による診療、検査医療機関拡充など、オール岩手での対応により、一人一人に必要な医療を提供することができたものと考えております。
 一方で、医療従事者の感染や、濃厚接触により勤務できない職員も増加し、一部の医療機関では、検査や治療などの一般医療について、制限をかけざるを得ない状況となったことや、高齢者施設等において、クラスターが多数発生した点が課題であったと認識しております。
 現在、県におきましては、岩手県感染症予防計画の改定を進めており、新型コロナウイルス感染症対応時に生じた教訓、課題を踏まえ、症状等に応じた医療機関の役割分担と連携、医療機関への人材派遣体制の確保、高齢者施設等における感染対策など、新たな新興感染症の発生、まん延に備えるための対策を検討しているところであります。
〇斉藤信委員 第9波における高齢者施設でのクラスターの発生状況と感染者数、入院と施設内療養の実態はどうなっているでしょうか。
 これまでの病床確保の補助金の実績と、10月以降はどうなるのか。新型コロナウイルス感染症患者を入院させると、病院は赤字となってしまうのではないでしょうか。
〇野原企画理事兼保健福祉部長 第9波の高齢者施設の状況についてでありますが、7月からの感染拡大時において、保健所が確認した高齢者施設のクラスターは74件、感染者数は、公表時点での数値となりますが、945人となっております。昨年の第7波、第8波における高齢者施設でのクラスターの発生等の経験を経て、多くの施設において、協力医療機関等による訪問診療等の連携が進み、5類移行時には、約9割の医療機関との連携体制が確保されたところであります。
 今般の第9波におきましては、症状が軽症な患者には、薬の処方などにより施設内療養が行われたほか、医師が入院による治療が必要と判断された場合には、受け入れ可能な医療機関への円滑な入院調整が行われたものと考えております。
 次に、病床確保の補助実績と今後の見通しについてでありますが、令和2年度は、24医療機関に対し69億円余、令和3年度は、27医療機関に対し106億円余、令和4年度は、29医療機関に対し97億円余を交付したところです。
 また、令和5年度は、5月7日までが29医療機関、5類移行後の9月30日までは、50医療機関が補助の対象となっております。10月以降は、国において、確保病床の対象を感染拡大時における重症、中等症向けの病床に重点化し、病床数は感染状況に応じて変動することとされたところであり、本県においては、平時には0床、感染拡大時は、最大34医療機関、222床を確保することとしております。
 また、病床確保料の上限額は、これまでの8割に見直されたところであります。
 10月以降の病床確保による、病院経営への影響については、平時においては、新型コロナウイルス感染症に対応するために、事前に空床にしておく必要がなくなったこと。また、感染拡大時においては、段階的に確保した病床に、実際に患者が入院し、空床となる可能性は低くなっていることから、影響は限定的なものとなるのではないかと考えております。
〇斉藤信委員 県内における後遺症発症の状況と、後遺症対策はどう取り組まれているでしょうか。
〇野原企画理事兼保健福祉部長 令和3年度に実施をいたしました、県における後遺症調査では、罹患後に、6カ月以上継続した主な症状として、11%の方が倦怠感、気分の落ち込み、9%の方が嗅覚障害を認めたと回答しており、全国調査と同様の結果となっております。
 また、令和5年9月に公表された、国による後遺症調査結果では、症状を有した割合は、アルファ株、デルタ株の流行期に比べて、オミクロン株流行期では低かったことが示されております。
 後遺症対策については、県では、県医師会と連携して、後遺症に悩む方々が、症状に応じて円滑に受診や治療が受けられる医療機関を取りまとめ、県ホームページで公表しているところであります。
 また、他の医療機関に対しましても、後遺症の悪化に悩まれる方が受診した際には、必要に応じて、専門医を紹介するよう依頼しているところであり、今後も、県医師会等の関係機関と連携し、後遺症に係る診療体制の充実に取り組んでまいります。
〇斉藤信委員 専門外来、専門相談窓口がないのではないでしょうか。
〇野原企画理事兼保健福祉部長 県では、一般的なさまざまな御相談に対応する相談センター、コールセンターを設けております。そこから必要に応じまして、医療機関、また、ホームページ等へ御案内をさせていただいているところでございます。
 なお、コロナ後遺症の対応医療機関は、東北6県で見比べますと、本県は、福島県と並んで178医療機関と、一番多くなっている状況でありまして、県内の先生方は、後遺症に対して、ある程度診療対応いただいているものと認識しております。
〇斉藤信委員 私は、対症療法ではなくて、専門外来、専門相談窓口がないのではないかと言っているのです。それをつくる気はないのですか。
〇野原企画理事兼保健福祉部長 後遺症に関しましては、疾病概念として、まだ確立していないこと、また、特異的な治療法が、開発、研究等がまだされていないこと等もありまして、現状、対症的な治療にならざるを得ない面もあろうかと認識しております。
 現在、国では、後遺症につきまして、調査、研究を進めておりまして、そうした動向を注視しながら、県としても、必要な対応をとってまいりたいと考えております。
〇斉藤信委員 終わります。(拍手)
〇柳村一委員長 お諮りいたします。午後5時も過ぎましたので、続く総括質疑は明日行うことといたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇柳村一委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。
 明日以降は、毎日午前10時から開会いたしますので、よろしくお願いいたします。
 本日はこれをもって散会いたします。
午後5時12分 散会

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