平成23年9月定例会 第2回岩手県議会定例会 会議録

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〇3番(小泉光男君) 議案第27号和解に関し議決を求めることについて私は反対でありますので、その理由を以下のとおり申し述べます。
 討論を始める前に、無所属、小泉光男は、さきの9月11日初当選から1カ月、このような形で厳粛な本会議場に初登壇させていただくとは、思いもよりませんでした。
 礼儀作法または発言内容、もしくは慣例に失礼な点があったら、どうぞお許しいただきたいと存じます。
 さて、一昨日の委員会での議案説明によれば、第一審で敗訴した原告側が判決を不服とし、第二審に控訴、仙台高裁は2回の口頭弁論を経て、相手方─本件控訴人は、県に対して5、744万円余の債権額のうち、2、500万円を支払うことで和解案が成立し、これを認めてほしいというのが提案の骨子であります。
 以上が当局の説明ですが、私の反対理由を討論するに当たり、まずは事実の概要と裁判所の勧告内容を検討いたします。
 本件は、岩手県が、旧水沢市に医療機器販売を業とする有限会社に、中小企業高度化資金制度に係る貸し付けに際し、貸付条件として、代表者とその配偶者及び代表者の長男─本件相手方の3名を連帯保証人としましたが、貸し付け後、間もなく返済がされず、期限の利益を喪失、県が貸金債権と連帯保証契約に基づき請求したところ、代表者の長男が、連帯保証契約をした事実がないとして、平成21年7月に債務不存在確認請求事件を提起、約1年2カ月後の昨年8月に、第一審盛岡地裁は保証契約の存在を認定、県が全面勝訴しました。
 このように、第一審で県の請求内容が全面的に認容されたのに、なぜ第二審になって、債権額を半額以下に減じられた和解金額を飲まなければならないのでしょうか。
 相手方原告は、第一審で、保証債務の存在自体を争い続けました。一貫して責任を否定した不誠実な対応に終始した者が、仙台高裁のわずか2回の口頭弁論で、一転して2、500万円を払うという態度の変化に驚きを覚えるものであります。
 何がこうさせたのでしょうか。どうも、この裁判の経緯を聞きますと、表に明かされた以外に、隠れた重要事実の存在が見え隠れします。そして、これから述べるような重要な問題をはらむ事実があったのであります。和解内容にも疑問を感じます。
 本議会に提出された岩手県議会定例会議案その2、27ページに記載のとおり、骨子は、2、500万円を解決金名目で和解成立後1カ月以内に一括して支払い、約束に反したときは年10.75%の利息を払うというものであります。解決金として、まるで県が頭を下げ許されたような内容ではありませんか。しかし、この和解案には、認容金額に対して債権の保全措置には一切触れておりません。今まで、債務の存在を否定し続けた者が、物的あるいは人的保証もつけず、本当に大丈夫なんでしょうか。
 さらに、本当に支払い原資が手元にあり支払う意思があるならば、私が県の訴訟代理人とするならば、この和解契約成立と同時に、内金として1、000万円を支払う旨の文言を入れさせます。
 訴訟費用の負担についても問題で、相手方が一審では完璧に敗訴しながら、一、二審を通じ、各自自弁する内容では、県が一審で敗北したのと一緒であります。
 次に、本題に入ります。
 まず、債務不存在確認請求事件に、当事者として岩手県が巻き込まれたことであります。確認請求事件の中でも、債務不存在確認請求事件というのは、通常の場合、まち金融やサラ金などから、隠れてつまんだ債務者やその関係者が言い逃れする便法、いわば法曹関係者がよく言う筋の悪い事件に多いのであります。
 我々が通常耳にする確認の訴えを例示すれば、株主総会決議不存在確認の訴え、行政処分の無効確認の訴え等であります。およそ、債務不存在確認なる事件に、県が訴訟当事者としてあらわれること自体、極めてレアなケースであるというか、わきが甘いとの指摘を受けても仕方のない性質のものであることを、まずもって申し上げたいのであります。
 裁判の争点は、まずは貸し付け時に保証契約の成立があったかどうか。続いて、返済実績がいいかげん。何回も返済約束を破られた都度、息子の相手方にもこの事実を伝え、返済を求め、または保証契約存在の事実を確認させたかという2点に尽きます。
 相手方原告は、一審の審理を通じて、連帯保証契約書に実印を押印したこともなければ、署名をした事実もないと抗弁したそうであります。しかしであります。原告は、契約締結時29歳、社会の第一線で活躍していた年齢であることに加え、この有限会社の法人登記簿に役員として名を連ねていました。さらに言えば、職業は岩手県職員でありました。このような事実または背景の中にあって、保証契約をしていないとか、知らないとか、ましてや、親が勝手にやったとの主張が通用するものでしょうか。
 一方、貸し付け3年後には不渡りを出し、実質倒産したことは先ほど述べました。常識のある普通の債権管理担当者なら、この重大な事実発覚を受けとめて、改めて、債権保全のため、債務者と連帯保証人2人のがん首をそろえて直近の債権額を確認させ、返済約束をさせるはずでありますが、本件では、代表者の経営者とのみ交渉を進め、相手方、すなわち、第一審原告を交渉当事者に加えておりません。
 このように、1回目が貸し付け時の保証債務契約のとき、2回目が手形不渡りを起こし倒産したとき、そして3回目が競売手続のときと、場面場面で当たり前の手続をしていれば、本件紛争は生じなかったのであります。
 融資を受けて3年後に破綻、以後、2万円ずつ程度をだましだまし支払いさせるも、平成20年ごろに債務者がとうとう息切れ。県はようやく、本当にこの段になってという表現が適切かと思いますが、本件原告に対して、保証契約に基づく履行請求をしたのであります。
 当初貸し付けからおよそ28年もたって、その間の債務者と県の返済交渉に関しつんぼ桟敷に置かれた息子、すなわち、本件相手方にとって、善意に解釈すれば、今さら債権者からの請求はおかしいとの気持ちを抱くことに理解できなくもありません。まさに、長年にわたる県担当者の落ち度というか、怠慢を御指摘できる事案でありますが、私は、担当者がうかつだったという見方より、当該事案は、貸し付け側も県、借りた側の連帯保証人も県の職員だったということから、穏当な言い方をすれば遠慮した、うがった見方をすれば、仲間同士であることをよいことに、故意に確定的不作為の意思を持って原告─相手方を交渉テーブルから外してきた。実は相手方も、このことを気づいていたと考えるのは、私の邪推というものでありましょうか。
 終わりに、こうした経緯や事実関係の説明を受けることなく、県の血税が失われる可能性を有する本議案を、議員のだれ一人として反対せず、あるいは説明を求めず議会を通過させては県民に対して申しわけないと思い、不肖私が、あえてこの議案に対して反対する理由でありました。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
〇議長(佐々木博君) 以上で通告による討論は終わりました。これをもって討論を終結いたします。
 次に、議案第23号岩手県立学校設置条例の一部を改正する条例を採決いたします。
 本案は、委員長の報告のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
〇議長(佐々木博君) 起立多数であります。よって、議案第23号岩手県立学校設置条例の一部を改正する条例は、委員長の報告のとおり決定いたしました。
 次に、議案第27号和解に関し議決を求めることについてを採決いたします。
 本案は、委員長の報告のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
〇議長(佐々木博君) 起立多数であります。よって、議案第27号和解に関し議決を求めることについては、委員長の報告のとおり決定いたしました。
 次に、議案第1号から議案第22号まで、議案第24号から議案第26号まで、議案第28号、議案第29号、議案第31号から議案第37号まで及び請願陳情を一括して採決いたします。
 各案件は、委員長の報告のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
〇議長(佐々木博君) 起立全員であります。よって、議案第1号から議案第22号まで、議案第24号から議案第26号まで、議案第28号、議案第29号、議案第31号から議案第37号まで及び請願陳情は委員長の報告のとおり決定いたしました。
   日程第38 委員会の閉会中の継続審査の件
 次に、日程第38、委員会の閉会中の継続審査の件を議題といたします。
〔参照〕
委員会の閉会中の継続審査事件
1 継続審査
   総務委員会 請願陳情受理番号第3号
      東京電力福島第一原子力発電所事故の早急な収束と原子力発電からの撤退・再稼働中止及び自然エネルギーの本格的な導入を求める請願
   環境福祉委員会 請願陳情受理番号第4号
        東京電力福島第一原子力発電所事故の早急な収束と原子力発電からの撤退・再稼働中止及び自然エネルギーの本格的な導入を求める請願
   県土整備委員会 請願陳情受理番号第16号
        主要地方道紫波江繋線の自然保護地域内区間のルート変更を求める請願
〇議長(佐々木博君) お諮りいたします。委員会の閉会中の継続審査の件につきましては、総務委員長、環境福祉委員長及び県土整備委員長からお手元に配付いたしてあるとおり申し出がありますが、委員長からの申し出のとおり、閉会中の継続審査に付することに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇議長(佐々木博君) 御異議なしと認めます。よって、本件は委員長からの申し出のとおり、閉会中の継続審査に付することに決定いたしました。
   日程第39 発議案第1号新公益法人への移行期限延長に関する意見書から日程第53 発議案第15号学校教育施設の耐震化事業に関する財政支援制度の拡充と防災機能向上のための新たな制度創設を求める意見書まで
〇議長(佐々木博君) 次に、日程第39、発議案第1号から日程第53、発議案第15号までを一括議題といたします。
 お諮りいたします。ただいま議題となっております各案件は、各会派の賛同を得た委員会提案でありますので、会議規則第34条第2項及び第3項の規定並びに先例により、議事の順序を省略し、直ちに採決いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇議長(佐々木博君) 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 これより、発議案第1号から発議案第15号までを一括して採決いたします。
 各案件は、原案のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
〇議長(佐々木博君) 起立全員であります。よって、発議案第1号から発議案第15号までは、原案のとおり可決されました。
〇議長(佐々木博君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後3時28分 散会

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