平成23年9月定例会 第2回岩手県議会定例会 会議録

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〇28番(高橋昌造君) 民主党の高橋昌造でございます。
 まずもって、3月11日に発生しました東日本大震災津波によりまして、とうとい命を失いました数多くの方々の御冥福をお祈り申し上げるとともに、被災された皆様方に対し心からお見舞いを申し上げます。
 また、先月の台風15号によりまして大きな被害を受けられた方々に、改めてお見舞いを申し上げます。あわせて、被災地の一日も早い復興を心から願うものであります。
 そして、佐々木博議長を初め、議員各位の御配慮により、今任期最初の登壇の機会をいただきましたことに、心から感謝を申し上げます。
 それでは、通告に従いまして順次質問をさせていただきます。
 質問の第1点目、知事の県政運営に対する基本姿勢についてお伺いします。
 まず、このたびの県知事選挙は、岩手の復興、そして再生をだれに託すか、そして、岩手のトップリーダーとしてだれが最もふさわしいかを問う選挙でありましたが、知事は見事に当選を果たされ、2期目の達増県政がいよいよスタートいたしましたことに、心からお喜びを申し上げるとともに、お祝いを申し上げます。
 今後も、県民の負託にしっかりこたえるとともに、山積する県政課題の解決と岩手の復興、そして再生に向け、力強く行政の指揮に当たっていただくことを望みます。
 まず、いわて県民計画と復興計画の位置づけについてお伺いします。
 知事は、これまで、いっしょにはぐくむ希望郷いわてを基本目標に、県民一人一人の実現していきたい岩手の未来を描き、その実現に向けたさまざまな施策を展開してきました。しかし、3月11日発生の東日本大震災津波により未曾有の大災害が発生したため、数次にわたる被災者支援、災害復旧関係補正予算を提案され、県議会においても速やかな対応に努めてきたところであります。
 被災地の一日も早い復旧、復興を達成するためには、補正予算を迅速に執行する必要があると思っております。
 知事は、いわて県民計画に基づく施策の推進を基本としつつ、岩手県東日本大震災津波復興計画と一体的に各般の取り組みを推進することにしておりますが、この二つの計画について、県政運営上、今後どのように位置づけていくのか、そのお考えをお伺いします。
 次に、いわて県民計画アクションプランの取り組み状況についてお伺いします。
 今定例会に当たり、平成22年1月に策定されたいわて県民計画のアクションプランによる取り組み状況が報告されました。この報告によりますと、おおむね達成あるいは達成としている指標が全体の半数以上となっていますから、県当局の御努力を大いに評価したいと思います。
 しかしながら、現下の厳しい社会経済情勢の影響を受けていると思いますが、いわゆる仕事の分野の指標で、平成21年度に比べておくれていると評価しているものがあります。
 そこで、産業・雇用、農林水産業の指標が悪化した理由をお示し願うとともに、計画のおくれを取り戻すために、今後どのように取り組まれるのかお伺いします。
 一方で、いわゆる暮らしの分野では達成度が高くなっていますが、知事は、平成22年度の主要施策の成果を全体としてどう評価しているのか、また、その評価を踏まえ今後の政策をどう展開していこうとしているのか、あわせてお伺いします。
 登壇しての質問はここで終わり、以降は質問席において質問をさせていただきます。
   〔28番高橋昌造君質問席に移動〕
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 高橋昌造議員の御質問にお答え申し上げます。
 いわて県民計画と復興計画の位置づけについてでありますが、いわて県民計画は、県行政の全般にわたる政策や施策の基本的な方向を総合的かつ体系的に定めている計画であるのに対しまして、復興計画は、復興に重点化し、優先的に取り組む施策を盛り込んでいる計画でございます。
 復興計画の策定に当たっては、上位計画となります県民計画に掲げる地域経営の考え方や、つながり、ひとといった視点を重要な考え方として盛り込むなど、広範囲にわたり県民計画との整合性を図ったところであります。
 もとより県民計画は、長期的な視点に立ち、大震災津波以降も変わることのない岩手のあるべき姿を示しておりまして、災害からの復旧、復興、さらには、その先にある希望郷いわての実現に向けて、復興計画とともに両計画を着実に推進していきたいと考えております。
 いわて県民計画アクションプランの評価と展開についてでありますが、平成22年度の主要施策の全体的な評価では、おおむね達成以上と評価される指標が全体の51.7%と半数を超え、厳しい社会経済情勢の中で、医療、子育て、福祉分野などでは一定の成果を上げたものの、一方で、議員御指摘のとおり、産業の分野などで進捗のおくれが見られる施策もございます。
 今後、それぞれの施策の有効性の検証や課題を取り巻く外部環境等の分析を行って、県はもとより、市町村や関係団体と一丸となって、さらに重点的な取り組みを講じていきたいと考えております。
 計画どおりに進まなかった主な理由につきましては、産業・雇用分野では、世界同時不況や円高の影響等による製造品出荷額の大幅な落ち込みなどが要因となっております。また、農林水産業の分野では、米や畜産物、サケなど、農林水産物の価格低迷により、農林水産関係の産出、生産額の減少などが要因となっております。
 こうした結果を踏まえ、産業・雇用分野においては、国際競争力の高いものづくり産業の集積促進、地域の特性・資源を生かした食産業や医療、環境等の今後成長が期待できる分野の産業振興をさらに進めていくとともに、雇用対策基金等を活用した雇用創出や就職支援に取り組んでまいります。
 また、農林水産業分野におきましては、生産物の販路拡大や高付加価値化とともに、これからの農林水産業を牽引し、高い所得を安定的に確保できる経営体の育成をさらに進めてまいります。
 評価で明らかとなった産業分野などでの課題については、今後策定する第2期アクションプランにおいて具体的な推進方策に反映させて、希望郷いわての実現に向けて全力を傾注してまいります。
〇28番(高橋昌造君) ありがとうございました。
 そこで、政策地域部長にお伺いしますが、指標の中で目指す姿と具体的な推進方策の評価を合わせて見た場合、例えば、雇用・労働環境の整備の項目では、目指す姿の三つのうち二つがおくれているとしているのに対し、具体的な推進方策では、11のうち10がおおむね達成以上としていますから、非常にわかりにくい印象を受けております。
 本来、これらは連動するべきものでありますが、ほかにも同様の項目がある中で、どういう理由で連動しない状況になっているのか、また、県民にわかりやすく伝えるには評価指標を見直す必要があるのではないかと思いますが、県のお考えをお伺いします。
〇政策地域部長(千葉茂樹君) いわて県民計画のアクションプランの評価指標についてでありますが、目指す姿指標は、ふだんの各政策項目によりまして、県はもとより、県民、NPO、市町村、企業などが一丸となって取り組むことを前提とした成果指標であります。これに対しまして、具体的推進方策指標は、県が主体となって取り組む具体的推進方策の成果指標であることから、県のみの取り組みでは目標達成が困難なものや、あるいは効果の発現まで時間を要する政策などにつきましては、今、議員から御指摘がございましたように、目指す姿指標から見た評価が、具体的推進方策から見た評価に比べまして相対的に低い評価になっているものと思います。
 今議会に御報告申し上げました主要施策の成果に関する説明書におきましては、このような指標に基づく達成度をまとめたものではございますが、例年2月県議会定例会に御報告しております政策評価レポートにおきましては、社会経済状況の変化や、あるいは県以外の実施主体の取り組み状況なども加味した総合的な評価を行うこととしております。
 また、評価指標の見直しにつきましては、県民へのわかりやすさを基本としつつ、県を初めとする計画の実施主体による取り組みの成果が着実に反映させることができるような指標の設定につきまして、次期アクションプランの策定の中で検討してまいりたいと考えております。
〇28番(高橋昌造君) 次に、県財政の再建についてお伺いします。
 政府による財政支援が見込めるものの、大震災津波の復興予算は莫大であります。一方で、県内の低迷する農林水産業、商工業等の地域経済の再生や雇用の確保対策を進める必要がありますが、ここで気になるのは、県の財政状況であります。特にも、本県の財政力指数は、平成22年度から23年度にかけてどのようになるのかお示し願います。
 また、県財政の再建は重要な課題でありますが、限られた県予算の中で、選択と集中により財政運営を継続する必要があると認識される中で、今後、財政再建と地域経済の両立をどのようにして図ってまいるのかお伺いします。
〇総務部長(加藤主税君) まず、本県の財政力指数の見込みについてということでございますが、財政力指数は、地方交付税法の規定により算定いたしました基準財政収入額を基準財政需要額で除して得た数値の3カ年の平均を示したものでございます。平成22年度は0.30555、平成23年度は、交付税の再算定に伴い変動する可能性が残っておりますが、現時点におきましては0.29534と0.01ポイント程度の悪化が見込まれるという状況でございます。
 震災影響によります税収減の影響も少なからずあるものの、主な要因といたしましては、地方財政計画の規模の拡大に伴います交付税等の増によりまして基準財政需要額が大きくなるということでございまして、収入に対する地方税等の割合が低下するということになってまいりまして、それが影響していると分析しているところでございます。
 それから、財政再建と地域経済の両立についてということでございます。
 本県の財政状況は、今後、公債費が増嵩すること、また、主要3基金の残高が大幅に減少していることなどから、これまでにも増して厳しい局面を迎えることが見込まれております。加えまして、東日本大震災津波からの復旧、復興に向けた経費に多額の財源が必要と見込まれますことから、一層の緊張感を持った財政運営を行っていく必要があると考えております。
 こうした状況の中におきましても、大震災津波からの復旧、復興に向けて全力で取り組む必要がありますことから、復旧、復興のための事業につきましては、国費による力強い支援を強く求めていくことを初め、あらゆる手段による歳入確保の取り組みを強化するなど、財源対策に努め、適時適切に事業を推進してまいりたいと考えております。
 一方、地域経済の活性化も重要でありますことから、限られた財源の中で、政策の優先度に応じました財源の最適配分を図ることによりまして、いわて県民計画に掲げる希望郷いわての実現に向けた施策を着実に推進する予算を編成していく、こういった考えでございます。
〇28番(高橋昌造君) ありがとうございます。いずれ、0.1ポイントの悪化ということですが、やはり、これからは、しっかり財政再建に取り組んでいただきたいと思います。
 次に、いわて県民計画と岩手県東日本大震災津波復興計画の各事業の整合性についてお伺いします。
 先ほど知事に、いわて県民計画と岩手県東日本大震災津波復興計画の今後の県政運営における位置づけについてお伺いしました。この二つの計画は、いずれも計画期間が平成30年度までとなっており、一体的に取り組まなければならないと認識しております。
 被災した沿岸市町村では、まさに復興計画が総合計画として実施されなければならない状況と思われます。
 県では、今後、いわて県民計画の事務事業、公共事業及び大規模事業と岩手県東日本大震災津波復興計画による441の事業との整合性をどのように図ってまいるのかお伺いします。
〇政策地域部長(千葉茂樹君) いわて県民計画と復興計画の各事業の整合性についてでありますが、県民計画と復興計画の両計画の関係につきましては、先ほど知事から御答弁申し上げたところでございますけれども、今後、大震災津波からの復旧、復興に向け全力で取り組むとともに、県民計画に掲げる希望郷いわての実現に向けた施策を着実に推進していく必要があるものと考えております。
 このため、復興計画に基づく施策を喫緊の課題として優先的に取り組むと同時に、県民計画に基づく施策の推進に当たりましては、復興との関連性を勘案し、政策評価結果を踏まえて、事業の効果や効率性などを検証しながら、一層の選択と集中を進め、限られた財源の中で、重点的かつ効果的に取り組むこととしております。
 具体的には、来年度の予算編成方針の中で、震災対応分については、各部局に対し所要額での予算要求が可能とされる一方、それ以外の通常分につきましては、例えば、県負担分につきまして、公共事業費にあっては対前年度比80%以内、政策推進に要する経費となる戦略推進費にあっては対前年度比90%以内での要求枠が新たに設定されるなど、事業の必要性や優先度を考慮し、重点化を図ることとしているところでございます。
〇28番(高橋昌造君) 質問の第2点目、被災地及び被災者支援のあり方についてお伺いします。
 まず、商工業の回復状況についてお伺いします。
 被災地の再建への支援に欠かせないのは、地域経済の2本柱であります農林水産業と商工業の一日も早い回復であります。いかなる状況にあっても仕事や経営の継続に心がける必要がありますが、仮設店舗や仮設工場等の設置状況に加えて、稼働状況はどうなっているのかお伺いします。
 また、本格的に店舗や工場を建てる計画に着手する際、建築確認手続等への支援はスムーズに行われているのか、課題があるとすれば、その解決のために今後どのように対応してまいるのかお伺いします。
〇理事(平井節生君) 商工業の回復状況についてでございますが、独立行政法人中小企業基盤整備機構が、市町村からの要請に基づき行う仮設店舗や仮設工場等の整備は、10月5日現在、12市町村57地区において整備が進められており、うち17地区の施設が竣工し、順次稼働しているところでございます。
 市町村では、仮設店舗等の建設が可能な用地を探すなど、商工業の早期復興に向け支援を行っているところでございます。
 次に、本格的な店舗等の建築確認手続等への支援についてでございますが、本県では、建築基準法による災害危険区域の指定、または同法による被災市街地の指定に基づく建築制限は行われておりませんが、多くの市町村において、浸水した土地等における建築行為について自粛を要請している状況にございます。
 県といたしましては、早期の事業用地の確保に向けて、市町村における迅速な土地利用計画の策定を支援してまいります。
 また、仮設店舗等を建設しようとする事業者に対し、本格的に店舗を建てる際の建築基準関係法令に関する情報提供を行っているところでございます。
〇28番(高橋昌造君) 次に、災害復興公営住宅整備における地元企業への優先発注についてお伺いします。
 県は、東日本大震災の被災者の住まいとする災害復興公営住宅を4、000戸から5、000戸建設する方針を先日の復興特別委員会でお示しになられました。
 被災地の復旧、復興のため、インフラ整備とともに、被災者の住宅整備を支援することが重要であります。
 県は、復興インフラの整備で地元企業へ配慮することによって、被災地の経済活性化を支援できると思います。
 災害復興公営住宅の整備においても、地元産の木材の使用や地元企業への発注など、被災地域内での地域産業の復興支援に取り組まなければならないと思いますが、県のお考えをお伺いします。
〇県土整備部長(若林治男君) 災害復興公営住宅につきましては、県及び被災市町村において順次建設を行ってまいりますが、被災地の復興を進める上で、地域経済の活性化を図っていくことも重要であると考えております。
 県の公共事業の工事発注に当たりましては、これまでも、県産材の使用、県内企業への受注機会の確保など、地域産業活性化のための重要な課題として位置づけて取り組んできたところであります。
 今後整備する災害復興公営住宅におきましても、木造住宅の建設や内装材などにおける県産材の積極的な活用に努めるとともに、地元でできる工事は地元に発注するなど、被災した地域にできる限りの配慮を行いながら取り組んでまいります。
〇28番(高橋昌造君) 次に、高齢化及び人口減少対策についてお伺いします。
 被災地は、震災の前から、高齢化、そして人口減少が進む状況にありました。高齢化率は、平成22年国勢調査で県全体が27.2%であるのに対して、被災地の沿岸12市町村は31.6%であり、人口減少については、県の調査で、震災前の平成22年3月から8月までの2、272人の減少が、震災後の平成23年3月から8月までは1万2、507人と大幅な人口減少に見舞われていたことが報告されております。
 そこで、過疎・高齢化する被災地を復旧、復興させるためには、新しいまちづくりの担い手となる被災者を中心に、ひとり世帯での孤独死を防止するため、孤立世帯の発生を抑止するなど、支え合いや話し合いなどを通して地域が自立できるように支援すべきではないかと思いますが、今後の支援策をどのように講じてまいるのかお伺いします。
〇保健福祉部長(小田島智弥君) 被災地の高齢化及び人口減少対策についてでありますが、急激な人口減少に加え、応急仮設住宅など従来の地域コミュニティが十分機能していない地区もある中で、高齢者等が孤立して適切な支援が受けられないという事態が生じないよう、市町村社会福祉協議会では、生活支援相談員を配置し、仮設住宅の戸別訪問などにより、被災者の生活ニーズの掘り起こしや見守り、生活支援相談等を行っているところであります。
 また、把握した被災者ニーズにつきましては、生活支援サービス創出の仕組みづくり等を行う地域福祉活動コーディネーターなどが、民生委員、保健師等の専門職、さらには住民組織やボランティア、NPO等と協働し、買い物支援や移送サービス等の新たな支え合いの創設などに取り組むこととしており、県としても、このような地域住民を中心とした支援ネットワークづくりや新たな支え合い活動の創出、自治組織の育成などの取り組みを支援してまいります。
〇28番(高橋昌造君) 次に、地域コミュニティの再生と自主防災組織についてお伺いします。
 地域コミュニティの再生は被災地の再生でもあり、今後、地域コミュニティの再生のためどのような支援をしてまいるのか、具体的な取り組みをお示し願いたいと思います。
 また、震災時において、コミュニティにおける自主防災活動の重要性が改めて認識されたところでありますが、自主防災組織への支援策は、今後どのようになるのかお伺いします。
〇理事(廣田淳君) 地域コミュニティの再生についてでありますが、地域コミュニティは、その地域で暮らす人々の自発的な取り組みを基本としつつ、まず市町村が担うことが求められておりますけれども、県としても、市町村、NPO、ボランティア等と連携し、仮設住宅入居者等のコミュニティ形成、維持に向け、積極的に支援しているところであります。
 県では、自治会等の組織化を支援するため、応急仮設住宅運営に当たってのガイドラインを提供したほか、応急仮設住宅団地内の遊具やベンチ等、コミュニティスペースの確保を進めており、県内にあります応急仮設住宅団地319団地のうち186団地、58%で自治会等が組織されております。
 また、被災者に寄り添うさまざまな相談に対応するための事例集の作成、NPO、ボランティア等と連携、協力したお茶会や健康講座などを実施しているところであり、今後もこのような住民交流や情報提供の促進を通じて、仮設住宅入居者等のコミュニティ形成、維持に向け、積極的に市町村を支援していく考えであります。
〇総務部長(加藤主税君) 自主防災組織についてでございますが、自主防災組織は、初動時におきます安否確認、避難誘導及び救護活動のほか、円滑に避難所を運営していく上でも重要な役割を担っているものと認識しております。
 県では、これまで、市町村におきます自主防災組織育成強化の取り組みを支援するため、自主防災組織のリーダーを対象とする講習会の開催や住民参加型図上訓練への職員派遣など、積極的な対応に努めてまいりました。
 現在、災害対応の研修を実施しておりますが、自主防災組織の活動が功を奏した事例も多数報告されておりまして、今後は、これらも踏まえまして、市町村とも連携し、地域の実情に応じたより実践的な避難訓練や自主的な避難所運営に向けての役割分担に係りますノウハウの提供など、より効果的な支援策を講じていく考えでございます。
〇28番(高橋昌造君) 次に、生活再建に向けた総合的な支援体制についてお伺いします。
 被災者の生活再建には、医療、職業、住宅及び教育の衣職住育の四つのことが大切であります。
 まず、被災者の心のケアは、単なるカウンセリングだけではなく、コミュニティやボランティアなどの見守りを含めた対応が求められております。
 生活支援や健康相談のアドバイザー、さらには、専門員や保健師などを巻き込んだ暮らしのケアに関するネットワーク体制の構築はどのようになっているのか、また、相談のためのワンストップサービス体制についてもあわせてお伺いいたします。
〇理事(廣田淳君) 生活再建に向けた総合的な支援体制についてでありますが、市町村社会福祉協議会に生活支援相談員を配置し、応急仮設住宅等を巡回して、被災者の生活ニーズの掘り起こし、生活支援相談等に応じるとともに、民生委員や保健師、地域包括支援センターなど、被災者支援に当たる関係機関で構成されます地域ケア会議等により、ネットワークを構築し、相互に連携を図りながら、被災者の生活再建に向けた支援を行っております。
 また、生活全般のさまざまな悩みから財産の相続や住宅の再建に関する内容など、被災者からのあらゆる相談、問い合わせにきめ細かに対応するため、本年7月、久慈、宮古、釜石、大船渡の各地区に被災者相談支援センターを開設し、被災者の相談支援を行っているところであります。今後とも、センターにおきまして、生活支援相談員や保健師など、仮設住宅を巡回して相談対応を行うさまざまな関係者との情報共有や、被災者一人一人が抱えております問題の解決に向けた連携を図りながら、被災者に寄り添った相談支援を行ってまいりたいと考えております。
〇28番(高橋昌造君) それでは、次に災害時要援護者への支援体制と交通弱者支援策についてお伺いします。
 災害時要援護者への支援体制についてお伺いしますが、難病患者、高齢者、障がい者、外国人、乳幼児及び妊婦等に配慮した災害情報の伝達、避難行動の支援、避難所や応急仮設住宅での生活支援などについて、支援体制の課題があるとすればどのようなことがあるのか。課題解決のため今後どのように対応されるのかお伺いします。
 また、震災後、仮設住宅から病院への通院や買い物など、自家用車などの移動手段を持ち合わせていない交通弱者への支援策はどのようになっているのかお伺いします。
〇保健福祉部長(小田島智弥君) 災害時要援護者への支援体制についてでありますが、国では、市町村に対して、災害時要援護者対策の取り組み方針を明らかにした避難支援プランの策定を求めていますが、今般の大震災津波での状況を市町村に伺ったところでは、電話等の情報伝達手段の使用が制限され、消防団員や民生委員などの協力を得ても、計画どおりの情報伝達や避難誘導ができなかった事例があったところであります。
 また、生活支援の面では、一般の避難所では、ベッドや車いす、障がい者対応トイレなど要援護者に必要な設備が不十分であったほか、設備の整った福祉避難所については十分な数を確保できなかったところであります。
 応急仮設住宅では、屋内での段差や屋外通路の未舗装など、設備面で高齢者や障がい者等への配慮が足りないとの声があり、さらに、住居の変更に伴い支援を必要とする方の所在など現状把握が必要となりますが、情報の共有化が個人情報保護との兼ね合いでスムーズに進んでいないなどの課題も指摘されております。これらの中には、応急仮設住宅の設備など既に改善されているものもありますが、解決に向けて時間を要する課題も多いことから、生活支援相談員や保健師による巡回相談等を通じて、要援護者を初めとする被災者の方々の支援を進めるとともに、市町村等と連携して今回の事態を十分に検証し、避難支援プランの策定や所要の見直しを進める中で、諸課題の再発防止に向けて取り組んでまいりたいと考えております。
〇政策地域部長(千葉茂樹君) いわゆる交通弱者への支援策についてでありますが、仮設住宅団地へのバス運行につきましては、現在、路線バスの運行に加えまして、市町におきまして無料バスや患者輸送バスの運行などを行っているところでございます。沿岸市町村からの聞き取りや現地調査の結果、バス停留所までの距離や道路の狭隘等の事情から、現在の路線では対応できない仮設住宅団地も一部あることにつきまして、県としても把握しているところでございます。現在、該当市町村において路線の見直しや新たな路線の必要性につきまして検討を行っているところでございます。
 県といたしましては、仮設住宅団地の居住者の方々の生活に必要な交通手段が早期に確保されるよう、市町村と一体となりましてバス事業者への要請を行いますとともに、仮設住宅団地と病院、公共施設等との間において実証運行などを行います国の調査事業の導入の検討を市町村に対して要請しておりまして、当該事業の実施に当たりましては、市町村、交通事業者、有識者、国及び県で構成いたします支援組織を設置し、必要な助言を行っていきたいと考えております。
〇28番(高橋昌造君) それでは、質問の第3点目、総合防災対策についてお伺いします。
 まず、広域防災拠点整備と消防学校の再整備についてお伺いします。
 災害時において広域防災拠点に求める機能として、物資受け入れ・集配、応急要員の集積・宿泊、被災者用物資・資機材の備蓄、広域医療搬送及び災害対策本部の代替機能等を有することでありますが、消防学校は、災害対策本部の代替機能以外、不十分ながらも、その機能を果たしていけることが示されました。
 そこで、現在の消防学校は老朽化が著しく、いずれ建てかえが必要な施設であること、そして、広域防災拠点施設は、平時には防災教育、防災訓練施設として活用できることが最も重要であり、消防学校、防災センターとして活用することが県民の理解を得られやすいのではないかと思います。この際、広域防災拠点整備と消防学校の再整備をリンクさせて考えるべきではないかと思いますが、県のお考えをお伺いします。
〇総務部長(加藤主税君) 消防学校は、従来から災害時に必要な物資の備蓄場所となっておりますほか、今回の大震災におきましては、被災地から内陸へのヘリコプターによる患者搬送の拠点や、県外から派遣されました緊急消防援助隊の休憩・宿泊場所、被災地への支援物資の集積場所となるなど、災害対策支援の一翼を担いました。御指摘のとおりでございます。
 このように、消防学校は広い敷地や訓練施設、宿泊施設等、緊急時の防災活動に活用できる施設設備を有しておりまして、広域防災拠点の一つの選択肢となり得るものと認識しております。このため、今後、広域防災拠点の整備構想を具体化する中で、御提言の趣旨も含め、十分な検討を行ってまいりたいと考えております。
〇28番(高橋昌造君) 前向きな御答弁をいただきまして、ありがとうございます。
 次に、消防施設の被害と復旧状況及び消防団員の被災自家用車への支援についてお伺いします。
 東日本大震災津波における消防団員の皆様方は、自分の命をも顧みず、津波発生とともに地域住民の避難誘導等の任務に全力で当たられ、立派に任務を果たされましたことは県民の誇りであります。また、任務遂行中に不幸にしてとうとい犠牲になられた消防団員の皆様方に衷心より感謝と敬意を表しますとともに、御冥福をお祈りいたします。
 さて、震災により、被災市町村の消防団詰所、消防車両及び消防用資機材等の消防設備の被害状況はどうなっているのか。また、消防施設及び設備の復旧状況はどうなっているのかお伺いします。そして、今回の震災で消防団員が災害活動で使用した自家用車の被害実態は把握されているのか、また、損害が生じた場合の見舞金の支給状況はどうなっているのか、あわせてお伺いします。
〇総務部長(加藤主税君) 消防団関係の質問でございます。被災市町村におきましては、消防団詰所87カ所が流失、全壊したほか、消防車両42台、小型ポンプ19台のほか、消防用ホースや防火衣等数多くの資機材が失われるなど、消防団に対して甚大な被害が生じております。このうち、現在、2市が国の補助金を使い詰所の設置を進めているほか、テント、プレハブや他施設の車庫の利活用等によりまして活動拠点を確保している状況でございます。
 また、全国からの支援によりまして、これまで消防車両34台、小型ポンプ19台が補充されておりますほか、今年度、国の補助金を活用し、消防車両10台、小型ポンプ14台を配備する予定となっておりまして、一定の消防力は確保される見込みでございます。引き続き、被災市町村におきましては、町並みの整備にあわせまして財源を確保し、詰所を初めといたします消防施設や設備の整備を図っていくこととしておりまして、県としても、被災市町村に対し、必要な助言、支援を続けていく考えでございます。
 次に、消防団員の自家用車の被害状況でございます。それぞれの市町村で把握状況がまちまちという面がございまして、県全体の状況をつまびらかに把握するには至っておりません。
 お尋ねの見舞金支給事業の対象に着目してお答えいたしますと、市町村段階で把握されている、リストアップされているものは700件を超えると聞いております。実際の支給事務の手続を担います岩手県市町村総合事務組合によりますと、このうち、これまで正式申請が120件程度上がっておりまして、今後、この申請数がさらに増加していくと見込まれるということでございます。このうち、現在までの支給状況ということになりますと、47件の支給ということでございます。
〇28番(高橋昌造君) ありがとうございます。
 次に、消防団員の安全確保対策とメンタルケア対策についてお伺いします。
 被災地の消防団が今後も十分な消防活動を継続することができるように、安全衛生体制の充実強化策が求められておりますが、特に、消防団員の殉職事故を契機としての安全確保対策の充実強化や消防団員のメンタルケア対策が必要と思いますが、今後どのように取り組まれるのか、県のお考えをお伺いします。
〇総務部長(加藤主税君) まず、安全確保対策のほうでございます。
 県では、これまで、消防学校のほか県消防協会に委託して実施しております消防団員教育を通じまして安全確保対策の徹底を図ってきましたが、今回の大震災津波では多くの消防団員が活動中に被害に見舞われたところでございます。このため、ハード面の安全確保対策として、復興計画におきましては、水門の遠隔操作化や避難ビルの設置等を盛り込んでおります。また、今回の災害の検証におきましては、消防団員自体が避難する時期、タイミングの設定や、津波の襲来状況の把握のための連絡手段の確保等の課題が挙げられておりまして、これらを含め津波災害時の消防活動のあり方について十分検討し、消防団員の安全確保対策の充実につなげていきたいと考えております。
 災害活動後の消防団員のメンタルケアにつきましては、市町村に対し留意を促すとともに、市町村、消防庁、日本消防協会と共催でメンタルケアに関する研修会を開催してきたところでございます。引き続き息の長い継続した取り組みが必要でございまして、市町村に対しまして、PTSD予防チェックリストの活用促進や、日本精神衛生学会のこころの電話相談の周知、専門医療機関の情報提供など、関係機関と連携を図りながらきめ細かな対応に努めてまいります。
〇28番(高橋昌造君) 次に、地域防災のかなめである消防団の現状と課題についてお伺いします。
 消防団は地域防災のかなめであるとともに、大震災時の消防団の活動の重要性が改めて認識されたことを踏まえ、今後の消防団に期待される役割に即応した救助用のものを含む資機材の整備、デジタル化に対応した通信体制の整備、教育訓練体制の充実を強力に推進するとともに、消防団員の処遇改善、消防団雇用事業所対策の充実などが求められると考えておりますが、消防団の現状と課題をどのように認識しているのかお伺いします。
 また、消防団の充実強化、活性化のため、消防団員等確保事業の取り組みはどうなっているのか。そして、女性消防団員の確保対策についてもあわせてお伺いします。
〇総務部長(加藤主税君) 消防団は、地域防災のかなめといたしまして多くの役割を担っているところでございます。このような活動の充実を図るため、各種団体の助成事業を活用いたしまして、救助資機材を搭載した車両を初め資機材整備を進めてまいりました。また、消防救急無線のデジタル化にあわせまして消防団の無線の整備を図ることとしております。こうした取り組みにもかかわらず、消防団員の減少、高齢化やサラリーマン化などに歯どめがかからず、地域防災力の確保の面から大きな課題となっていると認識しております。
 これまで、消防団員の確保のため、全市町村を巡回するキャラバン活動の実施や消防団協力事業所表示制度活用の促進を図ってまいりました。最近では、女性アナウンサーを消防団確保大使に任命いたしまして活動に協力いただきましたほか、一関市の若手女性消防団員を全国消防団員意見発表会に派遣するなど、女性消防団員のPRや入団動機の喚起を図っております。これらの取り組みは、新たな担い手として期待されます女性の入団促進にも資するものと考えております。
 今回の大震災津波におきましては、消防団の活動の重要性が改めて認識されまして、注目度が高まっているという状況でございます。各市町村や県消防協会と連携の上、消防団のさまざまな活躍の紹介などを通じまして、その意義や役割の周知に努めることによりまして、消防団員の確保につなげてまいりたいと考えております。
〇28番(高橋昌造君) 質問の第4点目、農林業の振興策についてお伺いします。
 まず、農地の津波被害対策についてお伺いします。
 東日本大震災津波による農業被害額は592億円に上り、津波被害を受けた農地面積は、水田、畑を合わせて725ヘクタールに上るとのことです。被害が比較的軽い農地では除塩等を行うなどして水稲の作付が行われたと聞いておりますが、その状況はどうだったのか。また、被害の大きい農地やヘドロの多い農地等について、今後、どのような復旧、復興をお考えなのかお伺いします。
〇農林水産部長(東大野潤一君) 農地の津波被害対策についてでありますが、海水の浸入などにより被害を受けた水田につきましては、可能な限り今期の作付を進めるため、土壌塩分濃度の測定や除塩作業などの技術指導を行い、被害を受けた農地725ヘクタールのうち、陸前高田市など8市町村の水田7.5ヘクタールで水稲が作付され、その後の農家の営農努力もあって順調に生育し、いずれも平年並みの収量が見込まれる状況です。
 また、被害の大きい農地等の復旧につきましては、現在、早期の営農再開に向け国による災害査定が行われており、査定が終了した箇所から順次復旧に着手しております。沿岸地域は区画が小さく、農道や水路が未整備な農地が多いため、農家の意向を確認しながら、原形復旧にとどまらず、災害復旧にあわせて地域の特性に応じた区画整理や農地の利用集積を進め、生産性、収益性の高い農業の実現を目指してまいります。
〇28番(高橋昌造君) 次に、原発事故に伴う放射性物質の影響対策についてお伺いします。
 東京電力福島第一原子力発電所の重大事故は、国際原子力事象評価尺度のレベル7の深刻な事故とされ、今もって収束できない状況にあります。本県でも農林水産物への影響が広がっており、原発事故は深刻さを増しておりますが、放射性物質による農地等への影響はどうなっているのかお伺いします。
 また、原発事故による風評被害も広がっております。それを払拭するためにも、本県の農林水産物が安全・安心であることを消費者に理解していただくことが重要であると思います。国や県の取り組みが遅いとの声も聞かれる中で、農林水産物の放射性物質の検査体制をしっかり確立していくべきと思いますが、県はどのようなお考えなのかお伺いします。
 また、原発事故がもたらした牛肉の出荷停止により、子牛や肉牛の出荷停滞、枝肉価格の低迷など農家は大きな打撃を受けております。農家は相当な赤字覚悟で牛を出荷しているわけで、出荷停滞に伴う経費の掛かり増しや通常時の出荷額との差額などは肉用牛肥育農家支援対策により補てんされるとのことですが、個々の農家に詳しく伝わっていないようです。この農家を資金的に支援する対策について改めて御説明を願うとともに、対策の普及を県はどのように考えているのかお伺いします。
〇農林水産部長(東大野潤一君) まず、放射性物質による農地への影響についてでありますが、国は、水田土壌において、放射性セシウム濃度が土壌1キログラム当たり5、000ベクレルを超える場合、水稲の作付を制限すると定めておりますが、本県におきましては、今年作付された米や野菜などの作物の放射性物質の検査結果はすべて不検出となったこと、また、宮城県北地域の水田土壌調査での放射性セシウムは最大でも511ベクレルで、国の基準を大きく下回っていることなどから、本県の農地においては国の基準を上回るような状況にはないと考えております。
 次に、県産農林水産物の安全・安心確保のための放射性物質の検査体制の確立についてでありますが、県では、米を初めとする農産物や特用林産物、水産物を対象に県産農林水産物の放射性物質濃度の検査計画を策定し、この計画に基づき検査を実施しているほか、牛肉につきましては、国の承認を得た出荷・検査方針に基づき全戸、全頭検査を実施し、それらの検査結果を公表しており、こうした取り組みを通じて広く消費者に県産農林水産物の安全性をアピールし、消費者の不安解消に努めております。
 また、このような取り組みとあわせて、今月15日、16日に開催される東京食肉市場まつりで、県産牛肉はもとより、他の農産物などにつきましても、その安全性や品質を首都圏の消費者にアピールすることとしており、こうした積極的な取り組みも含めて風評被害の払拭を図ってまいります。
 次に、肉用牛肥育農家支援対策についてでありますが、この緊急支援対策につきましては、肥育経営の資金繰り対策として、出荷遅延に伴う掛かり増し経費に対する緊急支援金、出荷遅延牛の販売代金相当額を一時支援する出荷遅延支援金、さらに、通常時の販売額との差額に対する価格低下支援金などを交付するものであります。これらの対策を周知するため、各農協、生産者団体を対象とする説明会のほか、地域の要請による説明会を開催してきたところでありますが、これらの対策が12月まで利用できることや、今月から価格低下支援金が交付されることから、今後におきましても、生産者に周知徹底が図られるよう努めてまいります。 
〇28番(高橋昌造君) 次に、木質バイオマス発電についてお伺いします。
 原子力発電所に対する安全・安心が失われつつある今こそ、地域に根差したエネルギーへの転換を図っていくべきであると思っています。
 そこで、農林水産分野の取り組みとして、特に木質バイオマス発電についてお伺いします。森林県岩手の特性を考えると、木質バイオマス発電の利活用は喫緊の課題と考えていますが、導入の効果として、エネルギーの地産地消により、これまでの石油等の化石燃料に回っていた費用が地域に還流することになり、地域経済の活性化を促すと期待しております。しかし、導入が余り進んでいないと聞いておりますが、県内に普及していない原因は何なのか、今後の導入に向けた課題をどのようにとらえているのかお伺いします。
〇農林水産部長(東大野潤一君) 木質バイオマス発電についてでありますが、本県におきましては、木材加工工場での小規模な自家発電施設の導入事例はございますが、売電を目的とする本格的な木質バイオマス発電施設の立地には至っていない状況にあります。この原因としては、本県のみならず全国的にも現状の買い取り価格では商業的に採算性が厳しいこと、また、需要側が必要とする燃料を安定的に確保することが難しいことなどが挙げられます。固定買取価格制度などにより採算性が改善された場合であっても、大量の木質燃料をいかに低コストで安定的に供給できるかとのことが課題になると考えてございます。今後、木質燃料の安定供給につきましては、林業関係団体とも連携しながら、その体制のあり方の検討を進めてまいります。
〇28番(高橋昌造君) 次に、地域農業の振興策についてお伺いします。
 平成22年3月に定めた食料・農業・農村基本計画では、平成32年度に食料自給率を50%に引き上げることを目標にしておりますが、その成果は一向に見えない状況にあります。さらに、TPPへの参加は国内農業の一層の衰退につながるものと考えます。本年度から農業者戸別所得補償制度が本格的に導入された中で、地域農業の担い手の確保や農家所得の向上など、地域農業の振興をしっかりサポートしていくことが必要と考えますが、県はどのようにお考えなのかお伺いします。
〇農林水産部長(東大野潤一君) 地域農業の振興策についてでありますが、本県農業の持続的な発展を実現するためには、地域農業の核となる担い手の育成をしていくことが重要と考えております。このため、いわて県民計画に即し、かつ国の農業者戸別所得補償制度も積極的に活用しながら、地域の担い手に対し、市町村の農地利用集積円滑化団体が行う農地の利用調整活動による経営規模の拡大、6次産業化による農産物の高付加価値化、いわてアグリフロンティアスクール等による経営管理能力の向上を支援するとともに、就農セミナーを通じた新規就農者等の新たな担い手の確保に取り組んでいるところでございます。今後におきましては、こうした取り組みに加え、今年度から追加された戸別所得補償制度の規模拡大加算の活用も促しながら、担い手の確保、育成、農家所得の向上に取り組み、地域農業の振興を図っていく考えでございます。
〇28番(高橋昌造君) それでは、次に普及事業の見直しについてお伺いします。
 担い手の減少や高齢化、耕作放棄地の増加、所得の減少など、農業経営をめぐる情勢はますます厳しさを増していますが、農業所得を向上させていくためには、農業の6次産業化など、農業の技術革新や経営の多角化、高度化が求められています。このため、農業普及員の果たすべき役割はますます重要なものと考えておりますが、農林水産省では普及事業の見直しの結果を公表しました。その中で、普及指導員を総括、指導し、各機関と普及組織との連携に中心的な役割を担う普及指導員を新たに農業革新支援専門員として配置するとのことですが、本県における普及事業体制についてどのようにお考えなのかお伺いします。
〇農林水産部長(東大野潤一君) 普及事業の見直しについてでありますが、本県では、地域の農業特性や課題に応じて農業改良普及センターやサブセンターを県内13カ所に配置し、現場主義に基づく普及活動を展開するとともに、県全域にわたる施策や重要課題に対応するため、中央農業改良普及センターに県域普及グループを設置し、研究機関との連携や専門技術の普及、各農業普及員の活動支援などを行ってきたところです。
 今般の国の普及事業の見直しは、これまで展開してきた本県の普及事業のあり方と方向性を同じくするものと考えてございます。今後は、国の新たな事業展開も活用しながら、先進農家の技術革新支援や研究、行政との連携強化など、普及事業体制のより一層の強化に努めてまいります。
〇28番(高橋昌造君) 次に、原木シイタケの振興策についてお伺いします。
 沿岸部の市町村にはシイタケ栽培の生産者が多いと聞いております。今回の大津波により、大量のほだ木やシイタケの乾燥施設が流失するなどの被害が発生しているようですが、被災した生産者に対してどのような支援策に取り組んでまいるのかお伺いします。
 県内の原木シイタケは、豊富なナラなどの広葉樹資源をほだ木として利用し、全国有数の生産量を誇っています。しかし、近年、原木シイタケの生産量が低下しているようですが、どのような理由で低下しているのかお伺いします。また、原木シイタケの生産振興を図るために今後どのような施策に取り組むか、あわせてお伺いいたします。
〇農林水産部長(東大野潤一君) 原木シイタケの生産振興策についてでありますが、被災した生産者に対しましては、津波をかぶったほだ木の除塩の技術指導を実施しているほか、流失したほだ木や乾燥機の再整備を支援するための事業を今議会に提案いたしました補正予算に盛り込んだところです。
 原木シイタケの生産量が減少していることにつきましては、生産者の高齢化、後継者難による生産者数の減少、春先の気象変化などに対応する技術不足が大きな原因であると考えております。
 このようなことから、原木シイタケの生産振興を図るため、新たな生産者の確保、育成に重点を置き、農業や漁業との複合経営作目としての生産者の拡大、新規参入者の初期投資軽減のための対策、生産者の技術力向上のための研修会の開催などに取り組んでまいります。
〇28番(高橋昌造君) ありがとうございました。
 それでは、質問の第5点目、警察活動の現況と今後の取り組みについてお伺いします。
 警察の方々には、東日本大震災津波の発災直後から、厳しい環境の中、地域住民の避難誘導や救出活動、行方不明者の捜索、被災地における安全・安心の確保といった幅広い活動に取り組んでいただいており、昼夜を分かたず、大変な御苦労をされていることに対しまして、改めて敬意を表するものであります。
 また、全国の警察から多くの警察官を派遣していただき、被災地で活動する姿は、被災した住民の方々に力強く、頼もしく感じられているものと思います。
 ただ、残念なことは、避難誘導に当たっていた本県警察官11名が殉職されたことであります。迫り来る津波の中、住民の命を守るという崇高な使命を全うした11名の勇敢な行動に、多くの県民が深い感銘を受けたところであります。とうとくも職に殉じられました皆様方に、衷心より感謝と敬意を表しますとともに、御冥福をお祈りいたします。
 まず、被災地における警察活動についてお伺いします。
 震災直後から警察においてさまざまな活動を行っていますが、震災から7カ月を経過し、被災者は避難所から仮設住宅に移り、瓦れきの撤去が進むなど、被災地の環境も変わってきています。警察の活動も被災地における環境の変化に対応していくものと思いますが、これまでの被災地における警察活動と、今後どのように取り組んでいくのかお伺いします。
〇警察本部長(樹下尚君) 県警察では、今回の東日本大震災津波に当たり、発生直後から、県内部隊はもとより、全国警察から応援を得て、住民の避難誘導及び被災者の救出・救助、御遺体の収容、身元確認、御遺族への引き渡し、行方不明者の捜索、パトカーでの警戒等による被災地の安全確保、避難所の訪問を通じた相談対応、交通規制、交通整理による交通安全の確保など、被災地の治安の確保に向けた警察活動を展開してきたところでございます。
 発災から7カ月余りが経過しておりますが、いまだ1、500人以上の方が行方不明となっておりますことから、県警察では、特別派遣部隊を含め必要な体制を確保し、引き続き、海中を含め行方不明者の捜索活動を行うとともに、御遺体の身元確認を徹底してまいりたいと考えております。
 また、仮設住宅にお住まいの方々から、夜間にパトロールしてくれると安心だとの声が寄せられるなど、被災者の生活環境あるいは要望も大きく変化をしております。
 県警察といたしましては、こういった被災地の変化に的確に対応して、仮設住宅の巡回や夜間における警戒警ら活動など所要の警察活動を推進し、被災地における安全・安心の確保に努めてまいりたいと考えております。
〇28番(高橋昌造君) 被災地においては、いまだ行方不明になっている方々が多数おられ、警察の方々には、捜索活動を継続していただいておりますが、御遺体が発見、収容された後の身元を確認する作業には、大変御苦労されていると聞いております。その取り組み状況についてお伺いします。
〇警察本部長(樹下尚君) 御遺体につきましては、昨日までに4、664人を収容しておりまして、そのうち4、363人、率にしまして93.5%の身元が判明しております。
 身元の確認は、御遺体や御遺族からDNA資料を採取し、その鑑定結果や御遺体の発見場所、御遺体の着衣の特徴や歯型、手術痕等の身体特徴、御遺族や知人等からの聞き取り結果などを総合的に判断して特定をしております。
 なお、御遺体の着衣につきましては、その特徴を把握するために洗濯をしておりますけれども、腐敗の進行や泥の付着などによりまして、破れたり、汚れが落ちにくくなっている状況となっておりますことから、手洗いで時間をかけて丁寧に特徴を確認しているところであります。
 DNA型鑑定につきましては、行方不明者ごとに、できるだけ多くの御遺族のDNA資料を提出していただいて、鑑定、分析に努めているところでございます。
 また、身元追跡捜査にも創意工夫をしているところでありまして、着衣のタグあるいは刺しゅうされたネーム等から追跡し特定したもの、人工関節、入れ歯、コルセット等から特定をしたもの、あるいは行方不明者の亡くなったお母さんの手術歴から、検査機関に保存されていた組織片を確認し、親子鑑定により特定したもの等の事例がございます。
 今後とも、一人でも多く、また一日でも早く御遺族に引き渡せるよう、あらゆる着眼をもって身元の確認に努めてまいりたいと考えております。
〇28番(高橋昌造君) 次に、被災した警察施設の復旧についてお伺いします。
 今回の震災津波により、釜石、宮古の二つの警察署が被災したほか、交番、駐在所や沿岸運転免許センターも全壊しております。
 警察署は警察活動の拠点であり、交番、駐在所は、地域住民の安全と安心のよりどころとなっており、被災した警察施設の早期の復旧整備が必要と考えますが、復旧整備についてどのように進めていくお考えなのかお伺いします。
〇警察本部長(樹下尚君) このたびの大震災におきまして、釜石警察署は2階まで、宮古警察署も1階まで津波により損壊し、このほか、交番5カ所、駐在所10カ所を含めて19の施設が全壊の被害を受けております。
 現在のところ、釜石警察署、沿岸運転免許センター及び主要な交番については、仮設庁舎を設置し、地域の安全確保に向けて業務を行っているところであります。
 被災した警察施設の復旧につきましては、このたびの津波被害の現状を踏まえまして、災害発生時においても警察活動を十分に展開できる防災拠点として再建復旧をする必要があると考えておりまして、また、同時に、地域住民の皆さんの利便性も考慮することが必要と考えております。
 今後、関係機関、各自治体と連携を図りつつ、自治体が策定した復興計画や治安を取り巻く環境を見きわめながら、早期復旧を推進してまいりたいと考えております。
〇28番(高橋昌造君) 警察署の建てかえについては、この間も計画的に行ってきたところであり、被災した警察署の整備は当然でありますが、そのほかにも、県内には狭隘化が進み、老朽化の著しい警察署があります。
 財政的な問題も承知しておりますが、老朽化の著しい警察署の整備について、被災した警察署の整備と切り離して整備できないものかお伺いします。
〇警察本部長(樹下尚君) 警察施設の整備についてのお尋ねでありますが、今回の大震災により大きく被災した警察署の復旧が喫緊の課題となっております。一方で、老朽化した警察署の整備につきましても、計画的に進めていく必要があると考えているところであります。
 まずは、被災した警察署の復旧を行ってまいりますが、老朽化した警察署の整備につきましても、老朽度や狭隘度などを勘案し、関係機関と協議しつつ、整備について検討を進めてまいりたいと考えております。
〇28番(高橋昌造君) 次に、被災地の交通安全対策についてお伺いします。
 今回の震災津波により、被災地の信号機が151カ所被災したほか、道路標識も3、000本以上が倒壊または流出とお聞きしております。被災した信号機については順次復旧工事が進められておりますが、いまだ復旧していない交差点も多数あります。
 被災地の交通事故の発生状況と事故防止策についてお伺いします。
〇警察本部長(樹下尚君) このたびの震災において交通安全施設に大きな被害を受けた大船渡、釜石、宮古の3警察署管内における人身事故の発生状況につきましては、本年9月末の概数でありますが、発生件数325件、死者数7人、傷者数409人となっており、昨年に比べ死者数は減少しているものの、発生件数、傷者数は増加しております。
 被災地においては、今後も交通環境や交通流量の変化に伴う交通事故の発生が懸念されますことから、警察といたしましては、被災した信号機の復旧を急ぐとともに、パトカーによる警戒活動や白バイによる交通指導取り締まり活動、主要交差点での交通整理や通学路での交通監視活動を行っておりますほか、関係機関・団体や交通ボランティアと連携し、仮設住宅訪問による高齢者に対する交通安全指導や反射材の直接貼付活動、地理不案内な県外ドライバーに対する注意喚起のためのチラシ配布活動などを行っているところであり、引き続き、交通事故防止のため各種対策を推進してまいりたいと考えております。
〇28番(高橋昌造君) 次に、警察署協議会についてお伺いします。
 被災地の警察署運営に当たっては、被災された住民の方々の意見や要望を十分に把握し、地域住民の理解と協力を得ることで成果を上げることができるものと考えますが、被災地の警察署協議会の状況はどうなっているのか、また、警察署協議会制度が導入されて10年ほど経過しましたが、協議会活動の現状と今後の課題についてお伺いします。
〇警察本部長(樹下尚君) 被災地の警察署協議会の現状についてでありますが、警察署協議会は、警察署の業務運営に民意を反映させるため、そのあり方について、地域を代表される方々から御意見を伺うための機関でありますが、このたびの大震災によりまして、大船渡、釜石、宮古の沿岸3署では、管内に甚大な被害が生じ、本年6月に予定されておりました警察署協議会委員改選期に委員の委嘱が困難であったため、やむなく休止の状態となっておりましたが、震災から半年以上が経過し、各署とも協議会の再開が可能な状況となったことから、10月1日付で公安委員会から委員を委嘱したところであります。
 今回委嘱された委員の方の中には、仮設住宅にお住まいの方もおられますので、協議会からの御意見、御提言を被災地の皆様の生の声として、今後の警察活動に十分反映させてまいりたいと考えております。
 それから、協議会活動の現状と今後の課題についてでありますが、議員御指摘のとおり、本県では、平成13年6月に県内すべての警察署に協議会が設置されて以来、本年で11年目となりますが、各署協議会において活発な御議論をいただけるよう、警察署の業務運営に関する説明や実際の活動の視察等を行ってきたところであり、今後とも協議会の活性化が図られるよう、情報提供に努め、協議会からいただいた御意見、御提言を警察署の業務運営に積極的に反映してまいりたいと考えております。
〇28番(高橋昌造君) 最後に、警察における被害者支援についてお伺いします。
 犯罪の被害者やその家族は、犯罪によって直接身体的、精神的、または経済的な被害を受けるだけでなく、さまざまな二次的被害を受ける場合があります。そのため、警察においてさまざまな側面から被害者支援を行っていますが、一般の方々には余り知られていないのが現状であります。
 被害者支援についてどのように周知を図っているのか、また、これまで支援した事例についてお伺いします。
〇警察本部長(樹下尚君) 犯罪被害者は、生命、身体の直接的な被害だけではなく、精神的ショック、医療費などの経済的負担、捜査や裁判の過程におけるいわゆる二次的被害など、さまざまな問題に苦しめられている現状にあることから、警察におきましては、こうした問題の解消や軽減を図るため、犯罪被害者を支援するさまざまな取り組みを行っているところであります。
 県警察では、犯罪被害者支援について、県警のホームページやマスメディアを活用して啓発広報を行っておりますほか、犯罪被害者支援の日や犯罪被害者週間をとらえ、社団法人いわて被害者支援センターと連携しながら、各種制度等の周知を図るとともに、中高生を対象に、犯罪被害者遺族による、いのちの尊さ、大切さ教室を開催し、犯罪被害者等を支援する機運の醸成を図っているところであります。
 また、犯罪被害者等に対しては、犯罪被害認知の段階で、被害者支援要員を指定し、被害者のてびきというパンフレットを配布するとともに、捜査の流れや利用できる制度等について個別に説明し、支援をしているところであります。
 これまで支援した事例についてでありますけれども、県警察では、殺人、傷害等の事件や交通事故の被害者に対する病院への付き添い、捜査の進捗状況を含めた定期的な連絡を行っているほか、特に、性犯罪被害者に対しましては、女性警察官に支援を担当させるなど、きめ細かな配慮に努めるとともに、治療費の公費負担など被害者のニーズに沿った支援を実施しているところであります。
 また、犯罪被害者等早期援助団体である社団法人岩手被害者支援センターが、犯罪被害直後からカウンセリング等の必要な支援を行うことができるよう、早い段階から同センターに対する情報提供を行っているところであります。
 県警察では、今後も、犯罪の取り締まりにとどまらず、犯罪被害者等からの多種多様なニーズに適切にこたえるべく、関係機関・団体と連携して、途切れのない被害者支援を推進してまいります。
〇28番(高橋昌造君) ありがとうございました。
 それで、本部長、この犯罪被害者等の基本計画というのは、平成17年12月27日に閣議決定されておるわけですが、その中で、被害回復のための休暇制度の導入を検討すべきだということが今、議論されておるわけですが、いずれ関係機関、関係団体とも、そういうものをしっかり協議をして、前向きに検討していただければということをお願いいたしたいと思います。
 最後に、知事にお願いがあります。きのうも代表質問でありましたが、平成28年の第71回の国民体育大会、いわゆる2巡目の岩手国体、これをまず、きのうもお話がございましたように、岩手の復興のシンボルとして、また、昭和45年の岩手国体のときは、誠実・明朗・躍進というこのスローガンのもとに立派な大会が開催されたわけで、また、成功裏に終わったわけでございますが、どうか、私からも、前向きに国体を開催していただくようにお願いいたしたいということで、きのうも御答弁いただいたんですけれども、きょうまた、何か心変わりがあるのであればお聞きいたしたい、こう思います。
 いずれ、実は、私ども地元に帰りまして、もう本当に大変なことはよくわかるけれども、スポーツを通じての、やはりスポーツ、そして県民が心一つにするいいチャンスじゃないのかと。だから、ぜひ2巡目の岩手国体は開催してほしいという強い要望がありますので、そのことを知事にお伝えして、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
〇議長(佐々木博君) 答弁はよろしいですね。
〇28番(高橋昌造君) はい、いいです。
〇議長(佐々木博君) 以上をもって高橋昌造君の一般質問を終わります。(拍手)
 次に、熊谷泉君。
   〔34番熊谷泉君登壇〕(拍手)

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