平成23年9月定例会 第2回岩手県議会定例会 会議録

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〇知事(達増拓也君) 本日、ここに第2回県議会定例会が開会されるに当たり、今後の県政運営について、私の所信の一端を申し上げます。
 私は、このたび、県民の皆様の信託をいただき、再び知事に当選いたしました。この重要な時期に県政を担当することとなり、その責任の重大さを痛感し、身の引き締まる思いがいたします。
 2期目の選挙に臨むに当たり、東日本大震災津波からの復興を最重要課題とし、岩手県東日本大震災津波復興計画を推進することが、いわて県民計画に掲げる希望郷いわての実現につながるものと考え、これらの計画を実質的な選挙公約としたところであります。
 選挙を通じて、大震災津波による被害の中で、互いに助け合い、力強く復興に向けて努力している多くの県民の姿に接し、県民の底力を目の当たりにしました。また、津波被災地においては、多くの被災者の方々から感謝の言葉をいただきました。被災者支援、復旧、復興への県の責任を改めて強く感じているところであり、県議会議員各位並びに県民の皆様の御支援と御協力をよろしくお願い申し上げます。
 平成23年3月11日に発生した、三陸沖を震源とする東北地方太平洋沖地震は非常に大きな津波を引き起こし、かけがえのない数多くの人命を奪い、太平洋沿岸を中心に甚大な被害を与えました。改めて、亡くなられた方々の御冥福を心からお祈りいたしますとともに、被災されました皆様に対し、心からお見舞いを申し上げます。
 県は、発災と同時に災害対策本部を設置し、電気、ガス、水道や道路、鉄道、情報通信網などが大規模に寸断され、燃料が不足し、物流機能が麻痺する中で、人命の救助と被災者の支援を最優先に、関係機関と連携し、前例のない対応にも取り組んでまいりました。
 具体的には、情報が途絶えた被災市町村の状況把握と行政機能の回復を支援するため、県職員の派遣や衛星携帯電話の配付などを行いました。また、避難所での生活が長期にわたることが見込まれたため、内陸市町村等と連携し、内陸地域の宿泊施設で一時的に被災者を受け入れる態勢を確保するとともに、応急仮設住宅の早期建設に取り組み、発災から5カ月をもって全棟を完成させたところであります。
 この間、国の政府現地連絡対策室や東日本大震災復興対策本部岩手現地対策本部、岩手県沿岸市町村復興期成同盟会と連携し、被災地における課題解決に取り組んできたほか、自衛隊や全国の地方公共団体、国内外の多くの関係機関などの支援をいただきながら、オールジャパンの力で一致団結して復旧、復興に取り組んできました。
 今回の大震災津波では、国内外から多くのお見舞いや激励、寄附などをいただいており、多大なる善意の御支援に対し、心から感謝申し上げます。さらに、天皇皇后両陛下並びに皇太子同妃両殿下を初め皇族の方々におかれましては、被災者のお見舞いのため御来県いただき、温かいお言葉や励ましのお言葉を賜り、被災者のみならず県民に大きな勇気を与えていただきました。
 私が大震災津波直後に被災地を訪れた際、その想像を絶する姿に一瞬言葉を失いましたが、答えは現場にあるとの考えのもと、被災地の実態や、現場で何が必要か、何をなすべきかを把握し、復旧、復興対策を推進してまいりました。これからも、現場力を発揮しながら、県、市町村、国がしっかりと連携して、被災者一人一人に寄り添った行政を進め、沿岸地域と内陸地域が一体となって、岩手全体の復興に向けた取り組みを進めるよう努めてまいります。
 発災から1カ月目となる4月11日、私は被災地において、犠牲となった方々への哀悼の思いを復興へのすべての起点とし、復興に向けて力強く立ち上がろうとの決意を込め、がんばろう!岩手宣言を行いました。その中で、被災された方々が、衣食住や学ぶ機会、働く機会を確保し、再び幸せな生活を送ることができるようにし、また、犠牲となられた方々のふるさとへの思いをしっかり受けとめ、引き継いでいくことを宣言しました。
 この復興の原点といえる考えは、県で策定した復興に向けた基本方針の中で二つの大きな原則として盛り込み、この方針に基づき、先般、県議会の承認をいただき、岩手県東日本大震災津波復興計画を策定いたしました。この計画は、人命が失われるような津波被害は今回で終わりにするとの決意のもと、復興の目指す姿として、いのちを守り海と大地と共に生きるふるさと岩手・三陸の創造を掲げ、科学的、技術的な必然性と、社会、経済的な必要性に基づき県民的な議論を踏まえ、策定したものであります。
 今回の大震災津波では、全国の自治体や世界の国、地域からの支援、さまざまな民間のボランティア活動などが展開されておりますが、こうした復興に向けた多様な連携の輪をさらに広げることが重要であるため、復興計画では開かれた復興を掲げ、幅広いつながりを力としながら、復興をなし遂げていきたいと考えております。このため、NPOや企業、団体など新しい公共の多様な担い手が主体となった復興への支援や、開かれた復興の取り組みの情報発信などを行いながら、さまざまな主体の総力を結集し、一丸となって、被災以前よりも安全・安心、豊かな岩手の実現に向けて着実に復興を進めてまいります。
 沿岸地域の復興を確かなものにしていくためには、内陸地域の経済基盤をより高めていくことが必要であります。
 県においては、災害に強いものづくり産業の拠点形成を進め、内陸地域がしっかりとした基盤を築き、沿岸地域を強力にサポートし、県全体の産業振興を着実に進めていく体制を築くことが重要であると考えております。このためには、地場企業と誘致企業の連携、産学官民の分野や県、市町村、国の枠を越えた連携として、全国や世界とつながっていくことが必要であります。こうしたつながりづくりを、6次産業化や農商工連携、複数の観光地を結ぶ観光商品づくりなど、農林水産業、観光等のさまざまな分野にわたって進めてまいります。このような多様なつながりの中で、岩手を担う人が、地域資源を発掘し、磨き上げながら付加価値を高め、岩手の豊かさをはぐくむことにより、県民一人一人が希望を持つことができる希望郷いわての実現を目指してまいります。
 復興に向けた歩みを着実に進めるため、復興計画では、安全の確保、暮らしの再建、なりわいの再生を復興に向けた三つの原則として掲げています。
 復興に当たっては、この三つの原則に基づいて、津波により再び人命が失われることなく、雇用と医療、福祉が充実し、産業が元気な社会の実現を目指すものでありますが、これは福祉政策と産業、雇用政策を組み合わせた、いわゆる生活保障の考え方に相通じるものであります。生活保障は、福祉政策と産業、雇用政策を分断することなく、両方の政策を融合させ、安全の確保といった土台のもとに、暮らしの再建やなりわいの再生に同時に取り組み、総合的に県民一人一人の生活を保障するものです。こうした生活保障の考え方に基づく本県の復興への取り組みは、21世紀の日本や世界のあるべき姿を国内外に示すことにほかならないと考えております。
 具体的には、安全の確保については、津波被害をできるだけ最小化する減災の考え方に基づき、海岸保全施設、まちづくり、ソフト対策の適切な組み合わせによる多重防災型まちづくりを進めます。また、今回の大震災津波で命の道として機能した三陸縦貫自動車道を初めとした沿岸地域の縦貫軸や、内陸と沿岸地域を結ぶ東北横断自動車道釜石秋田線などの横断軸を復興道路として位置づけ、集中的投資による3年間での重点的な整備を国に強く要請し、災害に強い交通ネットワークの早期の構築に取り組みます。
 暮らしの再建については、被災者が希望を持ってふるさとに住み続けることができるよう、住宅の再建や雇用の確保、心身の健康を守るシステムの再構築、地域コミュニティ活動への支援などを推進します。
 なりわいの再生については、沿岸地域の基幹産業である水産業の復旧、復興なくして沿岸地域の復旧、復興をなし遂げることはできません。水産業の両輪である漁業と流通、加工業の再生に向けて、漁業協同組合を核とした漁業、養殖業の構築と、産地魚市場を核とした流通、加工体制の構築を一体的に推進します。
 企業等の二重債務の解消に向けた支援を行うため、国や県内金融機関などとともに、復興支援ファンドとして新たに岩手県産業復興機構を設立することとしております。加えて、新規融資や助成など企業再生に向けた支援をしっかり進めてまいります。
 さらに、本県でも多くの県民が懸念している東京電力福島第一原発の事故に伴う放射性物質の拡散の影響については、知事を本部長とする原発放射線影響対策本部を設置し、組織体制を強化するとともに、原発放射線影響対策の基本方針を定め、県内の小中学校や高校、幼稚園、保育所等の放射線量の測定や土壌の除染、牛の全頭検査の実施、検査機器の導入などを進めているところです。今後も、県産農林水産物の放射性物質の検査を実施し、県産食材の安全確保に万全を期すとともに、外部の専門知識を有する方々の技術的な助言を得ながら、放射線量の測定体制の強化や測定対象の拡充、迅速で適切な情報の公表を行い、出荷制限、風評等で被害を受けた農家を支援するなど、県民の安全・安心の確保及び風評被害の防止に全力で取り組んでまいります。
 今回の大震災津波では、工場が停止し、部品の供給が滞るなど、サプライチェーンの寸断によって、被災地のみならず、広く経済的な影響が及び、全国的な生産活動の低下が生じました。また、電力供給の制約や原子力災害の影響など、家計や企業の経済活動に大きな影響を及ぼし、国内の景気は今なお厳しい状況にあります。さらに、欧米などの世界経済の先行き不安による円高と世界的な株安傾向が復興に向けた日本経済の景気回復の妨げとなり、企業の海外移転を加速させ、国内産業の空洞化が懸念されております。
 こうした状況において、被災地はもとより、日本全体の活力を取り戻すため、国には、さらなる金融緩和や積極的な財政政策を実施し、日本経済の一定の成長基調のもとで、国家プロジェクトとして総力を挙げて復興に向けた取り組みを推進することが求められております。
 なお、環太平洋パートナーシップ協定に関しては、被災地における農林水産業を初め国内の産業基盤が損なわれることのないよう、慎重に検討すべきものと考えております。
 このような社会経済情勢のもとで、大震災津波からの復旧、復興の取り組みとあわせ、いわて県民計画に掲げる希望郷いわてを実現するため、今後、重点的、優先的に取り組む施策などを県民の皆様にお示しすることが必要であります。このため、これからの4年間に具体的に取り組む施策や目標などを盛り込んだ第2期アクションプランを今年度中に策定いたします。
 これまで、第1期アクションプランに基づき重点的に施策を推進し、県民一丸となって課題解決に取り組み、本県人口の社会減に歯どめがかかるなど、一定の成果を得ることができました。
 第2期アクションプランの策定に当たっても、沿岸地域の復興には内陸地域の活力が不可欠であるとの認識のもと、個々の施策や取り組みについて復興との関連性や優先度を考慮しながら、全県一体となった取り組みを進めるよう策定してまいります。
 発災からこれまで6度にわたる切れ目のない補正予算を組みながら、被災地における復旧、復興対策を重点的に推進してきたところですが、今後さらに厳しさを増す財政状況を踏まえ、あらゆる手法による歳入の確保や、事業の選択と集中による一層の歳出の見直しなど、財政の健全化にも配慮した取り組みを進める必要があります。今後も復興財源の確保が不可欠であり、復興一括交付金等の自由度の高い仕組みの創設、国庫補助負担率の引き上げや補助対象の拡大、地方負担に対する財源措置の充実確保など、これまでの例にとらわれない強力な財政支援について、引き続き国に対して要請してまいります。
 平成23年度における施策の具体的な推進についてでありますが、平成25年度までの3年間での復興基盤の構築を目指し、復興計画で掲げる安全の確保、暮らしの再建、なりわいの再生の三つの原則に基づく取り組みを集中的に進め、復興に向けた大きな第一歩を踏み出してまいります。さらに、いわて県民計画に掲げる希望郷いわての実現に向け、岩手の未来をつくる7つの政策に基づき、さまざまな施策を推進してまいります。
 以下、復興計画の三つの原則に基づく10分野の取り組みと、いわて県民計画の七つの政策に沿って、主な施策の内容について申し上げます。
 まず、安全の確保の原則に基づく二つの分野における取り組みであります。
 第1に、防災のまちづくりの分野における取り組みでありますが、津波対策の基本的な考え方を踏まえた多重防災型まちづくりにより、防災都市・地域づくりを推進してまいります。甚大な被害を受けた湾口防波堤や海岸保全施設についてはおおむね5年以内の完成を目指し、市町村が策定を進めている復興計画と一体となった復旧、整備に取り組みます。さらに、市町村復興計画で定める、津波に対する安全な住環境を整備するための宅地のかさ上げや、高所移転のための制度の創設・拡充、土地利用規制の手続の迅速化など、引き続き国に対して要望してまいります。
 生活に支障が生じる災害廃棄物については、すべての被災市町村で1次仮置き場への撤去が完了したところであります。今後は、岩手県災害廃棄物処理詳細計画に基づき、リサイクルを推進しながら、平成26年3月までの完了を目指し、着実に災害廃棄物の処理を進めます。
 また、今回の災害応急対策の検証を踏まえ、今年度中の地域防災計画の見直しなど防災対策を強化するほか、被災した衛星通信装置の復旧など災害に強い防災通信機能の整備を進めます。
 第2に、交通ネットワークの分野における取り組みでありますが、円滑な物流等の確保を図るため、被災した道路や港湾施設などの早期復旧に向けて取り組みます。さらに、災害に強く、信頼性の高い道路ネットワークの構築のため、復興支援道路や復興関連道路の整備に取り組みます。
 駅舎、線路、橋梁等が流出、損壊するなど、甚大な被害を受けた三陸鉄道については、平成26年4月の全線運転再開に向けて、沿線市町村とともに早期復旧に向けた支援を行うほか、JR各線については、沿線市町村の復興計画の策定状況を見ながら、復旧に向けた早期の着工をJRに対して要請してまいります。
 次に、暮らしの再建の原則に基づく五つの分野における取り組みであります。
 第1に、生活・雇用の分野における取り組みでありますが、一部に回復の兆しが見られるものの、沿岸地域では多くの企業が被災し、雇用の場が失われるなど、県内の雇用情勢は厳しい状況にあります。このため、沿岸地域においては、水産業を軸として広範な産業支援策を講じ、産業基盤の早期の再生に努め、雇用の場の確保を図ると同時に、離職を余儀なくされた方々に対しては各種相談や就業支援を行い、緊急雇用創出事業等を活用し、雇用の下支えを図りながら、民間の産業振興による雇用の立ち上がりを積極的に支援します。加えて、内陸地域においては、経済活動の回復をさらに着実なものとし、ものづくり産業での雇用を拡大するほか、平泉の世界遺産登録を契機とした観光需要増大の効果を雇用に結びつけていきたいと考えております。
 恒久住宅確保対策については、持ち家の再建を希望する被災者の支援に取り組むほか、災害復興公営住宅の整備などにより、安全で良質な住宅の供給に努めてまいります。
 被災者の生活再建に向けては、義援金や被災者生活再建支援金の支給等の支援のほか、被災者相談支援センターを中心とする総合的な相談支援体制を構築し、被災者台帳システムの整備や市町村による運用の支援を行います。
 第2に、保健・医療・福祉の分野における取り組みでありますが、被災者の心身の健康を守るため、仮設診療所等の設置や再開可能な医療機関への支援など、被災した病院、診療所、福祉施設等の機能回復を図るとともに、医療、福祉従事者などの確保に努め、災害に強く、質の高い保健・医療・福祉提供体制を整備します。また、応急仮設住宅地域での相談、デイサービス、訪問介護、生活支援等を包括的に提供するサポート拠点の設置、運営を支援します。
 精神的負担を抱えている住民に対しては、震災こころの相談室での心の悩みなどの相談や診察を行うほか、長期的な心のケアを見据え、きめ細かな専門的なケア体制の構築に取り組みます。さらに、沿岸地域に子どものこころのケアセンターを設置し、大震災津波により親を失った子供たちの心の健康の回復を支援します。
 第3に、教育・文化の分野における取り組みでありますが、学校施設の復旧、整備や防災機能強化はもとより、大震災津波で心にダメージを受けた児童生徒や幼児へのきめ細かな心のサポート体制の充実を図り、児童生徒が安心して就学できる教育環境等を整備します。また、被災体験を踏まえ、防災教育を初めキャリア教育や道徳教育などを総合的に学ぶいわての復興教育プログラムの構築を進め、子供たちの未来を切り開く力をはぐくみながら、本県の復興を担う人づくりを進めます。
 今回の大震災津波を契機に県で設置したいわての学び希望基金には、国内外から多くの寄附金が寄せられており、この基金を原資として奨学金の給付を行うなど、大震災津波で親を失った子供たちの暮らしと学びを支援します。
 第4に、地域コミュニティの分野における取り組みでありますが、住民相互のコミュニケーションを維持しながら、地域の結束力が強まるよう、新しい公共の担い手であるさまざまな主体と市町村との協働の取り組みを支援し、地域コミュニティ活動の環境整備を行います。また、高齢者等の孤立防止を図るため、応急仮設住宅や在宅の被災者に対する生活相談や安否、見守り活動を行い、安心して地域で生活できるよう取り組みます。
 第5に、市町村行政機能の分野における取り組みでありますが、今回の大震災津波では、内陸市町村や他県の地方公共団体などによる大規模な自治体間の支援が展開され、連携によって自治の力を高めていくという新たな自治の姿を示しました。今後も被災市町村が早急に十分な行政サービスを提供することが可能となるよう、人的支援や技術的助言を行ってまいります。
 次に、なりわいの再生の原則に基づく三つの分野における取り組みであります。
 第1に、水産業・農林業の分野における取り組みでありますが、漁業協同組合による漁船、養殖施設等の生産手段の一括購入、共同利用システムの構築のほか、共同利用施設やサケふ化場、アワビ等種苗生産施設、産地魚市場の施設設備などの復旧、整備を支援します。また、地域の防災対策や地域づくり、水産業再生の方向性などを踏まえた漁港、漁場や海岸保全施設の復旧、整備を推進し、地域に根差した水産業の再生を進めます。
 早期の営農再開に向けては、津波が浸水した農地の除塩や、農地、農道、水利施設等の農業生産基盤の復旧、整備を進めるほか、共同利用施設の復旧、農業機械の導入などを支援します。さらに、県産木材を活用する合板工場等の施設、機械設備の復旧、整備を支援し、木材加工体制の再生を進めます。
 第2に、商工業の分野における取り組みでありますが、沿岸地域の経済を支える中小企業や商店街の早期の事業再開を図るため、仮設店舗、工場などの整備支援や、事業再開に必要な融資、助成支援及び経営相談体制の充実など、一貫した企業再生支援体制の整備に取り組みます。また、壊滅的な被害を受けた水産加工業の早期の生産機能回復を支援するほか、いわて農商工連携ファンドやいわて希望ファンドを活用し、農商工連携を進めながら地域産業の振興を図ります。
 自動車関連産業などのものづくり産業については、地場企業の競争力強化や企業の誘致、沿岸地域と内陸地域との連携によるものづくり体制の強化など集積促進を図るほか、いわて発の高付加価値コバルト合金の医療機器材料の開発を初め、地域資源を活用した研究開発により新たな産業育成に向けた取り組みを推進します。
 第3に、観光の分野における取り組みでありますが、大きく落ち込んだ観光需要の回復に向け、本県の多様な観光資源をさらに磨き上げ、誘客の促進を図り、おもてなしの郷いわての実現に向け取り組んでまいります。
 来年のいわてデスティネーションキャンペーンの実施に向けては、平泉の世界遺産登録の効果を全県的に波及させるよう取り組みを進めます。また、災害を考慮した自然公園施設の復旧を行い、安全・安心な観光地づくりを進め、ジオパークなど新たな魅力を付加した観光振興に取り組みます。
 以上、申し上げました復興に向けた10分野の取り組みに加え、復興計画では、長期的な視点に立ち、分野横断的な取り組みとして五つの三陸創造プロジェクトを掲げております。このプロジェクトについては、多様な主体と連携し、幅広く県民、団体などの意見や提言を伺いながら具体的な取り組みを検討し、その着実な推進を図ります。
 また、本県では、国際リニアコライダーを中核とする国際学術支援エリアや国際海洋研究拠点の形成を目指すTOHOKU国際科学技術研究特区や、太陽光、風力、地熱、木質バイオマス等の再生可能エネルギーを活用し、自立・分散型のエネルギー供給体制を構築する再生可能エネルギー導入促進特区などの復興特区制度の創設を国に対して提言しており、プロジェクトの推進に当たっては、復興特区制度との連動を図りながら、本県の復興の核として取り組みを進めてまいります。
 次に、いわて県民計画に掲げる岩手の未来をつくる7つの政策に基づく主な施策の内容について申し上げます。
 政策の第1は、産業創造県いわての実現であります。
 自動車産業における国内の第3の拠点形成に向け、関連企業のさらなる集積を図るほか、技術開発支援やものづくり人材の育成、県内企業の取引拡大などを進めます。また、昨年の上海万博への出展により形成された人的ネットワークなどを活用しながら、本県特産品の販路拡大や県内企業の海外ビジネスの展開支援など、積極的な海外市場の開拓を図ります。
 政策の第2は、食と緑の創造県いわての実現であります。
 本県の農林水産業を取り巻く厳しい状況の中で、核となる担い手の確保、育成に向け、生産基盤の計画的な整備や、認定農業者等の経営の規模拡大と多角化、地域けん引型林業経営体と連携できる事業体等の育成を推進するほか、新規就農者等の経営能力向上や栽培技術の習得支援などに重点的に取り組みます。また、環境への配慮や低コスト生産を可能にする高度な生産技術の開発、普及など、安全・安心で高品質な農林水産物の生産拡大に取り組むほか、6次産業化や農商工連携などを推進し、農林水産物の高付加価値化を図ってまいります。
 政策の第3は、共に生きるいわての実現であります。
 高齢者等が住みなれた地域で安心して生活できるよう、地域包括支援センターを中核として、適切な医療、介護、福祉などのサービスが効果的に提供される地域包括ケアシステムの体制を整備します。また、岩手県自殺総合対策本部を中心に全庁的な自殺防止の取り組みを進めるほか、今年度中に自殺対策アクションプランを策定し、市町村、関係団体等と連携を強化しながら総合的な自殺対策を推進します。さらに、救急医療体制の充実を図るため、平成24年度のドクターヘリの本格運航に向けた取り組みを推進します。
 政策の第4は、安心して、心豊かに暮らせるいわての実現であります。
 自主防災組織の育成強化や防災訓練の実施、避難体制の整備など地域防災力の向上に向けた取り組みを進め、防災教育等による防災文化の醸成、継承に努めます。また、いわて希望塾の開催を通じ、地域づくりを積極的に担う心豊かで意欲に満ちた青少年の育成を進めるほか、男女共同参画を推進するサポーターの養成など、男女がともに参画する社会の形成に向けた取り組みを推進します。
 政策の第5は、人材・文化芸術の宝庫いわての実現であります。
 学校と家庭、地域との協働による目標達成型の学校経営を推進し、いわて型コミュニティ・スクールと教育振興運動との連携を図りながら、学力体力の向上、生活習慣の改善、キャリア教育の推進、心の教育や特別支援教育の充実などに取り組むほか、私立学校における特色ある学校づくりを支援します。
 また、平泉の文化遺産に関する保存管理や価値の普及、追加登録に向けた取り組みを進めるほか、北海道、北東北を中心とした縄文遺跡群や、本県の史跡が含まれる九州・山口の近代化産業遺産群の世界遺産登録に向けた取り組みを着実に推進します。
 平成28年の国民体育大会の開催については、縮小開催の検討や国の支援の可能性も踏まえ、関係機関と協議しながら総合的に判断してまいります。
 政策の第6は、環境王国いわての実現であります。
 固定価格買取制度等の再生可能エネルギーの普及に向けた国の動向を踏まえ、岩手県地球温暖化対策に関する実行計画を今年度中に策定し、本県に豊富に賦存する再生可能エネルギーの活用を促進します。
 さらに、青森・岩手県境の不法投棄産業廃棄物については、平成24年度の完了を目指し撤去を進めるほか、汚染土壌の浄化等により原状回復を図ります。
 政策の第7は、いわてを支える基盤の実現であります。
 平泉の世界遺産登録を契機とした観光振興を図るため、いわて花巻空港の利用促進に加え、主要観光地の景観保全やアクセス道路の整備などに取り組みます。また、道路環境の改善、地震、洪水等の自然災害への対策などを通じて、県民だれもが安心して暮らすことができる基盤づくりに取り組みます。
 大震災津波により来年3月末まで延期された地上デジタル放送への完全移行に向けては、県で設置した地上デジタル放送電話相談窓口を通じて、県民の問い合わせへの対応や不安解消に努めてまいります。
 本年6月、フランスのパリで開催された第35回ユネスコ世界遺産委員会において、平泉-仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群-が世界遺産に登録されました。この文化遺産として東北地方で初となる登録は、岩手、東北に大きな勇気と誇りを与えました。
 私も、世界遺産委員会に出席し、登録決定の際にはスピーチをする機会をいただき、東北の人々を代表して、世界遺産登録に対する御礼と次世代への遺産の継承への決意、今回の大震災津波への世界じゅうからの多大な御支援に対する感謝の気持ちを伝えました。委員国を初め各国の代表が平泉の世界遺産登録を温かく祝福し、その思いが大震災津波への共感と重なって会場内に大きな拍手が広がり、この登録を通じて、改めて世界とのつながりを強く意識したところであります。
 奥州藤原氏の初代清衡公は、東北地方の中心に位置した平泉に拠点を置き、激しい戦乱で荒廃した国土を復興し、戦乱のない平和な理想郷を実現するため、人と人との共生、人と自然との共生の理念のもと、この世の浄土をつくることを目指しました。こうした自然への畏敬の念を忘れず、人間の尊厳を尊重するという考え方は、災害に見舞われた東北の復興に向けた理念と共通することから、先般、東北復興平泉宣言を発表し、この崇高な理念のもとに、県民とともに復興を進める決意を宣言したところであります。
 くしくも、平泉が世界遺産に正式に登録となった6月29日という日は、松尾芭蕉が約300年前に平泉を訪れ、有名な五月雨の降のこしてや光堂の俳句を詠んだ日と一致します。芭蕉の句にある中尊寺金色堂の金色に輝く光は被災地を照らし続ける復興の象徴であり、希望の光であります。今回の登録を開かれた復興の契機とし、国内外で培われた新たなつながりの芽を大切にはぐくみながら、だれもが再び人間らしい日々の生活を取り戻すことができる人間本位の復興をなし遂げ、県民一人一人が希望を持ち、黄金に光り輝く岩手となるよう、全力で邁進していく覚悟であります。
 最後に、ここにおられる議員の皆様並びに県民の皆様の深い御理解とさらなる御協力を心からお願い申し上げ、私の所信表明を終わります。ありがとうございました。(拍手)
   日程第4 認定第1号平成22年度岩手県立病院等事業会計決算から日程第43 報告第8号職員による自動車事故に係る損害賠償事件に関する専決処分の報告についてまで
〇議長(佐々木博君) 次に、日程第4、認定第1号から日程第43、報告第8号までを一括議題といたします。
 提出者の説明を求めます。加藤総務部長。
   〔総務部長加藤主税君登壇〕
〇総務部長(加藤主税君) ただいま議題とされました各案件について説明申し上げます。
 認定第1号から認定第3号までは、平成22年度の公営企業会計決算であります。
 これらの公営企業会計の決算につきましては、地方公営企業法第30条の規定に従い、監査委員の審査に付し、その意見をつけて認定に付するものであります。
 次に、議案第1号は、平成23年度岩手県一般会計補正予算(第7号)であります。
 これは、国庫支出金の確定等に伴う通常分の補正を行うほか、東日本大震災津波関連予算として、三陸鉄道や水産業の復旧、復興等、早急な整備が必要な事業について、国の第3次補正予算に先行して計上するなど、総額853億2、900万円余の増額補正を行おうとするものであります。
 補正の主なものは、生活福祉資金貸付事業推進費補助2億4、800万円余、環境放射能水準調査費1億5、700万円余、岩手県産業復興機構(仮称)支援事業費5億円余、共同利用漁船等復旧支援対策事業費110億5、600万円余、製氷保管施設等早期復旧支援事業費補助20億2、800万円余、交通安全施設災害復旧事業費10億5、000万円余、三陸鉄道災害復旧事業費補助5億7、500万円であります。
 議案第2号から議案第9号までの8件は、平成23年度の特別会計の補正予算でありますが、これは、それぞれの事業計画の変更等に基づいて所要の補正をしようとするものであります。
 議案第10号から議案第13号までの4件は、予算の補正に伴う建設事業に要する経費の一部負担及び一部負担の変更に関し議決を求めようとするものであります。
 議案第14号から議案第23号までの10件は条例議案でありますが、これは、岩手県スポーツ振興審議会条例の全部を改正しようとする岩手県スポーツ推進審議会条例のほか、特別職の職員の給与並びに旅費及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例など、9件の条例の一部をそれぞれ改正しようとするものであります。
 議案第24号は、岩手県立盛岡商業高等学校校舎改築(建築)工事の請負契約の締結に関し議決を求めようとするものであります。
 議案第25号は、財産の取得に関し議決を求めようとするものでありまして、その内容は、職員1人1台端末として利用するパーソナルコンピューターの取得に関するものであります。
 議案第26号は、権利の放棄に関し議決を求めようとするものであり、県の財団法人いわて産業振興センターに対する貸付金に係る債権を放棄しようとするものであります。
 議案第27号は、債務不存在確認請求控訴事件に係る和解に関し議決を求めようとするものであります。
 議案第28号及び議案第29号は、災害弔慰金等支給審査会の委員の任命及び平成23年東北地方太平洋沖地震及び津波に係る災害弔慰金等支給審査会の運営に関する事務の受託の協議に関し議決を求めようとするものであります。
 報告第1号から報告第6号までの6件は、公立大学法人岩手県立大学及び地方独立行政法人岩手県工業技術センターの業務の実績に関する評価結果などについて、報告第7号は、地方独立行政法人の常勤職員数について、報告第8号は、職員による自動車事故に係る損害賠償事件に関する専決処分について、それぞれ報告するものであります。
 以上でありますので、よろしく御審議の上、原案に御賛成くださるようお願い申し上げます。
   〔日本共産党退席〕
   日程第44 議案第30号教育委員会の委員の任命に関し同意を求めることについて
〇議長(佐々木博君) 次に、日程第44、議案第30号教育委員会の委員の任命に関し同意を求めることについてを議題といたします。
 提出者の説明を求めます。宮舘副知事。
   〔副知事宮舘壽喜君登壇〕
〇副知事(宮舘壽喜君) ただいま議題とされました人事案件について御説明いたします。
 議案第30号は、教育委員会の委員であります八重樫勝氏の任期が10月10日で満了となりますので、同氏を再任するため、議会の同意を求めようとするものであります。
 教育委員会の委員は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第4条第1項の規定により、人格が高潔で、教育、学術及び文化に関し識見を有する者のうちから任命することとされております。
 八重樫勝氏は、長年にわたる教育分野での経験で培った識見を有し、強い熱意に基づく精力的な委員会活動で定評があるなど、本県の教育を推進する上で必要なものと存じております。
 よろしく御審議の上、原案に御同意くださるようお願いいたします。
〇議長(佐々木博君) お諮りいたします。ただいま議題となっております案件は人事案件でありますので、会議規則第34条第3項の規定及び先例により、議事の順序を省略し、直ちに採決したいと思います。これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇議長(佐々木博君) 御異議なしと認めます。よって、これより議案第30号教育委員会の委員の任命に関し同意を求めることについてを採決いたします。
 ただいま議題となっております議案第30号教育委員会の委員の任命に関し同意を求めることについては、これに同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
〇議長(佐々木博君) 起立全員であります。よって、議案第30号教育委員会の委員の任命に関し同意を求めることについては、これに同意することに決定いたしました。
〇議長(佐々木博君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後1時53分 散会

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