令和5年2月定例会 第24回岩手県議会定例会会議録

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〇8番(米内紘正君) 自由民主党の米内紘正でございます。請願陳情受理番号第94号「安保関連3文書」改定の撤回と大軍拡・大増税の中止を求める請願が不採択となった委員長報告に対して、賛成の立場から討論をいたします。
 日本を取り巻く安全保障環境は、急速に変化しております。中国、ロシア、北朝鮮と三つの核保有国が、軍事的な拡張と挑発行為を活発化し、我が国は3方からの驚異を受けており、安全保障環境は、戦後最悪のフェーズを迎えているとも言われております。
 昨年、ロシアはウクライナに対して一方的で不当な軍事侵攻を開始しました。ロシアのウクライナに対する国家主権のじゅうりん行為は、国連憲章の原則に著しく違反する行為であります。
 ウクライナが外交努力を怠ったというのでしょうか。ウクライナが日本国憲法と同等の憲法を有していれば、ロシアはウクライナに侵攻しなかった、あるいはウクライナの人々が、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、我が国の安全と生存を保持しようと決意していれば、ロシアは攻めてこなかったのでしょうか。2014年に突如勃発したロシアによるクリミア併合は、まさに驚天動地の事態であり、そこから始まるロシアの一連の行動、意に沿わない国や地域に対して武力でねじ伏せようとする行為は、国際秩序の根幹を揺るがすものであります。
 3月13日、中国共産党の全国人民代表大会が閉幕しました。習近平国家主席は、閉幕に先立った演説にて、祖国の完全統一の実現は中華民族全体の共通の願いと語り、台湾統一に向けて強い決意を表明しました。そして、きのう22日、中国とロシアの両首脳は、戦略パートナーシップを強化する共同声明に署名し、台湾は中国の不可分な一部だとして、ロシアも中国への支持を表明しました。もはや台湾有事はいつ起きてもおかしくない目の前の危機であります。
 建国100年となる2049年までに、アメリカをしのぐ世界最強の国家となることを目標に掲げる中国は、経済成長をバックに年々軍事力を強化しており、日本が防衛力を強化しようがしまいが、中国は過去30年以上にわたって、継続的に高い水準で国防費を増加させているのです。
 すなわち、今回の安全保障関連3文書が、日本の防衛力強化が、世界の軍拡競争を加熱させるというのは見当違いであります。日本の動きに関係なく軍備増強を図る中国においては、日本を射程におさめる弾道ミサイルは2、000発以上、中国海軍の艦艇数はアメリカ海軍をも上回るようになっているのです。
 現実問題として、こうした軍備の増強を背景に、南シナ海では、環礁を不法、一方的に占拠し、軍事基地建設を強行しています。また、東シナ海では、我が国尖閣諸島に対する威嚇行動が急増しています。昨年、尖閣諸島周辺で中国海警船は28回にわたり領海侵犯を繰り返したほか、接続水域内での航行日数は336日と、2012年の尖閣国有化以来最多を記録。さらに、日本漁船に異常接近するなど軍事的な圧力を強めています。
 北朝鮮は、核開発を着々と進めながら異常な数のミサイル発射を繰り返しています。きのう22日も、日本海に向けて巡航ミサイル数発を発射しました。北朝鮮は、過去にない異例の頻度で弾道ミサイルなどの発射を繰り返しており、昨年の弾道ミサイル発射回数は36回に達し、防衛省が過去最多とする2019年の25発を大幅に上回ることとなりました。
 日本周辺では、既に多くの国が地上発射型の弾道巡行ミサイルを配備しており、日本とのミサイルギャップは深刻になっています。こうした状況下で、日本が今からミサイル阻止力を向上させたとしても、軍拡競争の引き金になるとは考えにくいのではないでしょうか。
 これらの安全保障環境を認識しながらも、今回の安全保障関連3文書が国家安全保障戦略において最優先で掲げられている事項は、外交努力であります。基本的な原則として、一つ、平和国家として専守防衛に徹し、他国に驚異を与えるような軍事大国とはならず、非核三原則を堅持するとの基本方針は今後も変わらない。我が国と他国との共存共栄、同志国との連携、多国間の協力を重視すると掲げております。
 中国との関係においても、我が国は、中国との間で、様々なレベルの意思疎通を通じて、主張すべきは主張し、責任ある行動を求めつつ、諸懸案も含め対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力していくとの建設的かつ安定的な関係を構築していくと明記されております。
 このように明文化されているにもかかわらず、請願文中にある専守防衛の原則を大きく転換するとの記載は、事実に基づかない表現であり、重大な事実誤認であります。
 また、請願文中に、対話と外交に努力することのほうが防衛力を高めると記載されていますが、それに関しても、当然のこととして国家安全保障戦略に記載されていることであります。
 そして、何よりも、まず、国家が武力を行使することについて、国連憲章では、すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならないと禁じており、武力行使については、国際法上も一般的に認められておりません。
 現在の国際状況を鑑みたときに、この国連憲章をロシアや中国、北朝鮮を差し置いて、真っ先に日本が破ると考える根拠はどこから来るのでしょうか。一体誰の視点、どこの国の視点から見れば、今の状況で、日本が真っ先に侵略戦争を仕掛けると考えるのでしょうか。
 今は、相手の意図次第で何が起きてもおかしくない、相手国の装備の高度化により、日本の安全保障上の島国としての利点も失われつつあるという情勢認識をした上で、武力による現状変更をもくろむ国から国民の命を守るために、具体的な対策を講じなければいけない時期であります。そのために国家の総合力を集中して、防衛力を核心とした安全保障体制を築き上げる必要があります。
 向上したミサイル能力への対応やサイバー船を含むハイブリッド船、宇宙やステルス技術を利用した軍事行動への対応から、4割が耐震基準を満たしていないと言われる自衛隊施設の防護機能の強化や、40年以上同じマットレスを使っているなど劣悪な環境下にある自衛隊員の働く環境整備まで、課題は山積しております。
 自衛隊を違憲とし、自衛隊の解消を目指しながらも、万が一、急迫不正の主権侵害が起こった場合には、自衛隊を利用すると主張する政党がありました。御都合主義では国民を守ることはできません。
 今回の安全保障関連3文書こそ、まさに万が一の場合のことを明文化した文書であるのです。万が一のことを想定しながら、それに対して策をとらない、変化に対応しないことは、余りに無責任であります。
 議員各位には、改めて、日本を取り巻く国際環境の変化を客観的に捉えていただいた上で、今回の安全保障関連3文書の改定の必要性を御理解賜るようにお願いしまして、委員長報告への賛成討論といたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〇議長(五日市王君) 次に、高橋穏至君。
   〔9番高橋穏至君登壇〕

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