令和5年2月定例会 第24回岩手県議会定例会会議録

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〇47番(工藤勝博君) いわて県民クラブの工藤勝博です。本会議最後の一般質問になる予定ですので、誠意ある答弁をお願いいたしまして、質問に入ります。
 達増知事4期目の県政運営について、何点か伺います。
 前回の一般質問では、県政150周年の歴史を伺い、戦後の歴代知事の足跡、業績について振り返りました。国分謙吉氏、阿部千一氏、千田正氏、中村直氏、工藤巌氏、増田寛也氏の6名の知事は、戦後、岩手県政のトップリーダーとして君臨されました。今回は現職でもあります達増知事の言動について伺います。
 まず、国政選挙における知事の動向についてでありますが、任期中に衆議院議員選挙、参議院議員選挙がありました。達増知事は、今や県内野党の中心的な存在で、野党共闘の源流を自認しているとともに、各選挙では際立った姿勢で政治行動を行っております。
 県政のトップリーダーとしての行動と政治家としての活動について、改めて知事の持論をお聞かせください。
 2021年10月31日に執行された第49回衆議院議員選挙についてのコメントで、全国的に古い政治こそが日本の政治で、地方の発展もその方向、古い政治を目指すような調子が広がったとの見解を示しております。岩手1区の結果については、ドラマチックではない展開になった。夢や希望を描いたドラマには例えられない状況とコメントしています。
 また、与党の国会議員は、地元に張りついて御用聞きをするのではなく、日本全体のかじ取りを決める。国民生活に必要な政策を与党議員が責任を持って形成し、内閣が実現する政治をする。政治家が口をきいて物が動くようであっては民主主義を損なう。与党側は、そうではない日本をつくる責任を感じてほしいなどと注文をつけています。
 そこで、国会議員の活動のあり方について、知事の見解をお聞きします。
 タブーなしとして、昨年の参議院議員選挙での知事の応援について伺います。
 全面支援、二人三脚で選挙戦を戦って県内各地を回って、県民が今、何に困っているのか、何に不安を持っているのかが直接聞け、非常に有意義だったと記者会見で示しています。そこで、県政に反映される政策があったのでしょうか、伺います。
 次に、知事の立ち位置について伺います。
 知事の役割は、地方自治法第1条の2で、地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本とし、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとするとあります。すなわち、知事は、県民の福祉の向上を図ることを基本に、行政を総合的に管理する県を総括し、代表し、行政事務を管理、執行する機関であります。
 県民のためにトップリーダーとして県行政を推し進めるのが知事ということであり、知事の政治姿勢と政治活動のあり方を考えると、決して外してはならない原点と思いますが、知事の見解をお聞きします。
   〔副議長退席、議長着席〕
 次に、国との連携について伺います
 国の政策を推進する基本は、県、市町村の持ち場と考えます。暮らしを守る、生命、財産を守る、また、災害からの復旧、復興等あらゆる分野で国との連携、意思疎通が必要ではないでしょうか。県の行政推進にとって必要な政府との折衝、要望という知事の果たすべき役割を、みずから狭めている面が多々あると感じます。
 昨年11月25日の記者会見で知事は、岸田内閣において大臣の更迭が相次いでいることを踏まえ、内閣総辞職をして責任ある内閣をつくるべきと厳しく指摘し、その上で、現政権は野党の助けをかりなければ国会の日程も組めない。政権担当能力が疑われる。救国連立内閣をつくるべきときが来ている。旧統一教会と距離を置いていた政党を軸とした政党をつくるべきと持論を展開しています。
 私は、古い人間ですからあえて申し上げます。岸田内閣には岩手2区選出で重要閣僚として国政を担っている大臣がいます。真っ向からこの内閣を否定する知事の見解をお聞きいたします。
 次に、市町村との連携について伺います
 いわて県民クラブの各議員は、一般質問、予算特別委員会、決算特別委員会の場で毎回質疑をしています。33市町村の首長からは、地域課題の解決のため、知事と懇談の機会が欲しいと要望されています。知事は年頭の会見で、差し迫った県政課題である人口減少、新型コロナウイルス感染症対策の方針を33市町村と連携して取り組む共同宣言を発出する予定とのことですが、正直言って、今さらの感があります。
 長野県の阿部知事は、2022年10月から県内全市町村を直接訪れる対話集会をスタートし、県の政策検討に外部の人材を活用することで、外からの意見や発想を県政に取り入れる施策を急ピッチで進めています。この背景として、県が直面している課題は複雑化しているので、いろいろな人の発想を取り入れなければ今後の県政は立ち行かなくなると強調しています。
 厳しい財政の中にあっても、地域振興の鍵を握っているのは地元市町村であることから、より多くの現場の声を政策に反映させることが重要ではないでしょうか。知事の見解をお聞きします。
 以後の質問は、降壇して質問席で行います。
   〔47番工藤勝博君質問席に移動〕
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 工藤勝博議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、知事としての行動と政治家としての活動についてでありますが、知事が行政の長として事務執行を行うに当たっては、公正中立、不偏不党でなければなりませんが、知事の政治的行為に制限はなく、政治家としての活動は自由であり、判例にあるとおり、知事という職務の性質上、政治的に活動することによって、公共の利益を実現することができるものであります。
 今任期中、行政の長としては、東日本大震災津波からの復興に取り組み、特に、国とは一体となって、心のケアなどのソフト事業から復興道路の完成などのハード事業まで推進しました。
 新型コロナウイルス感染症の流行が始まってからは、医療関係者から飲食店関係者まで、各分野の県民と、それまでにないような連携体制を構築し、県民一人一人に呼びかけながら、本県の感染状況を基本的に低い水準に保ち、観光では、全国上位の業況回復を実現しました。県内経済も困難に見舞われましたが、ものづくり産業の集積促進が力強く経済を底支えしました。
 また、いわて県民計画(2019〜2028)の第1期アクションプランを、幸福というキーワードを共有しながら、県民とともに推進し、第2期アクションプランの策定も進めました。
 政治活動の面では、コロナ禍により草の根の政治活動が大きく制限され、非常に残念でありました。衆議院議員選挙では、選挙運動を全く行いませんでした。参議院議員選挙では、選挙運動に参加しましたが、安倍元首相狙撃事件によって、最終盤は全国的に選挙の体をなさなくなり、不本意でありました。
 国政では、首相が3人交代し、目まぐるしい動きの中、日本経済の低迷は一層深刻な状況になり、コロナ禍に加え、ロシアのウクライナ侵攻とその世界経済への影響があり、日本政治は正念場であったはずでありますが、岩手県も含め日本全体として、国民が選挙を通じて民意を国の政策に反映させるということがうまくできなかったと思います。
 次に、国会議員の活動のあり方についてでありますが、国会議員の活動のあり方としては、原敬さんの実例が参考になります。原敬さんは、選挙は全く国家の公事であり、少しも私心を挟む事情はないとして、選挙の結果を根に持たない、まして、選挙で競い合う関係になったことを、敵になったとみなして恨むようなことはしないという姿勢でした。また、選挙での政見は国家の公事を訴えなければならぬ。決して一地方の利害を訴えるべきではないと述べ、地域エゴにとらわれて利益誘導に走ることがないように、みずから心がけ、同じ政党の同士にもそのように指導していました。
 大正デモクラシーのころの政治家のほうが、今の政治家よりも民主主義の原理原則を重んじ、真剣に政治に取り組んでいたと考えます。
 戦後、政治が大衆化して、原敬さんが政友会の同志とともに実践していた原理原則を、建前のきれいごととみなし、国民の私的な本音に訴えることで人気を得て当選を重ねようとする国会議員がふえてきたことは、残念であります。
 国民に関心を持ってもらうため、地元の問題を含め身近な話題を取り上げるのは、入り口としてはあってもいいと考えますが、選挙での投票など、いざというときの訴えとしては、私的な関心や利益ではなく、公のあるべき姿を堂々と訴える政治家の王道を国会議員は進むべきと考えます。
 次に、選挙運動への参加と県政への反映についてでありますが、県内各地を回り、新型コロナウイルス感染症や原油価格、物価高騰、人口減少の進行などの喫緊の課題について、県民の声を直接聞くことができました。
 その体験を行政に生かし、新型コロナウイルス感染症対策では、自宅療養者を支援するための、いわて健康フォローアップセンターの強化や、医療機関の逼迫を緩和するためのいわて検査キット送付センター、いわて陽性者登録センターの設置、ワクチン接種体制の強化などを行い、原油価格、物価高騰対策では、生活困窮者や子育て世帯への生活者支援や、中小企業者、農林漁業者、運輸、交通事業者への幅広い事業者支援などを行い、県民の声を政策に反映してまいりました。
 また、いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランにおいて、人口減少問題に最優先で取り組むことや、各ライフステージに応じた総合的な施策の推進、若年層の県内就職、U・Iターンの取り組みなどをプランに反映しています。
 次に、知事の立ち位置についてでありますが、地方自治法上、知事は、県を統括し、代表する者であり、県の事務を管理し、執行する者であります。
 県を統括し、代表する者としては、知事は県民とともにあることが重要であり、多くの県民と対話し、県に関する情報の共有と県政への参画促進に努めることが必要であります。
 また、県の事務を管理し、執行する者としては、知事は県職員の仕事を把握し、国の行政や市町村行政の動きも追いつつ、県民の生活や仕事の現場における事務執行の効果発現の状況把握に努めるべきものと考えます。
 さらに、知事という特別職に属する公務員は、判例にあるとおり、担当する職務の性質上、その政治活動が職務と何ら矛盾するものではなく、政治的に活動することによって、公共の利益を実現することも職分とする公務員であり、みずからの思想信条に従い、志を同じくする者たちとともに政治活動を行うことが期待されるものであります。
 次に、岩手2区選出議員を重要閣僚とする内閣への批判についてでありますが、時の内閣に深刻な問題がある場合、それを指摘し正そうとすることは、主権者国民として当然であります。責任ある社会人なら、誰であっても、自分の国をよくするためにそうすることが求められると思います。
 内閣のあり方は天下の公事であり、身近な地域の人がかかわっているとか、世話になった人がかかわっているとかいった私事を優先させて、公事へのかかわりを自粛することはよくないことと思います。まして、内閣の深刻な問題を指摘し、正そうとすることをやめさせようとするのは、非常に好ましくないと思います。
 次に、市町村との連携についてでありますが、県政の推進に当たり喫緊の課題である人口減少対策を初め、いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランに掲げるさまざまな施策等を推進していくためには、県と市町村の連携強化が必要であります。
 県ではこれまでも、県・市町村トップミーティングや県・市町村連携推進会議の開催等により、重要な施策に係る県と市町村との情報共有や意見交換を行ってまいりました。
 また、先日公表したいわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプラン最終案についても、圏域ごとの知事と市長村長との意見交換や、県・市町村トップミーティングにおいて出された市町村長の御意見も踏まえ、取りまとめたところであります。
 今後も、トップミーティングや圏域ごとの市町村長との意見交換を継続的に実施していくほか、令和5年度からは、知事が広域振興局長とともに市町村の要望の場に出席することとしています。
 知事と市町村長との情報共有、意見交換の機会を活用しながら、人口減少対策を初め、地域が直面する喫緊の課題解決に向け、実効性ある取り組みを推進してまいります。
〇47番(工藤勝博君) それぞれの項目に誠意ある答弁ありがとうございます。
 その中で、私も県議4期16年、こういう形でお世話になっておりますけれども、選挙区の皆さんのいろいろな要望あるいはまた御意見を聞きながら、議会でさまざま議論させていただきました。言うなれば、議員活動そのものが御用聞きという状況で、それは全然、それで当たり前という感じで今日までやってきました。
 知事も、衆議院議員を4期なされて、現場の声を持ちながら国政に行って、現場の声を大事にしながら法案をつくるのが私は国会議員の本分だろうと思いますけれども、そういう形で、知事は議員の活動というのをどういう形で捉えているのか、再度お聞きしたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 仕事や暮らしの現場の声に耳を傾け、住民の皆さんが思っていること、求めていることを聞くというのは、大変重要なことだと思います。
 しかし、それらを全て合わせたものが全体としてのやるべきことにそのままなるわけではなく、さまざまな声を参考にしながら、全体として、県政であれば県の視点に立って県全体のこと、そして県民の利益のこと、それはあくまで県という公としての意思決定を行うというのが、県政にかかわる人たちの役目なのだと思います。
 その途中の過程、日常の活動などで、住民の皆さんの私的な私ごと、こういうことで困っている、こうしたい、ああしたいということを聞くのは、それは問題なく、また、あっていいことだと思いますけれども、ただ、最終的に県の行政の予算や、条例を初め県の行政のありようを決定するに当たっては、個別の私ごとを理由として、私ごとのために県行政を行うのではなく、つまり行政は中立でなければなりませんので、私ごとに応えるための行政ではなく、あくまで公、県全体、県民全体の利益ということのために意思決定をして、行政を推進することが求められるのだと思います。
〇47番(工藤勝博君) それぞれ議員個々の活動のあり方はあるのだろうと思いますけれども、知事いわく、全てが民主主義のもとでの活動ということで捉えておりますが、それが実際県政あるいは国政につながるような活動であればいいという感じもいたします。
 そういう中で、先日、代表質問の答弁の中で、知事は5選を表明いたしました。私から言わせると、緻密に計算されて議場で表明されたと察します。いわて県民計画(2019〜2028)の第2期アクションプランの実現を目指すために民意を問うという形で選挙戦を戦うということだろうと思いますけれども、いわて県民計画(2019〜2028)を作成するために、知事の思いはどの程度反映されているのか、そこを伺いながら、いわて県民計画(2019〜2028)が知事の公約になるのかもあわせてお聞きしたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 先週、この場で御答弁する中で、リーダーはできるだけ国民、住民と意思を合わせる、思いを一つにするよう努めるべきと申し上げました。リーダーがやりたいことがあれば、それを一人だけがやりたいと思っていることをみんなに押しつけるのではなく、みんなにもそれをやりたいというふうに、その気になってもらうという表現を私はよく使うのですけれども、県の総合計画やそれをもとにしたアクションプランの策定については、特に、広く県民が思いを共有し、共通の意思決定として総合計画やアクションプランを決めることは好ましいと思い、その中に私も入って思いを共有していくような、そういうスタイルで取り進めてきて、今に至っているところであります。
 この幸福をキーワードにすることで、県民一人一人に寄り添いながら、県民一人一人のところにきちんと成果があらわれるような行政を行うでありますとか、また、日本全体として東日本大震災津波については風化が懸念されているのですけれども、岩手県においては、東日本大震災津波の経験というものを県政全般の基本に置き続けるということ、また、引き続き復興に取り組むということを県の基本目標に明示するということ、そこには私の復興への思いが込められているところであります。
〇47番(工藤勝博君) わかりました。
 次に、食と農林水産業の振興についてお伺いいたします。
 平成27年3月27日に、議員発議で食と農林水産業の振興に関する条例が公布され、4月1日に施行されました。今般の置かれている厳しい状況を鑑みたときに、とても重要な指針として、食と農林水産業の振興に関する条例を再確認する必要があると考えます。
 前文には、本県の農林水産業を取り巻く生産及び経営の環境は、従事者の減少、高齢化等による担い手の不足や農林水産物の価格低迷、生産資材の価格高騰などにより一段と厳しさを増しており、農林水産業者の努力、従来どおりの振興策だけでは、本県の農林水産業の発展を望むことは難しい状況となっています。
 基幹産業である農林水産業を魅力ある産業として発展させていくには、時代の変化に対応した岩手県ならではの食と農林水産業の方向性を明らかにし、行政、農林水産業者等及び県民が、一体となってその振興に取り組むことが肝要であることを明記し、本県の農林水産業の持続的な発展と、安全で安心な食の生産、供給を通じた県民の豊かな暮らしの実現を目指すことを決意し、条例を制定したところです。
 本年は、条例制定後9年目になります。藤代農林水産部長には、検討会議の素案づくりから大変御尽力をいただきました。その経緯も踏まえて、条例の果たしている役割、成果について伺います。
〇農林水産部長(藤代克彦君) 食と農林水産業の振興条例は、担い手不足、東日本大震災津波原発事故の影響、円安による資材価格の高騰、TPP協定交渉、米政策の見直しなど、農林水産業を取り巻く環境が大きく変化する中、工藤勝博議員も参加された条例案策定検討会議において、延べ15回にわたる議論の上、議員からも御紹介がありましたけれども、県民の参加と協力のもと、本県農林水産業の持続的な発展と安全・安心な食の生産、供給を通じた県民の豊かな暮らしの実現を目指し、議員提案により制定されたものでございます。
 この条例は、地域の特性に応じた収益性の高い安定的な農林水産業の経営確立や自然と調和した食の安全・安心の確保、食料自給率の向上など、本県の食と農林水産業の振興に向けた施策を総合的かつ計画的に推進するための指針としての役割を果たしてきたところでございます。
 また、この条例に基づき、県では、経営感覚にすぐれた多様な担い手の確保、育成や、地域の特性を生かした農林水産物の生産振興と経営安定、安全・安心で高品質な農林水産物の生産、供給、輸出などの施策を進めてきた結果、地域農林水産業の核となる経営体や農業産出額の増加、輸出の拡大などが着実に図られたところでございます。
 一方、今般、国際情勢の変化等による資材価格の高騰、主要魚種の不漁などが農林水産業経営に大きな影響を及ぼしており、改めて、条例制定の趣旨や理念を踏まえ、生産者、関係機関、団体と一丸となって、現下の課題を乗り越え、本県の農林水産業が持続的に発展するよう取り組んでいかなければならないと考えているところでございます。
〇47番(工藤勝博君) 条例の果たしている役割はかなり重要なことだろうと思いますけれども、今日の農林水産業を取り巻く状況は、条例制定以降、最も厳しい状況に置かれているものと思います。特に、生産資材、燃料、電気料金の高騰による収益の悪化が著しくて、離農、廃業の増加が懸念されているところでもあります。
 また、一般商品のように、コスト上昇分の価格転嫁ができない宿命も農産物の場合は多々あります。この危機的な状況を乗り切る手だて、さまざまな支援をされておりますけれども、根本的にどういう形で支援ができるのか、改めて県の認識をお伺いしたいと思います。
〇農林水産部長(藤代克彦君) 現在の農林水産業を取り巻く資材価格高騰等の根本的な対応策でございますが、現時点で為替レートは円安でありますが、こういったところがどういったところに行くのか、あるいは世界の需給動向がどういった方向に行くのかというようなところが、なかなか見通しの難しいところがあると捉えているところでございます。
 現時点では、対症療法になるかもしれませんが、まずは、省エネといったような形で経営の転換といいますか生産コストの低減化を図りつつ、そういった中で、みずからの収益を確保する取り組みについて、県では、関係機関と団体一体となりまして支援しながら、農林水産業の皆さんには、経営安定あるいは収益確保に取り組んでいただければと考えているところでございます。
〇47番(工藤勝博君) 次に、農業普及事業についてお伺いいたします。
 一般社団法人全国農業改良普及支援協会などが開いた農業普及活動高度化全国研究大会では、担い手不足が深刻化する中、今ある産地をどう維持していくのかが大きなテーマとなっています。その背景にあるのは、産地を牽引してきた団塊世代が70歳を超え、生産基盤の弱体化に歯どめがかからない現実があります。
 大会では、こうした課題の解決に向けて、地元のJAと連携しながら、新規就農者の育成、確保に乗り出したり、生産部会に新品種を提案し、産地を維持、強化したりと、各地で奮闘する普及指導員の実践事例が紹介されています。
 国は、みどりの食料システム戦略を打ち出し、2050年に向けて農業の生産性向上と持続性を維持、両立させることを目指しています。普及指導員は、JAの営農指導員とともに地域農業にとって欠かせない牽引役でもあります。農業者の減少を補う多彩な技術を活用して、担い手を支え、持続可能な産地づくりに重要な人材でもあります。
 そこで、県における農業普及事業の取り組み状況と成果についてお伺いいたします。
〇農林水産部長(藤代克彦君) 本県の農業普及事業は、常に農業者と密接にかかわり、農業者や地域からの要望に的確に対応しながら、次代を担う青年農業者の育成や農業生産の振興、農村の活性化に向けた活動を展開するとともに、東日本大震災津波や気象災害により大きな被害を受けた被災地の営農再開に向けた取り組みを支援してきたところです。
 また、今般の肥料、飼料等の価格高騰を踏まえ、土壌診断に基づく化学肥料の低減や堆肥の活用、牧草等の生産拡大技術の指導など、農業者の経営安定に向けた取り組みを強化しているところです。
 こうした活動等により、県内では、地域農業の核となる経営体や全国トップクラスの産地が形成されたほか、被災地の営農再開が着実に進んできたところであり、今後とも、現場の最前線で農業者の経営発展と地域農業の振興に貢献できるよう、関係機関、団体と連携しながら、普及指導活動の一層の充実強化を図ってまいります。
〇47番(工藤勝博君) 次に、水田の畑地化について伺います。
 国では、需要に応じた生産をするために、水田の畑地化を求めています。主食用米の需要量が2040年度に2020年度比3割減の493万トンに落ち込むとの試算を提示しています。食料安全保障の確立には農地の有効利用が必要とし、水田余りに対応した自給率向上が課題の麦、大豆への転換が必要だと強調しています。
 畑地化促進事業では、対象作物として野菜等の高収益作物、麦、大豆、子実用トウモロコシ等が示されています。緊急避難的な対応では限界があり、本作としてどう取り入れるかが問われていきます。
 水田の畑地化に当たって、県では、高収益作物としてどのような作物を推奨していくのかお伺いいたします。
〇農林水産部長(藤代克彦君) 本県では、岩手県農業再生協議会で策定した水田農業の推進方針の重点推進品目に小麦や大豆、野菜等を位置づけ、収益性、作業性等の観点から畑地としての利用が望ましい場合には、畑地化を推進しながら、生産拡大を進めています。
 特に、高収益が期待できる野菜については、需要の増加している加工業務用のタマネギやネギ、キャベツのほか、中山間地の小区画な水田でも収益が確保できるピーマン、トマトなどの作付を推進しています。
 県では、畑地化に取り組む農業者や産地に対し、畑地化した場合の収入試算や水田で野菜生産を行う場合の管理のポイント等を情報提供するとともに、国事業を活用し、機械、施設の整備や排水対策などを支援するほか、栽培技術を指導しており、今後とも、水田を最大限に活用し、農業者の所得が確保できるよう取り組んでまいります。
〇47番(工藤勝博君) 先ほども質問しましたけれども、やはり従来の発想ではなかなか収益を確保するのは難しいのではないかと思います。私も実際専業農家もやっていますので、そういうことを常々感じております。
 後ほど品種のほうでもお話ししますけれども、特に、そういう産地をつくるということは、個人ではできない品目がたくさんあるわけですけれども、産地をつくりながら、どういう形でやっていくのかというのが重要だと思います。
 そこで、産地の一つの事例として紹介いたしますけれども、国内生産量、販売額とも日本一を誇る本県特産のリンドウ、安代りんどうとしてブランド化を進めている中心産地、八幡平市の生産者で組織する新岩手農業協同組合八幡平花卉生産部会は、創立50周年を迎え、昨年11月17日に記念大会が開催されました。
 1971年、20代の生産者を中心とした農業青年クラブ、安代町4Hクラブが、冷涼な気候に適したリンドウ栽培を始め、後に旧安代町農業協同組合花卉生産部会を設立し、産地育成に向け組織的に取り組みをスタートしました。
 その立て役者は、当時、岩手県園芸試験場職員の吉池貞蔵さんと、二戸農業改良普及所安代出張所に赴任された玉山清さんとの出会いからであります。部会は、品質向上に向けた圃場巡回や出荷品の検査など厳格な管理体制を整備し、その努力が実り、1985年に本県の切り花リンドウの生産額が長野県を抜いて日本一となります。
 産地を支えている要因は、オリジナル品種の開発です。販売額の一部を研究協力費として拠出し、生産者で構成する安代りんどう開発と八幡平市の研究開発施設の共同研究で、多くの新品種を作出しています。
 産地の育成、維持発展のかなめは人材でもあります。県の研究センターを初め、次代を先取りした人材育成、研究開発の取り組みについてお伺いします。
〇農林水産部長(藤代克彦君) 県では、本県農業の発展に貢献する意欲を持って試験研究や普及指導に取り組む人材の育成に向け、研究員については、国研究機関への派遣や大学との共同研究等により、高度な専門知識や技術、現場で活用できる技術開発に必要な能力の習得を図っています。
 また、普及員については、専門技術の研修や指導方法を学ぶOJT等により、直接農業者に接し、科学的知見に基づく農業技術や経営管理指導に必要な能力の習得を図っております。
 研究開発について、これまで施設園芸の低コストの環境制御技術などのスマート農業技術の開発や、化学農薬の使用量を低減する環境負荷の少ない総合防除技術の開発などに取り組んできたところです。
 令和5年度は、地球温暖化に対応するリンドウの品種開発やデジタル技術の進展を見据えたデータ駆動型農業技術の開発を強化することとしており、引き続き、本県農業が持続的に発展するよう、農業者や地域の多様なニーズに的確に応える技術の開発と普及を進めてまいります。
〇47番(工藤勝博君) 産地育成の答弁もありました。農産物の品種の変遷は、年々ますます激しくなっています。公的機関あるいはまた民間の機関の育種戦争です。
 旧来から、種を制するものは農業を制すると言われております。まさに品種開発競争が始まっておりますし、近年では、特に、他県に許諾しない品種が多々出てきています。園芸品種などは特にであります。
 そういう状況の中で、県では岩手県農業研究センターあるいはまた公益財団法人生物工学研究センターがありますので、品種改良には最良の条件が整っていると思います。それらで他県におくれをとらないような品種改良をして、岩手県ならではの品種を作成していただければという思いが強くありますけれども、その辺の取り組みについてはいかがでしょうか。
〇農林水産部長(藤代克彦君) 今、工藤勝博議員から御紹介がありましたとおり、農業分野においては、農林水産業分野にも該当するかと思いますけれども、遺伝資源を制する者が国内での産地のトップリーダーにかなり近づくことができます。これは動物の世界でもそのとおりでありまして、県とすれば、公益財団法人生物工学研究センターで、そういったDNA開発の世界的な技術を持っているところがありますので、こういったところとしっかり連携しまして、県オリジナル品種の開発について、スピード感を持って取り組み、岩手県ならではの農産物を生産して、付加価値がついて、生産者の皆さんの所得に還元されるような取り組みを進めていきたいと考えております。
〇47番(工藤勝博君) よろしくお願いしたいと思います。
 そしてまた、地球温暖化が進む状況の中にありますけれども、特に園芸品目、米もそうですが、地球温暖化が進むと産地が移動します。従来、十分生産力が上がっていたところが、地球温暖化によって生産が落ちる。
 そういう中で、これからを考えた場合、気温が1度上がったら九州ではミカンとかイチゴはできないよと言われるくらいの危機感を持っています。それを逆手にとれば、東北地域、北海道が、これからの食料の生産基地になるのだろうと思います。そういうことも含めて、新しい地域に合った品種改良をぜひ一体となって頑張ってほしいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 次に、みちのく岩手観光立県基本条例についてお伺いいたします。
 2009年3月30日に公布され、7月1日に施行されました、みちのく岩手観光立県基本条例の推進について伺います。
 この条例は、観光立県を実現するため基本理念を定め、県の責務並びに市町村、県民、観光に関する団体及び観光事業者の役割を明らかにするとともに、観光振興の基本となる事項を定めることにより、すぐれた観光地の形成と施策の総合的な推進を図り、もって活力ある地域づくり、県民生活の向上に寄与することを目的に、議員提案条例として制定されたものです。
 15年目に入りますが、今日までの条例が果たしてきた成果と課題についてお伺いいたします。
〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) みちのく岩手観光立県基本条例を推進していくに当たりまして、平成24年のいわてデスティネーションキャンペーンを契機に、県、市町村、観光関連団体、企業等の参画によるオール岩手の推進体制を構築したところです。
 この推進体制を中心に、世界遺産や国立公園、食など、本県ならではのコンテンツを組み合わせた旅行商品の開発、売り込みを行うとともに、台湾、中国を中心とした外国人観光客の誘客拡大などに取り組んできたところでありまして、本県への延べ宿泊者数は、平成22年の510万人余から、令和元年には627万人余となり、特に、外国人延べ宿泊者数を見ますと、平成22年の9万人余から、令和元年には34万人余まで大幅に増加しております。
 また、令和2年以降のコロナ禍になりますが、全国的に観光産業はコロナ禍で大きな影響を受けている中で、県民の皆様の基本的な感染防止対策の徹底によりまして、岩手県は一貫して低い感染レベルが維持され、Go To トラベルやいわて旅応援プロジェクトが継続実施されまして、他県と比較しても高い水準で観光産業への支援が行われ、令和3年の本県への教育旅行も過去最高となっております。
 一方で、本県を含めた東北地域は、全国と比較して外国人観光客がまだ少ない状況にございます。また、観光客一人一人の観光消費額を高めていく必要もありますことから、海外市場への集中的なプロモーション、また、さまざまな産業と連携した体験コンテンツや地場産品等の購入などを結びつけたツーリズムの促進などに取り組んでいく必要があると考えております。
〇47番(工藤勝博君) みちのく岩手観光立県基本条例の果たしている役割が、かなり実績として上がっているということが確認できました。
 そこで、観光産業は、農林水産業、製造業、運輸業、宿泊業等広く波及効果をもたらす総合産業でもあります。また、県内には2カ所の国立公園、3カ所の世界遺産を有し、他県にはない豊富な資源があります。
 しかし、2011年3月に発災した東日本大震災津波の甚大な被害からの復旧、復興、さらには、2020年からの新型コロナウイルス感染症対策による行動規制、インバウンドの休止など、観光事業者にとっては苦難の連続であります。
 新型コロナウイルス感染拡大によって落ち込んだ旅行需要を喚起するとして、政府は2020年のGo To トラベル事業に始まり、全国旅行支援だけでも8、000億円が投じられ、官製の旅行キャンペーンが観光業界を支えています。ただ、支援が終わった後が勝負だと、先を捉えている経営者は発信しております。
 県は、このような状況をどのように把握しているのでしょうか、伺います。
〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) いわて旅応援プロジェクトにつきましては、本年1月までの精算実績で約112億円の利用があったところでございます。こうした中、近年、非常に観光需要が戻ってきておりまして、観光庁の宿泊旅行統計調査によれば、県内の宿泊者数は、コロナ禍前の水準に戻りつつあるところでございます。
 このような中、今般、いわて花巻空港の国際線の再開の発表があり、また、ニューヨークタイムズ紙に盛岡市が取り上げられたことを絶好のチャンスと捉えまして、盛岡市のみならず、岩手県全域に波及させ、さまざまな誘客促進の取り組みを展開していく必要があると考えております。
 このため、令和5年度岩手県一般会計当初予算案におきましては、インバウンドの拡大に向け海外へのプロモーションを展開する事業を盛り込みましたほか、来年1月から3月に、JR東日本等と連携して展開いたします冬季観光キャンペーンなども実施することとしておりますので、全国旅行支援、いわて旅応援プロジェクトになりますが、その終了後も、岩手県全域に多くの観光客を呼び込むように努めてまいります。
〇47番(工藤勝博君) ぜひ積極的なプロモーションをしていただきたいと思います。
 次に、いわて花巻空港の国際便の再開についてでありますけれども、国連の世界観光機関─本部はマドリードにあります─は、2022年の国際観光客数が前年比約2倍の9億人超となったと発表されています。ただ、新型コロナウイルス感染症流行前の63%の水準です。地域でばらつきもあり、新型コロナウイルス感染症関連の規制が続いたアジア太平洋地域は23%にとどまっています。全体としては予想以上の回復と言われ、ことしはコロナ禍前の80%から95%の水準まで回復する可能性があると予測しています。中国がゼロコロナ政策を終了したことにより、アジアの観光地の再活性化に大きなステップになると指摘しております。
 そこでお伺いいたしますが、仙台空港では、台湾エバー航空の定期便が、1月18日に2年10カ月ぶりに再就航しましたし、青森県、福島県の各空港もチャーター便を再開しています。いわて花巻空港でも、5月10日から定期便である台北線が再開することが報じられたところですけれども、チャーター便も含め、その他の路線の運航再開の見通しはいかがでしょうか。
〇ふるさと振興部長(熊谷泰樹君) いわて花巻空港の国際便の再開についてでございますが、いわて花巻空港の国際定期便2路線のうち、台北線については、5月10日に運航再開する予定でございます。上海線につきましては、昨年末からの中国国内の新型コロナウイルス感染症の感染再拡大に伴う水際措置の強化などの影響により、現在のところ、いわて花巻空港を含め、地方空港では運航再開されていないところでございます。
 このような中、国は、あす3月1日以降、中国からの入国者に対する水際措置を一部緩和することとしております。引き続き、日本の水際措置の状況等を注視しつつ、中国国内の社会情勢や航空会社の動向等につきまして、岩手県大連経済事務所などを通じて情報収集しながら、航空会社や旅行会社に対して運航再開を働きかけてまいります。
 また、その他の路線につきましては、過去に運航実績があり、訪日需要が高まっている香港やタイなどの航空会社や旅行会社に対して、東北周遊観光に適したいわて花巻空港の立地の優位性や、ニューヨークタイムズ紙に取り上げられた盛岡市を初めとした本県の魅力ある観光資源をPRし、国際チャーター便の誘致や路線拡大に取り組んでまいります。
〇47番(工藤勝博君) やはり観光客誘客におきましては、国内だけではこれからどうしようもないということだと思いますけれども、インバウンドの受け入れをどうプロモーションしていくかというのも大きな影響が出てくるのだろうと思います。そういうことも含めて、ぜひ、それぞれの国にアンテナを高めながら、取り組んでいただければと思います。
 次に、先ほど来、ニューヨークタイムズの話もありました。今まで県民が気づかなかった観光資源ということで大変注目されておりますけれども、いずれ、岩手県の基幹産業として観光業をこれからどう推進していくのか、今まさに問われているのではないかと思っております。国の支援頼みでは先細りすることは明白です。
 ニューヨークタイムズに記事を寄稿した米国出身のライター、クレイグ・モドさんが、2023年に行くべき52カ所の旅行欄で盛岡市を2番目に推薦したということが大変な反響を呼んでいて、毎日、その実態がわかるぐらい大きな反響だと思っています。クレイグさんは、盛岡市のまちから元気を感じ、そしてまた、川が流れ、自然があり、心に余裕があり優しい人ばかりだと言われています。多分会った人はみんな優しい人だったと思います。まちのスケールが、東京都と違って、逆に人が暮らすには大変暮らしやすいまちだと、外部から客観的に見た人がそう評価するということは、本当に、我々がふだんいても気づかなかった点が多々あっただろうと思います。
 そしてまた、まちの中でも、若者が、個性的で隠れ家のようなすばらしい店を出していて、明治や大正時代の建物も残っていて、歩けば歩くほど次々発見できるまちだということで盛岡市の魅力を語っておりますけれども、県民が気づかない資源をどう生かすのかが問われると思います。
 八幡平市でも我々もふだん行っているのだけれども気づかなかったドラゴンアイが数年前、ある日突然気づかれて、今、シーズンになれば渋滞が起きるくらい来てくれています。そういう資源をこれからどう生かしていくか、改めて県の認識をお伺いしたいと思います。
〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) 今般、ニューヨークタイムズ紙に取り上げられた記事におきましては、市民の日常生活の一部をなしている、例えばコーヒー店といった店舗や、我々が通勤や買い物で日常目にしている建物、風景などが大きく取り上げられているところであります。
 こうした捉え方は、盛岡市に限らず、例えば三陸海岸では、従前からの観光名所に加えまして、ハード整備の終わった新しいまち、このまち全体が、沿岸地域を訪れる人にとっては観光資源となっておりまして、こういうことは岩手県全体に共通するものであると捉えております。
 今後、これまでは必ずしも観光と関連が薄いと考えられていた店や建物を含めまして、観光振興の視点を持って、地域DMOなどを中心に、まちづくりそのものに積極的に参加していくようにしますとともに、デジタルマーケティングも活用しながら、地域が一体となった観光地域づくりを進めていく必要があると考えておりますので、そうした取り組みを県としても積極的に支援していきたいと考えております。
〇47番(工藤勝博君) 大変力強い答弁でありがとうございます。
 もう一つ、昨年、安比高原に開校したハロウインターナショナルスクール安比ジャパンは、観光と言えば少し変ですけれども、価値の高い施設です。そういう施設も含めて、一つのコースと言えば変ですが、発信できる大きな力になるのだろうと思いますので、ぜひ加えていただければと思います。
 次に、少子化・子育て対策について、何点かお伺いいたします。
 県では、ふるさとを消滅させないと、長年にわたり人口減少を県政の重要課題として捉え、平成27年2月に人口問題に関する報告書を公表しています。
 人口減少のメカニズムとして、若年女性の人口減少と出生率の低迷が自然減の要因とし、出生率低迷の背景には未婚化、晩婚化の進行があります。社会滅の波は、全国との経済、雇用情勢の差との関係が見られ、また、進学期、就職期の若者の転出による影響が大きく、特に、就職期の女性の転出が大きなポイントとなっています。
 これまでも幾度となく人口減少対策は議論されてきました。今また、人口減少対策を最重要課題として取り組むとありますが、これまで成果が出なかった要因をどう捉えているのか伺います。
〇政策企画部長(小野博君) 人口減少対策についてでありますが、人口減少は、未婚化、晩婚化や仕事と育児の両立の困難さなどを背景とした出生数の減少、若年層を中心とした転出超過等の要因が複雑に関係しているものと考えております。
 これらの要因を踏まえまして、県ではこれまで、市町村と連携した保育環境の整備、いわてで働こう推進協議会を核とした魅力ある雇用環境の整備、自動車、半導体関連産業の集積、県営住宅の活用等による移住、定住の促進などの人口減少対策に取り組み、保育所の待機児童の減少や高卒者県内就職率の向上、移住、定住者数の増加などにつながったところでございます。
 一方で、全体としての人口減少の改善には、県はもとより、市町村、団体、企業などのさまざまな主体が一丸となって取り組むことが必要でございまして、取り組みの成果が目に見えてあらわれるまでに時間を要するものもあると考えております。
 また、出生率の低下や東京一極集中は全国的な傾向であり、コロナ禍の影響により少子化に拍車がかかっていることから、抜本的な解決には、地方のみならず、国を挙げた取り組みが重要と考えております。
 このため、国に地方重視の経済財政政策の実施を求めるとともに、いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランにおきまして、市町村や関係団体等と連携して、性別にかかわらず活躍できる環境づくりや、一人一人の能力が発揮できる良質で安定的な雇用の確保を初めとする人口減少対策を強力に推進していきたいと考えております。
〇47番(工藤勝博君) この少子化問題が初めて取り上げられたのは1990年のことで、前年の1989年の出生率が過去最低の1.57を記録し、1.57ショックと呼ばれ、国でも厚生労働省を中心に、これまでの間、一貫して少子化対策に取り組んできたが、結果を出せなかったと。
 令和3年の本県の出生数は6、472人と10年前と比較しても2、838人減少しており、令和3年の合計特殊出生率は1.30と、全国と同様低下傾向が続いています。
 まさに、異次元の少子化対策は待ったなしの状況と思います。現状の課題として、本県の生涯未婚率は男性で29.61%、女性が16.70%で、平成27年度と比べると、男性は3.0ポイント、女性は3.21ポイント上昇しており、男性の未婚率が全国第5位の高さでもあります。
 また、令和3年の県勢要覧では、1日の婚姻届け出数12件でありますが、離婚数が5件もある。ここにも大きなウイークポイントがあるのではないかと考えます。どのように認識しているか伺います。
 また、県、市町村、民間団体が連携して、“いきいき岩手”結婚サポートセンターを運営していますが、マッチング支援の状況もあわせてお聞きいたします。
   
〇議長(五日市王君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
   
〇保健福祉部長(野原勝君) まず、本県の離婚件数、離婚率は、全国と同様減少傾向にあり、全国よりも低位で推移はしているところでございますが、未婚化、晩婚化の進行は本県の少子化の主な原因の一つであり、国の出生動向基本調査によりますと、30代前半までの独身者が未婚でいる理由は、男女とも、適当な相手とまだめぐり会わないからが最も多く、出会いの機会の創出や結婚支援のさらなる取り組みが必要であると考えております。
 県では、結婚支援を強化するため、i−サポの拠点の増設や出張サービス、おでかけi−サポの順次拡大、AIを活用したマッチング支援の拡充を図ってきたところであり、成婚数は、令和5年1月末現在で118組となっているところであります。
 令和5年度岩手県一般会計当初予算案におきましては、i−サポの会員数増に向けたキャンペーンや結婚支援コンシェルジュの配置などを盛り込んだところであり、県民の結婚したいという希望をかなえるため、結婚支援の強化に取り組んでいく考えであります。
〇47番(工藤勝博君) 家族社会学者の方から言わせますと、日本の少子化対策が事実上失敗に終わっているのは、未婚者の心を捉えていないというのがあること、現実に寄り添った分析あるいはまた改革、提言ができていなかったということだと言われています。
 30年前は当たり前だったことが、今当たり前ではなくなっているということで、特に先日聞いた若者の声では、結婚したくないのだと、子供も欲しくない、教育に金がかかる、自分の自由がなくなるということを言われています。それらをしっかり調査、分析しながら対策を立てていかなければ、なかなか上昇気流には乗っていかないのだろうと思っております。
 それらも含めて、株式会社大和総研が医療保険の受給者データから出生率を分析したところ、2010年から2020年度にかけての正社員女性の出生率が上昇する一方、非正規雇用や専業主婦といった被扶養者の出生率は低下していることから、正社員の女性は、育児休業中に受け取れる給付金などで社会保険や企業の両立支援制度の恩恵を受けることができる一方、逆に、非正規雇用、専業主婦向けの施策が手薄であることが影響していることが読み取れているということでもあります。このことからも、夫婦とも正社員の共働きができるかが、出生率増への大きな鍵となっているという調査も出ております。
 出生率の高いフランスやスウェーデンでは、雇用形態にかかわらず、非正規雇用や自営業者、無職や学生も含めて、子育てに関する手厚い給付が受けられる制度が確立されています。これらの事例も参考に、県でできることや国に求めるべきことについてお伺いしたいと思います。
〇保健福祉部長(野原勝君) ただいま工藤勝博議員から御紹介いただきました調査におきまして、給付拡充策の中で比較的優先度が高いと考えられるのは、現状で支援が手薄になっている3歳未満の在宅育児に対する支援であり、特に、非正規雇用者や専業主婦に、この期間の支援策が少ないことなどが指摘されております。
 県では、令和5年度岩手県一般会計当初予算案において、国の施策を待たずに、親の所得や就業の有無を問わない子育て支援施策として、第2子以降の3歳未満児を対象とした保育料等の無償化及び在宅育児支援金の支給を盛り込んだところであります。
 また、地方自治体が行う就学以降の子供の医療費助成において、国では、市町村国保に対する国庫負担金等減額調整措置、いわゆるペナルティーを講じている中、県では、市町村と連携して、高校生等への現物給付の拡大を行うこととしております。
 財政負担の大きい包括的な仕組みづくりは、本来、自治体の財政力の差などによらず、全国どこの地域においても同等の水準で行われるべきものであり、これまでも全国知事会として、幼児教育・保育の完全無償化、在宅育児世帯に対する支援制度・仕組みの構築、児童手当の所得制限の廃止などの制度拡充などについて要望を行ってきており、引き続き国に対し強く働きかけてまいります。
〇47番(工藤勝博君) 令和5年度には大分拡充する予算措置となっているわけですけれども、これからほとんどの市町村ではそういう支援に向けて取り組むのだろうと思いますが、市町村間によって格差が出てこないような対策もぜひ必要だろうと思いますので、その辺もよろしくお願いしたいと思います。
 次に、障がい児の放課後デイサービスについてですけれども、デイサービスを運営している事業者からの切実な声が届いております。八幡平市は盛岡市の北に位置し、児童が通う特別支援学校に車で40分ほどかかります。放課後等デイサービスを利用している保護者の朝の送迎が大変だという声から、福祉有償運送が始まると、保護者からは、仕事の幅が広がった、助かっていますと喜ばれ、放課後等デイサービスの利用者もふえてきたということでありますが、新たな課題が出ております。
 特別支援学校が遠いところでは高速道路を利用する場合もあることから、送迎に係るコスト負担が大きいこと。人材確保が困難なため、放課後等デイサービスの定員をふやすことができずに、今後、利用希望者があっても断らざるを得ない状況になっていること。さらに運営を困難にしているのが、昨今の諸物価高騰でもあります。
 地域で、特別な支援を必要とする障がい児が、希望するサービスを受けることができるよう取り組むことが必要と考えますが、県の見解をお聞きします。
〇保健福祉部長(野原勝君) 障がい児の放課後等デイサービスについてでございますが、児童福祉法におきましては、障がい児福祉サービスの提供主体は市町村とされているところであり、各市町村では、障がい児福祉計画にサービス見込み量及びサービス確保のための方策を盛り込み、取り組みを進めております。
 このうち、放課後等デイサービスは有資格者の配置が必要でありますことから、県では、児童発達支援管理責任者養成研修を実施し、人材育成、確保を支援しているほか、昨年12月の令和4年度岩手県一般会計補正予算(第7号)により措置いたしました社会福祉施設等物価高騰対策支援費によりまして、障がい児福祉サービス事業所への支援金を支給し、運営費の支援を行っているところであります。
 その一方で、議員御紹介のとおり、放課後等デイサービスを利用する場合の送迎は、放課後等デイサービス給付費において加算が設けられているところでありますが、距離にかかわらず定額とされており、長距離の送迎の場合は、事業者の負担が大きくなることもあると認識しております。
 一部の市町村におきましては、特別支援学校の通学についても支援を行っている事例もあると伺っておりまして、県としては、来年度の次期市町村障がい児福祉計画の策定に当たりまして、県内市町村の送迎等の取り組み状況について情報提供するなど、障がい児福祉サービスの充実が図られるよう、市町村への助言を行っていく考えであります。
〇47番(工藤勝博君) 保育所、あるいはまた給食とか、そういう支援も大事ですけれども、障がいを持っている方の支援も一人残らず目を配っていかなければならないのだろうと思います。その辺も含めて、人口減少対策の大きなインパクトのある対策になると思うので、ぜひ取り組んでいただければと思います。
 次に、海外戦略の取り組みについてお伺いいたします。
 海外戦略の有効な手段として、海外に設立されている岩手県人会との連携についてお伺いいたします。
 岩手県人会は、令和4年12月現在、18設立されています。南米が6、北米はカナダを含め4、アジアは7、ヨーロッパはフランスにあります。
 南米への移住は長い歴史がありまして、幾つかの県人会では、定期的に周年行事を開催しております。知事、議長等が出席し、本県出身者、その子弟との交流を通じて相互のきずなをさらに進化させ、本県と移住先との相互理解、友好親善を図っていることは、高く評価したいと思います。
 知事も何度か訪問していますけれども、知事は、南米県人会の活動をどう捉え、どう生かしていこうとしているのか、お考えをお聞きいたします。
〇知事(達増拓也君) ブラジルを初めとする南米の岩手県人会は、それぞれの国の発展と日本との友好関係の増進に多大な貢献をし、各国で名誉ある地位を築き、東日本大震災津波の際には、さまざまな支援をいただいたところであります。
 県としても、周年行事への代表団派遣や技術研修員の受け入れ、近年ではオンラインでの交流も行いながら、互いに尊重、協力し合い、それぞれの発展を期すべく関係強化を図ってまいりました。
 今後、新型コロナウイルス感染症のリスクが低下するにつれて、県民が世界とつながる機会は再び増加していくことから、南米の県人会を初め、岩手県に縁を持った多種多様な地域や人材とのネットワークを強化し、活用していくことが一層重要と考えます。
 世界で活躍する小林陵侑選手や大谷翔平選手のように、県民誰もが世界で活躍できる可能性を秘めており、県と県人会が協力し合い、県民や海外の県人の若い世代が未来に向かっていけるよう、今後とも連携や支援の充実に努めてまいります。
〇47番(工藤勝博君) 本当に南米の県人会は歴史があるということですし、また、長年さまざまな地域で、それぞれの地域で活躍している方もたくさんおります。そういうネットワークをこれからも大きく築きながら、岩手県で生まれた、岩手県から来たという思いが消えないような形で取り組んでいただければと思います。
 そしてまた、平成に入ってからも、中国、台湾、韓国、フランス、タイなどで設立され、県民の海外進出が旺盛になっていることがうかがえます。フランスの県人会は、盛岡市出身の丹野尚子さんが代表を務めています。丹野さんは、本県のテレビ報道現場で培った経験を生かし、フランス・パリで日本の省庁や自治体の情報発信に携わっています。また、丹野さんが勤務する会社は、日本の公的機関などがフランス、ヨーロッパでイベントや販売促進をする際の企画、運営を担っております。ヨーロッパ、世界に岩手県のすばらしさ、魅力を発信していきたいと力を込めております。
 そこで、海外で活躍する県人との連携に大きな期待があるわけですけれども、県人会と連携する取り組みをどのようにこれから発展させていくのかお伺いしたいと思います。
〇ふるさと振興部長(熊谷泰樹君) これまで、海外の県人会の皆様には、中国や米国への高校生派遣における現地交流会、今年度はコロナ禍での取り組みとして、高校生等を対象としたオンライン講演会で講師を務めていただくなど、若い世代の育成の面で多大な協力を頂戴してきたところでございます。
 また、議員から御紹介のありましたフランス岩手県人会には、本県がフランスで事業を実施する際にさまざまな御支援を頂戴したほか、ニュージーランド在住の本県出身者には、ラクビーワールドカップに合わせ、本県の高校生とのラグビー交流の実現に尽力いただいたという実例もございます。
 さらに、今般のニューヨークタイムズ紙の記事を契機に、ニューヨーク岩手県人会の会員からは、現地関係者と協力した情報発信に関する提案があるなど、県の国際関係の取り組みにおいて、現地事情にも通じた本県ゆかりの方々と連携することは、非常に有効と考えております。
 県といたしましては、今後とも、県人会活動への支援や県の取り組みの情報提供などにより関係を強化するほか、引き続き、オンラインなども有効に活用しながら、さまざまな機会を捉え、世界各地で活躍する本県出身者とのネットワークづくりに努め、連携の促進を図ってまいります。
〇47番(工藤勝博君) 県では、ソウル事務所あるいは中国には大連市と昆明市に事務所がありますけれども、そういう事務所の分野と県人会を、活用といいますか連携することも大きな力になると思うのですね。それも大きな一つのネットワークとして、これからもぜひ積極的に活用していただければいいと思いますし、輸出も含めて、交流も含めて活用の方法がたくさんあると思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 それからもう一つ、先日、八幡平市で行われましたいわて八幡平白銀国体で、アフリカのルワンダから安代りんどうが送られてきて、会場に飾られたわけですけれども、そういう交流もこれからどんどん世界各地に広げていくと、大きな岩手県の魅力が発信できるのだろうと思いますし、それがこれからの生産も含めて大きな力になってくれるのだろうと思いますので、ぜひ、そういう取り組みもしていただければと思います。
 最後になりますけれども、北岩手・北三陸横断道路の整備促進についてお伺いいたします。
 幹線道路ネットワークの整備は、地域間の交流連携や地域経済の活性化はもとより、防災、救急医療、福祉、教育、観光振興など多面的な分野の発展に大きく寄与するものであり、盛岡市以北の市町村民17万人にとって、地域の発展に大きく寄与する社会基盤でもあります。
 また、観光や災害対策の面で見ても、内陸部と沿岸部が高規格道路で結ばれることは、地域間の連携が加速し、多分野において複合的な効果が生まれるものと期待されるところでもあります。
 地元から高規格道路としての整備の要望がある北岩手・北三陸横断道路について、今後どのように取り組んでいくのか、知事にお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 県北部の道路ネットワークの強化は、災害に強い県土づくりに加え、物流の効率化や人的交流の活性化の面からも重要な課題と認識しております。
 令和3年に策定した岩手県新広域道路交通計画では、久慈市と盛岡市間の連絡強化を図るため、国道281号を一般広域道路に、さらに、これに重ねる形で(仮称)久慈内陸道路を構想路線に位置づけたところであります。
 この計画に基づき、国道281号久慈市案内─戸呂町口工区においては、来年度トンネル前後の道路改良工事を進めてまいります。
 また、(仮称)久慈内陸道路については、路線全体の整備の考え方や大まかなルートの検討状況などについて、沿線の市町村と丁寧に意見交換しながら、調査の熟度を高めていくこととしており、引き続き県北地域の道路ネットワークの構築に取り組んでまいります。
〇47番(工藤勝博君) ある旅行会社から、これでいいのか岩手県という冊子が出ていました。岩手県には縦の線が2本、高速道と沿岸道がありますが、横軸が全く貧弱であり、国道106号、釜石道路もありますけれども、盛岡市以北の横軸が全く貧弱だ、周遊できないという声があります。それらも含めて岩手県の南北格差が出ないような対策を県が率先してやるべきだろうと思いますので、その辺も含めてよろしくお願いします。
 終わります。(拍手)
〇議長(五日市王君) 以上で工藤勝博君の一般質問を終わります。
   〔「関連」と呼ぶ者あり〕

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