令和5年2月定例会 第24回岩手県議会定例会会議録

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〇20番(佐々木宣和君) 自由民主党の佐々木宣和です。
 トルコ・シリア大地震により犠牲になられた方々に、哀悼の意を表しますとともに、被害を受けられた皆様に、心からお見舞いを申し上げます。
 一般質問の機会をいただきました同僚、先輩議員の皆様に感謝を申し上げ、通告に従って質問いたします。
 まず、人口減少問題について伺います。
 今回、質問に当たって、改めてリーサス─地域経済分析システムから人口構造のグラフをつくってみました。人口問題に関する次の大きな転換点は、老年人口が生産年齢人口を上回るポイントであります。
 市町村ごとに見ると、既に現状値として西和賀町、葛巻町は、老齢人口が生産年齢人口を上回ります。2025年に逆転するのは岩泉町、普代村、田野畑村、九戸村、住田町。2030年に逆転するのは一戸町、陸前高田市、八幡平市、岩手町、軽米町、野田村、洋野町。2030年、7年後までに生産年齢人口より老齢人口が多くなるのは実に14市町村であり、2045年には、私は60歳で還暦を迎えるころですが、その未来には33市町村のうち22市町村において、老齢人口が生産年齢人口を上回ると予測されています。
 つまり、岩手県の市町村の大部分で、支える人よりも支えられる人が多くなるということです。県としての学校や医療の話はもちろん考えなければなりませんが、エリアごとに世代、性別での動きを詳細に把握した上で、エリアと市町村でどのような将来像を目指すのかを共有し、20年後、30年後を見据えたアクションを起こしていかなければなりません。
 人口減少問題については、世代によって捉え方や考え方が違うことにも留意が必要です。私もいろいろな立場の方とお話をしますが、若い世代であれば、これからどういうアクションを起こしていくかに興味が集まりますが、高齢世代については、今の環境が変わってしまうのかという不安が先に来ます。
 地域代表と世代代表として世代間の考え方をすり合わせ、将来へのベクトルを指し示すのが仕事であり、人口ボーナス期の考え方を踏襲し、あのころはよかったというノスタルジーに引きずられることなく、今の時代、この先の時代に価値のある地域を世代を超えて、地域を超えて楽しみながらつくっていくことが重要であります。
 さて、10年間のいわて県民計画(2019〜2028)が策定されて、4年間のアクションプランが間もなく終わります。主観的な幸福感が上昇しているとのことが、第2期政策推進プランに示されています。
 地域の実態を踏まえた政策を進めるに当たり、この主観的幸福感の広域圏ごとの状況、人口動態との相関をどう捉えているのか、そして、幸福感と地域振興プランの進捗との関連、取り組みの状況はどうなっているか伺います。
 また、幸福度導入による効果について、どう考えているのでしょうか。主観的な指標、客観的な指標を合わせて評価するということでしたが、この幸福度、県民意識調査が具体的に政策に反映されているのか伺います。
 県北・沿岸振興について伺います。
 これまでの取り組みを振り返ると、平成18年度から平成22年度までは、所得格差の解消を基本方針に掲げた産業振興。平成23年度から平成26年度までは、東日本大震災津波からの復興と合わせ、県北振興重点の姿勢を基本方針に県の支援強化をアピール。平成27年度から平成30年度までは、地方創生の取り組みとも合わせた人口問題への的確な対応。令和元年度からは、いわゆるゾーンプロジェクトがスタートし、産業、社会の革新、交流人口と経済の拡大、地域の未来を担う人材の確保と育成。そして、令和5年度からは、さきの4年間をより広げるようなイメージで、二つの世界遺産や三陸ジオパーク、震災の記憶と教訓の伝承、環境、地域の学習を通じた地域の未来を担う人材の育成、県北地域と沿岸地域の連動を進めるやに伺いました。
 組織の変遷を見ると、平成18年度に地域振興支援室内に県北沿岸振興担当を設置。その後、令和2年度に大きな変化があり、人員体制が約2倍の15人に増員され、県北・沿岸振興室として専任組織化されました。
 ところが、当初予算の推移を見ると、県北・沿岸圏域の主な振興対策事業費については、震災や2度の台風、新型コロナウイルス感染症等の影響による増減もあり、はっきりとした傾向は捉えづらい一方で、ゾーンプロジェクトについては、北上川バレープロジェクト予算の増加が目立っており、県北・沿岸地域よりも成果の出やすい県南地域に注力していると言われても仕方がないのではないかという状況であります。
 会議に出席するたびに市町村長から聞くのは、県の方向性は理解するが、具体的にどうするのかということです。そして、北いわて産業・社会革新ゾーンプロジェクトに関しては、社会革新を目指すものであり、理念がベースにあるのでなかなか伝わりづらいこと、県北・沿岸振興のスタートは所得格差の解消であったはずが、昨今の取り組みは、複合化する課題を中長期で解決するという方向に向かっているやに感じます。どちらも必要なことでありますが、強力に産業振興に取り組むということがなければ、中長期の取り組みも意味がないものになってしまいます。
 知事は、これまで取り組んできた県北・沿岸振興の成果をどう評価するのか、また、そもそも県北・沿岸振興が図られたというのはどういう状況を考えているのか、政策への市町村の理解と県に求められる実行力に関してどう考えているのか伺います。
 次に、市町村との連携について伺います。
 県北・沿岸地域においては、東日本大震災津波現地復興推進連絡会議等の開催を通じ、県と市町村との連携が図られてきたものと承知しています。
 この間、東日本大震災津波、2度の台風災害があり、県から市町村へ多くの職員を派遣していただきました。このことは早期の復旧、復興に大きな役割を担ったことであり、感謝を申し上げます。
 さて、災害復旧に関しては、市町村と県の役割を超えて連携をしていただいていますが、県と市町村との人事交流については、平成24年から令和4年度までで、市町村から広域振興局、本庁が292人、広域振興局、本庁から市町村が194人となっています。市町村から県のほうが県から市町村よりも多いということであります。
 人口減少対策においては、それぞれの市町村の政策と県の政策をすり合わせる必要があること、また、さきに触れたとおり、市町村ごとの特性や考え方を県の職員が理解し、相互に連携を図っていくことが重要であると思いますが、県と市町村の人事交流についてどう取り組んでいくのか伺います。
 次に、中小企業小規模事業者振興について伺います。
 平成26年の小規模企業振興基本法の制定が一つのトリガーとなっています。平成27年には、県の中小企業振興条例が制定され、市町村における条例制定も推進されています。令和元年には、小規模企業振興基本計画(第II期)が閣議決定され、事業者プラス地域の持続的発展が盛り込まれました。
 こういった流れがあることから、小規模事業者持続化補助金については、平成28年の台風第10号災害では広く活用されました。また、新型コロナウイルス感染症に関しても、小規模事業者持続化補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金等の拡充がされ、支援策が展開されています。
 新型コロナウイルス感染症対策で象徴的なのが事業再構築補助金です。本県における応募件数が少ないことは、以前予算特別委員会でも指摘しましたし、県としての目標についても伺いました。チャンスを使い切れていないのではないかとの懸念があります。
 コロナ禍は大変な打撃ですが、震災後の開業率を見ても、ピンチのときほどチャレンジしやすいのも道理です。特に、チャレンジすることに対する意識醸成や支援体制が不十分ではないかと考えますが、所見を伺います。
 また、第3期計画が示されている令和元年から令和4年の事業規模を見ると1、332億円から698億円となっており、県予算全体の削減割合を上回る形になっています。国のさまざまな支援事業を活用するための土台が不十分ではないかと考えていますが、中小企業、小規模事業者振興についてどう考えているのでしょうか。
 コロナ禍による急激な環境変化の中にあって、中小、小規模事業者が事業を継続、発展させるため、さらには新たな起業、創業を促すためにも、ハード、ソフト両面からのサポートが必要と考えますが、所感を伺います。
 さて、コロナ禍における大きな打撃を受けた観光業に対して、将来の期待をつくる必要があります。それが観光データの活用だと考えています。
 データの活用に当たっては、継続性とそれを活用していくフレームが重要であります。コロナ禍でいわて旅応援プロジェクト等の取り組みを県が実施してきました。その取り組みのデータはありますが、今後は、事業者やさまざまな主体と連携し、継続して生きたデータを収集、分析する必要があります。また、GPSを活用した動態のビッグデータも注目されてはいますが、これを活用するためには一定の費用がかかります。
 実施に当たっては、多くの関係者の理解を得るとともに、意識を高めていかなければならず、特に地域DMOには、マーケティング機能を担う組織として、今度こそその役割をしっかりと果たしてもらうよう、県からの働きかけを期待します。
 インバウンドの回復も見込まれる中、観光に関しては、広域的な視点から県がしっかりと取り組む必要があり、また、このデータの活用が進めば、キャンペーンの実施から始まるPDCAサイクルがしっかりと回るきっかけともなります。観光データの活用について、関係者とどのように取り組んでいくか伺います。
 次に、デジタルトランスフォーメーションの推進について伺います。
 デジタル社会・DX推進調査特別委員会の調査で静岡県掛川市の話を伺いました。デジタルトランスフォーメーションに取り組むことは、職員や市民が減っても維持できる仕組みづくりを今から進めることであり、平成時代のICTによる効率化や費用削減のためだけではなく、人口減少局面において、根本的にやり方を変えて、技術も活用し、維持できるようにするとのこと。まさしくそのとおりだと思いますが、これを推進するためには、DXの取り組みで県民生活がよくなる、岩手県がおもしろくなる、その実感と成果をモチベーションにつなげていく必要があります。
 今回、岩手県DX推進計画の最終案が示されました。岩手県ICT利活用推進計画における取り組みと課題を見ると、携帯電話網の人口カバー率が99.8%まで進み、光ファイバーの整備は、令和3年度までに整備を希望する全市町村で完了。
   〔議長退席、副議長着席〕
 デジタル化の取り組みが進んでいない自治体を支援する必要等が書かれています。GIGAスクール構想でのタブレット整備ではありませんが、あるものをどう使っていくか、なかなか進んでいなかった部分をどうしていくのかが重要であり、また、効率化の先にあるものを目指す姿勢が必要です。
 市町村に対する助言支援について伺います。
 国では、令和7年度までに、市町村の基幹業務システムのいわゆるガバメントクラウドへの移行や、行政手続のオンライン化を進める方針を示しています。
 県では、DX人材育成セミナーやアドバイザー派遣を通じて市町村支援を実施しているとのことですが、特に小規模自治体は、スケールメリットが発揮されにくいため、効率化するには、データが多い自治体や人員に余裕のある自治体のほうが進みやすいのが現状です。
 小規模自治体を初め、市町村のDXの取り組み支援について、首長の意識、メリットの理解、専門人材の確保等どう取り組んでいくのか伺います。
 次に、情報発信について伺います。
 未来を切り開くプロジェクトの人交密度向上プロジェクトについては、スタート時、日本初の関係人ロデータベースを契機とし、関係人口先進県へと掲げられていました。4年が経過しましたが、そのベースとなる基盤はフェイスブックページのいわてのわかと思いますが、大きなテーマの一つである関係人口の拡大に向けて、どう取り組んでいくのか伺います。
 また、コロナ禍における岩手県の情報発信では、LINEが大活躍しています。いわてのわは1.5万のフォロワーですが、岩手県−新型コロナ対策パーソナルサポートのLINEは20万以上の友達数となっており、日々刻々と変わる新型コロナウイルス感染症関連情報をタイムリーに発信できたことは、県民の安心にもつながったと考えます。
 LINEは、利用者の多さや手軽さ、情報伝達の迅速さから活用事例が広がっており、プッシュ型で情報発信できるツールとしては、一番のユーザー数ではないかと思います。実態把握やニーズ調査にも役立つのではと期待しますが、LINEを今後はどう活用していく考えか伺います。
 次に、水産業振興について伺います。
 近年、本県のサケ、サンマ、スルメイカなどの主要魚種の水揚げ量は激減しており、大不漁と呼ばれる状況にあります。特にサケは、沿岸地域の経済を支える重要な水産資源であります。
 かつては、平成8年度には約7万トンの漁獲を記録しましたが、その後は2万トン台にまで減少、さらに、震災後は、海洋環境の変化などによると思われますが、減少を続け、令和3年度には、ついに漁獲量は413トンと1、000トンを下回る大不漁となり、漁業者はもちろんのこと、水産加工業者や流通業者などの関係者は、早期の資源回復を切望しているところであります。
 このサケの大不漁によって漁協のふ化放流事業も大変厳しい状況となっており、必要な種卵の確保も難しいと聞いており、今後のサケ資源の回復が、さらにおくれてしまうのではと非常に危惧しております。
 今期のサケ稚魚の放流目標数は約7、500万尾と伺っておりますが、ことしの春先から始まるサケ稚魚の放流に向けて、どのように種卵を確保し、現在、どの程度の種卵が確保できているのか伺います。
 また、県は、近年のサケの大不漁の原因をどう捉え、資源回復に向けてどのように対応しようとしているのかを伺います。
 次に、漁業協同組合の経営支援について伺います。
 近年のサケの大不漁により、漁協が自営事業として実施する定置漁業の収益が十分確保できず、経営が非常に厳しいものとなっております。
 定置漁業の主要魚種であるサケの資源回復は、海洋環境の変化等の影響を受けるものでもありますが、放流したサケ稚魚が回帰するのは4年後以降となり、他の収益増加策に取り組むなどにより漁協経営を改善するにも時間を要すると思われます。
 県では、この大不漁による漁協経営への影響をどのように捉えているのか、また、生産力向上のための漁業者の協同組織として、漁協は自立した経営を維持、継続していかなければいけませんが、県として、漁協に対しての支援についてどのように対応しようとしているのか伺います。
 近年、頻発する大型台風や爆弾低気圧によって、本県沿岸部でも異常な高波が発生し、漁船の転覆被害等が確認されていると聞いております。
 特に外洋に面した漁港では、波浪警報等のたびに高波が防波堤を越えてくるため、安全に漁船を係留できず、漁船を陸揚げするなど非効率な漁業活動を余儀なくされております。また、防波堤などを越えてきた波が、漁港内にある水産施設を破壊するなど被害も生じています。
 漁港は、水産業の拠点として重要な役割を有しており、頻発化する大型台風等による自然災害に備えて、漁業協同組合や漁業者に安全、安心を与えることが必要と思います。
 そこで、県では、漁船の転覆や漁港内の水産関係施設などの被害を防止する高波対策をどのように進めていく考えか伺います。
 林業振興について伺います。
 来る6月4日に第73回全国植樹祭いわて2023が開催されます。前日の6月3日には第51回全国林業後継者大会が行われ、全国各地で林業の将来への継承に取り組む方々が集まるとのことであり、準備に取り組む皆様に感謝を申し上げるとともに、開催を心待ちにしているところであります。
 さて、岩手県県産木材等利用促進条例が施行され、岩手県県産木材等利用促進基本計画及び行動計画がスタートしてから間もなく4年が経過します。この間、ウッドショックという出来事もありましたが、木材利用促進の機運は、全国的にも広がっているように感じます。また、最近ではウッドチェンジというキーワードも聞くようになりました。
 条例制定に当たっての一番の思いは、木材利用が進むことによって、岩手県の森林整備が進むこと、山側に対しての還元が進むこと、そして川上、川中、川下の連動であります。4年間の総括と第2期岩手県県産木材等利用促進行動計画について伺います。
 J−クレジット制度の取り組みについて伺います。
 先日、勉強会に参加してきましたが、制度自体の説明の後、先進的に取り組んできた県内の事業者、岩手県の県有林に関する取り組みを聞きました。質疑では市町村から参加された方の積極的な発言もあり、制度活用に向けた期待感を感じました。
 先進的に取り組む方からは、山元まで経済的メリットが回り、地域の森林林業の取り組みを応援するという理念を忘れないでほしいこと。金融機関や企業、大規模案件等さまざまなつながりが広がったこと。そして、制度改正への対応が挙げられました。プロジェクト規模などのハードルはあるものの、森林林業と企業、団体等とのつながりを広げるすばらしい取り組みであると再確認しました。
 さて、県有林のJ−クレジットの取り組みについて、地元金融機関との連携による地元企業等への販売が好調であり、残り発行数量が108トンとのことですが、今後の取り組みについて伺います。
 また、岩手県では、その目的を県内の先行事例として、市町村や森林所有者にモデルを示すこととしています。市町村は取り組んでみたいと考えているところが多いやに聞いていますが、初めての取り組みはなかなかハードルが高いとも思いますし、県有林についても、オフセット・クレジット(J−VER)制度から、また新たな認証要件になっての改めてのチャレンジとなります。
 市町村や森林所有者と前向きに取り組んでいただきたいと考えますが、所感を伺います。
 道路整備について伺います。
 広い岩手県において、道路整備は地域の希望を生み出してきました。私の地元で言うと、国道106号の高規格化は何度通っても感動を覚えますし、早坂トンネルが開通した出来事は、きのうのことのように思い出されます。
 さて、復興道路、復興支援道路を初め、多くの道路整備がかつてないスピードと規模で進みました。しかしながら、市町村からは、まだまだ多くの要望があります。私も繰り返し道路に関する質問をしていますが、改めて伺います。
 国道455号について、国道106号の高規格化が進み、見比べるとなかなか難しい状況です。天峰山付近の改良や拡幅に関して要望も継続して上がっていますが、令和5年度当初予算案ではどのように取り組む考えか、特に盛岡市側の整備について伺います。
 国道340号に関して、先日は国道340号宮古岩泉間整備促進期成同盟会の要望もありました。岩泉町側の浅内工区の令和5年の取り組み、宮古市側の和井内―押角工区の取り組みについて伺います。
 また、国道340号全線で見ても、2車線区間でない残りの未整備区間に関して、宮古─岩泉間の整備計画を示すことが強く要望されていますが、このことについてもあわせて伺います。
 地域連携道路整備事業費について資料をいただきました。平成22年は81億円、平成28年にピークとなり436億円、うち復興枠が392億円。復興の枠も年々下がっていき、令和2年には250億円、うち復興分が186億円。そして、令和3年度には51億円となっており、令和4年もおおむね同水準ではないかと思われます。
 岩手県にとっては一つのターニングポイントとなる令和3年度予算が大きく減少しましたが、どのような取り組みをしていたのか伺います。
 今回質問した路線に関しても、その他の要望箇所についても、この予算規模ではなかなか苦しいところであります。国道340号の要望に際しては、沿線の首長から知事と市町村長で共同で要望させてほしいという発言もありました。
 震災前よりも事業費が少なくなっている現状をどう捉え、市町村からの要望にどう応えていくつもりなのか。予算獲得のための要望活動に関して、枠の拡充は毎年行われていると承知していますが、現実的にこの数字感ではなかなか期待しづらいのではないでしょうか。
 知事の道路整備に対する思いと、市町村と連携しての予算獲得のための要望活動等にどう取り組むのか伺います。
 宮古港について伺います。
 宮古港の大きな課題として、藤原地区の工業用地があります。
 県有土地、建物の活用状況について資料をいただきました。県全体の県有地における未利用地割合は1.4%。その中で沿岸部は35万5、000平方メートル、内陸部は73万平方メートル。その中で宮古藤原工業用地は約13万8、000平方メートル、実に沿岸部の未利用地の中で40%弱を占めており、この課題を解決していくことは非常に重要です。
 毎年、宮古市からも要望をいただいている課題でもありますが、藤原地区の工業用地について、県はどのように考えて取り組んでいくつもりなのか伺います。
 宮古―室蘭フェリー航路の休止から、さまざまな取り組みをしていると承知しています。最近のニュースとしては、2030年度末の北海道新幹線札幌延伸を受け、十勝管内に農作物の大規模物流拠点をつくる構想が浮上しているとのことです。十勝管内の2020年の農業産出額は3、042億円で、全道の約4分の1を占めます。また、本州からの帰りの荷物が課題であるとの指摘があります。
 フェリー航路で言えば、室蘭―青森フェリーが10月の就航を目指し準備中です。また、県内で言えば、盛岡市に大型物流拠点約75ヘクタールを整備、国道106号との連動に期待とさまざまな動きがあります。
 岩手県議会港湾議員連盟で県外の先進港を調査するたびに感じることは、そのスケール感の違いです。宮古港をハブとした大きな絵を描き、本気になって営業活動をして、それを事業者に提示していかないと、なかなか実現は難しいのではないかと思います。
 県土整備部だけでどうにかなるのかという話であり、部局を横断し、専門の営業マンを配置するぐらいでなければ難しいと訴えておりますが、宮古―室蘭フェリーの復活を含めて、宮古港の活用にどのように取り組んでいくつもりなのか伺います。
 最後に、知事の政治姿勢について伺います。
 本定例会においてもさまざまな質問があったところですが、政務秘書にかかわる答弁で、知事自身が、自分の政治基盤を県内において強く高めていくことは、知事が、強力なリーダーシップをとって県政を進めていくことに役立ちますと答弁されています。また、行政のトップとしての仕事は、政務秘書なしで回そうと思えば回せるとも発言されています。
 この真意は、将来利益のために信念と強い意志を持って、県職員を初め、市町村の首長や関係するさまざまな方々を巻き込み背中をどんどん押していくことであり、行政の枠組みを超える政治的な働きかけを生かすということだと考えます。
 知事就任直後はかなり挑戦的なマニフェストを掲げていたと思いますが、変革を促すという部分に関して言えば、トーンダウンしている印象です。知事は、先般の参議院議員選挙においても、野党共闘体制に関して、後援会を介して政策協定を仲介したとのこと。
 就任以来、一貫して選挙においては立憲民主党を初めとする国政野党を応援していますが、政治的に活動する効果に関しては長野県知事の判例を挙げられることが多いですが、判例ではなく、16年間の任期中、野党共闘を初めとする政治活動や選挙に積極的に参画した具体的な成果を県民に説明していただきたいと思いますが、知事の所見を伺います。
 また、知事は、選挙においては政権与党に対する過度なそんたくや過剰な遠慮はしない、主権者国民の投票が最大の政治力を持つところに本質があり、多くの国民の支持する政党に実行力が与えられるのが民主主義と発言されています。
 個別具体の話に関しては、政府が決定することに関して、地方自治体としてどこまで踏み込んだ意見を言うかについては、知事として配慮するところがあるとの発言もありました。
 選挙によって実行力を与えられる政権与党に対して、どう政治的なつながりをつくり、政策的な効果を上げるために動いてもらうかは、県政のトップとしては当たり前の行動のように思います。
 我々は、震災や台風、新型コロナウイルス感染症対策を経験しました。これらの予算は、その多くを国に頼ることになりましたが、我々は、応援していただいたことを返していかなければいけないと思っております。それは地域の発展であり、新しい価値の創造です。
 参議院議員選挙における政策論は、どうしても不安に寄り添う部分が強くなったと思っています。しかしながら、悲観主義は気分、楽観主義は意志という言葉があるように、変化を見きわめた具体的な行動をとっていかなければ、明るく過ごすことはできません。
 我々がどのような将来をつくるかを、行政の枠組みを超えた政治的なつながりで解決することが求められていると思いますが、所感を伺います。
 また、知事選に当たってのマニフェストについて、前回の知事選では、いわて県民計画(2019〜2028)の推進という、県行政の計画を着実に進めるということでしたが、知事個人の強い思いを反映した公約がなければいけないと考えますが、所感を伺います。
 以上で私の質問を終わります。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 佐々木宣和議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、県北・沿岸振興についてでありますが、これまで県北・沿岸振興本部において、所得格差の解消など、4年ごとに取り組みの基本方針を定め、全庁を挙げてその振興に取り組んでまいりました。
 県北地域では、企業誘致や地域産業の強化に取り組み、造船業の立地、増設やブロイラーなどの食品関連産業の業容拡大により、雇用機会が拡大し、アパレル産業の製造品出荷額も増加しました。
 沿岸地域では、新たな道路ネットワークの整備や港湾機能の拡充により輸送効率が格段に向上し、食品、物流関係の工場の新設、増設を初め、コンテナ取扱貨物量も拡大するなど、沿岸地域と内陸地域が一体となり復興が進展してまいりました。
 この結果、両地域において1人当たりの市町村民所得は上昇し、県平均との乖離も縮小しているほか、有効求人倍率も上昇しています。
 また、三陸ジオパークの認定、橋野鉄鉱山や御所野遺跡の世界遺産登録、“奥南部”漆物語の日本遺産認定や漆かきのユネスコ無形文化遺産登録など、地域で大切に守られてきたすぐれた資源が、国内外から高い評価をいただいています。
 これは、地域の強みや課題を市町村と共有し、その具体的な対応をともに進めてきた成果であり、今後も引き続き、市町村と共通の認識のもと、多様な主体とも連携しながら、県北・沿岸地域の振興に積極的に取り組んでまいります。
 次に、予算獲得のための要望活動についてでありますが、道路を初めとする社会資本の整備は、県民の安全・安心な暮らしを守り、地域の産業振興を支えるために不可欠なものであり、安定的に必要な事業費を確保していくことが重要であります。
 このため、道路等公共事業予算の安定的、持続的な確保について、毎年度、国に働きかけてきたところであり、昨年6月に実施した令和5年度政府予算提言・要望においては、国土交通省に赴き直接要望したところであります。
 また、道路ネットワークの枢要をなす直轄道路の整備は特に重要でありますことから、国道4号盛岡南道路や国道106号田鎖蟇目道路等の直轄道路整備事業の新規採択に向けて、市町村長や関係団体とともに、国に直接要望してきたところであります。
 今後とも、県内の道路整備や防災、減災対策が着実に進むよう、予算確保や直轄道路の新規事業化への対応に加え、国土強靱化等の重要政策の推進について、市町村長等と一体となった効果的な要望活動に取り組んでまいります。
 次に、知事の政治活動の成果についてでありますが、平成19年、私が知事就任直後の参議院議員選挙で、自由民主党が歴史的大敗、いわゆるねじれ国会となりました。その後、安倍首相が退陣し、首相交代が繰り返され、平成21年の衆議院議員選挙で民主党が大勝し、政権交代となりました。私もそれらの選挙にかかわり、岩手県からも日本の政治の流れを変える大きな力に参画していました。
 岩手県は、全ての県選出国会議員、県関係比例選出国会議員が民主党となりました。民主党のマニフェストは、岩手県の国会議員が岩手県民の声をもとに策定に大きな貢献をしており、私もその政策形成にかかわりました。
 こうした中、平成23年に東日本大震災津波がありました。
 挙国一致内閣を立てる構想など、重要な政治的な動きもありましたが、私は直接関与せず、行政の長として、知事の役割を果たす状況が続きました。ただし、知事選においては、オール岩手で策定した復興計画の浸透を掲げて運動し、これを県民に広めるに当たっては、ふだんから政治活動をともにしてきた政治家や団体の皆さんの力の結集が大きく貢献しました。
 平成24年12月の解散総選挙において、民主党政権が崩壊し、安倍内閣が成立しました。行政の長としては、内閣発足直後に復興大臣などを訪問し、安倍政権との連携体制を築きつつ、政治家としては、さきに述べた民主党マニフェストに示される国民の生活が第一の方向性に沿って、改革志向の勢力再結集を岩手県で実現し、全国に広めることが最重要課題となりました。
 その後、行政の長としては、安倍、菅、岸田各政権と連携しながら、復興、文化・スポーツ振興、地方創生を初め県政課題に取り組み、政治家としては、いわゆる野党共闘や無党派層を含む県民党的結集をキーワードにしながら、志を同じくする県民の皆さんと活動をともにしてきたところです。
 私の政治活動は、政権交代可能な日本政治の確立という成果にまでは至っていませんが、政権交代という国民主権の発現を軸にしながら、政治参加を促し、有権者の投票をより意義あるものにし、そのための議論を根づかせるという面では、岩手県民の政治活動を活性化し、全国的な政治状況に影響を及ぼすという成果は出せていると考えます。
 次に、政権与党とのかかわり等についてでありますが、行政の長である知事としては、何党が与党であれ、内閣を頂点とする政府との関係については、公正、中立な行政のプロ同士、憲法遵守を初め、法令にのっとりながら、県は住民福祉の増進、政府は国民利益の追求のために全力を尽くし合う関係であり、そうあるべく努めてまいりました。
 与党との関係についても、党幹部に対する要望、提言を行うとともに、党の会議に出席し、説明や答弁を行うなどしてきたところです。
 政府・与党への要望、提言等については、例年6月に、各政策分野を網羅した上で本県の現状や課題を伝え、政策的な提言や予算の要望を行っているほか、新型コロナウイルス感染症対策のように、随時かつ必要に応じて全国知事会として要望、提言したり、また、医師不足・偏在解消を図るため、地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会と自由民主党の議員連盟と連携して活動するなどしてきたところであります。
 次に、知事選の公約についてでありますが、選挙は、有権者が公職につく者を選ぶことを通じて、その集団の進む方向を決定することであります。選挙後、選ばれた者のもとで行政が何を実行していくのか、選挙の時点で具体的に共有できればできるほど民意が反映されやすくなります。したがって、現職が立候補する場合に、既に有権者とともに策定した行政の計画があれば、その実行を公約にするのは、民主主義の観点から極めて自然なことであります。
 4期目の知事選において、選挙後、県行政が何をやるかを選挙公約の中で示し、広く県民的に共有するため、3期目の現職知事として県民とともに策定した、いわて県民計画(2019〜2028)の推進を公約としたことは、当然のことであると考えます。
 その際、県民とともに策定した県民計画の内容は、私の思いも込められたものであります。幸福をキーワードに幸福関連指標を採用し、基本目標に、お互いに幸福を守り育てるを掲げたことは、県民一人一人に着目し成果を出すことへの私の強い思いが込められており、また、同じく基本目標で、東日本大震災津波の経験に基づきということを県政全般の大前提としたこと、引き続き復興に取り組みと明記したことには、私の復興への強い思いが込められています。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔ふるさと振興部長熊谷泰樹君登壇〕
〇ふるさと振興部長(熊谷泰樹君) 主観的幸福感と地域振興についてでございますが、主観的幸福感の広域振興圏ごとの状況については、岩手県総合計画審議会に設置している県民の幸福感に関する分析部会において、直近の令和4年県民意識調査の結果といわて県民計画(2019〜2028)第1期アクションプランが始まる直前の平成31年調査を分析していただいており、それによると、県南広域振興圏と県北広域振興圏では実感が上昇し、県央広域振興圏と沿岸広域振興圏では横ばいとなっております。
 主観的幸福感と人口動態の推移を見ますと、それぞれの変化の向きが異なっている状況にあり、直接的な相関は見られないところでございますが、主観的幸福感を構成する要素は多岐にわたっており、人口の変動要因もさまざまでありますことから、県としては、引き続きこれらの動向を注視してまいります。
 地域振興プランの推進に当たっては、これらの動向のほか、市町村との意見交換や圏域懇談会等を実施し、地域の代表や若者、女性などから幅広く意見を伺いながら、県民や地域が置かれている状況等を踏まえ、政策推進プランや復興推進プランに掲げる施策等と連携し、移住、定住や若者の地元定着の促進などの地域課題の解決に取り組んでおります。
 現在策定を進めている第2期アクションプラン案におきましても、さまざまな主体との連携、協働のもと、人口減少対策を最優先に、ふるさと振興に取り組んでまいります。
 次に、市町村との連携についてでありますが、県では、議員から御紹介がありましたとおり、従来から県と市町村が連携、協働して地域課題の解決に取り組むため、人事交流を実施してきたところでございます。
 県と市町村との人事交流により異なる経験や視点を持つ職員が相互に刺激を受けることで、双方の職員の資質向上につながるとともに、相互理解の進展によって県と市町村との一層の連携や強化が図られてきたほか、人的ネットワークの形成により、県、市町村相互における質の高い施策形成に貢献してきたと考えております。
 また、交流を実施するに当たっては、市町村から、例えば、企業誘致について職員育成や県との連携強化を図りたい、水産振興施策の強化に向け県で関係業務を学ばせたいといった業務上の課題や職員育成のニーズを伺った上で、配属先の検討や県からの派遣職員の人選などを行っているところであります。
 人口減少対策については、県と市町村がより一層連携を強化し、さまざまな地域課題や市町村ごとの事情も考慮しながら取り組みを進めていく必要があり、そのためにも県と市町村の人事交流は重要と認識しております。引き続き、市町村の意向や地域課題なども考慮しながら、積極的に人事交流を進め、職員相互の理解増進や協力関係の構築を図ってまいります。
 次に、DXの推進に係る市町村に対する助言支援についてでございますが、県内各市町村では、基幹業務システムの標準化や行政手続の電子化などに取り組んでおりますが、外部の専門人材の確保や職員の育成、さらなる住民サービスの展開などに課題を有していると認識しております。
 こうしたことから、県・市町村トップミーティング、岩手県副市長会議や県・市町村連絡推進会議などの場を活用し、各自治体幹部のDXへの意識を醸成するとともに、県、市町村職員向けのDXセミナーを開催し、デジタルリテラシー向上を図っているところでございます。
 また、小規模な自治体を対象とし、県の専門人材の派遣によるDX推進計画の策定支援や、AI、RPAツールの導入に向けた課題調査による業務フローの見直し支援を行っているところでございます。
 今後とも、市町村における取り組み状況の把握に努めるとともに、県のDX推進専門官やDX推進コーディネーター等の専門人材の派遣、職員向けのDX関連研修の共同実施、電子申請システムの共同利用の推進、県及び各市町村が任用するDX専門人材間のネットワークの構築など、県内全市町村が着実に取り組みを推進できるよう、きめ細かに支援してまいります。
 次に、関係人口の拡大に向けた情報発信についてでございますが、本県では、関係人口の拡大に向け、情報発信プラットフォームとして、フェイスブックいわてのわを活用し、岩手県とつながるさまざまな情報を発信しております。
 本年度においては、移住者や首都圏で岩手県を盛り上げる企画に取り組む若者など、さまざまな形で岩手県とかかわる方々のインタビュー記事の定期的な配信、各部局が運営するSNSが連携して、世界遺産など共通のテーマに沿った情報を集中的に発信する取り組み、地域おこし協力隊の活動紹介、市町村や県内各地域のトピックスなど、これまで、昨年度の3倍を超える情報発信を行っております。
 また、情報発信と連動した広告を配信し、いわてのわに誘導する取り組みなど、関係人口の増加に努めているところでございます。
 今後、さらなる関係創出やより多くの主体を地域活動や課題解決への参画と結びつけるためには、ターゲットを意識した発信とともに、岩手県とのかかわり方の発信を強化していくことが重要と考えております。
 引き続き、各部局と連携し、岩手県に関心を持つ層、訪れる、かかわる層、また、二地域居住等への誘導も含めた岩手県に拠点を持つ層のそれぞれの層に効果的な情報発信に努め、関係人口の拡大を図ってまいります。
   〔政策企画部長小野博君登壇〕
〇政策企画部長(小野博君) 幸福度の政策への反映についてでありますが、県民意識調査から得られる主観的幸福感につきましては、有識者で構成する県民の幸福感に関する分析部会におきまして、主観的幸福感と関連する12の分野別実感に分けて実感が変動した要因を分析いただいており、県では、その要因と客観的な指標等から政策を総合的に評価し、毎年度の政策評価レポートの評価結果に反映させ、県民の実感も踏まえた政策を展開しているところです。
 例えば、実感が低下している政策分野で見ますと、安全の分野においては、実感が低下したことの推測される要因といたしまして、自然災害の発生が多く、被害も大きくなっている等の災害に対する不安についての意見があることから、これを加味し、災害マネジメントサイクルの推進や、日本海溝・千島海溝沿い巨大地震などの今後起こり得る大規模自然災害に備え、自助、共助、公助に基づく総合的な防災、減災対策を推進することとしています。
 また、仕事・収入分野におきましては、実感が低下したことの推測される要因といたしまして、自分の収入、所得額が十分とは言えないなどの意見があることから、県民の所得向上に向けて、起業、スタートアップの支援、県産品の輸出やインバウンド誘客の強化、農業DXや県産木材利用の促進、漁場の生産力向上等の取り組みを推進することとしております。
 次に、LINEの活用についてでありますが、総務省が全国を対象に実施した調査によりますと、LINEは年代を問わず幅広く利用され、その利用率は90%を超えております。他のSNSと比べても多くの方が活用している情報伝達手段であると認識しております。
 こうしたことから、昨年9月に岩手県のLINE公式アカウントの運用を開始し、各種支援制度など生活に役立つ情報やイベント、キャンペーン、観光情報などにつきまして、利用者の希望に対応した配信をしております。
 また、LINEは、議員御指摘のように、アンケート機能を有しております。ことし1月からアンケートを試行しておりまして、今後の利活用に向けて研究を行っているところです。
 引き続き、利用者のニーズを的確に把握し、LINEの特性を生かしたタイムリーな情報発信に努めますとともに、アンケート機能を活用して、施策や事業に関する県民ニーズの把握等にも活用していきたいと考えております。
   〔商工労働観光部長岩渕伸也君登壇〕
〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) まず、中小事業者のチャレンジへの支援についてでありますが、県では、商工指導団体を通じた専門家派遣による伴走支援等により、事業再構築補助金の活用を含め、中小事業者が取り組む新分野展開や業態転換など、新たなチャレンジを支援しているところです。
 このような支援により、旅館施設を改修して新たにリハビリ介護事業を始めた取り組みや、イートインから自社の特徴を生かした新商品開発とテークアウトへと業態転換を行った取り組みなど、幅広い業種で、すぐれた取り組み事例が多く生まれてきているところです。
 こうした取り組みについて、例えば、岩手県商工会連合会では、いわてビジネスイノベーションアワードとして表彰を行い、多くの関係者を集めて事例発表会を行うことにより、すぐれた取り組み事例の普及拡大に努めているところです。
 また、岩手県中小企業団体中央会を通じて、事業者が連携して行う地域課題解決に向けた取り組みに対する補助を今年度から開始しており、この取り組みの中でも新たなチャレンジを行う事例が生まれております。
 今後も、こうした取り組みを継続するとともに、いわて中小企業事業継続支援センター会議の場で、金融機関の方々とも事例共有するなどにより、中小企業の新分野展開や業態転換等のチャレンジを推進してまいります。
 次に、中小事業者の支援についてでありますが、中小企業振興施策に関する予算については、近年、中小企業東日本大震災復興資金貸付金や中小企業等復旧・復興支援事業費などの震災復興関連予算が大幅に減少しているところです。
 本県では、中小事業者が全企業数の99.8%、全従業員数の89.1%を占めており、東日本大震災津波という困難やコロナ禍、エネルギー、原材料価格の高騰、さらには人手不足や賃上げ、後継者確保といった直面する課題を乗り越えていくためには、中小、小規模事業者の発展が重要と考えております。
 こうした考え方のもと、令和5年度岩手県一般会計当初予算案には、資金繰り支援としての融資の充実や、生産性向上を実現するための伴走支援、事業承継者の新分野進出への支援のほか、県内で起業等を希望する若者や女性を対象とした無利子、無保証料の開業資金貸付制度の創設などを盛り込んでいるところであり、これらの事業を有機的に連携させつつ展開することで、地域経済を牽引する中小企業のさらなる発展を実現してまいります。
 次に、観光データの活用についてでありますが、各種観光統計やいわて旅応援プロジェクトなどの利用実績から得られるデータを多角的に分析、可視化するシステムとして、いわて観光データマネジメントプラットフォームを構築したところでございます。
 このプラットフォームを活用し、旅行者個々の年代、どこから来たか、県内の周遊ルート、飲食や買い物の状況などの客観的なデータに基づき、さらなる誘客拡大や、より満足度の高いサービス提供を行っていくデジタルマーケティングによる観光振興を進めていきたいと考えております。
 現在、広く観光関連事業者を対象とした実践塾を開催しているところでありますが、このプラットフォームにおいて、地域の生きたデータを継続的に収集、分析していくためには、プラットフォームの有益性を地域の関係者に十分に理解していただくとともに、個別の事業者のデータは閲覧できないような配慮も必要と考えているところです。
 今後、現在のプラットフォームを活用したデジタルマーケティングに基づく観光戦略の展開を広めつつ、さらに多くのデータを利用できる運用体制の構築を進め、いわて観光データマネジメントプラットフォームを中心に据えた観光地域づくりを推進していく考えです。
   〔農林水産部長藤代克彦君登壇〕
〇農林水産部長(藤代克彦君) まず、サケの不漁対策についてでありますが、サケの不漁の原因は、国の不漁問題に関する検討会の報告書によれば、海洋環境の変化に伴う春先の海水温の上昇や、餌となるプランクトンの減少等により、放流後のサケ稚魚が十分に成長できず、生き残る割合である生残率が低下したことなどとされております。
 サケ資源の回復に向けては、稚魚の生産に必要な種卵の確保とともに、生残率の高いとされる大型で強靱な稚魚の生産と適期放流により、サケの回帰率を向上させていくことが重要であります。
 このため、種卵について、今年度は、目標とする約8、600万粒の確保に対し、県内のみでは確保が難しいことが懸念されたことから、北海道など県外からの調達にこれまで以上に努め、目標を上回る約1億粒を確保したところでございます。
 現在、県内のふ化場においては、大型で遊泳力の高い強靱な稚魚を確実に確保していくため、改良した餌等を活用した生産に取り組んでおり、県としては、引き続き関係団体と連携しながら、サケ資源の早期回復に向け、全力で取り組んでまいります。
 次に、漁業協同組合の経営支援についてでありますが、県内の漁協は、秋サケ等の主要魚種の不漁により、依然として定置漁業の収益が低い水準にあるものの、サバやイワシ、ウニやアワビ等の水揚げ金額が増加したことにより、令和4年度決算においては、多くの漁協の収益改善が見込まれるところです。
 県ではこれまで、漁協の経営状況を踏まえ、経営改善指導とともに、資金繰りの改善に活用可能な借りかえ資金への利子補給を行ってきたところであり、国においても、不漁等により経営が悪化した漁協が、経営基盤の強化に必要な資金を円滑に調達できるよう、利子や保証料の助成等を行う金融支援を措置してきたところです。
 今般、国では、補正予算において、定置漁業を行う漁協の収益構造の転換に向けた支援事業を措置したところであり、県としては、こうした事業の活用を進めるとともに、漁業関係団体と連携しながら経営改善指導を行うなど、引き続き漁協経営が安定するよう支援してまいります。
 次に、高波対策についてでありますが、県では、漁業者が安心して漁業活動ができるよう、漁港の防災、減災機能の強化を進めており、防波堤や護岸などの漁港施設の設計に用いる沖合の波の高さである波高を、高波被害の状況等を踏まえ、従来の9メートル程度から10メートル程度と1メートル引き上げしたところです。
 この新たな設計波高に基づき、これまで19漁港で防波堤や護岸等のかさ上げ、拡幅などに取り組み、普代村の太田名部漁港などの整備が完了したところです。
 令和5年度岩手県一般会計当初予算案には、山田町の船越漁港や田野畑村の平井賀漁港など、11漁港の防波堤や護岸等の改良に要する経費を盛り込んでおり、今後とも、地域のニーズを踏まえながら、関係機関、団体等と連携し、災害に強い安全な漁港づくりを進めてまいります。
 次に、県産木材の利用促進についてでありますが、県では、県産木材等利用促進行動計画に基づき、公共施設等での率先利用や県産木材を利用する住宅の新築等への支援とともに、県産木材の安定的な供給に向けた高性能林業機械の導入や再造林等の森林整備などへの支援を進めてきたところです。
 また、県民運動として、いわて木づかい運動を展開し、県産木材を活用する事業者の登録や、県民が木に触れる、木を知るなど、県産木材への関心や理解を深める取り組みを行ってきたところです。
 これまでの取り組みにより、本県の公共建築物の木造率は2年連続で全国第1位となるとともに、県内の大手工務店で県産木材の利用が開始されたほか、民有林の再造林面積が計画策定前に比べ約3割増加しており、今後も、県産木材のさらなる利用拡大と安定供給体制の強化が重要と考えております。
 このため、第2期の行動計画案には、民間商業施設等での利用拡大や伐採跡地への植栽支援、木材の需給情報を共有する仕組みづくりなどを盛り込んでおり、こうした川上から川下に至る総合的な施策の展開を通じて、本県の林業、木材産業が持続的に発展するよう取り組んでまいります。
 次に、県有林J−クレジットについてでありますが、県では、県有林の間伐による二酸化炭素吸収量をクレジットとして販売する県有林J−クレジットについて、県内の金融機関と連携しながら、企業等への販売を行い、これまでに発行量の98%を販売したところです。
 新たなクレジットの発行に当たっては、伐採木材を木製品として利用した場合の炭素固定量がこれまで対象外とされていたこと等が課題であったことから、見直しを国に要望し、今年度、国の制度が見直しされたところです。
 新たな県有林J−クレジットの発行に当たっては、対象とする県有林の区域等を定めた計画書を国に提出し、森林資源量の調査を行った上で発行を申請することとされていることから、令和5年度は、国への計画書の提出や森林資源量を調査することとしており、引き続き、現在のクレジット販売とともに、新たなクレジットが発行できるよう取り組んでまいります。
 次に、市町村等への支援についてでありますが、県内では、一関市や民間企業等において、所有する森林の二酸化炭素吸収量をクレジットとして販売する取り組みが行われており、さらに、今般の制度見直しによりクレジット算定の対象が拡大されたことから、市町村や森林所有者等の関心や活用機運が高まっております。
 このため県では、見直しされた制度の概要やクレジット発行に必要な取り組み、県内や県有林での取り組み事例を紹介するセミナーを開催するとともに、制度の活用に関心を寄せる市町村等からの相談に対応してきたところです。
 令和5年度においては、制度の活用を進めていくため、市町村や林業関係者等を対象とした地域説明会、パンフレット等の配布とともに、クレジット発行に必要な具体的な手続等を学ぶ研修会などを行うこととしており、森林由来のクレジットの創出と活用が図られるよう積極的に取り組んでまいります。
   〔県土整備部長田中隆司君登壇〕
〇県土整備部長(田中隆司君) まず、国道455号についてですが、平成28年台風第10号により浸水被害が発生した岩泉町乙茂工区においては、現在、中里地区や中島地区など5地区において道路のかさ上げやバイパス整備を進めており、令和5年度は中里地区の完成を見込んでおります。
 また、盛岡市側では、藪川地区及び逆川地区の約3キロメートルにおいて、側溝整備により路面幅の拡幅とスリップによる路外逸脱を防止する工事に新たに着手するための経費を、令和5年度岩手県一般会計当初予算案に計上したところです。
 引き続き、河川改修と一体となったかさ上げや冬期交通の安全確保工事を進め、災害に強く信頼性の高い道路ネットワークの構築を目指してまいります。
 次に、国道340号についてでありますが、岩泉町側については、旧浅内駅付近から国道455号交差点までの1.4キロメートルについて、浅内工区として今年度事業化したところです。令和5年度は、引き続き現地測量や用地調査を実施する予定としております。
 また、宮古市側については、押角トンネルに接続する1.7キロメートルを和井内─押角工区として令和2年度に事業化したところです。これまでに道路詳細設計がおおむね完了し、一部区間の改良工事を行ったところです。令和5年度は、用地測量及び用地補償を行う予定としております。
 残る未改良区間については、幅員が狭く、急カーブが連続していることから、整備が必要な区間と認識しておりますが、まずは、宮古市側の和井内─押角工区、岩泉町側の浅内工区の早期効果発現が図られるよう、整備に注力するとともに、道路の利用状況等を見きわめてまいります。
 次に、予算の確保についてでありますが、令和2年度の復興・創生期間の終了に伴い、令和3年度の道路等公共事業予算の大幅な縮小が見込まれていたことから、令和2年6月の国土交通省との意見交換におきまして、県内経済への影響や予算確保の重要性について共有したところです。
 さらに、防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策の期間の延長など、公共事業予算の確保について、令和2年6月から11月までに4回、国へ要望したところです。
 この結果、令和3年1月に成立した道路や河川等の国土強靱化5か年加速化対策等の国の補正予算では、東北各県の中で最大の約354億円の事業費が措置されたところです。
 この補正予算と令和3年度当初予算を合わせた令和3年度実行予算ベースの道路整備予算は、令和2年度比10億円増の約59億円となっております。
 次に、藤原地区の工業用地についてでありますが、県では、宮古港の臨港地域への企業誘致を図るため、藤原地区において約26万8、400平方メートルの工業用地を造成し、平成11年度までに、3社に対し約13万200平方メートルを分譲したところです。
 その後も用地の分譲促進に取り組んでまいりましたが、東日本大震災津波発災後から令和元年度までの間は、未分譲地の一部について、災害廃棄物の仮置き場や復興工事の資材置き場として利用されていたところです。
 今後とも、宮古港の利用拡大のため、関係部局や宮古市と連携しながら、企業訪問などを行い、宮古港藤原地区の工業用地の分譲促進に努めてまいります。
 次に、宮古港の活用についてでありますが、物流や観光、交流の拠点である宮古港において、宮古―室蘭フェリー航路の再開とクルーズ船の寄港拡大が重要な課題と認識しております。
 フェリーについては、三陸沿岸道路の冬季の信頼性や盛岡南インターチェンジ周辺の物流拠点の整備計画等を昨年9月の宮古・室蘭フェリー航路連絡調整会議において共有するとともに、訪問対象の範囲を北関東まで拡大し、荷主企業等28社にインターチェンジ直結型の宮古港の優位性などをPRしてきたところです。
 引き続き、宮古市等と連携しながら企業訪問を行い、新たな貨物の掘り起こしに努めるとともに、得られた企業動向などをフェリー運航会社と共有し、航路再開に向け取り組んでまいります。
 また、クルーズ船については、来年度、17万トン級を初め計7回の外国船社の寄港が予定されており、大型船の寄港が可能であることや、コロナ禍前と比べ、道路整備に伴いオプショナルツアーの圏域が大きく拡大したことなどの宮古港の利点を、クルーズ船社や旅行会社も参加するツーリズムEXPOジャパン2023等において広くPRしてまいります。
   
〇副議長(小野共君) この際、暫時休憩いたします。
   午後3時33分 休 憩
   
出席議員(44名)
2  番 上 原 康 樹 君
3  番 小 林 正 信 君
4  番 千 葉   盛 君
5  番 千 葉 秀 幸 君
6  番 岩 城   元 君
7  番 高橋 こうすけ 君
8  番 米 内 紘 正 君
9  番 高 橋 穏 至 君
10  番 山 下 正 勝 君
13  番 高 田 一 郎 君
14  番 佐々木 朋 和 君
15  番 菅野 ひろのり 君
16  番 柳 村   一 君
17  番 佐 藤 ケイ子 君
18  番 岩 渕   誠 君
19  番 名須川   晋 君
20  番 佐々木 宣 和 君
21  番 臼 澤   勉 君
22  番 川 村 伸 浩 君
23  番 ハクセル美穂子 君
25  番 木 村 幸 弘 君
26  番 吉 田 敬 子 君
27  番 高 橋 但 馬 君
28  番 小 野   共 君
29  番 軽 石 義 則 君
30  番 郷右近   浩 君
31  番 小 西 和 子 君
32  番 高 橋 はじめ 君
33  番 神 崎 浩 之 君
34  番 城内 よしひこ 君
35  番 佐々木 茂 光 君
36  番 佐々木   努 君
37  番 斉 藤   信 君
38  番 中 平   均 君
39  番 工 藤 大 輔 君
40  番 五日市   王 君
41  番 関 根 敏 伸 君
42  番 佐々木 順 一 君
43  番 伊 藤 勢 至 君
44  番 岩 崎 友 一 君
45  番 工 藤 勝 子 君
46  番 千 葉   伝 君
47  番 工 藤 勝 博 君
48  番 飯 澤   匡 君
欠席議員(1名)
1  番 千 田 美津子 君
   
説明のため出席した者
休憩前に同じ
   
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
   
午後3時53分再開
〇副議長(小野共君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。工藤勝博君。
   〔47番工藤勝博君登壇〕(拍手)

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