令和5年2月定例会 第24回岩手県議会定例会会議録

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〇18番(岩渕誠君) 希望いわての岩渕誠です。登壇の機会を与えていただきました全ての皆様に感謝し、質問いたします。
 冒頭、トルコ・シリア大地震でお亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りするとともに、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。東日本大震災津波では、我が国も支援やお見舞いを受けており、関係機関には、復興に向けた支援をお願いするところであります。
 質問に入ります。
 最初に、達増県政の目指す岩手の姿についてお尋ねいたします。
 達増知事には、これまで、東日本大震災津波、岩手・宮城内陸地震、幾多の台風被害など、未曽有の災害復旧と復興の対応を初め、新型コロナウイルス感染症対策、ウクライナ戦争や世界同時インフレに端を発する物価高対策など激動の時代にあって、常に県民に寄り添い、暮らしの安定に注力していただきました。高く評価し、敬意を表したいと思います。
 私は、政策を立て推進していく大もとには、三つの要素があるべきと考えています。
 一つ目は時代認識。過去からの流れを理解しつつ現在地を読み解き、あるべき未来を見通すことであります。
 二つ目は現状把握。今、世界はどうなっているか、日本の現在地はどこか。その中で岩手県はどんな状況か。今は何ができていて、岩手県の何が課題か、今後何をなすべきか。県民を下支えする県の財政状況や人材の育成状況を含めて、今をどう分析するかというものです。
 そして最後は、政治哲学、理念であります。政治家であれば、政治家となった原点、志というべきものであり、政治は何のために、誰のためにあるかという問いへの答えそのものでしょう。この政治哲学、理念こそ、政策の推進力であり、政治家のカラーです。各種指標の設定など政策工学的なアプローチやAIが進展する中でも、これらはあくまで政策決定における補助線であり、政治哲学や政治理念にこそ人間が政治を行う意味があるのではないでしょうか。
 この点、知事は、草の根の知恵と力を総結集。答えは現場にあるという言葉で示すとおり、現場の声をひときわ重視し、誰ひとり取り残さないという言葉で、共生社会の実現を弱者の立場に寄り添いながら進めてきたと思います。
 その政治哲学が政策にあらわれた一つが、特別支援学校の整備だったと思います。知事就任当時、特別支援学校を取り巻く環境は課題が多くありました。最も驚くべき環境であったのは、教室不足です。入学する児童生徒の増加や障がいの重度化、多様化に整備が追いつかず、一つの教室にカーテンを引いて二つの授業が同時に行われていたり、本を廊下に出して図書室を教室として使用するなどの状況が見られました。小学校や中学校の通常学級ではあり得ない環境で、それを知った知事は、早速視察に赴き、直ちに改善に着手したのであります。
 これまでに99億6、000万円余、およそ100億円を投資し、盛岡となん支援学校や釜石祥雲支援学校の新築のほか、一関清明支援学校の校舎の増築や盛岡ひがし支援学校の大規模改修を初め、全ての特別支援学校で施設の整備を行ってきました。
 一部の特別支援学校では、受け入れる児童生徒数が予想を超えて増加しているため、教室不足は解消されていませんが、知事就任当時に県全体で不足していた教室数は、現在では半減されています。
 このほか、障がい者支援施設やさわの園にも足を運び、環境整備をスタートさせました。
 これこそ、政治哲学と理念が物事を進めた代表的な達増県政の政策であり、正しく評価されるべきものです。
 県は現在、いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランを策定し、この議会に最新案を示しています。新型コロナウイルス感染症、ウクライナ戦争、物価高騰など、我が国の存立を足元から見詰め直さざるを得ない中、このプランに込められた時代認識、現状把握と理念についてお示しください。
 さて、これまで論じてきた時代認識と現状把握、そして、政治哲学と理念を背景として、目指すべき県政の姿を最も形にしているのが予算であります。
 厳しい財政環境の中、総額7、714億円に上る新年度一般会計当初予算案は、人口減少対策を最優先とし、第2期アクションプランに沿って、自然減・社会減対策、GX─グリーントランスフォーメーション、DX─デジタルトランスフォーメーション、安心・安全な地域づくりの四つを重点とした内容となっています。
 コロナ禍の経験を踏まえ、世界が新しい激流に対応するために大変革を求められている中で、あるべき岩手の姿を追求した内容が盛り込まれていると思います。
 四つの重点項目には、今年度を113億円上回る1、060億円が計上されていて、新規事業も82億円分が含まれています。
 特に注目すべきは、妊娠、出産支援と子育て支援など人口減少対策であります。これまで幼児教育、保育の無償化の対象とならなかった3歳未満の第2子以降の実質無償化や、在宅育児への支援金の給付など、いずれも所得制限なしでという他県にも例を見ない新規事業として盛り込まれており、大きく踏み込んだものと評価します。
   〔議長退席、副議長着席〕
 財源を見ても、国からの臨時的な交付金に依存せず、県の一般財源で措置したことは、制度の恒久的な取り組みとしたもので、県としての決意と覚悟を読み取ることができますが、この点について知事の所感をお伺いいたします。
 また、妊婦や子育て家庭への相談支援や経済的支援も新規事業として9億6、700万円が計上されたほか、医療費助成についても現物支給を高校生まで拡大し、窓口負担の軽減を図るなど、妊娠から出産、子育てまで切れ目のない支援の強化が図られています。
 これらの事業は、予算的には市町村と足並みをそろえて実施するたてつけとなっています。ありていに言えば、市町村が予算をつけなければ実施されないものですが、人口減少対策に関する市町村の予算措置の動向はどうなっているのか、あわせてお伺いいたします。
 妊娠支援、いわゆる不妊治療についても予算案では拡充が図られました。
 以前から指摘しておりますが、不妊治療の一部保険適用は大きな前進には違いありませんが、対象となる医療施設が限られる本県においては、交通費負担が重くのしかかっており、解決を望む声は大きくなっていました。
 我が国では、今や体外受精で誕生する子供たちは赤ちゃんの14人に1人とも言われています。しかし、それでも不妊治療件数は世界一なのに対して、出生する割合の低さなど、我が国の不妊治療を取り巻く問題は依然として多く、妊娠を望む者にとってハードルは低くありません。
 不妊治療は極めてナイーブです。治療しても多くの死に直面し、何度も慟哭する人がいます。治療自体についても、誰にも打ち明けられない苦しみを抱えて生きている人も少なからずいます。生殖補助医療を諦め、深い悲しみを秘めて暮らす人もいますが、まだまだこうした点については、社会の理解は進んでいません。
 医療としても、この分野はまさに日進月歩ですが、保険適用に踏み込んだものの、治療できる医療機関が首都圏など大都市に集中し、そのほとんどは公的医療機関ではありません。
 地方としてできることに限りはありますが、不妊治療について、県の見解と国への働きかけを含め県としての今後の取り組みをお聞かせください。
   〔18番岩渕誠君質問席に移動〕
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 岩渕誠議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、目指す岩手の姿といわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランに込めた理念等についてでありますが、平成19年の知事就任以来、危機を希望に変えるため、いわて希望創造プラン、いわて県民計画により、東日本大震災津波の災害対応と復興を推進し、幸福をキーワードに、いわて県民計画(2019〜2028)を策定して、県政の諸課題に取り組み、県民所得の向上、雇用環境の改善、人口の社会減の縮小など、さまざまな成果を県民とともに上げてまいりました。
 一方、コロナ禍で加速している少子化や、やはりコロナ禍で加速したDXへの対応、地球温暖化対策や巨大地震への備えは待ったなしの状況であります。世界共通のパンデミック、戦後国際秩序を揺るがす戦争の影響が、地方の暮らしや仕事の現場に及び、県民の生活や県民経済を脅かしていますが、このようなときだからこそ、県民一人一人に着目し、県民一人一人に寄り添う計画とその実行が求められています。
 いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランは、先人が築いてきた基盤とノウハウの上に、東日本大震災津波の経験と復興の取り組みを通じて築いた新たな基盤とノウハウを合わせて策定しており、このプランのもと、岩手県の底力を全面的に引き出して、誰もが生活、仕事、学びに、岩手県をベースに、希望を持ってお互いに幸福を守り育てられるようにする取り組みをオール岩手で進め、県はその先頭に立って政策を推進してまいります。
 次に、人口減少対策に係る予算についてでありますが、第2期アクションプランでは、人口減少対策に最優先で取り組むこととし、自然減、社会減対策を進めるため、結婚や子育てなどライフステージに応じた総合的な施策や、U・Iターンの促進など移住、定住政策を強化することとしています。
 特に、自然減対策においては、子育てに係る経済的負担の軽減は重要な課題と認識し、国の施策を待たずに、県の積極的な取り組み姿勢として、県独自で財源を確保しながら、全国トップレベルの子供子育て環境の実現に向けた施策を打ち出しました。
 具体的には、第2子以降の3歳未満児に係る保育料の無償化、不妊治療に要する交通費の助成や妊産婦を対象としたアクセス支援の拡充、妊娠時から出産、子育てまでの一貫した伴走型相談支援、医療費助成の高校生等への現物給付の拡大などの新規事業を盛り込んだところであり、県と市町村が連携してこれらの事業に取り組むことにより、さらなる相乗効果が期待されます。
 各市町村においては、地域の実情に応じた子育て支援施策の拡充に取り組む中、これらの新規事業についても、現在、ほとんどの市町村が、その実施に向けて検討を進めていると承知しており、県としては、市町村と一体となって、オール岩手で人口減少対策を強力に推進してまいります。
 その他のお尋ねにつきましては、保健福祉部長から答弁させますので、御了解をお願いいたします。
   〔保健福祉部長野原勝君登壇〕
〇保健福祉部長(野原勝君) 不妊治療についてでありますが、不妊治療のうち、体外受精や顕微授精などの生殖補助医療は、本年度から保険適用となったところでありますが、こうした診療を行うことができる医療機関は、県内では現在、盛岡市内の2カ所のみとなっております。
 こうした医療機関が少ないことに加え、広い県土を有する本県の地理的状況などから、移動に係る受診者の負担軽減を図るため、県では、新たに生殖補助医療を受けた方に対する通院交通費の一部助成を令和5年度当初予算案に盛り込んだところであります。
 生殖補助医療は極めて高度な先進医療であるため、さらなる医療機関の拡充のためには、施設、設備の整備や従事する医師、胚培養士などの専門人材の養成が課題であり、国レベルでの対応が必要であると認識しております。
 不妊に悩む方々が、県内で希望する治療を受けられるよう、県としては、これまでも政府予算提言・要望において、治療提供体制の充実を図るための支援を要望してきたところであり、引き続き国に働きかけてまいります。
〇18番(岩渕誠君) 人口減少対策、特に子供子育て支援というのは、国はいろいろ言うのですけれども、結果的に、やはり先行しているのは地方であります。その中でもさらにトップクラスに持っていこうということは、私は大変有意義な政策だと思いますし、大きな覚悟があるのだと思います。
 倍増と一元という言葉が好きな内閣なのですけれども、先般の記者会見で、木原官房副長官ですか、出生率が上がれば子供予算は倍増すると。これは算数の話でありまして、政策の話ではないわけであります。やはりこういったところをきちんと国もやっていただかないと、倍増しているのは国民の怒り、支持率は半減するという状況になりますから、意気込んでやっていると思いますから、これは注視してみたいと思います。
 不妊治療に関して、これは非常に難しいところがあると思います。私は、まず県の行うべき環境整備としては、やはり職場であったり、そういったところでの社会の理解というものをどうやって進めていくか、担保するか。これは、本当に言うに言えない苦しみというのを抱えている人が実に多いわけであります。そこに対して、やはり精神的なケアも含めて考えていかないといけない。これは、少なくとも地方の中でできることだと思います。
 そこでもう一つ、これは野原保健福祉部長に伺いたいと思うのですが、今までの公的な医療に対しての補助という考え方は、例えば、難病であったり僻地であったり、救急であったり感染症であったり、いわゆる不採算部門に対して支出をするというのが、基本的な伝統的な考え方だったと思います。
 その点で言うと、不妊治療というのは、治療自体は、黒字ベースで恐らくどこの医療機関も進んでいると思いますから、そういう伝統的な哲学でいうと、これは不妊治療には金を出さなくてもいいという考え方になりがちなのですが、今の局面は、人口減少対策をどうしていくのか。14人に1人が生まれているのだと。これは恐らくもっとふえていくと思います。
 そういった中で、財政措置をする、補助をしていく、それは、不妊治療に対する人材育成も施設整備も、それから、できれば交通費。こういったところに対しては、伝統的な哲学を超えてやる必要が私はあると思っているのですが、所感があれば伺います。
〇保健福祉部長(野原勝君) 議員御指摘のとおり、不妊治療に関しては、例えば、これまで政策医療というのは、医療計画の中で災害医療でありますとか救急医療、周産期医療、小児医療という形で取り上げていたのですが、不妊治療に関しては、政策上、医療計画にまだ位置づけがなく、政策医療としての位置づけというのを我々はきちっとしてこなかった。これは国も含めてだと思いますが、そういうところで現在に至っています。
 こうした中で、いわゆる少子化対策の直接的な施策として、やはり政策の効果に着目されており、我々も今回、いわゆるアクセス支援に取り組んだところでございますし、岩渕誠議員から御指摘がありましたとおり、社会での意識醸成が今後進めるべき我々の役目と考えております。
 こうした政策上の国や都道府県がやるべきことを今後整理いたしまして、我々としても、政策的な位置づけとして今後取り組む必要があるものと考えております。
〇18番(岩渕誠君) わかりました。妊娠支援、子育て支援というのは総合的なものですから、それだけで必ずしも解決するということではないですけれども、やはり妊娠を望む方というのはいっぱいいるわけです。それで苦しんでいる方がいっぱいいて、そういう意味では、私は政府予算提言・要望の中で、きちんと法的に位置づける、そして、役割をきちんとやっていくという局面に今来ているのだと思います。
 県も同じ認識のようですので、今後、強力に最先端を行く支援策をやっているからこそできる話だと思いますので、ぜひその辺は力を入れていただきたい。これは要望いたします。
 予算の話が出ました。ここに関連いたしまして、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金についてお伺いしたいと思います。
 この交付金は、御承知のとおり、これまで地方の新型コロナウイルス感染症対策あるいは物価高騰対策の主な財源となってきたものであります。
 国の予算案を見ますと、4兆円を新型コロナウイルス感染症対策、原油価格、物価高騰対策、そして、1兆円をウクライナ情勢経済緊急対応として、それぞれ予備費に積んでいます。しかし、地方がこうした問題に対応するための財源、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金としての政府の新年度予算への計上は1円もありません。既に今年度配分された交付金は、9号補正と県の新年度当初予算の編成でほぼ使い切っていて、新たな施策に対応できるお金はないというのが現状だと思います。正確に言えば、金はあるのですけれども、国が囲ったまま地方に来ていないのが現状だと思います。
 予備費に積むということの問題点は、これまでも国会で議論されてきましたけれども、地方の立場に立てば、これは、お金はあるけれども来ていないということです。これは基金化も基本的にはだめだということですから、機動的な財政出動は全くできないという問題があるわけです。
 県はこれまで、この交付金を活用して616億円、502の事業を行ってきており、そのうち県独自あるいは上乗せ分として443億円、409事業に充ててきました。その割合は実に72%と伺っております。金があれば、地方独自で有効かつ合理的な予算措置ができるという、これは証左だと思います。
 具体に何をやってきたかというと、例えばプレミアムポイントの還元事業、宿泊補助、それから世帯当たり6、000円を支給した子育て支援、妊娠、出産への10万円給付、子供1人当たり1万5、000円を2度にわたって支援した応援事業、それから、飼料、肥料の高騰対策としての上乗せ補助、これは今も必要なのですけれども、現状では原資がないですから、この継続ができるような状況ではないわけです。
 新型コロナウイルス感染症の対策も令和5年5月から5類に移行するということなのですが、これは財政措置が必要な状況だということなのですが、国は今まだ何も示していません。
 特に、物価高騰対策についてはこれから本当に厳しくなると思います。電気料金の軽減対策は9月までですし、これは今でも大変な状況になっているところがあります。
 例えば土地改良区の電気代は大変深刻であります。私の地元の改良区、私も入っていますけれども、電気料金が倍になる見込みで、そのまま賦課金に転嫁したら、10アール当たり4、000円以上上げないといけないという試算が出ました。そんなことをやったら誰も米づくりなんかしません。
 何とか基金を取り崩して対応しているようですけれども、それでも賦課金のアップというのは検討しなければいけない状況で、こうなると、これは完全に離農、荒廃農地も増加。これは現実どころか、どこまで食いとめるかというレベルになってきていると思います。
 国はこのあたり全く手を打っていないというか、LEDにかえたらまたお金を出しますみたいな平時の対応ですね。これでは全く理解していないということです。結局、ことしの電気のかかり増し分も、岩手県と市町村が独自に対応した予算で実質ゼロになったということなのです。
 重ねて指摘しますけれども、新年度の国の予算案では、交付金が予備費に計上されたまま塩漬けにされて、地方自治体の当初予算に反映できていない状況です。
 政府は直ちに交付金の配分を決め、県の新年度予算の補正対応ができるようにしっかり体制をつくるべきと考えますけれども、県として、この現状と影響についてどう分析しているのか、また、国への対応について伺います。
〇知事(達増拓也君) 岩渕誠議員御指摘のとおり、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を、これまで最大限に活用して、新型コロナウイルス感染症に係る医療提供体制の強化や社会生活、経済活動を支える取り組み、土地改良区の負担軽減を初めとする原油価格、物価高騰対策を講じてまいりました。
 一方で、中小企業者や農林水産業者等を取り巻く環境は厳しさを増しており、原油価格、物価高騰対策として総額34億円余の中小企業者や農林水産業者等への追加支援策を盛り込んだ補正予算案を提案いたしました。
 予算編成に当たっては、臨時交付金の残額を全て使い切るとともに、なおも不足する財源約10億円については、税収の上振れ等を活用して一般財源により捻出することといたしました。
 原油価格、物価高騰の長期化が見込まれる中、厳しい財政状況下においても、今後も適時適切に追加の支援策を検討していく必要がありますことから、全国知事会等とも連携し、臨時交付金の早期追加配分を含む財政措置を国に求めてまいりたいと思います。
〇18番(岩渕誠君) いずれ、非常に有効だったものであります。新型コロナウイルス感染症対策に対しても、それから物価高騰対策に対しても、まだまだ必要だから、その財源として予備費を積んでいるのだと思いますけれども、これは、とにかく積んでいたって何ともなりませんから、現場を持っている市町村、県に早く渡してくれないと全く死に金になってしまいます。これはぜひ早く来るように言ってもらって、最終日にでも1号補正を出していただくような勢いでやっていただきたいと思います。
 これに関連してもう一点だけ伺います。これは喫緊の課題として、5月に5類移行になるわけであります。今、新型コロナウイルス感染症対策に対する財源で見ますと、これは緊急包括支援交付金、それから新型コロナウイルス感染症対応臨時交付金、一般交付金、そして、感染症予防国庫負担金、これは感染症法上にぶら下がっているお金であります。
 これが感染症法上から離れたりすると、このお金はどうするのだという話になるわけです。けれども、段階的にやるという方向はあるようですが、では、どこまで金を見て、どこまで金を見ないのかということは、今後の施策に、それで5月まで間に合うのかという話もあるわけです。
 この辺の財源措置について、県として大丈夫なのかと私は心配しているのですけれども、いかがですか。
〇総務部長(千葉幸也君) 議員御指摘のとおり、今のところ5類移行後というものについては何も決まっていないということでございして、これは、地方負担についても何もわかっていないという状況であります。
 県としましては、感染症法等の一部を改正する法律の施行に伴いまして、新たに生じる経費については、現在の新型コロナウイルス感染症対策の枠組みと同様、国の責任において所要の財源を確保すること、それから、仮に地方負担が求められる場合にあっても、国庫補助のさらなるかさ上げや交付金等により、地方負担の極小化を図るとともに、十分な地方財政措置を講ずることを求めてまいりたいと思います。
 それから、どうしても早急にやらなければいけない事態が生じた場合においては、県の一般財源により、適時適切に対応することも辞さないということで取り組んでまいりたいと考えております。
〇18番(岩渕誠君) 新型コロナウイルス感染症に対しては、何となく世の中は撤退戦みたいな話になっていますけれども、ただ、継続してやらなければならないものがあって、それは当然金がかかる話であります。
 これについての兵糧がない状況なわけです。その兵糧は、今まできちんと国が手当てしていたわけですから、これはやっぱりしっかりとやっていただかないと、まず5月に間に合わせるというのがあり、これはかなり厳しい話だと思っております。これは指摘にとどめます。
 次に、これは予算に関連してですけれども、今回GXとDX、二つのXというのが入っています。特にDXへの取り組みというのは非常に加速度的でありまして、例えば教育現場での1人1台端末の配備、光ファイバーや公衆Wi−Fi、5Gなどの環境整備は、今までしていた局面だと思いますけれども、これからは、実際にどう利用し、データを集め、成果を出していくかが迫られる局面にもう完全になっていると思います。これは、行政のあり方が当然変わってくるものです。問題は、ツールではなくて考え方だと私は思います。物のデジタル化を初めとする今日的な課題に合わせた、迅速な政策の意思決定にシフトしていく必要があると私は思います。
 具体的にいうと、PDCAサイクルです。現状では1年、あるいはもう少し長い時間でこのサイクルが回っていますけれども、DXを進めるならば、その時間はさらに短縮していかないと現実に追いついていきません。
 計画を立て、実行して、評価して、改善するという現状のサイクルでよいものも確かにありますけれども、恐らく観察して、情勢判断して、意思決定して、行動するという、これはOODAループとよく言いますけれども、そういう非常に短いサイクルで回さないと、置いてけぼりを食らうのではないかということを大変心配しております。
 県の政策の意思決定を迅速に行うために、PDCAサイクル以外の手法も取り入れていくべきと考えますけれども、県の考えをお示しください。
〇政策企画部長(小野博君) 政策の意思決定についてでありますが、DXを初めとして、今日の行政課題は、スピード感を持った対応が求められるものが多く、従来のPDCAサイクルに加え、とるべき政策の意思決定を速やかに行う必要がある場面もふえてきております。
 例えば、新型コロナウイルス感染症や現下の物価高騰への対応に当たりましては、急激な状況の変化に対して、随時、各種データ等を把握しながら、まさに観察し、状況判断した上で意思決定を行い、随時、補正予算を編成して対策を打ち出すなど、県として臨機応変に行動してきたところでございます。
 こうした経験も踏まえまして、現在、最終案をお示ししておりますいわて県民計画(2019〜2028)第2期行政経営プランや岩手県DX推進計画におきましても、議員御指摘のいわゆるOODAループマネジメントの必要性について触れ、課題解決等に取り組むこととしているところでありまして、こうした手法も活用しながら、さまざまな行政課題に応じた迅速な意思決定と速やかかつ適時適切な政策推進に努めてまいります。
〇18番(岩渕誠君) 今、臨機応変という言葉が出ました。政策決定していく中では、臨機応変というのは、これから多分日常になると思います。
 一方で、大きな柱を走らせておいて臨機応変を日常にしてやっていくと、こういうことをしていくことで、恐らく大きな流れというのは担保されるし、強くなっていくのだと思います。
 これは、逆にOODAループだけをやってしまうと合成の誤謬みたいなことが起きますから、これはそのバランスが大事だと思いますのでしっかりとお願いしたいと思います。
 ここからは次の項目に入ります。県民に寄り添う、いわば人にも環境にも優しい県政実現のためには、これを支える強い財政がなければなりません。ここから持続可能で希望ある岩手を実現するための行財政改革に関する報告書に関連して、医療と教育の問題についてお尋ねしてまいります。
 持続可能な岩手県の行財政のあり方を検討してきた持続可能で希望ある岩手を実現する行財政研究会は、昨年、報告書をまとめ公表しました。
 よくこの報告書を読めば、医療や教育は、単純に金がかかるからやめろとは言っていません。むしろ維持するためにどうしたらいいのかと言っているわけです。ここが何かマスコミ報道だとよく理解されていない。ちょっと私は残念であります。
 この報告書の最大のポイントは、人口減少社会における地方財政の確立について、国の責任を指摘し、改革を迫った点にあると私は考えています。
 我が国を代表する地方財政の専門家が、これまでの国のあり方に公然と異を唱え、地方交付税のあり方に切り込んだことは、地方の財源論からいうと、私は特筆すべきものであると考えておりますが、まず最初に、この点について県の認識を伺います。
〇知事(達増拓也君) 議員御指摘のとおり、持続可能で希望ある岩手を実現するための行財政改革に関する報告書におきましては、人口減少対策の強化やより質の高い医療や学びを提供していくための方策に加えまして、国における出産や子育て支援に係る全国一律の経済的支援の量的、質的拡充の必要性、また、医療や教育への地方財政措置の拡充の必要性など、持続可能な行財政基盤の構築に向け、国への提言も含めた方策が盛り込まれております。
 これらの内容は、県民本位、政策本位の視点からの行財政改革の新しいモデルであり、中長期的な視点に立った、あるべき施策の一つが示されていると評価しているところであります。
 希望ある岩手の実現に向け、また、全国においても人口減少が進行することを踏まえ、他都道府県における今後の行財政運営の参考となるような施策を進めつつ、国に対して、必要となる制度の創設や改善等について求めていきたいと思います。
〇18番(岩渕誠君) 県の財政を見ても、県債残高がよく問題になりますけれども、よくよく見ていくと、地方の建設公債については6割まで圧縮をして、ほぼ当初予算の額と同等になってきた。これは、やはり通常運転に戻ってきたのだろうと思います。
 一方で、今の問題は臨時財政対策債、まさに国の財政措置の問題になってきているわけで、それに、やはりもう一つ交付税があって、今の事業と税収の関係は、地方と国で逆さまになっていますから、こういった残された課題というのは、国がどうしていくのかということなのだと思います。ぜひ新たな提案をお願いしたいと思います。
 この報告書の中身に入ります。
 焦点は医療と教育でありますけれども、交付税措置で賄える額と実際の運営費の乖離が大きくなっている点がポイントです。言いかえれば、県の持ち出しが大きくなっているというのが問題の本質であります。
 県立病院について言えば、病院建設などの償還金や不採算地区の病院への繰出額が増加している一方で、国からの交付税は減額傾向になっています。県の繰出額と国の交付税の乖離は、平成28年度に92億円だったものが、5年後には30億円ふえて122億円になり、今後さらに乖離は拡大する方向です。
 教育費についても、広い県土と小規模校が多く、どうしても経費がかかり増しになるために、こちらも同様に乖離額は173億円から192億円に広がっています。
 県立病院への繰出額は総額で200億円台、教育費は1、300億円台で推移していますが、現状で県民1人当たりの負担額はどの程度でしょうか。また、この水準について県の見解を伺います。
〇総務部長(千葉幸也君) 平成22年度から令和元年度の過去10年間で比較しますと、県立病院への繰り出しに係る県民1人当たりの負担額は、全国平均2、478円に対し1万6、359円で全国1位の水準となっております。
 また、教育費に係る県民1人当たりの負担額は、全国平均9万5、035円に対し11万2、642円となっており、全国6位の水準。このうち県立高等学校運営費については、全国平均1万7、632円に対し2万2、934円で、全国3位の水準となっております。
〇18番(岩渕誠君) 過去10年間の平均は今お話しされました。県立学校でいうと、平成27年に5、000円ぐらい上がりました。それから、県立病院については、平成30年に1、500円くらい上がって、そこから令和2年、令和3年と上がるのですが、令和4年の段階ではどちらも少し落ちついているとはいえ、今年度は、県立学校は2万5、731円、県立病院は1万7、682円という水準であります。
 やはりここの水準をどうしていくかということでありますので、ここはしっかりと対応していただきたいと思います。
 足らざるを憂うのではなく、等しからざるを憂う、この言葉は、昨年も私は紹介しましたけれども、鈴木善幸元総理が好んで使った言葉であります。この言葉を持ち出すまでもなく、岩手県は医療と教育については、お金がいっぱいかかっていますけれども、この哲学に沿って政策を打ってきたと思います。
 医療と教育は何としても守りたい、これが岩手県政の神髄でありプライドです。だから、形を変えながらも何とかして維持する方向でやってきたわけでありますが、問題は、先ほどから言っているように、この乖離をいかに埋めていくかということなのです。
 この点は持続可能で希望ある岩手を実現する行財政研究会の報告書でも語られていて、国にきちんと話をしなさいと強く言っているわけです。交付税も、古い時代の制度に縛られて、人口減少社会に合ったものになっていないから、制度の改善、制度創設も国に迫りなさいという指摘も載っているわけですけれども、県として、国に対してどのような提言をされているのかお示しください。
〇総務部長(千葉幸也君) 県はこれまでも、本県の強みである県立病院や県立高等学校について、その実態を踏まえた地方交付税の算定方法の見直しなどの要望を行ってまいりました。
 持続可能で希望ある岩手を実現する行財政研究会の報告書の公表とほぼ同時の令和4年9月にも、地方交付税の算定方法につきまして、県立病院会計に対する繰出金等に係る単位費用及び補正係数の見直し、小規模高等学校のかかり増し経費の適切な反映、高等学校生徒数に係る数値急減補正の創設等について意見を提出しているところでございます。
〇18番(岩渕誠君) そもそも交付税の成り立ちと経過から言って、これは当時の例えば高校進学率、全然違うのですけれども、その補助の考え方、義務教育ですよという話になって、市町村には多く行っているけれども、県立には来ないということ。あるいは、例えば診療所の運営は、市町村だとお金はいっぱい出しますけれども、県のほうは出しませんとか、今考えると非常に不可思議なものがある。
 当時は市町村の財政も非常に厳しかったと思いますが、市町村合併を繰り返して、財政基盤を強化して、今、全国的に見れば市町村の債務負担はピークをかなり前に過ぎています。県のほうはまだまだ厳しい状況でありますから、同じ学校を運営するのに、運営主体によって補助が変わっていく、考え方が変わっていくというのは、これはやっぱり時代に合っていない。そもそも、人口がふえないと交付税が上がらないみたいな基本的な措置を何とか補正係数でやっているというのは、かなりいびつですから、本体の考え方をやっていかないと、これは本当に地方が成り立たないと思いますので、ここは、ぜひ取り組んでいただきたいと思います。
 次の質問に移ります。新型コロナウイルス感染症対策について伺います。
 最初に、お亡くなりになった皆様に、心から御冥福を申し上げます。また、この新型コロナウイルス感染症の対応に当たられております医療従事者を初めとした関係者に、深い敬意と感謝を申し上げたいと思います。
 この問題の最初に、医療本体の問題について伺います。5類移行の問題です。
 先ほどは財源の話をしました。これまでは、感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)上の規定で、これは指定医療機関など限られた診療機関でよかったわけであります。医療関係者からお話を伺いますと、5類移行をしても、本当は、感染症法上が5類移行になれば、医療法上で全ての医療機関がこれを受け入れなければならないという規定になっているのですが、原則どおりはかなり厳しいという声が上がっています。ですから、限られた医療機関が頑張る構図というのは、ほぼ変わらないのではないかという指摘があるのです。
 受け入れ医療機関の見通しや必要な対応策について、県の見解を伺います。
〇保健福祉部長(野原勝君) 県では、1月の国からの事務連絡によりまして、新型コロナウイルス感染症については、本年5月8日から感染症法上の類型を5類感染症に見直すことなどを関係機関等に通知したところでございます。
 この事務連絡におきましては、患者への対応と医療提供体制については、3月上旬を目途に具体的な方針を示すとされ、入院や外来の取り扱いについては、幅広い医療機関で受診できる医療体制に向けて、必要となる感染対策や準備を講じながら段階的な移行を目指すこととされております。
 本県におきましても、現在指定している診療・検査医療機関や入院医療機関に加えまして、現在新型コロナウイルス感染症診療に対応していない医療機関においても外来や入院の受け入れを進める必要があり、議員から御指摘いただいたような現場の御懸念の声もある中、今後、県医師会等関係機関と連携しながら段階的な移行を進めていくこととなります。
 その体制整備に当たりましては、感染防御対策や病床確保の支援などが必要でありますことから、全国知事会として、国に対し要望しているところでございます。
〇18番(岩渕誠君) 肝心なところの答えがなかったのですが、報道によりますと、病床自体は段階的にどんどん減らしていきますという話であります。
 一方、外来診療については、ピーク時に実は今の1.5倍の患者が来るだろうという想定が原案にあるそうです。単純に言えば少なくとも1.5倍の診療機関がないと、そのしわ寄せは今やっているところに来るということなのです。
 それを考えてみんな、どうなっているのですか、それは本当になるのですかという話なのです。理屈として、法律上はみんな受けなければいけないけれども、今、5月にこのグリーンゾーン、レッドゾーンをつくってできるというのは、本当にできると思いますか。今のところの見通しはどうですか。
〇保健福祉部長(野原勝君) 今、外来の対応としては、県内で435の診療・検査医療機関、これは全国的にもかなり頑張って県内の医療機関に対応していただいています。
 新型コロナウイルス感染症の医療に関しては、これまで第7波、第8波とかなり患者がふえた時期に対しても、外来の先生方は本当に頑張っていただいて、現状の医療提供体制の中で、ここは十分に対応できてきたのではないかと考えています。
 一方で、今後まだまだ変異株等も想定されますので、これでいいというわけではなく、御指摘のとおり、5類感染症になりますと全ての医療機関で診なくてはならない、医師法上の応召義務との整合性もとる必要がございます。
 こうした意味で、確かに時間的、空間的に当然分けなければならないということで、さまざま課題があると我々も認識しております。
 そういった部分の必要な動線を分けるための措置、診療報酬上の加算、また、ガイドライン等のソフト的な支援、こういったものが我々は必要であると思いますし、さすがにこの辺は国も示してくると理解しておりますので、県民の皆様方が適切な医療を受けられるように、また医療現場が混乱しないように、ここは県医師会等関係機関と十分連携をとりながら、きちっと対応を進めてまいりたいと考えています。
〇18番(岩渕誠君) 現場は地方にあるわけです。それで、患者が1.5倍にふえると国は簡単に言いますけれども、医療法上は皆やるのが当たり前だと、これは言うのでしょうけれども、そう簡単にはいかなくて、県も医師会も大変苦労していると思います。しかも、それを2カ月でやれと言うわけですから、さっき言ったように、財源の問題も含めて、きちんと早くやってもらわないと何ともなりませんよと。むしろ今まで以上にパンデミックになりますよということで、私はちょっと心配をしております。
 最終的に、そういうところで言うと、県立病院というのは大変心配をしております。県立病院は、今お話ししたように、新型コロナウイルス感染症患者が入り込むリスクは増大すると思います。院内感染リスクがこれまで以上となり、医療体制の維持が困難になるのではないかと院長方も強く危惧をされているようです。
 患者の立場からしても、公的負担が外れますと、医療費も高額で負担に耐えられません。今だと20万円の医療費が無料ですけれども、一部負担というと6万円取られるという話がありますが、受診控えなど重症化リスクが高まることで、結果として、これは今よりもっとひどい状況を招きかねない懸念も強く残ります。
 県立病院も含めた医療体制に関するこれらの懸念について、県としてどう対応するつもりかお尋ねいたします。
〇保健福祉部長(野原勝君) 5類移行に伴いまして、医療現場からさまざまな御懸念の声が出ているのは承知しているところでございます。
 この中でも、院内感染などへの不安から、診療や入院受け入れに慎重になる医療機関も想定されますことから、国に対しまして、院内感染防止のガイドラインの作成、感染防止対策やオンライン診療の実施に対する支援などについて、全国知事会として要望しているところでございます。
 また、医療費につきましても、他の疾病における費用負担との公平性を踏まえつつ、受診控えにつながらないよう、医薬費や検査に係る費用の公費負担の継続を要望しているところでございます。
 県といたしましては、5類への移行に伴いまして、患者の不安や医療機関の混乱が生じないよう、引き続き国に対して必要な要望を行うとともに、円滑な移行におきまして県医師会等関係機関と連携して取り組んでまいります。
〇18番(岩渕誠君) いずれ、これはいろいろな報道機関とか、論説をする評論家などは、5月に移行する理由は、サミットもあるし、先進国で日本だけがちょっと特殊なことをやっていては困るのだということを言う人もいます。それはそれで真意はよくわかりませんけれども、だったらきちんと医療のおおもとのところをやっていかないとならないのですが、このスケジュール感は現場にとっては大変厳しいという認識を改めて表明したいと思います。
 新型コロナウイルス感染症対策の大きな2点目として、経済対策についてお伺いしたいと思います。
 東京商工リサーチ盛岡支店がまとめた昨年の県内の倒産状況を見ますと、負債総額は減ったのですけれども、倒産件数は47件、3年ぶりに増加して、昨年に比べて9割近くふえています。倍増に近いということです。
 新型コロナウイルス感染症関連倒産に関して言えば、今まで全部で36件あったのですが、半数の18件は昨年に集中しています。大変厳しい状況だと認識しています。
 ただ、この厳しい状況の中で、光明となるのが観光なのだろうと思います。既に、国内宿泊者の推移はコロナ禍前の水準に戻ったというデータもあります。今後は、インバウンドについても本格的な展開が求められる段階です。タイガーエア台湾の就航再開というのもありました。特に、ニューヨークタイムズ紙の2023年に訪れるべき都市の一つとして、世界で2番目に盛岡市が紹介された記事は大変大きな追い風で、これを全県に展開するチャンスだと思います。
 ここで期待されるのが観光地域づくり法人であるDMOです。2030年には訪日外国人観光客は6、000万人、また、旅行消費額15兆円を国は目指していますけれども、まさにV字回復の好機でありますが、これはまさに観光立県の試金石になると思います。
 岩手県の場合は、各地域での取り組みが際立ってきており、観光庁の重点支援DMOに釜石、八幡平、平泉・一関DMOの3団体が登録されています。この重点支援DMOというのは、全国で約30団体あるのですが、そのうち三つですから、結構あるのですけれども、今後、DMOに対する具体的な支援策があればお示しいただきたいと思います。
〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) インバウンドの拡大を図り、観光産業をさらに発展させ、本県経済の活性化へと結びつけていくためには、DMOを核に、地域が主体となって、それぞれの地域に新たな観光需要を創出していくことが重要であると考えております。
 こうした考え方のもと、今年度、岩手県観光協会に観光地域づくり支援チームを設置したところであり、専門人材を配置するなどにより、新たなDMOの立ち上げや、立ち上げ後のフォローアップといった支援を行っております。
 また、各種観光統計やいわて旅応援プロジェクトの利用状況を初めとしたデータを活用いたしまして、地域での購買や宿泊状況などを多角的に分析、可視化するいわて観光データ・マネジメント・プラットフォームを構築し、地域のDMOが活用できるようにするとともに、実際の活用に向けたマーケティング実践塾の開催なども行っているところです。
 今後、さらに既存DMOの体制強化や、将来的な地域DMOの設立を見据えた観光地域づくり組織の立ち上げなどの支援を行ってまいります。
〇18番(岩渕誠君) インバウンドの課題についてDMOにお話をお伺いしますと、付加価値の高い旅行コンテンツ、高付加価値化という考え方が重要だという答えが真っ先に返ってきます。簡単に言うと、高いものじゃないと売れないということなのです。
 旅行者は非日常の体験を求めますから、これはそのとおりなのだと思いますし、高いものを売るということは、さらに経済乗数効果を上げることも可能ですから、地域経済の牽引役として期待されるというものであります。ただ、この高付加価値化には、どうしても投資が必要になりますから、経営体力が低下している今、必要性は認識しているのだけれども、なかなか踏み切れないというマインド、これは経営者に多くあるようです。
 一方で、観光産業も他産業と同様に人材不足も指摘されております。宿泊案件があっても、フル稼働できないので、せっかく泊まりたいと言うのだけれども、商機を逸してしまっているということも出てきていると伺っております。
 観光事業に係る高付加価値化や人材不足の解消に向けた県内企業への支援策についてお伺いしたいと思います。
 また、観光事業者のDX化が求められているところですけれども、若い起業家や学生団体と連携した事業者の課題への対応が必要と考えます。
 起業家との連携、DX化やネットワークの構築についてもあわせてお聞かせください。
〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) 観光産業の高付加価値化を図っていくためには、例えば、既存の旅館などを高級ホテルに改修するといった投資を伴う対応が考えられます。
 一方で、最近は、スポーツアクティビティーや地域の文化、農林水産業の現場を初めとした地域ならではの体験、また、その地域でしか購入できない地場産品等の買い物などを結びつけたツーリズムが注目されております。
 こうした中、地域内で宿泊と体験や買い物などを一体的に提供していく体制を構築する取り組みが既に県内でも進められており、このような取り組みは、地域全体の観光消費額の増加に結びついていくことが期待されるところであり、今後、このような事例をモデルとした旅行商品の造成まで行うことで、観光の高付加価値化を実現することも可能であると考えております。
 観光の高付加価値化の実現により人材が確保しやすい環境を整えていくとともに、地域が一体となった観光振興の取り組みを進めることで、デジタル技術を活用した若者や女性の起業や事業承継など、人材確保を含めた観光産業の振興の好循環につなげていきたいと考えております。
〇18番(岩渕誠君) いずれ、頭の中をちょっと変えなければいけないと思っています。例えば、私などは小市民ですから、どこかに行ってちょっと頑張って高いお土産を買ってきても、つまらないものですがと言うわけですが、多分外国の方は、俺はこんなに頑張ってあなたのために高いものを買ってきたのだよと言うわけです。だから、そういうところに対応していかないと、なかなかうまくいかない。今までのように安くて大量のものをどんどん皆さんにという感じではないと思いますので、ぜひそこはお願いしたいと思います。
 観光における最後に、公民連携について伺いたいと思います。
 公民連携は、民間の活力を公共財などに活用することによって歳入歳出を改善していく取り組みであります。紫波町のオガールプロジェクト、これは代表的なものだと思います。
 特に広大な面積を持つ岩手県においては、道路や上下水道などインフラ整備の財源確保が課題となっていますけれども、観光業界にはこういうところが実は一番重要でありまして、住んでよし、訪れてよしという言葉があるようです。住んでよしの実現がなければ、本当の意味で観光客を呼べる、訪れてよしの状況にならないと考えられています。
 例えば、山口県の長門市は、宿泊税や入湯税を柔軟に活用して、地域にとって不可欠な投資に回すことを実践している地域も出てきています。
 観光における公民連携の取り組みについて、県の考え方をお示しいただきたいと思います。
〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) 今般のニューヨークタイムズ紙の2023年に行くべき52カ所に盛岡市が掲載され、その紹介におきましては、市内の地域住民が日常に利用している店なども取り上げられているところです。
 また、記事の中には、西洋と東洋の建築物が融合した建造物、近代的なホテル、歴史を感じさせる旅館、蛇行して流れる川、城跡が公園となっているなどの記述もあり、これは岩渕誠議員の、住んでよし、訪れてよしといった御指摘にも通ずるものではないかと受けとめております。
 盛岡市に限らず、例えば沿岸地域におきましても、従前からの観光名所に加えまして、ハード整備が終わった新しいまち全体が、沿岸地域を訪れる人にとっては観光資源になっております。
 このようなことから、観光振興の観点を取り入れながら、官民はもとより、地域全体の連携のもとでまちづくりを進めていくことが重要と考えており、こうした観点からの地域DMOのさらなる育成なども図っていきたいと考えております。
〇18番(岩渕誠君) そういう意味では、新しいまちづくりをした沿岸地域というのは、大変可能性のある場所だと思います。私の地元の平泉町も含めて、ぜひ強力に御支援をいただくようにお願いしたいと思います。
 次に、次世代産業の育成についてお伺いいたします。
 県では、自動車、半導体、医療機器分野を三つの柱として産業振興を進めています。
 コロナ禍にあっても、この三つのいずれもが次世代の成長産業になるというのは、基本的に間違っていないと思います。
 ただし、これら産業も、みずから変化を求められていることも事実で、これに対応できるかが、岩手県の人口減少対策にとっても大きな影響を与えるものと認識しております。
 まず、自動車産業ですけれども、世界的にEV、電気自動車へのシフトが明確になってきました。欧米に加えて、中国市場もEV化が加速しており、この分野では立ちおくれが指摘される日本も対応を余儀なくされています。
 EV化の加速によって調達部品は数も中身も大きく変わるとされています。我が県の自動車関連産業の技術力については、質、量ともに評価を高めていると思いますが、このような技術力を示す機会として、先ごろ3年ぶりに愛知県で展示商談会が開催されました。
 県では、これまでも展示商談会を開催してきましたが、これまでの開催実績と評価について伺います。
 また、自動車産業は、現在、100年に一度の大変革期と言われ、EV化や自動運転等に関する新たな技術が必要になっていますが、今回の展示商談会では、そのような提案があったのか、さらには、このような自動車を取り巻く環境の変化にも対応し、展示商談会の内容も変わっていくと思いますが、今後の展示商談会のあり方について考えをお示しください。
〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) 県では、県内企業の取引拡大及び自動車関連企業等との協力関係の構築を目的に、平成18年度から東北各県等と連携し、トヨタグループほか各自動車メーカー向け展示商談会を開催してきたところであり、本県からは、これまで延べ489社、団体が出展し、開催1年後の商談成立件数は累計で108件となっており、県内企業の取引は着実に増加しております。
 また今月、北海道、新潟県を含む8道県で開催した展示商談会では、電動化などの次世代モビリティー、カーボンニュートラル等をテーマにした特別展示ブースを設け、トヨタ自動車等の役員を含む707名の方に来場をいただいたところです。
 今後におきましては、例えば、EV化や自動運転等の新技術、新工法をテーマにするなど、自動車産業を取り巻く環境変化に的確に対応しながら、よりレベルの高い自動車産業の集積が図られるよう、引き続き8道県で連携して開催してまいります。
〇18番(岩渕誠君) 岩手県の自動車産業への参入企業は、今までは接着技術で大変高い技術で評価されております。それからプレスも非常に高い技術があると言われております。一方で、金型のところはもうちょっと頑張ってくださいということもあるわけでありますけれども、ただ、次世代ということに限定して言うと、やっぱりこれは蓄電池とモーターであります。
 蓄電池は汎用性もありますけれども、まず自動車の中ではかなりのテクノロジー、キーデバイスになってくる。そして、同時にモーター、これも大切な技術になってきています。
 この辺が岩手県はなかなかないのですけれども、今後、こういうところに厚みを加えていくと、私は自動車の産業としては、EVに対応できる非常に実力のある県となると思っておりますけれども、この二つのポイントについては、どのようにお進めになるおつもりでしょうか。
〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) 議員がおっしゃるとおり、EV化が進みますと、まず、エンジンとかマフラー、ガソリンタンクなどの部品を製造している企業が影響を受けてくるということになります。一方で、本県の自動車参入企業は、もともと電気、電子部品の製造にかかわってきた地場企業も多うございますので、むしろこういうEV化の動きが、あるいは内外装もありますので、本県にとっては、取引の獲得拡大のチャンスになっていくのかという受けとめもしているところでございます。
 いわて産業振興センターが、東北地方で唯一、支援拠点にもなっておりますので、そこを核として、議員がおっしゃったようなことを含めまして、さらに、これをチャンスとして、企業の参入がふえるような支援をしていきたいと思っております。
〇18番(岩渕誠君) 産業構造としては大変追い風になるという認識でありますので、ぜひ進めていただきたいと思います。
 次に、半導体でありますけれども、これはコロナ禍で重要性がさらに認識されたのだと思います。米中間の緊張はこの分野でも顕著になっておりまして、半導体の製造と調達をめぐる情勢は、既に紛争の火種となっています。
 対中禁輸政策のみならず、台湾の大手半導体ファウンドリTSMCの日米欧への工場建設の動きは、台湾有事を想定した、あるいはこれを避けるための安全保障上の措置と考えるのが妥当だと思います。そういう動きで、アメリカにも進出が決まりましたし、日本も熊本県にあって、二つ目の工場という話も出ています。ヨーロッパも同様です。
 日本においては、こういう情勢の中、キオクシア岩手株式会社の工場拡張を初めとして、半導体関連産業の集積がさらに進むものと期待されています。
 今後の半導体関連産業の本県への集積の見通しと支援体制について、県の考えをお示しください。
〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) 県ではこれまで、積極的な企業誘致や既立地企業の業容拡大に取り組んできたところであり、キオクシア岩手株式会社の進出を契機として、装置のメンテナンスや産業用ガスの供給など、関連企業の新規立地や増設により集積が加速し、本県における令和2年の製造品出荷額は、平成20年以降で過去最高額に達するなど、今後も大きな伸びが見込まれるところでございます。
 世界の半導体市場は、短期的な需要の変動はあるものの、中長期的には市場の拡大が見込まれており、国において、経済安全保障の観点から国内の半導体生産基盤の強化が進められております。
 本県におきましても、キオクシア岩手株式会社第二製造棟の建設を初めとして、半導体関連企業の投資意欲は旺盛であり、このような動きは当面続くものと見込まれますことから、半導体産業は一層の集積が進むものと見込んでおります。
 昨年7月に、東北地域全体で半導体関連産業の人材育成、確保、サプライチェーンの強靱化を進めるための産学官連携組織が設立されたところであり、この組織とも密接に連動するとともに、来年度は、新たにものづくり自動車産業振興室に半導体産業振興を担う専担組織も設けまして、半導体関連産業のさらなる集積を図ってまいりたいと考えております。
〇18番(岩渕誠君) よろしくお願いいたします。特に、水資源をどうするかが非常に大きなポイントだと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 この項目の最後にお伺いいたします。世界のスタンダードが今どんどん変わっています。そういう局面においても、やはり技術力を磨く、もっと言えば、次世代のキーデバイス、キーテクノロジーをどう育成するのかは、日本にとって大きな課題でありますし、岩手県も大きな関心と努力を払うべき分野であります。
 大きなインパクトを持つのは、やはりILCだと思います。ILCの実現は、高度な基礎研究から新しい技術を生み出して、世界をリードしてきた日本の産業界の歴史に相通ずるところがあります。今月初めには、ILC実現建設地域期成同盟会も設立されましたし、政府予算案でも関連予算は倍増されております。ただ、日本政府が正式表明をいまだにしていないことは、各国の研究者コミュニティーのいら立ちをもたらすには十分過ぎるものであります。
 関係者が進めている政府間協議に向けた取り組みを着実に進めながらも、安全保障上の観点からも、国際研究施設をアジアの民主主義国家に持つというのは重要な要素で、大胆に政治が決断する局面であると思います。
 ILC建設実現に向けた道筋について、岩手県としてどう役割を果たしていくのか、どう行動するのかお尋ねします。
〇ILC推進局長(箱石知義君) ILCの実現に向けては、現在、ICFA─国際将来加速器委員会のもとに設置されているIDT・ILC国際推進チームにより、国際協働による研究開発や政府間協議に向けた取り組みが進められており、令和5年度の政府予算案にも、この方向性に沿った予算が盛り込まれているものと承知しております。
 県としては、こうしたIDTの進める取り組みを着実に進展させると同時に、国家プロジェクトとして政府全体で取り組みを推進することにより、実現に向けた動きを加速させていくことが重要と考えます。
 こうした中、先般、岩手県南、宮城県北の市町の長等を中心としたILC実現建設地域期成同盟会が設立されました。総会には、塩谷リニアコライダー国際研究所建設推進議員連盟会長も御臨席され、地域の活動の力強い後押しとなったものと考えております。
 日本でのILCの実現は、イノベーションの創出と産業の発展、新たな地方創生と東日本大震災津波からの創造的な復興など多様な価値をもたらすとともに、我が国が標榜する科学技術立国のシンボルとなり、総合的な安全保障にも資するものと考えます。
 今後も、県内外の推進団体とこうした多様な価値を共有し、リニアコライダー国際研究所建設推進議員連盟等の動きとも連動し、日本誘致に向けた大きな流れをつくり出しながら、政府に対し、一日も早く国家プロジェクトとして推進するよう強く働きかけてまいります。
〇18番(岩渕誠君) どこをどんなにどう分析しても、ILCを日本に、岩手県に立地するという利点以外のものはないと思いますので、ぜひお願いしたいと思います。
 最後に、食料安全保障と岩手県の農業について伺います。
 昨年の参議院議員選挙では食料安全保障のあり方も大きな争点の一つでしたが、選挙後の動きを見ると、残念ながら食料安全保障について国民的な議論はない状況が続いています。
 この間、農業をめぐる環境は深刻な局面を迎えていると認識しています。
 最初にお尋ねするのは、県内の経営状況です。米農家の収支はどうなっているでしょうか。昨年度産米は、5ヘクタール作付しても赤字というものでしたが、今年度産米はどうでしょうか。来年度産米の見通しも含め県の分析をお聞かせください。
〇農林水産部長(藤代克彦君) 令和4年産のひとめぼれの相対取引価格と、国が公表している本県の10アール当たりの収穫量をもとに、10アール当たりの収入額を試算しますと、約11万3、000円となります。
 また、生産費につきましては、東北地方と全国という形で統計が公表されておりますが、東北地方については令和2年という値になりますので、令和3年の値が公表されております全国の値を用いまして米生産の作付規模別の10アール当たりの生産費を試算いたしますと、3ヘクタールから5ヘクタールの規模では約11万6、000円と生産費が収入額を超えるという状況になりますが、5ヘクタールから10ヘクタールの規模では約10万9、000円と、5ヘクタール以上で収入額が生産費を上回る状況になっているところでございます。
 令和5年産について、米の相対取引価格は前年に比べて高い状態で推移しておりますが、活用する肥料価格は、現時点で前年に比べ約4割上昇しており、生産コストの増嵩など、厳しい経営状況も見込まれるものと認識しているところでございます。
〇18番(岩渕誠君) 最新の生産費の経費がまだ出ていませんから何とも言えないですけれども、恐らく今年度産米も5ヘクタールで赤字になるというのは昨年と変わりませんが、その損益分岐点はもっと上になってくると私は思います。
 それから、令和5年度の見通しもかなり厳しい。これは、もう5ヘクタールで黒字というのは全く厳しい状況だと思います。大変深刻だと思います。
 米づくりもこれまでにない厳しさが予想されていますけれども、現在最も深刻なのは酪農、畜産の現場です。特に酪農は、経費増の一方で、いわゆる濡れ子の価格がこの半年で大暴落し、離農を検討する農家も現実に出始めています。
 繁殖、肥育、酪農の現状をそれぞれどう分析しているのでしょうか。
 酪農では、減産に補助金を出すなど需給調整政策が進められていますが、食料安全保障とは全く真逆の政策であります。哲学、理念なき政策の最たるものですが、国の政策に県内の酪農がどの程度応じているのでしょうか、あわせてお尋ねいたします。
〇農林水産部長(藤代克彦君) 畜産の現状についてでございますが、令和4年12月の配合飼料価格につきまして、国の農業物価統計調査を見ますと、前年同月に比べ約2割上昇、これを2年前に比べてみますと約5割の上昇という状況になっております。
 一方、県内の和牛子牛ですとか枝肉の市場価格を見ますと、前年同月に比べて約1割低下という状況になっているところでございます。
 酪農については、飲用向けの生乳価格が1キログラム当たり10円引き上げられたところでございますが、乳牛の子牛価格は、12月現在、前年同月に比べ約7割低下という状況になっておりまして、畜産経営体は、厳しい経営環境にあるものと認識しているところでございます。
 また、乳牛を淘汰し、生乳生産量を抑制する酪農家に対して奨励金を交付する国事業の活用状況は、1月末現在、約50戸、約250頭と聞いているところでございます。
〇18番(岩渕誠君) これは率直に言って大変厳しい数字で、これでは本当に酪農、畜産をやる人はいなくなります。ましてや頭数減の政策というのは縮小均衡の政策です。縮小均衡の政策をやると、必ずその産業は加速度的に衰退していきます。私は大変深刻な状況だと思っています。
 ここで今、酪農家が問題にしているのはカレントアクセスの問題です。これは最低の輸入機会を与える、低い関税でその機会を与えるということなのですが、ことし、北海道が14万トンの生乳の減産を自主的にやっています。一方で、そのカレントアクセスというのは13万7、000トンあります。これは、やっぱり政策としておかしいのではないかと思います。
 カレントアクセスは、ガット・ウルグアイ・ラウンドで決まったことですけれども、ほかの国は、それはやっていますが、その枠いっぱいに使っているところはほとんどないわけです。こんなことをやっているの日本だけです。
 この状況を何とか打開しないといけないというのが今の生産者の思いなのですけれども、県として、農林水産部長としての所感を伺いたいと思います。
〇農林水産部長(藤代克彦君) カレントアクセスの問題についてでございますが、1993年、平成5年になりますけれども、WTO、ガット・ウルグアイ・ラウンドの農業合意におきまして、バター、脱脂粉乳等について、最低限の輸入数量を維持することとされまして、その1年間の輸入数量が、生乳換算で、先ほど議員御指摘のとおり、13.7万トンとされていると承知しております。
 こういった輸入義務の履行につきまして、県が言及するというのはなかなか難しいところでございますが、一方で、国では現在、先ほど答弁申し上げましたとおり、生乳需給ギャップの早期改善と生産者の生産抑制の取り組みを支援するということで、乳牛の淘汰、生乳生産を抑制する酪農家に対して奨励金を交付する事業を措置するというところでございます。
 先ほど申し上げましたとおり、酪農は飼料価格を初めとした飼料価格の高騰の中で厳しい経営環境に置かれておりますので、国においては、国家貿易の乳製品の輸入について、国内生産に影響を及ぼさないように対応してほしいと考えているところでございます。
〇18番(岩渕誠君) 今、生乳の減産に取り組んでいるのは北海道ですけれども、北海道がくしゃみをすると全国で風邪をひくのです。そういう状況なのです。
 そして、まさにこれは本当に岐路に立っていると思います。食料安全保障で、生き物ですからね。減産と言いますけれども、要は牛を殺しているわけです。そういう政策を我々は認めてしまっているということです。それをよくよく考えて政策提言をしていただきたいと思います。
 こういう哲学、理念なき政策というのはまだあります。水田活用の直接支払交付金の見直しです。
 昨年来、この問題に取り組んできましたけれども、既に水田牧草への交付金は減額され、影響は出ています。5年に1度の水張り要件など全く理解不能な政策への反対の声が渦巻いていますけれども、しっかりとした説明はないと言ってもいいでしょう。
 水田活用の直接支払交付金見直し初年度の実績と影響、多くの疑問点について、県が行った国に対する要望への国の対応などはどうでしょうか、伺います。
〇農林水産部長(藤代克彦君) 令和4年度の水田活用の直接支払交付金で、現時点で本県への交付実績は、国から公表されておりませんが、牧草を初めとした飼料作物の作付実績は公表されており、約7、300ヘクタールということで、前年度に比べ約480ヘクタールの減となっているところでございます。
 県では、国に対し、5年に1度の水張りは地域の実情を十分に踏まえた運用とすることや、多年生牧草等の生産への支援を拡充することなどを要望してきたところでございまして、国では、水張りについて、必ずしも水稲の作付を要件としないとしたほか、5年以上の周期で作付転換を行っている品目の取り扱いについては、地域の実例を検証していくとしているところでございます。
 県としては、引き続き、生産者が安心して転換作物の生産に取り組むことができるよう、地域の実情を十分に踏まえた運用について、国に求めてまいります。
〇18番(岩渕誠君) いろいろ減りましたという話がありましたけれども、心配なのは減ってどうなるのという話なのです。それは、ほとんど荒廃農地につながります。恐らく、差し引き480町歩の減でしょうから、特に飼料作物は相当深刻で、加速度的に荒廃が進むと心配しています。
 それから、湛水期間の話が先ほど来ありますけれども、例えば、土地改良区の湛水期間、5月から大体8月いっぱいです。その期間にしか湛水できないわけです。けれども、そこは作付するのだから、本当は冬場にやってほしいのだけれども、その水がないという、現実的にはあり得ない話なのです。そこはよく考えてきちんと反論していただきたいと思います。
 水田活用の直接支払交付金のうち産地交付金については、今年度新たに批判が巻き起こりました。通常、産地交付金は、年度当初に国から各地域の水田協議会に資金枠が配分されます。そして、11月には追加配分され、これは水田転作して園芸作物等に取り組んだ場合の交付金に充てられるわけですが、今年度は、この追加配分はありませんでした。それどころか、年度当初の配分枠が減額されたため、結果として多くの園芸農家への交付金が減額されました。
 これは、園芸振興しますと言っていて、やっていることはめちゃくちゃですよ。国の予算がなくなった場合は追加交付しないという仕組みなのですけれども、6月には転作確認していますから、どの程度の作付があるかは把握できます。しかも、国は秋に補正予算を編成しているわけですから、そこに入れることは十分可能でした。生かさず殺さずの農業政策よりもさらにひどく、食料安全保障という言葉はむなしく響きます。
 地域振興作物への影響と、一連の国の対応について、県の考えをお示しください。
〇農林水産部長(藤代克彦君) 産地交付金についてでございますけれども、議員御指摘のとおり、水田活用の直接支払交付金には、転換作物の助成内容を国が設定する戦略作物助成と、県や地域農業再生協議会が設定する産地交付金がありまして、今年度は、戦略作物助成に必要な予算が増加したことに伴い、産地交付金の額が当初の配分額から減額されたため、県内では、11の地域農業再生協議会で転換作物の助成単価の引き下げが行われたところと承知しております。
 県としては、産地交付金について、地域の特色ある産地づくりに有効と考えておりまして、これまで国に対し、必要な予算の十分な措置を要望してきたところであり、今後とも、こうした要望をしてまいりたいと考えているところでございます。
〇18番(岩渕誠君) 最後に、知事にお伺いしたいと思います。
 今までこの農業政策をずっと質疑してきたわけですけれども、大変厳しいわけでありますし、一方で、国の政策は、食料安全保障とはほど遠い、ちぐはぐになっていると思います。
 私は、この食料安全保障をやっぱりど真ん中に置いて、農業者も消費者もしっかりと対応できるような予算づくりが必要だと思います。
 今こそ所得補償制度を復活させて、畜産、酪農、園芸にも拡充させるべきと思いますが、知事の考えをお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 世界的な人口増加等による食料需要の高まりや気候変動による生産減少など、食料生産への重要性が高まる一方、燃油や肥料、飼料価格の高騰は、農業経営に大きな影響を及ぼしており、農業者が、将来にわたり意欲を持って生産活動に取り組むことのできる環境の整備が重要であります。
 現時点においては、農業経営のセーフティネットとして、自然災害による収穫量の減少や農産物の需要変動による価格低下などの農業収入の減少を補填する収入保険制度等にとどまっており、今般の肥料や飼料等の原材料価格の高騰には対応しておりません。
 このため、国においては、かつて実施された農業者戸別所得補償制度や、議員御提案の畜産、酪農、園芸も含めた所得補償政策など、農業者が、将来にわたり意欲を持って生産活動に取り組むことのできる何らかの支援策を検討すべきと考えます。
 県では、厳しい経営環境に置かれている農業者の状況を踏まえ、国に対し、肥料や飼料の価格高騰対策とともに、多様な農業者のニーズを踏まえた効果的なセーフティネットの構築などを要望してきたところであり、今後も、農業者が生き生きと働き暮らせることのできる農業の実現に向け取り組んでまいります。
〇18番(岩渕誠君) 食料は、いつでも安く海外から手に入るという時代はもう終わりました。中国はもう輸入国に転換をしていますし、世界は大きくシフトチェンジしています。そういった中で、日本がこのままの農政を続けていくと、これは大変な事態になる。
 東京大学の鈴木宣弘教授の言葉をかりれば、世界で一番最初に飢えるのは日本だということだと思います。種子などを踏まえれば、自給率は8%という試算もあります。
 農は国の基であります。ぜひご対応いただきますようお願い申し上げまして私の質問といたします。ありがとうございました。(拍手)
   
〇副議長(小野共君) この際、暫時休憩いたします。
   午後4時19分 休 憩
   
出席議員(44名)
2  番 上 原 康 樹 君
3  番 小 林 正 信 君
4  番 千 葉   盛 君
5  番 千 葉 秀 幸 君
6  番 岩 城   元 君
7  番 高橋 こうすけ 君
8  番 米 内 紘 正 君
9  番 高 橋 穏 至 君
10  番 山 下 正 勝 君
13  番 高 田 一 郎 君
14  番 佐々木 朋 和 君
15  番 菅野 ひろのり 君
16  番 柳 村   一 君
17  番 佐 藤 ケイ子 君
18  番 岩 渕   誠 君
19  番 名須川   晋 君
20  番 佐々木 宣 和 君
21  番 臼 澤   勉 君
22  番 川 村 伸 浩 君
23  番 ハクセル美穂子 君
25  番 木 村 幸 弘 君
26  番 吉 田 敬 子 君
27  番 高 橋 但 馬 君
28  番 小 野   共 君
29  番 軽 石 義 則 君
30  番 郷右近   浩 君
31  番 小 西 和 子 君
32  番 高 橋 はじめ 君
33  番 神 崎 浩 之 君
34  番 城内 よしひこ 君
35  番 佐々木 茂 光 君
36  番 佐々木   努 君
37  番 斉 藤   信 君
38  番 中 平   均 君
39  番 工 藤 大 輔 君
40  番 五日市   王 君
41  番 関 根 敏 伸 君
42  番 佐々木 順 一 君
43  番 伊 藤 勢 至 君
44  番 岩 崎 友 一 君
45  番 工 藤 勝 子 君
46  番 千 葉   伝 君
47  番 工 藤 勝 博 君
48  番 飯 澤   匡 君
欠席議員(1名)
1  番 千 田 美津子 君
   
説明のため出席した者
休憩前に同じ
   
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
   
午後4時43分再開
〇副議長(小野共君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
   
〇副議長(小野共君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
   
〇副議長(小野共君) 日程第1、一般質問を継続いたします。臼澤勉君。
   〔21番臼澤勉君登壇〕(拍手)

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