令和5年2月定例会 第24回岩手県議会定例会会議録

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〇39番(工藤大輔君) いわて新政会の工藤大輔でございます。登壇の機会をいただいたことに感謝を申し上げ、会派を代表し、知事に質問いたします。
 世界に目を向けると、トルコ南部、シリア国境沿いで大規模地震が発生し、甚大な被害が出ております。被災された方々にお悔やみを申し上げ、お見舞いをあわせて申し上げます。
 また、あさって2月24日でロシアによるウクライナ侵攻から1年が経過します。ロシアによる軍事行動を改めて非難するとともに、一日でも早くウクライナの平和が取り戻されることを願います。
 国内では長期化する新型コロナウイルス感染症に加え、物価高騰による先行きの不透明感が増しています。人口減少、少子化に伴う縮小社会は不確実性が増しており、社会の構造を変える必要があります。そのような中、令和5年度当初予算編成に当たっては、今年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症対策に万全を期すとともに、四つの重点事項を柱に、近年にない大胆な予算措置をしたとしております。3年間続いた新型コロナウイルス感染症対策は政府の指定感染症の見直しを行う方針により、コロナ禍以前に大きく近づき、経済再生の新たなステージに入ります。ウィズコロナ、アフターコロナを見据え、新年度、県民生活を守り、岩手県の強みを生かすため、予算編成に当たり、どのような成長戦略を描いているのかお伺いします。
   〔副議長退席、議長着席〕
 新たな財源確保策として、環境や社会的課題を目的として発行されるESG債の発行が自治体でも広がりを見せています。日本証券業協会のデータによると、国内のESG債の発行額は、2016年の450億円から2021年には2兆9、270億円に拡大しています。
 ESG債は投資家にとって企業価値を高める効果が期待でき、発行体にとっては債権の人気が高まるほど低い金利で資金を調達できるメリットがある反面、資金調達の使途、プロジェクトの管理と選定のプロセス、改善効果などの評価を行うなど事務負担も伴います。
 県では初めてグリーンボンドの発行を予定していますが、目的、効果、想定する活用事業等について考えをお伺いします。
 次に、外部資金を導入した受託研究についてお伺いします。
 試験研究機関の役割は、生産者や団体、大学、民間企業等からの研究ニーズに沿った試験研究を行い、新たな品種の開発や成分分析調査、品質の安定や省力化など、現場の生産意欲を高め、ビジネスチャンスの創出を図り、地域産業の振興に貢献することにあります。
 試験研究を進めるに当たって、市場性の高い研究テーマの選択や特許出願数をふやし資金を調達するなど、厳しい県財政により十分な予算の獲得が難しい状況にあることから、寄附金や外部資金の導入による経営的観点の重要性が増しています。
 県の五つの試験研究機関のうち農林水産分野の競争的外部資金の獲得状況は近年減少しており、将来の産業力の低下とならないか危惧するものでありますが、どのように認識し、対応するのかお伺いします。
 以下の質問は、質問席で行います。
   〔39番工藤大輔君質問席に移動〕
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 工藤大輔議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、今後の成長戦略についてでありますが、本県は東日本大震災津波からの復興の過程で、直面する危機を県民一体となって乗り越えることで未来の希望が見えてくるという経験をしており、新型コロナウイルス感染症や物価高騰、そして、人口減少の進行といった現下の喫緊の課題に対しても、これを乗り越える取り組みが、結果として岩手県の成長につながるものと考えます。
 令和5年度当初予算案においては、同時にスタートする、いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランに掲げる四つの重点事項を強力に推進する予算として、年齢や性別にかかわらず活躍できる環境づくり、結婚、子育てなどライフステージに応じた支援、GX─グリーントランスフォーメーションの推進によるカーボンニュートラルと持続可能な新しい成長の実現、DX─デジタルトランスフォーメーションの推進による県民の暮らしの向上や産業振興、さまざまなリスクに対応できる安全、安心な地域づくりなどについて、重点的に予算措置しているところです。
 あわせて、新型コロナウイルス感染症や物価高騰についても状況を見極め、臨機に対応しながら、誰もが本来持っている力を発揮し、生活、仕事、学びに希望を持ってお互いに幸福を守り育て育てることができる岩手を築いてまいります。
 次に、新たな財源確保策についてでありますが、本県の脱炭素社会形成の流れを加速するには、安定的な財源確保とともに、県内におけるグリーン社会実現に向けた機運醸成を図っていくことが重要であります。
 現下の金融市場においては、グリーンボンドは投資需要と金利の優位性が増しており、県内法人等の参画による機運醸成と資金調達コストの軽減が期待できると考えています。
 この財源を活用して、三陸の復興とともに気候変動に対応するための河川改修、県有施設の省エネ化、共同実習船りあす丸の更新、水産業の人材育成を推進してまいります。
 このうち、水産業や水資源の保全に資する事業については、全国自治体では初となるブルーボンドを発行し、三陸海岸の復興、海洋と沿岸の保全強化を推進することとしています。
 次に、外部資金を導入した試験研究についてでありますが、農林水産分野の試験研究機関の競争的外部資金が減少した主な要因は、東日本大震災津波からの復興を目的に、国や大学等とともに実施してきた復旧水田での効果的な雑草防除技術や、アワビの生産回復に向けた安定的な種苗生産技術の開発等の共同研究が終了したことなどによるものです。
 他方、競争的外部資金以外の試験研究では、県南部を主産地とするナスの生産に著しい影響を及ぼしていた病害の発生要因の解明と防除技術の開発により、学会表彰や産地から感謝状を贈呈された研究のほか、新たな特産品となるアミガサタケの人工栽培技術の開発や、サケ資源の早期回復に向けた大型で強靭な稚魚の生産技術の開発など、将来の産業振興につながる試験研究に取り組んでおります。
 競争的外部資金の活用は、新たな研究予算の確保とともに、他の研究機関等との共同研究により効率的な技術開発が期待できることから、農林水産分野の試験研究の方向性を定めた基本方針に外部資金の積極的な導入と活用を図ることを盛り込んでおります。
 県としては、今後、外部資金の積極的な確保に努めながら、産学官の連携強化による効率的な技術開発を進めるなど、本県の農林水産業が持続的に発展するよう取り組んでまいります。
〇39番(工藤大輔君) 中期財政見通しを見ても、県の財政は非常に厳しいという認識を持っています。そういった中、外部資金、あるいは民間資金の活用というのは有効な手段だと思います。グリーンボンドの発行以外にもソーシャルボンド、地域版J−クレジット、Jブルークレジットの認証を受けての販売による手法というものもあります。また、ふるさと納税の拡充というのもテーマであると思います。そういった中、調達目標を掲げながら、積極的に推進方策を検討していく、目標を掲げながら推進方策を検討していくということもひとつ私は大事だと思いますが、知事の考えをお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 一般論でございますが、新規の取り組みを始めるに当たって、一定の目安を参考にしながら取り組むことは有効であると考えます。
〇39番(工藤大輔君) 民間活用を十分していただきながら、企業とも連携しながら進めていただきたいと思います。
 次に、新型コロナウイルス感染症についてお伺いします。
 新型コロナウイルス感染症を感染法上の2類相当から5類感染症に5月8日から移行する方針が示されています。今後、季節性インフルエンザと同じ扱いの対象となりますが、新型コロナウイルスは感染力が高く伝播性があり、変異するペースが速いため、季節を問わず感染が拡大してきており、流行の時期や規模の予測は難しくなります。5類に移行したとしてもウイルスの特性は変わるわけではなく、その全てが解明されたわけでもありません。特に重症化や致死率の高い高齢者、院内感染対策などは十分に備える必要があります。医療現場や県民が混乱しないよう、どのような体制を敷くべきか、今後の新型コロナウイルス感染症対策のあり方についてお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 県では、新型コロナウイルス感染症類型見直し後の課題として、5月8日以降においても適切に保健、医療体制が確保されるよう、医療費や検査に係る費用の公費負担、重症化リスクの高い高齢者向け宿泊療養施設、発熱など症状がある方の相談センター、高齢者施設でのクラスター発生時の対応、ワクチン接種の公費負担など、段階的な移行や継続が必要であると考えておりまして、全国知事会として国に対応の申し入れを行っております。
 感染症法上の見直し後においても、重症化リスクの高い高齢者を初め県民の生命や健康を守るため、引き続き、適切な保健、医療体制の確保などに万全を期してまいります。
〇39番(工藤大輔君) 今後、新たな変異株が出現したり、感染の拡大期に入る可能性が十分あります。適切な感染対策により終息という形が見えるまで、段階的ということもありますが、岩手県の現状を国にしっかり伝えながら、また、全国知事会と連携しながら、この対策に十分に当たっていただきたいと思います。
 次に、後遺症の関係についてお伺いしますが、令和3年度の県の調査によると、倦怠感、臭覚障害、気分の落ち込みなど、新型コロナウイルス感染症特有の健康への影響が見られ、その症状が6カ月以上継続する事例が報告されています。
 先般、後遺症を診療できる初期診療可能な医療機関の121カ所が紹介されましたが、医療機関数や診療科別に見ると、久慈保健医療圏では最小の1医療機関にとどまっているなど、二次保健医療圏で差が出ております。
 後遺症の症状は多岐にわたるため、かかりつけ医が相談できる連携病院の確保や専門外来の設置など、患者が必要とする受診環境を整える必要があると思いますが、取り組みをお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 県では、後遺症に悩む方々が、症状に応じて円滑に受診や治療が受けられる体制を構築するため、県医師会と連携して、後遺症の初期診療可能な医療機関について調査を行い、1月末時点の調査結果を取りまとめ、公表を行ったところであり、引き続き、県医師会と調整しながら対応する医療機関の拡充に取り組んでまいります。
 また、他の医療機関に対しても、後遺症が疑われる方が受診した際には、国が作成した診療の手引きに基づき対応し、必要に応じて専門医を紹介するよう依頼しているところであり、今後も県医師会等の関係機関と連携し、後遺症に係る医療体制の充実に取り組んでまいります。
〇39番(工藤大輔君) 後遺症の患者さんの中には、軽度のうつ症状を持っている方が一定数います。治療の長期化等が考えられますし、また、適切な医療機関を紹介するという答弁があったわけですが、近くに心療内科、精神科が少なかったり、なかったり、また、予約が取れないという状況も続いています。こういった患者さんにもしっかり寄り添いながら、そして、決して患者さんが諦めることなく治療できる環境が大事ですので、そういった医療提供体制をつくっていただきたいと思います。
 これまで実施した経済対策と効果についてお伺いします。
 新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金等を活用し、いわて旅応援プロジェクト、Go To イート、20%ポイント還元キャンペーンなどを実施し、効果を発揮してきました。その利用実績を4広域圏別に見ると、いずれの事業も圏域間で実績に差があり、令和4年度に実施したGo To イートを例にすれば、1店舗当たりの平均利用実績は、県央102万8、000円余、県南72万5、000円余、県北33万6、000円余、沿岸27万5、000円余と、地域にもたらした経済効果に大きな差が出ています。
 人口の少ない地域ほど景気の回復が遅く、分析結果をもとに事業効果の薄い圏域や市町村に新たな対策が必要と考えますが、どのように考えているのかお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 県では、いわて旅応援プロジェクトや、いわての食応援プロジェクト、いわて県民応援プレミアムポイント還元キャンペーンといった消費喚起策とともに、融資制度による金融支援、また、地域企業経営支援金や物価高騰対策支援金といった直接的支援、さらに、商工指導団体を通じた伴走型の本業支援など、さまざまな支援策を一体的に進め、広く県内中小事業者の事業継続と雇用の維持を図っているところであります。
 このうちの消費喚起策については、それぞれの地域宿泊施設や飲食店の収容人数、大型店舗の立地状況などが異なるため、地域間の事業効果を利用実績で比較することは難しいと受けとめておりますが、県北や沿岸圏域に関しては、地域を訪れる交流人口の拡大を図って、圏域内の消費を高めていくことが重要と考えております。
 このため、令和5年度当初予算案においては、国内外からの誘客拡大の取り組みや、三陸地域の宿泊施設で利用できるクーポンを造成する事業などを盛り込んだところであり、引き続き、市町村や商工指導団体、関係団体等の意見を聞きながら、それぞれの地域の実情に応じた支援を展開してまいります。
〇39番(工藤大輔君) いわて旅応援プロジェクトでは161億6、570万円余が充てられています。これについて、県央圏域、県南圏域は40%ぐらいが利用され、沿岸圏域が15%、県北圏域が3%ということでしたし、恐らく20%のポイント還元キャンペーンも似たような結果になるのではないかと思います。今、知事の言う対策を講じていただいたということで、それらも含めて事業効果をしっかり確かめて、地域の経済効果はこのようになっているのだと、等しく経済効果が出ているというような対策をとっていただきたいと思います。
 次に、子育て、少子化対策についてお伺いします。
 教育・子ども政策調査特別委員会で広島県と広島県海田町の子育て支援について視察をしてきました。海田町では、複数の拠点施設でエリア担当の母子保健や子育てコーディネーターを常駐させ、日常の相談事へのきめ細かい対応や各種申請手続をワンストップで行える体制、妊婦健診や子供の健診結果をアプリで管理できるシステムの導入を図るなど、かいた版ネウボラ事業を展開し、出生数と人口の増加に結びつけています。
 結婚、妊娠、出産、子育ての各ライフステージに応じた支援は、市町村と一体となって相互の役割を補完し合いながら取り組むことに、より効果の高いことを発揮します。
 県は少子化対策を最重点課題として捉えておりますが、ライフステージに応じた子育て支援について、どのように進めるのかお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 人口減少、少子化に立ち向かうためには、要因となっているさまざまな生きにくさを生きやすさに変えていく施策の展開が必要であり、県では、いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランにおいて、結婚、妊娠、出産、子育ての各ライフステージに応じた総合的な施策を強化することとしています。
 このため、令和5年度当初予算案において、高校生等へのライフデザインの形成支援、i−サポへの結婚支援コンシェルジュの配置、不妊治療に要する交通費の助成や妊産婦を対象としたアクセス支援の拡充、市町村における妊娠時から出産、子育てまでの一貫した伴走型相談支援、市町村と連携した第2子以降の3歳未満児に係る保育料の無償化や在宅育児支援金の創設、医療費助成の高校生等への現物給付の拡大、経済的に困窮している高校生等への大学等進学支援に向けた奨学金の創設などの新規事業や、本年度から始めた産後ケア利用料の無償化などの事業を盛り込んでおります。
 これらの取り組みを通じて、市町村や関係団体等と連携し、全国トップレベルの子供、子育て環境をつくり、希望する全ての県民が安心して子供を産み育てられるようにします。
〇39番(工藤大輔君) 令和4年度の企業・事業所行動調査によると、男性の育児休暇の取得率は、令和2年度比で8ポイントの上昇となり19.9%となりました。取得期間においても、長期間の取得が伸びるなど、企業側の取得しやすい環境をつくろうとする努力がうかがえます。
 総務省の社会生活基本調査によると、6歳未満の子を持つ世帯の1週間の家事関連時間を見ると、夫の1時間54分に対し妻は7時間28分と、改善の傾向にあるものの、開きはまだ大きいのが現状です。男性の行動を変えるには、家事、育児への意識改革とともに、長時間労働を減らし、多様な働き方ができる職場環境も必要であります。
 イクボス宣言企業、団体も増加傾向にあり、理解が進んできていますが、いまだ育休から仕事に復帰しても仕事と家庭の両立に悩む家庭も多く、ひとり親世帯では、より深刻なのが現状であります。改善に向けてどう取り組むのかお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 本県は、共働き家庭において、男性の家事、育児に使用する時間の割合が全国で最も高いといった調査結果もありますが、日本が先進諸国の中ではかなり低く、本県もまだまだふやしていく必要があります。
 県では、従前から、岩手労働局や市町村と一緒に県内の経済団体に対し、働き方改革に向けた取り組みの推進について、直接出向いての要請活動などを行っていますが、平成28年、2016年2月に、経済団体や産業別の団体、高等教育機関の代表者などで構成する、いわてで働こう推進協議会を設置し、岩手県内で就職する若者や女性をふやしていくための取り組みを一丸となって進めていくこととし、その一環として、いわて働き方改革推進運動を展開し、それぞれの団体等に関係する各職場の具体的な行動に結びつけていくことで、総実労働時間の削減や多様な働き方の実現を図っているところです。
 この多様な取り組みの例として、いわて働き方改革AWARDにより、労働時間の削減や子育て支援などの働き方改革に取り組んでいる企業を表彰するとともに、この表彰を受けた企業の現場見学会を行うなどにより、優良事例の普及拡大を進めています。
 また、商工指導団体と連携し、DXを活用した企業の生産性向上に向けた専門家派遣などの取り組みを進めるとともに、在宅勤務やテレワークの導入促進のための支援なども行っております。
 このような取り組みにより、いわて働き方改革推進運動参加事業所は811事業所まで増加し、県内の総実労働時間も減少しております。
 令和5年度当初予算案においては、新たに県内の中小企業等が行う柔軟で多様な働き方の実現や休暇取得を促進する取り組みに対する支援策などを盛り込んだところであり、これらの取り組みを通じて、さらなる労働時間の削減や多様な働き方の推進を図ってまいります。
〇39番(工藤大輔君) 社会生活基本調査をもとにした大和総研の資料によると、1日の男性の家事、育児への割合が2021年に家事が30.9%、育児が35.4%に上昇しています。そして、30代男性で意識に大きな変化があるという数値が出ています。社会的変容の分岐点となるクリティカルマスの30%を超える結果が出ており、今まさに子育て環境、社会が変わろうとしている転換期かと思います。これを出生数の増加につなげる総合的な対策が必要だと考えます。
 効果的な人口減少対策を行うには安定的な財源の確保がなければ施策の実効性、継続性を保つことができないと思います。子育て対策財源の確保について、どのような考えを持っているのかお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 人口減少対策のさらなる充実に向け、あらゆる手法で財源を確保しながら、令和5年度当初予算案において、結婚、妊娠、出産、子育ての各ライフステージに応じた県独自の新たな施策を盛り込んだところです。
 一方、このような施策の効果が十分に発現されるには、総合的で息の長い取り組みが必要となることから、継続的かつ安定的な財源の確保が重要であります。
 国においては、本年4月にこども家庭庁を設置し、子供政策を強化することとしており、関連予算についても、将来的に大幅な増額を目指すことを表明し、現在、その内容や財源について検討が進められていると承知しております。
 県としては、引き続き、あらゆる選択肢から財源の確保に努めるとともに、子供関連施策の多くは地方自治体が担っていることから、財政支援の拡充等について、政府予算要望や全国知事会としての要望を行ってまいります。
〇39番(工藤大輔君) 私は全国一律の取り組みだけでは足りないのだと思います。やはり県独自の対策、そして強化策、また、広い県土で、県北地域、沿岸地域で、相当な人口減少が進んでいます。そういったところへの対策といった場合には、県独自の施策が必要だと思いますし、独自の財源が必要だと思いますが、もう一度知事に答えていただきたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 財源は、例えば、岩手県内で岩手県民に対してのみ税負担を、あるいは税以外の形でも負担増を求めるということが、それによる生活費を減らすことになるとか、所得の削減効果とかといったものとの比較におきまして、なかなか難しいものがあるかとは考えているところでありますが、岩手県民だけに大幅負担増を求めるのではないようなやり方での財源の確保に努めていきたいと思います。
〇39番(工藤大輔君) 私は、県独自の対策というのは必要ですので、国のほうにしっかりと政策提言しながら、モデル事業導入を図るなども努力をしていただきながら、積極的に取り組んでいただきたいと思います。
 次に、医療提供体制についてお伺いします。
 持続可能で希望ある岩手の実現をするための行財政改革に関する報告書では、人口減少による患者数の減少や医療の高度化、専門化の進展による医療需要への課題が提起されています。報告書では、県が課題解決に向けた方向性を示す必要があるとし、周産期や精神科、救急医療で四つの医療圏を設定している事例を参考にすることや、基幹病院を統合し、症例や手術数の多いハイボリュームセンターの整備を検討すること、全国的に診療所機能は市町村が担い、地方交付税措置が市町村に限られていることから、新たな連携のあり方を検討する必要があるなどが記載されています。
 医療政策は県民ニーズの高い重要な政策課題であり、中山間地からなる広大な県土を有する本県では、高度医療や高度救命救急を担う基幹病院と地域病院の適切なバランスが求められています。
 この報告書を踏まえ、本県の医療提供体制のあり方についての認識と、今後の検討についてお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 報告書で提言いただいた中長期的な視点に立ったあるべき施策を参考としつつ、将来の医療需要や、令和18年度、2036年度までの偏在解消を目指している医師確保等の状況を踏まえながら、限られた医療資源のもとで急性期医療から在宅医療に至るまで、切れ目のない医療提供体制の構築を進めていく必要があると考えています。
 県では、令和6年度、2024年度からの次期岩手県保健医療計画の策定に向けて、新興感染症の発生、蔓延時に備えた対応、それに加えて、県民が身近な地域で安心して医療を受けられる体制の確保を図るとともに、医療の高度、専門化にも対応するため、がんや循環器疾患、その他疾病等についての広域的な医療圏のあり方について、疾病事業の各専門家や地域の医療関係者と意見交換を進めているところです。
 また、それぞれの地域において安心して質の高い医療が受けられるよう、地域保健や市町村の介護事業との連携、DXを活用した地域医療の確保などについても、県民や医療関係者の意見を伺いながら計画の策定に取り組んでまいります。
〇39番(工藤大輔君) 次期保健医療計画の策定があると前の方の答弁でもございました。今度の方向性というものは、それらに盛り込まれるような形で今後検討されていくということになるのでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 今述べましたように、今回の新型コロナウイルス感染症のような新興感染症の発生蔓延時に備えた対応、そして、県民が身近な地域で安心して医療を受けられる体制の確保、そして、がんや循環器疾患、その他疾病等についての広域的な医療圏のあり方というところが主要なテーマになると考えております。
〇39番(工藤大輔君) 現在、県では奨学金医師養成をし、基幹病院と地域病院でたすきがけの研修プログラムをつくって取り組んでいます。要は、二次保健医療圏の医療機能を充実させるという方向にあるのだと思いますが、この報告書によると、医療の機能の集約をしていく、地域の二次保健医療圏の機能をほかのところと統合していくという記述に見られるわけです。そういった充実方法を目指そうとしているともとれるわけです。知事の考えとすれば、これはどちらの方向だと考えているのかお伺いします。
〇知事(達増拓也君) この報告書は、今後の医療需要の動向から症例数の減少が見込まれる中でも、医療の高度、専門家に対応した医療機関を居住地域から至便な範囲で確保するために検討する必要があると示しています。
 一方、全ての圏域で基幹病院となっている県立病院については、県立病院以外の医療機関が少ない地域においては、初期医療から軽度の急性期医療、介護サービス事業者と連携した地域包括ケア、また、在宅医療といった医療機能を提供する役目を担っていく地域も多くあります。
 したがって、県立病院が県民に身近な医療と高度専門的な医療をどのように提供していくかについて、それぞれの地域医療の現状、地域保健や市町村の介護事業との連携など、地域において安心して必要な医療が受けられる体制を引き続き確保していくような方向性で関係者等と丁寧に議論を進めていく必要があると考えております。
〇39番(工藤大輔君) 例えば、今後の医療の集約化という形が進むとなると、専門的な治療や手術をこれまでの病院等で受けることができなかったり、患者や家族の負担が大きくなっていくと思います。それを補う手法とすると、オンライン診療や本格的な遠隔医療の導入を目指した実証など、医師や患者双方の負担の軽減や地域医療の充実につながる対策を導き出す必要があると思います。これらをセットで進めながら、地域に理解を求めていくということが必要になってくると思いますが、どのように取り組むのかお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 県では、県民に対して質の高い医療を提供するため、これまでテレビ会議システムを活用した遠隔診断支援など、岩手医科大学と地域中核病院間の連携を目的としたシステムの整備を行ってまいりました。また、医療機関や市町村の間で妊産婦等の情報を共有する岩手県周産期医療情報ネットワークいーはとーぶによるICTを活用した情報連携にも取り組んでおります。
 今後、医療機関のさらなる役割分担と連携が進む中、患者の通院に係る負担の軽減を図るため、令和5年度当初予算案においては、新たに妊産婦の通院等に対する支援の拡充や遠隔医療に必要な設備整備への支援を盛り込んでおり、引き続き、住みなれた地域で安心して質の高い医療を受けられる体制の構築に取り組んでまいります。
〇39番(工藤大輔君) 次に、移住、定住対策についてお伺いします。
 コロナ禍で県内企業への関心が高まり、高校生の県内就職率が上昇しましたが、社会経済活動がコロナ禍前に近づくにつれ、再び東京一極集中の兆しが見え始めています。その一方で、地方への関心は薄れておらず、移住を希望する首都圏在住者の流れは続いており、これまで継続して取り組んだ成果に加え、対策を強化し、移住、定住に結びつけたいものであります。
 県内の生徒、学生や、首都圏で学び生活してきた県出身者のふるさと岩手で役立ちたい思いは以前より高まっていると感じております。生徒、学生のうちから地域課題について行政や企業と取り組むことで、学んだことを生かせる環境やステージが岩手県にあることが伝わり、明確な目的や社会貢献への意識を高めながら、地域での生活を送る積極的な選択が行われるよう、仕事と暮らしの両面での支援メニューをつくっていく必要があります。若年層の県内定着と移住、定住住施策をどう進めるのかお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 岩手県でずっと暮らしたい、岩手県に戻りたい、あるいは、岩手県で役に立ちたいと考える若者をふやし、県内での就職に結びつけていくためには、小学生段階から保護者を含めて県内の企業や産業状況を理解していただき、子供たちみずから将来のライフデザインを考えるためのキャリア教育を充実させていくことが重要と考えております。
 こうした考えのもと、小学生向けの企業見学会や中学生向けの職場体験活動、高校生向けにはワークショップや企業説明会、就職促進情報誌の配布、大学生向けには職場体験プログラムなどを実施し、小学校から大学まで、県内企業の魅力等を伝える取り組みを行っております。
 また、インターンシップの取り組みについては、新たに保護者向けのセミナー開催や受け入れ企業のプログラムの充実に向けた支援策を令和5年度当初予算案に盛り込んでおります。
 さらに、進学等で県外に転出する岩手県の若者に対しては、その進学等の期間を通して、岩手県とのつながりを継続することで卒業後のUターンに結びつけていくことが重要でありますので、SNSを通じた継続的な情報発信、さらに、令和5年度、2023年度は、新たに県就職情報サイト、シゴトバクラシバいわてにおいて、インターンシップ情報ページを強化することとしており、これらを通じて若者の県内就職とU・Iターンの一層の促進を図ってまいります。
〇39番(工藤大輔君) 地域おこし協力隊のような地域外の人材が地域資源を掘り起こしながら、新しい風を吹かせています。変化を生み出す担い手が地域に入り始めており、柔軟な発想のもと、交流人口の拡大、2地域居住、山村留学等の取り組みなどと複層的な取り組みをしていただきたいと思います。
 そして、若者の起業、スタートアップに対する支援について、次にお伺いします。
 2021年の新設法人数は586社で、2年ぶりに前年度を上回りました。今後新たなビジネスモデルを模索する動きはさらに大きくなると見られており、首都圏や地方を問わないリモートでの仕事やECサイトを活用した事業展開、大学の研究成果の実用化など、これまでの創業支援とあわせ、起業しやすい風土をつくることは地域経済を支える新たな柱となります。
 起業やスタートアップに向けた支援、クラウドファンディングを活用した資金調達手法など、個々に合った事業化支援により、若者やフルタイムを選びにくい子育て世代の女性などへのチャレンジ精神を駆り立て、ニーズの高い職種への移行や夢の実現への第一歩につなげることを期待するものであります。
 スタートアップに向けた県内での機運を高めるためには、ベンチャーキャピタルや事業会社へのビジネスマッチング、ビジネスコンテストによる事業化への機会の拡大など、投資や提携に向けた展開が図られるよう取り組むことも効果的であります。
 岩手県に若者や女性を呼び寄せ、新たな活力につなげるよう、どのように取り組むのかお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 情報通信技術の発展により、時間や場所にとらわれないで柔軟で多様な働き方の可能性が広がり、地方を舞台にした新しい挑戦の機会が生み出されており、コロナ禍におけるデジタル化の急速な進展がそれを加速しています。
 このチャンスを生かして、若者、女性を中心に岩手県で起業する人がふえるようにしていくことが可能であり、目指すべきであります。
 このような考え方のもと、これまで、岩手イノベーションベースを中心とした起業、スタートアップ支援に向けたさまざまな取り組みを展開しており、昨年11月には、徳島県に続き2回目となる全国会議、地方経済未来会議LECを本県で開催し、400人近くの若手経営者や起業に関心を持つ若者たちが集いました。
 来年度はこうした取り組みをさらに強化していくこととし、新たにオール岩手による連携体として、いわてスタートアップ推進プラットフォームを設置し、県内の関係機関が一体となって起業、スタートアップの支援を行うほか、県内で起業等を希望する若者や女性を対象とした無利子、無保証料の開業資金貸付制度の創設、また、起業のステージやパターンに応じたプログラムの提供や事業の拡大に必要な知識を得るための実践的な研修の実施、さらに、大学生等を対象とした起業家教育などに要する経費を令和5年度当初予算案に盛り込んでおります。
 これらを通じ、本県を舞台に若者や女性がさまざまなビジネスや社会活動の分野でそれぞれの思いやアイデアを形に変えていくことができる環境を構築してまいります。
〇39番(工藤大輔君) ぜひ政策の効果を高めながら、岩手県に若い世代を呼び寄せるように取り組んでいただけるよう期待します。
 次に、DXの推進についてお伺いします。
 デジタル技術の急速な進展に伴い、キャッシュレス決済やリモートワークなどの利活用が進み、生活の一部として浸透し始めています。行政におけるDXは、行政手続のオンライン化やAI、RPAの導入による事業の効率化が図られています。
 産業のDXにおいては、地域経済を支える中小企業、とりわけ小規模事業者や第一次産業への技術の導入が課題であり、生産性や品質の向上など、DXの必要性は感じるものの、どこから取り入れるべきか、導入コストに対する効果や負担が見通せないこと、デジタル人材に対応できる人がいないなどが課題として挙げられています。
 県では、今年度新たにDX推進計画の策定を進めておりますが、質の高い医療、子育てサービスや教育の実践、デジタルマーケティング手法を活用した産業振興など、広く県民が暮らしの中でデジタル化の恩恵を享受していくために、どのような取り組みを強化するのかお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 人口減少など地域が抱える社会問題の解決を図り、個性豊かで活力に満ちた地域社会を構築するためには、デジタルの力を活用し、生産性の向上や新たな価値の提供を実現するDX、デジタルトランスフォーメーションを積極的に推進していくことが重要です。
 このため、県では、産学官金で構成する、いわてDX推進連携会議等と連携し、県内の企業、団体のすぐれた取り組み事例を広く紹介する、いわてDX大賞の実施や、デジタル人材の育成などオール岩手で推進しているところであり、今後ともあらゆる分野で県民がデジタル化の恩恵を享受できるよう、DX推進計画の策定を進めています。
 具体的には、業務の効率化を図る行政のDX、データやデジタル技術の活用により産業の生産性向上、高付加価値化を図る産業のDX、住みなれた地域で質の高い医療を受けられる遠隔診療の体制整備など、県民の利便性向上を図る社会・暮らしのDX、そして、通信環境や人材など、DXを支える基盤整備、この四つの方針に基づいて各分野の取り組みを加速してまいります。
 今後も、できることからすぐに取り組みを始め、柔軟に見直し、改善を図りながら、計画の目指す姿である、DXの推進により県民一人一人が快適に暮らし、岩手県をベースに活躍することができ、幸せを実感できる、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわてに向け、取り組んでまいります。
〇39番(工藤大輔君) 産業全ての分野でその実装を進めていかなければなりません。この分野、特に、例えば県北地域のほうだと中山間地という形で、導入がしっかり進めばその効果が高く発揮できますし、地域のコミュニティーを守る、そして、維持できる、そういった機能も有しております。そういったところにも十分配慮しながら進めていただきたいと思います。
 次に、経済産業省は、社会のデジタル化の進展に伴い、2030年にデジタル人材が最大で79万人不足するとしています。
 岩手県立大学のソフトウェア情報学部の就職状況は、令和3年度卒業生の22.8%が県内に、77.2%が県外就職となっており、高度な情報技術を学んだ人材の流出が長く続いています。
 全国的なDX人材の不足を考えると、県内就職を高める取り組みや、卒業生のUターン対策を強化するとともに、学部の定員増を求めることも効果的と考えますが、どのように取り組むのかお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 岩手県立大学では、地域の事業所への理解を促進するためのキャリア教育を行っているほか、ソフトウェア情報学部では、産業界等と連携して、いわて情報産業就職フォーラムを開催するなど、県内就職率向上に向けた取り組みを進めています。
 また、Uターン就職の希望者には、首都圏に設置するU・Iターン就職相談窓口による相談対応や情報提供の実施など、在学生と同様に支援しています。
 ソフトウェア情報学部の県内就職率の向上に向けて、県では、IT企業の誘致に積極的に取り組むほか、県内企業の魅力等を伝える授業や職場体験プログラムの実施など県内企業の理解を深める取り組みが重要であり、その充実に努めてまいります。
 なお、議員御提案のソフトウェア情報学部の定員増は、卒業生の県内就職者数をふやすための良案であり、県立大学が学生や教員の確保など、多角的な観点から検討すべきものではありますが、国において、理工系、デジタル系学部の新設や定員増について検討を始めていることから、私としても関心を持ってまいります。
〇39番(工藤大輔君) 次に、インバウンドの誘客の取り組みについてお伺いいたします。
 昨年から政府の水際対策の緩和が進み、海外からの旅行客がふえております。仙台空港を初めとした地方空港おいても、国際線の運航が再開し始めています。いわて花巻空港の国際線については、長らく運休が続いていましたが、昨日の発表により、台湾線が5月10日から再開するとあり、インバウンドの回復、拡大に向けては、非常に喜ばしいニュースであります。
 さらに、先般、ニューヨークタイムズ紙で、2023年に行くべき52カ所に盛岡市がロンドンに続いて2番目に紹介され、国内外から大きな注目を集めています。
 県内には盛岡市同様に、ここにしかない、この時期しかない誇れるものがあり、インバウンド誘客や教育旅行のさらなる誘致の絶好のチャンスと考えますが、今後の取り組みを伺います。
〇知事(達増拓也君) 本県は、3年にわたるコロナ禍を通じて、一貫して低い感染レベルが維持され、他県と比較しても高い水準で観光産業支援を行ってきたところであり、官公庁の宿泊旅行統計調査によれば、県内への宿泊者数はコロナ前の水準に戻りつつあります。
 今般、いわて花巻空港の国際線の再開の発表があり、また、ニューヨークタイムズ紙に盛岡市が取り上げられたことを絶好のチャンスと捉え、これまで行ったことがないような誘客促進を展開し、盛岡市のみならず、県北地域、沿岸地域、県南地域と岩手県全域に波及させ、より多くの観光客を呼び込みつつ、インバウンドの拡大を観光産業、ひいては本県経済の活性化につなげていくことが重要であります。
 このような考えのもと、令和5年度一般会計当初予算案においては、国際定期便の就航再開に向けた対応や、海外へのプロモーションを展開するなど観光推進の強化を図ったところです。
 また、三陸地域への教育旅行の誘致拡大と周遊促進を図るため、貸し切りバスを使用した教育旅行を行う旅行業者への支援や、三陸地域の宿泊施設で利用できるクーポンを造成する事業を盛り込んでおり、三陸地域の観光需要の喚起を図ってまいります。
〇39番(工藤大輔君) 次に、ヤングケアラーについてお伺いします。
 年齢に見合わない責任や負担を負いながら、家事や兄弟の世話に当たるヤングケアラーの問題がクローズアップされています。国の調査によると、家族の世話をしていると答えた小学6年生は6.5%、中学2年生が5.7%、高校2年生は4.1%となっています。県が実施した市町村要保護児童対策協議会からの調査では、ヤングケアラーに該当する児童生徒は、令和3年度は13市町村で39人となっています。これは、全児童生徒に占める割合が0.03%に当たります。
 国の調査をもとに、全児童生徒数を単純に当てはめると、本県のヤングケアラーは約6、500人いると推計されますが、実態をどのように把握されているのでしょうか。今後、スクリーニング調査等も行いながら、早期の支援に結びつけるべきと考えますが、いかがでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 議員御指摘のとおり、県が把握しているのは、市町村要保護児童対策地域協議会から報告のあった39人ですが、支援につながっていない潜在的なヤングケアラーの数は、はるかに多い可能性があると認識しております。
 一方、国等が子供を対象として実施した調査において、調査を受けること自体がストレスになったとの回答もあったことから、実施に当たっては慎重な検討が必要であり、まずは周囲の大人たちがさまざまなかかわりの中でヤングケアラーという状況に気づくことが重要と考えております。
 そのため、県では今年度、早期発見のためのガイドラインを作成し、教職員等に配布することとしており、このガイドラインを活用し、スクールソーシャルワーカーや市町村との連携により必要な支援につなげられるよう取り組んでまいります。
〇39番(工藤大輔君) 虐待と比べて緊急度が決して高くないため、実態把握におくれが生じてはなりません。孤立感やストレスを抱え、自分の学習時間を減らし、日々の生活を送る子供たちが救われるよう、ヤングケアラーの概念に沿った実態把握を求めたいと思います。
 次に、子供の権利を守り、社会で育む体制についてお伺いします。
 今年度からヤングケアラー支援体制強化事業を導入し、相談窓口の設置や同じ悩みを持つ人が交流するサロンの開催など、総合的な取り組みを始めています。ヤングケアラーに該当する人は、誰にも相談したことがないという方が6割いるということが国の調査で出ており、周囲からヤングケアラーだと見られたくない、親への誹謗中傷が心配との声もあります。
 県の相談窓口に寄せられた件数は、延べ8件ということであり、支援活動も相談や経過観察にとどまるなど、適切な支援につながっていないケースが見受けられます。
 家族のケアニーズへの支援や就学支援など適切に行いながら、子供の権利を守り、社会で育む体制づくりが求められますが、どのように進める考えかお伺いします。
〇知事(達増拓也君) ヤングケアラーは、学校生活に支障が生じるだけではなく、子供らしい生活や健やかな成長など、本来守られるべき子供の権利が守られていない可能性があります。
 そのため、県では、子供自身の気づきを促し、相談機関を気軽に利用してもらうため、全ての中学生、高校生にリーフレットを配布するなど周知を進めています。
 また、子供本人への支援に加え、家族が抱える病気や障害、生活困窮といった複合化、複雑化した課題への包括的な対応が必要であることから、県としては、いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランにおいて、市町村の重層的支援体制整備事業の取り組みを促進することとしており、これらの取り組みを通じて、ヤングケアラーである子供の権利を守り、地域社会全体で支えていく相談支援体制の構築に努めてまいります。
〇39番(工藤大輔君) このヤングケアラーの問題は、実態把握をしなければ、そういった支援になかなか結びついてまいりませんので、今、担当課でやっている取り組みは、先進事例をよく調査し、把握しながら、総合的にやっていると私は思っています。あとは、その取り組みの質を高めるということが課題ですので、この体制強化を願いたいと思います。
 最後に、県北振興についてお伺いします。
 先般、北いわて産業・社会革新推進コンソーシアムシンポジウムが開催され、プラチナ構想ネットワークの平石事務局長から、今後、県北地域で進めようとする取り組み方針等の説明等がございました。
 県北地域には数多くの再生可能エネルギーの資源があります。今後はこのエネルギーの地産地消による暮らしの産業力の強化、森林資源の最大活用、風力発電の早期の事業化を進め、地域の持つポテンシャルを生かしていくことが重要と思いますが、どのように取り組むのかお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 県北地域は、今後の持続可能な社会の構築に向け、他地域を先導し得る高いポテンシャルを有する地域であり、県では、県北・沿岸振興本部において、毎年、重点方針を定め、全庁を挙げて取り組んでいます。
 令和3年度、2021年度からは、県北振興の推進母体である北いわて産業・社会革新推進コンソーシアムにおいて、北いわて13市町村や企業など多様な主体が地域課題をテーマとするプロジェクトに取り組んでおり、本年度は新たに、東京大学を中心に岩手県立大学と県によるゼロカーボンと豊かさの両立を目指すCОI−NEXT、センター・オブ・イノベーション・ネクストも開始したところであります。
 令和5年度、2023年度は、全県でエネルギーの地産地消に向けた市町村の自立、分散型エネルギーシステムの構築支援を初め、運輸部門におけるEV等の導入など、脱炭素に向けた取り組みを進めることとしており、北いわてにおいては、木質バイオマス資源を生かした熱供給システムの構築など、再生可能エネルギーの活用も推進してまいります。
 さらに、洋上風力発電については、地元市町村の意向を踏まえ、県内外の漁業団体との協議を進め、早期の事業着手を目指してまいります。
 市町村を初めとする多様な主体と連携し、起業支援など若者の参画も進めながら、持続的に発展する地域の実現に向けて取り組んでまいります。
〇39番(工藤大輔君) この講演の中でも、県北振興に当たっては、必要なのは施策の具体性とスピードだという話がありました。この総合計画を進めるに当たって、県北地域へのメニュー等も見ると、なかなか具体性が示されなかった。今やっと具体性が見え始めてきたということであります。これを地域と共有しながら進めなければ、これはなかなか前に進まないということになります。
 県北地域一体で目指す社会に向けて進めるよう、県としてもしっかりと説明し、目標をしっかりと掲げて、知事が先頭に立って訴えるという覚悟がなければ、なかなか進まないと思います。今後の県の取り組みを期待して、質問を終えたいと思います。ありがとうございます。(拍手)
   
〇議長(五日市王君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後4時45分 散 会

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