令和5年2月定例会 第24回岩手県議会定例会会議録

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〇15番(菅野ひろのり君) 私は、立憲民主党、会派希望いわての奥州選挙区、菅野ひろのりでございます。任期最後の質問の場を代表質問として登壇させていただきましたこと、先輩、同僚議員に深く感謝を申し上げます。
 今回の質問のテーマは、危機と、そして希望です。知事演述、当初予算編成を踏まえ、達増県政16年を振り返りながら質問をさせていただきます。
 達増知事は就任から間もなく16年がたちます。私は、この16年間は危機の連続だったのではと考えています。まず、知事が就任直後の平成19年、四つの危機です。県民所得は平成17年、230万円代と低迷しておりました。人口減に求人不足、医師不足、知事は、危機を希望にのスローガンのもと、人口減少対策に着手し始め、地域医療の確保などに取り組まれました。
 そして、平成23年の危機、それは東日本大震災津波です。戦後最大の災害に見舞われた岩手県を達増知事が先頭となり、復旧、復興を全ての県民と一体となり進めてきたことは、誰もが認めるところだと思います。その後は、たび重なる台風等の自然災害、令和元年には新型コロナウイルス感染症発生、昨年はロシア、ウクライナの軍事衝突と物価高、達増知事は数々の危機に対峙してきました。知事はなぜ、大きな危機を乗り越え、どのような思いで危機に立ち向かってこられたのか伺います。
 以降は質問席で行います。
   〔15番菅野ひろのり君質問席に移動〕
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 菅野ひろのり議員の御質問にお答え申し上げます。
 危機に対応した県政運営についてでありますが、平成の10年代、それは西暦2000年代と重なりますが、有効求人倍率が1を超えない時期が続き、就職を希望する人の多くが県外に出なければならない状況でした。実際に人口の社会減は毎年1、000人ずつ減少数が拡大していくような状況で、平成19年、2007年には人口の社会減は6、709人に達していました。私が衆議院議員を辞して岩手県知事選挙に立候補しようとしたのも、岩手県がそのような状況にあったためです。
 危機に際しては、危機から目をそらすことなく、危機の実態をしっかり見極め、危機に全力で当たらなければなりません。そのように対応すれば危機をもたらしている諸問題を解決し、長所を伸ばし、短所を克服することができます。このように、危機を希望に変えることができるということは、私が学生時代から外務省時代にかけて学んだことであり、衆議院議員時代に実践してきたことでもあります。
 知事就任から今日に至るまで、岩手県において世界トップクラスのものづくり産業集積や高品質で安全、安心な農林水産物、多彩な観光資源などの力を再認識し、なりわいや地域づくりに素直に誠実に取り組む県民とともに仕事をし、さらに、近年の岩手県の若者の目覚ましい活躍に触れて、岩手県は危機を乗り越えるごとによくなっていくという希望が持てることを確認し、さらにその思いを強くしています。
 現在もコロナ禍や原油高、物価高騰、人口減少問題など、岩手県は危機に直面していますが、県民の力を合わせればこれらを乗り越え、希望の未来に進んでいくことができると確信しています。
〇15番(菅野ひろのり君) その危機の中で最も大きなのは東日本大震災津波であったと思います。ことしで12年、被災された皆様に改めて追悼の意を表します。
 知事は発災後の8月にいち早く岩手県東日本大震災津波復興計画を策定し、県民に復興への道筋を示しました。被災された方々の援助、避難生活への支援、瓦れきの撤去など、応急、復旧対策を進める一方で、長期間を見通した復興計画をつくられました。これは県職員の皆様を初め、想像を超える大変な仕事であったと思います。その計画の理念は、誰一人取り残さないいわて県民計画(2019〜2028)の新たなアクションプランにも引き継がれていると思います。知事が岩手県東日本大震災津波復興計画に込めた思い、これはどういうものだったのか、また、どういった思いで復興という難事業に当たってこられたのか伺います。
〇知事(達増拓也君) 東日本大震災津波の直後、陸前高田市に入り、そこから北に向かって市町村ごとに被害の状況を直接確認しながら、救助、捜索、避難を進めました。現実であることが信じられないような現場の状況でしたが、とにかく人命最優先で取り組むべきこと、そして、復旧、復興のビジョンを早い段階で示す必要があるということを強く感じました。被災の現場から戻り、難を逃れた方々の幸福追求権を保障し、犠牲になられた方々のふるさとへの思いを継承するという基本原則を市町村長の皆さんとすぐに共有し、県外にも発信しました。
 岩手県東日本大震災津波復興計画については、県民の底力を引き出し、県外から力をいただく形で、県内の各分野の代表からなる岩手県東日本大震災津波復興委員会を立ち上げ、県外有識者の助言を受けながら、スピーディーに原案を策定することができました。県議会全会一致の賛成で岩手県東日本大震災津波復興計画が早期に決定されたことを思い出します。
 岩手県東日本大震災津波復興計画の目指す姿は、いのちを守り海と大地と共に生きるふるさと岩手・三陸の創造であり、復興は被災した方々一人一人が安全を確保し、生活を再建し、なりわいを再生するようでなければならず、いわば一人一復興という思いで被災者一人一人に寄り添う復興を進めてきました。後に国連のSDGsが誰一人取り残さないという理念を掲げた際、それは岩手県が復興に取り組むに当たっての姿勢と同じであると気づきました。
 このような岩手県の復興のビジョンや理念は、いわて県民計画(2019〜2028)にも生かされ、県政全般を貫くものとなっています。
 今後においても、東日本大震災津波の経験に基づき、引き続き復興に取り組みながら、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわてに邁進してまいります。
〇15番(菅野ひろのり君) やはり復興というのは、岩手県の土台、これからもしっかりと当時の思いも我々は引き継ぎながら、県政、あるいは行政運営にしっかりと進んでいかなければいけないと思っています。
 その東日本大震災津波を教訓として、最近は自然災害等の激甚化等を踏まえますと、県民の命をしっかりと守る、そういった視点から、さまざまなリスクに対応できる安全、安心な地域づくりというのをやっていかないといけないと私は考えています。
 また、そうなると、社会資本整備、生活基盤、経済活動の基盤をなすものですから、中長期的な視点に立って行っていかなければいけないだろうと思っています。そのためには、全県一体となった道路交通ネットワークの形成、三陸沿岸道路等も整備されましたが、まだまだ考えていかなければいけない、そういった視点も必要だと思っています。
 これまで社会資本を充実させてきたところでございますが、安全、安心の確保に向けた今後の整備のあり方について、どのようにお考えでしょうか、伺います。
〇知事(達増拓也君) 県民の安全、安心な暮らしを守り、産業振興を支えるため、これまで東日本大震災津波からの復興とあわせて、県内のインフラ整備を進めてきました。その間、復興道路359キロメートルが全線開通し、国道107号奥州市−北上市間の梁川−口内工区など、これを補完する道路の整備により、新たな道路ネットワークが形成されました。
 また、令和2年度の矢巾町岩崎川の河川改修の完成に加え、沿岸部の自動閉鎖型の水門、陸閘は、昨年末までに204カ所運用開始するなど、安全、安心の確保に向けて着実な成果を上げてきました。
 いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランでは、安全、安心な地域づくりを重点事項の一つに掲げ、これを着実に推進するため、先議いただいた国土強靱化に資する令和4年度一般会計補正予算320億円に加え、プラスシーリングとした令和5年度一般会計当初予算案558億円と合わせた実行予算ベースの公共事業費、3%増の878億円を計上しました。
 防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策などの国費を最大限活用しながら、安全、安心な暮らしの実現に取り組んでまいります。
〇15番(菅野ひろのり君) そういった中で、インフラ整備においては、縦軸、三陸沿岸道路が開通して、あとは釜石道、横軸が出たわけですが、やはり私は岩手県の均衡ある発展と考えたときに、県北地域、あるいは県南地域というところも非常に重要だと思っています。このインフラ整備については、もう少し後で伺わせていただきたいと思いますが、いずれ社会基盤整備、引き続きお願いしたいと思います。
 そして、東日本大震災津波復興計画を進める中で、県民の皆さんに重要だったのは、これからの復興の姿というのはどんな姿があるのだろう、そして、どんな光があるのだろうというのが県民が頑張るモチベーションとして私は非常に重要だったのではないかと思っています。
 そうやって振り返ってみますと、達増知事は、こういった膨大な事業に取り組みながら、岩手県が持つ魅力に着目してきたのだと思っています。SNSでもいろいろな発信もされていました。
 私はこれで重要なのは二つあると思っています。一つは文化面、もう一つはスポーツ、これらに多く力を注いできたのだと思っています。例えば、平成28年の平泉の文化遺産、釜石、橋野鉄鉱山、一戸、御所野遺跡など国内最多の三つの世界遺産の登録を実現されました。また、スポーツでは、平成28年の希望郷いわて国体・いわて大会、令和元年に釜石市で開催されたラグビーワールドカップ2019岩手・釜石開催、これは特に被災地で行われましたから、大きな意味を持ったと思います。こういったスポーツから、文化から感動する、そういったものを本当に多く発信されてこられました。
 岩手県の価値が高まり、そこで暮らす私たち県民にも大きな自信と誇りを与え、困難を乗り越える力となっていますが、こうした数々の事業を知事はどのような考えのもと、実施されてきたのでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 私が外務省時代、外国人に東京都や京都府の映像を見せても余り関心を示さなかったのに対し、岩手県の四季や祭りの映像には非常に高い関心を示され、岩手県の自然、歴史、文化は世界に通用するという手応えを持っていました。
 また、岩手県の先人について、霞が関の公務員たちや衆議院議員時代に接した衆参の議員の皆さんから高く評価する声を耳にしており、過去から現在に続く岩手県の県民性は、さまざまな分野で全国や海外に貢献し得るものと感じていました。
 知事就任以来、岩手県のさまざまな魅力や信頼性をソフトパワーとして国内外に発信することを県政の主要な一分野としてまいりました。この間、三つの世界遺産登録のほか、希望郷いわて国体・いわて大会や、ラグビーワールドカップ2019岩手・釜石開催の成功など、議員御指摘のとおり、岩手県のソフトパワーが東日本大震災津波復興の力となり、地域振興の力となり、ソフトパワーはさらに高まってきていると思います。
 岩手県の若者のスポーツや文化での活躍も目覚ましく、県民一人一人の力を伸ばすことに留意しながら、関連の事業を通じて岩手県のソフトパワーをさらに高めてまいります。
〇15番(菅野ひろのり君) その中で、知事がこれからスポーツ、文化を発信しながら手を打ったのが幸福度だと考えています。令和元年、全国に先駆け、幸福を県政運営の柱に据えました。私はこれを最初に出されたとき、幸福というのはどうやってはかるのだろうと疑問に思いましたし、視察調査も行きました。ほかの議員からも多くの疑問の声も聞かれましたが、今、その幸福というのはウェルビーイング、そういった考え方は地方自治体にとどまらず、国政の場でもそういった話があると思っています。それぞれの幸福を追求していくというのは、今、多様性が求められる中で最も大事なのではないかと考えています。
 では、なぜ知事は地方自治体としての岩手県において、幸福を県政運営の柱に据えたのか、知事が考える地方自治体のあるべき姿、これはどういうものなのか伺います。
〇知事(達増拓也君) 日本国憲法第13条に、個人の尊厳と生命、自由及び幸福追求に対する権利が規定されており、これは憲法が保障する基本的人権の原点と理解されています。地方自治体にも住民一人一人の生命、自由及び幸福追求の権利を最大限に尊重することが求められ、本県としてもそのような役割を果たす必要があります。また、東日本大震災津波復興の基本原則にも幸福追求権の保障を明示しましたが、未曾有の危機に直面し、県の役割の原点が強く意識されたことが背景にあります。
 復興で自覚されたこの理念を県政全般に広げ、いわて県民計画(2019〜2028)ではお互いの幸福を守り育てることを基本目標に掲げました。全ての岩手県民と岩手県にかかわる全ての人たちが岩手県をベースにして生活、仕事、学びにそれぞれの幸福を発展させられるような岩手県でありたいと考えます。
〇15番(菅野ひろのり君) 幸福を政策評価レポートにより、知事が進めてきたものを見ると、コロナ禍において大変厳しい状況ではないかと推測しましたが、その指標、主観的幸福感というのは、平成31年、52.3%だったのが令和4年には56.6%に上がっているのですね。特に岩手県でいいと思われているのが、家族、子育て、教育という家族環境ですが、残念ながら、まだまだ不足している。下だというのが、必要な収入、所得なのです。やはりこれから暮らしをしていく上で、所得の確保、収入というのをしっかりと進めていかなければいけない。今、目の前にある危機が何なのか、これを今度、知事はクリアしていかなければいけない、挑戦していかなければいけないと思っています。
 それは三つあると思っています。人口減少、新型コロナウイルス感染症と物価高。
 まずは人口減少について伺います。これは国の政策が大きく影響しています。日本全国そうですが、一方で、地方自治体も独自の努力をしていかなければいけない。岩手県は住民基本台帳人口移動報告によると、2022年、本県は4、373人の転出超過となっていました。再び東京一極集中が強まっている傾向にあります。そこで、子供、子育て支援策の充実について伺いますが、全国では6年連続で出生率が低下しています。そして、本県を含めた日本全国において、少子高齢化がこれも変わらず進展しています。人口減少がどんどん加速していくと行政サービスの提供にも影響が出ますし、国において、全国一律での経済的支援制度を構築していくことが求められますが、国では現在においても、子供、子育て支援策の拡充を検討するといった対応にとどまっています。子供、子育て支援策の充実は喫緊の課題と考えますが、県としてどのような対策を行っていくのか伺います。
〇知事(達増拓也君) 人口減少、少子化対策としては、要因となっているさまざまな生きにくさを生きやすさに変えていく施策が必要であり、いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランにおいて、結婚、妊娠、出産、子育てなど、各ライフステージに応じた総合的な施策を強化することとしています。
 国の出生動向基本調査によると、理想の数の子供を持たない理由としては、子育てなどにかかる経済的負担が最も多くなっており、子育て世代における経済的負担の軽減は喫緊の課題です。
 そこで、県は、令和5年度当初予算案において、結婚、妊娠、出産を希望する県民への支援体制の強化として、不妊治療に要する交通費への助成や、妊産婦を対象とした通院等の支援の拡充、子育て世帯への経済的支援の拡充として、他県でも例の少ない第2子以降の3歳未満児を対象とした所得制限を設けない保育料の無償化や在宅育児支援金の創設、経済的に困窮している高校生等への大学等進学支援に向けた奨学金の創設など、全国でも先進的な新規事業を盛り込みました。
 これらの経済的支援の拡充等を通じて、市町村と連携し、全国トップレベルの子供、子育て環境をつくり、希望する全ての県民が経済的な制約等にとらわれずに安心して子供を産み育てられる社会の実現を目指します。
〇15番(菅野ひろのり君) 第2子以降の3歳未満児を対象とした所得制限なしでの保育料の無償化等、非常に踏み込んで、市町村からの要望も聞き入れていただき、決断に至ったことは本当に大きな一歩であると思っています。ぜひこれからもそういった皆さんの声を聞いていただいて、県政運営を行っていただきたいと思っています。
 そして、これは一つ注文ではありますが、給付型は即効性がありますし、今、厳しい現実の中では多くの歓迎する声があると思うのですが、やはり長期的に見て、給付というのは次の世代に借金を残すといいましょうか、負担を残してしまうことも考えられます。ですから、私が望みますのは、例えば、今ですと病気のときに預ける先がないといったような病児保育であるとか、環境整備にもぜひ目を向けていただきたいと思っております。これは要望としてお願いしたいと思います。
 そして、若者、女性の活躍支援について伺っていきたいと思いますが、先ほどお話ししました転出超過4、373人、この中身を見ますと、若者、そして女性というのが多いのです。年代別では、20代前半、10代後半を合わせると3、000人近くいます。女性は男性よりも800人ほど多い2、600人程度います。これはコロナ禍によって2021年に転出超過へ転じた東京圏等へ、就学や就職を契機として転出が再び増加している、そういった傾向であります。
 今後の人口減少対策に当たって、やはり岩手県で働き方、生き方というのをしっかりと選択できる地域社会を構築していくこと、また、若者、女性の方々が、岩手県がやっぱりいいのだと選択できるような環境が必要だと思っています。若者、女性の活躍支援について、どう取り組んでいくのか伺います。
〇知事(達増拓也君) 本県人口の社会減は、進学、就職期に顕著であり、特に22歳前後で女性の社会減が大きい状況となっています。また、地方から東京圏へ転入した若者層が仕事を選ぶ際に、給与水準や自分の関心に近い仕事ができることを重視しているという意識調査もあります。
 このため、県は、令和5年度当初予算案において、次のような新たな施策を盛り込みました。若者や女性が働きやすく、働きがいのある職場づくりへの支援強化として、中小企業等への補助制度を創設します。若者、女性のスタートアップの支援強化として、全国でもトップレベルでの資金繰り支援制度を創設します。女性の就労確保や所得向上に向けた支援の拡充として、成長が見込まれる産業分野での就業促進セミナーを開催します。また、高校生や大学生に向けて、卒業後の就職先として県内の企業について知り、理解を深め、選んでもらえるように、その魅力を伝える授業や、若者、女性が生き生きと活躍する動画の発信にも取り組みます。
 これらを通じて、一人でも多くの若者や女性が岩手県を舞台に一人一人の個性と能力を十分に発揮し、みずからの希望をかなえながら活躍する社会の実現に取り組みます。
〇15番(菅野ひろのり君) 今回、若者・女性創業支援資金貸付金というのが当初予算で提示されています。約15億円ということで、非常に大きな金額だと思っています。女性の活躍を考えたときに、雇用もありますし、自分で仕事を興したいのだという方に手厚く事業を設計している。奈良県では1企業当たり1、500万円ぐらいの規模で、岩手県は1、000万円だったと思いますが、利息や保証料はゼロということで、職員の皆さんも非常によく考えられて決断された内容だったと思います。ぜひこれが実効的に活用いただけるように、周知徹底も含めお願いをしたいと思っています。
 そして、改めて伺います。人口減少は、全国の都道府県でも本当に厳しい状況でありますが、人口減少を初めとする岩手県が直面する危機に対して、今後の取り組みについて、知事の強い思いを伺いたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 岩手県は東日本大震災津波からの復興の過程で、直面する危機を県民一体となって乗り越えることで未来の希望が見えてくるという経験をしており、今回の新型コロナウイルス感染症、物価高騰といった危機を乗り越える取り組みが、結果として岩手県の魅力を高めることにつながり、人口減少対策としても有効であると考えております。
 人口減少等に伴う地域課題が顕在化してくる場合でも、進学や就業、結婚、子育て、地域活動などさまざまな場面において県民に寄り添い、支援していくことで、一人一人が希望を実現できる地域社会を構築していくことができると考えます。
 このような考えのもと、今般、最終案をお示ししている、いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランに人口減少対策を初め必要な施策を盛り込んでいるところであり、直面する危機に全力で対応してまいります。
〇15番(菅野ひろのり君) そして、人口減少の次に、やはり新型コロナウイルス感染症です。新型コロナウイルス感染症からこれからどうやって復帰していくのか。そして、困っている企業の方々をどうサポートしていくのかということだと思います。ここは簡潔に伺います。今、少し落ち着いていますが、第8波で大幅な感染者増、死者数の増加、これに不安を抱える方はいらっしゃると思います。令和5年5月から感染法上の取り扱いが2類相当から5類に見直されるとの国の方針に対し、不安を抱える高齢者の方を含め県民も多いと思いますが、県ではどう対応していくのでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 県ではこれまで、診療・検査医療機関を随時拡充し、重症化リスクの高い方の迅速な入院調整、薬局での無料検査や高齢者施設等での集中的検査を実施するなど、県と医療機関等、関係機関が連携して対応してきました。
 また、県の新型コロナウイルス感染症対策本部本部員会議などを通じて基本的感染対策について県民に呼びかけを行ってきました。オミクロン株の高い感染力によって全国的に感染が拡大する中、岩手県民の皆様が場面場面に応じた感染対策を励行していただいていることなどにより、全国と比較して低い感染レベルに抑えられていると考えております。
 感染症法上の見直し後におきましても、重症化リスクの高い高齢者の皆さんを初め、県民の生命や健康を守るため、引き続き適切な保健、医療体制の確保など万全を期してまいります。
〇15番(菅野ひろのり君) 一方で、コロナ禍で、経済活動を前に向いていくのだということで言うと、5類の引き下げについて歓迎する声というのですか、そろそろ日常にという声もあると思います。この感染症対策をしっかりと行いながら経済活動を発展させていく、動かしていく、非常に難しいことだと思いますが、県の方針にも合わせながらというのでしょうか、ぜひ見極めながら進めていただきたいと思っております。
 そして、早々ですが、物価高について、伺います。
 原油価格、物価高騰対策は本当に重要だと思います。今朝も盛岡市に来る途中、ガソリンスタンドを見ていきますと、1リットル当たり160円台のところもありますし、ガソリン、燃料高であるとか、そういったものがなかなか落ち着かない様子があります。
 さらに、今、ウクライナ侵攻後、全世界的な情勢の不透明さ、円安によるエネルギー、食料価格の高騰、中小企業の皆さんを本当に苦しめております。また、中長期的に見れば、きょうお伝えしました人口減少、これは私たちをさらに厳しい状況にするのだろうと思っています。
 コロナ禍の中で、原油価格、物価高騰が県内経済や県民生活に大きな影響を与えています。早急な取り組みが必要と考えますが、県の取り組みについて伺います。
〇知事(達増拓也君) エネルギー、原材料、資材等の価格の上昇は、県民生活や地域経済に大きな影響を与えています。県は昨年5月、全国に先駆けて、原油価格・物価高騰対策パッケージとして、生活困窮者や子育て世帯への生活者支援、中小企業者等への幅広い事業者支援などを実施しました。その後、累次の補正予算により、いわて県民応援プレミアムポイント還元事業を実施するなど、合計123億円の対策を講じてきました。
 今、中小企業者や農林水産業者等を取り巻く環境は厳しさを増しており、今定例会中にさらなる支援策として補正予算案を追加提案する予定です。具体的には、エネルギー価格上昇の影響を受けている中小企業者に対する事業継続のための緊急支援や、畜産農家を初めとする農林水産業者への支援、運輸、交通事業者への支援などの追加支援策を準備しています。
 今後、これらの施策を必要な方に迅速かつ確実に届けるとともに、原油価格、物価高騰の長期化が見込まれることから、県民生活や地域経済への影響、国の支援策の動向を参考にしながら、県民一人一人に寄り添った支援策を検討してまいります。
〇15番(菅野ひろのり君) きょう補正予算の説明もありました。中小企業者、あとは農業分野にも補正予算を御提案いただきました。今、現場を歩いていても、肥料、飼料の高騰、あとは中小企業の皆さんも本当に苦しい思いをされていますので、これは随時適切に補正予算を組みながら御対応いただきたいと思っています。
 そして、企業でいえば、明るい話題もございました。先日、北上市で企業立地が進んだことによって増収で不交付団体になったというニュースも飛び込んできました。これは、まず一つは、県が北上川バレー構想を進める中で、キオクシアの誘致、関連企業の誘致、あるいは北上市さんも御努力された結果なのだろうと思っております。企業の業績に左右されるところではありますが、やはりこういったよい事例を引き続き積み上げていただきたいと思っています。
 そして、よい点でいいますと、観光施策についてです。コロナ禍の中で観光事業者は本当に苦しい思いをされました。先日、ニューヨークタイムズ紙に掲載された2023年に行くべき52カ所では、盛岡市が2番目ということで、多くの喜びの声をお聞きしました。また、期待をする地域の方の声も届いております。
 そういった中で、岩手県、ほかにも平泉の文化遺産、伝統芸能の文化的魅力を背景として観光宣伝、どんどん知事も宣伝されてこられたと思います。ちなみに、地元江刺でも獅子踊りの団体、これが京都府の清水寺で演舞を奉納し、伝統芸能の魅力を発信しています。岩手県はこれだけいいものがたくさんありますから、知事はもっと前面に出ていただいて、観光資源のアピールを強めていただきたいと思っています。
 今後、人流の回復が見込まれる中で、このような追い風を生かした観光施策の展開が必要だと考えていますが、いかがでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 本県は、3年にわたるコロナ禍を通じて、県民の皆様の基本的な感染防止対策の徹底により低い感染レベルが維持され、Go To トラベルや、いわて旅応援プロジェクトが継続的に実施されるなど、他県と比較しても高い水準で観光産業支援を行ってきたところであり、観光庁の宿泊旅行統計調査によれば、県内への宿泊者数はコロナ前の水準に戻りつつあります。
 今般、ニューヨークタイムズ紙に盛岡市が取り上げられたことを絶好のチャンスと捉え、これまで行ったことがないような誘客促進を展開し、盛岡市のみならず、県北地域、沿岸地域、県南地域と岩手県全域に波及させ、より多くの観光客を呼び込みつつ、インバウンドの拡大を観光産業、ひいては本県経済の活性化につなげることが重要であります。
 また、議員御指摘のとおり、時代の異なる三つの世界遺産や伝統芸能、地域に根づく生活、文化は、海外の方々にも魅力的なものであり、これらの発信を強化することも必要です。
 このような考えのもと、令和5年度当初予算案においては、国際定期便の就航再開に向けた対応や、海外へのプロモーションを展開するなど観光推進の強化を図ったところであり、これらを通じて、国内外からの誘客拡大や三陸地域の観光需要の喚起を図ります。
 加えて、盛岡市と連携し、外国人観光客の新たな誘客、周遊促進の補正予算案を今定例会に提案する準備をしております。
〇15番(菅野ひろのり君) 先ほど知事もおっしゃいましたように、盛岡市にとどまらず、県内全体に広げていくというのが大事なのだと思っています。我々岩手県は台湾からのインバウンドのお客さんで盛り上がっていたタイミングがありましたが、今回、同様に、盛岡市を起因として県北地域、沿岸地域、県南地域、幅広く岩手県に滞在して隅々まで見ていただくということが重要なのだろうと思っています。ぜひその点を意識して、市町村と連携しながら進めていただきたいと思います。
 そして、農林水産業の振興についてでございます。中小企業、観光と来て農林水産業、これは本当に今、私は厳しいと思っています。私も農家の出であります。今、国では水田活用の直接支払交付金の見直しが行われ、これは今後5年で一度も水張りしないところはだめだよと、交付金を出さないといったようなところです。あとは、原油、物価高、肥料、飼料の高騰について、今回、補正予算で対応いただきましたが、米価も安いし、これでは飯を食っていけないという人たちが多くいます。
 この間、江刺の農業部会の青年部とお話させていただいて、激しい論戦討議会になりました。特に若い世代が、食っていけないからやめるというような厳しい声があるのです。これは岩手県だけではなくて、日本全国そうだと思います。国の制度によるものが大きいのですが、岩手県としても、やはりそこはしっかりとてこ入れをしていただきたいと思いますし、知事には、国に対してしっかり強く発言をして訴えていただきたいと思います。食料安全保障も大事な観点です。岩手県の農業に対して国に訴えていただく、その考えを伺います。
〇知事(達増拓也君) 岩手県の農業者は、生産条件が不利な中山間地域や厳しい自然環境の中で、たゆまぬ努力と創意工夫により、国内はもとより海外からも評価の高い農畜産物を生産してきました。
 県としても、農業者とともに担い手の育成や生産性、市場性の高い産地づくり、販路の開拓、拡大などに取り組んできた結果、本県は農業産出額や食料自給率が全国上位に位置するなど、国民に信頼される我が国有数の食料供給基地としての地位を築いてきたところです。
 世界的な人口増加等による食料需要の高まりや気候変動による生産減少など食料生産の重要性が高まる一方、燃油や肥料、飼料価格の高騰等が農業経営に大きな影響を及ぼしております。
 このため、県では、国に対し、燃油、肥料、飼料などの高騰対策や、経営安定に向けたセーフティーネットの構築などを要望するとともに、全国知事会の農林商工常任委員長県として、食料安全保障の強化に向けた提言を取りまとめ、国に要望したところであり、国民への食料供給に関し責任を有する国が総力を挙げて食料安全保障の強化に取り組むよう強く求めてまいります。
〇15番(菅野ひろのり君) ありがとうございました。ぜひそれを強めていただきたいと思っていますし、私は、根本的に、人口減少下の中で、例えば、米価であれば200万トンの在庫量をもとにした米価の価格形成の仕組みというのは、なかなかうまくいかないだろうと思っています。新たな価格政策、これは国がしっかりとつくっていかないといけないし、そして、所得補償制度、所得補償と価格制度が一体とならなければ岩手県の農業者はご飯を食べていけませんから、知事、しっかりとこれは国に働きかけていただきたいと思います。
 県は全体的には下がる中でも、今回の農林水産の予算は、しっかりと14%上げていただいていると聞いています。さまざまな事業がありますが、引き続き、県民の期待に応えられるように推進いただきたいと思っています。
 そして次に、社会基盤の整備でございます。冒頭、復興から縦軸の三陸沿岸道ができましたと話をしました。その後、横軸があるのですが、やはり県北地域と県南地域もしっかりと見ていかなければいけないと思っています。
 まず、地元の県南地域であります。重要なのは、例えば、釜石港ガントリークレーンが整備されたり、港湾が充実してきて釜石道から内陸のほうに向かってくる、これは整備されたのですが、私が考えていますのは、もう一つ、新笹ノ田トンネルについてでございます。
 今月8日、ILC実現建設地域期成同盟会ができました。ILCができたときに、どこから物資等を運ぶのだということが課題になってくると思います。私は岩手県の港湾をしっかりと活用しながら内陸に持ってくるルート、これはILCも含めて一体となって考えていかなければいけないと思っています。
 加えて言えば、先ほど盛岡市の観光の話がありました。岩手県の強みといえば、陸前高田市の東日本大震災津波伝承館、そして、平泉の文化遺産へ周遊するルートが重要なのだと思います。それも考えると、新笹ノ田トンネルの建設というのは非常に重要ではないかと私も考えています。そういった中で、新たなトンネルの整備に向けた県の取り組みについて伺います。
〇知事(達増拓也君) 新笹ノ田トンネルの整備についてでありますが、国道343号は気仙地区と内陸部を結ぶ重要な道路であり、また、これまで県内外から60万人を超える多くの方々に来館いただいている東日本大震災津波伝承館と平泉の世界遺産を結ぶ、教育や観光振興等を支える重要な路線でもあります。
 国道343号において、急カーブや急勾配が連続する笹ノ田峠周辺の地質を文献により調査した結果、複数の断層の存在など複雑な地質状況であることを把握しました。
 また、令和5年度政府予算案において、ILC関連経費が倍増されたことや、ILC実現建設地域期成同盟会の設立など、ILCを取り巻く環境が変化してきていると認識しております。
 こうしたことを踏まえ、笹ノ田峠に新たなトンネルを整備する必要性や効果、技術的課題などについて、専門的な見地から助言をいただく会議を年度内に設置し、より具体的な検討を進めてまいります。
〇15番(菅野ひろのり君) 知事、ありがとうございました。多くの皆さん、署名もたくさん集まっていますし、地域の市町村からの声もいただいている中で、踏み込んでさらにやっていただけるということで、期待する、歓迎する声が多いと思います。ぜひ、引き続きお願いしたいと思います。
 そして、もう一つでございます。要望ばかりになってしまいますが、私たち立憲民主党、そして、会派希望いわてでは、毎年、全議員で33市町村を手分けして訪問して、首長さんへの御意見をいただきながら、県や国へ要望しています。その中で、県北地域では北岩手・北三陸横断道路の整備について、非常に要望をもらっています。
 県北地域では環境への取り組み、県内でも先進的で、2050年カーボンニュートラルの宣言や御所野遺跡の世界遺産登録などの契機に加えて、いわて産業・社会革新推進コンソーシアムといって、大学の参画による最先端技術を活用した地域振興を進めています。やはりそうなってくると、先ほど言った道路、これはその中心的な役割を担うのではないかと期待されていると思います。今後、どのように取り組んでいくのか伺います。
〇知事(達増拓也君) 北岩手・北三陸横断道路の整備促進についてでありますが、県北地域においては、北いわて産業・社会革新推進コンソーシアムにより、産学官連携による先端技術を活用した地域振興を進めており、そのためにも道路ネットワークの強化が重要であります。
 令和3年、2021年に策定した岩手県新広域道路交通計画では、久慈市と盛岡市間の連絡強化を図るため、国道281号を一般広域道路、さらに、これに重ねる形で(仮称)久慈内陸道路を構想路線に位置づけました。この計画に基づき、国道281号久慈市案内−戸呂町口工区においては、来年度、トンネル前後の道路改良工事を進めていきます。
 また、久慈内陸道路については、路線全体の整備の考え方や大まかなルートの検討状況などについて、沿線の市町村と丁寧に意見交換しながら、調査の熟度を高めていくこととしており、引き続き、県北地域の道路ネットワークの構築に取り組んでまいります。
〇15番(菅野ひろのり君) 調査の熟度を高めていくということで、先ほどの県南の新笹ノ田もそうですし、北岩手・北三陸横断道路、多くの県民が声を上げて望んでおりますから、引き続き、前に進めるようにお願い申し上げたいと思います。
 そして、そうなってくると、先ほどの新笹ノ田の検討を進めるのはILCの関連予算が増加したからだということでありましたが、財源をどうするのか。特に、岩手県の場合は行財政の基盤の構築が非常に大きな課題になっています。財政健全化について伺いますが、知事の就任以降、財政調整基金の着実な積み立てに加えて、地方債の残高の安定的な引き下げを推進し、将来に引き継ぐべき行財政基盤を着実に構築してきたものと承知しています。
 今後、いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランに基づく政策を着実に推進していくためには、将来にわたって安定した行財政基盤をつくっていくことが非常に重要だと思っています。その処方箋として、持続可能で希望ある岩手を実現する行財政研究会を開催したわけですが、まず初めに、財政の健全化の推進、今後の取り組み方針、どうやっていくのか伺いたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 中長期的に人口減少対策などの施策を着実に推進しつつ、直面する危機を乗り越えるための対策を講じるには、施策の推進を支える安定的な財政基盤が必要不可欠であり、県ではこれまでも毎年度の予算編成等を通じて財政健全化を着実に進めてきました。
 その結果、私が知事に就任する前の平成18年度、2006年度当時と令和3年度、2021年度で比較すると、県税収入は産業振興や個人所得の増加等により1、291億円から1、685億円へ30%以上増加し、将来への備えである財政調整基金残高は80億円から347億円へ4倍以上増加、一方、将来の財政負担となる県債残高は、臨時財政対策債除きで1兆2、100億円から7、400億円と6割程度の水準まで減少させるなど、着実な成果を上げてきました。
 令和5年度当初予算編成においては、これまで構築してきた安定的な財政基盤をもとに、人口減少対策の強化など四つの重点項目に対し1、060億円の重点措置を行いつつ、持続可能な行財政基盤の構築に向けて新たに四つの財政目標、令和10年度、2028年度当初予算までに収支均衡予算を実現、プライマリーバランスの黒字を維持、公共施設に係る県民1人当たり負担額1万2、000円以下の水準を維持、財政調整基金残高の令和2年度、2020年度水準の維持を掲げました。
 また、環境問題の解決のための財源確保としてグリーンボンドの発行や、全国自治体では初めてとなるブルーボンドを発行するなど、あらゆる歳入確保策を講じ、メリハリある予算編成を行いました。
 その結果、財政の硬直性をあらわす財源不足額については、令和4年度当初予算から40億円程度縮小させ、新たな四つの財政目標を全て達成する見込みとなるなど、大胆な予算措置と財政健全化の両立を実現したと考えております。
 今後もこれまでの行財政改革の手綱を緩めることなく、不断の改革を通じて、いわて県民計画(2019〜2028)の着実な推進と財政健全化の両立を実現してまいります。
〇15番(菅野ひろのり君) その中でも持続可能で希望ある岩手を実現するための行財政改革に関する報告書によると、2点指摘があるのです。県立病院と県立高校、今回は病院について伺います。
 これは政策的経費として、県土が広い中で医療をしっかりと、均衡ある医療を提供していくのだということで、一般財源から毎年200億円繰り出しながらやっています。これは認めるところでございますが、医療体制、今後、財源の問題があります。どうやって充実して守っていくのか、この取り組みを伺いますし、あわせて、市町村で病院経営、例えば、地元、奥州市総合水沢病院の問題がありました。あとは滝沢市も赤十字病院の関係もありましたけれども、いずれ市の病院の関係、経営というのはこれから本当に厳しくなる。岩手県の強みは、20ある県立病院。私は県がリーダーシップをもとに進めていくべきなのだろうと思っています。これからの岩手県の医療、どのように守っていくのか伺います。
〇知事(達増拓也君) これまで、県民の命や健康を守るため、他の都道府県と比較しても突出した数の県立病院を運営し、全国で最も高い水準で予算の重点措置を行ってきました。また、子供の学び場を保障するため、県立高校に全国でも3番目の水準で予算措置を行ってきました。
 全国と比較して医療や教育に重点的に予算を措置してきた点については、有識者からなる行財政研究会においても本県の強みであると示されており、今後、これらの強みについて、さらに施策を充実していく必要があります。
 令和5年度当初予算案においては、県民の命や健康を守るため、引き続き、医療局に200億円余りを繰り出しつつ、教育関係についても、高校生の大学等進学支援のための奨学金制度の創設や配信型講座の予算を新たに盛り込みました。
 医療提供体制のあり方、学校の適正配置、環境整備のあり方等について県民的な議論を行いつつ、中長期的な視点に立って、さらなる充実を図ってまいります。
 そして、各市町村の直面する病院関係のさまざまな課題との関係でありますが、今後、本県の地域医療の確保に当たりましては、本格的な人口減少社会を迎える中、公立、公的病院を初めとした医療機関がそれぞれの医療機能に応じた分化、連携を進め、県民に身近な医療と高度、専門的な医療をどのように提供していくかについての検討が必要であります。
 県では、令和6年度、2024年度からの次期岩手県保健医療計画の策定に向けて、新興感染症の発生、蔓延時に備えた対応に加え、県民が身近な地域で安心して医療を受けられる体制の確保を図るとともに、医療の高度、専門化にも対応するため、がんや循環器疾患、その他疾病等についての広域的な医療圏のあり方について、市町村を初め各地域の関係者との意見交換を進めることとしております。
 今後、県が主催する圏域連携会議等の場を通じて、それぞれの地域において安心して質の高い医療が受けられる体制を確保していけるよう取り組んでまいります。
〇15番(菅野ひろのり君) 医療については、繰り返しになりますが、県がリーダーシップを発揮して、岩手県の医療のグランドデザインを描いていただいて、市町村と連携しながら進めていただきたいと思います。
 今回の代表質問では、知事に、危機、そして希望という観点で質問させていただきました。そして、今回の予算はエンパワー予算と名づけています。要は、県民一人一人の力を出せるように、これから前に進んでいくようにという知事の熱い思いがあるのだろうと思います。
 そして、今回質問をつくりながら、知事は、危機にずっと対峙してこられた。この危機がなければ、次、御自身がやりたい政策というのがもっとあるはずだと私は感じました。折しも岩手県が誕生して現在150周年の節目を迎えています。岩手県の先人は、これまで長きにわたって国のため、岩手県のために努力を重ね、災害を乗り越え、地域の発展に尽くしてきました。
 知事、今後の県政運営について伺いますが、人口減少を克服し、新たな危機を乗り越え、県民の幸福度を高めていく、それには今までの知事の経験がこれからも必要だと考えています。知事、5期目に臨まれるその決断、お気持ちを伺いたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 今議会での知事演述の結びの部分で申し上げましたとおり、現在、世界共通のパンデミックと戦後国際秩序を揺るがす戦争の影響が地方の暮らしや仕事の現場に及び、岩手県民の生活や県民経済を脅かしています。
 これらの危機を乗り越えるため、先人が築いてきた基盤とノウハウの上に、今を生きる私たちが東日本大震災津波の経験と復興の取り組みを通じて築いた基盤とノウハウを合わせて、いわて県民計画(2019〜2028)の第2期アクションプランはつくられており、第2期アクションプランを踏まえた来年度当初予算案を本議会に提案しております。
 私といたしましては、第2期アクションプランの最終的な仕上げと来年度予算案の説明に全力を尽くしているところであり、まずは、このことに集中すべきと考えておりました。
 しかし、最近、定例記者会見のたびに次期知事選挙立候補の意志を問われており、さらに今、この県議会本会議代表質問において、菅野ひろのり議員から、現任期満了後の知事職継続への意志を問われ、私の意志を明確にすべき時であると思い定めました。
 私、達増拓也は、先人の成果の上に、岩手県民の皆さんとともに策定中であるいわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランをみずから主導して実現するため、次期岩手県知事選挙に立候補し、県民の皆さんの民意を問う決意であることをここにお答え申し上げます。(拍手)
〇15番(菅野ひろのり君) 知事、大変期待している声も大きいと思います。5期目になるその決断されたきっかけ、そして、最後にあわせて伺いますが、今後の選挙戦において、どういったことを公約に掲げ、何を県民に訴えていくつもりなのか、お伺いして終わります。
〇知事(達増拓也君) 個人の価値観や生き方が多様化し、また、生活困窮などの悩みや不安が複雑化する中、住民福祉を増進するためには、より住民に寄り添った行政が求められるようになっていますが、岩手県は東日本大震災津波の経験からも、県民一人一人に寄り添った施策が重要であることを学び、その教訓を政策形成や行政運営に生かしてきました。
 現代の地方行政においてますます重要になっている相談支援は、一義的には、住民に最も身近な市町村で行われていますが、専門性や広域性が求められる場合、多様な主体との連携、協働のもと、相談支援体制を構築していくのは、広域自治体である県の使命と考えております。
 このような観点から、いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプラン、その初年度である令和5年度当初予算案には、県民がそれぞれの活躍の場を広げていけるようにという思いを込めて、いわて県民エンパワー予算と命名し、相談支援体制の強化に加え、子育て支援の充実等、さまざまな事業を盛り込んでおります。
 県民が本来持っている力を発揮し、困難を乗り越え、希望がかなえられる環境を整備していくため、行政には時代に合った役割を果たすことが求められており、県はその先頭に立って使命を果たしていく、その中で、私は県の先頭に立っていきたいと思う所存であります。
〇15番(菅野ひろのり君) 知事の今後の御活躍に期待をしまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
   
〇議長(五日市王君) この際、暫時休憩いたします。
   午後2時4分 休 憩
   
出席議員(44名)
1  番 千 田 美津子 君
2  番 上 原 康 樹 君
3  番 小 林 正 信 君
4  番 千 葉   盛 君
5  番 千 葉 秀 幸 君
6  番 岩 城   元 君
7  番 高橋 こうすけ 君
8  番 米 内 紘 正 君
9  番 高 橋 穏 至 君
10  番 山 下 正 勝 君
13  番 高 田 一 郎 君
14  番 佐々木 朋 和 君
15  番 菅野 ひろのり 君
16  番 柳 村   一 君
17  番 佐 藤 ケイ子 君
18  番 岩 渕   誠 君
19  番 名須川   晋 君
20  番 佐々木 宣 和 君
21  番 臼 澤   勉 君
22  番 川 村 伸 浩 君
23  番 ハクセル美穂子 君
25  番 木 村 幸 弘 君
26  番 吉 田 敬 子 君
28  番 小 野   共 君
29  番 軽 石 義 則 君
30  番 郷右近   浩 君
31  番 小 西 和 子 君
32  番 高 橋 はじめ 君
33  番 神 崎 浩 之 君
34  番 城内 よしひこ 君
35  番 佐々木 茂 光 君
36  番 佐々木   努 君
37  番 斉 藤   信 君
38  番 中 平   均 君
39  番 工 藤 大 輔 君
40  番 五日市   王 君
41  番 関 根 敏 伸 君
42  番 佐々木 順 一 君
43  番 伊 藤 勢 至 君
44  番 岩 崎 友 一 君
45  番 工 藤 勝 子 君
46  番 千 葉   伝 君
47  番 工 藤 勝 博 君
48  番 飯 澤   匡 君
欠席議員(1名)
27  番 高 橋 但 馬 君
   
説明のため出席した者
休憩前に同じ
   
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
   
午後2時23分再開
〇議長(五日市王君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。岩崎友一君。
   〔44番岩崎友一君登壇〕(拍手)

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