令和5年2月定例会 第24回岩手県議会定例会会議録

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〇知事(達増拓也君) 本日ここに第24回県議会定例会が開会されるに当たり、今後の県政運営について、私の所信の一端を申し上げます。
 今月6日にトルコ共和国南東部で大規模な地震が発生しました。犠牲になられた方々に、哀悼の意を表します。また、被害を受けられた皆様に、心からお見舞いを申し上げます。
 東日本大震災津波から12年を迎えようとしています。
 岩手県民は、被害の大きさと犠牲の多さに衝撃を受けながらも、難を逃れた方々が、安全を確保して生活の再建となりわいの再生を果たせるよう、犠牲になった方々のふるさとへの思いを継承し、いのちを守り海と大地と共に生きるふるさと岩手・三陸の創造に一丸となって取り組んできました。
 この間、全国や海外から多くの御支援をいただき、国内外とのきずなに支えられてきました。
 被災された方々、御支援いただいた皆様の御尽力に敬意を表し、感謝申し上げます。
 復興道路、支援道路、関連道路が完成し、県土の縦軸、横軸を構成する新たな道路ネットワークが形成されました。防潮堤などの津波防災施設も整備が進み、その多くが完成しました。
 一方、日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震に備え、市町村と連携して、さらなる津波防災対策を進める必要があります。被災者一人一人の状況に応じたきめ細かい支援や不漁対策などのなりわいの再生に、中長期的に取り組んでいく必要もあります。
 成果と課題を踏まえ、誰ひとりとして取り残さないという理念のもと、三陸のビルド・バック・ベター─よりよい復興を進めます。
 残された社会資本を早期に整備します。
 岩手県地震・津波被害想定調査報告書に基づき、市町村の津波避難計画の見直しや個別避難計画の作成、避難場所の整備促進など、沿岸市町村の取り組みをきめ細かく支援します。
 被災者の心のケア、新たなコミュニティーの形成支援、担い手の確保、そして、主要魚種の不漁やコロナ禍、物価高騰等の影響を受けた事業者支援を進めます。また、交通ネットワークを活用し、三陸ならではの資源を生かした産業振興を推進します。
 東日本大震災津波を語り継ぐ日条例の趣旨にのっとり、震災と復興の伝承と発信を継続し、国内外の防災力向上に貢献することを目指します。
 復興支援の継続と財源の確保を国に提言、要望してまいります。
 平成19年の知事就任以来、危機を希望に変えるため、いわて希望創造プラン、いわて県民計画を推進し、東日本大震災津波の災害対応と復興に取り組み、幸福をキーワードに、いわて県民計画(2019〜2028)を策定し、県政の諸課題に取り組んでまいりました。
 この間、人口の社会減は、就任当時の6、000人台から4、000人台まで縮小、県民所得は、国民所得水準の7割台から8割台まで上昇。また、雇用環境は、正社員有効求人倍率が0.31から0.96まで上昇、人口10万人当たりの医師数は、186人から223人まで増加しました。
 一方、いわて県民計画(2019〜2028)第1期アクションプラン期間中であるこの4年間に、世界的な危機が相次いで発生しました。
 まず、新型コロナウイルス感染症です。
 これまでに全世界で6億人を超える方々が感染し、600万人を超える方々が亡くなったとされています。
 国内では、本年2月14日現在の感染者数は3、000万人を超え、死亡者数は7万923人となっています。
 県内においても22万9、867人の方々が感染し、596人の方々が亡くなっています。
 新型コロナウイルス感染症でお亡くなりになられた方々に、哀悼の意を表します。そして、感染を経験された皆様に、お見舞いを申し上げます。
 県民の命を守るため最前線で治療に当たっておられる医療関係の皆様、介護、福祉、教育関係の皆様、さまざまな場面場面で感染防止に御尽力いただいている皆様に、心から敬意を表し、深く感謝申し上げます。
 県民の皆様におかれましては、場面場面に応じた感染対策の徹底に御協力いただき、改めて感謝申し上げます。
 昨年から、感染力の強いオミクロン株が猛威を振るい、本県は、昨年12月に過去最多の月間感染者数、先月に過去最多の月間死者数を経験しました。
 自宅療養者の支援機能を強化するため、いわて健康フォローアップセンターを設置し、医療機関の逼迫を緩和するため、いわて検査キット送付センター、いわて陽性者登録センターを設置しています。
 コロナ禍で物価高騰等の影響を受けている消費者、事業者を応援するため、いわて県民応援!プレミアムポイント還元キャンペーンを実施しています。
 引き続き、適切な保健、医療体制の確保、社会、経済活動への支援など、必要な対策を講じてまいります。
 次に、原油価格、物価の高騰です。
 欧米等のコロナ反動景気やロシアによるウクライナ侵攻、また、円安により、国際的な原油や穀物等の価格が、変動を伴いつつ高い水準で推移しています。これは、日本、岩手県にも及び、エネルギー、原材料、資材等の価格の上昇が、第1次産業や企業、事業者の経営に打撃を与えています。また、生活関連のたび重なる値上げにより、県民の生活も大きな影響を受けています。
 県では、全国に先駆けて、原油価格・物価高騰対策パッケージを取りまとめ、子育て世帯や中小企業者、農林漁業者等への幅広い支援など、累次の補正予算を編成して対応してまいりました。また、全国知事会を通じて、強力な経済対策を講じるよう国に要請してまいりました。
 原油価格、物価高騰は、長期化が見込まれています。本県の社会経済活動や県民への生活に及ぼす影響を最小限にとどめるため、今後も臨機応変に対応してまいります。
 コロナ禍の中、日本の人口減少が加速しています。
 本県の人口も、平成9年以降減少を続けています。これまでの成果と課題、市町村長との意見交換や関係団体等からの御意見、御提言を踏まえ、いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランでは、人口減少対策を最優先で取り組むべきものと位置づけています。そのために組織体制を強化し、必要な予算を重点的に措置します。そして、四つの重点事項を掲げ、10の政策分野や11のプロジェクトなど、いわて県民計画(2019〜2028)に基づく施策を着実に推進することとしています。
 さらに、県と市町村、関係団体等が連携し、共同で取り組む方向性を明らかにし、県内外の関心を高め、理解と参画を促し、地域の人口減少、少子高齢化の状況や地域特性等にもきめ細かく対応し、政策の実効性を高めたいと思います。
 四つの重点事項の一つ目は、人口の自然減、社会減対策の推進です。
 本県の人口は、令和4年10月時点で約118万人となりました。人口減少は、未婚化、晩婚化や仕事と育児の両立の困難さなどによる出生数の減少、若年層を中心とした転出超過が大きな要因となっています。
 県はこれまで、雇用環境や保育環境の整備、ものづくり産業の集積、移住、定住施策を推進し、保育所等の待機児童の減少、過去最高の高卒者県内就職率、U・Iターン就職者の増加につながっています。
 一方、全国的に、コロナ禍の中、地方に向かう個人の意識、行動変容が見られましたが、東京一極集中に歯どめがかかっておらず、出生数も減少しています。
 人口減少対策の主要な柱として、男女がともに活躍できる環境づくり、一人一人の能力を発揮できる良質で安定的な雇用の確保を初めとする自然減、社会減対策を進めます。
 自然減対策としては、結婚、妊娠、出産、子育ての各ライフステージに応じた総合的な施策を推進します。社会減対策としては、若年層の県内就職やU・Iターンの促進に向けた取り組みを強化します。
 自然減対策と社会減対策の相乗効果を図るため、岩手県人口問題対策本部をベースに、全庁を挙げて施策を推進します。
 いわての子みんなでつくる大きなゆりかごのスローガンのもと、オール岩手で人口減少対策に取り組みます。
 二つ目は、GX─グリーントランスフォーメーションの推進です。
 近年、世界各地で気候変動が一因と考えられる異常気象が頻発しています。地球温暖化対策は喫緊の課題であり、その対応は将来世代への責任です。
 本県では、省エネルギー対策や森林吸収源対策等の推進により温室効果ガス排出量が着実に減少しています。また、再生可能エネルギーによる電力自給率が上昇しています。一方、いまだ世界の年平均気温は上昇傾向にあり、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて取り組みの強化が必要です。
 本県においても、2030年度の温室効果ガス57%削減を目標とする第2次岩手県地球温暖化対策実行計画に基づき、省エネルギー対策、再生可能エネルギーの導入促進、森林資源の循環利用を推進します。
 また、温暖化防止いわて県民会議を中心に、県民、関係機関、団体が一体となった県民運動を強化します。
 地域経済と環境に好循環をもたらす脱炭素社会、持続可能な社会を目指します。
 三つ目は、DX─デジタルトランスフォーメーションの推進です。
 デジタルの力を活用し、人口減少など地域が抱える社会問題の解決を図り、個性豊かで活力に満ちた地域社会の可能性を広げます。
 全ての県民がデジタル化の恩恵を享受できるよう、岩手県DX推進計画に基づき、あらゆる産業のDXを促進します。
 また、介護、子育て、医療分野における利便性の向上、教育分野における新たな学びの実現、情報通信インフラの整備、市町村への支援を進めます。
 ドローンについては、防災、地域振興、林業振興、森林保全、警察活動等、実装を進めます。
 四つ目は、安全・安心な地域づくりの推進です。
 県民一人一人が、お互いに支え合い、幸福を追求することができる地域社会の実現のためには、日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震を初めとした大規模災害や新たな感染症などに備えていく必要があります。
 東日本大震災津波や新型コロナウイルス感染症の経験を踏まえ、リスク発生時に的確に対応できる安全・安心な地域づくりを推進します。
 これら四つの重点事項は、地域の特性を生かして、分散型社会の形成を目指すものであり、国のデジタル田園都市国家構想や、それを実現するためのデジタル田園都市国家構想総合戦略と軌を一にするものであります。
 いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプラン期間において推進する特徴的な政策について申し上げます。
 まず、三つのゾーンプロジェクトです。
 北上川流域は、自動車や半導体、医療機器等の関連産業の集積が進み、企業の設備投資や生産拡大が行われ、雇用の創出が続いています。
 北上川バレーの豊かな自然や文化、恵まれた生活環境と調和する、働きやすく暮らしやすい産業振興を進めます。
 三陸地域においては、復興の取り組みから、まちづくりや交通ネットワークの形成が進み、物流などの利便性が大きく向上しました。
 こうした基盤を積極的に活用し、国内外との交流を活発化させ、持続可能な三陸地域を創造します。また、三陸ジオパークが日本ジオパークとして確実に再認定されるよう、市町村や関係団体等と連携し、万全を期してまいります。
 北岩手においては、食産業やアパレル産業、漆関連産業などの産業の振興、世界遺産、北海道・北東北の縄文遺跡群を起点とした広域交流圏の形成が進んでいます。
 また、北いわて産業・社会革新推進コンソーシアム、COI─NEXT岩手サテライトの設立などで、最新の学術が多彩な地域資源と結びついて地域が発展する期待が高まっています。北岩手のポテンシャルを最大限に発揮して、持続的に発展する先進的な地域社会を目指します。
 ILC実現に向けては、現在、国内外の研究者により、国際共同研究の推進や政府間協議の環境づくりに向けた取り組みが進められています。
 ILCは、学術的な意義に加え、日本誘致により、日本の国際的信頼と科学技術外交への貢献、イノベーションの創出と産業の発展など、多様な価値を生み出すものと期待されています。
 県としては、県内外の関係団体等とともに、国民的な機運を醸成し、日本誘致に向けた大きな流れをつくり出しながら、国家プロジェクトとして政府全体で推進するよう国に強く働きかけてまいります。
 また、受け入れ環境の整備や加速器関連産業への参入促進などにも全力で取り組んでまいります。
 昨年、有識者で構成する持続可能で希望ある岩手を実現する行財政研究会を開催し、中長期的な視点に立った行財政運営の方策について、持続可能で希望ある岩手を実現するための行財政改革に関する報告書をまとめました。
 この報告書を参考とし、人口減少といった構造的課題に正面から立ち向かうための施策をいわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランに反映させています。また、未来を見据えた希望ある岩手の実現に向け、中長期的な取り組みを要するものについては、関係者等との丁寧な議論を進めていきます。
 さらに、不断の改革を通じて、持続可能な行財政基盤を構築してまいります。
 令和5年6月4日には、天皇皇后両陛下の御臨席を仰ぎ、高田松原津波復興祈念公園において、第73回全国植樹祭を開催します。
 本県の豊かな森林環境の継承と林業の持続的な発展に向けた機運を醸成します。また、復興の姿を国内外に発信する絶好の機会でもあり、全庁を挙げた実施体制を確保し、万全を期してまいります。
 令和6年1月から3月にかけては、JR東日本と連携し冬季観光キャンペーンを実施します。
 外国人観光客にも人気のあるスキーや温泉、食などの観光資源を生かした旅行商品の造成や国内外への情報発信により、観光需要の回復、誘客拡大を図ります。
 今年度から令和8年度までを岩手県政150周年記念期間と位置づけ、さまざまな記念事業を行います。
 岩手県の歴史を振り返り、岩手県を発展させてきた先人に感謝し、岩手県の未来を展望する機会としたいと思います。
 以下、復興推進の4本柱と10の政策分野に沿って、令和5年度の具体的な施策について申し上げます。
 初めに、東日本大震災津波からの復興です。
 安全の確保として、津波防災施設の整備や自主防災組織の活性化、県民の避難意識、防災意識の向上など、多重防災型まちづくりを推進します。
 大規模災害発生時において、応急対応フェーズから復旧、復興フェーズへの円滑な移行を図るため、災害マネジメントサイクルを推進します。
 移転元地や造成地の利活用を支援します。また、風評被害の払拭に向けた放射線影響対策を実施します。
 発生が予想される巨大地震津波に備え、沿岸市町村とともに、ことしの夏を目途に、被害想定を踏まえた具体的な減災対策を取りまとめます。
 暮らしの再建として、いわて被災者支援センターにおいて、市町村や関係機関と連携し、課題を抱える被災者一人一人に寄り添った支援を行います。
 地域コミュニティーの形成、維持、活性化のため、コーディネーターを配置し、市町村を支援します。また、生活支援相談員を配置し、見守り活動を行います。
 岩手県こころのケアセンターやいわてこどもケアセンターにおいて、被災者や子供の心のケアを中長期的に実施します。
 郷土に愛着や誇りを持ち、復興、発展を支える人材や災害発生時に主体的に行動する人材を育成するため、地域や関係機関、団体と連携し、いわての復興教育を推進します。
 なりわいの再生として、主要魚種の不漁に対応するため、大型で遊泳力の高いサケ稚魚の生産や藻場の再生による資源回復、増加しているウニ資源を有効活用する蓄養、出荷、アサリの養殖など、新たな漁業、養殖業の導入を推進します。また、地域漁業を担う人材の育成や自動給餌システムの導入によるスマート水産業を推進します。
 原木シイタケの産地再生のため、出荷制限の解除に向けた支援を継続します。また、生産拡大や販路拡大を促進します。
 事業者の経営安定化のため、産業支援機関と連携し、中長期的な事業計画の策定や売り上げ増加に向けた支援を行います。
 三陸DMOセンターを中心に、市町村や観光事業者等と連携し、魅力ある地域づくりを推進します。
 未来のための伝承・発信として、東日本大震災津波伝承館を拠点とした震災の事実、教訓の伝承を進めます。また、県内の震災伝承施設と連携し、周遊機会を創出します。
 各地域で活動している震災ガイドの交流を促進し、防災、震災伝承の担い手を育成します。
 10の政策分野については、政策評価に基づくマネジメントサイクルにより、施策の成果と課題を県民と共有し、計画の実効性を高め、施策を推進してまいります。
 健康・余暇分野では、健康寿命が長く、いきいきと暮らすことができ、また、自分らしく自由な時間を楽しむことができる岩手の実現のため、県民一人一人が、ケアあるいはエンパワーされるよう取り組んでまいります。
 市町村と連携し、相談、支援体制を強化します。また、新たに岩手県福祉総合相談センターと岩手県立県民生活センターの移転、整備に向けて、調整を進めます。
 包括的な自殺対策プログラムを推進し、一人一人の事情に応じた相談支援体制を充実させます。
 ヤングケアラーやダブルケアなど、複雑化、複合化した支援ニーズに対応するため、包括的な支援体制を構築する市町村を支援します。
 生活困窮者の生活再建のため、市町村や関係団体と連携し、地域の実情に応じた支援体制を構築し、就労準備支援や家計改善支援等のメニューを拡充します。
 福祉、介護職の人材を確保、育成します。
 脳卒中予防や健康増進対策に取り組むなど、健康寿命の延伸を図ります。
 急性期医療から在宅医療に至るまで、切れ目のない医療提供体制を構築するため、次期保健医療計画の策定を進めます。また、医師の確保と地域偏在の解消、看護職を初めとする医療従事者の県内定着を推進します。
 県民の命と健康を守るため、引き続き、医療局に200億円余を繰り出します。
 障がい者の自立と一層の社会参加に向け、農福連携の取り組みを支援します。
 令和5年4月に、いわて盛岡ボールパークがオープンします。これまでの岩手県営野球場を継承し、本県野球の新たな聖地となるよう、いわて盛岡ボールパークを活用した地域振興、スポーツ振興を推進します。
 障がいの有無や年齢にかかわらず、県民一人一人が、スポーツに取り組むことができる環境を整備します。また、身近に文化芸術活動を発表、鑑賞できる機会の充実を図ります。
 家族・子育て分野では、生きにくさを生きやすさに変え、安心して子供を産み育てられる環境をつくることが重要です。子供、妊産婦、ひとり親家庭の医療費の自己負担分を助成し、高校生までの医療費助成の現物給付を行います。市町村と連携し、第2子以降の保育料を無償化し、また、第2子以降の在宅育児に支援金を支給して、子育て世帯の経済的負担を軽減します。
 若い世代が、将来を見通し、積極的にキャリアとライフプランを考えることができるよう、高校生等のライフデザインを支援します。
 “いきいき岩手”結婚サポートセンターに、新たに結婚支援コンシェルジュを配置します。マッチング支援にAIを活用します。
 不妊治療への助成や休暇制度に関する企業への働きかけを強化します。
 妊娠、出産、子育て時における孤立感や不安感を解消するため、市町村による相談支援と経済的支援を一層支援します。また、産後ケアの無償化を引き続き進めます。
 市町村と連携し、保育や子供、子育て支援の受け皿を整備し、保育人材を確保します。
 子供の貧困対策やひとり親家庭等への支援を推進します。
 児童虐待を防止するため、市町村における相談体制の充実と機能強化を支援します。また、児童相談所の体制を強化します。
 一人一人の特性に応じた療育が身近に受けられるよう、地域療育ネットワーク機能を充実させます。
 医療的ケア児支援センターを中心に、医療的ケア児の支援体制を構築します。
 教育分野では、いわて幼児教育センターを中核として、就学前教育の充実を図ります。
 高校魅力化を支援し、大学等進学を目指す高校生への奨学金制度の新設など、進学支援を強化します。STEAM教育を推進します。
 世界と岩手をつなぐ人材の育成、ものづくり産業、農林水産業、建設業などの産業人材の確保、育成を進めます。また、専修学校を含め、特色ある私学教育の充実を図ります。
 世界や全国で活躍するトップアスリートを育成するため、スーパーキッズの発掘、育成や最新のデジタル技術を活用した指導者の資質向上、選手の競技力向上を推進します。
 また、文化、芸術分野で活躍する人材を育成するため、人材ネットワークの形成や、誰もが文化芸術活動に取り組める環境の充実を図ります。
 中学校の休日部活動の地域移行を進めるため、地域における受け入れ体制の整備を行います。
 児童生徒の不登校等対策を推進します。
 いわて高等教育地域連携プラットフォームをベースに、リカレント教育を発展させ、また、県内大学の魅力を高めます。
 図書館資料のデジタル化など、社会教育分野のDXを推進します。
 居住環境・コミュニティ分野では、人流ビッグデータ等の活用により、次期地域公共交通計画を策定し、住民のニーズに対応した持続可能な公共交通ネットワークの構築や地域公共交通の利用を促進します。
 水道事業者の経営基盤の強化、水道施設の耐震化、汚水処理施設の統廃合による設備の有効活用を推進します。
 首都圏在住者を中心とした移住希望者への情報発信の強化や、移住支援金の増額、受け入れ体制の強化などにより、本県への移住、定住を促進します。
 地域おこし協力隊の受け入れ拡大、OB、OGネットワークの活用、地域協力活動の充実、コミュニティーの活性化で、本県への定住につなげます。
 市町村と連携し、住宅の耐震化、若者、移住者の定住推進に向けた空き家の利活用を促進します。いわてお試し居住体験事業など、県営住宅も活用します。
 市町村、関係機関と連携し、日本語教育の総合的な支援など、外国人県民が暮らしやすい環境をつくります。
 ハロウインターナショナルスクール安比ジャパンとの連携など、国際化、多文化共生を推進します。
 安全分野では、県民の避難、防災意識の向上、住民が互いに助け合う体制の強化、防災機関が連携した防災、減災体制の整備を推進します。また、市町村における消防団の充実強化を支援します。
 盛岡市、八幡平市、滝沢市、雫石町を会場に、火山噴火を想定した令和5年度岩手県総合防災訓練を実施します。
 防犯意識の高揚を図るため、特殊詐欺被害に遭わないための啓発活動や地域安全マップの作成を支援します。
 性犯罪、性暴力被害者を総合的に支援し、心身の負担軽減を図ります。
 消費者被害の防止と救済を図るため、消費者教育を推進し、相談対応を充実させます。
 輸入食品を含む県内流通食品の検査、指導を実施するなど、食の安全・安心の確保を図ります。
 鳥インフルエンザなど、家畜の悪性伝染病の発生を防ぐため、飼養衛生管理の徹底や病原体の侵入防止対策、豚熱ワクチンの接種を行います。また、危機事案発生時を想定した訓練を実施します。
 仕事・収入分野では、いわてで働こう推進協議会を核として、若者や女性などに魅力ある雇用、労働環境の構築、U・Iターンによる人材確保を進めます。岩手県で働く魅力、価値や県内の企業に関する情報を若者とその関係者に伝えます。また、いわて働き方改革推進運動の展開により、子育てと仕事の両立を図る家庭への支援を強化します。
 いわてスタートアップ推進プラットフォームを設置し、起業する段階や形態に適したプログラムを提供するなど、起業、スタートアップの支援を強化します。また、県内で起業等を希望する若者、女性を対象とした開業資金貸付制度を創設します。
 デジタル技術人材の育成や技術の高度化支援など、ものづくりのグローバル拠点化を推進します。
 新北上浄水場の工業用水供給など、北上川流域における企業の立地や拡張に対応します。
 消費者ニーズに応じた商品開発やECサイトの活用、オンラインを活用したプロモーションの強化など、加工食品や伝統工芸品などの地場産業の販路拡大を図ります。
 産業のDX、GXに資する研究シーズの育成や研究開発を支援します。
 デジタルリスキリングを推進するなど、中小企業のDX、GXの取り組みを、関係団体と連携し積極的に支援します。
 県内企業の円滑な事業承継を推進します。
 いわて観光データ・マネジメント・プラットフォームを活用した動態分析を行うなど、観光DXを推進します。また、いわて花巻空港の利用促進を図るなど、観光客を含めた交流人口の拡大を推進します。
 県産品の輸出やインバウンド誘客の取り組みを強化します。農林水産業の持続的な発展と農山漁村の活性化を図るため、地域の農林水産業を牽引する経営体の育成、次代を担う新規就業者の確保、育成、地域運営組織等の育成に取り組みます。
 農林水産業分野でのGXを推進します。
 農業者の所得向上に向け、農業DXの推進や高収益な野菜等への作付転換の促進、生産基盤の着実な整備、県産米の需要拡大を図ります。
 県産木材利用の機運を捉え、県産木材の供給拡大や住宅、商業施設等における利用を促進します。
 農林水産物の輸出拡大に向け、海外市場に応じたフェア開催やバイヤーの招聘など、戦略的なプロモーションを展開します。
 野生鳥獣による農作物被害防止のため、県の体制を強化し、有害鳥獣の捕獲や防護柵設置など、地域の被害防止活動の支援を強化します。
 歴史・文化分野では、岩手県立平泉世界遺産ガイダンスセンターを拠点とし、平泉の価値を広く伝え、後世へ継承します。
 平泉の文化遺産、明治日本の産業革命遺産、北海道・北東北の縄文遺跡群の三つの世界遺産と、それぞれの地域が有する文化遺産のネットワークを構築し、交流人口の拡大を図ります。
 ユネスコ無形文化遺産に登録された永井の大念仏剣舞や、鬼剣舞を初めとする本県が誇る豊かな民俗芸能の魅力を県内外へ発信します。また、後継者の育成による次世代への確実な保存、継承や文化資源を活用した地域活性化を推進します。
 自然環境分野では、脱炭素社会の実現のため、新たに県市町村GX推進会議を設置し、市町村の施策を積極的に支援します。
 循環型地域社会の構築に向け、3Rや海岸漂着物対策、食品ロス削減を推進します。
 公共関与型産業廃棄物最終処分場について、着実な整備を支援します。
 今年度、原状回復を完了した青森県境産業廃棄物不法投棄事案について、その教訓を後世に伝えてまいります。
 温室効果ガスの削減に向け、J―クレジットの創出、活用、藻場の再生、造成を推進します。
 再生可能エネルギー導入量の拡大に向け、エネルギーの地産地消、海洋エネルギー関連産業創出、バイオマス資源活用、水素利活用、EV等の普及を推進し、入畑発電所や胆沢第二発電所の再開発を進めます。
 本県のすぐれた自然環境を守るため、希少野生動植物の生息状況調査を実施します。
 環境問題の解決に必要な資金を調達するため、グリーンボンドを新たに発行します。
 社会基盤分野では、近年頻発する自然災害に備え、ハード、ソフトを組み合わせた防災、減災対策、国土強靱化を推進します。あらゆる関係者が協働し、流域全体で水害を軽減させる流域治水を一層進めます。
 盛り土等による災害を防止するための基礎調査を実施します。
 迅速に緊急活動や物資輸送を行うことができるよう、緊急輸送道路の整備、橋梁の耐震化を推進し、災害に強い道路ネットワークの構築を進めます。
 DX推進のため、5G情報通信基盤整備を促進します。また、デジタル人材を育成します。
 産業や観光振興の基盤となる道路の整備や道路環境の改善を進めます。また、港湾の利活用を促進し、クルーズ船の寄港の拡大を図ります。
 社会資本が、将来にわたって持続的に機能を発揮するよう、予防、保全に向けた計画的な維持管理を進めます。
 建設業のDX推進、人材育成を支援します。
 参画分野では、女性の社会参画拡大や多様な性のあり方への理解促進を図り、性別や年齢、障がいの有無にかかわらず、一人一人が尊重される社会を目指します。
 アンコンシャスバイアスのない、助け合える企業風土づくりに向け、セミナーや企業見学会を開催し、経営者の意識醸成を図ります。
 女性のキャリア形成支援やいわて女性活躍企業等認定制度の普及拡大などにより、女性が活躍できる職場環境を整え、女性の県内定着を促進します。
 若者の主体的な活動への参画を促進するため、地域課題の解決や地域活性化に向けた若者の取り組みを支援します。また、地域を牽引する若者を育む環境をつくります。
 新しい時代を切り拓くプロジェクトについては、さきに述べたプロジェクトに加えて、小集落における世代間交流の促進、多様な交流の場の創出、農林水産業の高度化、健康づくり、学びの充実など、DXを活用した新たな価値、サービスを創造します。
 また、地域資源を生かした文化芸術やスポーツの振興、水素を活用した持続可能なグリーン社会の実現を目指します。
 持続的な地域社会を築くため、地域社会を構成するあらゆる主体との連携、協働のもと、地域の現状や資源、特性をしっかりと捉え、各圏域に応じた施策を講じてまいります。
 県北・沿岸圏域においては、全県に先行して人口減少が進行していることから、豊かな地域資源や新たな社会資本を最大限に生かした産業振興を推進します。また、地域間交流を強化、拡大し、過疎、山村などの条件不利地域の振興を図ります。
 市町村を取り巻く環境の変化を踏まえ、市町村と方向性を共有し、県民に必要なサービスが持続的に提供されるよう、市町村相互や県、市町村との連携、協働を一層進めます。
 直面する行政課題に的確に対応し、政策の実効性を高めていくため、働き方改革を一層進め、より質の高い行政経営を推進します。
 県民、企業、NPO、関係団体、市町村など、あらゆる主体が、それぞれ主体性を持って連携、協働し、新しい価値を生み出す共創により、課題解決を進めます。
 将来にわたり行政サービスの提供を持続可能なものとするため、昨年改定した岩手県公共施設等総合管理計画に基づき、県庁舎を初めとする公共施設の計画的な更新や長寿命化、施設配置の最適化を進めます。
 複雑化、多様化する県民ニーズに対応するため、DX人材などの確保、育成を進めます。また、デジタル技術を活用した県民サービスの向上と希望ある岩手を実現するための安定的で持続可能な行財政運営を推進します。
 今から約50年前、岩手県は、全国植樹祭を県民の森で開催しました。
 森をつくる1本の木は、苗木から伐採適齢期まで約50年間かかります。今見る成木が若木のころ、1980年代、岩手県は、新幹線や高速道路で首都圏とつながる高速大量交通時代を迎えました。県内のリゾートや都市に大規模な民間投資が行われ、県や市町村の公共投資で、文化、スポーツ、交流等のための施設がつくられました。1990年代前半には、全国や世界から岩手県に人が集まる4大イベントが行われました。
 このような基盤の整備やノウハウの蓄積を背景に、21世紀が進むにつれて、岩手県に生まれ育って全国や世界で活躍する若者たちが目立ってきました。
 大谷翔平選手は、メジャーリーグでMVPを獲得し、二刀流を進化させています。また、小林陵侑選手は、スキージャンプワールドカップや北京オリンピックで世界一のジャンプをなし遂げています。
 文化芸術分野においても、黒沢尻北小学校合唱部や不来方高等学校音楽部が、全日本合唱コンクール全国大会で日本一という快挙を何度もなし遂げています。また、北上市出身の岡本梨奈さんが、全日本学生音楽コンクール全国大会フルート部門高校の部で優勝するなど、輝かしい成果を上げています。
 交通や通信などの技術の進歩に加え、岩手県の先人の皆さんの努力と工夫によって、今、岩手県にいながらにして、日本や世界の最先端の情報を入手することができ、全国や世界に羽ばたくこと、あるいは岩手県内で全国有数、世界有数の経済活動や社会活動、学びや暮らしを行うことが可能になっています。
 この岩手県をベースに、全国や世界とつながって、希望を持って幸福を追求できる可能性は、岩手県に生まれ育った人たちや、今、岩手県にいる人たちのみならず、岩手県外にいる全ての人たちにも開かれています。
 いよいよ、ことし2回目の全国植樹祭を本県で開催します。先人が守り育んできた森林を次の世代へと継承、発展させていくという開催理念は、県政150年の歩みと重なります。全国から多くの参加者を迎え、岩手ならではの記念式典を成功させ、東日本大震災津波からの復興の姿を世界に発信しましょう。
 世界共通のパンデミックが、そして、戦後国際秩序を揺るがす戦争の影響が、地方の暮らしや仕事の現場に及び、岩手県民の生活や県民経済を脅かしていますが、私たちには、これらの危機を乗り越える力があります。先人が築いてきた基盤とノウハウの上に今を生きる私たちが、津波の経験と復興の取り組みを通じて築いた基盤とノウハウを合わせて、いわて県民計画(2019〜2028)の第2期アクションプランはつくられています。
 岩手県民の知恵と力を結集したいわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランのもと、岩手県の底力を全面的に引き出して、本年、そして令和5年度が、誰もが生活、仕事、学びに、岩手県をベースに、希望を持って、お互いに幸福を守り育てることができる年となるように、ここにおられる議員の皆様、そして県民の皆様の深い御理解とさらなる御協力を心からお願い申し上げ、私の所信表明といたします。ありがとうございました。(拍手)
〇議長(五日市王君) 演壇の消毒のため、しばらくお待ち願います。
   
   日程第6 教育委員会教育長の演述
〇議長(五日市王君) 次に、日程第6、教育委員会教育長の演述であります。佐藤教育長。
   〔教育長佐藤博君登壇〕

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