令和4年2月定例会 予算特別委員会会議記録

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令和4年3月7日(月)
1開会 午前10時3分
1出席委員 別紙出席簿のとおり
1事務局職員
事務局長 南   敏 幸
議事調査課
総括課長 中 村 佳 和
議事管理担当課長 藤 枝   修
主任主査 藤 平 貴 一
主任主査 糠 森 教 雄
主任主査 増 澤 綾 子
主任主査 鈴 木 貴 博
主査 阿 部 真 人
主査 刈 屋 江美子
1 説 明 員
知事 達 増 拓 也
副知事 保   和 衛
副知事 菊 池   哲
企画理事兼
環境生活部長 石 田 知 子
政策企画部長 石 川 義 晃
総務部長 白 水 伸 英
財政課総括課長 山 田 翔 平
復興防災部長 戸 館 弘 幸
ふるさと振興部長 熊 谷 泰 樹
保健福祉部長 野 原   勝
ILC推進局長 高 橋 勝 重
〇南議会事務局長 御承知のとおり、委員長が互選されるまでの間、委員会条例第7条第2項の規定により、年長の委員が委員長の職務を行うことになっております。
 出席委員中、工藤勝子委員が年長の委員でありますので、御紹介申し上げます。
 工藤勝子委員、どうぞ委員長席に御着席を願います。
   〔年長委員工藤勝子君委員長席に着く〕
〇工藤勝子年長委員 ただいま御紹介ありました工藤勝子であります。何とぞよろしくお願いいたします。
 それでは、ただいまから予算特別委員会を開会し、直ちに本日の会議を開きます。
 なお、佐々木茂光委員、城内よしひこ委員、川村伸浩委員及び臼澤勉委員は欠席とのことでありますので、御了承願います。
 これより委員長の互選を行います。委員会条例第7条第2項の規定により、委員長互選の職務を行います。
 お諮りいたします。委員長互選の方法につきましては、先例に基づき指名推選の方法によりたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇工藤勝子年長委員 御異議なしと認めます。よって、互選の方法は指名推選によることに決定いたしました。
 お諮りいたします。指名推選の方法につきましては、当職において指名することにしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇工藤勝子年長委員 御異議なしと認めます。よって、当職において指名することに決定いたしました。
 予算特別委員長に軽石義則君を指名いたします。
 お諮りいたします。ただいま当職において指名いたしました軽石義則君を予算特別委員長の当選人と定めることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇工藤勝子年長委員 御異議なしと認めます。よって、ただいま指名いたしました軽石義則君が予算特別委員長に当選されました。
 ただいま当選されました軽石義則君が委員会室におられますので、本席から当選の告知をいたします。
 軽石義則委員長、委員長席にお着き願います。
   〔予算特別委員長軽石義則君委員長席に着く〕
〇軽石義則委員長 ただいま予算特別委員長に選任されました軽石義則でございます。御推挙いただき大変光栄に存じている次第であります。
 委員各位の御協力をいただきまして職責を全うしたいと考えておりますので、御協力をよろしくお願いいたします。
 いろいろ皆さんも心配なところがあると思いますが、円滑な運営に御協力を願いたいと思います。よろしくお願いします。(拍手)
 引き続いて副委員長の互選を行いたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇軽石義則委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。
 これより副委員長の互選を行います。
 お諮りいたします。副委員長互選の方法につきましては、先例に基づき指名推選の方法によりたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇軽石義則委員長 御異議なしと認めます。よって、互選の方法は指名推選によることに決定いたしました。
 お諮りいたします。指名推選の方法については、当職において指名することにいたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇軽石義則委員長 御異議なしと認めます。よって、当職において指名することに決定いたしました。
 予算特別副委員長にハクセル美穂子さんを指名いたします。
 お諮りいたします。ただいま当職において指名いたしましたハクセル美穂子さんを予算特別副委員長の当選人と定めることに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇軽石義則委員長 御異議なしと認めます。よって、ただいま指名いたしましたハクセル美穂子さんが予算特別副委員長に当選されました。
 ただいま当選されましたハクセル美穂子さんが委員会室におられますので、本席から当選の告知をいたします。
 ハクセル美穂子副委員長、御挨拶をお願いします。
〇ハクセル美穂子副委員長 ただいま副委員長に選任いただきましたハクセル美穂子でございます。選任いただきましてまことにありがとうございます。
 軽石委員長を補佐いたしまして委員会の円滑な運営に努めてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)
〇軽石義則委員長 お諮りいたします。当予算特別委員会に付託されました議案26件の審査の方法についてでありますが、お手元に配付してあります日程案のとおり、本日及び明日は知事、副知事及び関係部局長等の出席を求め総括質疑を行い、明日の総括質疑終了後、9日、10日、14日から18日までは、関係部局長等の出席を求め部局ごとに質疑を行うこととし、議案26件に対する意見の取りまとめと採決につきましては、18日の県土整備部関係の質疑が終わった後、世話人会での意見調整を経た上で行いたいと思います。
 なお、8日目の農林水産部の審査については、第1部を農業関係、第2部を林業、水産業関係とし、それぞれ区分して審査することとしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇軽石義則委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。
 これより議事に入ります。
 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。
 これより議事に入ります。
 議案第2号から議案第21号まで、議案第26号、議案第27号、議案第29号から議案第31号まで、及び議案第37号の以上26件を一括議題といたします。
 総務部長に総括説明を求めます。
〇白水総務部長 令和4年度当初予算の概要等につきまして、総括的に御説明申し上げます。
 令和4年度の当初予算は、新型コロナウイルス感染症対策を徹底し、東日本大震災津波からの復興を進めるとともに、人口減少対策やデジタル化の推進、グリーン社会の実現などにより、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわての着実な実現につなげていく予算として編成したものであります。
 それでは、予算の概要について御説明申し上げます。
 お手元の議案その2の1ページをお開きいただけますでしょうか。議案第2号令和4年度岩手県一般会計予算であります。
 第1条は、歳入歳出予算の総額をそれぞれ7、922億3、585万円と定めるものであります。前年度当初予算と比較いたしますと2.3%の減となっております。第2条は債務負担行為の限度額等を、第3条は地方債の限度額等をそれぞれ定めるものであります。第4条は、一時借入金の最高額を1、000億円とするものであります。第5条は、職員給与について同一款内での予算流用を定めるものであります。
 次に、歳入について御説明いたします。便宜、予算に関する説明書により御説明いたします。厚い冊子になりますけれども、予算に関する説明書4ページをお開き願います。
 まず、1款県税のうち、1項県民税は403億7、100万円となっておりますが、これは、個人県民税や法人県民税の増収が見込まれることなどによるものです。
 5ページの2項事業税は296億1、100万円となっておりますが、これは、企業収益の増による法人事業税の増収が見込まれることなどによるものであります。
 6ページの3項地方消費税は247億6、700万円を見込んでおりますが、これは、令和元年10月における税率引き上げの影響の平年度化により、本県の払込額の減少が見込まれることなどによるものであります。
 7ページの4項不動産取得税は23億3、800万円となっておりますが、これは、課税となる取引が増加すると見込まれることなどによるものであります。
 8ページの5項県たばこ税は14億2、400万円、9ページの6項ゴルフ場利用税は、最近の課税実績等を勘案し2億7、200万円を計上しております。
 10ページの7項軽油引取税は138億7、600万円と見込んでおります。これは、引き取り数量の減による減収が見込まれることなどによるものであります。
 11ページの8項自動車税は180億1、600万円と見込んでおります。
 12ページの9項鉱区税は、最近の課税実績等を勘案し1、700万円を計上しております。
 13ページの10項狩猟税は、狩猟者登録の見込み数により1、400万円を見込んでおります。
 14ページの11項産業廃棄物税は、最終処分場の年間埋立量などを勘案して9、600万円を計上しております。
 15ページの12項旧法による税は、令和元年9月以前の自動車税に係る分でございまして、500万円を見込んでおります。
 以上、県税の合計額は1、308億700万円で、前年度当初予算に比べ90億6、600万円、7.4%の増となるものであります。
 次に、16ページの2款地方消費税清算金は588億8、600万円で、前年度当初予算に比べ12億1、900万円、2%の減となっておりますが、これは、先ほど申し上げましたとおり、令和元年10月における税率引き上げの影響の平年度化により、本県の払込額の減少が見込まれることなどによるものであります。
 次に、17ページの3款地方譲与税のうち、1項特別法人事業譲与税は219億1、800万円となっておりますが、これは、令和4年度地方財政計画において譲与税総額の伸びを見込んでいることなどによるものであります。
 18ページの2項地方揮発油譲与税は30億7、900万円、19ページの3項石油ガス譲与税は1億400万円、20ページの4項自動車重量譲与税は1億8、400万円、21ページの5項地方道路譲与税は100万円、22ページの6項森林環境譲与税は1億8、300万円、23ページの7項航空機燃料譲与税は3、400万円をそれぞれ計上しております。
 以上、地方譲与税の合計額は255億300万円で、前年度当初予算に比べ81億5、600万円、47%の増となるものであります。
 次に、24ページの4款地方特例交付金は、住宅借入金等特別税額控除の減収を補填するための特例交付金でございまして、5億7、200万円余で、前年度当初予算に比べ9、600万円余、14.4%の減を見込んでおります。
 次に、25ページの5款地方交付税は、国の地方財政計画の内容や東日本大震災津波からの復旧、復興事業費等を勘案いたしまして2、168億4、400万円余で、前年度当初予算に比べ36億5、800万円余、1.7%の減で計上しております。
 次に、26ページの6款交通安全対策特別交付金は3億8、300万円で、前年度当初予算に比べ600万円、1.6%の増を見込んでおります。
 次に、27ページの7款分担金及び負担金のうち、1項分担金は、経営体育成基盤整備事業等に係るものでございまして2億2、900万円余、28ページから29ページまでの2項負担金は、民生費などの受益者負担金、市町村負担金等を計上しておりまして9億6、000万円余となっております。
 以上、分担金及び負担金の合計額は11億9、000万円余で、前年度当初予算に比べ3億1、800万円余、21.1%の減となるものであります。
 次に、30ページの8款使用料及び手数料でありますが、1項使用料の主なものを申し上げますと、31ページの産業技術短期大学校授業料、32ページの道路及び河川の占用料、県営住宅使用料、県立学校における授業料などでございます。これら使用料の総額は、33ページの計の欄54億4、700万円余となっております。
 次に、34ページからの2項手数料の主なものでございますが、35ページのと畜検査に係る手数料、36ページの豚熱予防的ワクチン接種に係る手数料、37ページの運転免許に係る手数料などでございまして、これら手数料の総額は、38ページの計の欄22億3、900万円余となっております。
 以上、使用料及び手数料の合計額は76億8、700万円余で、前年度当初予算に比べ3億7、200万円余、4.6%の減となるものであります。
 次に、39ページの9款国庫支出金でございますが、1項国庫負担金の主なものを申し上げますと、生活保護に要する経費のほか、41ページの小中学校教職員の人件費や県立学校の授業料に充てるための就学支援交付金、河川等災害復旧事業などであります。これら国庫負担金の総額は、42ページの計の欄428億4、700万円余となっております。
 次に、43ページ、2項国庫補助金の主なものでございますが、45ページの介護職員処遇改善事業、47ページの感染症等健康危機管理体制強化事業、これは、新型コロナウイルス感染症の入院施設の確保などに要するものでございます。53ページまで飛んでいただきまして、道路環境改善事業や地域連携道路整備事業に係る国庫補助金などであります。これら国庫補助金の総額でございますが、57ページでございまして、820億9、700万円余となっております。
 次に、58ページの3項委託金でありますが、統計調査事業に関する国庫委託金の減などにより、総額でございますが、60ページで、19億8、500万円余となっております。
 以上、国庫支出金の合計額は1、269億2、900万円余で、前年度当初予算に比べ137億5、700万円余、12.2%の増となるものであります。
 次に、61ページの10款財産収入でございますが、1項財産運用収入は、土地や家屋の貸付収入など1億3、300万円余、続きまして、62ページからの2項財産売払収入は、県有未利用地や生産物の売り払いによる収入など8億2、300万円余を計上しております。これら財産収入の合計額は9億5、700万円余で、前年度当初予算に比べ4、400万円余、4.4%の減となるものであります。
 次に、64ページの11款寄附金は、ふるさと岩手応援寄付など1億9、800万円余で、前年度当初予算に比べ5、000万円余、33.7%の増を見込んでおります。
 次に、65ページの12款繰入金のうち、1項特別会計繰入金は、電気事業会計などからの繰入金でございまして8億9、500万円余であります。
 66ページ、2項基金繰入金は、財政調整基金や地域医療介護総合確保基金など基金からの繰入金でありまして、202億4、300万円余を計上しております。
 以上、繰入金の合計額は211億3、800万円余で、前年度当初予算に比べ65億4、800万円余、44.9%の増となるものであります。
 次に、67ページの13款繰越金は1、000円で、整理科目であります。
 次に、68ページの14款諸収入のうち、1項延滞金、加算金及び過料等は1億6、100万円余、69ページの2項預金利子は190万円余を計上しております。
 70ページの3項公営企業貸付金元利収入は103億円余を計上しておりますが、これは、県立病院等事業会計への貸し付けの償還金であります。
 71ページの4項貸付金元利収入は、各行政部門における貸付金に係る元金及び利子の収入で、合計額は72ページの計の欄1、264億7、700万円余となっております。
 73ページの5項受託事業収入は、河川激甚災害対策特別緊急事業などの受託事業収入でありまして11億7、200万円余となっております。
 74ページの6項収益事業収入は、宝くじ発売収益金で30億3、500万円余となっております。
 75ページの7項利子割精算金収入は1、000円で、整理科目であります。
 76ページの8項雑入は、78ページのいわてニューファーマー支援事業や新型コロナウイルス感染症対応資金利子補給事業に係る中小企業基盤整備機構からの収入などでございまして、雑入の総額は、79ページの計の欄55億700万円余と見込んでおります。
 以上、諸収入の合計額は1、466億5、700万円余で、前年度当初予算に比べ265億2、900万円余、15.3%の減となるものであります。
 次に、80ページの15款県債でありますが、その総額は、83ページの計の欄のとおり544億8、100万円であり、臨時財政対策債の減額等により前年度に比べ235億8、700万円、30.2%の減となっております。
 この結果、県債の現在高見込みでありますが、297ページまで飛んでいただきまして、297ページの一番右下の欄になりますが、令和4年度末現在高見込額は1兆2、314億1、900万円余と、前年度から303億円余の減を見込んでおります。
 以上で歳入についての説明を終わります。
 次に、歳出についてでございますが、主要な事業につきましては、それぞれ所管部局の審査の際に担当部局長から御説明申し上げますので、説明を省略し、私からは、性質別の主なものについて申し上げます。
 お手元の予算に関する資料で御説明いたします。3ページをお開き願います。第2表令和4年度一般会計歳出性質別内訳表でございますが、この表の右端の前年度当初予算からの増減率の欄を中心にごらんいただきたいと思います。
 令和4年度当初予算の特徴的なところを何点か申し上げますと、2物件費につきましては11.5%の増となっておりますが、これは、新型コロナウイルス感染症対策としての感染症等健康危機管理体制強化事業費の増等によるものであります。次に、4ページでございまして、7災害復旧事業費につきましては17.3%の増となっておりますが、これは、河川等災害復旧事業の増等によるものであります。5ページでございまして、8公債費は1.2%の減、9積立金は、地域医療介護総合確保基金積立金の増等により13.6%の増、10出資金は、いわて産業人材奨学金返還支援基金出捐金の減等により9.9%の減、11貸付金は、新型コロナウイルス感染症対応資金貸付金の減等により14.7%の減、13予備費は、新型コロナウイルス感染症に関する不測の事態への対応に備え、令和3年度と同額の6億円を計上したところであります。
 令和4年度岩手県一般会計予算の概要は、以上のとおりであります。
 なお、特別会計につきましては、所管部局において御説明申し上げますので、私からは省略させていただきます。
 以上で総括説明を終わります。よろしく御審議いただきますようお願い申し上げます。
〇軽石義則委員長 ただいまから総括質疑に入るわけでありますが、議会運営委員会の決定に基づき、総括質疑は、各会派及び会派に所属しない委員に質疑時間を配分して行うことになっております。
 質疑時間につきましては、まず、希望いわてが51分、次に、自由民主党が48分、次に、いわて新政会が27分、次に、いわて県民クラブが21分、次に、日本共産党が15分、次に、会派に所属しない委員は、社民党木村幸弘委員、公明党小林正信委員、無所属上原康樹委員の順に、それぞれ9分となっております。
 各会派は、配分された時間の範囲内で複数の委員が質疑をすることができること、また、この場合におきましては、会派として続けて行うこととされておりますので、御了承願います。
 また、議会運営委員会の決定及び世話人会の申し合わせにより、新型コロナウイルス感染症対策として、換気のため、午前は1回、午後はおおむね1時間半ごとに休憩いたしますので、御協力をお願いいたします。
 なお、本日の総括質疑は、世話人会の申し合わせにより、5時前に質疑に入った会派等の質疑が終了するまで議事を継続することといたしたいと思いますので、あらかじめ御了承願います。
 これより総括質疑に入ります。菅野ひろのり委員。
   〔菅野ひろのり委員質問者席に着く〕
〇菅野ひろのり委員 では、早速でございますが総括質疑を始めさせていただきます。今回は、決算特別委員会の総括質疑に引き続きまして、予算特別委員会でも質疑をさせていただきたいと思います。
 今回は、令和4年度当初予算案について、前回の総括質疑を踏まえてどのように予算に反映されているかということを中心に伺ってまいります。前半は私が、重点テーマの財政健全化と歳入、復興について質疑をさせていただきまして、後段は、千葉秀幸委員が質疑をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 それでは、令和4年度一般会計当初予算案でございますが、総額7、922億円、うち震災分事業は477億円、新型コロナウイルス感染症対策分として966億円が計上されています。震災分と新型コロナウイルス感染症対策分を控除したいわゆる通常分の予算で見れば6、479億円となりまして、これは令和3年度と同額ということになります。昨年度と同額の予算規模でございますが、知事は、知事査定後の記者会見において、三つの重点テーマについて10億円を超える新規事業を計上していると述べられておりました。
 歳出規模を拡大することが難しい財政環境のもとで、めり張りある予算編成を行った成果だと考えておりますが、今回の予算編成過程において、知事が最も注力して事業化に至った案件、分野について伺います。
〇達増知事 まずは、令和3年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症対策に万全を期すため、新型コロナウイルス感染症感染拡大防止対策や社会経済活動への支援などに必要な約1、000億円の予算を確保いたしました。
 また、新型コロナウイルス感染症対策にしっかり向き合うことにより人口減少対策にもつなげ、さらに、デジタル化の推進やグリーン社会の実現の取り組みを強化することにより、岩手県を、生活しやすく働きがいがある魅力あるふるさとにしていくため、三つのテーマに沿った事業について予算を重点措置いたしました。
 具体的には、人口減少社会への対応では、産後ケアの実質無償化などの自然減対策や若者の地元定着の促進やU・Iターンの支援などの社会減対策の強化、デジタル化の推進では、AI人材の育成やスポーツ指導、鳥獣被害対策、災害時のドローン利用など、さまざまな分野でのDXの展開、グリーン社会の実現では、本県初の水素ステーションの設置や燃料電池自動車の購入支援、温室効果ガス排出量の削減に向けた官民一体の取り組みや本県の優位性を生かした森林資源の循環利用などの事業化に意を用いたところであります。
〇菅野ひろのり委員 その重点テーマについてでございますが、今回、人口減少への対応が非常に大きなテーマだと思っております。そこで、まず、自然減対策について伺いたいと思います。
 知事が令和3年9月定例会において、県全体で総力を挙げてという言葉で子供を産み育てられる、安心できる岩手県にすることを決意表明されたところでございます。その後、知事が本部長を務めます、いわてで生み育てる支援本部を速やかに立ち上げられました。この報道を見たとき、私は大変うれしく思いましたし、期待するところでございます。
 そして、令和4年度当初予算案は、この支援本部での議論を踏まえ編成される最初の予算でございますが、2028年度に合計特殊出生率を1.58に引き上げるという目標でございます。どのようにこの施策の強化を図られたのか、知事に伺います。
〇達増知事 県では、結婚、妊娠、出産、子育て支援の施策を総合的、効果的に推進し、安心して子供を産み育てられる環境を充実させ、もって、子供の誕生や成長をともに喜び、子育てを応援していく地域社会を形成するため、昨年12月に、いわてで生み育てる支援本部を立ち上げました。
 いわてで産み育てる支援本部においては、令和4年度予算編成に向け、全庁的な情報共有や部局連携の取り組みを推進し、産後ケアの利用料無償化を行う市町村への補助、いわて幼児教育センターの設置、妊娠、出産や不妊に関する知識の普及啓発などの新規事業を盛り込むこととしたほか、民間企業などと連携した出会いの場の創出、県営住宅の収入要件の緩和、不妊治療等に係る休暇の新設などの事業や制度の拡充にも取り組むこととしており、子育て世帯等の経済的負担の軽減や幼児期における教育の質の向上などの施策の強化を図ったところであります。
 あわせて、官民一体となって社会全体で子育て支援を行う県民運動の推進にも取り組むこととしており、県の総力を結集して、安心して子供を産み育てられる環境の充実に取り組んでまいります。
〇菅野ひろのり委員 その中で、私は、教育長や関係部局長、広域振興局長をメンバーとして全庁を挙げた体制をつくったのは非常に重要なことだと思っていますし、取り組みを見ても、新規事業が今回さまざま盛り込まれているところで、大変期待しておりますが、なかなか難しい課題でもあると思っています。
 そこで、私は、さらに注力していかなければいけないのが社会減対策だと思っています。社会減対策について伺いますが、地方の人口減少は、東京の一極集中の是正を目的に地方創生に取り組みましたが、平成26年から既に7年以上経過しているということでございます。いろいろな施策を打ってきましたが、一極集中はとまっていないという現状があります。
 また、コロナ禍で、地方よりも都市部のもろさが露呈し、医療資源が十分に機能しないなどいろいろな問題があったと思います。これはDXの進行と相乗的な面もあると思いますが、自身や家族の安全や生活の質を見直して、生活する場所と勤務する場所についての認識も変わってきているのだろうと思っています。
 人口動態を少し調べてきたので、お話をさせていただくと、令和4年1月28日公表の住民基本台帳の人口移動報告書によると、東京都の転入超過は5、433人と、前年から2万5、692人、率にしてマイナス83%と大幅に減少し、これは過去最少ということでありました。また、23区に限って見ると初の転出超過ということでございます。
 人口減少に悩む我々地方に暮らす者にとっては明るいニュースではありますけれども、東京都からどこに出ていったのか実際にデータを細かく見てみると、上位は、約9万6、000人の神奈川県を筆頭に、埼玉県、千葉県ということで東京都の近郊になります。その後に大阪府や愛知県と大都市を抱える自治体です。
 では、岩手県はというと、2、092人と全国26位、東北では宮城県、福島県、青森県に続く4番目の水準ということでございます。実際に、これはどういう理由かというのは細かく、なかなか難しいところでありますが、いずれ残ってもらう、帰ってきてもらうということが、社会減を食いとめる第一の方策であると思っています。東京一極集中の見直しの流れの中で、東京圏に進学している学生の皆さんに改めてプッシュする取り組みが、効果を上げやすい時期に来ているのではないかと思います。
 そこで伺いますが、人口減少への対応の中で、コロナ禍での教訓、これは学びや気づきも含めてでございますが、社会減を食いとめるための取り組みとして、どのような施策に注力し新規事業等を盛り込んだのか伺います。
〇達増知事 新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、感染症に対する大都市のリスクの高さが改めて浮き彫りになり、地方への移住に対する関心の高まり、テレワークを初めとする多様な働き方の加速など、個人の意識、行動変容が起きているところであります。
 この機を捉え、県としては、令和4年度当初予算案において、社会減対策として、新たに商工団体と連携した県内大学生等の就職支援などを盛り込み、県内定着の一層の促進を図るとともに、U・Iターン対策として、東京圏の大学等を卒業し県内企業に就職した若者に対する移住経費の補助、AIを活用した県内就職先とのマッチング、県営住宅を活用した岩手県でのお試し居住などにより、本県への新たな人の流れの創出を図っていく考えであります。
〇菅野ひろのり委員 実際に、東京圏から岩手県に来られる方がどれぐらいいるかというのは、かなりハードルが高いだろうと思っています。ただ、東京・有楽町のふるさと回帰支援センターの相談件数を見てみますと、約5万件ということで、過去最高の相談件数となり、特に20代から40代がふえているということでございました。
 各自治体が、あの手この手で移住対策を展開している中でございますが、本県においても、実際に取り組んでいる市町村との連携が重要だと思っておりますし、独自の対策が求められるのだろうと思っています。令和4年度当初予算案でどのように対応しているのか伺います。
〇保副知事 移住促進対策におきましては、市町村が最終の着地点ということで、かなめとなっております。
 県では、これまでも市町村と一体的にイベントですとか移住相談対応等を行っておりますし、また、岩手県のオリジナルとして、県外の若い人たちが県内の事業所で就業体験をしながら、地域のイベントや行事にも参加してもらうような、岩手版ワーキングホリデーなども実施してまいりました。
 本年度の移住相談件数は、現時点で昨年度に比べ1.5倍となっております。これは大きなチャンスと言えると思います。今、知事から御答弁申し上げました取り組みに加えまして、令和4年度におきましては、帰省シーズンに合わせて、県内の新幹線の駅でUターン促進のプロモーション活動を市町村と一緒に行うことですとか、それから、県内各地での暮らしの魅力を発信する移住ガイドブックを、市町村の移住コーディネーターと協力して制作するようなことも考えております。
 さらに、いわて暮らし応援事業費の中で、県外で就学する若者たちの県内就職を促進するお試し就業機会の提供、さらに、地域住民との交流イベントや地域を学ぶ機会もこの事業の中に盛り込んで、市町村とともに一層の移住促進を図ってまいります。
〇菅野ひろのり委員 今回、新規あるいは一部新規も含めて6件、あるいはさまざまな事業を工夫いただいていると思いますので、積極的に社会減対策はお願いしたいと思います。
 次に移りますが、グリーン社会の実現についてでございます。
 今回、一般質問、代表質問の中でもありましたが、今後の気候変動対策のみならず、国あるいは都道府県、自治体も含めて、一緒になって取り組んでいかなければいけない問題であると思っています。
 本県では昨年2月、知事が、いわて気候非常事態宣言を発表されました。岩手県の実行計画においても、2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比で41%削減するという目標を掲げて取り組んでいると認識しております。
 令和4年度の当初予算案においても、新規事業として水素ステーションの設置、燃料電池自動車、FCVの導入補助に9、000万円を計上するなど、これまで準備を進めてきた取り組みが具体的に結実しているのを実感しております。
 今後も長期にわたり重要なテーマであり続けるグリーン社会の実現に向けて、知事は、どのような思いで取り組みを進めていくつもりか伺います。
〇達増知事 昨年2月にいわて気候非常事態宣言を行ってから1年が経過し、この間、気候変動により県民生活や事業活動に影響が出ていることや国連気候変動枠組条約第26回締約国会議―COP26において、グラスゴー気候合意が採択されたことなどを受けて、本年2月16日に、いわて気候非常事態宣言1周年知事メッセージを発し、改めて気候変動に対する危機意識を県民の皆さんと共有し、県民総参加による地球温暖化対策を呼びかけたところであります。
 温室効果ガス排出量の2050年実質ゼロの達成に向けて、本県に賦存する豊富な再生可能エネルギーや全国有数の森林面積等の強みを生かして積極的に取り組みを進め、温室効果ガス排出量の削減にとどまらず、地域の活性化や新たな産業の創出等につなげていくことが重要と認識しております。
 令和4年度は、水素利活用、自立・分散型エネルギー、森林の循環利用を三つの柱とし、水素モビリティーの実証、洋上風力発電の導入支援、県産木材の利用促進、省エネ住宅の普及等に取り組み、地域経済と環境に好循環をもたらすグリーン社会の実現を進めてまいります。
〇菅野ひろのり委員 その中で、私は、水素の利活用について非常に重要だと思っています。現在、洋野町沖で洋上風力発電の導入可能性について研究が進められていますが、今後も海域を拡大していくということで予算も盛り込まれています。
 再生可能エネルギーは気象条件に左右されることから、ベースロードとしてこれを活用するには、出力が不安定とか、いろいろな課題があります。ただ、水素の利活用は、岩手県にとっては大きなポテンシャルを持っている分野であると私は考えています。
 さらに、県南地域に目を向ければ、完成自動車工場等も立地して、今後、自動車を端緒に水素利活用の可能性を探っていくことは、岩手県の優位性を生かした独自の取り組みとして成果を上げられる分野ではないかと考えておりますが、当局の見解を伺います。
〇石田企画理事兼環境生活部長 水素は、つくる、ためる・はこぶ、つかうと、一貫して二酸化炭素の削減が期待できるエネルギー源として注目され、水素を使った燃料電池自動車は、電気自動車に比べ、航続距離が長い、充填時間が短い等のメリットがあり、世界中で自動車の脱炭素化の流れが加速する中、ガソリン車にかわる次世代モビリティーとして期待されております。
 県では、令和元年度、岩手県水素ステーション等研究会を設置し、県内市町村や自動車、エネルギー関連の企業等との情報交換や県内における水素ステーションの設置に向けた検討を行ってまいりましたが、多額の設置費用や運営の見通し等の課題が挙げられ、未設置の状態となっておりました。
 今般、小規模の水素ステーション整備が国の補助対象となった機会を捉えて、令和4年度当初予算案に、県内初の水素ステーションの設置や燃料電池自動車の導入に要する経費を盛り込んだところであり、燃料電池自動車の県内走行等により、県民の理解促進を図っていく考えであります。
 また、自動車以外の分野においても、今後、化石燃料の代替エネルギー源として期待されることから、水素利用のさらなる拡大に取り組んでまいります。
〇菅野ひろのり委員 その中で、柳村議員の一般質問の中でもありましたが、つかうという部分、これは、今後さらに検討が必要だと思うのです。例えば、岩手県でいうと、非常に上手にやっている北岩手地域電力の先進事例がある中で、私としては、これを県内に広げていく動きが必要なのだろうと思っております。県としては、今、つかうという部分の今後について、どういう展望を考えられているのか伺います。
〇石田企画理事兼環境生活部長 今年度から、県境産廃跡地におきまして再生可能エネルギー由来の水素の利活用の可能性を調査しているところであり、将来的に、園芸施設、畜舎等、農畜産分野への活用等も考えられます。
 国内では、さまざまな分野において水素に関する国の実証事業が進められており、宮城県内では、太陽光発電により製造した水素を店舗や一般家庭に配送し、発電や給湯に活用する事業を、また、秋田県内では、水素を都市ガスとまぜた燃料を家庭等に供給し利用する事業も行われております。
 このような実証事業の状況も参考にしながら、本県の地域特性を踏まえた活用を検討してまいります。
〇菅野ひろのり委員 今、自動車の話もありましたし、私は、それはそれで非常に重要なテーマだと思っているのですが、排熱等の利用の中で、地域振興、産業を興していくような流れにぜひ積極的に使っていただきたいと思います。岩手県の課題の中で、例えば、農業であれば冬季の仕事が少なくなってしまったりする中で、再生可能エネルギーのポテンシャルは、副産物からも十分にあるのだろうと思っておりますので、幅広くその点を検討いただきたいと思います。
 次に移ります。デジタル化の推進についてでございます。
 デジタル化の推進について、特に県庁業務のデジタル化の推進について伺いたいと思っております。
 今回、総括質疑に当たって、過去のデジタル化の関連について調べたところ、およそ20年前、平成15年に策定された岩手県行財政構造改革プログラムにも、電子県庁の構築が目標とされています。電子県庁は、今は紙がいっぱいで、ようやくタブレットという中で、なかなか進んでいないと実感しているところです。
 また、今、民間もそうですけれども、働き方という中に、デスクにずっと座ってというよりも、オープンオフィスであるとか、さまざまな環境に縛られないやり方が普及してきています。今後、そうやって仕事をしてきたときに、ワークフローの見直しが非常に重要になってくると思っています。
 私が言いたいのは、単純に紙を電子化していくこととは異なっていて、いろいろな面から業務自体を見直していく、あくまでもデジタルというのはツールでありますから、そういった面が必要だと思っています。
 民間企業でも、同様にワークフローの見直しについて柔軟に対応してきています。これまでの集約的なオフィスという考え方には変化があるのだと思っています。
 そこで伺いますが、今回、重点テーマとしてデジタル化の推進を掲げたことについて、これまでの県としての取り組みをどう総括し、本当の意味でのDXをどう推進していくのか、県庁内部のワークフローをどのように見直していくのか、事業の再構築、プロセスの見直しなどを含め伺いたいと思います。
〇白水総務部長 県ではこれまで、行財政構造改革プログラムやいわて県民計画(2019〜2028)のアクションプラン等に基づきまして、電子申請・届出システムやウエブ会議システムの導入、リモート接続を活用したテレワークシステムやサテライトオフィスの設置によるテレワーク環境の整備などを進めてきたところでございます。
 DXの推進やコロナ禍における対応の観点から、これまでの取り組みに加えまして、令和2年度以降、働き方改革ロードマップに基づき、職員1人1台端末のノート型パソコンへの一斉更新や無線LAN等の通信環境の整備、電子決裁・文書管理システムの構築など、モバイルワークの基盤整備を進めるとともに、各種手続のオンライン化の拡充に向け、押印を要する手続の見直しを行ってきたところでございます。
 これらの環境整備を活用し、単なるデジタル化による業務見直しにとどまらず、県民の利便性向上や業務プロセスの抜本的な見直しにつなげることが重要と考えております。
 令和4年度は、電子決裁・文書管理システムの本格稼働やAI、RPA―ロボティク・プロセス・オートメーションの活用拡大、電子申請・届出システムの対象事務の拡大等を契機としたデジタル化による県庁業務の根本的な再構築、すなわちBPR―ビジネス・プロセス・リエンジニアリングについて不断に進めていきたいと考えております。
〇軽石義則委員長 この際、菅野委員の質疑の途中ではありますが、世話人会の申し合わせにより10分間ほど休憩いたします。
 菅野委員、御了承願います。
午前10時58分 休 憩
午前11時13分再開
〇軽石義則委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。
〇菅野ひろのり委員 先ほどはデジタル化の推進について伺いました。その中で、さまざまモバイルとかを支給している中で、プロセスを抜本的に見直していく必要があるということを御答弁いただきました。この後、シーリング以外の事業精査の手法について伺っていきますので、そのときにまた少し触れたいと思います。
 次に、財政健全化について伺います。
 令和3年12月定例会において、郷右近浩議員の質問に対しまして、知事は、これまでの財政運営を振り返り、厳しい財政状況下での就任であった中、平成23年度から9年連続でプライマリーバランスの黒字化を達成し、県債残高を着実に減少させたこと、財源対策基金残高の増加に努めてきたことなど、財政の健全化に努めてきた成果を答弁されていました。
 令和4年度の当初予算編成に当たり、財政健全化にどのように配慮したのか、その成果について伺います。
〇達増知事 財政健全化の着実な推進に向けて、令和3年度2月補正予算と令和4年度当初予算案を一体的に編成したところであります。
 令和3年度2月補正予算では、将来の財政支出への備えとして財源対策基金へ約265億円を積み立てたほか、臨時財政対策債の繰上償還など約110億円の将来世代の負担軽減を行いました。
 令和4年度当初予算案では、めり張りある予算編成により、人口減少、デジタル、グリーンの三つのテーマに10億円を超える額を重点措置しつつ、当初予算としては、11年連続となるプライマリーバランスの黒字化を達成し、県債残高を300億円程度縮減いたしました。
 その結果、知事就任時と比べて、臨時財政対策債を除く県債残高について約1兆2、100億円から約7、300億円へ4、800億円程度減少させるなど、財政健全化に向けて着実な成果を上げました。
〇菅野ひろのり委員 その着実な成果の上にと言うのでしょうか。今回、令和4年度当初予算案の編成で、非常に特徴的だったのが、政策的経費に5%のマイナスシーリングを設定したことだと思います。歳出規模の拡大が難しい状況で、めり張りのある予算編成を行うには、重点分野に財源を配分するのだということで、確かに必要なことだと考えています。
 しかし、県が所管する分野の広さを考えたとき、知事がおっしゃる誰ひとりとして取り残さないという中にあっては、シーリングが県民サービスの後退につながらないように配慮し予算編成すべきであると、前回の決算特別委員会で提言させていただいたところでございます。
 その際、この要求基準で約19億円の財源確保を見込んでいるということでございましたが、その実績と予算編成過程で県民サービスの後退につながらないように配慮した点について伺います。
〇白水総務部長 基礎的経費を初めとした経常的経費につきましても、削減目標を設けて財源確保に取り組んできたところでございますが、これにより捻出された財源は11億円となったところでございます。
 見込んでいた19億円よりも少ない額にとどまった理由としては、1%の削減を努力目標として設定した基礎的経費のうち、社会保障関係費や長期継続契約などにおいて目標に達しなかったところであります。
 また、予算編成過程においては、ICTの活用など手法の見直しによりコストを縮減しつつ、基本的な行政サービスを提供し、県民福祉の増進を図る観点から、必要となる事業に所要の予算措置を講じたところでございます。
〇菅野ひろのり委員 11億円ということで、県全体の予算からすると非常に少ない金額ではありますが、一方で、11億円を一生懸命削減していただいたことは、財政課を初め、さまざまな御努力があったのだと思っております。その上で、県の財政を考えたとき、シーリング以外の事業精査の手法はどういうものがあるのか、もっと踏み込んで考えていく必要があるかと個人的には考えております。
 今回の当初予算編成において、事務事業評価を活用した見直しによって、廃止、休止及び縮減した事業が73事業、事業費で23億6、100万円、一般財源ベースで10億4、000万円と整理されています。この資料を細かく見ていくと、純粋な廃止、休止が17事業で、削減した事業費は1億2、700万円程度にとどまっています。
 知事がよく、多額の収支不足が常態化する静かなる地財ショックという言葉を使われますが、それに直面している中、シーリングによる財源捻出、すなわち薄く広く削っていくことが限界に近いのではないかと考えております。
 予算編成過程において大胆に事業のスクラップ・アンド・ビルドを進めていくことが重要になってくると考えますが、当局の見解を伺います。
〇白水総務部長 令和4年度当初予算案におきましては、事務事業評価の結果等を踏まえ、財源を捻出しつつ、人口減少、グリーン、デジタル化の三つの重点テーマについて、10億円を超える事業費を計上するなどのスクラップ・アンド・ビルドを行ったところであります。
 今後、人口減少を背景として、本県の財政状況は一層厳しさを増す見込みである中におきましても、基本的な行政サービスを提供しつつ、いわて県民計画(2019〜2028)や三つの重点テーマなどを着実に推進していくため、委員御指摘の事務事業評価のさらなる活用も含め、スクラップ・アンド・ビルドの徹底を図ってまいります。
〇菅野ひろのり委員 事務事業評価の活用、見直しも含めてですが、今回いろいろ見たときに、私も令和3年9月定例会の決算特別委員会の中でもお話しさせていただいた、できるだけ県民サービスが後退しないようにという中にあって、今回17事業を削っているわけです。これは今の事務事業評価あるいは、もっと言うと政策評価があるわけでございますが、この事業を廃止した、休止したものがサービス後退につながらないというエビデンスは、どう考えているのでしょうか。どれを示されているということなのでしょうか。
〇石川政策企画部長 政策評価、それから事務事業評価につきましては、平成13年度に評価システムを整備して以来、評価調書の作成過程におけるペーパーレス化あるいは指標達成度判定の自動化、評価調書の簡素化など、事務の省力化、効率化に取り組んでまいりました。
 今後におきましても、それぞれの評価がより効果的かつ効率的に行われるように、業務プロセスの抜本的な再構築の視点も踏まえながら、DXを進める中で不断の見直しを行っていきたいと考えておりますし、これまで、各部局において政策評価の積み重ねがございますので、それぞれ中身をしっかり振り返りながら、翌年度の事業をつくっているところでございます。
〇菅野ひろのり委員 政策評価の話も出ましたが、政策評価、事業評価というのは、評価の仕組みも見てまいりましたが、誰に向けた評価システムなのかを伺いたいと思います。
〇石川政策企画部長 政策評価、事務事業評価につきましては、基本的には、それぞれの事業を持っている各部局で、その事業目的を達成する、それに向けてどのような指標をつくっていったらいいのかといったような形になろうかと思います。あわせて、政策評価につきましては、県民とその指標の進みぐあい、事業の進みぐあい、目的の達成ぐあいを共有する目的もございますので、そういった観点に立って事業の見直しを進めてまいりたいと考えております。
〇菅野ひろのり委員 その中で、この評価の仕組みをホームページで拝見させていただいて、県議会に報告するとありました。見ると、評価システムの体系の一番上に政策分野10の項目、その下に政策項目50、さらには、具体的な推進方策、事業評価ということで4層になっています。さらに、これの指標を数えると、政策分野が57あったり、具体的な推進方策471と指標がすごく多いのです。これは、県庁の能力というか知見がすごく集約されたものであると思っている一方で、重なり過ぎていてかえって本質が見えづらくなっていると思っています。
 今回、どうしてシーリングのところで取り上げたかというと、私は民間出身なので、これはPDCAで言うとチェックの部分だろうと思っているのです。これから人材あるいは事業を縮小していかなければいけない中、チェックのところをもっと簡素化して、どちらかというとアクション、行動して変えていくほうに軸足を移していかなければいけないのではないかと思っています。
 県議会に報告という観点で言うと、個人的には、これもエクセルベースとか、もっと簡単なぐらいでもいいのではないかと思うときもあるほどです。
 ちなみに、この事業評価、政策評価は、今後どういう見直しをしていくのか、どうやってスリム化していくのか、その課題意識も含めて御答弁いただきたいと思います。
〇石川政策企画部長 現在の政策評価システムにおける手法でございますが、課題の抽出とその対策を検討していく上で効果的なものと認識しておりますけれども、評価プロセスを県民と共有していくという観点から、やはりよりわかりやすいものにしていく必要があると考えております。
 今後、外部有識者の御意見もいただきながら、不断の見直しを行っていきたいと考えております。
〇菅野ひろのり委員 私は、もっとアウトプットを簡素化したものを当局には求めたいと思っておりますので、よろしくお願いします。
 次に、職員体制について伺いたいと思います。
 事業が非常に複雑になっていく中、職員の皆さんにいろいろな負荷がかかるのだろうと思っておりますし、県民サービスの中で、少ない人数でどうやっていくのかと考えたとき、課題なのが、職員の年齢的な構成、バランスにあるのだろうと思っています。
 事業数が大幅に減少していない中、管理職である50代の方が多いようで、30代以下の若手に業務が集中する、あるいはプレーイングマネジャーの方々も、非常にタフな仕事が求められていくのだと思っています。いわゆるマネジメント過多と言うようでありますが、そういったものも危惧されますし、地方公務員の定年延長が近づく中、その危惧はどんどん膨らんでいくのだろうと思っています。
 中期的に厳しい財政状況が続いていきます。当たり前の話になりますけれども、急に年齢構成が変わることはないわけでありますから、職員の大幅な増員もちょっと難しいのだろうと思っています。
 一見すればマンパワー的に八方塞がりに見えるこの状況を、採用や人事制度も含めどのような工夫で乗り切ろうと考えているのか伺います。
〇白水総務部長 知事部局におきましては、採用数を抑制していた時期の影響などにより、30代の職員が他の世代の職員より少ない現状にありまして、担当の総括など組織の中核を担い、若手職員の育成において重要な役割を果たす中堅職員層の偏在が、組織的な課題となっております。
 こうしたことを踏まえ、これまで民間経験者を対象とした試験職種の創設や任期付職員経験者の選考採用、年次にとらわれない積極的な職員の登用などにより、年齢構成の偏りを改善するよう対応してきましたほか、事務職や技術職の区分にとらわれずに、部局間の職員交流を積極的に行うなど、多角的な視点を有し、多様な県政課題に対応できる職員の育成を進めてきたところでございます。
 今後におきましても、定年引き上げにより増加が見込まれている60歳以上の職員に、例えば、専門的な現場での業務や若手職員の育成の業務を担ってもらうなど、新たな制度を活用しながら組織体制の強化を図ってまいります。
〇菅野ひろのり委員 例えば高齢層の皆さんの退職に伴って新卒の方を大量採用するということであれば、人件費の圧縮につながるだろうと思いますが、県庁の総力を挙げてとなったときに、パフォーマンスをさらに発揮していく体制というのは非常に大変なことだと思っていますので、これは、継続的にどういう体制でやっていくのか検証しながら進めていっていただきたいと思います。
 加えて、そういった人員の課題がある中で、アクションのところに力を入れられるような体制をつくっていただきたいというのが、先ほどの政策の話でありましたので、よろしくお願いします。
 次に、岩手県公共施設等総合管理計画について伺います。
 平成28年3月に策定し、平成30年8月に改訂した岩手県公共施設等総合管理計画では、昭和50年代に集中的に整備した多数の施設が、今後、大規模修繕、更新の時期を迎えることによって、今後30年間で公共施設では約7、070億円、インフラ施設では約1兆5、112億円と巨額の経費が必要となることが見込まれています。年平均ではそれぞれ236億円、504億円と過去5年間の投資実績の1.5倍から2.6倍という多額の負担が必要となる、まさにこれは大更新時代ということなのだと思います。
 この岩手県公共施設等総合管理計画のもと、各施設で個別施設計画が策定され、時期の平準化、低コスト化について取り組みが進められているものと認識しております。総務省から、その個別施設計画を反映した見直しを令和3年度までに行うことが求められています。まず、現在の個別施設計画の見直し状況、スケジュールについて伺います。
〇白水総務部長 2月28日の一般質問におきまして御答弁させていただきましたけれども、現在、個別施設計画の内容等を踏まえた岩手県公共施設等総合管理計画の見直しを進めているところでございまして、計画の改訂素案をこの3月22日の総務委員会へ報告し、その後、パブリックコメントの実施などを経て、7月をめどに計画改訂するように作業を進めております。
〇菅野ひろのり委員 その個別施設計画の反映が今回の見直しの主眼ではありますが、岩手県公共施設等総合管理計画の見直しとして、今回新たに盛り込むことを想定している項目、また内容はどういうものなのか伺いたいと思います。
〇白水総務部長 国の通知に基づきまして、施設保有量の推移や個別施設計画の内容を踏まえた維持管理、更新等に係る経費などについて計画改訂に反映するとともに、人口減少や財政状況を踏まえた公共施設延べ床面積等の施設総量の適正化に関する事項やトータルコストの縮減、平準化に関する事項について、指針を示すこととしております。
〇菅野ひろのり委員 次に、計画改訂で配慮すべき視点について伺いますが、施設の大規模修繕、更新の費用は多額に上るということで、財政状況について厳しい見通しは当然当局も持たれていると思っています。また、人口減少が進む中、かつて右肩上がりでの人口増を前提として整備された公共施設の全てを現行の場所、規模で更新することが現実的でないことについても理解いたします。
 一方で、それぞれの公共施設が各地域で果たしている役割、機能を考えると、一律に縮小や廃止を進めていくのも、地域の活力を減退させることにつながって、非常に難しい課題であると思っています。
 今回、計画の改訂に当たって、どのような視点に配慮して進めているのか伺います。
〇達増知事 人口減少に対応し、基本的な行政サービスを将来にわたって提供していくためには、安定的で持続可能な行財政基盤の構築に努める必要があります。そのため、今回の岩手県公共施設等総合管理計画の改訂に当たっては、施設の計画的な維持管理による長寿命化の推進、修繕、更新等に要するコストの平準化、施設規模、総量の適正化等について、具体的な取り組み方針を盛り込む方向で検討しております。
 また、計画の推進に当たっては、地域特性や地域活性化に配慮し、県民の暮らしに必要なサービスが持続的に提供されるよう、中長期的な視点に立って創意工夫しながら取り組んでまいります。
〇菅野ひろのり委員 これは県の計画ではありますが、市町村も、自力でこの公共施設を抱えるのは非常に難しくなってきていると思います。やはり県と市の連携が非常に重要なのだろうと思っています。
 そこで、後段、復興についても質問しますが、復興のシンボルである公共施設の釜石鵜住居復興スタジアムを例に御質問したいと思います。最初、県と市とともにつくっている中で、高額な維持管理費、あとは、コロナ禍もありますが、利用実績がなかなか伸びない中で、地元の大きな負担になっているということも聞こえてきます。
 これをどのように認識しているのか、また、どういう工夫が今後考えられるのか伺いたいと思います。
〇保副知事 釜石鵜住居復興スタジアムですが、釜石市が直接、管理運営を行っております。
 同市の令和2年度の決算によりますと、維持管理費は約3、700万円、利用実績は186件、約3万1、000人が利用、施設使用料の収入は約300万円となっております。
 ラグビーの試合や合宿はもとよりですが、サッカー、マラソン、音楽ライブなど幅広く活用されております。ただ、新型コロナウイルス感染症の影響により、これらのうち97件が取りやめになったと伺っております。
 県としては、このスタジアムが釜石市民のみならず、県民にとって、ラグビーなどのスポーツを初め、教育、文化、観光など、さまざまな分野で積極的な活用が図られることが望ましいと考えております。
 釜石市が設置している釜石鵜住居復興スタジアム運営委員会に、県もオブザーバーとして参画しております。釜石市や釜石シーウェイブスと連携して、さまざまな大会や合宿の誘致、地域でのスポーツ教室の開催などを初め、さまざまな利活用については、県も一緒になって考えながら利活用につなげていきたいと考えております。
〇菅野ひろのり委員 きょうは文化スポーツ部はいらっしゃいませんが、いずれ、運営費は市町村ということでありましたから、いかに国際大会を誘致するであるとか合宿を誘致するであるとか、そういった側面もしっかりアイデアを出し合いながら、施設が維持、そして地域が発展できるようにお願いしたいと思います。
 次に、本県の歳入構造について伺いたいと思います。
 地方交付税減少の要因についてでございます。これまで、令和4年度当初予算案における施策の方向性、事業について伺ってきましたが、ここからは歳入について聞いてまいりたいと思います。
 本県の歳入のおよそ3割を占める最大の歳入科目は地方交付税でございます。昨年9月に公表された中期財政見通しにおいて、地方交付税の算定に与える人口減少の影響、具体的にはマイナス11億円からマイナス26億円という数値が初めて示されました。
 資料によりますと、令和4年度の人口減少による交付税等算定への影響額はマイナス16億円とされ、臨時財政対策債と合計した実質的な交付税額としては2、455億円を見込んでいました。
 一方、今回の予算編成における歳入項目を確認したところ、その額は2、269億円と、中期財政見通しに比べて186億円も減少しております。この減少の要因について、まず伺いたいと思います。
〇白水総務部長 地方交付税でございますが、これも委員御承知のとおり、一定の標準団体を念頭に、その行財政運営に必要となる標準的な歳出、すなわち基準財政需要額から標準的な収入、すなわち基準財政収入額を控除して算出されます。
 令和4年度当初予算案におけます基準財政需要額につきましては、令和2年国勢調査人口の反映に伴う減額や令和3年度の給与改定に伴う減額などもございまして、中期財政見通し時と比べて56億円の減となったところであります。
 また、基準財政収入額については、令和3年度における税収が当初見込みより増収となったことによる後年度の精算も含め、企業業績の回復による税収増を背景に、中期財政見通し時と比べて120億円増加することなどから、実質的な地方交付税については、その差し引きになりますけれども、186億円の減少となったところでございます。
〇菅野ひろのり委員 そういった中で、税収についても伺っていきたいと思いますが、令和4年度の税収として、今年度比で7.4%、90億6、600万円の増を見込んでおります。新型コロナウイルス感染症の影響が緩和する見通しなのか、法人事業税が47.6%増加することが、その大半を占める歳入予算となっています。
 私も、法人事業税は、業者の皆さんが厳しいので増加するという印象はなかったのですが、今回、非常に上がっています。
 新型コロナウイルス感染症の第6波真っただ中で、税収として大幅な伸びを見込むことはなかなか難しいのではないかと、同様に感じる県民は少なくないと思われます。令和4年度の税収の見通しについてどのように算定されているのか伺います。
〇白水総務部長 令和4年度当初予算案におけます税収についてでございます。直近の課税実績、それから令和4年度地方財政計画における伸び率等を参考に算定したところであります。
 そのうち法人事業税につきましては、委員御指摘のとおり、令和3年度当初予算比で47.6%の増となっておりますが、令和3年度決算見込み額に対しては3.3%の増となっております。業種によっては、新型コロナウイルス感染症の影響を受けているものの、全体としては増収となるものと見込んでおります。
 なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大のほか、原油価格の高騰などが県税収入に与える影響については、引き続き注視をしていく必要があると考えております。
〇菅野ひろのり委員 税収の中で軽油引取税について伺いたいと思います。前回の令和3年12月定例会の中でいわゆるトリガー条項について議論がありました。今回、財政にどう影響があるのかという観点で伺いたいと思っています。
 現在、ガソリン価格がなかなか下がっていかない中、国政においても議論となっております。令和3年12月定例会では、意見書を国に対して送付しております。
 現在、東日本大震災津波の復興財源確保のためとはいえ、現下の原油高がもたらす国民生活、国内産業への影響は日増しに大きくなっていることから、国は、このトリガー条項を適用し、特例税率の適用を停止すべきと考えておりますが、知事の見解を伺います。
〇達増知事 原油価格の上昇に伴い、ガソリンや軽油、重油の価格は2014年以来の高値水準となり、今なお高騰が続いている状況です。
 これら燃料の高騰は、施設園芸農家の暖房費用や漁船漁業の燃料費の増加を初め、今後、需要回復が期待されるバス事業者の燃料費やトラックなどの物流コストの上昇等、農林水産業者や中小事業者の経営に大きな影響を及ぼすとともに、県民生活を脅かす大きな原因となる可能性があります。
 このような中、国では、トリガー条項の発動も含めて、原油価格のさらなる高騰が考えられる場合、あらゆる選択肢を排除することなく追加措置を用意するとしています。
 日本経済は、新型コロナウイルス感染症の流行により、かつてない深刻な打撃を受けており、原油価格高騰は、さらなる経済活動の停滞を招きかねないことから、追加措置が必要と判断された場合は、ちゅうちょなく行うことが求められます。
 国においては、引き続き、責任を持って十分な原油供給体制の確保による国際原油価格の安定化を図るとともに、トリガー条項の適用停止が復興財源の確保を目的としていることを踏まえ、地方財源の減少や復興のおくれが生じないよう、必要な対策を講じるべきと考えます。
〇菅野ひろのり委員 その中で、金子総務大臣が記者会見で明らかにしたところによると、この条項が発動された場合、地方全体で5、000億円もの減収が見込まれるということでありました。今は、国が補助金で値上げに対応するということです。制度ですから一長一短あるわけでありますが、これは、県税である軽油引取税について、当分の間、1リットル当たり32.1円とされている税率が15.0円に引き下げになる影響が大きいためですが、高知県の浜田知事は、トリガー条項が発動された場合、県の財源に数十億円の穴があいてしまい県が立ち行かなくなると発言していますが、本県への影響についても同様に懸念するものであります。
 令和4年度当初予算案では138億7、600万円の税収を見込んでいる軽油引取税について、仮にトリガー条項が発動された場合の影響額についてお示し願います。
〇白水総務部長 トリガー条項が発動された場合の本県への影響についてでございます。令和4年度当初予算案をもとに試算いたしますと、軽油引取税でおよそ74億円の減収が見込まれるところでございます。
〇菅野ひろのり委員 74億円というと非常に大きな金額であると思っています。一方で、県の財政はそのとおりでありますが、生活している方からすると、直近のガソリンの値段というのは非常に厳しいものがありますから、そこは、トリガー条項も含めしっかりと対応していかなければいけないと私は思っています。
 原油高騰対策は全国的な課題です。国がその責任のもとに対策を実施するべきであると考えておりますし、結果として、地方の収入に、岩手県だと74億円の減収が生じた場合、その補填を含めた財源保障については国が責任を持って講じるべきと考えますが、知事の御所見を伺います。
〇達増知事 国においては、トリガー条項の発動も含めて、あらゆる選択肢を排除することなく追加措置を用意することとされていると承知しております。
 トリガー条項が発動された場合、本県においては、令和4年度当初予算案に対する財源不足額が74億円となるなど影響が大きいことから、この減収に対する補填措置が講じられるのは当然であり、全国知事会等とも連携して国に強く訴えていきたいと思います。
〇菅野ひろのり委員 全国知事会を通じてということでありましたが、ぜひ、知事からもお願いしたいと思います。
 次に、地方交付税制度の改善に向けた取り組みについて伺います。
 歳入についていろいろ細かな質問を続けましたが、それは、今回の令和4年度当初予算案において、厳しい歳入歳出の構造がうかがえるからでございます。冒頭述べましたが、震災対応、新型コロナウイルス感染症対策など、特別な財政需要を除いた県としてベースとなる通常分の歳出予算額は6、479億円と、昨年度と同額の予算が計上されています。
 一方で、歳入に目を転じれば、財源不足を解消するための財源対策基金からの取り崩し額は121億円と、歳出規模が同額にかかわらず、令和3年度の取り崩し額57億円の2倍以上に膨らみ、それによって歳入不足を補っています。
 令和3年度から税収が90億円以上増加、贈与税も80億円以上増加しているにもかかわらず、臨時財政対策債を含む実質的な地方交付税が265億円も減少していることで、税収の伸びにもかかわらず、実質的な一般財源が91億円も減少していることがその要因だと分析しています。
 結局、歳出規模は同じだけれども、歳入の部分は基金の取り崩しが倍になっている。それで、一般財源が減少したのが要因ではないかということであります。
 令和3年9月定例会の決算特別委員会で当会派の柳村委員の質疑に対し、総務部長は、現行の地方交付税制度については人口をもとに算定される割合が高く、本県のような広大な県土を有する団体の財政需要の反映が十分ではないという認識を述べられました。
 今回、大幅に実質的な地方交付税が減額している点を見れば、歳出規模の縮小が困難である中、実質的な一般財源総額が減少していく流れは、とまるどころか加速しているのではと感じてしまいます。
 冒頭伺いましたが、歳出のシーリングだけでこの局面を打開していくことは困難だと考えます。今回の歳入予算の編成を通じ、現行の地方交付税制度の改善に向けてどのように取り組んでいく考えか、改めて伺います。
〇白水総務部長 地方団体が標準的な行政水準を確保できるよう、国が地方財政の健全性を確保すべきという地方財政法等の趣旨を踏まえ、まずは、地方税の充実強化を初め、国からの負担金や補助金などによる措置の拡充が必要であると認識しております。
 その上で、地方交付税につきましても、一般財源総額の確保に加えて、算定に当たっては、人口減少社会においても必要な財政需要に対し適切に財源が保障される必要がありまして、例えば、地域医療を支える県立病院の運営や修学機会を確保するための小規模高校の維持に係る経費など、広大な県土に多数の条件不利地域を抱え、かかり増しとなっている本県の財政需要を的確に反映するように、引き続き国に対して強く要請してまいります。
〇菅野ひろのり委員 先ほど、県立病院、小規模校ということがありましたが、やはり岩手県の特異な事情をしっかり踏まえながら進めていくのが大事だと思います。
 このような歳入構造の中で、どのように持続可能で安定的な行財政基盤を構築していくかは、本当に難しい、大きなテーマ、困難なテーマだと思っています。
 地方の財源不足を補填する臨時財政対策債は、令和3年度の357億円から105億円、率にして70.5%、252億円と大幅に減少していまして、地方財政の健全化は進んだという見方もあるようですが、これほどまでに県が施策を実施していくために必要な実質的な一般財源が減少してしまうのは、本末転倒ではないかと思っております。
 知事は、今回の令和4年度当初予算編成で直面したこのような歳入不足の拡大について、どう認識されているのか、臨時財政対策債が大幅に減少したことの評価も踏まえ、今後どのように対応されるのか伺います。
〇達増知事 国においては、臨時財政対策債等の発行額の圧縮等を通じて、国、地方合わせたプライマリーバランスの黒字化を目指すこととされており、令和4年度の地方財政計画において、臨時財政対策債が前年度から3.7兆円減の1.8兆円となったことは、地方全体では財政の健全化が進んだものと認識しております。一方、本県の令和4年度当初予算案において、一般財源が91億円縮小するなど、本県財政を取り巻く状況が一層厳しさを増しています。
 今後、人口減少対策など地方が直面する課題に的確に対応していくためには、地方財政計画において必要な歳出を適切に計上し、臨時財政対策債を含めた実質的な一般財源の総額が確保されることが重要であります。その上で、個々の自治体に対する地方交付税の配分に当たって、その財源保障機能や財源調整機能が適切に発揮されるよう国に対し訴えていくとともに、行財政運営の構造改革の方策について検討してまいります。
〇菅野ひろのり委員 持続可能で希望ある岩手を実現する行財政研究会についてでございます。
 この行財政研究会開催の中で、県の行財政の構造的、中長期的な課題の分析、中長期的とよく発言されていますが、抜本的な行財政運営の構造改革の方策について提言をいただく旨と述べております。
 知事が、この研究会の提言に期待するところについて、まず伺いたいと思います。
〇達増知事 現在、県が直面する人口減少を背景とした一般財源規模の縮小は、静かなる地財ショックと言うべき状況であり、今後、中長期的な視点に立った対応が必要となるものであります。
 このような厳しい財政状況下においても、将来にわたって基本的な行政サービスを安定的に提供し、県民の福祉を増進していくためには、これまでの取り組みに加え、抜本的な行財政運営の構造改革の方策を早急に検討する必要があります。
 そのため、本研究会では、本県の行財政の構造的、中長期的な課題の分析等を通じた今後の人口構造を踏まえた歳入確保策や、あるべき歳出水準、財政目標の考え方について、地方行財政にすぐれた識見を有する有識者に、さまざまな見地から御議論いただくことを期待しております。
〇菅野ひろのり委員 次に、二つまとめて伺います。この研究会の提言、意見をどう反映していくつもりなのか。あわせて、研究会の人選、スケジュールは、どのような意図で進められて、今後どのような検討スケジュールを想定しているのか、予算編成にいつ、どのように反映するかなど、具体的にお伺いしたいと思います。
〇白水総務部長 本研究会におきましては、今後の人口構造を踏まえた歳入確保策やあるべき歳出水準、財政目標について御議論いただくこととしておりますが、その成果については、実施可能なものから、令和5年度以降の予算編成等を通じ反映していくこととしております。
 人選につきましては、現在調整中でございますが、地方行財政にすぐれた識見を有する有識者の方々にお声がけをさせていただいておりまして、具体的な構成員が決まり次第、発表する予定としております。
 スケジュールにつきましては、早ければ令和4年3月中に1回目の研究会を開催する方向で調整中でございまして、その後については、ことしの秋口をめどとして、その成果を取りまとめ、実施可能なものについて、令和5年度の当初予算編成に反映していくこととしております。
〇菅野ひろのり委員 先ほど病院と小学校の話が出ましたが、人選というのは、岩手県特有の状況を理解している方をしっかり交えていただいてお願いしたいと思います。
 私から最後に、東日本大震災津波関連事業について、2点伺います。
 復興事業の、ハード整備はほぼ完了してきた中において、私は、復興防災部という部の設置の意義は、農林水産部あるいは県土整備部が中心になって進めてきたハード事業、あるいは商工労働観光部が中心となって進めてきたグループ補助、金融支援等について、完了が見込まれる状態に進んでいるこの現状でこそ発揮されるものだと考えています。
 令和4年度は、東日本大震災津波からの復興施策として被災地の課題をどう捉え、何を重点的に実施する取り組みとして予算計上したのか、総括的に伺います。
〇戸舘復興防災部長 現在の被災地の現状認識と重点的に実施する取り組みということでありますけれども、これまでの復興の取り組みによりまして復興は着実に進展してきたわけでありますが、一方では、時間の経過に伴いまして被災者が抱える問題が複雑化、多様化しておりまして、被災者一人一人の状況に応じたきめ細かな支援や主要魚種の不漁、新型コロナウイルス感染症の影響を受けているなりわいの再生、震災の事実と教訓の伝承、発信に引き続き取り組んでいく必要があると考えております。
 こうした被災地の課題を捉えまして、現行の復興推進プランの最終年度であります令和4年度におきましても、このプランに掲げております4本の柱、安全の確保、暮らしの再建、なりわいの再生、未来のための伝承・発信に基づく取り組みを着実に進めていくための事業として令和4年度当初予算案に盛り込んだところでございます。
 まず、安全の確保では、防潮堤など建設中の社会資本の早期整備や、さまざまな広報媒体を活用した防災知識の普及、教員を対象とした研修会の実施等による防災教育の推進などに取り組んでまいります。
 暮らしの再建では、いわて被災者支援センターにおける被災者の生活の安定に向けた支援、岩手県こころのケアセンターやいわてこどもケアセンターにおける被災者や子供の心のケア、コーディネーターの配置等によるコミュニティー形成支援などに取り組んでまいります。
 なりわいの再生でありますが、大型で遊泳力の高いサケの稚魚生産等による資源回復や、新たな漁業、養殖業の導入を推進いたしますとともに、水産加工事業者が行うデジタル化や販路開拓等への支援、活動拠点を沿岸部に置く三陸DMOセンターと連携した観光振興などに取り組んでまいります。
 未来のための伝承・発信では、開館から3年を迎える東日本大震災津波伝承館を拠点とした震災の事実と教訓の伝承や、復興フォーラム、復興未来塾における復興支援に対する感謝と復興の姿の発信などに取り組んでまいります。
〇菅野ひろのり委員 次期復興推進プランの策定について伺います。
 沿岸地域の方々は、主要魚種がなかなかとれず、人口減少もあって本当に大変だと思っています。地域産業に与える影響、あるいは被災地特有の課題について継続した取り組みが何としても必要だと私は考えています。
 知事は、どのような方向性で次期復興推進プランの策定に臨むのか、今、被災地で最も必要な施策についてどのような考えか伺います。
〇達増知事 県では、いわて県民計画(2019〜2028)の長期ビジョンにおいて、東日本大震災津波からの復興を県の最重要課題と位置づけるとともに、具体的な施策については、第1期アクションプランである復興推進プランに盛り込み、復興の取り組みを進めているところであります。
 これまでの取り組みにより、復興道路の全線開通や商業施設や水産加工施設の再開など、計画されたハード事業の多くが完了したところであり、こうした復興の取り組みの成果を生かしながら、なりわいの再生などに引き続き取り組んでいく必要があります。
 一方、時間の経過に伴い被災者が抱える問題が複雑化、多様化しており、心のケア、コミュニティー形成支援などきめ細かな支援に取り組んでいく必要があります。
 また、東日本大震災津波を語り継ぐ日条例の趣旨にのっとり、東日本大震災津波の事実と教訓の伝承、復興の姿の発信を続け、風化を防ぎ、国内のみならず世界の防災力向上に貢献できることが重要であります。
 次期復興推進プランについては、これらの課題に対応する方向で策定する予定であり、政策推進プランや岩手県ふるさと振興総合戦略と連動させながら、諸施策を展開し、切れ目のない復興に取り組んでまいります。
〇軽石義則委員長 この際、昼食のため午後1時まで休憩いたします。
午後0時0分 休 憩
午後1時2分再開
〇軽石義則委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。次に、千葉秀幸委員。
   〔千葉秀幸委員質問者席に着く〕
〇千葉秀幸委員 午前中の菅野委員の質疑からバトンを受けまして質問させていただきたいと思います。
 まずは、現在提案されている令和4年度当初予算案には、東日本大震災津波からの復興やいわて県民計画(2019〜2028)の着実な進展のほか、今後、中長期的に取り組んでいく必要がある人口減少対策、それから、デジタル化の推進、グリーン社会の実現といった三つの重点テーマについても、非常に多くの新規事業が盛り込まれており、積極的な予算を組んでいるものと私は考えております。
 私からは、県全域にかかわるものとしてDXの推進、それから県北振興、そして最後に、県南地域においてはILC推進プロジェクトについてお伺いいたします。よろしくお願いいたします。
 まずは、DXの推進についてお伺いいたします。
 DXの推進に当たっては、まさに知事を筆頭に強力に現在推進されております。国においては、デジタル田園都市国家構想を推進するための交付金が今年度の補正予算において新たに創設されたところですが、この交付金についてお伺いいたします。
 今回のデジタル田園都市国家構想交付金は、岩手県の三つの重点テーマのデジタル化の推進に資するものであり、厳しい財政状況においては、国庫補助金を最大限に活用していくべきであり、まずは、全部局を挙げて国庫補助金で進めていくべきではないかと考えますが、今回のデジタル田園都市国家構想交付金の交付申請に当たって、どれだけ部局から事業への申請があったのでしょうか。
 また、県内市町村においても多く活用を促したほうがいいものだと考えますが、県内市町村のうち何市町村でデジタル田園都市国家構想交付金の交付申請に至ったのか、まずはお伺いいたします。
〇熊谷ふるさと振興部長 デジタル田園都市国家構想推進交付金の申請状況についてでございます。
 この交付金は、デジタルを活用した地域課題の解決等を支援するデジタル実装タイプとサテライトオフィスの整備等を支援する地方創生テレワークタイプの二つのタイプで構成されております。
 このうちデジタル実装タイプは、タイプ1からタイプ3の三つの区分があり、他の地域等で既に確立されている優良なモデル等を活用するタイプ1については、本年1月中旬に、国から事業実施に係る要望調査があったところでございます。
 また、データ連携基盤を活用し他のモデルとなり得る取り組みを支援するタイプ2からタイプ3につきましては、その詳細が改めて国から周知される予定となっております。
 次に、タイプ1の国への申請状況についてでございますが、県分につきましては、デジタル技術を活用した県民利用施設等の利用環境向上やデジタル技術を活用した農業の振興など9件、事業費で約4億3、400万円の事業計画を提出しており、関連する部局は9部局となっております。市町村分につきましては、10市町村で16事業、事業費で約6億6、700万円の事業計画を提出しております。
 地方創生テレワークタイプにつきましては、2町村の2事業、事業費で約2、500万円の事業計画を提出しております。
 今後、3月中に国の審査を受け、内示があった事業計画については、交付申請を行った上で、4月以降の交付決定が見込まれているところでございます。
 今後とも、国庫補助金、国費を最大限活用しながら、本県のDXを積極的に推進してまいります。
〇千葉秀幸委員 現在16事業だと理解いたしました。さらに多くの県内市町村が活用すべきだと思っておりますので、新たに創設した岩手県DX推進本部の枠組みも十分に活用していただきまして、市町村への積極的な促進等、よろしくお願いしたいと思います。
 この制度を個人的に分析してみた結果、一つの自治体当たり九つの事業に交付申請が限定されていることや、DXの推進に当たっては、システムの構築など複数年にわたる事業の取り組みが必要であることが当然にもかかわらず、今回の取り組みは単年度の予算措置であり、制度の恒常化が必要であること、また、デジタル田園都市国家構想交付金の交付申請に当たっては、令和4年度中のサービス開始が原則であり、地域のDX化に本当に貢献できるのか不透明であることなど、自治体にとってはかなり使いづらい制度となっているのではないかと思います。
 この点、全国知事会の農林商工常任委員会の委員長としても、産業DXやスマート農林水産業を進める観点から、より自由度の高い交付金制度とすることについて、知事会等を通じて提言することも必要と考えますが、いかがでしょうか。
〇達増知事 デジタル田園都市国家構想は、デジタル技術の活用により、地域の個性を生かしながら、地方を活性化し、持続可能な社会を目指すものとされており、その実現に当たっては、委員御指摘のとおり、地域の実情に応じた自由度の高い財源が必要であります。
 このため、全国知事会を通じ、昨年11月、デジタル社会の実現に向けて、この交付金について十分な規模の予算を確保するとともに、地方が地域の実情を踏まえて柔軟にデジタル投資を行える制度とし、地方の取り組みを強力に支援するよう国に要望したところであります。
 今回、国に3カ年の事業計画を提出したところでありますが、本交付金は、申請できる事業数に上限があること、初年度の事業費のみが対象となること、実証段階や開発段階の事業には活用できないこと、原則として令和4年度中のサービス開始が条件とされていることなど、その計画策定にはさまざまな調整を要したところであります。
 今後とも、国に対し、地方のデジタル化の推進のために十分な財源を確保するとともに、自由度の高い制度となるよう、全国知事会とも連携しながら継続して要望してまいります。
〇千葉秀幸委員 本県の限られた財源には当然限界がございますので、ぜひ幅広い活用を求めて、今後ともよろしくお願いしたいと思っております。
 今後の展開に当たっての最終形としては、エストニアの電子政府のように、デジタルが身近にあり、オンラインを通じて、いつ、どこにいても行政サービスが受けられるような環境をつくっていくべきだと考えております。
 そのような観点から、今後のツールとしてマイナンバーカードは有効な手段になり得ると思っており、マイナンバーカードを普及させ、県独自の活用により身近な行政DXを実現していけると考えております。
 関連しまして、現在の普及率について、全国都道府県と比較した岩手県の普及の状況はどうなっているのかについてお伺いいたします。
〇熊谷ふるさと振興部長 マイナンバーカードの普及状況についてでございますが、本年2月1日時点での県内の交付率は35.5%となっており、全国平均の交付率である41.8%を6.3ポイント下回っているところです。
 マイナンバーカードの普及に向けては、75歳以上の取得率が全国と比べ低いことや、カードの交付事務を行う市町村において、新型コロナウイルス感染症の対応等により、出張申請受け付けや申請サポートに対応する職員体制の確保が困難であるとも伺っており、そうした課題があると認識しております。
 このため、市町村とのオンラインでの意見交換を随時行い、市町村における課題等の把握や取り組みの共有を図っておりますほか、出張申請受け付けや申請サポート等に必要な経費に対する補助制度のさらなる活用について呼びかけております。
 また、来年度におきましては、こうした取り組みに加え、新たに民間通信事業者や地域の団体と連携し、高齢者などを対象としたマイナンバーカードやマイナポイント取得等の手続に係る講習会や相談会を開催するなど、マイナンバーカードの普及に向けた取り組みを強化してまいります。
〇千葉秀幸委員 岩手県は35.5%と全国平均より下回っているというお話をいただきましたが、まだまだ普及が思うように進んでいないということがわかりました。
 今後どのように普及させるか県として対策をとる必要があると思います。まずは、メリットをしっかり県民に伝えることが重要であります。特に、国においては、マイナンバーカードの普及に当たって、カード取得に対して5、000円、それから、口座との連携で7、500円、健康保険証としての活用に7、500円といったポイントを付与することによって、地域経済の活性化を図りつつマイナンバーカードの普及をしていくこととしておりますので、この際、本県でも、コロナ禍で冷え込んだ経済の活性化とひもづけて普及を図っていくことを期待しているところでございます。
 現在、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金も30億円ほど余っておりますし、もちろん今後の対策にとっておきたいということも私は理解いたしております。しかしながら、ただとっておいて、最後は、ただ現金支給といったばらまきに近い形になるよりも、マイナンバーカード取得に県が上乗せ補助をして、マイナンバーカード普及と抱き合わせの普及策で新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用することも一つの有効策だと考えておりますが、御所見をいただきたいと思います。
〇熊谷ふるさと振興部長 今後どのようにマイナンバーカードを普及させていくかという観点について、さらにちょっとお話しさせていただきますが、現在、医療機関での健康保険証としての利用、それから、将来におきましては運転免許証との一体化、お薬手帳の電子化など、多くの場面でマイナンバーカードが必要になることを県民の皆様に周知してまいりたいと思っております。
 先ほど、高齢者の方々の取得率が低いというお話をさせていただきましたので、高齢者の見守りサービスとしての活用でありますとか、コミュニティバス利用の際の活用など、県内の活用事例、さまざまな優良事例がございますので、そういったものも情報発信することによりまして、委員からお話のあったマイナポイントの付与という新しく付加される部分もありますので、そうした部分も含めて、メリットを感じる取り組みの拡大といった観点でさまざまな普及活動をしてまいりたいと考えております。
〇千葉秀幸委員 ぜひとも、全国的にもおくれをとらないように、取り組み、施策を含めて御検討いただきたいと思います。
 次に、県北振興についてお伺いいたします。
 北岩手は、令和4年度当初予算案において、県が重点テーマの一つとして位置づけたグリーン社会の実現に関して、豊富な再生可能エネルギー資源を保有した森林、林業、木材産業が県内において最も発達しているなど、県勢発展のために重点地域とも言えるところだと考えております。
 また、昨年には、北海道・北東北の縄文遺跡群が世界遺産に登録されるなど、観光資源としての魅力にもあふれていることを鑑みれば、県央地域や県南地域、沿岸地域といったそれぞれの地域が持つ魅力にも負けない大きなポテンシャルを秘めているものと考えています。
 今後、将来にわたって魅力ある県北振興を推進していくためには、構築した組織体制や仕組みづくりを充実させていくことはもちろんのこと、北岩手が持つ地域資源の特性をしっかり捉えた具体的な事業やアクションをとること、そのための財源をしっかり確保することが、中長期的に一貫した県北振興を進めていくに当たって、そこに携わる人たちの将来見通しに安心感を与え、県としての県北振興への着実な成果を上げていくことにつながると考えております。
 このような観点から、北岩手の魅力のさらなる磨き上げを図るため、御所野遺跡の世界遺産登録を踏まえた県としての今後の取り組みや展開、そして、森林、林業、木材産業を生かした取り組みについてお伺いしていきたいと思います。
 御所野遺跡については、北岩手が誇る大きな魅力的資源と考えており、県は、平泉の文化遺産、明治日本の産業革命遺産、北海道・北東北の縄文遺跡群の三つの世界遺産のネットワークを構築し、人的、文化的交流を促進していってもらいたいと思っております。
 御所野遺跡は、平泉の文化遺産など特定の地域が定まっている場所とは異なり、複数の文化遺産を束ねる形で世界遺産となっている明治日本の産業革命遺産、北海道・北東北の縄文遺跡群などの個々の箇所については、人々の印象や興味が薄まってしまい、せっかく世界遺産になったにもかかわらず、観光客も余り集まらず、地元市町村や事業者にとっても恩恵が受けられないといった状況も想定されます。
 そこでお伺いしますが、ほかの文化遺産には負けないぐらいの観光客に御所野遺跡へ訪れていただくためには、どのようにして、ほかの地域との差別化を図っていくのか、広域的な視点に立って、特に観光客誘致の視点から民間の観光事業者と連携した取り組みが必要と考えていますが、県ではどのようにお考えでしょうか。
 また、その際、厳しい財政状況下において、民間資金の活用など自走していくための仕掛けが必要と考えますが、県の御所見をお伺いいたします。
〇保副知事 御所野遺跡は、北海道・北東北の縄文遺跡群の南の玄関口に位置しておりまして、その特徴としては、肌で縄文の暮らしを感じることができるオープンエアの公園にある竪穴住居などの遺跡、それから、プロジェクションマッピングを備えた縄文博物館が併設されていることで、他の縄文遺跡にはない特徴を持っております。
 こうした特徴をうまく生かすという意味でも、これまで、他に負けないという意味で、県北地域を代表する浄法寺漆の伝統工芸品ですとか、あるいは地域の日本酒、雑穀、果実などのさまざまな観光資源を組み合わせて、これらを生かした旅行商品の造成や国内外への情報発信に取り組んでおります。
 来年度は、世界遺産登録1周年を契機とした誘客イベント、あるいは北東北3県による大型観光キャンペーンが夏場にございますが、そこに縄文遺跡をテーマとして入れ込むような取り組みを、JR東日本とか青森県、秋田県とともに連携して、さらなる誘客を図ってまいります。
 これまで地元で御尽力されてきました御所野遺跡を支える会や御所野愛護少年団の活動は、大変すばらしいものと思います。こうした中から、縄文の直接の体験ができるという特徴も、教育旅行などにも大いに活用できると考えております。そういった幅広い視野で、来年度は、地元市町村、観光協会、さらに民間事業者などとも連携して、データマーケティングを活用し地域の観光戦略を策定したいと考えております。そのようなことでこの推進を図ってまいりたいと思います。
〇千葉秀幸委員 今御説明いただいた取り組みに合わせて、クラウドファンディングあるいはスノーピーク等も活用しながら、御所野遺跡等への観光誘致、そして民間が恩恵を受けられるよう、発信も含めて、引き続き取り組みをお願いしたいと思っております。
 県北地域の森林、林業、木材産業を生かした取り組みについて伺います。
 県北地域は、岩手県内においても有数の森林、林業地域であり、再生可能エネルギーのポテンシャルは県内でも群を抜いていると思っております。本州一の森林面積を誇る岩手県において有数のポテンシャルということは、日本でも有数だと考えております。
 そのような県北地域の持つポテンシャルをこれからも維持していくに当たっては、継続、一貫した森林等の整備が必要になってくると考えております。
 そのような中、岩手県において、水源の涵養、県土の保全等の森林の有する公益的機能の維持、増進及び持続的な発展のため、平成18年から県独自にいわての森林づくり県民税を課税しております。
 まずは、本県民税の活用について、令和2年度の決算ベースで、県内全域での活用額、県北地域における割合、本県民税の基本残高についてお伺いします。
〇保副知事 いわての森林づくり県民税は、ハード事業でございます公益的機能の高い森林へ誘導する間伐を行いますいわて環境の森整備事業、それから、ソフト事業でございます地域住民などが主体となって里山などの間伐などを行います県民参加の森林づくり促進事業の二つが大きな柱になっています。
 したがいまして、その別に申し上げたいと思いますけれども、令和2年度の決算額は、まず、ハードのいわて環境の森整備事業では4億7、842万円余、このうち県北地域は6、746万円、割合は約14%でございます。県民参加の森林づくり促進事業のソフトのほうは、総額で1、333万円余、うち県北地域は123万円余で、割合は約9%でございます。
 また、令和2年度末の基金残高は24億8、605万円余となっております。
〇千葉秀幸委員 今、数字をお示しいただきましたが、私は、県北地域では、森林整備等に係る県民税の活用額について、森林面積と比較して相対的に低いのではないかと考えております。
 また、毎年度、県民の方々から基本的には1人1、000円、合計で7億円を超える税金をいただいている中において、約3年分に当たる23億円程度が余っている状況は、令和6年度から全国的に森林整備を始めていく観点で、森林環境税が全国民から徴収されることに鑑みれば、岩手県民は二重での負担を強いられているのではないでしょうか。また、その結果、十分にその目的を果たしていないのではないかとの疑問が県民の方々から挙げられていることも、仕方ないのではないかと考えます。
 加えて、これから本格的なゼロカーボンを目指す時代が到来いたします。このような時代の変化に応じて、森林保全や整備が持つ意味合いも変わってくるかと思っておりますが、県北地域を初めとしたグリーン社会実現のために、特に県北地域を念頭に再生可能エネルギー導入等に係る経費に対しても、県民税を活用してしっかりと県北振興に資する財源を確保すべきだと思っております。
 そこでお伺いいたしますが、これらも踏まえて、県北地域の豊かな森林を今年度においても守っていくという県民税の本質に照らし合わせ、また、約3年分の税金を使うことなく余していることに鑑みれば、県北地域における森林関連産業の創出、グリーン社会の実現に資する施策の展開、人口減少対策に当たって県民税の活用を検討すべきではないでしょうか。ぜひとも前向きな答弁をお願いいたします。
〇保副知事 まず、いわての森林づくり県民税の基金残高にかかわってでありますけれども、当初計画したとおりに事業ができない、特に間伐のハード事業ができないということで基金の残高が高くなっているわけです。これは、近年、国産材の需要拡大が急激に起こったために、間伐ではなくて主伐のほうに作業員がとられるということで、間伐の作業員を確保することが困難な状況があったこと、それから、この県民税の対象が民有林のうちの人工林ということで、作業を進めるための対象となる森林がだんだん奥地のほうに行って、なかなか難しくなってきているというような事情もありまして、計画どおり事業が進まずいわての森林づくり県民税の基金残高が増加しているという事情があります。
 ただ、このハード事業は、間伐をきちんとやることで、次の植栽とか二酸化炭素の吸収といった地球環境の問題にも十分に貢献できるということですので、このハード事業は、非常に大事にしていきたいと思っております。
 いわての森林づくり県民税は、第4期ということで、今年度からまた新たにスタートしたわけですけれども、これまでやってきた取り組みに加えまして、今までやっていなかった公益上重要な伐採跡地への植栽をやることにしたこと、それから、新たに台風等で気象災害を受けた森林を、その後きれいに整備するというようなことにも取り組むことにしたところでございます。いわての森林づくり県民税の第4期の最終年は令和7年度ですけれども、こうした取り組みを進めることで、基金残高は大きく減少すると見込んでいるところでございます。
 今、いわての森林づくり県民税の第4期がスタートしたばかりということで、まずは、こうしたことを着実に実施したいと考えておりますが、委員から御提言いただきました森林関連産業の創出ですとか人口減少対策に使えないかといった切り口は、近年、特に期待されるというようなさまざまな御意見もあります。この県民税の趣旨、目的の見直しをどうするか、これは条例改正も必要になりますので、県民の皆様を初め、県議会、市町村の御意見などもお聞きしながら議論を深めていきたいと考えております。
〇千葉秀幸委員 徐々に枠組みが広げられているというようなお話をいただいたわけですが、これまでも県民税のCMあるいはチラシの制作等、広告等に幅広く活用されているので、さきの一般質問で柳村議員が取り上げていたとおり、もっと活用の幅を広げてもいいのではないかと思っております。
 その了解をいただくものに、先ほど条例というお話もございましたが、加えて、いわての森林づくり県民税事業評価委員にも諮っていくのだと思っております。もちろんその事業評価委員会も大変大事であると私も思っておりますが、我々県議会でも、私以外からも声が上がっている観点から、県議会の声もより一層重要視していただきたいと思いますが、それらも含めて、改めて御所見をいただきたいと思います。
〇保副知事 先ほど委員から、国の森林環境税の導入ですとか、二重に取られているのではないかというお話もありました。私どもとしては、せっかく県民の皆さんからいただいている以上、両方とも非常に効果があるという評価がいただけるように、議員の皆様の御意見も十分いただきたいと思いますので、そういったことを含め検討してまいります。
〇千葉秀幸委員 もちろんいわての森林づくり県民税の活用方法については、これまでの経緯等もあることから、きょう、あすにでもその活用を変えることは難しいことは私も理解しております。ただ一方で、先ほど質問させていただいたDXの推進もそうでございますが、現代においては、日々刻々と状況が変わっている中で、いかにそのような変化を捉え、そして臨機応変に動いていくかが重要と考えますので、よろしくお願いします。
 それでは、最後にILC誘致についてお伺いいたします。
 ILC計画については、国内外の提案者コミュニティーが、日本への誘致を前提として議論を始めてから約10年が経過いたしております。そのような中、文部科学省はILC誘致推進に向け、ILCに関する有識者会議を立ち上げ、これまで諸課題の検討を重ねており、令和4年2月14日に公表された第2期ILCに関する有識者会議の議論のまとめでは、ILC本体に関する国際費用分担等の見通しは立っておらず、また、国民及び科学コミュニティーの支持も十分と言える状況にはない中において、ILC準備研究所のプロセスに進むことについて国民の支持を得ることは困難であると考えられることが示されました。また、現状では、政府によるILC本体の日本誘致への関心表明を前提として、ILC準備研究所への移行について判断することは時期尚早と見解が示されました。
 私は、学術的価値や技術的な取り組みの進展は認められてきたものの、2014年に始まった第1期からさほど変わりがないのではないかという認識を持ったわけですが、本県に誘致を望む達増知事に、先日のILCに関する有識者会議の評価を伺いたいと思います。
〇達増知事 ILCに関する有識者会議は、前回、平成30年7月に議論をまとめ、同年12月には日本学術会議が所見を示しており、その後約3年間の研究者の取り組み状況等を確認し、ILC計画に関する諸課題の現状等を専門的見地から整理することを目的として、昨年7月に再開されました。
 ILC準備研究所提案書等の内容や研究者との意見交換、文部科学省からの国際動向等の情報を踏まえて、委員御指摘のような見解を取りまとめるまでには、関係国政府間の議論の進展につながるよう、今後の研究者の取り組み方向等についても具体的に議論されたものと受けとめております。
 高エネルギー加速器研究機構は、この見解を受けて、ILC準備研究所にかわる枠組みを構築するなどの上、今後、重要な技術開発とILC実現に向けた国際的な機運の醸成を図り、国内でも基礎科学分野の世界的な研究所を設けることの意義などについて理解促進の活動を強化していくこととしており、県として、引き続き研究者の活動を支援してまいります。
 また、ILCに関する有識者会議では、研究者に全て任せるのではなく、社会全体、政府全体で取り組む必要などの意見もありました。平成25年9月の日本学術会議の最初の所見から8年6カ月が経過しております。政府には、日本が世界的に高いプレゼンスを有する基礎科学分野のさらなる発展を目指し、前向きに取り組んでいただきたいと考えます。
〇千葉秀幸委員 岩手県においては、令和4年度当初予算案に1億1、000万円の予算を組み、その内訳の多くが、研究者が企業に技術指導ができるように、岩手ILC連携室オープンラボの県内企業による試作品を評価する機会を整備しようとしております。
 国が実現に足踏みする中、本県は、岩手ILC連携室オープンラボの活用に予算を投資しておりますが、これにより本県に期待される効果とこれを契機に機運醸成につなげていくことを期待するものでありますが、所見を伺いたいと思います。
〇高橋ILC推進局長 県では、県内企業の加速器関連産業への参入を促進するため、平成27年に産学官でいわて加速器関連産業研究会を発足、平成30年には、クライオモジュール等を展示した岩手ILC連携室オープンラボを開設し、加速器の試作、開発に係る実技講習や専門知識を有するコーディネーター等による企業支援に取り組んでおり、岩手ILC連携室オープンラボの見学者も延べ2、000名を超えております。
 県内企業による技術開発の取り組みが着実に進展しておりまして、次世代放射光施設関連の受注等に成果があらわれています。昨年9月には、ILCの陽電子源装置に関するKEK―高エネルギー加速器研究機構と県内企業の共同開発も始まっております。
 国内では、加速器研究施設の増強計画が続く見込みであり、また、今般、KEKは、関係国の研究機関が連携して加速器の研究開発を行い、重要な技術開発とILC実現に向けた国際的な機運の醸成を図るとしています。
 来年度当初予算案には、岩手ILC連携室オープンラボでの試作品の性能評価やウエブ会議等に要する機材の整備費を計上しており、研究者による技術指導やオンラインでの交流を通じた県内企業の技術力向上、高校生等の見学、体験などによる人材育成や国内外への情報発信の拠点として、産学官が緊密に連携し、県内企業の技術指導や普及啓発、ILC誘致実現の機運醸成に取り組んでまいります。
〇千葉秀幸委員 終わります。ありがとうございました。(拍手)
〇軽石義則委員長 質問席の消毒のため、しばらくお待ち願います。
 次に、米内紘正委員。
   〔米内紘正委員質問者席に着く〕(拍手)
〇米内紘正委員 それでは、予算特別委員会総括質疑に入らせていただきます。
 まずは、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい始めてから約2年が経過しました。この間、御対応いただきました医療関係者の皆様、行政職員の皆様、あるいは関係各位の皆様に心より御礼申し上げます。
 また、世界においては、ロシアのウクライナへの侵攻という許されざる行為によって、先の経済情勢は全く見通せない状態となっております。不確実性の高い今、行政においても機動力の高い、また臨機応変に対応できる組織のあり方が必要になってくると思います。そういった観点から質問に入ってまいります。
 まずは、県の予算編成の考え方について質問いたします。
 岩手県の財政は、中期財政見通しの中で示されているとおり、人口減少に伴う地方交付税の減少などにより実質的な一般財源が縮小することで、今後一層厳しい財政状況が続くことが見込まれております。
 本県の令和4年度の予算編成における考え方については、令和3年9月28日付の通知で、政策的経費については、政策評価結果等を踏まえ、東日本大震災津波からの復興及びいわて県民計画(2019〜2028)における10の政策分野を踏まえた具体的な取り組みに留意し、政策の優先度に応じた財源の最適配分を図り、一層の選択と集中を進め、限られた財源の重点的かつ効果的な活用に努めてくださいとの指示が出されております。
 今回の予算特別委員会総括質疑を通して、選択と集中について深掘りしていきたいと思っております。
 まずは、先ほどの通知で記載されております政策の優先度に応じた財源の最適配分と一層の選択と集中がどのようなプロセスにて推し進められているのかお示しください。
〇達増知事 令和4年度の予算編成では、人口減少社会への対応、デジタル化による地域課題の解決、グリーン社会の実現の三つの重要テーマに沿った事業を検討することや、政策評価結果等を踏まえ、ゼロベースで事業の必要性と優先順位を見きわめ、重点化を図ることなどを予算要求の基本方針として示しました。
 また、毎年度公表する中期財政見通しで見込まれる収支ギャップを踏まえ、一層の選択と集中を図り、限られた財源の重点的かつ効率的な活用を進めるため、予算要求の段階でシーリングを設定するとともに、事務事業評価の活用により、効果的、戦略的に事業を進めるためのスクラップ・アンド・ビルドを進めました。
 さらに、新たに設定した三つの重点テーマを推進する事業については、予算要求に当たり要求額の上限は設けず、所要額での要求を認める政策・プロジェクト推進費を積極的に活用し、重点措置するなど、選択と集中を図ったところであります。
〇米内紘正委員 今の知事の答弁の中で一つ確認したいのですけれども、新規の事業は置いておいて、既存の事業に関しては、事務事業評価に基づいて選択と集中がなされる。事務事業評価を基礎にして、その上で選択と集中がなされるという理解でよろしいでしょうか。
〇達増知事 事務事業評価の活用により、効果的、戦略的に事業を進めるためのスクラップ・アンド・ビルドを進めたということであります。
〇米内紘正委員 ありがとうございます。事務事業評価の積み重ねが、その先の選択と集中につながるということで理解したところであります。
 次に、評価結果の反映について質問させていただきます。
 令和4年度予算要求、調整要領についての総務部長通知には、政策評価及び事務事業評価の結果を予算調整に反映し、予算調整事務の合理化を図ることとありますが、どのように予算調整に反映されたのか伺います。
〇達増知事 先ほど答弁したプロセスを予算調整に反映させた結果、評価対象である925事業のうち、廃止、休止及び縮減とした事業は73事業、縮減額は、事業費で23億6、000万円、一般財源ベースで10億円を超え、この捻出した財源を活用して、人口減少社会への対応、デジタル化による地域課題の解決、グリーン社会の実現の三つのテーマに重点的に配分したところであります。
 今後におきましても、事務事業評価等の活用により所要の財源を捻出し、いわて県民計画(2019〜2028)や三つの重点テーマなどの推進に向け、めり張りある予算編成に努めてまいります。
〇米内紘正委員 事務事業評価に基づいて行われたということですが、いただいた政策評価の資料の中で、事務事業評価結果と反映結果に相違が生じた事業が198事業あるとありました。925分の198ですから、2割以上が、事務事業評価とは違うけれども予算状況に反映されたというようなものですが、これについてはどう理解すればよろしいでしょうか。
〇石川政策企画部長 全体の政策評価の中でいいますと、いわて幸福関連指標の下に具体的推進方策指標があり、事務事業評価がございます。また、今お話があったそれぞれの事業の成果目標を総合的に組み合わせまして、各部局で翌年度の事業をつくり上げ、翌年度の予算編成という形で組み上げているものでございます。
〇米内紘正委員 総合的に評価というのは、誰が、どういうものでするのですか。所管部局でするのですか。
〇石川政策企画部長 一義的に、最初に各部局で検討いたしまして、各部局との調整、それから総務部との調整の中で決めていくという形になります。
〇米内紘正委員 各部局の対応になっているかと感じます。925事業のうち198事業が事務事業評価と反映結果に相違が生じた、全く反映されていないところでありますけれども、縮減、廃止、休止が73事業、拡充が41事業、新規が80事業で10億4、000万円の一般財源を縮減しましたということで御答弁いただいているのですが、これを一つ一つ細かく見ていくと、本当にこれは廃止、休止されているのかなというものがたくさんあるのですね。
 ここは個別の追及はしませんけれども、例えば、いわての文化国際化推進事業費570万円が廃止、休止になっているのです。廃止、休止になって、いわての文化国際交流推進事業費650万円になっているのです。これは、県の説明では、基本的に名前が変わっただけのものは継続とするようにとなっているのですが、これで廃止、休止したという判断になっているのです。これは、復興アーカイブの映像配信の分が90万円上乗せされて、多分、それが完全新規ということで、合わせて完全新規の事業になっていると思うのですけれども、これは手段としては全くそのルールに従っていないというか沿っていないやり方だと思うのです。こういうものがいっぱいあるのです。いわて地域担い手育成支援事業費と高校の魅力化促進事業費が休止、廃止になっているのですが、いわて高校魅力化・ふるさと創生推進事業費にほぼ合計額みたいなものが載せられていたりします。
 そうすると、この10億4、000万円削減されたというのは、ただの数字遊びというか、そう見えてしまっても仕方がないかと思うのですけれども、ここのところにどういう政策評価、事務事業の評価がかかわっていたのでしょうか。
〇石川政策企画部長 県でさまざまな事業を持っているわけでございます。その中には、新しい事業に統合したような形での休止、廃止といった取り扱いもあろうかと思いますが、各部局で、政策評価の結果を見まして、次年度以降どのような形でそれを進めていくのか、事業目的に立ち返って検討し、つくり上げていると考えております。
〇米内紘正委員 全く中身のないものなのですけれども、事業評価に立ち返るというか、どう立ち返って―立ち返っても、結局2割以上の指標は評価に関係なく反映されてしまうわけです。政策評価レポートのところでも、現在の事業内容では効果が上がらない等の理由により、抜本的な見直しを行い、新規事業を立ち上げて対応しようとするものを廃止、休止となっているのです。でも、多分これを細かく見ていくと、全然抜本的見直しではなくて、これまでの事業を継続して、ちょっと名前を変えて廃止、休止にしましたというような事業がたくさんあると思うのです。
 これで事務事業評価が機能していると言えるのかどうか。最後は何となく部局の主観になって判断していると思うのですけれども、そこで政策企画部長が、いや、これは違う、この評価はどうなのだ、この事業は効果が上がっていないじゃないかという議論がなされているのでしょうか。
〇石川政策企画部長 政策評価後の予算編成に当たりましては、各部局でそれぞれ事業の見直しを行い、その上で政策企画部、総務部、そういった形でのやりとりを通して次年度の事業が組み上がってまいりますので、単に各部局の一存で決まっていくものではございません。
〇米内紘正委員 その見直しが、どういうプロセスで行われているかを知りたいのです。明らかにしてほしい。
 その先の質問にも入っていきますけれども、来年度の指標についてです。政策評価を行う上で指標の存在はもちろん欠かせないのですけれども、指標の適切な項目設定及び数値設定が、より確度の高い政策評価につながると考えています。
 一昨年、令和2年12月定例会の一般質問にて、新型コロナウイルス感染症の影響による指標の見直しがあるか伺ったところ、当時の政策企画部長より、いわて県民計画(2019〜2028)や第2期ふるさと振興総合戦略における新型コロナウイルス感染症の対応については、環境変化などを的確に捉えながら、必要に応じて政策推進プランの内容や戦略を見直すなど、弾力的に対応していく考えとの答弁をいただきました。
 来年度の事業における指標についてもさまざまな修正が行われておりますけれども、それらは新型コロナウイルス感染症の影響という理解でよろしいでしょうか。
〇石川政策企画部長 今回の具体的推進方策指標の変更についてでございます。令和4年度の目標値を令和2年度で達成したことによる上方修正も幾つかございますが、新型コロナウイルス感染症の影響による事業の延期や縮小、中止などによる目標値の下方修正やリモートによる研修会やSNSを活用したイベントのオンライン配信など、感染症対策の一環として始めた県の取り組みの効果を把握するための目標値の上方修正など、委員御指摘のとおり、主に新型コロナウイルス感染症の影響によるものと考えております。
〇米内紘正委員 確かに、見直したほうがいいとは言ったのですけれども、それは、オンライン対応等ができるものに対して、それも含めるべきではないかということで、ただ単に数字を実績に合わせて下げました、上げましたというのは、何のためにあるのかと。
 例えばですけれども、県産農林水産物の高付加価値化と販路の開拓・拡大・推進の目標として、6次産業化による販売額という具体的な推進目標があるのです。この指標自体はアウトカムをはかるいい指標だとは思うのですけれども、2016年の実績が303億円、2019年、コロナ禍前が320億円なのです。この目標値が350億円ぐらいだったと思うのですけれども、それが2020年で303億円と2016年ベースまで下げられてしまっているです。
 これは本当にコロナ禍の影響―コロナ禍で外食産業とかは影響がありますけれども、いろいろ見てみたら、食料品の輸出額は過去最高を記録したり、そこの販路を拡大するのがこの事業の目的なのかと思うのです。こういったものをコロナ禍の影響だと言えるのかどうか。コロナ禍の影響なく下方修正したものはないですか。
〇石川政策企画部長 ただいまの指標も含めまして、今御指摘があった指標が手元に見つからないのですが、いずれ、先ほども申し上げましたとおり、新型コロナウイルス感染症の影響を各部局に確認し、その後、指標の見直しが必要かどうか、指標の置きかえが必要かどうかといった検討をしたところでございます。
〇米内紘正委員 各論のところは通告していないので、そこに対する問いではなくて、全体として、一体どういう下方修正なのか、単なる下方修正だったり単なる上方修正が、最初に指標を設定したときから何の理由もなくなされたら、それは最初に言った政策評価という土台がぐらつくことになりますから、絶対にそれは土台がしっかりしていなければいけないと思うのです。
 では、次の質問です。今の指標の見直しについてです。
 指標の見直しに当たって、現状維持、上方修正、下方修正、置きかえという措置がとられているのですけれども、これは、政策企画部としては、どのようなルール、条件を各部局に課したものなのでしょうか。
〇石川政策企画部長 指標の見直しのルールについてですが、具体的推進方策指標につきましては、令和2年度実績をもとに、新型コロナウイルス感染症の影響も踏まえ、見直しの必要性の有無、見直しが必要な場合に、目標値を修正するのか指標そのものを修正するのか等について、各部局と協議を重ね、178指標について修正したところでございます。
 具体的には、コロナ禍を契機にかわりの取り組みや工夫を行っている指標、計画最終年度の令和4年度の目標を前倒しで達成する指標、累計指標で令和2年度の実績がないこと等により、令和3年度以降に影響が生じる可能性がある指標、それから、コロナ禍の長期化により、令和3年度以降の実績が低調となる可能性がある指標といった考え方を各部局に示しまして、取りまとめたところでございます。
〇米内紘正委員 そういう動きをするといわて県民計画(2019〜2028)というのは形骸化します。というのは、各部局がいう、これは低調だから下げたり、これはいいから上げたりとして、結局、最終的にAとかBが同じ割合生まれるわけです。一定のルールなしに自由自在に指標を変えて、それに基づいて選択と集中ができるわけがないです。
 普通はルールを決めるわけです。例えば、私が調べたら本当にいろいろありました。保健福祉部では、精神保健基礎研修参加者数、オンラインを含むという変更があって、指標は変更前のままなのです。数字はいじっていない。ただ、オンラインを含むとした。自殺予防の担い手養成研修受講者数もオンラインを含む、指標はそのままいじっていない。
 でも、ほかのところは、食の安全・安心に関する講座型リスクコミュニケーションの延べ受講者数とか適正飼養講習会受講者数は、オンラインを含むもなく、ただの下方修正だったり、あるいは地域おこし協力隊を対象としたセミナー参加者数は、オンラインを含むにして上方修正にしてみたり、とにかく、もう指標ごとに自由自在に変えてしまっているのです。自由自在に変えて、これに対して来年、再来年にAです、Bですと言ったところで、それは実績に合わせてそうなるようにしたのだからそうなるでしょう。それによって選択と集中をどうやってはかってきたのか。最初にプロセスを聞いたのはそういう理由なのですけれども、どうですか。
〇石川政策企画部長 ただいま委員から御指摘ありましたけれども、政策指標を考える上で、県民の方々からそういった御指摘を受けないような形で検討することが大前提だと思います。
 また、新型コロナウイルス感染症の関係でいいますと、例えば、影響を受ける指標の種類と取り扱いという形で各部局に指示をしておりまして、例えば、コロナ禍ではなじまない指標、若者関連文化イベント来場者数ということになると、新型コロナウイルス感染症の影響を思い切り受けますので、そういったものについては、具体的推進方策指標の追加、変更を行うということで、参加者数、オンラインを含むというような変更をするイメージという形で取り扱いを指示しております。
 また、今年度の実績が誘因となり目標の達成度に翌年度以降も大きな影響が見込まれるような指標につきましても、例えば、スポーツ大会とか、合宿とかイベントの参加者数の累計については、目標値の下方修正をしようという場合に当たっても、新型コロナウイルス感染症収束後のV字回復の可能性なども考慮して設定することというような指示をしております。
〇米内紘正委員 ルールが多様過ぎて、もうルールじゃないです。全然一貫性がないので、多分それぞれ部局の言ったとおりに修正したのだろうと見ていて思います。
 知事にお聞きします。知事は、この前の一般質問の答弁でも、これからの時代はバックキャスティングが大切だ。最初に目標を決めてから、そこから逆算していって、今どう、何を達成しなければいけないのだということを考えていかなければいけないというようなことをおっしゃっていたと思うのですけれども、この指標のあり方は、そのバックキャスティングに真っ向から対立する、場当たり主義的な、目の前の数字に合わせてやってしまうみたいな感じなのですが、その辺はどうお考えでしょうか。
〇達増知事 今のやりとりにありました、人を集めるようなイベントの集まる人数を目標にしていたものを、新型コロナウイルス感染症が続いているので、それをそのままにしておきますと、目標を達成するには無理に人を集めなければならないことになるわけです。常識的に考えて、新型コロナウイルス感染症が流行しているのだから、そういうときには、人を集める目標数値にはこだわらなくていいのだという暗黙の了解で、指標をそのままにしておくという手もあるのかもしれませんが、できるだけ明確にするために、オンラインを含むということで、これは実際に集めなくてもいい。ただ、新型コロナウイルス感染症が流行しているからといって、多くの人に伝えなくていいということでもないので、そのかわり、オンラインを活用して、オンラインで数を稼げという数値目標、指標に変えるのは、行政の指針のあり方としては合理的なやり方かと考えております。
〇米内紘正委員 論点が違っていて、オンラインを含むことには私は賛成です。それは私も、オンラインを含めるようにしたほうがいいと言いました。オンラインを含めた上で指標がばらばらになっている。例えば、これまでどおり一定の指標でやっていれば、オンラインを含めたことによって、オンラインでは人が集まりづらかったな、オンラインをやることによって人が集まったなという変化がわかるのですけれども、それを実績値ベースに変えたり、やっていなかったものをゼロ換算して累計に足してしまったり、累計にそのまま盛ってしまったりすると、結局、指標は何の意味があるのか。だったら、もう指標は要らなくないかという議論であって、そこを暗黙の了解とかそういうものでやると、それを土台に選択と集中ができるのかどうかというところを知事にお聞きしたいと思っています。
〇達増知事 ですから、新型コロナウイルス感染症の流行の実態に合わせて、あるべき姿に数値を変えていくことは、むしろやったほうがいいのではないでしょうか。
〇米内紘正委員 実績がベースになっているから、あるべき姿になっていないのです。あるべき姿というのは、どこで議論されているのかわからないです。だから、あるべき姿というのが最終的に、これは後からでもありますけれども、それが明確に示されていれば、だんだんバックキャスティングで考えていけるのですが、そこがまずぐらついてしまっているのです。
 次の質問に入りますけれども、その指標の整合性についてであります。
 県が掲げる成果を重視する行政の推進の観点においては、評価対象事業に設定された成果指標の妥当性が重要になりますけれども、県で実施している事務事業評価においては、活動指標をアウトプット、そこから得られる成果指標を初期アウトカム、その結果得られる中間アウトカムを具体的推進方策指標として設定して、最上位に幸福関連指標があると思っております。
 例えば、各指標が最終的な目標に結びついているかどうかを考えるところで、昨年の包括外部監査でも指摘されていたのですが、今回、これだけではないです。もっといっぱいあったのですけれども、環境生活部の自然保護関連の事業で、鹿やイノシシなどによる農作物被害軽減を目的とした指定管理鳥獣捕獲等事業費、あるいは三陸ジオパーク活用強化事業費などにおいて、指標の事業目的と成果指標の整合性が問われています。
 最初の指定管理鳥獣捕獲等事業費では、具体的推進方策指標に鹿の捕獲頭数が掲げられているのですけれども、この鹿の捕獲頭数というのは、捕獲頭数がふえれば幸福関連指標、幸福につながりますかというところを根本的に考えたとき、本来追うべきアウトカムは、鹿の捕獲頭数ではなくて、農業被害額の軽減や列車とか車の事故の軽減であるだろうと思います。どんなに鹿の捕獲頭数が伸びたところで、鹿がそれ以上にふえていたり、全く関係ないところで鹿をとっていたら、県民の幸福にはつながらないわけです。その辺で、これは成果指標ではなく、ただのアウトプットだと指摘されている。
 三陸ジオパーク活用強化事業費では、目的は三陸の復興、津波防災等の国内外への情報発信、来訪者の受け入れ態勢の完備でありますけれども、指標として設定されているのは、学習会、講演会、シンポジウムへの参加者、あるいは三陸だよりの受信者数。これで3、100万円の予算があったのですけれども、このうち2、400万円が看板製作費に使われている。学習会、シンポジウムとか三陸の復興につながるかどうかを指標としているのに、この看板製作費に8割を投入することが、果たして事業として成果を出すことにつながっているのかどうかといった指摘があるのですけれども、どのように認識しているかお伺いします。
〇石川政策企画部長 包括外部監査に対する認識でございます。委員が御指摘のとおり、県では、政策、事業の政策体系を踏まえまして、事業目的の達成に向けた活動によって得られる直接的な成果をはかる指標として、測定可能な客観的なデータにより成果指標を設定しているところでございます。
 今回の包括外部監査では、自然環境に係る財務事務の執行について実施されまして、その中で幾つかの指標について、より適切な成果指標の設定が可能であると考えられるという御意見を頂戴いたしました。
 県としては、評価を行う上で的確な指標の設定が重要でございます。今回いただいた御意見も踏まえながら、引き続き、事業目的に立ち返りまして、事業目的と成果指標との整合性が図られるように取り組んでまいりたいと考えております。
〇米内紘正委員 アウトプットとアウトカムがこんがらがっている事業がいっぱいありますので、ぜひ取り組んでほしいと思います。
 いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランについてでありますけれども、来年、その策定作業があると思います。包括外部監査で指摘されているような指標設定の妥当性、整合性は、そのアクションプラン策定のときに、今おっしゃったように見直しが図られるのかどうかお知らせください。
〇石川政策企画部長 来年度策定しますいわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランにおける指標につきましては、来期における成果や課題を明らかにし、第2期の4年間に取り組む施策を定めた上で設定いたします。
 その設定に当たりましては、今回の包括外部監査の意見も踏まえ、指標が本当に事業目的の達成状況を客観的に把握するものになっているのか、上位指標である幸福関連指標と関連性があるのかといった妥当性、整合性に留意しながら進めてまいりたいと考えております。
〇米内紘正委員 成果指標とアウトプットとアウトカムのところはしっかり切り分けて見直していかないと、選択と集中を行うということは、資本投下を効果的に行う、そうするとAよりBのほうが効果的であるというしっかりした根拠がなければいけないのです。根拠がなくやると、資金の流れが変わるわけですから、それ相応の反発が起きるわけです。ですので、そこは部局の主観ではなくて、しっかり根拠に基づいてやってほしいと思います。
 午前中に菅野ひろのり委員の質問の中でもありましたけれども、指標を考えるときに、指標に携わっている人が知っている事例で、お菓子の会社のカルビー株式会社の事例があります。カルビー株式会社は、2009年に、コックピット経営といって、3、000個ぐらいの指標があって、それで営業利益率3%。グローバル企業でいうと、ネスレなどは食品でも15%ぐらいありますから、営業利益率がかなり低い状態でした。それで、経営者がかわって改革したのでね。本当に必要な指標は何なのかと20個ぐらいに絞ったらしいのです。
 結局、指標がたくさんあり過ぎて本質を見失ってしまって、一番実務に携わっている職員が、今何のためにやっているのか、これは本当に県民の幸福のためにやっているのかどうかわからなくなっているというのを、いま一度、この第2期アクションプラン策定の中で見直していただけたらと思います。
 次に、幸福関連指標ですけれども、2000年代初頭のIT革命以降、デジタル化、モバイル化が進展して、情報が瞬時に世界中を駆けめぐるようになりました。それらの変革によって人々の価値観は大きく変わっているわけでございますけれども、この10年にわたるいわて県民計画(2019〜2028)によって、幸福関連指標は今後どうなっていくのか。議論されている形跡がなかなか見えないのですけれども、その辺をお伺いいたします。
〇達増知事 幸福関連指標は、県民、企業、NPO、市町村など地域社会を構成する主体の行動や県民の幸福に関する実感、経済社会情勢の変化などと合わせて政策分野を総合的に評価するために設定しているものであり、その目標値は、全国順位や東北順位なども考慮の上、設定していることなどから、第1期アクションプランの計画期間の4年間は、その経過を見る必要があると考えているところであります。
 幸福関連指標も含め、第2期アクションプランの策定に当たっては、第1期アクションプランの計画期間における実績や新型コロナウイルス感染症の動向などを踏まえ、市町村、企業、団体等との意見交換会を行い、県議会や総合計画審議会の意見も伺いながら検討を進めていく考えであります。
〇米内紘正委員 変わっていく可能性があるということでよろしいかと思うのですけれども、確かに、今、デジタル化をこれだけ推しているのに、それの指標がスマートフォン所持率とかしかなかったりとか、温室効果ガスの削減実績がなかったりします。10年間というのは本当に長い期間なので、朝令暮改というわけではなく、最初に言った臨機応変な対応、機動的な対応で毎年毎年、常に見直していかなければいけないと思います。
 あと、もう少しスリム化したほうがいいと思います。いろいろな方で話し合うのはいいのですけれども、そうすると、話し合っている方みんな1個ずつ入れるみたいになってしまうので、まずは、トップがこうなのだというところを示して、そこにひもづく指標をしっかり考えていったほうがいいと思いますが、その辺は、知事はどうお考えでしょうか。
〇達増知事 幸福度を数値化した指標で有名なのは、寺島実郎さんのチームがやっている47都道府県幸福度ランキングですか、2年に1度発行されていて、そのたびに見直す指標、新たにつけ加える指標もあれば、やり始めてから何年もずっと継続している指標もあったりします。ただ、それらについてもいろいろ、国際関係に偏っているのではないかとか、お金がある大都会に有利な指標体系になっているのではないかとかという指摘もあります。
 岩手県のこの幸福関連指標も、こういうものを入れたほうがいいとか、これは外したほうがいいとか、そういう意見は随時伺っていきたいと思いますし、特に、このアクションプランの改定時期には、そういう広い議論を踏まえながら、次のアクションプランと幸福関連指標を定めていければと思います。
〇米内紘正委員 多分第1期のアクションプランが策定されてから、変えないにしても、議論がされてこなかったのかと思います。そこは常にずっと議論し続けていくべきだと思いますので、まず県庁の中でも継続的に議論をしていったほうがいいかと思います。
 次に、国の金融財政政策の捉え方についてお聞きします。
 国の金融財政政策については、言うまでもなく地方の財政状況と密接にかかわっておりますけれども、長期化するコロナ禍においても、国は、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を初めとするさまざまな財政政策を行い、積極財政を展開してきたところであります。
 昨年、岸田総理大臣は、過去最高規模となる約36兆円にも及ぶ大型補正予算を成立させました。コロナ禍前は、財政健全化だったりプライマリーバランスの黒字化など、財政再建の議論が目立っていましたが、コロナ禍前と比べて、現在の財政政策をどのように捉え、コロナ禍後においてどうあるべきと考えるか伺います。
〇達増知事 コロナ禍前から現在に至るまで、日本経済がデフレに陥っているのは、基本的に、国内経済において、供給に対して需要が不足する需給ギャップが存在していることが大きな原因と考えられますことから、国に対し、金融政策のみならず、公的需要を含む内需拡大型の構造改革に取り組む必要があることを訴えてまいりました。
 このような中、新型コロナウイルス感染症に対する大都市のリスクの高さが際立ち、地方への移住に対する関心の高まりやテレワークを初めとする多様な働き方の加速化など、個人の意識、行動変容が起きており、この機を捉え、国においては、新型コロナウイルス感染症対策を通じ、東京一極集中を是正し、地方創生が成功するように、思い切った財政出動と地方を重視した経済財政政策が求められるところであります。
 こうした経済財政政策は、新型コロナウイルス感染症により疲弊した地方経済を回復、強化するためには特に不可欠であり、地方の実態経済に資金が潤沢に流れ、地域経済の活性化につながるものと考えます。
〇米内紘正委員 それでは、今おっしゃられた経済政策についてでありますけれども、一方で、欧米等、5%を超えるインフレ、物価上昇に直面している国もあります。ロシアによるウクライナ侵攻により、エネルギーを初めとする物価上昇が見込まれる中で、その経済政策はどのようなメリットとデメリットがあって、地方財政に影響すると考えられるか伺います。
〇達増知事 思い切った財政出動と地方を重視した経済財政政策については、地方における雇用の創出や企業収益の増加、これらに伴う税収増等の効果が見込まれる一方、取り組みが不十分である場合には、効果の発現が一部の地域に集中するなど、むしろ東京一極集中を助長する可能性があります。
 地方財政については、国が地方財政計画の策定等を通じて、地方の財源保障機能や財源調整機能を発揮することとされていますが、国の政策に伴う地方負担の増加は、地方財政の逼迫を招く可能性があることから、政策の推進に当たっては、国庫支出金や地方交付税等により財源が確保されることが重要であります。
〇米内紘正委員 まず1点目は、例えば財政出動によってインフレが起きたときにはどうするのか、どう対応することをよしと考えているのか。あとは、インフレ率2%を達成した後、それを本当にコントロールできるとお考えなのか、どうコントロールしようと思っているのかお聞かせください。
〇達増知事 景気が過熱して、給料がどんどん上がって、そしてインフレになっていくということはなかなか考えにくく、むしろ、いつまでもデフレから脱却できないのが、日本の実体経済の基本なのだと思います。
 ただ、原油高とかコストプッシュインフレ、特定の輸入品目の価格が上昇することで、国内のインフレ率を計算するとインフレになっているような数字にはなるのですけれども、それは、あくまで特定輸入品の値上がりによるインフレでありますから、そこは、先ほどトリガー条項の話もありましたが、特定輸入品の価格を抑えるための、別途、経済的な政策を行うことで、本質的な日本の実体経済のデフレ状況に対して適切な財政政策を打っていけるのだと思います。
〇米内紘正委員 多分知事は、需給ギャップをなくして、需要が経済成長につながるのだとオーソドックスなケインズの経済学の理論だと思うのですけれども、人口減少下のデフレ圧力がかかっている中で、内需拡大が果たしてこれまでの歴史と同じように考えられるのですか。
 例えば、岩手県でいうと、2020年の状況では、金融機関の預金率は2019年から6%上がって、消費税、物価は横ばいですが、それが内需拡大につながっているかどうかというところが見えてこないのですが、それは、どういう理屈で内需拡大につながるというお考えですか。
〇達増知事 県民生活を見ていますと、需要サイドの実態として、さまざまな固定費にお金がかかるので、自由に消費できる部分については消費を我慢している。私はバブル時代に青春を過ごしておりますので、あのときの若者の、借金して車を買うとか、その車も外車をいきなり買うとか、外車を買うだけが幸せとは言わないのですけれども、今の若者たちは本当に我慢しているなと思いますし、基本的に、普通の世帯は物すごく我慢しているのではないかと思います。
 ですから、普通の世帯、若い人たちがもっと消費を拡大する余地はあるはずで、そういう意味で、まだケインズ政策的な財政政策を発動する意義はあると考えております。
〇米内紘正委員 若者が我慢しているかどうか。若者でも、消費性向は下がっておりますので、その辺はしっかりもっと調べるべきかと思います。
 いわゆる財政出動にしても、きちんと乗数効果の高い政策を展開して、しっかり内需につなげようというところで、岩手県の稼ぐ力についてお聞きします。
 2021年の日本の輸出額は過去最高水準、2020年の経常収支においても世界においてトップレベルではありましたけれども、日本の輸出額はバブル期に比べて倍増している状態です。
 県民の幸福を実現させるためにも、県は、稼ぐ力を向上させて経済状況を好転させ成長することが必要になると考えますけれども、いかに県外に資金を流出させず、県外から資金を獲得するかが重要になりますが、どのような施策を打ち、どのような目標に向かうのか伺います。
〇保副知事 まず、稼ぐ力をどのように考えるかでありますけれども、いわて県民計画(2019〜2028)の策定に当たりまして、その部分につきましては、国際競争力の高いものづくり産業、地域の特性や資源を最大限に生かした農林水産業や観光産業、これらの域外市場産業について、地元調達や付加価値を高めながら強化すること、また、商業やサービス業の振興により地域内経済循環を拡大していく、この二つの総合的な産業政策の展開が重要と展望しています。
 これが、富を県外に流出させないことと県外からの富を獲得することになると思いますが、県外に流出させないというのは、いかに域内でお金を回して生み出していくかということにつながると思います。域内観光の推進ですとか、買うなら岩手のもの運動や地産地消の推進による域内消費の拡大、それから、川上から川下までの森林資源の域内循環を促すといったようなことだと思います。
 県外からの富の獲得については、今、自動車、半導体を筆頭としてものづくり産業のグローバル化の拠点化が進んでおりますが、これが大きなものになるかと思います。
 また、外からの観光誘客ということでの観光産業の稼ぐ力の強化、農林水産物の販路拡大、輸出の促進というようなことだと思います。
 これらをどう捉えるかということですが、総体として稼ぐ力がどうなるかはなかなか難しいのですけれども、従業員1人当たりの製造品出荷額あるいは観光消費額、農林水産物の輸出額、こういったものが該当すると思っております。これらは、いずれもいわて県民計画(2019〜2028)の幸福関連指標になっておりまして、こういったことを目標として掲げて取り組んでいるところであります。
〇米内紘正委員 県民の域内の経済循環の何を追っていくか。岩手県は今、人口減少下にあり、若者も流出しておりますので、内需拡大しようとしても域内市場は絶対縮小してくるわけでございます。そうすると、やはり域外経済市場からいかにして富を持ってくるか。
 岩手県の県民経済計算に載っておりますけれども、如実にあらわれているのです。平成18年に移出入金、移出金から移入金を―輸出と輸入みたいなものです。県外で消費したものと外から買っているお金の差ですけれども、これが、平成18年に不突合―統計上の数値も入れていいますけれども、マイナス4、600億円だったのです。平成18年は外に4、600億円出てしまった。平成22年が4、000億円だったのですけれども、平成23年に8、000億円で2倍になったのです。これは何となくわかります。復興関連の予算が入ってきた。でも、ほとんど域外に流出してしまった。
 それで、平成30年、最新のものではマイナス8、000億円。そのまま、その数字で8、000億円ずつ域外に資金が流出してしまっている。県民の県内総生産が4兆7、000億円でございますから、8、000億円が外に行ってしまっている。これは、その地域の経済圏を考えたとき、これをプラスにしろというのではなくて、北海道なども、みんな一定の値なのですけれども、こんなに大きく下がっているのは岩手県ぐらいなのです。
 そのときに、外にお金が行っていたら、雇用するにもなかなか難しい。だったら、きちんとそこを見ていく、一個一個の細かい指標もいいのですけれども、やはりマクロで見ていってその状況を改善しなければいけないと思うのですが、その辺はどう捉えていらっしゃいますか。
〇保副知事 今の移出、移入の話は大変興味深く伺いました。そういう形で捉える際に、県全体の姿として、そういった指標を使って、今、岩手県の経済はこうだ、岩手県の社会はこうだというものがある。
 我々が取り組む行政という仕事の中で、どこをどうそこに手をかければ、それが動くかということ、そこをしっかりした合理的なロジックで取り組んだときに、そこに具体的な指標として先ほど申し上げたようなものが当てはまるかと、そのようなことを考えております。
〇米内紘正委員 マクロな視点、幸福関連指標というのは、本当に県民のあるべき姿、バックキャスティングこういうふうにしたいというところから始まって、そこに事業がひもづいていく。その中に1人当たりの所得や、輸出額などを上げていった結果、最終的にそこが改善されるかもしれない。
 だから、幸福関連指標がすぐに変わるとは思っていないです。長期の中で、今どこにいるのかを確認する意味でも、何十年たっても変わらないような指標を考えていったほうがいいかと思います。
 ここで問題になるのが、常に東京圏への一極集中とおっしゃるのですけれども、もう少し問題は大きいのです。東京圏だけではないのです。富の流出って、もう世界なのです。東京圏の一極集中、一極集中と、理由がそうなのだと刷り込まれてしまって原因分析できなくなってしまうのですけれども、今、アマゾンだったりネットショッピングで、東京圏じゃなくとも、世界中に富が流出している。平成18年に4、600億円だったマイナス値が8、000億円までふえているのは、ほかの都道府県でもやはり額が大きいところはあるのですが、そういう原因分析につなげるためにも、東京圏への一極集中はわかりましたので、それ以外の原因に目をつぶっていたら、いつの間にか置いていかれてしまいますという話で、それ以外の分析もしたほうがいいと思うのですけれども、いかがでしょうか。
〇保副知事 移出、移入の部分だけをとれば、確かに外に出ていっていることが変わらないということはあるかもしれませんが、平成18年の時間的スパンを考えれば、その間に県民の中の総生産、県の中で生み出される総体的な富としての総生産の額はかなり上がっているはずではないかと思います。ですから、確かに移出、移入という部分も大事ではありますけれども、その間に、岩手県がどれだけ自分たちで稼ぐ、まさに中で生産して、その金額をはじき出してきたかということとの関係を見ながらやることも大事ではないかと思います。
〇米内紘正委員 そうですね、県内総生産が平成18年から4、000億円ふえていて、移出入差が4、000億円ふえているから、ふえた分が全部外に流れてしまっているという感覚に見えます。やはりこの辺のところを、よりマクロな視点を入れていってほしいと思います。
 そういう意味で、次の質問ですけれども、何回もお話ししているところであります。いわて県民計画(2019〜2028)において、さまざまな理想を導入して幸福度を向上させるのは本当に難しいプロジェクトだと思います。社会問題が複雑化、多様化する中で、主観や経験則メーンの県政運営では難しいと思います。
 国ではデジタル庁が設立され、その中でEBPM―エビデンス・ベースド・ポリシー・メイキングの議論も活発に行われるようになってきました。国会でも最近よく質問が出ております。
 県は、確固たる基盤、科学的知見に基づいた指標体系を構築するためにEBPMを導入してはいかがかと思いますが、どうでしょうか。
〇保副知事 現在、いわて県民計画(2019〜2028)でいろいろな幸福関連指標ですとか、またその下位の指標としての具体的推進方策指標ですとかを考える上で、委員から御指摘ありましたけれども、我々が目指すところとしては、まさにお話しあった主観や経験だけで政策を立案するというようなことではなく、どうやってしっかりしたデータに基づく立案をするかということは、取り組みの大きなものであります。さまざまなまだ足りないところ、あるいは数字であらわせるものは社会全体の中でごく限られた部分でもある中で、どういう形で実現していくかは非常に難しいところで、トライ・アンド・エラーが続いていると思います。
 その中でも、いわて県民計画(2019〜2028)については、内閣府の満足度・生活の質に関する調査報告書2021において紹介されております。また、自由民主党政務調査会の日本well―being計画推進特命委員会の地方におけるwell―beingの事例として取り上げられるなど、今のところ、国からも先進的な事例として高く評価されているものであります。このような国の関心は、さまざままだ課題があるとはいえ、ロジックモデルを意識した事業立案や下位の指標設定などさまざま取り組んでいる岩手県の取り組みにあると思います。
 幸福関連指標を考えるに当たりまして、岩手の幸福に関する指標研究会を組織いたしましたが、そのアドバイザーを務めていただいた京都大学の広井教授からは、新しい試みであるだけに、さまざまな課題が伴う中で試行錯誤的な取り組みになるから頑張ってくれというようなお話もいただいております。
 EBPMは当然意識して、政策体系の中にどう位置づけるかをさまざま考えていく必要があります。引き続き、国の動向等も踏まえながら、デジタル庁などでは積極的にそれを取り入れるという話も聞いておりますので、そういったことも意識しながら、今後のいわて県民計画(2019〜2028)の実効性を高めていきたいと考えております。
〇軽石義則委員長 この際、米内委員の質疑の途中ではありますが、世話人会の申し合わせにより10分間ほど休憩いたします。
 米内委員、御了承願います。
午後2時28分 休 憩
午後2時43分再開
〇軽石義則委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。
〇米内紘正委員 それでは、先ほどの質疑の途中から行きます。
 副知事は、全てを数字であらわすことはできないのだということで、もちろんそのとおりでございます。いきなり全てをやりましょうと言っているわけではなくて、私は、1個でいいと思っています。私がきょう話しているのは、午前中に菅野ひろのり委員からあったように、医療とか福祉、教育、子育てみたいに、額が減ることによってサービスが後退してしまうようなことを言っているのではなくて、戦略的、成長を見越して図っている投資、戦略的な投資のほうについて、もう少し政策評価を実効的にするべきではないかというところを考えています。
 知事にお聞きします。具体例を出しながら言います。いつも知事がお話しされる、買うなら岩手のものECビジネス展開事業費についてでございますけれども、これも、常にこれをやっていますという言葉を聞くといいのですが、先ほど内需拡大型をやる、それには適切な財政出動が必要だというお話をされました。では、その適切な財政出動をどういった根拠ではかるのか。これも、別にこの各論で話すわけじゃないです、全体的なことですけれども、例えば、買うなら岩手のものECビジネス展開事業費だと、令和3年6月補正予算で7、500万円の事業費があって、そのうち4、500万円が楽天グループのインターネット通信販売事業に使われて、1回目の売り上げがキャンペーンで3億2、000万円、これはなかなか高い乗数効果をたたき出していると思うのです。
 一方で、残りの2、000万円は、買うなら岩手のものバーチャル物産展、これは多分独自につくったホームページだと思うのですけれども、事業費2、000万円で、その売り上げが2、000万円なのです。契約額2、000万円で、それによって売り上げが1月末時点で2、100万円なのです。
 2、000万円の投資で2、100万円のものを売り上げた。4、500万円で3億2、000万円のものを売り上げた。最初の議論に戻りますけれども、こういった事業をどう評価していくのかというところが、政策評価、事務事業評価がなかなか機能していないのでできていないかと思うのですが、いかがでしょうか。
〇達増知事 買うなら岩手のものECビジネス展開事業費の使われ方についての御質問であれば、まず最初に、7、500万円分については3億円の利益が上がって乗数効果がある。もう一つが、2、000万円分については2、000万円の利益。ただ、そこの利益、収入、申しわけないですけれども、私の手元には質問されている方の手元にある表と同じものがないので、すれ違わないようにするには、また、質問されている方が気がついていないことを答弁するためには、2、000万円の使われ方についてもう少し具体的に、どういう事業者が、どのような商品をどうして、それがどう売れたかというような実態を見てみないと、どこがうまくいったのか、どこがうまくいかなかったのかは、事業のやり方としてはなかなか難しいところがあるのです。
 一方、財政出動と内需拡大の関係についても質問されたと聞いているのですけれども、あれは日本全体のマクロ経済の話でありますので、県という単位、まして買うなら岩手のものECビジネス展開事業費の単位では当てはまらないことであります。
 買うなら岩手のものECビジネス展開事業費の2、000万円を使って2、000万円しか戻っていないのをどう評価するかということでありますけれども、まず一つ答えを言いますので、足りなかったら追加質問していただければいいと思うのですが、今問題になっている、もしそれが事業実施評価の指標としてそれでいいのかということだとすれば、そういった問題については、今後、新しいアクションプランに転換していくに当たって、見直すべきところは見直してまいります。
〇米内紘正委員 今の財政出動と内需拡大のほうですけれども、そこは確かにマクロの話なのですが、一個一個の財政出動を見ていったときに、それが高い乗数効果を発揮するかという視点は必要だと思うのです。それで、今ここでお話ししたのです。
 あとの、2、000万円で2、000万円の売り上げしか上げていないほうは、何をしたかというと、新聞への折り込み広告、岩手日報への広告、地元タブロイド紙への広告。買うなら岩手のものバーチャル物産展はインターネットのECサイトですね。ECサイトの売り上げを上げるのに何と紙を入れるという事業がされています。知事がいつも、買うなら岩手のもの運動を展開していますとおっしゃっているので、詳細まで把握しているものかと思って質問してしまったのですけれども、こういったところは、まず、どう評価していくのかを見ていかないと、さっき言った高い乗数効果を発揮するためにも、この2、000万円を、ヤフーだったり、今度は中国展開だったらアリババだったりに行ったほうが、もしかしたら高い効果を得られるかもしれない。
 そういう政策の振り返りが、最初に言った、今の事務事業評価だと、各部局で完結してしまって、それが上がってきて、はい、そうですねとなっていると見えてしまうというところですが、どうですか。
〇達増知事 買うなら岩手のものバーチャル物産展の広告が新聞折り込みとか紙の形で出るのはよくあるのですけれども、そこのQRコードにスマートフォンをかざしてぱっと入ることもできますし、結構、紙媒体によるインターネット利用の宣伝というのは効果があると思います。
〇米内紘正委員 今は大切な議論なので、ちょっと時間がかかってしまいますけれども、その効果があるというのをどこで判断しているかという話なのです。それを、しっかり効果があると誰が思っているのですか。何をもって効果があるとしているのですかというそのポリシーがあやふやなので、多分今の知事のスタンスが、県全体の計画に出てきてしまっているのです。紙媒体での広告がインターネット利用の宣伝に効果があるというのは、何とどう比較したときに、どう効果があるというのがこれからの分析だと思うのですけれども、いかがですか。
〇達増知事 そういったものについて、何か細かい数字で個別の事業というか、広告とか告知、周知、あとモデル事業ですね、今までやったことのないことをモデル事業として全く新しく始めるときに、どういう数字で判断するのがいいかというのは、これからの課題なのだと思います。
〇米内紘正委員 もうこれはモデル事業とかではなくて、世の中では10年、20年前からやっていることで、マーケティングです。インターネット広告、例えば2、000万円の広告費をどこに投入するのが効果が一番高いのかは、調べれば、その道のプロに聞けばすぐわかると思います。インターネットでどう広告を、誰に絞って広告を出すのかというところです。そういうところが、今こういう計画を見ていると追いついていない。そうすると、例えば、先ほどのEBPMも、1個でいいのです。1個まずやってみて、どういう考え方なのだろうか、そういうところを実践していかないと、いわて県民計画(2019〜2028)が砂上の楼閣、どんなに楼閣が立派でも、砂の上に建てられていたら、どんなに議論しても意味がないと思いますので、そこをしっかりやってほしいと思います。
 人口減少問題のほうに入らせていただきます。
 まず、人口の社会減対策の目標値についてでありますけれども、社会減については、自然減に比べて比較的短期的に検証等できるとは思いますが、社会減の解消に向かって、県が掲げる目標値の詳細とその達成時期をお知らせください。
〇石川政策企画部長 人口の社会減の目標値についてでございます。岩手県人口ビジョンにおきましては、人口減少を引き起こすさまざまな生きにくさを生きやすさに転換していくとともに、本県の特性を生かしながら、岩手県への新たな人の流れを生み出すふるさと振興を積極的に展開し、これにより2040年に100万人程度の人口を確保するという形で展望しております。
 県としては、このビジョンを踏まえまして、第2期岩手県ふるさと振興総合戦略におきまして、国の第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略に掲げる、2024年度に地方と東京圏との転入、転出を均衡に呼応しまして、2024年度に社会減ゼロを施策推進目標に掲げているところでございます。
〇米内紘正委員 2024年度に社会減ゼロというのは、そのゼロの詳細として、転出を何人にして転入を何人にするかとか、そこの内訳をお知らせください。
〇軽石義則委員長 答弁できますか。
〇石川政策企画部長 繰り返しになってしまいますけれども、第2期岩手県ふるさと振興総合戦略におきましては、2024年度に社会減ゼロということで目標値を考えているところでありまして、何人入って、何人出るという形では定めておりません。
〇米内紘正委員 差を目標値にするのは余りないことです。野球チームが、よし、僕たちは5点差で勝つことを目標にしますとか余りないことです。攻撃力と守備力、どっちをどう強化していくのか。転入対策にかける予算と転出対策にかける予算は違いますし、広域振興圏ごとに、県北地域、―あとの質問も含めてやりますけれども、県北地域、沿岸地域というのは東京圏への一極集中ではないです。東北地方への人口流出のほうが多いわけです。そうすると、県北地方、沿岸地方で東京圏への一極集中対策というのは的外れになってしまうわけです。
 それで、男性をターゲットにするのか女性をターゲットにするのか、さっき言った戦略的な目標に対して、目標の分解ができていないというのは大丈夫ですか。
〇石川政策企画部長 社会減の関係で、縮小における要因については分析しております。岩手県人口移動報告年報によりますと、2021年の本県の社会減2、738人ということで、前年比で1、134人の縮小となっております。これは、2020年春以降に新型コロナウイルス感染症に対する都市部のリスクの高さが広く認識されたことにより、転入者の増加と転出者の減少が相まって縮小したことが要因の一つと考えております。
 次に、2019年から2021年の社会減の推移についてでありますけれども、本県の社会減は、2019年は4、370人、2020年は3、872人、2021年は2、738人でありまして、2020年は前年と比較して社会減が498人縮小、2021年は前年と比較して社会減が1、134人縮小しておりまして、2020年以降、2年連続で社会減が縮小しております。
 これは2020年と2021年の転出者数が前年比で大幅に減少したことによるものと考えられまして、年間の転入超過月数を見ましても、2019年は1カ月だったものに対して、2020年は5カ月、2021年は6カ月ということで、転出者の減少傾向は顕著となっております。
 このような中、18歳から24歳の若年層の社会減につきましては、2020年が3、238人、2021年が3、213人、こういった形で高どまりが続いております。進学や就職に伴う転出が県全体の社会減の縮小に大きな影響を与えておりますことから、若年層、特に女性を対象とした政策の強化が急務であると考えております。
〇米内紘正委員 幾ら縮小したのがこうですと言われても、結局、目標値がないわけじゃないですか。転出者数は何人にする、転入者数が何人という、そこのバランス感覚がないのに、転入対策、転出対策に使われている予算、その事業費が適正かどうかは判断できないです。
 細かい話ですけれども、そこの具体的な分解は、全国規模で小売店を展開しているチェーン店だったら、全国の売り上げがふえましたで終わりではないのです。もしかしたら都市部で減っていて、ここにいろいろな細かい要因があるかもしれない。でも、ここがカバーしていたのだとか、そういうところまで分析しないと、結局そこが、幸福関連指標であったり、岩手県ふるさと振興総合戦略と現場レベルの事業がつながっていない証左なのです。
 現場レベルで相談者数をふやしました。相談者数をふやして、ここのアウトカムがどうなりました。でも、このアウトカムの目標値が決まっていません。それでは、幾ら相談者数をふやしてとか、ふわっとした差というところしか出てこないのですけれども、ここは詳細に設定したほうがいいのではないですか。
〇石川政策企画部長 委員からの貴重な御意見だと考えております。これからさまざまな人口減少対策、特に社会減対策に取り組んでいく上で、指標につきましても参考にさせていただきたいと思います。
〇米内紘正委員 知事も1997年の国会の中で、これからはデータの蓄積、分析が必要になってくる時代だということで質問されていました。それをぜひこの県政においても生かしていただかないと、どうしても道しるべを失ってしまうというか、砂漠の真ん中で間違った道しるべを立てている状態です。だったら道しるべがないほうが目的地に着く可能性が高いです。間違った道しるべを立てられてしまうと、それはどうにもつながらないわけですから、そこをぜひ、これからの県政運営に取り入れていってほしい。
 まずは、分析官を1人置いてはどうかと思いますけれども、知事、いかがでしょうか。
〇達増知事 人口減少問題対策では、国も5年間で東京圏への人口流入を、差し引き12万人プラスになっているのをゼロにするということで、そこは、そのときの入りが何人、出が何人という目標は国も設定していないわけであります。日本全国、基本的にそこの目標は設定されていないのではないかと思うのですが、国が、人口過疎、過密はよくないというのは昔から問題にしているのですが、ただそれは、過疎になったら政策を展開、過密したところに政策を展開、そもそも人口移動そのものについて政策的に関与するのは、基本的に地方消滅という言葉が出てきてからと言っていいと思います。それが結局、日本全体の消滅に至るということで、日本全体として東京圏への一極集中を是正していかなければならないと思います。
 ただ、一方では、基本的に人間一人一人、どこに住むか、そこで何をするかは、憲法が保障する自由があるわけでありますから、積み上げで、この市からこちらの市に何人移動させるとか、そういうことは基本的にはやらないと。積み上げで数字をつくっていくのではなくて、まず、そういうあるべき姿、日本を消滅させない、地方を消滅させない、そのためには、より働きやすく、子育てしやすく、さまざまな魅力ある地方をつくっていこうという定性的な政策誘導でできているのが、まち・ひと・しごと創生法とそれに基づく各県、市町村のビジョンと総合戦略の体系であります。
 その中で、先ほど政策企画部長が答弁したように、岩手県の場合は、やはり若い世代の進学、就職での状況などがあるので、そういったところに対策するような、その場その場に合った戦略的な施策展開をしているところであります。
 そういう人間の自由を守りながら、あるべき集団の形をつくっていくところに共有できる目標を立てていく。5年で東京圏への人口流入をゼロにするというような共有できる数値目標を立てる意義がそこにあると考えております。
〇米内紘正委員 国も設定していないなら、国も設定したほうがいいと思います。それは言っていかなければ、結局、若い人に対する事業を打っている、政策を展開しているのに、そこのアウトカムがわからなければ、それが評価できないわけですから。だったら最初から政策評価を掲げないほうがいいです。掲げないで、そのままもう評価しない、この数字に向かってやるぐらいの、努力みたいな、そっちのほうがまだいいです。
 先ほど人権の話もされましたけれども、それを言い始めたら、幸福関連指標は結構行き詰まってしまうと思います。人の移動もそうですけれども、合計特殊出生率なども、本来、子供を産むか産まないか、何人産むかどうかというのは個人の自由ですから、そこも破綻してしまう。それでは行政的に方向性をつくれないと思うのですけれども、どうですか。
〇達増知事 個人の自由を最大限尊重しながら、集団としてあるべき形をつくっていくのが政治です。
〇米内紘正委員 その議論と、先ほどの数値のばふっとした差だけで、一つ一つの積み上げをしないというのは、どういう関係性があるのでしょうか。
〇達増知事 まず、私はそこを関係させて言ったつもりはなく、個人の自由を最大限尊重しながら、集団としてよりよい形をつくっていくというのは、それはそれとして受けとめていただきたいと思います。
 一方、先ほどの数値目標の立て方については、民間部門で、何を製品としてつくるかが決まっていて、あとはその数をどうするかとか、とにかくお金をたくさん稼ぐ、収益を最大化させるという数字の目標が最初から決まっているようなときの数値目標の決め方と、憲法と地方自治法以下の法律体系に基づいて、人権を守り、そして住民福祉増進を図るというミッションを達成するための数値目標のつくり方は、民間のやり方が参考になるところも多々あると思いますので、そういうものはどんどん参考にしていくべきだと思いますけれども、行政は行政なりのそういう数値目標の使い方を開発していく必要があると考えております。
〇米内紘正委員 社会減の対策に関してはシビアであるべきだと思うのです。というのは、基本的に県民のために使われないからです。県の外にいる、移住政策とか、基本的に外に向けてお金が使われるので、そこは、民間と同じように最大の効果を考えなければ、税金の使われ方として、何となくみんなの思っていることで、そんなような事業をやりましたではなくて、これは社会減対策、移住、定住とか、そういうアプローチだからこそ、そこはしっかり予算の使い方として明確にしてほしいと思うのですけれども、いかがですか。
〇達増知事 おっしゃることが、人間一人一人の移動について、行政がある種の強制力を持って、そこを確定させていくというようなことを言っているのであれば、それは問題でありまして、基本的には、居住、移転の自由があり、職業選択の自由があり、また、婚姻の自由等々ある中で、しかし、結果として地方に一定の人間が残り、そして東京圏へ一極集中し過ぎないということを実現していくための施策を展開していくことが肝と考えます。
〇米内紘正委員 これは水かけ論になってしまうので、また次の質問に入りますけれども、みどりの食料システム戦略についてお伺いします。
 国において、昨年、みどりの食料システム戦略が策定され、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立を目指す施策が掲げられました。2050年までの農林水産業のCO2ゼロエミッション化の実現を初めとして、化学農薬使用量50%低減、化学肥料30%低減、オーガニック市場拡大及び有機農業取り組み面積25%など、さまざまなKPIが提示されておりますが、来年度における本事業の具体的取り組み内容と今後の目標についてお示しください。
〇保副知事 いわてみどりの食料システム戦略推進事業につきましては、今、御紹介あったとおり、農業の生産力向上と環境負荷の低減の両立ということで、岩手県としては、国の新規事業を活用いたしまして、市町村や地域で設立されます協議会等が行います栽培体系のグリーン化、有機農業の取り組みに係る経費を補助するという中身であります。
 今後、国から要綱、要領が示される中で、今、幾つかKPI等も御紹介ありましたけれども、どういう形でそれらを地域にブレークダウンするかは、協議会の設立あるいは実施計画の策定を通じて、具体的な目標や工程を定めることになると思います。
 現段階では、まだこういう形でとお示しできる状態ではありませんが、今後そういう中で考えていくものでございます。
〇米内紘正委員 オーガニック市場は年々拡大していますので、高付加価値化を進める意味でも、また、農薬であったり肥料を海外からの輸入に頼っている分、や域内で経済が回せるように政策を打っていくべきだと思います。
 次に、農林水産業の輸出政策についてお伺いします。
 日本における2021年の農林水産物、食品の輸出額は1兆2、385億円となり、2020年比で25.6%の増加、額では2、525億円の増加と初めて1兆円を超える結果となりました。
 広大な土地と豊かな海を有する岩手県においては、農林水産業によって外貨を獲得し、成長戦略の軸とすることは当然であると考えます。
 近年の日本の農林水産物、食品の輸出と比較して、岩手県のそれらの輸出額はどのように推移しているか、また、隣県、青森県と比べた場合、どの程度の水準なのか、それらの要因の分析とともにお示しください。
〇保副知事 今、国全体の農林水産物の輸出についての御紹介がありましたけれども、同じ時期で岩手県の場合は、平成28年は約26億円、令和2年は約39億円でございまして、1.5倍の増加という状況でございます。
 それから、青森県の話でございますけれども、令和2年の青森県の農林水産物等の輸出額は約190億円でございます。岩手県の場合と比較いたしますと5倍ぐらいというところです。
 青森県の最大の輸出品目は、生産量が約46万トンのリンゴでございます。金額は約103億円。ですから、190億円の103億円でございますので、輸出額全体の半分以上はリンゴという状況でございます。
 ちなみに、岩手県のリンゴの生産量は約4万7、000トンで、国内生産としては第3位でございますが、生産量は青森県の10分の1ということであり、青森県がリンゴで輸出を稼いでいる面が差になってあらわれていると考えております。
 令和2年の岩手県の農林水産物の輸出額の内訳ですが、水産物が4割、牛肉が3割、リンゴ、米、日本酒、この三つぐらいを合わせて2割となっております。今申し上げました水産物と牛肉、リンゴ、米、日本酒の五つを重点品目と位置づけまして、アジア、北米地域をターゲットに輸出拡大に努めております。
 本県では、世界最多の人口を抱える中国も大きな市場と考えておりますが、米の輸出が昨年9月、初めて実現いたしました。また、検疫条件が非常に厳しく、なかなか取り組むところも難しい面がありますが、アメリカやカナダへのリンゴの輸出に国内で唯一取り組んでおります。こういったところを生かしながら、今後も積極的に拡大を図っていきたいと考えております。
〇米内紘正委員 青森県との分析の場合は、190億円のうち103億円がリンゴだという御説明でしたけれども、この103億円を抜いても、岩手県の36億円に対して2倍以上あります。先ほど、最初に6次産業化の指標なども取り上げましたけれども、しっかり戦略的な事業費がどう効果を発揮しているのかというところ、例えば26億円から36億円になって1.5倍になりました。50%増ですで、それでよしとするのかどうかも含めて、そこも政策企画部を含めて議論が必要なところなのだろうと思います。
 次に、林業振興についてお聞きします。
 昨年6月に閣議決定されました森林・林業基本計画において、グリーン成長が掲げられ、カーボンニュートラルを見据えた新しい林業の展開が図られておりますが、岩手県において林業を成長産業として拡大するため、どのようなビジョンを掲げるのでしょうか。今後掲げる事業と目標、未来における岩手県の林業の位置づけをお示しください。
〇保副知事 林業のビジョンにつきましては、いわて県民計画(2019〜2028)におきまして、意欲と能力のある経営体の育成、収益力の高い食料・木材供給基地づくり、県産木材など農林水産物の高付加価値化と販路の開拓、拡大という中で、この林業を取り上げまして基本方向として掲げております。
 令和4年度におきましては、森林・林業・木材産業グリーン成長総合対策事業等、メーンがこの事業でございますけれども、地球温暖化対策に貢献する間伐や再造林を推進していきますほか、いわての木があふれる空間づくり事業等によりまして、住宅や民間施設における県産木材の利用を促進することとしております。
 森林が二酸化炭素の吸収源としてその機能を持続的に発揮していくため、森林を適切な状態に保つという意味で適期での伐採と再造林を進めることが重要でありますので、植える、育てる、使う、植えるという循環をしっかり確立して、林業、木材産業の持続性を高め、成長産業化につなげることが重要であると考えております。
 具体的な目標ですけれども、近年、特に森林が二酸化炭素の吸収源ということで大きな注目を集めていることもございまして、いわて県民計画(2019〜2028)の第2期アクションプランを令和4年度に検討いたしますけれども、この中で具体化していくことで考えております。
〇米内紘正委員 世界的にウッドショック等もあって県産材の需要が高まっている中で、先ほどお話ししました移出、移入というところを考えたときに、移出政策、産業育成という面では、環境と相まって成長分野になる分野だと思っています。適切な投資をしていくべきだと思っておりますので、よろしくお願いします。
 次に、水産業です。サケ資源についてお聞きします。
 主要魚種等の不漁により、県内漁業者は深刻な収入減少に直面し、県内の水産業は依然として厳しい現状にあると考えております。
 新たな漁業、養殖業、主要魚種の資源回復、増加している資源の有効活用と3本の大きな柱を軸に取り組みを進めていると承知しておりますが、そのうちの一つ、主要魚種の資源回復について伺います。
 サケの資源回復のための事業に来年度は総額でどの程度の予算が投入されるでしょうか。震災後約10年間、総額でどれぐらいの予算が投入されてきたのでしょうか。それらの資本投下に対して、いつまでに、どの程度の漁獲高を目指す計画になっているのかお示しください。
〇保副知事 まず、サケ資源の回復に係る令和4年度の当初予算案でございますが、さけ、ます増殖緊急強化対策事業費など2事業で、合計約4億200万円を計上しております。
 また、東日本大震災津波後の10年間のサケの増殖事業に要した経費ですが、ふ化場の復旧整備に約83億円、これがハードの事業でございます。それから、資源回復に必要な稚魚の生産経費等に約47億円、合計で約130億円でございます。
 また、目標ということですが、サケの水揚げ量は、令和10年度までに、震災前水準の3万トンを目指すことにしております。
〇米内紘正委員 ここからはデリケートな議論になってまいりますけれども、沿岸部の漁業にしっかりした投資をしていくのは、なりわい再生のために本当に大切なことだと思っています。
 ただ、例えば、県漁連とかと話して、多額の投資をして、それに対して結果をどうしていくのかを真摯に議論しなければいけないタイミングが何年後かにあると思うのです。この段階でこうだったら、年4億円、5億円の予算は、県漁連と相談してこういう投資にしましょうとか、その辺の判断はどこでどうなされるのでしょうか。
〇保副知事 非常に難しいお話だと思います。県漁連を初め漁協の皆さんとか、直接漁業に携わっている方々との協議といいますか、どうしましょうかという話は、ふだんからずっとやっておりまして、今、もちろんサケがほとんど帰ってこないということが一番頭の痛い問題です。私どもの受けとめとしては、まだここで、ふ化放流を諦めるのかということは、決して今はそんなことではないと思います。
 そして、何とか養殖の形でサケの資源を三陸でずっと維持できないか。例えば新巻きサケなども、天然の新巻きサケが難しければ、養殖のサケを使って新巻きにするというのも新しい商品としていいのではないかなど、いろいろ考えながらやっております。
 ハードの整備は多額の経費を要しますので、今後どうするかは、これこそ、よく県漁連の皆さんと議論しながら考えていく必要があるということでございますけれども、当面は、遊泳力のある稚魚を放流したらいいのではないかとか、まだまだやれる手段、そしてやるべきトライはありますので、そこに力を入れていきたいと思っております。
〇米内紘正委員 大変難しい判断になってくると思います。今、令和10年とお話しされていましたけれども、例えば、本当に令和10年の段階でどういうところで判断していくのか、実はその投資を、養殖とかほかの柱のほうに振り向けたほうが、そこでなりわいの再生により効果があるのではないかとか、その辺の議論は常にしていかなければいけないですし、そこは政策評価と、どういう事業にどういう政策があるのかというそこにかかわってくると思うので、よろしくお願いいたします。
 次に、水道事業についてお聞きいしたします。
 令和3年12月定例会の一般質問でも取り上げましたけれども、水道事業においては、広域化における今後の県の役割などを質問したところ、今回の知事演述の中でも、水道事業及び汚水処理事業の広域的な連携の推進が盛り込まれておりました。
 今後の県の積極的なリーダーシップを期待するところでありますが、まず、各市町村から水道事業に対してどのような要望が上がっていて、県は、それに対してどのような具体的なプランを策定し、どのような体制でリーダーシップを発揮していくのかお伺いいたします。
〇石田企画理事兼環境生活部長 水道事業の広域的な連携の推進についてでありますが、現在、水道広域化推進プランの策定に向け、県と市町村等の全水道事業者で構成する水道事業広域連携検討会において、市町村等の意向を尊重し、各水道事業の課題解決に役立つ広域連携の実現を図ることを方針として示し、検討を進めているところでございます。
 市町村等からは、施設維持管理の共同委託等管理の一体化や共同設置、共用等の施設の共同化について、シミュレーションの実施希望があったところでございます。
 今後、財政面やサービス面、体制面等さまざまな観点で広域連携におけるメリット、デメリットを整理して、市町村等に情報提供の上、各市町村等の意向を再度確認し、具体的な取り組み内容やスケジュールを盛り込んだプランを策定する考えであります。
 また、体制につきましては、令和元年11月、水道事業を所管する県民くらしの安全課に水道広域連携担当を新設し、さらに、令和2年4月からは、地方公営企業を所管するふるさと振興部市町村課職員を兼務させ、経営的視点からの支援の充実を図っているところであります。
 今後も引き続き、関係部局と連携し、広域連携の推進を初め、市町村等が行う水道の基盤強化の取り組みを支援してまいります。
〇米内紘正委員 広域化に向けて動きがあって、大変頼もしく感じるところであります。前半の話とは違って、水道事業は完全に域内産業であります。これが、水道も、外から入ってきて、そこから富が流出してしまうなどということは避けなくてはならないですし、生活の水というところを守る意味では、ここは本当に行政の、特に県のリーダーシップが大変重要になってくるところだと思っております。
 次に、政務秘書についてお伺いいたします。
 これまで何回もいろいろやりとりがあったところでありますので、1点です。政務秘書の勤怠管理、勤務状況をつまびらかにしてはいかがでしょうか。
〇達増知事 政務秘書は、地方公務員法に規定する特別職の職員で、同法に基づき、本県では特別職の指定に関する条例に規定があります。
 一般職の職員については、地方公務員法等により、服務及び勤務時間について定められていますが、知事、副知事、政務秘書などの特別職については、そのような定めが適用されないものとして同法で規定されているところでありまして、知事、副知事と同様に、政務秘書についても勤務時間としての管理を行っていないものであります。
〇米内紘正委員 知事は、これまでの答弁の中でも、長野県知事特別秘書に係る訴訟を取り上げられて、知事という特別職に属する公務員は、かえって政治的に活動することによって公共の利益を実現することも職分とするとあります。なので、法的にどうかというのではなく、こうやって住民監査請求等、話題になっているわけなので、もし公共の利益を実現するというところで知事が自信を持っていらっしゃるのであれば、例えば、まずはその説明をされて理解してもらうのはいかがですか。
〇達増知事 知事という特別職に属する公務員は、かえって政治的に活動することによって公共の利益を実現することも職分とする公務員であり、その政治的活動にかかわる政務につき公務員として、これを補佐する秘書を設けることがその職務の円滑・効率的な遂行に資するものということについては、議会でも繰り返し述べていることで、議会で述べているというのは、県民の皆さんに述べていることでありますので、そういう機会を設けていただいたことは、ありがたいと思っております。
 いずれ、そのように公益に資する、公共の利益を実現する、その職務の円滑、効率的な遂行に資するということでありますので、一定の理解は得られるものと思っております。
〇米内紘正委員 その公共の利益に資するかどうかは、県民に見せなくていいのですか。
〇達増知事 冒頭にあった政務秘書の勤怠管理、勤務状況をつまびらかにしてはどうかということでありますけれども、例えば、日報というようなものをイメージしているとすれば、これは一般職の職員でも、必要がある場合に書面で報告書等を作成することはありますが、日々の業務を報告するいわゆる日報というものは、試用期間の職員を除き、基本的に作成していないものであります。
〇米内紘正委員 今、一般職の方は話題にしておりません。今、こういう住民監査請求等、疑問が上がってきたのであれば、別に隠すことではなく知事がこういう活動、こうやって挨拶回りをして、こういう政治活動に役に立っているのだ、だから公共の利益を実現していると堂々とおっしゃればいいかと思うのですけれども、いかがですか。
〇達増知事 住民監査請求については、適法性を欠くということで却下されていると記憶しておりますし、一般職との関係ではないという、一般職並みの勤怠管理をせよという趣旨かと思ったので、そうでなくてもいいというのであれば、副知事についても、個別の何をやっているかというのは、特に発表してはいないものでありますし、いずれにせよ、私の分身として仕事をしてもらっているわけでありますから、それは私自身の仕事と同じように見ていただければと思います。
〇米内紘正委員 今、副知事とか一般職の方にそういう疑問はどこからも湧いていないわけです。多分聞いたら、こういうふうに勤務していましたと出てくると思います。だから、それとは全く違うのです。そうではなくて、住民監査請求は却下されたかもしれないですけれども、その疑問が上がったのは事実であるわけでございます。その疑問に対して、別にそんなにかたくなに拒否することなく、それは丁寧に県民に、こんな活動しているのですよと説明しなければ、知事しか活動を知らないわけですから、何をやっているのか知らないのに、公共の利益に資するのですと言われても、それを何で見ていればいいかわからないわけです。何でオープンにできないのですか。
〇達増知事 具体的には、矢巾町内での挨拶回り活動に関することのように、質問があれば、それに答えるようにいたします。
〇米内紘正委員 では、これからは、そういうふうに問いを投げかけたら、そのときの行動内容、勤務状況をつまびらかにしていただけるということですね。
〇達増知事 今、具体的な質問が挙がらないとすれば、余り具体的な行動については問題になっていないということなのではないでしょうか。
〇米内紘正委員 具体的な行動について問題になっていないというのは、今、どういう論法かわからなかったのですけれども。ただ、どういうふうに動いているのかを提示すれば、みんな納得するのではないかと思うのです。それがだめな理由というのは、逆に、何でしょうか。
〇達増知事 具体的に何を知りたいのかが明らかにされておらず、1日24時間、1分ごとのスマートバンドか何か、それでビッグデータを取得し、それをオープンにするようなことを求めているのか、それとも、何か個別具体的にその政治活動について知りたいのか、それとも、地元を回って歩く活動について知りたいのか。そういう意味では、矢巾町での挨拶回り活動以外について質問が出ていませんので、関心があるのはその矢巾町の挨拶活動のことで、それについては既に答弁しているということです。
〇米内紘正委員 わかりました。これから具体的な事象がありましたら、例えば、1分置きなどというのはないですけれども、どういった行動をしているのかというのは、県民の税金なわけですから私も知りたいところであります。この日は庁内で事務作業、書類作成作業、この日は1日挨拶回り、土日はどこどこ出張とか、そういったレベルでわかればいいと思っております。
 次に、盛岡市の事業についてお聞きいたします。
 市や県の行政、経済活動の中心地である内丸地区において、建物群の老朽化や官公庁、岩手医科大学の移転による空き地の点在などが問題になっていることから、盛岡市では、内丸地区の将来像とその実現に向けた取り組みの方向性を取りまとめるため、内丸地区将来ビジョンを策定しようとしております。
 県庁所在地の盛岡市の中心地区である内丸地区においては、国、県、市の建物が数多く存在することから、一体となって計画の策定に取り組む必要があると考えます。
 内丸地区将来ビジョンの推進について、県は、現在どのようにかかわっているでしょうか。また、盛岡市とどのように連携して内丸地区将来ビジョンを策定していくのか伺います。
〇保副知事 盛岡市では、建物群の老朽化や官公庁の一部移転、中心市街地の吸引力低下等が内丸地区の課題であるという認識をお持ちでございまして、内丸地区のまちづくりの将来像と今後の取り組みの方向性等を取りまとめた内丸地区将来ビジョンの策定を現在進めております。
 このビジョンの策定に当たり、盛岡市におきましては、昨年7月に、この地区とその周辺の企業、団体等で構成する内丸地区将来ビジョン懇話会を設置して意見交換を行ってまいりまして、県もこれに加わっております。
 県においては、内丸地区は県行政の中核を担う機能を有していることから、この懇話会の場で、他の地域のモデルケースとなり得るまちづくりとなるよう、広域的な視点も内丸地区将来ビジョンに盛り込んでいくべきであること、さまざまな分野の専門家や県民等の意見、提言を広く聴取するなど、かかわりのある多様な主体による合意形成に努めるようにしてほしいことといったような意見を述べてきたところであります。これらの意見については、盛岡市において内丸地区将来ビジョンの案に反映いただいていると考えております。
 このビジョンは、本年度内に策定されるということでございます。その後、さらに具体的な事業手法等を盛り込んだ(仮称)内丸プランを策定する予定と聞いております。
 県としても、引き続き、市と連携しながら、内丸地区のあるべき将来像の実現に向け取り組んでまいります。
〇米内紘正委員 県の中心地域でありますし、県庁も当分はここにあるわけでございますので、ぜひ、いろいろな意見を言っていって、ここが空洞化しないような対策をとっていっていただければと思います。
 きょうの総括質疑においては、ちょっと早口にはなってしまいましたけれども、政策評価事業を含めて、いわて県民計画(2019〜2028)が砂上の楼閣とならないようにお願いしまして、総括質疑を終えさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
〇軽石義則委員長 質問席の消毒のため、しばらくお待ち願います。
 次に、吉田敬子委員。
   〔吉田敬子委員質問者席に着く〕(拍手)
〇吉田敬子委員 いわて新政会の吉田敬子でございます。会派を代表して質問させていただきます。
 若い世代の中には、結婚や出産、子育てに希望を見出しづらく、閉塞感を感じている方々が少なからずいます。生活が苦しいひとり親家庭も多く、7人に1人の子供が貧困状態にあります。児童虐待の相談対応件数や不登校、いじめの件数も過去最多となっています。子供や若者、家庭をめぐるさまざまな課題がコロナ禍によりさらに深刻化しており、その影響が長く続くことが懸念されております。
 結婚、妊娠、出産、子育ては、個人の自由な意思決定に基づくものであることを前提に、結婚や出産、子育てについての個人の希望がかなえられるような人口減少対策、子供政策を最重要課題として推進すべきであるとの思いから質疑させていただきます。
 まず初めに、子供を産み育てやすい環境について、重点テーマについてお伺いいたします。
 令和4年度は、人口減少への対応、デジタル化の推進、グリーン社会の実現の三つを重点テーマとして掲げています。近年の当初予算編成を見ると、重点テーマを設定したのは今回が初めてと認識しておりますが、重点施策としては令和4年度限りなのか、3カ年程度など一定期間を見据えて設定したものなのかお伺いいたします。
〇石川政策企画部長 この三つの重点テーマは、今回初めて設定したものでございます。この三つの重点テーマでございますが、本県を取り巻く社会経済情勢あるいは国の骨太の方針―経済財政運営と改革の基本方針2021におけるグリーン、デジタル、活力ある地方創り、少子化対策といった動向も踏まえまして、いわて県民計画(2019〜2028)を着実に推進するために設けたものでございます。
 この三つの重点テーマでございますが、第2期岩手県ふるさと振興総合戦略に掲げる人口減少対策等施策推進目標の達成、全ての県民がデジタル化の恩恵を享受できる環境の整備、温室効果ガス排出量2050年実施ゼロなど、いずれも中長期的な取り組みが必要なものでございます。
 令和4年度当初予算案に盛り込んだ事業の成果あるいは本県を取り巻く社会経済情勢などを踏まえながら、令和5年度以降の当初予算の重点テーマについても検討していきたいと考えているものでございます。
〇吉田敬子委員 中期的ではあるけれども、来年度以降はどうなるかわからないという答弁だったと思います。
 いわてで生み育てる支援本部についてお伺いいたします。
 県は、昨年12月、人口の自然減対策として、全庁部局横断的に対応するいわてで生み育てる支援本部を設置しました。これまでも部局横断的に取り組んで来られたと思っておりましたが、そうではなかったということで、既存の取り組みでは課題が部局横断的には共有されていなかったという問題意識から今回の設置に至ったようにも見えますが、いわてで生み育てる支援本部を設置することで組織として何が具体的に変わるのか、設置に至った理由について、課題認識を含めてお伺いいたします。
 また、2020年度の合計特殊出生率が1.32まで低下しました。2024年度に1.58を目標としておりますが、目標設定、目指す姿を改めてお伺いいたします。
〇達増知事 県ではこれまで、いわて県民計画(2019〜2028)や第2期岩手県ふるさと振興総合戦略を策定し、安心して子供を産み育てられる環境の実現のため、市町村などさまざまな主体と連携し、結婚、妊娠、出産、子育ての支援に取り組んでまいりました。
 このような支援の取り組みを進める中にあっても、本県の合計特殊出生率は全国と同様に低下傾向にある危機的な状況であり、その背景には、結婚、出産等を望む県民の皆さんが、さまざまな経済的、社会的困難に直面し、これらを諦める、いわゆる生きにくさが解消されていないものと認識しております。
 生きにくさを生きやすさに変え、子供を産み育てたいという県民の希望に応えるため、これまでも関係部局が連携して支援に取り組んできたところでありますが、全庁的な情報共有や各部局のさらなる連携を進めることにより、結婚、妊娠、出産、子育て支援の施策を総合的、効果的に推進し、安心して子供を産み育てられる環境を充実させるため、いわてで生み育てる支援本部を設置いたしました。
 委員御案内のとおり、いわて県民計画(2019〜2028)や第2期岩手県ふるさと振興総合戦略に掲げる合計特殊出生率の向上を目標に、市町村、関係団体、各分野の県民と一体となり、子供の誕生や成長をともに喜び、子育てを応援していく地域社会の実現を目指してまいります。
〇吉田敬子委員 今の御答弁では、これまでもやってきたものをいわてで産み育てる支援本部として位置づけたということはわかりますけれども、来年度以降、新規事業もありますが、組織として何が具体的に変わるかというところで、例えば、人員配置とかそういったもの、保健福祉部の中で増員とかもしあるのであれば、改めてお伺いしたいと思います。
〇野原保健福祉部長 自然減対策に関しましては、これまで、結婚、妊娠、出産、子育てということで、保健福祉部の施策がコアの部分でございましたので、当部が中心になってやってまいりました。けれども、知事から御答弁申し上げましたように、これから全庁的に、そして、市町村や関係団体とも連携してということで、より一層組織立てて全庁的に進めていきたいという形でいわてで産み育てる支援本部を設置したところでございます。
 体制に関しましては、具体に何かポストを設けるということではございませんけれども、こうした連携していくといういわてで産み育てる支援本部ができたことによって、保健福祉部としてもこれまで以上に、より有機的に活性化して、取り組みが進められるものと認識しております。
〇吉田敬子委員 この件については、後ほどまた触れたいと思います。
 人口減少対策を重点テーマとした上での令和4年度のいわてで生み育てる支援本部の今後の取り組みについて、令和4年度の新たな取り組みや令和4年度当初予算案への反映、市町村等との連携方策についてお伺いいたします。
 また、令和4年度における機運の醸成―県民運動ですけれども―を図った上で、令和5年度以降、さらに取り組みを拡充していくのか、知事の所感をお伺いいたします。
〇達増知事 令和4年度の新たな取り組みや予算への反映、市町村等との連携、令和5年度以降の取り組み方針についてでありますが、令和4年度の新たな取り組みとして、産後ケアの利用料無償化を行う市町村への補助、いわて幼児教育センターの設置、妊娠、出産や不妊に関する知識の普及啓発などの新規事業を盛り込むこととしたほか、民間企業などと連携した出会いの場の創出、県営住宅の収入要件の緩和、不妊治療等に係る休暇の新設などの事業や制度の拡充を進めていくこととし、必要な予算を令和4年度当初予算案に計上しております。
 市町村等との連携に当たっては、産後ケア利用料の無償化や新婚世帯に対する引っ越し費用助成など、市町村と協調して支援する事業や市町村の取り組みを促進する事業などを盛り込んだほか、地域社会が一体となって安心して子供を産み育てる県民運動の実施などを通じ、市町村はもちろん、企業やNPO等団体との一層の連携強化を図ってまいります。
 また、令和5年度以降の取り組み方針については、いわてで生み育てる支援本部において、来年度事業の取り組み状況や効果を検証の上、より実効性の高い施策を展開できるようしっかり検討してまいります。
〇吉田敬子委員 では、具体的にお伺いしてまいりたいと思います。
 周産期医療体制の整備についてですが、県立釜石病院の分娩取り扱いが昨年10月から休止、ことし4月からは奥州市唯一の産科診療所が分娩取り扱いをやめることになっております。県内の分娩可能施設は、周産期医療圏を設定した2008年の45施設から22施設にまで減少し、33市町村のうち分娩できるのは9市町のみとなっております。
 今年度から岩手県周産期医療協議会は、小児・周産期医療協議会になりました。令和4年2月に行われました岩手県小児・周産期医療協議会を傍聴させていただきましたけれども、医療提供体制に向けた助産師の活用について、院内助産、助産師外来の推進についても検討を進めたいとされていたことについては、大変評価したいと思っております。
 また、新生児ドクターヘリも、今年度の訓練を経て、新年度から運用開始、岩手県小児・周産期医療協議会の場では、委員の先生方から、事業評価のあり方や予算の見える化についての提言もありました。
 昨年9月の私の一般質問で、次期保健医療計画策定に向け、改めて受療動向を確認するとともに、周産期医療圏のあり方など、医療提供体制の検討を行っていくと御答弁いただきましたが、周産期医療提供体制の整備に向けた令和4年度の具体的な取り組みについてお伺いいたします。
〇達増知事 周産期医療と小児医療を一体的に協議する体制に再編した岩手県小児・周産期医療協議会を令和4年2月に開催し、委員御紹介のとおり、産後ケアや医療体制の充実に向けた助産師の活用、令和4年4月からのドクターヘリによる新生児搬送の運用開始などについて議論を行ったところであります。
 令和4年度においては、具体的な取り組みを進めるため、岩手県小児・周産期医療協議会に小児、周産期それぞれの専門部会を設置し、令和6年度からの次期保健医療計画の策定に向けて、周産期医療実態調査を行い、圏域をまたいだ妊婦の受療動向等の分析を進めるとともに、関係学会から出されている提言や医師の働き方改革への対応にも十分配慮しながら、人口動態、医療資源の動向などを踏まえ、周産期医療提供体制の検討を行ってまいります。
〇吉田敬子委員 妊産婦のアクセス支援についてお伺いいたします。
 分娩取扱施設が減る中で、医師の確保等、引き続き取り組んでいただきたいと思っておりますが、先ほど申しましたとおり、県内では33市町村のうち9市町でしか分娩ができず、ほかの24市町村では居住市町村外での分娩となっております。
 県では、10カ所の周産期母子医療センターに通院するハイリスクの妊産婦に対し、通院や宿泊の支援を行っております。新年度は産婦健診へも拡大いただき大変評価するところでありますが、ハイリスク加算要件にある妊産婦であっても、周産期母子医療センター以外に通院している妊産婦も県内にはおります。
 県内のハイリスク妊産婦は増加傾向にはありますが、全体の分娩件数のどの程度と認識しているのか。今後、周産期医療提供体制について改めて議論されると思いますが、全ての妊産婦に対するアクセス支援について、県と市町村の役割をどのように捉えているのか。また、これまでの県の支援実績と各市町村のハイリスク妊産婦以外の妊産婦へのアクセス支援の実績について、あわせてお伺いいたします。
〇菊池副知事 医療機関におけるハイリスク分娩の対応状況は公表されていないため、ハイリスク妊産婦の数は正確には把握できておりませんが、ハイリスクの周産期救急患者に対応するため、県では、総合周産期母子医療センターである岩手医科大学に周産期救急搬送コーディネーターを配置し、地域の産科診療所や地域周産期母子医療センターにおいて、切迫早産や胎児の異常等により転院搬送等が必要となった場合に、迅速かつ適切な受け入れ態勢の確保や調整等を行うなど、安全な周産期医療体制の確保を図っている状況にあります。
 このコーディネーターの調整件数を見ますと、令和2年度は224件、県内の全分娩取扱件数の約3%程度となっておりますから、ハイリスク妊産婦も同程度以上の割合であると認識されます。
 妊産婦のアクセス支援については、周産期母子医療センターへの広域的な通院が想定されるハイリスク妊産婦について、県では、令和2年度からハイリスク妊産婦アクセス支援事業を実施し、市町村と連携した取り組みを進めておりまして、令和2年度には6市町村、30人の活用実績があり、令和3年度は13市町村、110人ほどの活用を見込んでいるところでございます。
 令和4年度におきましては、分娩後の産婦健診に係る交通費等を対象とするなど妊産婦への支援の充実を図るとともに、引き続き、事業未実施の市町村に対しまして、事業を周知し、活用を促進してまいります。
 また、ハイリスク以外の妊産婦に対する交通費や宿泊費などのアクセス支援は、地域の母子保健を担っている市町村が実施しているところでありまして、現在、17市町村で取り組んでいると承知しております。
 こうした取り組み状況や課題等を踏まえ、昨年6月には、国に対して、ハイリスク妊産婦以外の妊産婦も含めたアクセス支援に対する財政支援制度を創設するよう要望したところでもありまして、今後の国の動向等も注視しながら、支援のあり方などを考えてまいりたいと思います。
〇吉田敬子委員 ハイリスク妊産婦でなくても、今は、長距離の通院を余儀なくされているのが現状であります。先ほど県と市町村の役割分担についてちょっとお伺いしたのですけれども、例えば、県立釜石病院で、今、分娩取扱停止になっておりますが、周産期協議会を傍聴させていただいたときも、委員の先生から、釜石市では、市としてはハイリスク妊産婦以外の方にもアクセス支援をしていますけれども、夜間は、例えばタクシーとか自家用車になるかと思いますが、釜石市は、現在夜間のタクシー運行がないそうです。結局、自家用車以外に頼れないわけです。それで、今回、県と市町村の役割をどう捉えているのかとお伺いしたわけです。多分、夜間のタクシー運行がないところは、市町村の役割なのか県の役割なのか。これは、釜石市だけではなくて、今後ほかのところでも出てくるような状況になると思うのですけれども、そういった意味で、いろいろ把握して、県と市町村の役割をしっかり、協議していただきたいという意味で取り上げました。
 この件について把握されているのか、改めて県と市町村の役割についてお伺いしたいと思います。
〇菊池副知事 この事業、そして市町村の対応について、私は、詳細の資料を今持ち合わせていませんので、保健福祉部長が答弁いたします。
〇野原保健福祉部長 周産期に関して、御指摘のとおり、ハイリスク妊産婦に関しては、市町村ではなく4広域医療圏で対応しなくてはなりませんので、そうした部分については、県の役割としてきちんと支援していこうということです。
 一方で、妊婦健診とか産後ケアは母子保健で市町村が担っています。ほとんどが分娩、産むときだけというよりも、健診のときに、お住まいの市町村の医療機関にかかったり、隣の町にかかったり、そういう母子保健を進める観点で市町村も取り組まれていると認識しています。
 委員から御指摘があった釜石市の夜間の足の件は、お話が出ているのは我々も承知しています。ただ、夜間のタクシーがないというのは、周産期医療だけではなくて、ほかの疾病の方も同じ課題だと思っていますので、もちろん周産期医療の中で地域の課題ということでは議論をしていきますし、夜間の足については、交通を担当している部局とも課題を共有し、対応してまいりたいと考えています。
〇吉田敬子委員 こういった課題は、先ほど野原保健福祉部長がお話ししたとおり、周産期のことだけでもないですし、釜石市だけの問題でもなく、今後ほかの市町村でも出てくる可能性があるということで、しっかり県と市町村での協議をしていただきたいと思っております。
 産前産後サポート、産後ケアの取り組みについてお伺いいたします。
 産前産後サポート事業は17市町村で実施されております。産後ケア事業は26市町村で実施しておりますが、ショートステイ型は1市のみ、デイサービス型は11市町―これは矢巾町の予定を含みます―アウトリーチ型は24市町村と、内容や対象月齢、回数等が市町村で異なり格差が生じております。
 岩手県小児・周産期医療協議会でも、市町村に事業内容を委ねるのではなく、県がリーダーシップを発揮してほしい等の声がありました。また、産後ケア事業を担う団体からは、里帰り出産にも対応してほしいとの要望や、また、花巻市では、今後、宿泊型の産後ケアセンターの設置を検討するとも聞いております。
 例えば、対象を産後1年とするなど県としての統一を図るべきとも考えますが、産後ケア事業の予算化に至った経緯、事業の概要、今後の方針についてお伺いいたします。
〇菊池副知事 市町村が主体となって対応しております産後ケア事業の充実につきましては、市町村における事業の実施状況や市町村要望等も踏まえ、未実施市町村の取り組み促進や利用しやすい環境の整備に向けて方策を検討してきた中で、事業化を図ることとしたものであります。
 令和3年12月に設置したいわてで生み育てる支援本部においても、自然減対策事業の一つとして位置づけ、産後ケア事業利用促進事業費補助として、令和4年度当初予算案に盛り込ませていただいたところでございます。
 現在、産後ケア利用者は、所得に応じて利用料の一部を負担しているところでございますが、この事業においては、市町村がその利用料を無償化する場合、その利用料相当額を市町村に対して補助する形で、利用者の経済的負担の軽減を図ろうとするものでございます。
 今後においては、事業の実施に当たり、市町村に対する周知、普及を図って、積極的に活用していただくよう促すとともに、妊産婦等が身近な地域できめ細かなケアを受けられるよう、地域の実情に応じた事業の実施状況や効果などについて検証を図りながら、市町村の取り組みを支援してまいりたいと考えております。
〇吉田敬子委員 今回、来年度から産後ケアを県で実質無償化されるということは、大変喜ばしいことだと思っていた反面、現場の声を聞くと、こういった産後ケアをやるということは寝耳に水だったということで、市町村からは、改めて事業費を予算立てしなければいけない現状だったり、令和4年4月1日から実質無償化にするのはちょっと難しいかもしれないという声もいただいております。
 私は、今回県が、市町村の意向をどこまで聞いていただいたのか、産後ケアをやっている市町村に対して、どれだけアンケートなり聞き取りをしていただいたのかというところが課題だと感じておりました。それに関して、何か市町村に照会等、聞き取りを行ったのか、できれば令和4年度以降、実際の満足度のアンケート調査を実施していただきたいと思っておりますが、改めてお伺いいたしたいと思います。
〇野原保健福祉部長 この事業の実施に当たりましては、ふだんから県と市町村で母子保健に関してはいろいろ意見交換をする機会がありますので、そういった中で市町村の意向等についても把握しながら、事業として、今回、令和4年度当初予算案として盛り込ませていただいたところでございます。
 一方で、委員からも指摘があったとおり、産後ケア事業については、まだ市町村によって取り組みに差があるのも事実です。全ての市町村の足並みがそろってからでないと県ができないとなると、なかなかそれもできないのが事実でして、県が取り組む姿勢を示すことによって、実施していない市町村も真剣に取り組んでいただく、我々が着手することで、かなり全県的に広がる効果があると考えています。そういった意味では、県が実施することによって、実施していない市町村も、多分かなり真剣に検討していただくと思いますし、この産後ケアについては、全国的に、岩手県は全市町村が一致して取り組んでいる県という形で、今後とも市町村と連携し、情報交換を密にしながら進めていく考えであります。
〇吉田敬子委員 野原保健福祉部長から前向きな御答弁をいただいて大変感謝はするのですが、実際に今やっている市町村であっても、それが事前に知らされていなかったのもあって、事業化もすぐにはできないということも聞いております。やっていないところに対しては、確かに県が、全県的にやるとなると、では、私たちもやろうというところがふえることはそのとおりだと思うのですけれども、私もさまざまな市町村の声を聞いておりますが、内容の格差もあって、できればこういう事業を本当はやりたいけれども、なかなかできない。それは人的なところだと思いますけれども、そういったところで、今後、令和4年度以降、ぜひ丁寧にしていただきたいと思っております。
 低出生体重児への対応についてお伺いいたします。
 本県の小児、周産期医療に係る現状について、令和2年の出生数を平成22年と比較すると、2、500グラム未満で生まれる低出生体重児の割合が増加しております。また、母の年齢は29歳未満の割合が減少している一方で、35歳以上が6.6ポイント増加しております。
 日本の赤ちゃんの出生時の平均体重は約3キログラム、平均身長は約50センチメートル。しかし、2019年の統計では、全体の9.4%の赤ちゃんが2.5キログラム未満、1キログラム未満の赤ちゃんも0.3%となっております。
 小さく生まれた赤ちゃんのためのリトルベビーハンドブックという事業があります。一般に配布される母子健康手帳の発育曲線グラフの体重は1キログラムから、身長は40センチメートルからとなっておりますけれども、小さく生まれた子の体重や身長を書こうと思っても、目盛りがなかったり、保護者からは、出生児の体重が書けなくて悲しくなるといった声が上がっております。
 リトルベビーハンドブックでは、例えば、体重の目盛りのスタートはゼロから、子供の成長に合わせた記載が可能となっております。母子健康手帳と一緒にこのリトルベビーハンドブックを作成、配布する自治体が6県5市あり、市町村からの要望の声も聞いておりますけれども、本県の低出生体重児の現状に対する認識と支援策についてお伺いいたします。
〇菊池副知事 本県における出生時の体重が2、500グラム以下の低出生体重児は、厚生労働省人口動態統計によりますと、平成28年から令和2年までの5年平均では744人、出生数に対する割合は9.8%となっておりまして、全国平均の9.4%と比較するとやや上回っている状況にあります。
 低出生体重児が生まれる要因、背景として、妊婦や胎児の疾患が主な要因とされておりますが、近年の晩産化が影響しているとも認識しております。
 低出生体重児は、さまざまな疾患を抱えている場合がありまして、市町村が行うこととされている母子保健施策の中で対応されておりますが、家庭訪問や育児相談などにより支援しているところであります。
 特に、医療の面では、養育医療として医療費助成を行っているところでございますが、御案内のとおり、この点では、県は、この医療給付費の4分の1を負担する形で支援している状況にもあります。
 また、委員から御紹介があったリトルベビーハンドブックの件でございます。先日、朝のニュース番組で私も見まして、問題意識は持ったところでございます。他の自治体において、低出生体重児向けの手帳として作成されているものはいろいろあると承知しております。本県の取り組みを進めるに当たりましては、参考とすべき点もありますから、県としては、こうした他県の状況や市町村の意向も重要でございます。市町村の意向も踏まえ、どのような内容とするのがよいのか検討していく必要があると考えております。
〇吉田敬子委員 流産、死産への対応についてお伺いいたします。
 妊娠22週以降の死産及び出生後7日未満の死亡を周産期死亡といいますが、本県の周産期死亡率は全国より高い傾向にあります。
 特に、妊娠22週以降の死産を後期死亡といいますけれども、これが多くを占めております。なぜ周産期死亡率が本県は全国と比較して高い傾向なのか、特に妊娠22週以降の死産が多いのか、その要因を県としてどのように分析、把握しているのかお伺いいたします。
〇菊池副知事 妊娠22週以後の死産と生後7日未満の早期新生児死亡をもとに算出する周産期死亡率につきましては、本県のそもそもの対象件数が少ないこともあり、年ごとの増減が大きい状況にあります。令和2年は3.1と全国の3.2より低くなったり、一定の傾向とはなっておりませんが、全国平均を上回る年が多い状況であることもまた事実であります。
 妊娠満22週以後の死産は、一般的には、妊娠中の高血圧症候群や胎児の染色体異常などがその要因と言われているところでございますが、これまで、産婦人科医などで構成しております岩手県周産期医療協議会などにおいても議論してきているところでございますが、まだ明確な結論に至っていない状況でございます。
 今年度、周産期医療と小児医療を一体的に協議する体制に再編いたしました岩手県小児・周産期医療協議会の場などにおきまして、引き続き、その要因、対策について検討を進めていく考えでございます。
〇吉田敬子委員 流産や死産を経験した女性に対するグリーフケアのニーズの高まりと支援の重要性が指摘されております。ケアに対する医療機関や医療従事者の姿勢にも濃淡があり、支援につながる情報を得られない当事者が、誰とも悩みを共有できず孤立しがちになっているからです。女性の7人に1人が流産を、年間約2万人が死産をそれぞれ経験しております。
 昨年5月には、国から、流産や死産を経験した女性等への心理社会的支援等についての通知もありましたけれども、本県と各市町村の現状に対する認識と支援策についてお伺いいたします。
〇菊池副知事 グリーフケアについてですが、委員御紹介の国の通知によりますと、流産や死産を経験した方に対しては、市町村の母子保健担当や子育て世代包括支援センターが支援機関となり、産婦健診なども含む市町村の各種母子保健サービスの対象となるものとされております。
 本県においても、こうしたサービスを活用してケアが行われている状況にありますほか、民間の団体が、ピアサポートなどの支援活動を行っているものと認識しております。
 また、県といたしましては、岩手医科大学附属病院に委託設置しております不妊専門相談センターにおいて、流産を繰り返す不育症についても相談を受け付けるなどしておりまして、こうした方々の支援に取り組んでいる状況にございます。
 なお、国の令和4年度予算案においては、国が民間団体を活用して実施いたしますピアサポーターの育成研修、医療従事者向け研修などの事業が予定されているところでございます。県としては、こうした事業の活用も行いながら、市町村等におけるグリーフケアの取り組みを支援してまいる考えでございます。
〇吉田敬子委員 次に、不妊治療への支援についてお伺いいたします。
 本県では特定不妊治療を行う医療機関が2カ所ありますが、これは全国ワースト1位です。以前より改善したものの、特定不妊治療費助成を受ける夫婦の約2割が県外で受診しております。他県では、治療回数を上乗せしたり、通院交通費の一部を助成するなど、さまざまな支援策を行っている一方、岩手県では、これまで一つもありませんでした。
 制度改正で本県でも申請が増加している中、アクセス支援等もぜひ検討していただきたいですけれども、不妊治療に従事する医師、胚培養士、カウンセラー等の人材育成に係る支援や男性不妊治療に従事する医師の確保など、医療提供体制の整備をどのように進める考えかお伺いいたします。
〇達増知事 不妊治療のうち、特定不妊治療を行う医療機関については、申請に基づき、施設、設備、人員配置等の基準を満たす医療機関を知事等が指定することとされていますが、県内の指定医療機関は、現在2カ所となっております。
 特定不妊治療は極めて高度な先進医療で、医療機関を拡充していくためには、施設、設備の整備や従事する医師、胚培養士等の専門人材の養成が課題となっています。
 現在、特定不妊治療等の保険適用に向けて、国の中央社会保険医療協議会で審議されていますが、人員配置などの施設基準は現行どおりとされる見込みであり、こうした課題に対応するためには、国レベルでの対応が必要であります。
 県では、政府予算提言・要望において、治療提供体制の充実を図るための支援を要望してきたところであり、県内で希望する治療が受けられるよう、引き続き国に働きかけてまいります。
〇吉田敬子委員 県内で受診している人が今までは半分近くあったのが約2割になっているのは、多分、新型コロナウイルス感染症の影響による県外移動を自粛したことによるものもあるかと私は思っております。保険適用になったとしても、医療機関によって受けられるもの、そして技術もさまざまですので、やはり県外で受けたいという方が結構いらっしゃると思います。医療機関の拡充は難しいと知事は御答弁されておりましたけれども、であるならば、別の形で、さまざまな支援策を検討して、先ほど、アクセス支援について等、上乗せ助成等もお話しさせていただきましたが、ワースト1位なわけです。全国で一番少ない医療機関ということで、ぜひ、引き続き検討を行っていただきたいと思います。
 次に、夫婦の約5.5組に1組が不妊検査や不妊治療を受けております。高度な不妊治療を始める女性の精神状態に関する大規模な国内初の調査で、約54%に鬱の症状が見られるとの結果がありました。経済面だけでなく精神的支援も重要だとのことです。
 また、不妊治療している女性の多くが、仕事との両立を困難と感じており、仕事と治療の両立を支援する柔軟な労働環境が求められていることは、これまでも訴えてきております。
 これまでの特別委員会等の質疑では、いわて働き方改革推進運動等において推奨してまいりたいというような答弁をされておりますけれども、企業の皆さんに、不妊治療がどのようなものなのか、まずは知っていただくことが重要であり、なぜ両立が難しいのかわからないため、治療を受けやすい休暇制度の創設へもつながらないのではと考えております。
 不妊治療と仕事の両立支援に向けて、具体的にどのように取り組まれたのかお伺いいたします。新年度の取り組みとあわせてお伺いいたします。
〇保副知事 令和2年度に県が行いました企業・事業所行動調査によりますと、不妊治療時の休暇制度を設けている企業の割合は、これは令和2年度でありますが5.0%でございました。
 今後、一般不妊治療等が公的医療保険の適用になる予定もございます。希望する人がためらうことなく治療に専念できる職場環境、意識の醸成が重要であり、さらに、これが休暇制度の創設ということになればと考えております。そういうことが必要だと思っております。
 これまで県では、企業向けのセミナーや企業訪問の機会を捉え、この改正育児・介護休業法等を初めとした各種休暇制度の導入について働きかけを行っておりますし、働き方改革アワードなどで、休暇制度の充実や子育て中の従業員支援等の取り組みを表彰、発信するなどして、他の多くの企業に展開するよう取り組んできております。
 令和4年度におきましては、企業等における不妊治療休暇を含む各種休暇制度の整備、利用実態を調査することを予定しております。こういう調査がきっかけで、そういったことがどういうことかということで企業の意識が高まっていくという効果もあるものと考えられますが、まずは、そういったことを通して、その分析を行いながら、子供を産み育てやすい労働環境の改善に向け取り組みを進めてまいります。
〇吉田敬子委員 厚生労働省の調査で、不妊治療に係る実態を知っているかという調査がありまして、全く知らないが33.7%、ほとんど知らないが43%、76.7%の人が知らないと回答しているのです。先ほど、これまで企業向けセミナーをやられてきたということですけれども、具体的にどういうふうにやられたのか。
 例えば、先日、鳥取県のものを私も視聴させていただきましたけれども、今はコロナ禍で、オンラインで企業等に向けた不妊治療とはこういうものだという具体的な詳しい中身までを、企業のトップの方々向け等に配信されておりました。
 調査されることは大変いいことだと思いますけれども、休暇制度を設置することが目的ではなく、いかに理解してもらうかというところだと思います。具体的に、しっかりそういうセミナーをやったのか、改めてお伺いしたいと思います。
〇保副知事 今、セミナーの具体的な中身につきましての資料は手元にございませんので、大変申しわけありませんが、そこは答弁しかねますけれども、休暇制度の設置が目的ではないというのはそのとおりでございます。いかにしっかりとした応援体制をとるかという実質的なものにつながっていく必要がありまして、開催の仕方ですとか、どのようによく理解してもらうかといったやり方、中身については、今後ともしっかり考えていきたいと思っております。
〇吉田敬子委員 よろしくお願いいたします。
 県職員向けの不妊治療に係る出生サポート休暇制度をことし1月から開始されましたけれども、利用状況など反響についてお伺いしたいと思います。
〇白水総務部長 県職員向けの出生サポート休暇制度についてであります。
 休暇の期間は原則として1年につき5日としつつ、体外受精や顕微授精等の頻繁な通院が必要とされる治療を受ける場合は10日の範囲内としているところであります。
 また、本県では、職員の通院実態等を踏まえ、往復4時間程度の遠隔地に通院する場合についても、国では5日のところを10日の範囲内とするなど、国を上回る措置としております。
 本制度の活用については、ことし1月の制度開始から2月10日までの間でございますが、知事部局において延べ20名程度の職員から休暇取得の申請があったところでございまして、本県においても一定のニーズがあるものと認識しております。
 今後におきましても、子供を持つことを希望する職員が、仕事を続けながら不妊治療を受けることができるよう、当該休暇の取得実態、それから、国や他の都道府県の状況を踏まえながら、制度のさらなる改善に努めていきたいと考えております。
〇軽石義則委員長 この際、吉田敬子委員の質疑の途中ではありますが、世話人会の申し合わせにより10分間ほど休憩いたします。
 吉田敬子委員、御了承願います。
午後4時16分 休 憩
午後4時32分再開
〇軽石義則委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。
〇吉田敬子委員 里親委託促進事業についてお伺いいたします。
 2016年の改正児童福祉法で、虐待を受けるなどして親元で暮らせない子供を、原則として里親などの家庭で育てることが、国や自治体の方針として定められました。現在、約8割の子供が施設で生活しておりますが、国は、まず2024年度までに、3歳未満の75%以上を里親家庭に転換する目標を掲げております。
 虐待等により親元で暮らせない子供の里親家庭等での養育推進を盛り込み、従来の社会的養護から、里親等の家庭的養育への転換です。
 そこで、本県の里親委託の現状について、3歳未満の委託率、里親登録数、県内の児童養護施設等の入所児童数、それぞれの推移をお伺いいたします。課題認識と今後の支援策についてお伺いいたします。
〇菊池副知事 里親委託の関係についてでございます。委託の状況ですが、令和2年度実績を5年前の平成28年度実績と比較いたしますと、社会的養育を必要とする3歳未満の児童の里親等委託率は24.1%でありまして、21.2ポイントの増、里親登録数は193組であり、12組の増、児童養護施設と乳児院の平均入所児童数は全体で276.3人であり、26.2人の減となっており、徐々にではありますが、家庭的環境での養育への移行が進んできているものと受けとめております。
 県としましては、岩手県社会的養育推進計画に基づき、家庭に近い環境での養育を一層推進するため、児童養護施設等においては、施設内で6人程度のグループに分かれて生活する、いわゆる小規模化や住宅地の中に小規模な施設を設置し、地域交流など生活体験により社会的自立を目指す地域分散化の取り組みに加え、里親等委託率の向上と里親養育を包括的に支えていく体制を構築していくことが急務と考えております。
 このため、来年度においては、里親の新規開拓から里親と里子のマッチング支援、里親委託後の養育支援まで一体的に取り組む里親養育包括支援機関、いわゆるフォスタリング機関を開設する経費を令和4年度当初予算案に盛り込んだところでございます。市町村や児童相談所との密接な連携のもと、子供の養育の受け皿となる里親をふやすとともに、質の高い里親養育の提供に取り組んでいく考えでございます。
〇吉田敬子委員 ここで知事に改めてお伺いしたいのですけれども、自然減対策として、いわてで生み育てる支援本部の取り組みは、母子保健を担っている市町村との連携、課題共有等が不可欠だと思っております。知事も一般質問でそういった御答弁をされてまいりました。
 私は、これまでの質問で、細かいところではありますけれども、主に母子保健の質問をさせていただいておりましたが、課題は多様化しているわけで、寄り添った支援が重要だという認識から取り上げさせていただきました。
 今回、来年度から県民運動をされるということで理解しておりますが、先ほどの答弁では、組織として何か大きく変わったところが見えてこなかったところです。知事御自身は、例えば、市町村との対話をふやしていったりするものなのか。先ほど人員配置の話をさせていただきましたけれども、子ども・子育て支援室の職員数がふえたりするものなのか。これまで人口減の対策について、質問させていただきましたけれども、改めて知事の意気込みについてお伺いさせていただきたいと思います。
〇達増知事 これまでの自然減対策は、医療を初め、保健福祉の専門性の高い分野の施策を中心に推進してきたところでありますが、今後は、支援本部会議等を通じて、保健福祉部以外の各部局が、これらの施策をより深く理解することにより、自然減対策を部局間連携の強化を含め総合的、効果的に発展させて取り組むことができるため、充実強化が図られるものと考えております。
〇吉田敬子委員 先ほど保健福祉部長には、人員の配置は具体的に強化されるのかというお話をしたのですが、課題が多様化している中で、今の職員体制で、確かに部局横断的に取り組まれると思いますけれども、最終的には保健福祉部がメーンで一生懸命やられると思うのです。私は事業数がふえて、人の配置も必要ではないかという認識から質問させていただきましたが、その部分についてもう少し具体的に、知事の御所見を改めてお伺いいたします。
〇達増知事 ちょっとかみ砕いたような答弁をいたしますと、山崎史郎という人が人口戦略法案という本を書いています。一見小説なのですけれども、厚生労働省に長くいて、そして、内閣の地方創生部局にもいて、日本の官僚の中でも人口減対策に最も詳しい実務経験のある人の一人です。この人が子ども保険という、子供の出産から成長に係る財源を広く国民から集め、働いている人に子供ができる、また、働いていなくても子供ができる、その子供に対して、あらゆる場面できちっと手当てをしていくということを、内閣の中に戦略本部をつくって、人口戦略法案というものを成立させ、日本全体として少子化対策の切り札として、議論にピリオドを打って全面的に人口減少を逆転させていくという構想があるのですけれども、それに近いものをイメージしております。
 全ての県の政策分野が一つになっていわてで産み育てる支援本部をつくり、そして、民間のさまざまな企業、団体、市町村も力を合わせることで、岩手県において、さらに一段次元の高い人口減少対策が展開できればと思っております。
〇吉田敬子委員 わかりました。ぜひ、そういった構想によってやっていただきたいですし、やはり私は、予算もですけれども、具体的にしっかり事業数をふやした中で、職員も今すごく大変そうだなと思っております。そこに力を入れるのであれば、ぜひ人員を配置していただきたいということで質問させていただきました。先ほどの知事の御答弁の中で、しっかり配置していただけるという御答弁だと拡大解釈させていただいて、次の質問に移りたいと思います。
 医療的ケア児への支援についてお伺いいたします。
 医療的ケア児支援法の施行により、保護者の付き添いなしで、保育所や学校などで医療的ケア児を受け入れるための看護師の配置による支援体制の拡充が求められております。
 新年度は、県内の保育所や学校での看護師配置が進み、親が付き添わなくても済むケースがふえることを期待しておりますが、県内市町村の保育所や小中学校での受け入れに関するガイドラインの策定状況、国の医療的ケア児保育支援事業の活用状況、各市町村の看護師配置に対する県の取り組みをお伺いいたします。
〇菊池副知事 県内市町村の医療的ケア児受け入れに関するガイドラインは、保育所については、盛岡市と矢巾町が現在策定中でありまして、小中学校については、盛岡市、滝沢市、金ケ崎町の3市町の教育委員会が策定済みと聞いております。未策定の市町村教育委員会においても、県教育委員会が本年1月に策定いたしました岩手県立学校における医療的ケア実施指針を参考にして、策定に向けた取り組みを進めていると聞いております。
 また、国の医療的ケア児保育支援事業の活用状況は、令和3年度は、盛岡市、金ケ崎町、山田町が活用中でありまして、令和4年度は、陸前高田市、釜石市、滝沢市、矢巾町、山田町が活用予定である状況にあります。
 次に、各市町村の看護師配置につきましては、県では、看護師に対する小児障がい特性に特化した医療的ケア実技研修等を実施しているところでありまして、県教育委員会では、小中学校に対する看護師配置などの環境整備についての助言を行っていると聞いているところでございます。
〇吉田敬子委員 県立療育センターの機能強化についてお伺いいたします。
 県立療育センターは、2018年1月に岩手医科大学の隣に移転新設されてから4年目を迎えております。診療科の増設による診療体制の強化等が図られてきておりますが、医療的ケア児や発達障がい等の子供たちがふえ、診療科が混んでいる等、県立療育センターのニーズが高まっていると感じております。
 例えば、他県では入院から在宅へスムーズに移行するため、退院前に家族が入所児と一緒にトライアル的に宿泊できるような機能が、現在岩手県にはなく、また、一度退院した後であっても、リハビリ的に家族で宿泊できる機能もなく、当事者御家族等からの要望の声を聞いております。
 医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律―医療的ケア児支援法の施行を踏まえ、実態把握に努め、センターの機能強化に取り組むべきと考えますが、県の所感をお伺いいたします。
〇菊池副知事 県立療育センターの機能強化等についての御質問でございますが、県立療育センターにおいては、近年の医療の発達を背景として、重症心身障がい児等の受け入れニーズの増加や岩手医科大学附属病院等のNICU―新生児集中治療室の後方病床としての役割など、利用者の多様なニーズへの対応が求められております。
 また、いわゆる医療的ケア児支援法においては、都道府県の施策として、医療的ケア児支援センターの設置のほか、医療的ケアの実施や日常生活において必要な支援を受けられるよう、必要な措置を講ずること等とされたところでございます。
 これらに対応するため、県立療育センターにおいては、令和3年度から3年間で看護師15人の増員を行い体制強化を図るほか、岩手医科大学に県の寄附講座として設置した障がい児者医療学講座の医師による診療応援や看護師を対象とした研修を実施し、医療的ケア児への支援の充実にも取り組んでいるところでございます。
 委員から御指摘のありました在宅移行に向けた一時的な家族入所などについてですが、トイレや風呂など日常生活に必要な設備を備えた個室がない状況でして、施設設備面での課題はございますが、県としては、こうした新たなニーズ等の把握を踏まえながら、看護体制の強化や運用面での工夫による対応を指定管理者と協議し、医療的ケア児支援法の趣旨を踏まえたさらなる支援の充実に取り組んでいく考えでございます。
〇吉田敬子委員 ぜひお願いいたしたいと思います。
 教育に移ります。多様な学びの場の提供についてお伺いいたします。
 県内の不登校児童生徒が過去最多となっております。教育・子ども政策調査特別委員会の調査で、昨年12月、横浜市立横浜総合高等学校が、四つのNPOと連携した校内居場所カフェ、川崎市の子ども夢パークのフリースペースえんを訪問させていただきました。不登校の低年齢化で小学1年生がふえているとのことです。小・中・高校生それぞれに対応できる居場所づくりが重要であると認識しました。神奈川県では、12校で校内居場所カフェが設置されていると聞いております。
 一般質問では、不登校特例校設置に関する質疑もありましたが、県立高校での居場所カフェの設置に対する県の所感をお伺いいたします。
 また、神奈川県では、不登校相談会やフリースクール見学会を教育委員会が主催しています。県内のフリースクール等の情報発信や野外活動プログラムを用意して、社会的自立や学校生活の再開の位置づけや支援のあり方を保護者向けにもしっかり伝えております。
 フリースペース、フリースクール、不登校特例校、校内の居場所など、多様な学びの場の提供について、県の取り組みの方向性をお伺いいたします。
〇菊池副知事 多様な学びの場の提供についてでありますが、委員御紹介の校内居場所カフェ等の取り組みは、地域や民間と連携した学校における新しい居場所づくりの試みであると承知しております。
 県教育委員会においては、令和3年度にフリースクール等の民間施設との合同会議を開催し、不登校児童生徒の支援のあり方や学校との連携のあり方などについて意見交換を行い、今後もフリースクールとのネットワークづくりを進めていくと聞いております。また、この会議を開催したことは、非常に好評だったようでございます。
 不登校は、その要因が多種多様でありまして、教育委員会では、スクールカウンセラー等の配置による専門的相談の場の整備に加え、教員研修を推進し、心のサポートに係る教職員の資質向上を図り、相談体制の充実に努めております。
 また、学校現場では、個々の不登校児童生徒の状況に応じた学習の場を工夫するなどの取り組みを行いまして、改善が図られるよう努めていると聞いているところでございます。
 今後も、不登校児童生徒一人一人に応じた支援を進め、全ての児童生徒にとって、まずは学校が居場所となるような魅力ある学校づくりを進めてほしいと期待しているところでございます。
〇吉田敬子委員 居場所カフェを設置することで何が変わったかという質問をさせていただいたときに、教職員の皆さんの負担が軽減されたということでした。そういったこともありますので、ぜひ、さまざまな居場所について、これから検討していただきたいと思っております。
 インクルーシブ教育について伺います。
 公立小中学校の特別支援学級の在籍数が年々増加しております。保護者の意向を受けて、市町村教育委員会が特別支援学級の設置を進めたことや発達障がいなどへの理解が広がり、児童生徒に合わせた教育の需要が高まっていることが背景にあります。
 同じく、教育・子ども政策調査特別委員会の調査で、昨年12月、神奈川県厚木市のインクルーシブ保育を実践するカミヤト凸凹保育園を訪れました。障がいのある子もない子も一緒に学ぶ環境は、幼少期であるほど有効と感じました。
 インクルーシブ教育とは、障がいのある子もない子もともに教育を受けることで、共生社会の実現に貢献しようという考え方です。文部科学省はインクルーシブ教育の推進を提唱しておりますが、住みなれた地域の保育所や学校での学びの場を提供するインクルーシブ教育の推進に対する県の認識と今後の方針についてお伺いいたします。
〇菊池副知事 本県では、障がいのある人もない人もお互いを大切にし、ともに助け合って暮らすことができるような地域をつくることを目的として、障がいのある人もない人も共に学び共に生きる岩手県づくり条例を制定しているところでございます。
 県教育委員会においては、この条例の趣旨を踏まえ、いわて特別支援教育推進プランを作成し、共に学び、共に育つ教育を推進しているところであります。
 同プランに基づいて、小中学校全ての教員を対象とした研修に特別支援教育の状況、内容を取り入れるとともに、特別支援学校教員による小中学校等への継続的な訪問支援など、小中学校等においてもインクルーシブ教育が推進されるよう取り組んできていると聞いております。
 今後とも、身近な地域での一人一人のニーズに応じた教育の充実に向けて、年間を通じて計画的、継続的にともに学ぶ活動の拡充を進めること、医療的ケア児を含めたさまざまな障がいのある子供たちが通っている小中学校等への支援の充実に取り組むことなどを次期いわて特別支援教育推進プランにも盛り込むことを検討していると聞いているところでございます。
〇吉田敬子委員 グローカル人材の育成についてお伺いいたします。
 海外を目指す若者支援についてお伺いいたします。
 若いうちに世界を見る、知ることが重要だと感じておりますが、海外を目指す若者が減っております。
 コロナ禍で留学機会が減少する一方、地元志向が増加しておりますが、若いうちから海外へ目を向けること、海外での経験も重要と認識しており、その取り組みに対して、県としてどのように進める考えかお伺いいたします。
〇熊谷ふるさと振興部長 県では、広く若い世代に海外に関心を持っていただけるよう、国際交流員の学校等への派遣による外国文化紹介を初め、岩手県国際交流協会や関係団体と連携した国際交流イベント等を通じまして、海外への興味や関心の向上を図っているところでございます。
 また、高校生を対象といたしまして、平成25年度から北米等への海外派遣事業を、平成27年度からは中国雲南省との相互交流を実施し、これまで132人を派遣してきたところでございます。
 令和2年度以降、新型コロナウイルス感染症の影響により派遣の中止を余儀なくされておりますが、雲南省とはオンラインによる交流を継続しておりまして、今後、新型コロナウイルス感染症の状況等を踏まえつつ、海外派遣の早期再開を検討してまいります。
 さらに、令和4年度でございますが、新たに児童生徒や学生向けに、海外で活躍する岩手県人会員や本県出身の国際協力機構―JICAの海外協力隊員によるオンライン講演会を実施いたしまして、海外への関心を高める機会の充実に取り組んでまいります。
〇吉田敬子委員 先ほどはJICAのことが取り上げられましたけれども、グローカル人材の育成について、平成28年度に設置したいわてグローカル人材育成推進協議会の取り組みについてお伺いいたします。
 留学支援がありますけれども、これは、岩手県内で応募者が少ないこと、留学期間が、これまでは6カ月だったのですけれども、6カ月では経験レベルであって、人材育成にならないのではとの指摘がありましたが、今年度からは、県独自の枠組みとなって、6カ月から3カ月にさらに縮小されております。
 小・中・高校生に対する国際理解教育や交流の機会の増加や、県内学生だけでなく、U・Iターン希望者や県内20代対象者への拡充も必要ではないかと考えております。
 国際協力機構―JICAの海外協力隊グローカルプログラムは、国際協力と地方創生の両方で活躍するグローカル人材の育成に取り組んでおりまして、現在は釜石市、陸前高田市で活動中です。また、さんりくプログラムという事業もありまして、関係人口増、人材育成を目指す取り組みをしております。
 先日、JICAの理事長が来県し表敬訪問されました。後藤新平と人材育成と題した講演会があり、知事も参加されました。JICAの取り組みに対する知事の所感、グローカル人材の育成や確保について、どのように評価、分析しているか、今後の取り組み方針とあわせてお伺いいたします。
〇達増知事 国際交流の推進や多文化共生社会の実現を地域で担える人材の育成は大変重要であります。このため、県内の大学、企業、各種団体等を会員とするいわてグローカル人材育成推進協議会において、これまでに20人の学生の海外留学を支援してまいりました。現在、在学中の者を除く13名のうち5名が県内企業等に就職するなど、一定の成果を上げております。
 この留学支援は、国の支援制度の終了に伴い、今年度から本県独自の取り組みに移行することとなりましたが、大学等からの意見も踏まえて、より参加しやすいプログラムに見直したところであり、今後は、新型コロナウイルス感染症の状況等を踏まえつつ早期の支援再開を検討してまいります。
 また、委員御指摘のJICAの取り組みが国内外から多くの支援を受けた本県の沿岸被災地で行われることは、非常に意義があるものと考えており、今後とも、市町村や関係団体と連携してグローカル人材の育成に取り組んでまいります。
〇吉田敬子委員 他県では、JICAと連携協定をしっかり結んでいるところもありますけれども、知事には、ぜひそこに踏み込んでいただきたいと思いますが、その御所見と、ハロウインターナショナルスクール安比ジャパンに来年度以降、県として支援されますけれども、このハロウインターナショナルスクール安比ジャパンへの支援目的は、本県における地域の振興や国際化の推進等を図るためとありますので、ぜひ、こういった取り組みを地域に落としていただきたいと思いますが、最後に、その二つの御所見を伺って、終わりたいと思います。
〇達増知事 JICAのボランティアの方が岩手県から外国へ出発するとき、帰ってくるとき、また、青年海外協力隊員が岩手県から出発するとき、帰ってくるとき、都合が悪くない限り県庁に来ていただいて、報告を受けたり、励ましたりするようにしております。JICAとは常に連携体制はございまして、いろいろな研修も岩手県でやってもらっているところであります。
 委員御指摘のような協定を結んでいる県もあるというのは、JICAの活動、青年海外協力隊の活動等、周年行事もあって、一区切り過去を振り返りながら、未来に向けて改めて考えるいい機会でもありますので、検討していきたいと思います。
〇熊谷ふるさと振興部長 ハロウインターナショナルスクール安比ジャパンがことし8月に開校予定でございます。ハロウスクールの提携校が本県に開校することは、多文化共生等の理解などで大きな効果が期待されるところでございます。
 今後、学校との連携協定の締結を視野に、これからさまざま相談してまいりたいと思っております。教員や生徒の学習を通じた交流等によりますグローバル人材の育成でありますとか、スポーツ、文化の交流でありますとか、震災について学んでいただいて世界に発信していただくとか、さまざま話し合って、地域に発信していただく取り組みを展開してまいりたいと考えております。
〇吉田敬子委員 ありがとうございました。(拍手)
〇軽石義則委員長 暫時休憩いたします。
午後4時59分 休 憩
午後5時2分再開
〇軽石義則委員長 再開します。
 お諮りいたします。続く総括質疑は明日行うこととしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇軽石義則委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。
 明日以降は、毎日午前10時から開会いたしますので、よろしくお願いいたします。
 本日はこれをもって散会いたします。
午後5時2分 散 会

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