令和4年2月定例会 第19回岩手県議会定例会会議録

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〇13番(高田一郎君) 日本共産党の高田一郎でございます。
 請願陳情受理番号第44号、第60号について、委員長報告に反対討論を行います。
 請願陳情第44号は、東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の海洋放出基本方針を撤回し、安全な処理、保管方法の確立を求める請願であります。
 政府は、昨年4月に、福島県沖にALPS処理水の海洋放出を行う多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針を決定いたしました。
 全漁連や福島県漁連が反対し、福島県議会や県内7割を超える43市町村議会が反対や慎重対応の意見書を採択し、政府と東京電力が、関係者の理解なしに汚染水のいかなる処分も行わないと文書回答をしているのに、当時の菅首相が、両漁連会長とわずか20分間会談しただけで、海洋放出を一方的に決めたことは、本当にひどい対応と言わなければなりません。
 2011年3月、東京電力福島第一原子力発電所による放射能汚染が、多くの住民の暮らしとなりわいに深刻な影響をもたらしました。土地も海も汚染され、農林水産業への風評被害も続き、そして、不十分な賠償の中でなりわい訴訟も続けられています。福島県の復興、なりわいの再生は11年たっても道半ばであり、海洋放出は、県民の懸命な努力を無にし、東日本大震災津波、大不漁、そしてコロナ禍の三重苦に大打撃を与えるものであります。
 事故を起こした原子炉を通った汚染水は、トリチウム以外の62種の放射性物質があり、トリチウムの濃度や組成はタンクによって均一ではなく、通常の原発とそもそも同一ではありません、溶け落ちた核燃料デブリの冷却のために今後も大量の汚染水を海に流すことになれば、福島県のみならず、東北沿岸の漁業に従事する方はみんな強く危惧しています。
 朝日新聞が最近実施した調査でも、東北3県被災地市町村長の6割が、処理水放出を容認できないと答えています。全漁連は、我が国漁業の将来に壊滅的な影響を与えかねない、漁民の総意として絶対反対であると訴え続けています。
 約束をほごにし、これだけの異論や反対の声がある中で海洋放出をすべきではありません。陸上保管を続け、その間にトリチウムの分離技術の開発へ世界の英知を結集して解決をすべきであります。
 海洋放出は、500倍に薄めても、500倍の量を放出したら同じことであります。1基分に全体のタンクの量の半分に当たる500基分の海水が必要であり、政府も東京電力も、この海洋放出には40年かかるとされており、タンクが目の前から数年でなくなるわけではありません。
 海洋放出をなぜ急ぐのか。その理由に、1、016基もあるタンクがほぼ満杯だからと言っていますが、原発敷地内には64ヘクタールの用地が確保されていることは、資源エネルギー庁も認めているところであります。
 分離が困難とされるトリチウムについて、国が世界の技術を公募したところ、ロシアの原子力関連企業ロスラオが、小規模施設実験で99.8%分離可能とする提案を行っていたのに、政府は、大規模施設では無理と早期に判断、提案を拒否していたことも明らかになっています。
 北海道東北地方知事会でも、トリチウムの分離技術など、新たな技術動向の調査研究を進めるべきと決議を上げています。政府は、海洋放出ありきの対応は改めるべきであります。
 福島原発の汚染水がふえ続けているのは、原発事故が収束していないためであります。事故を引き起こした東京電力と政府は、事故被害者にそのしわ寄せを、責任を押しつけるようなことを行うべきではありません。海洋放出に頼らない立場で、科学者の英知を結集して対応することこそ、真の復興と再生、ふるさとを取り戻すことができるのであります。
 以上の理由で総務委員長報告に反対するものであります。
 次に、請願陳情第60号は、介護保険施設における補足給付の見直し中止を求める請願であります。
 昨年8月からの補足給付の見直しにより、特別養護老人ホームや老人保健施設、介護療養型施設、そして介護療養型医療施設などに入所している低所得者の負担を月2万円から4万2、000円に引き上げ、ショートステイの食費負担は、全ての住民税非課税世帯で1.5倍から2倍の引き上げとなりました。資産要件の見直しでは、補足給付の対象となる預金を1、000万円以下から、収入区分に応じて500万円から650万円以下に変えられてしまいました。
 補足給付を利用できなくなると、年収80万円以下の場合、食費、居住費の負担が月6万8、000円、年間81万6、000円も一気にふえることになります。県がこの間行った影響調査では、食費の負担増が5、289人、認定者数の38%、預貯金要件では729人が対象外になると試算されております。
 補足給付は、2005年の介護保険制度の改悪で食費、居住費を全額自己負担にしたときに、厚生労働省は、低所得者に配慮すると言って導入いたしました。ところが自公政権は、使える要件を厳しく絞り込み、改悪を繰り返し、今回3回目の見直しとなりました。低所得者に配慮するという言葉は完全に消えうせています。
 負担増となった家族からは、月10万円の母の年金がなくなる、生活費の負担もふえる中、どこを削ればいいのか、こういう悲鳴も上がり、支える家族の援助も限界であります。
 コロナ禍で仕事を失ったり収入が減ったりした人の中には、親を施設で介護している人が数多くいます。苦境にある方々に追い打ちをかける補足給付の見直しは全く道理がありません。
 介護保険制度は、介護の社会化を目的に始まり、ことしで22年目となりました。しかし、この22年間で介護保険料が2.1倍にもなり、一方、介護サービスは、要支援1、2は保険から外され、特別養護老人ホームの入所要件の制限、要介護認定制度の改悪、利用料の3割負担導入など、介護サービスを介護保険からどんどん外してきました。
 高齢化が急速に進む中で介護サービスの利用がふえるにもかかわらず、国は負担をふやすどころか、保険料を上げ、サービスを抑制してきました。保険料50%、国の負担が25%、都道府県と市町村で25%という財源構成自体に限界が来ています。
 持続可能な制度を理由に高齢者に負担と我慢を求めるのではなく、国庫負担をふやして、持続可能な介護保険、安心してサービスを受けられる制度への抜本的な転換こそ必要であります。
 以上の理由で環境福祉委員長報告に反対をいたします。議員各位の御賛同をお願いし、私の反対討論といたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〇議長(五日市王君) 次に、木村幸弘君。
   〔25番木村幸弘君登壇〕

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