令和4年2月定例会 第19回岩手県議会定例会会議録

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〇9番(武田哲君) 自由民主党の武田哲です。
 一般質問の機会を与えていただいた先輩議員、同僚議員の皆様に感謝を申し上げ、一般質問を行いたいと思います。
 まず、新型コロナウイルス感染症によりお亡くなりになられた方々、療養中の皆様にお悔やみとお見舞いを申し上げますとともに、県職員の皆様、医療関係者、関係機関の方々など、皆様の献身的な奮闘に敬意を表します。
 それでは、一般質問に入ります。
 県の中期財政見通しが昨年9月に発表されました。県の基金残高は、令和6年度には101億円と、令和7年度にはなくなる状況にあることを一体どれほどの県民が知っているでしょうか。実際、ある首長ですら知らない状況です。
 令和4年度の予算編成において、政策推進費については5%マイナスを目標に組まれたようですが、知事査定では何に主眼を置き組まれたのでしょうか。
   〔副議長退席、議長着席〕
 知事演述では、デジタル化の推進、グリーン社会の実現、三つのゾーンプロジェクト、ILCプロジェクトなど、片仮名とローマ字が目を引く内容ですが、肝心の行財政運営の改革では、有識者で構成する行財政研究会にその方策を委ねるとのことで、知事みずから県民に強力なメッセージを出す必要があるのではないでしょうか。
 コロナ禍の岩手版緊急事態宣言も大事ですが、それ以上に岩手版財政緊急事態宣言の発出が求められると私は思います。それは、コロナ禍後、県民とともにコロナ禍後の立ち上がりを確かなものにする必要があるからです。
 東日本大震災津波時に見られた県民の行動は、世界から称賛を得ました。県民とともにいわての再建を、確かな未来をつくるときではないでしょうか。県民とともに考える岩手県であってほしいと思います。県民を信じてみませんか。非常時を経験してきた知事初め職員の皆さん、県民を信じ、ともに歩む、ともに未来を切り開く岩手県であってほしいと私は願っています。有識者の皆さんから出る考えも大切かもしれませんが、知事には、県民に伝える責務と行動が求められていると思います。選択と集中というような言葉で、肝心な状況を示していないように感じます。
 そこで伺います。知事は、このような厳しい財政状況を、今後、県民へどのように伝え、行財政改革に取り組んでいくのか、知事の心にある言葉をお聞かせいただきたいと思います。
 次の質問からは、質問席より行います。
   〔9番武田哲君質問席に移動〕
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 武田哲議員の御質問にお答え申し上げます。
 本県の財政状況が厳しさを増す中、平成28年度からは毎年度、中期財政見通しを毎年度作成し、ホームページ等を通じて公表するなど、財政状況の見える化を行ってまいりました。これらの取り組みも含め、着実に財政健全化を推進してきた結果、財源対策基金の倍増や県債残高の安定的な引き下げを実現しました。
 昨年9月に公表した中期財政見通しにおいては、令和2年国勢調査人口の地方交付税等への反映を踏まえ、人口減少に伴う一般財源規模の縮小が中長期的な課題となることを具体的な数値で明らかにいたしました。
 また、令和4年度一般会計当初予算案においては、一般財源規模が91億円減少する見込みであるなど、いわば、静かなる地財ショックとも言うべき厳しい財政状況下に置かれた中においても、経常的経費の縮減を図りつつ、人口減少、デジタル、グリーンの三つのテーマへ重点措置するなど、めり張りある予算編成を実現しました。
 さらに、このような環境の変化に中長期的に対応するため、持続可能で希望ある岩手を実現する行財政研究会の議論も踏まえ、安定的で持続可能な行財政基盤の構築が県政の最重要課題の一つであることを、県議会を初め県民と広く共有しながら、行財政改革に全力で取り組んでまいります。
〇9番(武田哲君) 今、静かなる地財ショックという言葉がございました。4年後にマイナスを打つような状態になっていくわけですけれども、実際、県民はどの程度知っていると思っていますか。その点をまずお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 静かなる地財ショックという言葉は、今定例会で初めて明らかに使った言葉なのですけれども、要は、地方交付税交付金が減るということが、過去の地財ショックではそれが大きく減ったというショックだったわけですけれども、静かなる地財ショップでは、これがゆっくりじわじわと確実に減っていくということであります。人口減少ということは県民の皆さんもよく御存じかと思いますが、それが地方交付税交付金の減少に直結していくということについては、県としても積極的にさらに伝えていかなければならないのではないかと思います。
〇9番(武田哲君) 県民の方々に積極的に伝えていくというお話ですけれども、その中で、県として県民に求めることというのは、一番最初に思い浮かぶのは何でしょうか。その点、お伺いします。
〇知事(達増拓也君) 財政というのはやりくりのことでありまして、行政の腕の見せどころ、むしろ行政の側が、県民の皆さんが悩んだり困ったりしないように、きちんと財政を悪化させない、健全財政を維持していく、そういうところをまずは行政がやっていかなければならないと考えております。
 県民の皆さんには、行政がどこに力を入れて努力しているかということを御理解いただけますと、行政も、県民とともに仕事をしていくということがよりやりやすくなると思います。
〇9番(武田哲君) 実際に公共工事とかを主にやっている建設業者の方々などは、昔の状態に戻るのか、さまざま発注事業が減っていくのではないかなど、そういったことを知らずに、今も経営に励んでいる業者の方々もいます。
 ましてや、これから県民が求めることは多様化し、さまざま細分化された要求が事細かに出されてくると思うのです。そうしたときに、県は、財政上厳しいとか、そういったことをしっかりとうたいながら、県民とともに考えるような行政運営というか県政運営というのが、これから求められると思うのです。
 そのときに、本当にお金がないということを理由にするのか、そうではなくて、関係性をもっと強化して、県民とともに新しい岩手県をつくっていこうとか、そういったメッセージを出さなければならないと思うのですが、その点についてはどうなのでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 事業が今後続くのかということをおっしゃられましたけれども、世界的に行政はお金に困るのですが、世界的には、お金はむしろ有り余って、投資先を探して株に流れたり、資源、原油に流れたり、相場を乱高下させたりしているところでありまして、建設事業でも、例えば、岩手県は最近、ハロウインターナショナルスクール安比の校舎でありますとか、ANAインターコンチネンタル安比高原リゾートの建設でありますとか、行政以外のお金で、岩手県内でさまざま経済社会活動が展開すると。キオクシア岩手株式会社の1兆円の投資もそうでございますけれども、そういったことを呼び込めるような信頼と安心の行政というものを、県民の皆さんと一緒につくっていくことができればいいのだと思います。
〇9番(武田哲君) そうしたときに、今の若い世代、そして、この岩手県で暮らしていきたいとか、若い人と岩手県の魅力を再発見してもらうような取り組みとか、ましてや、いつか岩手県に帰ってくる、この岩手県で暮らしたいと思ってもらうことが、やはり人口減少において必要になってくると思っているのです。そのときに、本当に今の高校生たち、大学生たちが置かれている教育環境も含めて、今、若い世代に最も伝えたいメッセージというのはどういったところなのでしょうか。その点をお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 若い皆さんに最も伝えたいことは、これはケース・バイ・ケースなところもあるのですけれども、今の話の流れから言いますと、岩手県の雇用環境という点では、若い皆さんが思っている以上に岩手県はどんどんよくなっていると。世界有数の自動車、半導体の産業集積があって、しかし、そこは人手不足、毎年度の採用に苦労しているような状況がある。それから、安比の話もしましたけれども、ホテル業界というのも人手不足で、やはり人手の確保に困っている。
 岩手県は農林水産業もさまざま可能性がある中、担い手不足になってしまっている。岩手県というのは、若者の皆さんが想像以上に、物すごくいいところで働くことができて、かつ、食べ物のおいしさや住みやすさのようなところは、これもまた岩手県の外と比べると格段に違うという、そうしたことを伝えていきたいと思います。
〇9番(武田哲君) 登壇での質問のところで、実際ある首長も、今の岩手県の財政状況を知らなかったという話をしましたが、首長にしてみれば、県はつぶれることがないから、もしかして、例えば県道整備とか、これまで10年スパンできたものが20年スパンに変わっていくのだろうとか、県がこれまでやってきたことが、先送り、先送りでこれから事業計画されるのではないかとか、そのような評価をしていたのです。
 でも、実際にそのことをしっかりと各首長と情報交換をしていれば、その懸念というのは払拭できると思うのです。そこのところで、この中期財政の見通しを各自治体と県がひざ詰めでしっかりと協議していかなければ、この後、選択と集中という言葉が生きてこないと思うし、それをかえって魅力アップにつなげるようなことは、知事みずから発していかなければならないと思うのです。そこもやはりリーダーシップだと思いますが、今後どのように各自治体とそうしたところを取り組んでいかれるのか、お伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 財政の毎年度のやりくりについては、県から市町村への補助事業というのは非常に多いものでありますから、市町村と密接に連携協議をしながら、どのぐらいやれるかのようなことを協議しながらやっているわけでありますけれども、中長期的な見通しについては、これからシェアしていかなければならないと思います。
 持続可能で希望ある岩手を実現する行財政研究会でも議論していただきながら、総務省でも2040年からバックキャストする地方行財政のあり方ということで、デジタル化を大幅に進めることで、総務省は今の半分の公務員数になっても、今と同じ行政サービスができるようにするにはこうすればいいみたいなアイデアを、そういった科学技術でありますとか、また、同じフォーマットを複数自治体が共有するというような新しい制度の導入などで、倍の生産性が上がるような議論などしているのですけれども、そういった先端的な技術や、今まで用いられたことがなかった先端的な制度などについては、有識者の皆さんに大いにアイデアを出していただくことが大事と思っておりまして、その経過、プロセスも広く市町村と共有しながら進めていければと思います。
〇9番(武田哲君) いわゆる新産業をつくっていくということだと思いますけれども、現在こうしたコロナ禍です、閉塞感がすごくあると思うのです。そして、ましてやロシアのウクライナへの軍事侵攻と、不安がどんどん膨らんでいる状態だと思うのです。
 そうした中で、本当に今の県の状況というものをしっかりと県民とともに共有する、あとは民間事業者ともしっかり共有しながら新しい岩手県をつくっていっていただきたいと思っているのです。
 そこのところでは、どこの自治体も人口減少で苦しんでいます。いろいろな企業を誘致したくても、肝心の働き手がいないとか、それから、事業承継の課題とか。要は、働き手がいないということは、事業が継続できないことです。
 そして、閉塞感の中で何を目標に一緒にやっていきましょうということを明確に示していかないと、岩手県の魅力がアップしていかないと思うのです。そこのところを、特に、知事にはリーダーシップを持って発揮していただきたいと思っております。
 次の質問に移ります。厳しい財政状況下で、今後、県に求められるのは、新たな行政課題や県民ニーズに的確に対応できる組織の再編、県有未利用財産の積極的な売却や施設配置の最適化など、施設の維持、整備計画の積極的な改革、公共工事の発注方式などの改革、民間活力を含めた岩手力の活性化などが考えられます。
 県の中期財政計画見通しをある会社の経営者が見たときに、開口一番、このマイナス分は人件費に手をつければ大丈夫というような経営判断でした。
 しかし、令和6年度からは、定年引き上げによる60歳以上の職員の人件費がふえます。全体で22億円ほどふえますが、職員構成のバランス上、採用抑制は避けなればなりません。厳しい財政状況において、人件費削減は必須と考えますが、県職員の定年の引き上げも踏まえ、職員定数の管理と組織体制の見直しに、どのように取り組んでいくのかお伺いいたします。
〇総務部長(白水伸英君) 新たな行政課題や多様な県民ニーズに的確に対応していくためには、機動的な組織体制の整備や、行政需要に応じた適切な職員配置が重要と認識しております。
 このため、組織体制におきましては、緊急の行政課題に対し、年度途中でありましても、職や組織の適時適切な見直しを行っているところです。
 また、職員体制においては、新型コロナウイルス感染症対応のため業務支援を活用しておりますほか、育児休業等を取得しやすい職場環境づくりなどに対応するため、定数の再配置を行いながら体制整備に取り組んでおります。
 定年引き上げに伴う定員管理のあり方につきましては、現在、国が設置している研究会での議論等も踏まえつつ、令和5年度を初年度とする次期定数等管理計画の策定過程において検討することとしております。
〇9番(武田哲君) 人事関係のヒアリングの中で、少しふやしていきたいというような話がございました。その点については、県の中期財政見通しの中では含まれているのでしょうか。その点をお伺いいたします。
〇総務部長(白水伸英君) 今後の定数のあり方の方向性でございますけれども、まず、大きな要素としては、議員も御指摘いただきましたけれども、まさに定年引き上げということが起こってきます。
 これにつきましては、国の法改正は終わっておりますけれども、県でも条例改正をするということでございます。今後また議会でも御議論いただければと思っておりますが、もし仮に定年引き上げということに決まりましたら、議員も御承知のとおり、2年に1回、退職年齢が60歳から61歳ということで段階的に上がっていくわけですので、これも議員御指摘のとおり、2年に1回引き上げということになりますと、例えば新人の採用をどうするかということで、新人の職員を採用しませんと、職員の年齢構成がいびつになります。そうしますと、まさに定年の引き上げの移行期においては、一部職員数がふえるという状況にもなりますので、しばらく、定年延長に伴う移行期については、そういった状況になると見込んでおります。
 しかしながら、中長期的に見たときに、議員も御指摘いただきましたとおり、さまざま人口減等になってきますので、どういった職員数のあり方が適正かというのは、今後検討していかないといけないとは思っております。
〇9番(武田哲君) これから定年延長によって職員定数のさまざまな課題が出てくると思うのですけれども、その中で、4年後にはそれに合わせた県の中期財政見通しのとおりの状況になります。そのときに、それは県民が納得するような状況になっていくと思いますか、どうですか。その点をお伺いします。
〇総務部長(白水伸英君) 岩手県中期財政見通しでは、これも議員から御指摘いただきましたが、令和6年度から定年の延長が始まったと見込みますと、単年度で今のところ人件費が22億円増ということで見込んでおります。
 これにつきましては、定年延長の制度設計をどうしていくかということに非常に影響されますものですから、財政への負担もしっかりと考慮して、今後、しっかり詰めていきたいと考えております。
 それを踏まえて、知事からも御答弁いたしましたけれども、どういった形でしっかり外部に公表あるいは県民の皆さんに説明をしていくかということについても考えていきたいと思います。
〇9番(武田哲君) それでは、職員の定年延長によってどういった効果が期待できるのか、そして、それを県民にどのように還元していくのか、その点についてお伺いいたします。
〇総務部長(白水伸英君) 定年延長につきましては、本県だけではなくて、国でそういった形で制度設計されたということでございます。
 これについては、議員も御承知のとおりだと思いますが、公務員だけではなくて民間企業もそうですけれども、人口減が発生してきたときに、いわゆる生産年齢人口といいますか、活躍していただく年齢層を広げるしかないというような状況もあります。あるいは年金の財政の関係もございまして、その意味では、これは役所だけではなくて、官民問わず定年年齢の引き上げをしていこうという議論の中で、こういった制度になってきていると思います。
 そうした点については、全国的な状況もございますけれども、本県にとってどういう効果があるのだということは、これはこれでしっかり検討していかないといけないと思っておりますので、その辺についてはしっかりと制度設計をしていきつつ、その効果などは、県民の皆さんにもしっかりと説明をしていけるようにしていきたいと考えております。
〇9番(武田哲君) 結局、公務員の定年延長、それから民間企業も定年延長によって人々が手にする金額がふえていくと思うのです。それは地域で回るお金がふえるということになっていくのかと一瞬何となく思うのです。年金に頼らない、そして、しっかりとした給与体系がもし確立できればですけれども、そこのプラスの効果はどう考えているのか。国の指針とかさまざま言われますけれども、国の指針を待っていては、この岩手県中期財政見通しの状況を乗り切ることはできないと思っているのです。しっかりと示さなければならないと思っていますが、その点についてはどのようにお考えかお伺いします。
〇総務部長(白水伸英君) 議員御指摘いただきましたいわゆる定年引き上げに伴う地域への効果という部分でございまして、これについてもしっかり分析をしていかないといけないと思っております。
 仮にですけれども、年金でもらえる水準と給与の水準が同じであれば、効果は変わらないはずですが、年金自体の支給開始年齢が遅くなってきて、年金財政の厳しい状況ということがございますので、それについては、恐らくですけれども、年金をもらうよりも給与で支給されたほうが多いという状況があるかもしれません。
 あるいは、現在でも60歳で定年退職されてから再任用という形ではありますので、そことの給与水準がどうだとかというような議論もあると思いますので、それについても、しっかりと制度設計の中で検証していきたいと思っております。
 一方で、大きな視点で、地域振興という観点から行きますと、人口が減ってくる中で、できるだけ現役で活躍していただく期間が長ければ長いほど、経済的な部分だけではなくて、地域の衰退を防ぐだとか、さまざまな効果があると思いますので、そういった点についても見ていければと思っております。
〇9番(武田哲君) 県の中期財政見通しの中で、マイナスになってくる部分だけではないと思っています。そのプラスになる部分は何なのか。国が指針を示すのを待っていたら、立ち上がりがおくれていくと思うのです。ましてや、アフターコロナの立ち上がりも必要です。そこのところをしっかりと検証しながら、岩手県独自でしっかりと計画を立てなければならないのではないかと思っているのです。そこのところを今後要望してまいりたいと思います。
 次の質問に移ります。県所有の公共施設の管理において、県は平成28年3月に岩手県公共施設等総合管理計画を策定しましたが、その後、県の人口減少がさらに進む中で、公共施設も削減、縮小を図る必要があると思いますが、今後の公共施設管理の適正化にどのように取り組んでいくのかお伺いいたします。
〇総務部長(白水伸英君) 議員御指摘のとおり、県では、岩手県公共施設等総合管理計画、それから、令和2年度までに策定をいたしました個別施設計画に基づいて、公共施設等の長寿命化などによる財政負担の縮減や平準化を図るなど、中長期的な視点に立った公共施設等マネジメントの取り組みを推進しているところでございます。
 県の公共施設につきましては、今後、老朽化に伴う改修や更新などに要する経費の増大が見込まれておりまして、将来の人口減少や厳しい財政状況を踏まえ、公共施設の維持管理及び行政サービスの提供を持続可能なものとしていく必要があると考えております。
 現在、個別施設計画の内容等を踏まえた岩手県公共施設等総合管理計画の改訂作業を進めているところでございます。人口動態等に応じた施設規模や配置、機能等の適正化を図ることについて、計画の改訂内容に反映させていきたいと考えております。
〇議長(五日市王君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
〇9番(武田哲君) 岩手県公共施設等総合管理計画、個別施設計画を今後さまざま見直していくというところですけれども、全てがもうやっていけない、提供していけない状況になってくるのではないかと思っているのです。
 その中で、市町村が持っている施設、あるいは今、民間の金融機関も支店の統合をさまざまやっております。その中で、こんな立派な支店があるのにとか、立派な建物が岩手県内で空き家状態、使われない状態が見受けられるのです。
 その中で民間事業者の施設あるいは各市町村の施設の管理計画のあり方というのは、県だけで考えていく時代ではないと思っているのです。そこのところを各自治体とはどのように計画あるいは審議しているのか。それは、広域振興局単位でこれからやっていなかければならないのではないかと思っているのです。
 この先を見ると、一つ一つ細かくやっていかなければ、県が全てやれるわけではないと思っているのです。そこのところはどのようにお考えかお伺いいたします。
〇総務部長(白水伸英君) 今、議員から重要な御指摘をいただいたと思っております。
 県の人口ビジョンで、2040年に人口100万人程度を維持するということでございますけれども、そうしますと、今は大体人口120万人ですから、そういう意味では、人口は約15%減ってくるというような状況にございます。そういった長期的展望のもとに、では、公共施設をどうしていくのかということについて、まさに今検討していかないといけない正念場だと思っております。
 その意味で、議員から御指摘いただきました、一つは、市町村の施設と県の施設のあり方を、場合によっては連携していくこともできるかもしれませんし、あるいは同じような目的の施設についてどう整理していくのかということについても、しっかりと考えていかないといけない時期だと思います。これは民間の同じような施設も同じだと思います。
 これについては、全国でも県と市の施設のあり方というようなことでさまざま議論もされているような事例もありますので、そういったこともしっかりと研究、検討しながら取り組んでいきたいと思いますし、その過程において、市町村との必要な連携もしっかりと取り組んでいきたいと考えております。
〇9番(武田哲君) 現在の個別施設計画において、市町村とどの程度話をしているのでしょうか。市も新しくしたい施設があると思います、県も新しくしたい施設があると思います。その点はどの程度協議が進んでいるのか、改めてお伺いいたします。
〇総務部長(白水伸英君) 現在におきましては、それぞれの施設ごとに特性等があります。例えば、野球場の関係であれば、盛岡市と県とでやっておりますけれども、それぞれ特性がありますので、全体でこうだということはなかなか今御答弁申し上げにくいところでございますけれども、今のところは必要に応じてそれぞれやっているというところでございます。
 今後、議員も御指摘いただきましたように、そういった市町村との施設のすみ分け、あるいは一つにまとめるということの観点が必要になってきますので、それはより強く意識をして取り組んでいきたいと考えております。
〇9番(武田哲君) この個別施設計画というのは、それぞれの施設が持っている県民に提供するサービスというか、安心感というか、夢というか、さまざまなものを持っていると思うのです。それを財政の厳しさを理由に、ここは運営できませんよとか、そういった説明ではなくて、本当に必要とされる施設は、ここにこのように新しくつくりましたとか、市のほうにお任せしましたとか、市ができない分、県がここまで補いますよとか、そういったしっかりとした指針というか見せ方が必要だと思うのです。そこのところをお願いしたいと思います。
 それでは、次の質問に移ります。県の財政状況を市町村職員に説明した際、何か心配事はありますかと聞いてみると、幾つかの市町村職員の方から、交通指導員への県単事業の見直しについて伺うことがありました。
 確かに死亡事故も減りつつあります。一方、交通指導員のなり手不足など、数字だけ見ると、交通指導員の活動が危ぶまれるのも事実かもしれません。
 これまで、県は、市町村交通指導員設置事業費補助金を全市町村に交付してきました。この交付額の総額は、平成29年度の3、009万円余から年々減額され、今年度は2、339万円余となっています。県からの補助金が減る、なくなるということは、その分市町村の負担がふえることになり、市町村の交通安全対策の取り組みに影響が及ぶのではないかと危惧しておりますが、来年度も予算総額は減額となるものの、県の補助が継続すると伺い安心しました。
 県内の街角では、交通指導員の皆さんの小・中・高生を初め地域の皆さんへの朝の挨拶、声がけの姿が見られますが、あの制服と笑顔はなくしてはならないと思います。
 県では、この事業の見直しの過程において、どのような評価を行い減額に至っているのか、また、今後の見直しをどのように考えているのかお示しいただきたいと思います。
〇復興防災部長(戸舘弘幸君) 市町村交通指導員設置事業費補助金についてでありますけれども、交通指導員は、現在、県内の全市町村に設置され、地域における日々の地道な見守りや呼びかけなど、官民一体となった交通安全対策において大事な役割を担っていただいていると認識しています。
 交通指導員の人数や活動日数につきましては、地域の実情に応じまして、市町村ごとに条例や要綱などで定められているところでありまして、県は、交通指導員の設置に係る経費の一部を補助するなど、その活動を支援していますが、近年、交通指導員数や活動日数の減少などに伴い、補助対象経費や補助金額、予算総額が減少しているところでございます。
 この補助金につきましては、近年、制度的な見直しは行っておらず、事務事業評価におきましても、当面継続することが適当と判断しているところでありますけれども、各地域における交通安全の取り組みが、交通指導員を中心としつつ、老人クラブやPTAなど、ボランティアも地域の見守り活動を行うなど多様化している状況にございますことから、ここにつきましては、市町村と丁寧に意見を交換し、今後のあり方についてともに考えていきたいと思っております。
〇9番(武田哲君) この交通指導員の事業ですけれども、県単独で行っている事業の中で、地域になじんできた風景というものはしっかりと守っていかなければならないと思っているのです。県民が県内で活躍する場面、そういったものをふやしていかなければならないし、それが地域への見守り、あるいは交通安全につながっているということを、県民とともに分かち合いながら、これからの県政運営をしっかりとやっていっていただきたいと思います。
 次に、公共工事の発注方式についてお伺いいたします。
 県内建設業者の中には、震災関連の大規模工事の施工等を通じて技術力を高め、自信を得た事業者が多くいます。
 その後、公共工事において、せっかく得られたノウハウを十分生かし切れているのでしょうか。また、近年、激甚化、頻発化する災害において、現場に真っ先に駆けつけて対応する地域の建設業者の役割は、ますます重要になると思います。
 公共工事の品質確保や地域の安全・安心のためには、高い技術力を持った地域の建設業者の受注拡大が必要と考えますが、今後の発注においてどのように取り組んでいくのかお伺いいたします。
〇県土整備部長(田中隆司君) 公共工事の発注方式についてでありますが、地域の建設企業が、将来にわたり良質な社会資本の整備や維持管理、災害時の緊急対応等の役割を果たしていくためには、技術力と経営力にすぐれた建設企業を評価するとともに、受注機会を確保していくことが重要と考えております。
 こうしたことから、県では、企業のすぐれた技術力を活用し、公共工事の品質を高めるための入札制度として総合評価落札方式を導入するとともに、建設業関係団体の意見や社会情勢の変化などを踏まえ、制度の改善を図ってきたところであります。
 具体的には、令和2年度から総合評価の三つの評価項目のうち、災害活動の実績等を評価する地域精通度を最も高い配点に見直ししたところです。
 さらに、令和3年度からは、土砂掘削などの比較的難易度の低い工事についても総合評価の対象とすることを原則としたことにより、昨年12月までの県土整備部発注工事のうち、約70%が総合評価落札方式による発注となったところです。
 今後とも、必要な公共事業予算の確保を国に働きかけるとともに、建設業関係団体の意見も聞きながら、総合評価落札方式の適切な運用に努めてまいります。
〇9番(武田哲君) 確かに国からは国土強靱化とか、そういったさまざまな事業が示されています。その中で、災害時の対応のためにも、そこを図っていかなければならないのですけれども、実際に県道の整備とか、道路の整備率というのは、岩手県は全国で最下位です。そういったところも含めて、今後、本当にやっていけそうでしょうか、どうでしょうか。
〇県土整備部長(田中隆司君) 道路を初めとして、地域の方からさまざまな社会資本整備に対していろいろな要望をいただいております。その中で、当然、全部には当然、まだお応えできませんが、やはり優先度を勘案しながら、そこは地域の声もよく聞きながら、いろいろ考えていきたいと思います。
 あとは、維持管理の話で行きますと、整備した社会資本を将来にわたってしっかり機能させていくということが今非常に大事な課題となっておりますので、その両面で今後の社会資本整備、維持管理について考えていきたいと思います。
〇9番(武田哲君) 道路の整備に関しては、ほかの県を歩いたりとか、そういったときに、どうしても岩手県の状況と比べてしまうのです。いろいろな意味で、県民もほかに旅行してとか、いろいろな情報を得ています。そして、もっとこうあればいいのにという思いがめぐるのは当たり前のことだと思っているのです。
 その思いにしっかりと寄り添わなければならないと思っていますし、職員の皆さんも朝早くから、道路の凍霜害ではがれているところを県のパトロールカーが歩いて、2人でアスファルトを補修している姿を見ました。本当はしっかりと安全性を確保した上で、ガードマンあるいは交通指導員がつけばいいのにと思いながら見ましたけれども、安全確保もしながら、しっかりと道路整備に努めていただきたいと思っております。
 それでは、次の質問に移ります。岩手県戦没者追悼式について伺います。
 昨年も我が会派から要望した岩手県戦没者追悼式の参列者について、その対象範囲を戦没者のひ孫やおい、めい、児童生徒の参列を含めた検討を県にお願いしてきました。私も、遺族の方々が参加しやすい式典の休日開催などを要望してきました。それは、戦没者遺族会の今日までの歩みに配慮し、遺族の方々の高齢化が著しい事情に配慮されることを願ってのことです。
 令和4年2月24日にロシアはウクライナに軍事侵攻しました。また、中国のアジア圏での問題行動や尖閣諸島での挑発行為、北朝鮮のミサイル発射など、我が国の安全保障が脅かされる中で平和のとうとさを伝えていかなければならないと思います。
 知事は、第二次世界大戦の歴史上の県のかかわりなどを踏まえ、この追悼式のあり方を含めて、恒久平和の継承をどのようにお考えかお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) さきの大戦では、国家総動員法に基づく総動員業務に国民を従事させるため、徴用令書を交付するなど県のかかわりがあったところであります。
 また、本県出身の3万8、000余の方々が犠牲となっており、御遺族の皆様は、最愛の御家族を亡くされた深い悲しみに耐え、幾多の苦難を乗り越えてこられました。
 県といたしましては、戦争の惨禍を二度と繰り返さないためにも、戦争の悲惨さと平和のとうとさをしっかりと次の世代に継承していく必要があると考えており、遺族会の皆様や市町村にも協力いただき、岩手県戦没者追悼式などを実施してきたところであります。
 こうした継承の取り組みを一層確かなものとしていくためには、特に若い世代の参画を促進していく必要があることから、県の戦没者追悼式を休日に開催することや、新型コロナウイルス感染症を踏まえた新たな開催のあり方について、県の遺族会や関係者の方々と検討を行っております。
 今後におきましても、引き続き、さきの大戦で犠牲となられた方々を慰霊し、戦争の悲惨さや平和をとうとぶ思いを次世代に引き継ぐよう取り組んでまいります。
〇9番(武田哲君) 次の質問も関連があるので進めます。
 昨年、岩手県満州開拓殉難者の霊を守る会と県が意見交換会を開催しています。いまだに意見交換会で会から出された事項に対する県からの回答はありませんが、岩手県満州開拓殉難者の霊を守る会の皆様の残された時間に県は向き合わなければならないと考えます。
 満州開拓は、当時の国策とはいえ、その後、第二次世界大戦へ突入するきっかけとなりました。岩手県からは4、069名を超える人が満州へ渡り、敗戦時には1、795名の方が亡くなったと岩手県戦後処理史にありました。
 満州開拓移民とは何であったのか。中でも、14歳から19歳までの若者で組織された満州開拓義勇隊とは何であったのかと、日本の近代史の中でも語られております。県のかかわりも含め、近代史の中でこれからも向き合わなければならない課題です。
 岩手県満州開拓殉難者の歴史の継承について、知事の認識と、同会から出された満州開拓の資料を継承する方法の検討と慰霊碑の維持管理について、県の今後の対応を伺います。
〇知事(達増拓也君) 満州開拓は、昭和7年から昭和20年の終戦に至るまで、満州開拓政策基本要綱等に基づき、新しい村づくりと食料増産のため当時の国策として行われたものであり、本県でも開拓農民を多数送り出したところであります。
 さきの大戦が苛烈をきわめるに従い、開拓地からも男子のほとんどが召集されたほか、戦後、帰国の途中で多くの方々が帰らぬ人となり、県としては、戦争の悲惨さと平和のとうとさを次の世代に継承する必要があると認識しております。
 このため、県としては、毎年県主催の戦没者追悼式などを実施しているほか、県の戦後処理をまとめ、昭和47年に発刊した援護の記録をデジタルアーカイブし、令和2年度から県のホームページ等で公開し、歴史の継承を行っているところであります。
 岩手県満州開拓殉難者の霊を守る会が所蔵する資料については、その内容により、県での受け入れを検討していくことは可能と考えております。
 一方、同会の慰霊碑については、民間団体が建立したものであり、そのほか、県内にある約300基の戦没者の慰霊碑と同様に、建立者や管理者が可能な限りみずから維持管理を行うことが適切であることから、そうした取り組みが継続されるよう、県として必要な支援を行ってまいります。
〇9番(武田哲君) 端的に伺います。この満州開拓の向こうで亡くなった方の慰霊碑というのは、岩手県にはありますでしょうか。滝沢市の砂込にある慰霊碑のほかにありますでしょうか。そこはわかりますか。
〇保健福祉部長(野原勝君) 慰霊碑につきましては、県内、昭和49年に岩手県満州開拓殉難の塔建設委員会が、最初雫石町に建立したものでございます。その後、平成19年に建立地の土地売却より当時の管理団体が除根、撤去したものを、有志の方々が滝沢市内の私有地に移設し、任意団体である岩手県満州開拓避難者慰霊碑を守る会が管理しているものと承知しております。
〇9番(武田哲君) つまり、岩手県にはほかにないのですね。
 それで、この満州の話ですけれども、知事に記憶を呼び戻してもらいたいのですが、知事はオーラルヒストリー拓魂という本に推薦文を書いています。その内容についてはどうでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 私が高校時代に国語を教えてくださった先生で、その後、岩手医科大学教養部の国語の先生もして、岩手県にさまざま貢献されている方が、満州開拓から帰ってきた滝沢市の方、そして、さらにまた、戦後の日本国内、滝沢市とか岩手県内でも戦後の開拓にも携わった、そういった方々を取材して書かれた本であります。さきの大戦をめぐる歴史は、日本国民にとって非常に大事な歴史でありますし、それをふるさと岩手県の中、そして、岩手県に関する県民の、岩手県出身の方々に関する歴史ということで、なお一層身近な歴史としてそれを知るというのは大変重要なので、こういう本が書かれたのは大変意義あるということを書いたことを今思い出しております。
〇9番(武田哲君) この中で、これまでの岩手県知事がこの満州開拓にさまざま深い思いを寄せているのです。
 例えば、以前、千田知事は、県の開拓史の編さんを命じているのです。その中で、満州開拓で起こった悲劇、本当に地獄のような惨状だった。地獄ですよ、地獄のような惨状だったということを書いております。そして、そのほかにも中村知事は、ちょうど岩手の翼ということで、この開拓団の方々が方正に行って献花しているのです。それから、現在の大連市にある岩手の森というところで植樹も行っています。現地からもさまざま歓迎を受けました。
 わざわざ岩手県から中国に行って、そして献花をする。それはどういったところに思いを寄せてやってきたのか。確かに国策でした。それは仕方がないことです。岩手県が当時の満州開拓にかかわった歴史というものに真摯に向き合った姿勢だと思うのです。
 その中で、現在、滝沢市にあるその慰霊碑2塔ですが、義勇軍の塔と、開拓者の亡くなった方々への慰霊碑、その二つを今民間の方々が建立したと言いましたけれども、その相談役として、中村知事がいたり、それから志賀節さんもおりました。いろいろな方々がその建立に当たって歴史に向き合ってきたと思います。
 その塔が、この後どうやって維持管理されていくか。現地で生まれた方もいました。それからあと、父親が岩手県職員でという方もいました。そういった方々の悩みに岩手県は向き合わなければならないのではないですか。その点についてはどうですか。
〇知事(達増拓也君) さきの大戦ということで、岩手県戦没者追悼式についても御質問いただき、岩手県満州開拓殉難者の慰霊碑についても質問をいただいたところでありまして、それぞれ非常に大事なことだと思います。それぞれ、さきの大戦は、県としてもかかわりがあるわけでありますし、また、過去の大戦とのかかわりをさまざまな形で今自分のものとして向き合っている県民の皆さんもいらっしゃるわけですので、それぞれ県としても、ともに向き合う姿勢が大事であると思います。
〇9番(武田哲君) これまで、満州開拓は、昭和2年から県の開拓事業が始まったとなっています。しかし、当時は、最初のころは500ヘクタールの規模がなければ国からの予算はおりませんというようなものであったようです。しかし、昭和12年、13年ごろから、その要件も緩和されて、国からの事業を受けながら、岩手県内でも多くの開拓が行われました。しかし、その中で岩手県の暮らしというのは、やはり食料難で各地域の農民の暮らしが余りにも貧しかったということで、その満州開拓には多くの方々が行かれたということでした。
 今回、この相談に来た中のある人のお父さんが、先ほど県の職員だったという話をしましたけれども、その元県の職員の方が、当時満州に岩手県の村をつくるのだと、そういう思いで中国に行かれたようです。そして、県内の旧大川村、小川村、江刈村から、いろいろな人たちを募って満州に連れていったのです。しかし、その県職員だった人は、やはり向こうで召集されて、そしてシベリアに抑留されたと。それで、一緒にいた家族の人たちのことは、この本の中で本当に悲惨な目に遭ったことが書かれていました。これは、こんなことがあるのかと思うようなことでした。
 この元岩手県の職員の方は、シベリアから実際帰ってきたら、死亡率が6割だったと。依欄県に行って、そして、岩手県の村をつくるのだといったとき、自分が連れていった団員の方々で6割の人が死んでいた。その現状を見たときに、県から、この戦後復興を一緒にやろうということで県職員に戻れと誘われるのです。しかし、自分は、満州で亡くなった方々に寄り添うということで、県の仕事には戻らなかったのです。一生懸命働きながら、満州から引き揚げてきた人たちの生活を支えようと思って、いろいろな事業をやってきました。
 そういう思いをしながら、そして、満州で起こった事実を、志賀節さんも、それから中村知事も千田知事も、しっかりと知っていたからこそ寄り添ってきたと思うのです。
 現在、滝沢市にあるその二つの塔は、県がしっかりとこの後管理していきますと、そういったところを示していかないと、この後の世界平和というのは、本当に皆さんに伝わっていくのでしょうか。県職員の方の中でも、当時そうやって県職員が一生懸命送り出したということを知っている人はどの程度いるのでしょうか。その事実としっかりと県は向き合わなければならないと思うのです。
 つまり、二つの慰霊塔の管理を県がしっかり今後やっていきますということを示していかないと、職員の皆さんも腑に落ちてこないのではないでしょうか。どうでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 先ほど答弁の中で、県内にある約300基の戦没者の慰霊碑と同様、建立者や管理者が、可能な限りみずから維持管理を行うことが適切と申し上げたところでありますけれども、まずは、議員御指摘のような、建立の経緯、そして、それを大切にしてきた経緯というものを守りながら、建立者の意思、管理者の意思、それが非常に大事なことなのだと思います。
 岩手県も、来年度から5年間、厳密にはことしの1月に150周年ということで、事業としては来年度から岩手県の150周年の歴史を振り返り、その中で特に大事なところを改めて県民的に確認する150周年の事業に取り組みますので、そういったところでも、この満州開拓について改めて県職員も学び直し、また、県民の皆さんにも理解を深めていただけるように工夫したいと思います。
〇9番(武田哲君) 満州で起こった事実、そのことを本当は話したいくらいです。どのような状態だったのか。12歳の少年だった方が、お父さんと離れて2年間山の中で壮絶な暮らしを送るのです。そのことがその本にも書いてありました。ましてや、母親との死別の状態とか、どんなふうにあったか、一緒にいた兄弟がどんなふうだったか。
 しかし、生きるすべを持った人だったから、偶然、上海から帰ることができるということを知って、帰ってくるのですけれども、そこまでの道のりを読んだだけでも、本当に中国で起こったことというのは重々わかるのです。しかし、それを伝えるすべもない、話す場もないということに、この遺族会の方々は本当に悩んでいるのです。
 かといって、人前で話すことではない。しかし、起こった事実、そして経験したことというのは、このままにしていいのだろうかと。目前に迫る終わりを見ながら、見据えながら悩んでいる姿であったり、それからあと、岩手県がどのような役割を果たしたか。それは、県民の方々にも広く知ってもらわなければならない。その歴史としっかりと向き合ってこそ、岩手県政だと思うのです。
 これが、まして東日本大震災津波で起こったこと、これからも各地にこれからも建立であったり、命と向き合う場面があると思うのです。その地域地域でいろいろな弔い方があると思いますけれども、民間がつくったとか、地域で県民の人々が建てたということを理由に維持管理にしっかりと向き合わないというのは、何とも悲しいと。
 これは、これから我々の今後の岩手県がどういう県になっていくかというところを示す、知事に課せられたいいチャンスだと思うのです。
 この間、この恩師の方は3冊目を出版されて終わりにするということでした。その3冊書く中で何を示したかったかというのは、多分知事が一番よく感じていると思います。その歴史と恩師の方が伝えたかったこと、それから、遺族会の方々が望んでいることに向き合わなければ、これから岩手県で起こるさまざまな災害と県がどのように向き合っていくか、亡くなった人とどう向き合っていくかということと同じだと思うのです。
 ましてや、農林水産部長にも本当は言いたいことがあるのですけれども、ぬくもり荘にある拓魂碑や野原さんの碑もあります。そういった碑が今どういった状況にあるのか。開拓という歴史の中に、私は第二次世界大戦が見え隠れするのです。そして、その後の戦後回復を開拓がどうやって支えてきたのかとか、県の職員の方々は向き合わなければならない歴史がたくさんあるのです。それをほったらかしにしているようにしか見えないのです。
 雫石町にある拓魂碑ですが、裏には高村光太郎の詩も書いてあります。その碑が今どういう状態にあるか。雫石町では慰霊の森と同じような扱いを受けていると、住民の方々からそういった声もあります。
 県がどういうかかわりを持って、野原さんの碑などをどのように管理していくか。それは、岩手県がこれからさまざまな命、岩手県の歴史にどう向き合っていくかという姿だと私は思っているのです。私はしっかりと向き合っていただきたいと思います。
 それでは、次の質問に移ります。高齢者の就業支援について伺います。
 このことは、ある市のシルバー人材センターの会長からの相談でした。シルバー人材センターは、会員に働く機会を提供することを通じて、会員の生きがいの充実や生活の安定、また、地域社会の発展や現役世代の下支えなどを推進することを目的に設置されておりますが、その取り扱う業務は、全国一律に臨時的、短期的な業務で、おおむね10日程度、軽微な作業でおおむね週20時間までに限定されています。
 センターの請負業務の中で、特に庭木の剪定、刈り払い等の屋外作業の就業期間は5月から11月の7カ月間程度と、現行制度のおおむね月10日程度では、年間就業日数は約70日であり、通年で120日就業できる施設内の業務と比べると50日の差が生じることになります。会員からは、雪が降る季節に働けない日数を屋外作業が可能な7カ月の期間に割り振れないかという要望があるとのことです。
 つまり庭木の剪定、刈り払い等の外仕事の請負業務について、おおむね月10日程度としているものを、おおむね月15日程度とする降雪特区制度を、県が旗振り役になって東北地方や降雪地帯の県と連携して国に申請してほしいとの相談でした。
 外仕事を主とする会員には、派遣労働によくある施設内でのベッドメーキングや商品販売などを主とする商品紹介はなかなかできないとのことです。現状では月10日しか働けないが、月15日も働けたとなると、元気な老人もふえ、また、高齢者の就業機会がふえることで、会員の増加にもつながり高齢者の元気向上につながると話しておりました。
 今後の県の対応について、どのように考えているのかお伺いいたします。
〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) 高齢者雇用安定法におけるシルバー人材センターの就業日数や勤務時間を含めた業務内容につきましては、これまでの他県における特区を活用した柔軟な対応の事例等を背景に、平成28年4月に法改正が行われ、厚生労働大臣との協議により、労働者派遣と職業紹介に限り、日数の制限がなく就業が可能となっております。
 したがいまして、現状におきましても、労働者派遣か職業紹介の方法によれば、5月から11月までの就業日数をふやすことも可能ではありますが、請負が除外されているため制度の活用が進まない状況であると承知しております。
 法改正の経緯から、特区制度を活用してさらに請負の場合の要件緩和を行っていくことは難しいのではないかとも考えているところですが、健康で働く意欲のある高齢者が、活動しやすい環境を構築していくことは重要なことと捉えておりますので、岩手県シルバー人材センター連合会等の意見も聞きながら、対応の検討を行っていきたいと考えております。
〇9番(武田哲君) 平成28年に出されたこの通達は、今の時代に合わないと思うのです。元気な老人もふえております。あと、受け取るお金がふえると、すごく元気になると思うのです。
 しかし、今回、新潟県で起きたある菓子メーカーの火災の中で亡くなった方々を見ていると、60代後半から70代前半の方々だった。まして、消火訓練に出ていなかったと。派遣労働に入るのかもしれませんけれども、どのような状況だったかは、まだまだ今捜査の段階なのでわかりませんが、本当に安心して働ける環境を提供しながら、そして、お金もしっかり手にすると。そして、元気な老人の方々をふやしていっていただけるように、これからも県だけではなくて、ほかの県ともしっかりと連携しながらやっていっていただきたいと思います。
 次に、農業施策について伺います。
 質問に入る前に、今回の高病原性鳥インフルエンザに感染した農場の防疫対応には、短期間で処理、また、現在もその防疫のためにしっかりと頑張っていただいていることに敬意を表したいと思います。
 それでは、質問に入ります。
 新型コロナウイルス感染症による中食、外食の減少、国民消費量の減少などにより、米の在庫量はふえ、米価は大きく下落し、農家は生産意欲を欠き、無力感にさいなまれています。
 米価の下落に続き、ことしは春肥の高騰、燃料の高どまり、資材単価の高騰と、農家は財布との相談です。
 昨年度の米価では、ことしの生産資材にかけられる経費は絞るしかありません。しかし、削りようがない状況です。安さを売りに肥料を販売してきたJA以外の量販店も、肥料自体が入荷しない状況にあります。中国の実質的な輸出制限により、さまざまな肥料原料が入荷しない状況ですが、それはことしだけでしょうか。
 そこで伺います。いま一度、県内にある肥料原料、つまり有機物に着目するべきではないでしょうか。県内の有機物、つまり牛ふん、鶏ふん、豚ふん、馬ふんなど家畜排せつ物です。加えて、下水処理により排出されるし尿汚泥肥料もです。
 し尿汚泥肥料は県内でも流通していますが、東日本大震災津波による東京電力福島第一原子力発電所事故以来、セシウムの検出などで国内の利用にはブレーキがかかっておりましたが、現在はその状況も改善されております。
 また、岩手県には他県にない肥料生産技術も過去には開発されています。高窒素鶏ふん肥料です。この技術をさらにブラッシュアップしてみるときではないでしょうか。
 さらに、肥料取締法も一昨年改正され、化学肥料と堆肥も混ぜることが認められるなど、加えて、国が推し進めるみどりの食料システム戦略もあります。
 県内で令和2年度に生産された堆肥及び家畜排せつ物等の総量は約17万トンあると県から伺いましたが、堆肥等の生産現場と耕種農家のマッチングも含め、今後、生産現場でどのように落とし込めるのか、活用策についてお伺いいたします。
〇農林水産部長(佐藤隆浩君) 堆肥等の活用についてでございます。
 県では、昨年3月に策定いたしました岩手県家畜排せつ物利用促進計画や、“ひと”と“環境”に優しいいわての農業生産推進方針に基づきまして、家畜排せつ物の管理の適正化や高品質な堆肥の生産と円滑な流通、堆肥等を活用した土づくり、畜産農家と耕種農家とのマッチングなど、耕畜連携による堆肥等の活用を推進しているところでございます。
 また、最近の肥料価格の上昇等を踏まえまして、土壌診断に基づく化学肥料等の適正な施用方法、化学肥料に代用できる堆肥の利用方法、県内の堆肥供給業者の情報などを盛り込みました肥料コスト低減技術マニュアルを本年1月に作成いたしまして、いわてアグリベンチャーネット等のウエブサイトから情報発信するとともに、農家座談会や栽培研修会などで、さまざまな機会を捉えまして肥料コストの低減につながる技術を広く周知しているところでございます。
 今後とも、関係機関、団体と連携しながら、本県の強みである畜産由来の豊富な有機物資源を活用した土づくりを推進するなど、耕畜連携による堆肥等の活用を積極的に進めてまいります。
〇9番(武田哲君) 質問のところで、県が以前開発した高窒素鶏ふん、これは私がいつ見たかちょっと記憶にないのですけれども、これを見たとき、もしそれが可能であれば堆肥をまく量が減るなと思ったのです。そうすると、窒素分が大体どれぐらい投入できるかというところが見えるわけです。
 このことを農業振興課で話をしているときに、ある職員の方が、自分に開発させるチャンスをくれないかな、そうしたら岩手県をもっともうけさせられるのにと言っていました。正直、すごく力強い言葉だったと思います。
 この開発された技術というのは、持っているだけではなくて、しっかり生かしていかなければならないと思うのです。ましてや、中国の実質的な輸出制度がいつ終わるのか、この後同じようなことが続くかわからない状況の中で、肥料の資材単価というのは向き合わなければならない。
 どうやって地域内で循環させていくか。ましてや、十文字チキンカンパニーでやっている発電で、残ったリン酸分とか―リン酸分とかは一番高いじゃないですか。どうやって地域内でまいていくか。一つ一つの肥料原料を見ると、まだまだ岩手県にはたくさんあるのです。輸送コストがかからないということは、二酸化炭素の排出量にもつながってくると思うのです。
 その点を踏まえて、これから肥料開発にどのように挑んでいくお考えがあるのかお伺いしたいと思います。
〇農林水産部長(佐藤隆浩君) 農業研究センターでは、鶏ふんを活用いたしまして、窒素成分が高く、化学肥料に比べて安価で散布が容易なペレット状の高窒素鶏ふん肥料の製造技術を平成25年度に開発したところでございます。
 この技術を使いまして民間事業者が鶏ふん肥料を製造、販売しておりますけれども、肥料のにおいに誘われる害虫への対策が必要なこと、それから、長期間保管した場合に、ペレットが固まりとなって散布しにくくなるといったような課題がございまして、残念ながら、近年は利用面積が減少しております。本年5月で製造、販売を取りやめると伺っております。
 国では、みどりの食料システム戦略に、堆肥を用いた新たな肥料の生産など地域、未利用資源の一層の活用に向けた取り組みを盛り込んでおりますので、県といたしましても、こうした国の動向も注視しながら、御提案のございました肥料の開発についても、どのような対応が可能か検討してまいります。
〇9番(武田哲君) 利用がなぜされないのか、どこが問題点なのか、だからブラッシュアップと言っています。
 肥料取締法も変わってきたと。どうやってその窒素成分をこの岩手県内で振っていくか、残していくか。ましてやリン酸分カリ分もあります。そこの活用策を考えるために工業試験場もあると思いますし、いろいろな角度からここは検証していかなければならない。総動員でやっていかなければならないと思います。
 世界からわざわざ肥料原料を輸入しなくても、それは二酸化炭素の削減にもつながるし、地域内で循環するし、いろいろな使用方法があると思うし、混入方法があると思います。肥料だけを見るのではなくて、新しい成長戦略とか、どうやってその肥料原料が世界から来ているか、二酸化炭素の部分も含めて、みどりの食料システム成長戦略とはどこにあるのか、そこのところをしっかり見ていただきたいと思っております。
 次の質問に移ります。農業施策の2点目、酪農振興について伺います。
 畜産農家の減少は、高齢化、生産意欲の減退など、さまざまな理由によって加速しております。
 国の統計によりますと、本県の酪農家は、平成29年度は935戸から、令和2年度には806戸と、この4年間で129戸減少しています。一方、生乳生産量は21万6、845トンから21万2、131トンと、この4年間で4、714トンとわずかな減少にとどまっています。
 これは、酪農家が規模拡大や乳牛1頭当たりの乳量の向上に取り組んできたことで、経営中止した農家の減少分を補ってきたからと考えられます。
 しかしながら、先の質問とも同じように、飼料代や燃料代の高騰が生産現場に暗い影を落としています。このままでは、さらに農家戸数の減少に拍車がかかるものと憂慮しているところです。酪農家からは、規模拡大と合わせ、生産現場のてこ入れ策を望む声を聞いております。
 本県の酪農振興について、今後の見通しを含めた県の取り組みについてお伺いいたします。
〇農林水産部長(佐藤隆浩君) 本県の酪農は、飼養頭数や産出額が全国トップクラスであるものの、経営規模が小さく、生産コストも高いことから、一層の経営体質の強化に向け、規模拡大や生産性の向上が必要でございます。
 このため、県では、岩手県酪農・肉用牛生産近代化計画に基づきまして、規模拡大を志向する生産者の牛舎等の整備、本県の強みである豊富な自給飼料の積極的な利用推進、飼料の収穫、供給を行うコントラクターやTMRセンターの育成、強化、県や農協等で組織するサポートチームによる乳量、乳質、分娩間隔の改善などの取り組みを支援しているところでございます。
 こうした取り組みによりまして、令和2年度の酪農家1戸当たりの飼養頭数は51頭で、5年前に比べ約2割増加したほか、乳牛の生乳生産能力等を把握する牛群検定実施農家の1頭当たりの年間乳量は約9、700キログラムと、この5年間で約400キログラム増加しています。
 また、昨年3月に酪農・肉用牛生産近代化計画の見直しを行い、酪農については、飼養戸数、頭数の減少が見込まれるものの、経営規模の拡大や乳牛の産乳能力向上等により、県全体の生乳生産量を維持することを目標に掲げたところでございます。
 県では、今後とも生産者や次世代を担う後継者が、意欲と希望を持って酪農経営を行っていくことができるよう、規模拡大や生産性の向上など、酪農経営の体質強化に取り組んでまいります。
〇9番(武田哲君) 岩手県の酪農は、県内各地でさまざまな取り組みが行われています。しかし、その中で、生産する喜びであったり、どうしても乳質とか、1頭当たりの搾乳量であったり、酪農はさまざまな数字と向き合ってきたと思うのです。ましてや、ある農協の組合長は、乳業メーカー3社はどこも黒字じゃないか、何をやっているのかと。我々の懐に入るお金は全く少ないと。そういったところを嘆く人もいる。
 しかし、それは乳業メーカーもどうやってお金を得るのか努力したからなのです。さまざまなものに混ぜたり、それから商品開発の努力の結果だと思うのです。
 私も酪農家の人たちにもその努力を楽しんでやってもらいたいと思っているのです。生産の喜びというのは、やはり、おいしいと言われることであったり、評価されることであると思います。消費者から直接いろいろな声を聞くことが、農家のやる気に一番つながると思います。
 確かに、懐に入るのも大事です。でも、これからの農業者のことを、これからどうやって育てていくか。やはり出口戦略も含めて、これから県はさまざまな応援をしなければならないと思うのです。そこのところを農林水産部長はどのように応援していくのか、農家が生産の喜びをどう実感できる農業施策にしていくのか、その点をお伺いします。
〇農林水産部長(佐藤隆浩君) 生産者の方が、喜びを一番感じるというのは、もちろん収入そのものもあるのでしょうけれども、自分のつくった商品、製品が消費者の手に届いて、それを本当に喜んでいただける、本当にこういう商品つくってよかったということを実感できるところは、そのとおりだと思っております。
 一時、原料を生産して、そのままメーカーに出荷するとか、そういったことだけではなくて、例えば、消費者と直接向き合うということであれば産直への出品とか、あるいはいろいろな6次化産業といいますか、商品開発とかは非常に大事だと思っております。
 商品化に向けたいろいろな県の取り組み、支援策がございますので、こういったことも活用しながら、生産者が喜びを一番感じるのはどういったことか、そういうことを常に生産者の声を聞きながら、県としての支援策を考えてまいりたいと思っております。
〇議長(五日市王君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後5時44分 散 会

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