令和3年12月定例会 第18回岩手県議会定例会会議録

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〇18番(岩渕誠君) 希望いわての岩渕誠です。
 この場に立たせていただいた全ての皆様に感謝の意を表し、質問いたします。
 最初に、今後の行財政運営と改革の方向性について伺います。
 冒頭、結論的に申し上げれば、県財政を取り巻く環境は、危険水域に入ったと私は認識しております。新型コロナウイルスの影響は多岐にわたり、災害対策的側面から、この局面では、本来、国の責任において積極的で切れ目のない予算編成が必要ですが、地方が必要とする費用も予備費に積んだままの出し惜しみや、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の基金化を基本的に認めないなど、地方は、機動性や自由度を制限された財政運営を余儀なくされ続けています。
 これに人口減少や経済の停滞で地方税財源の先細りなどが加わり、積み上がった地方赤字公債とも相まって、財政の弾力性は硬直化する一方です。
 公共サービス水準は維持されたまま、新年度予算編成作業におけるマイナスシーリングは一般行政経費にまで及んでいますが、乾いた雑巾を絞るような作業であり、財政的には緊急事態宣言と言えるものと理解しています。
 まさに、財政改革は、県政において、現下爛頭の急務となりました。これについて県の認識をお伺いいたします。
 さて、中期財政見通しを見ても、今後、収支ギャップは拡大し、このままでは赤字に転落するとしていますが、その要因の大きな一つが、地方交付税の持つ地方への財源調整と財源保障の二つの機能低下にも求めることができると考えます。
 御承知のとおり、地方交付税は、人口に応じた交付の割合が七、八割を占めています。これは、経済も人口も右肩上がりで、自治体間の均衡性があることを前提とした場合に機能するものであり、現状の経済状況と人口減少、そして地域間格差が拡大する状況下では、人口を基礎とした制度設計上、財源調整機能も財源保障機能も低下するのは必定であります。
 加えて、2001年度から導入された臨時財政対策債は、本来交付税で措置すべきものを地方赤字公債として補うもので、臨時とは裏腹に恒常化しています。臨時財政対策債の累計は、県債残高のほぼ4割に積み上がりました。今後、この償還が多額に上ることが単年度収支の悪化につながる大きな要因で、私は、早ければ令和7年度以降には現実のものになると危惧しています。
 制度として地方交付税は、確かに人口比以外の部分について、地方6団体や総務省などの知恵で、人口減少等特別対策事業費など政策的に補正措置されています。
 しかし、地方交付税が財源を保障して地方分権を推進するものではなく、国としての公共サービスの水準について一定のレベルを保とうとする、いわゆるナショナルマキシマムの性格を一層強めていることに、地方として強い憂慮を示すべきだと思います。これを端的に言えば、国の定める範囲で公共サービスをすればよいという、いわば地方は金太郎あめ的下請論につながるものに抵抗すべきということです。
 私は、自治体間の格差拡大と人口格差を放置したままでは、結局、財政面から見ても、トータルの負担が増大して国力は衰退するだけであり、今こそ、地方分権によるそれぞれに特色を持った国土の均衡ある発展こそが必要で、結果として、最も全体の財政負担が最小化されると考えます。
   〔議長退席、副議長着席〕
 さて、地方交付税の算定においては、現在は、地方の行政経費にどれだけの需要があるかを考慮した方式、需要考慮型と言われますけれども、これにより財源調整が行われていることにはなっているものの、地方が求める実際の需要と交付される額に激しい乖離があることは問題です。
 岩手県政において、この代表的なものは医療と教育です。県民の命を守り支える県立病院ネットワークの整備と維持、地方の人材育成と地域づくりに貢献する県立学校整備など、とりわけ医療と教育に対して、毎年、一般会計からの恒常的な多額の繰り出しや歳出で支えてきました。
 医療と教育は、いずれも交付税で算定される基準財政需要額に対して、これを超える額を財政投入しており、合わせると毎年、数百億円程度を真水で投入していることになります。
 鈴木善幸元総理大臣は、足らざるを憂うのではなく、等しからざるを憂うという言葉を残していますが、これまで岩手県政を貫いてきた哲学は、まさに、どこで生まれても、どんな環境でも、努力をすれば、みんなが人間らしく安心した生活をできるようにすることであったと思います。
 医療と教育は、その哲学の根幹をなすものとして、時々の為政者が、困難に直面しながらも、等しからざるを憂いながら、知恵を絞り、巨額の県費を投入してきたものと認識しております。
 交付税措置を超える財政投資については、ともすると削減の議論を巻き起こしがちですが、私は、地方の行政需要の実情に沿った交付税算定のあり方をまず求めるべきであると考えます。県の見解をお示しください。
 一方で、財政支出の見直しは県としてもやらざるを得ない状況ですが、やはり今後の改革に当たっては、等しからざるを憂い、医療と教育については最大限の配慮と明確な方針に沿って改革に当たるべきと考えますが、今後の方針についてお尋ねいたします。
 今回この質問を取り上げたのは、ポストコロナの中で地方財政はどうあるべきかという点で強い懸念を持っているからです。新型コロナウイルス感染症では、やはり東京一極集中の弊害、大いなるリスクが顕著になったと思います。私は、この検証をしっかりして地方分権を進めないと、国も地方も立ち行かなくなるという危機感を抱いています。
 既に各種データを見ると、脱東京一極集中、地方回帰の動きは出ていて、地方移住の動き、企業の地方への本社移転がありますが、岩手県でも高校生の地元就職率が過去最高の見込みですし、変動幅はあるものの、昨年7月から人口動態は転入超過もしくは均衡の傾向に転じています。今回の地方回帰の流れについては、危機に対する本能的対処とも言うべきものと思いますが、民間を中心としたこうした流れを本物にしていかなくてはいけません。
 一方で、政治や行政の立場からの、あるいはマスコミの地方分権の議論は低調と言わざるを得ません。地方議会に身を置く者として、また政党人としてじくじたる思いですが、地方交付税をめぐる議論に至っては、地方回帰のむしろ逆です。地方の行政需要に支出を合わせようという考え方から、国の考える効率性の物差しで行政をやってくれればよいという論が台頭しているように感じます。この先に見えるのは、財政規律だけを優先する姿であり、結果として、地域間格差を容認することに簡単につながります。
 また、現状の地方創生の方向性では、一定規模かつ人口集積された自治体のみの発展にしかならないと強く危惧します。デジタル化、グリーン化は地方分権の重要インフラとなると考えますが、どのような政策を展開するにしても、地方の特色を発揮できる財政構造としなくてはなりません。全国知事会などを通じて、地方総がかりで国に働きかけていただくことを要望して、登壇しての質問を終わります。
   〔18番岩渕誠君質問席に移動〕
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 岩渕誠議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、財政改革に関する認識についてでありますが、さきに公表した中期財政見通しにおいては、人口減少等に伴う実質的な一般財源の減少に加え、高齢化の進行等に伴い増加する社会保障関係費や高水準で推移する公債費への対応により財源不足額が拡大するなど、一層厳しい財政状況となる見込みであります。
 この中期財政見通しを踏まえ、令和4年度の当初予算編成においては、経常的経費を含む徹底的な歳出の見直しや、あらゆる手法による歳入の確保に努めることとしています。
 今後においても、必要な行政サービスを安定的に提供していくためには、人口動態や社会経済情勢の変化に対応した行財政基盤の構築に必要となる各分野の対応の方向性について、検討を深める必要があると認識しております。
 次に、財政運営に係る今後の方針についてでありますが、本県はこれまでも、県立病院が担う地域医療や未来を担う子供たちへの教育に係る経費については、重点的に措置してきたところであります。
 人口減少時代においても、医療や教育を含め、必要な行政サービスを安定的に提供し、いわて県民計画(2019〜2028)を着実に推進していくためには、各分野の対応の方向性についての検討を通じて、持続可能な行財政基盤を構築していく必要があります。
 そのため、国に対し、安定的な財政運営に必要な財源が十分に確保されるよう、財政措置の拡充について引き続き要望していくとともに、中長期的な視点から、行財政基盤の構造的な課題の分析を深め、今後の人口構造を踏まえた歳入確保策やあるべき歳出水準について検討してまいります。
 その他のお尋ねにつきましては、総務部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔総務部長白水伸英君登壇〕
〇総務部長(白水伸英君) 交付税算定のあり方についてでありますが、議員御指摘のとおり、本県への交付税措置については、広大な県土を有するためにかかり増しとなる財政需要が的確に反映されておらず、例えば、地域医療を支える県立病院の運営や、修学機会を確保するための小規模高校の維持などに係る経費に対する措置が十分でないと認識しております。
 これらの経費を含む行政サービスの提供に必要となる経費については、予算編成過程において、歳出の見直しを進めることを前提としつつ、地方団体が標準的な行政水準を確保できるよう、国が地方財政の健全性を確保すべきという地方財政法等の趣旨を踏まえれば、まずは、地方税の充実強化を図るとともに、国からの負担金や補助金などによる措置の拡充を訴えていく必要があると考えております。
 また、交付税の算定についても、国に対し、広大な県土に多数の条件不利地域を抱え、かかり増しとなっている本県の財政需要を的確に反映するよう、全国知事会とも連携しつつ、引き続き強く要請してまいります。
〇18番(岩渕誠君) やはりかかり増し経費というのは、広大な県土を持つ岩手県にとっては、どれだけ努力しても難しい点があります。今の算定の中でマイナスの方向にいじられているという印象を持っていますし、実際そうだと思いますので、そこをきちんと直していただきたいと思います。
 私が指摘した中で、もう少し具体的にお話ししますと、国がお金を地方に出すときに、かなり渋っているし、かなり介入しているという実態があると思います。これは、全国知事会の要望にもありますけれども、例えば今、国庫補助金の交付の要件に、何がしかの計画をつくらなければならない。ところが、本来その計画は地方のための計画なのだけれども、お金をもらうための計画になっていて、これは非常におかしいということです。
 それから、国が今持ち出してきている従うべき基準というものがあります。これは、制度の細かな部分にまで国が関与しているということになります。よく言われるのは、保育所の居室面積をこれぐらいにしなさいとか、訪問看護ステーションの看護師はこれぐらいいなければだめだとか、そういったものは、本当に地方の実情に合っているのか。
 もう一つは、今、空飛ぶ補助金と言われていますが、行政を通さずに国の出先機関が直接事業をする、それから、民間が直接交付を受ける補助金ですけれども、これが本当に地方の事業と足並みがそろったものなのか、あるいは連携がとれるものかどうか。こういった、国がどんどん地方を無視した形でやっているものがふえてくると、これは本当に大変な話になってくると思います。
 何回も言われますけれど、国と地方の税収割合が6対4、一方で業務量は反対になるということでありますから、全国知事会は、控え目に5対5にしようという話をしていますが、やっぱりそこを最低限今やっていかないと、これは大変なことになると思います。
 国も当然、お金がないのはわかるのですが、最近話題になっている話で言うと、クーポン券の事務費に相当な額がかかる。だったら地方にくださいというようなことで、これは真面目にやってもらわなければいけないと思いますが、これは指摘にして、終わります。
 お金の話の次は、人に関する質問をいたします。
 国家公務員法の改正で、公務員の定年が65歳まで引き上げられることになりました。これに呼応して、地方公務員法や各種条例の改正が必要であり、岩手県でも、令和5年度から9年かけて、段階的に定年を65歳まで引き上げることが見込まれています。近々条例改正案も議会に提出されるものと思います。
 そこで伺いますが、定年の引き上げによって、職員定数や総人件費はどのようになる見込みか。60歳以上は役職定年制が導入されるとお聞きしていますけれども、どのような処遇をお考えなのかお示しください。
〇総務部長(白水伸英君) まず、定年引き上げに伴う地方公共団体の定員管理のあり方についてでございますが、国におきまして、有識者や自治体関係者で構成する研究会が設置されておりまして、この研究会での議論等を踏まえて留意点を示すことになっております。
 県としては、この国から示された留意点の内容も参考としながら、今後の行政需要等も踏まえて、定年引き上げ後の職員定数のあり方について検討していきたいと考えております。
 次に、職員の人件費についてでございますが、現時点で定年引き上げ後の見通しを申し上げることは困難でございますが、現行の職員数を維持し、国家公務員と同様に、定年引き上げ後の給与水準を60歳前の給料水準の7割ということで勤務条件の見直しを行うと仮定して試算いたしますと、定年を引き上げない場合と比較すれば、財政所要額が一定程度増加するものと見込まれるところでございます。
 次に、令和5年度から導入されるいわゆる役職定年制でございます。これは、管理監督職の職員を管理監督職ではない職へ降任する制度でございますが、その対象となる年齢や職の範囲は条例で定めることとされておりまして、これら制度面とあわせて、役職定年制適用後の職員の役割や配置についても、今後検討してまいりたいと考えております。
〇18番(岩渕誠君) 職員の問題は、定年制の引き上げによってまだまだあるのだと思います。私は、岩手県の職員の構成がかなりいびつになっていることが課題だと思っています。これは、平成20年度から平成23年度にかけて、岩手県は、率にして10%を超える職員の削減目標を定めまして、実績では目標を上回って500人以上削減して、いわゆる4、000人体制とスリム化しました。これは、まさに地方に対する交付税がかなり削減されたことに呼応して、国と地方が定数削減に取り組んだ流れにあるものと思っていますけれど、やっぱりそのときの影響が今になって出てきていると思います。
 例えば、年代別に見ると、今50代の職員が1、331人在籍しているのですけれど、30代は半分にも満たない655人です。平成30年度の一般行政部門の年齢構成をもとに細かく見ていきますと、現在53歳あるいは48歳という年齢層ではそれぞれ160人います。しかし、30代半ばではその3分の1程度、50人から60人しか職員がいないということです。
 これらの世代が県庁組織の第一線で県民の声を聞く、そして政策立案のもとになっているという役目を果たしていますけれど、この働き盛り、それで10年後には恐らく管理職になる人が多いでしょう。そういう年代が数量的に非常に薄いということは、私は大変大きな課題だと思っています。過剰労働の危険も当然ありますし、政策立案、業務執行に重大な懸念を持っております。
 これらの対策をどう進めるのでしょうか。これは、定年の引き上げとセットで早期に対応策を検討する必要があると思いますが、県の見解をお示しください。
〇総務部長(白水伸英君) 現在、知事部局におきましては、議員御指摘のように、採用数を抑制していた時期の影響などにより、40代以上や20代の職員が多い一方で、30代の職員が各年代の中でも少ない現状にあるため、担当の総括など組織の中核を担い、若手職員の育成において重要な役割を果たす中堅職員層の偏在が、組織的な課題となっているところであります。
 こうしたことを踏まえ、これまで民間経験者を対象とした試験職種の創設や任期付職員経験者の選考採用、年次にとらわれない積極的な職員の登用などにより、年齢構成の偏りを改善するよう対応してきたところでございます。
 議員御指摘のとおり、定年の段階的引き上げが完了する10年後の令和13年度には、管理職を担う年齢層の職員数が少なくなる一方、60歳以上の職員比率が現在より高まることが見込まれますことから、60歳以上の職員に、例えば、専門的な現場での業務や、組織運営上の知見を生かし管理職層の支援や若手を育成する業務を担ってもらうことなども考えられるところであり、こうした点も含めて定年引き上げ後の対応を検討してまいります。
〇18番(岩渕誠君) 定年延長した人が、そういう専門の仕事をするということですから、今から御人徳をもってやっていただかないと、なかなか受け入れられないのではないかと思います。
 実際には、財源的に職員定数を今から大幅にふやすことは難しいと思いますし、それから、今言ったように、定年延長した人材をどう生かすかといっても、やはりその年代、その年齢でしか感じられないこと、やれないことというのはありますから、限界があります。業務量は減らない、むしろ増大することが見込まれる中で、どうしても外部委託をしなくてはならないということが、現実的な選択になってくると思います。
 今でもNPOなどとの協働が進められていますけれども、今後、さらに委託がふえていくと思っていますが、課題があると思いますので、私は端的に一つだけ取り上げます。
 今、県の出資法人に対しては、運営評価等の指導監督が行われております。ただ、それ以外の委託先となりますと、なかなか及んでいない実態ではないでしょうか。委託先では、県からの受注額が多額に上る団体も見受けられるようになっていて、出資法人が県から受託する額を上回るケースも出てきました。中には1億円を超える県の委託を受けているNPOもあります。今、県はそれぞれの部がそれぞれ委託をしていますから、1億円もあったのかというような状況になっていると思います。つまり、全体の状況をよくつかめていないのではないかということを危惧しております。
 それから、今、NPOなどの場合は、書面による確認は行われているのですけれども、委託先として、行政品質などの観点から県がきちんと統制すべきものは、行き届いていないのではないかと思います。
 それから、受託側の状況とすれば、どんどん受託額がふえて、そうすると組織が肥大化し、結果的に、それを維持するために次の受託をどうするかを考えますから、いわゆる人を雇った分スリム化できない状況になってきます。本来これを頼みたい、こういう専門性があるからNPOに頼みたいのだけれども、それがずれてしまう。それで、政策的にも効果が上げられないということも、私はちょっと心配しているところでございます。
 そういう意味で言うと、委託先についても一定程度の内部統制を機能させる仕組みづくりも急務だと思いますが、県の見解をお示しください。
〇総務部長(白水伸英君) 県の業務委託でございますが、専門的な技術、知識が必要となる設計、測量や情報システムの保守等のほか、多様な主体との連携、協働や民間活力の導入によるサービスの質の向上を目的とするものなど、その範囲は広く、令和2年度の一般会計決算で441億円余となっており、これらの業務が効果的に実施される体制を確保することが重要と認識しております。
 このため、建設関連業務や情報システム開発業務などの専門的な技術、知識を要するものや庁舎管理など定型的な性質を有する業務に係る委託については、入札参加資格制度による資格審査を設け、業務の実施体制の確保を図っております。
 これら以外については、業務委託を行おうとする部局において、個別に業務の実施体制の確認等を実施しているところでございます。
 引き続き、多様な主体との連携、協働の推進が求められることから、例えば、複数の部局から多数の業務委託を受け、その金額が一定以上となる者の業務実施体制を確認するなど、より一層の事務事業の効果的な実施が図られるよう、取り組みを検討していきたいと考えております。
〇18番(岩渕誠君) 最後のところがとても大事だと思います。やはり県民の信頼に応える、それから、業者と県の協働のもとになるのは信頼ですから、やはりそこは、内部統制を強めるような形でやっていっていただきたいと思います。
 次に、今後の産業振興の方向性について伺います。
 本題に入る前に、コロナ禍における税収状況を明らかにしておきたいのですけれども、10月末までの県税の調定状況を見ますと、個人県民税は、震災時の平成23年度以来の前年割れとお聞きしています。一方で、法人事業税と税率改正があった地方消費税は2桁の伸び率ということです。県税トータルでは現時点で3.2%伸び、コロナ禍前の税収水準に戻りそうな勢いですけれども、県内法人も二極化しているものと懸念しております。
 県として、県税の調定状況から、個人所得と県内の企業の状況をどう分析しているのかお示しください。
〇総務部長(白水伸英君) まず、個人県民税の状況でございますが、新型コロナウイルス感染症の影響により、令和2年の給与所得が減少したことなどから、10月末の調定状況は、前年度比5億1、300万円、率にして1.4%の減となっているところでございます。
 法人事業税については、一般機械製造業や半導体関連を含む電気機械製造業など、3月決算法人が好調であったことから、10月末の調定状況は、前年度比18億8、900万円、率にして13.4%の増となっているところであります。
 一方、運輸・通信業が大きく減少となるなど、コロナ禍の影響もあり、業種間、また同一業種の中でも企業間で差が生じていることから、引き続き、その動向を注視する必要があると考えております。
〇18番(岩渕誠君) 今お聞きしたとおりですけれども、やはり個人の暮らしが相当痛んでいるということでありますから、ここの立て直しは急務だと思います。やはり直接給付が必要だということは、税務の状況を見ても明らかだと思います。
 法人の状況については、今言及はありませんでしたけれども、やはりサービス業はかなりひどい状況だと思うのです。これは支援の必要性が出てくると思います。いわゆる決算がよくなかったところは、恐らくゼロゼロ融資を受けたところも少なくないと思いますけれども、借入額が相当に膨らんでいると思います。これは東京商工リサーチのデータですが、県内企業の大体35%は過剰債務感を持っているというところでありまして、これからの状況がかなり大変ではないかと思っています。
 特に今、必要な物価も上がっていますから、これから変異株がどうなるかというものにも影響があるわけですけれども、まず一番頭が痛いのは、ゼロゼロ融資の返済をどうするか。きのうも話題になりましたが、今後の県内の借入企業の返済スケジュールをどう把握して、課題についてどう分析しているのか、またどう対応するのか、県の考えをお示しいただきたいと思います。
〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) 新型コロナウイルス感染症対応資金、いわゆるゼロゼロ融資の融資実績は1万2、110件、1、944億790万円余となっており、そのうちの約半数となる5、675件が令和3年10月末までに返済を開始しております。これは、昨年度の借り入れ時に、コロナ禍の長期化を見通していなかった、あるいは1回当たりの返済額を少額としたいなどの理由から、据置期間を短くしたことによるものと見込まれております。
 こうした状況につきましては、金融機関や商工指導団体などと開催している経済金融連絡会議でも共有され、返済への不安、融資を受けた資金を含めた手元資金の減少、さらには、今後の資金繰りの懸念などが指摘されており、償還猶予等の条件変更に柔軟に対応することとし、先日開催した会議におきましても、改めて、年末に向けて連携して取り組むことを確認したところでございます。
〇18番(岩渕誠君) その答弁はきのうもお聞きしました。問題は、これは後に繰り延べして返済するようなことになっても、最終的な制度が返済期間のお尻を決めていますから、後ろに持っていけば持っていくほど単年度の負担がふえるから、では、今から払おうかというところが多いわけです。結局、最後のお尻のところが決まっている中では、その中でスケジュールを見直しても、後のほうのリスクが非常に高まることなわけです。
 今までは、資金繰りを中心とした支援になっていますが、それをどうするか。延長を求めていかなければいけないと思いますし、それから、本業支援を行っていかなければいけない。コロナ禍における産業再生の試みというのは、実はここからが本番だと私は思っているのですが、どう考えますか。
〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) 金融機関や商工指導団体と開催している経済金融連絡会議の場におきましても、今年度の会議の中で、先ほど言ったように、まず、資金繰りの面については柔軟に対応していくということを確認しておりますが、とにかく本業支援を行っていかないと返済に結びついていかないということで、国の事業になりますが、事業再構築補助金について、金融機関が積極的に希望する事業者に対して支援して、活用しております。
 また、コロナ禍で新しい生活様式に対応したECサイトを活用した販路拡大などの取り組みについて、金融機関のほか、県におきましても、商工指導団体に専門相談員を配置する予算を確保し、伴走型により困っている中小事業者を支援していく体制をつくっていくこととしております。
〇18番(岩渕誠君) それはとても大事なことだと思いますが、あわせて、制度ですから、これはやはり状況を見て、全体の期間をどうするかということは早目にやっていかないと、本当に、新型コロナウイルス感染症の影響による倒産というのは事後で来てしまいますから、これだけは絶対に避けなければいけないと思いますので、指摘をしておきます。
 今、お話がありましたが、税収から見ると製造業は非常に堅調な数字となっており、今後の税源涵養の観点から見ても参考になるものと思います。
 特に、半導体は、コロナ禍でその重要性が一段と注目され、各国とも自国内生産への投資を加速させています。パソコンや自動車など多くの製品に不可欠であることは御承知のとおりでありますが、我が国も、国内需要の6割ほどを台湾あるいは中国に依存しており、個々のサプライチェーン強化のみならず、経済安全保障の観点からも、半導体確保は重要となっています。
 そのようなことから、半導体メーカーの立地県としては、追い風となる環境でありますが、今後の半導体産業の育成について、県はどのように進めるつもりかお尋ねします。また、あわせて現在の半導体関連産業への県内企業の参入実績についてもお示しください。
〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) IoTやAI等の技術の進展による半導体市場の持続的な成長に加え、コロナ禍における半導体不足等を背景に、国では、国内半導体産業の生産、供給能力のさらなる強化を図ることとしております。
 こうした追い風となる環境のもと、本県に立地する主要な半導体関連企業において、積極的な設備投資と生産拡大が進められております。
 県では、令和3年3月に策定したいわて半導体関連産業振興ビジョンに基づき、さらなる成長に向け、ニーズの高い洗浄や板金等の技術を持った企業の誘致、また、能力増強への支援、地場企業との取引マッチング等を推進し、県内での一貫生産体制の構築や、北上川流域ものづくりネットワークやいわて半導体アカデミー等の活動を通じた人材の育成、確保などに取り組んでいるところでございます。
 また、県内企業の参入実績については、展示会への出展支援や、マッチングなどの県の取り組みによる地場企業の新規取引件数が、平成28年度から令和2年度までの5年間で合計154件となっております。さらに、現在、新たに半導体工場の設備メンテナンス等に係るマッチングも進めており、これらの取り組みにより地場企業の一層の参入も促進していく考えでございます。
〇18番(岩渕誠君) ぜひ進めていただきたいと思います。多分これは、半導体関連産業だけを厚くするということよりは、半導体を使う関連の産業、取引のある産業との間で、地域内のサプライチェーンをどう構築していくかが肝要だと私は思っています。特に、岩手県の産業振興の柱である自動車は、通常の稼働に今月から戻るということですから、世界戦略の中で、さらなる拠点化が進むものと思います。
 知事は、トヨタ自動車株式会社の豊田章男社長を初め、関係者とも懇談をする機会を少なからずお持ちと伺っています。半導体工場が立地する県として、今後どのように自動車産業などとのサプライチェーン形成や全体の産業振興につなげていくお考えか、お示しいただきたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 県では、令和元年度に策定した岩手県自動車関連産業新ビジョンに基づいて、地場企業の自動車関連産業への参入を促進するとともに、関連企業を誘致しながら、これらが一体となったサプライチェーンの形成を支援しております。
 半導体は、センサーや電子制御など自動車にとって頭脳となる部品であり、県内に立地する企業においても、ハイブリッド車の制御などに使われる車載用半導体製品を製造し自動車メーカーに供給するなど、自動車関連産業と一体的にサプライチェーンが形成されているところであります。
 今後、自動車の電動化が加速し、これに伴い半導体需要のさらなる拡大が見込まれますことから、引き続き、半導体を含むサプライチェーンの強化に取り組んでまいります。
 また、半導体は、あらゆる産業や生活において必要不可欠な重要部品であります。県としては、半導体にかかわる県内企業が、自動車のみならず医療機器を初めとした幅広い産業へ参入することを支援し、本県ものづくり産業の一層の集積と競争力のさらなる強化を推進してまいります。
〇18番(岩渕誠君) ぜひ強くお願いしたいと思います。
 半導体と自動車は、岩手県の産業政策の中では柱となるものでありますし、私は、ILCに起因する加速器関連産業や、今お話がありましたけれども、ヘルステック関連産業とあわせて、世界と互角に戦える柱として戦略を立てるべきだと思います。これが県民所得や県税収入、経済振興あるいは地域振興にもつながるだけに、民間の声を取り入れて、ポストコロナの細かな産業戦略をつくっていくことが必要だと思いますが、あわせて県の方針を伺います。
〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) 県内のものづくり企業には、すぐれた基盤技術を強みとして、自動車、半導体双方のサプライチェーンに参画し、両産業を支えている企業が多数ございます。
 これらの企業にとっては、加速器やヘルステック関連産業への参入も大きなビジネスチャンスでございまして、また、そこで必要とされる先端技術の習得、フィードバックにより、例えば、次世代自動車や革新的な半導体製造装置に対応した生産技術の開発など、双方の産業のさらなる高度化に相乗効果を発揮することも期待されます。
 こうした中、県では、自動車、半導体、さらには医療機器関連産業など、それぞれの分野ごとに振興ビジョンを策定し、その振興に向けた取り組みを推進しております。
 今後も引き続き、産業界や企業等の声を踏まえながら、有力な完成品メーカー、高度な基盤技術を持つ地場企業、優秀なものづくり人材など、地域の持つさまざまな強みを生かし、自動車、半導体を中心に、加速器、ヘルステックなども含め、国際競争力が高いものづくり産業が総合的に発展していくように取り組んでいく考えでございます。
〇18番(岩渕誠君) 今、産業ごとにそれぞれの戦略があるということはいいと思うのですが、それに横串を刺した形でやっていくことが必要だと私は思っていますので、ぜひ、それは今後の課題にしていただきたいと思います。
 今、自動車、半導体の話をしたのですが、これは非常に期待が大きい一方で、世界経済の波には非常にさらされやすい。特に、自動車の次世代開発がどうなるか、それから、次世代のキーデバイスが何になるのかという動向を非常に注視しなければならないということも事実だと思います。
 そういう意味では、岩手県の持つポテンシャルを発揮する産業育成も今まで以上に必要でありますし、私は、それを食関連産業全体に求めるべきだと思います。
 私は、ここの部分では県の押し出しがちょっと不十分ではないかと考えております。原材料調達を県内でできないのか、あるいは近年注目が集まっている加工用野菜について、原材料生産にとどまっていますが、加工、流通に広げるにはどうしたらいいか、そういう部分の戦略がまだ描き切れていないと思うのです。
 逆に言うと伸び代もあると思っています、私は、食産業を岩手県の成長産業として明確に位置づけていくことが、第1次産業の現場にも波及する効果を生み出すと考えているのですが、県の考えをお示しください。
〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) 国の工業統計調査では、本県の令和元年度の食料品製造業の製造品出荷額は3、902億円となっており、製造品出荷額全体の14.8%を占め、輸送用機械器具製造業に次いで第2位となっており、食産業は本県の基幹産業の一つとして地域経済の牽引役を担っていると認識しております。
 県ではこれまで、専門家派遣やいわて希望応援ファンドによる助成などを通じて、県産食材を活用した付加価値の高い商品づくりを支援するとともに、県内外での商談会の開催等により販路の拡大に取り組んでまいりました。
 こうした取り組みにより、県産の米粉や小麦粉を使用した麺やスイーツ、パンなどの独自商品が多数開発、販売されておりまして、今年度は、また新たに民間企業と連携いたしまして、消費期限などの関係から、これまで県外への出荷が難しかった食品を西日本へ航空機で輸送するような、新たな販路開拓などにも取り組んでいるところでございます。
 今後も、全国有数の食料供給県としての強みを生かしながら、消費者に選ばれるような高品質で魅力ある商品づくりを進め、それらの販路開拓までの一貫した支援を行い、本県食品産業の振興を図っていく考えでございます。
〇18番(岩渕誠君) 今答弁にあったように、3、900億円あるのです。半導体よりも200億円近く多いのです。やはりそういうことからすると、押し出しはちょっと控え目だと思うのです。食産業は各地での事業展開が可能ですから、もう少し前面に出すような工夫をしてぜひ進めていただきたいと思います。
 食産業の話をしましたので、次は農業政策について伺ってまいりたいと思います。
 米価下落によって岩手県の96%に当たる5ヘクタール未満の経営体は赤字、当然、大規模化を進めれば進めるだけ赤字幅は拡大して、生産コスト削減の努力も完全に吹き飛ぶ状況であることは御承知のとおりであります。私も農家をやっておりますが、真っ赤っかでございます。
 政府も、15万トンの特別枠を設けて市場隔離をするということを強調していますけれども、管理期間の長期化による価格の下落を誰が補填するのか、そして、そもそも回転備蓄である以上は問題の先送りにしかならないなど、抜本的な対策にはほど遠い内容だと感じています。
 加えて、農林水産省の試算によれば、来年度の適正生産量は今年度産米より21万トン少なく設定しています。既にこの段階で、政府の特別枠での隔離では需給の均衡につながらないおそれも出ています。出ているというか、そのとおりでしょう。
 そういう意味では、いろいろなことが限界だと思っているのですが、所得確保対策の柱の一つである収入保険による補填も、青色申告が加入条件で、世帯全体で収入を見ているために、実際に支払いが可能かどうかは、現段階でどの程度になるか全く見通せないということで、本当に保険がおりるのかもわからないという状況です。
 達増知事も、全国知事会の農林商工常任委員会の委員長として、国に対して米価下落対策を要請していますが、現在の国の米価下落対策についての評価をお聞かせ願います。
 また、今般の米価の下落は、新型コロナウイルス感染症に起因する下落ですから、私は、今年度産米の減収について、中小企業に対する給付金制度の対象にしてしかるべきと思います。あわせて所感を伺います。
〇知事(達増拓也君) 国は、米の需給対策として、令和2年産米の民間在庫量のうち37万トンについて、長期計画的な販売を促進するため、JA等の集荷団体に対し、保管料や中食、外食向けの商品開発経費等を支援してきました。
 また、37万トンのうち、新型コロナウイルス感染症の影響による需要減に相当する15万トンについては、今般の経済対策で特別枠とし、保管料等の補助率を引き上げることとしたところであります。
 一方、社会経済活動の本格的な再開により米の需要回復が期待されるものの、全国の米の需要量は、人口減少等を背景に毎年10万トン程度減少していくとされており、今般の特別枠の設定で、どの程度米価が回復するか不透明なところであります。
 米の生産、流通は、都道府県単位では完結せず、国全体での対応が極めて重要であり、今般、全国知事会農林商工常任委員会では、国に対する提言に、米の需給と価格の安定化に向けた、真に実効性のある在庫対策や、消費喚起などの需要拡大対策の推進を盛り込み、国に対し、対応を強く求めていくこととしています。
 また、米の減収を中小企業に対する給付金制度の対象とすることについては、現時点で制度の詳細は不明でありますが、国の経済対策で示された事業復活支援金は、個人事業主を含め、業種を限定せず、事業規模に応じて支給するとされていることから、昨年度の持続化給付金と同様に、農林水産業を含む形で広く対象となることを期待しているところであります。
〇18番(岩渕誠君) 今、最後に知事からお話がありましたけれども、やはり持続化給付金からの衣がえの部分ですから、これは当然、農林水産業が含まれていないとおかしな話であります。今回の場合は法人向けに手厚くなっていますから、ここの部分の制度改善は必要だと思います。これは国会の論議に委ねたいと思いますが、ぜひ農林水産業も救えるような形にしていただきたいと思います。
 それから、警察本部長、持続化給付金ではいろいろな事件が起きました。ぜひ、そういうことのないように、適正に頑張っていただきたいと思います。
 さて、適正生産量というのはあるわけですけれども、これは、最終的な作況指数を100として計算していて、少なくとも国全体では4万ヘクタールの減産が必要とされています。県としても、今年度に続く大幅な転換が迫られるわけですが、どの程度の減産、転換となるのか、見通しをお示しください。また、転換が必要となった場合、どの作物を中心に進める考えかもお示しください。
〇農林水産部長(佐藤隆浩君) 米の減産、転換についてでありますけれども、新型コロナウイルス感染症の影響等により、全国的に米の需給が緩和する中、先月、国は、主食用米等の生産量や需要量の見通しを踏まえ、令和4年産の主食用米等の適正生産量を675万トンとし、令和3年産に比べ21万トン、約3%の削減としたところであります。
 この削減量は、本年産、令和3年産の36万トン、約5%よりも少ないことから、令和4年産の本県の作付転換面積は、今年度の実績の2、000ヘクタールを下回ると見込んでおります。
 また、転換作物につきましても、高収益の野菜のほか、国内産の需要が高まっている大豆や子実用トウモロコシ、主食用米と同様の栽培管理が可能で今後も需要が見込まれます飼料用米などが中心と考えておりますが、具体的な対応につきましては、現在、県や関係団体で構成いたします岩手県農業再生協議会におきまして検討しているところでございます。
 県といたしましては、引き続き、需要に応じた米生産とともに、水田を最大限に活用し、生産者の所得が確保されるよう取り組んでまいります。
〇18番(岩渕誠君) 全体的なことを言いますと、国は、米生産の責任からは手を引いたけれども、減反制度の仕組み自体は残っているという形で、非常にいびつな格好になっていると思っています。本来、国がもっと責任を持ってやるべきだと私は思います。
 国の補正予算を見ていますと、米の需給対策では、飼料用米が大きなところを占めています。今、話がありましたけれども、麦、大豆への転換は着実に行われる必要があるのですが、田んぼは田んぼとして使うのが、最も生産費用と栽培技術の面で取り組みやすいので、飼料用米の生産に取り組めるということなのだと思います。
 しかし、課題もあります。当然ながら、飼料用米の増産は、畜産対策と一体のものであるべきであり、飼養頭数の維持あるいは増頭の努力がなければ、今後、農業政策全体が、納税者から強い批判にさらされるのではないかということを私は大変懸念しております。
 そこで伺いますが、飼料用米の県内での作付と最終的な使用状況について、それから、飼養頭数の増加対策について、県の今後の取り組み方針を伺います。
〇農林水産部長(佐藤隆浩君) 飼料用米の作付状況と飼養頭数の増加対策についてでございますが、本年の飼料用米の作付面積は約4、700ヘクタールと、前年に比べ約1、100ヘクタール増となっております。
 収穫されました飼料用米は、全農等を通じて集荷され、飼料メーカーから全国の畜産経営体へ供給されますほか、地元JAを通じまして、希望する畜産経営体へ供給されており、県内では、地元の飼料用米を活用し、肉質等の差別化を図り、豚肉や鶏肉等の高付加価値化を図る経営体、あるいは飼養規模を拡大する経営体もあるところでございます。
 一方、全国の飼料用米の需給動向を見ますと、令和2年度においては、需要量130万トンに対し、供給量は112万トン、約20万トンの不足となっております。
 国内で生産された飼料用米の活用は、飼料自給率の向上にもつながる取り組みであり、県といたしましては、引き続き、飼料用米の作付を推進するとともに、飼料用米の生産者と畜産経営体とのマッチングのほか、飼養規模拡大に向け、国の畜産クラスター事業を活用した畜舎の整備等を支援してまいります。
〇18番(岩渕誠君) よくわかりましたが、岩手県としてやらなければいけないことが一つありますね。ありますね、佐藤農林水産部長。いわて牛のブランド化ということです。これをきちんと進めていかないと裾野が広がっていきません。これは何回も質問しています。前向きな答弁をお願いします。
〇農林水産部長(佐藤隆浩君) いわて牛のブランド化の取り組みということでございます。
 県、農業団体、市町村で構成いたしますいわて牛普及推進協議会では、令和元年5月に策定いたしましたいわて牛生産流通戦略に基づきまして、県産の肉用牛をいわて牛の銘柄に統一して出荷することとし、特に、農協系統以外の組織に対して、協議会への入会を促進いたしまして、いわて牛の集荷対象範囲の拡大を進める取り組みを行っているというところでございます。
 この取り組みによりまして、本年10月21日付で、新たに岩手県家畜商業協同組合といわて北上肉牛出荷組合が、協議会に入会いたしまして、農協系統外から初めていわて牛の出荷が開始されたところでございます。
〇18番(岩渕誠君) その答弁は以前からもお聞きしておりますし、足踏みをした答弁と受けとめざるを得ませんので、2月に予算特別委員会で質問しますから、きっちりと対応を進めていただきたいと思います。
 さて、この大変な米価下落の中、県のフラッグシップ米であります金色の風の動向が聞こえなくなってきております。大変な期待を持って見守っていますけれども、価格面では健闘を見せているという話もお聞きします。今年度はどうだったでしょうか。
 それから、金色の風は、市場投入してから5年たちますが、これは食味を優先した開発によって失ったところも多いということが、品種上の課題となっています。これを敬遠する米農家も少なくありません。
 公益財団法人岩手生物工学研究センターと岩手県農業研究センターを中心に既に品種改良には取り組んでいると伺っていますが、どこまで進んでいるのか、今後の市場投入に向けたスケジュールも含めてお示しいただきたいと思います。
〇農林水産部長(佐藤隆浩君) 金色の風についてでございますが、令和3年産の金色の風のJA等の出荷業者と卸売事業者等との相対基準価格は、新聞報道によりますと、60キログラム当たり1万6、500円、昨年に比べまして1、500円低くなっておりますが、11道県の41銘柄中、第4位、東北地域では、山形県のつや姫に次ぐ価格となっております。
 金色の風は、高い価格での取引が期待される一方、生産者からは、収量が上がりにくい、倒伏しやすいなど、栽培管理が難しいとの声がございます。
 このため県では、金色の風の収量性、倒伏の耐性を高めていくため、通常10年程度を要する品種改良の期間を、公益財団法人岩手生物工学研究センターが開発いたしましたDNAマーカー等を活用することで、3年程度短縮し、早期に成果が得られるよう鋭意取り組んでいるところでございます。
〇18番(岩渕誠君) いずれ課題は倒伏性と収量が1割足りないということです。これは今やっているということですから、これに耐病性もかけて早期の市場投入を期待したいと思います。そうなると、栽培面積もおのずとふえてくると思っています。
 金色の風はわかりました。次は、銀河のしずくについて伺います。これは市場評価が非常に高くて、あきたこまちにかわって作付面積もかなりふやしています。この作付を希望する米農家が県南地域でも多いのですが、気象条件の変化によって適地適作の変化もあり、今後、銀河のしずくの作付については拡大すべきところだと思っていますけれども、今後、どう進めるのかお答えください。
〇農林水産部長(佐藤隆浩君) 銀河のしずくは、実需者、消費者からの評価も高く、中食等の需要も拡大してきておりまして、生産者からも、作付を希望する声を多数いただいております。
 銀河のしずく等の栽培適地は、田植えから収穫までの生育に必要な気温や高温障害リスクを勘案して設定しております。
 本年は、気象庁が発表しております平均気温などの平年値が10年に1度更新される年に当たり、更新された気温の平均値を用いまして県産米の栽培適地を見直しました結果、銀河のしずくの栽培適地の地区数でございますが、これまでの約1、600地区から約1、900地区と1.2倍に拡大したところでございます。
 本年3月に策定いたしましたいわてのお米ブランド化生産・販売戦略におきましては、あきたこまち等から銀河のしずくへの転換を促進するとしております。需要動向や栽培適地の状況を踏まえまして、銀河のしずくが、ひとめぼれに次ぐ面積となるよう作付拡大を進めてまいります。
〇18番(岩渕誠君) 岩手県の場合は、お米の生産県のライバルと比較して、生産している品種が非常にバラエティーに富んでいる。フラッグシップである金色の風から、中食、外食向けのところまで非常に商品ラインナップが強いというのが、私は一つの売りだと思っています。そういった中で、銀河のしずくはどちらにも使えるお米ということで非常に期待しておりますので、ぜひお願いしたいと思います。
 農業政策の最後に、私は、セーフティネットのあり方について伺いたいと思います。
 ことしは、冬場の雪害に始まり、春の凍霜害、そして秋には米価の下落と、気象現象や社会環境によって農業生産現場が苦しんだ年でした。最終的に雪害等が約49億円、霜やひょうの被害が約16億円と伺っていますけれども、果樹農家などへの影響はどこまで及んだのでしょうか。農業被害に対する対策の成果と今後の政策について、県の考えをお示しください。
 また、ここに来て燃料高騰が起きています。これは水産現場、園芸生産にも少なからず影響をもたらすものと思います。燃料高騰による影響をどう試算しているのか、あわせて伺います。
〇農林水産部長(佐藤隆浩君) 大雪被害につきましては、農業用パイプハウスなど約49億円の被害が発生し、県では、国の補助事業や県単独事業によりまして施設の再建等を支援しており、11月末現在で約7割が完成し、生産者には順次補助金が交付されているところでございます。
 また、霜やひょうによる被害につきましては、リンゴなど約16億円の被害が発生し、県では、緊急病害虫防除等に必要な資材購入費を支援しており、現在、事業実施主体への補助金交付手続を進めているところでございます。
 リンゴの販売状況を見ますと、県内の生産量の約3割を集荷する全国農業協同組合連合会岩手県本部によれば、10月末時点の販売単価は前年を上回る一方で、出荷量は前年を下回っており、販売額は前年に比べ約90%となっております。
 今後の対策でございますが、降雪期を迎え、生産者に対し、パイプハウスの補強などの雪害防止対策を周知しておりますほか、被害の発生に備え、収入保険や農業共済などのセーフティネットへの加入促進をしてまいります。
 また、燃油高騰による影響でございますけれども、本年10月の東北地方におけるA重油の価格は1リットル当たり93.4円と、昨年同期と比べまして約4割上昇しております。特に、漁船漁業者や塩蔵ワカメの加工にボイラーを使用する養殖業者、野菜、花卉の生産に暖房を使用する生産者などの経営に大きな影響が生じていると認識しております。
 影響額でございますが、水産業では、漁業種類や漁船の規模等によりまして、また、施設園芸では、生産する作物や施設規模等によりまして経営体ごとの燃油の使用量が大きく異なり、燃油使用量を把握することが難しい状況になっておりますので、試算は困難ということでございます。
〇18番(岩渕誠君) いずれにせよ、雪害、それから霜、ひょうについては、早期の支払いをぜひお願いしたいと思います。
 それから、燃料高騰は、これから本格的になってどれぐらいになってくるかということですけれども、やはり今、生産現場は非常に弱いですから、これを価格に転嫁できない状況の中で非常に厳しい環境が予想されますので、先手先手で対策を打っていただきたいと思います。
 人口減少対策から考えても、やはり地方の第1次産業を活性化させて、成長産業化していくことは極めて重要だと思っています。ただし、政府は輸出対策とかデジタル田園都市構想だ、スマート農業だと言っても、セーフティネットが機能していないと誰も安心して取り組めないわけであります。ましてや、第1次産業はあらゆる気象現象とつき合って成り立っております。
 国は、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金で収入保険への加入に対し、国庫補助に上乗せした保険料等の補助を可能としていて、今年度は、これまでに8都県、198市町村、合わせて206自治体がこの上乗せ補助の実施または実施を決定していると伺っております。
 私は、セーフティネットという答弁が先ほど出ましたから、県としても補助に取り組むべきだと思うのですが、認識をお示しください。
〇農林水産部長(佐藤隆浩君) 収入保険の加入に係る保険料等の補助でございますけれども、6月定例会等での議論を踏まえて、既に補助を実施している他県を参考に、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の活用を前提に検討したところでございますが、農業共済等の加入者に対する支援は実施しておらず、他の制度加入者との公平性が保てないこと、同交付金を財源とした単年度限りの措置では、次年度以降の確実な継続加入が見込めないことなどの理由から、収入保険加入者への支援は難しいと判断したものであります。
 県では、6月補正予算で措置した収入保険加入促進支援事業によりまして、広く農業者へ制度の周知を図っているといころでございます。引き続き、市町村、農業協同組合、岩手県農業共済組合等と連携いたしまして、収入保険の一層の加入促進に取り組んでまいります。
 なお、全国知事会では、国に対し、保険料等に対する国の負担割合の引き上げを検討するよう要望しており、県としても、引き続き、農業者の視点に立った収入保険制度の見直しを求めてまいります。
〇18番(岩渕誠君) 収入保険は、そもそも所得保障制度等の代替といいますか見合いの中で出てきているものであります。今の農業共済は品種が限られますが、収入保険は農家にとっては品種を問わない、それから収量的なところではなくて全体の価格となりますから、非常に重要だというのは御理解いただいていると思いますけれども、県としてはそのような判断をされたということですが、極めて残念でございます。ただ、これは、引き続きまた質問しますから、ぜひ検討をさらに進めていただきたいと思います。
 農業の部分についてはこれで終わりたいと思います。
 次に、国際リニアコライダーについて伺います。
 ILCをめぐっては、ILC国際推進チームが準備研究所の提案書をことしの6月に公表し、文部科学省のILCに関する有識者会議も再開され、前進と受けとめられる動きも出ています。
 県内でも、ILC建設をにらんだ加速器関連産業への技術開発や具体的な取引機会の拡大も見え始めております。私も9月まで総務委員会におりまして、各地を視察してきましたが、県内企業の技術力は非常に目をみはるものがありまして、この分野での地元の準備は着々と進んでいるという印象を持っています。
 また、有識者会議の中でも、岩手大学、県工業技術センター、いわて産業振興センターが、技術レベルから見た貢献可能性のある研究機関として具体名を出されています。
 そこでお伺いしますけれども、現在の県内企業の加速器関連産業への参入状況と今後の見通し、課題について、県の見解をお示しください。
〇ILC推進局長(高橋勝重君) 平成27年度に県が立ち上げたいわて加速器関連産業研究会を軸とした取り組みにより、企業や大学、試験研究機関等による技術開発が着実に進み、建設中の次世代放射光施設を初めとする国内施設の電磁石や冷却配管などの製造に、金属加工や鋳造などの技術を生かした県内企業の参入が進んでおります。
 また、本年9月には、いわて産業振興センターが初めてKEK―高エネルギー加速器研究機構からの受注に成功し、県内企業が設計、加工を担うILCの陽電子源装置に関する共同開発も始まっております。
 国内では、今後、加速器研究施設の増強計画が続く見込みであり、また、ILC国際推進チームが提案した準備研究所は、各国の研究機関が分担して量産のための設計や加工、実証に取り組むもので、議員からお示しいただきました県内の大学、試験研究機関等と共同して、県内企業が国際的な技術開発に参画する道筋も見えてきております。
 このような好機を生かし、研究者と企業との共同研究等をより広げていくためには、企業における技術力の向上や人材の育成、積極的な参入意欲が必要であり、さらには、地場に通じた産業支援機関が技術や人材を発掘、これを結び、研究機関とつなげる取り組みが本県では重要かつ効果的と考えております。
 県としては、引き続き、いわて産業振興センターに配置した専門知識を有するコーディネーターによるマッチング活動を初め、研究会を通じた技術指導や普及啓発などに積極的に取り組んでまいります。
〇18番(岩渕誠君) さて、現在、研究者の間で注目されているのが、アメリカの動向であります。素粒子物理学の分野で、研究プログラムの決定に非常に大きな影響を与えていると言われるのがスノーマスプロセスと言われるものだそうです。このスノーマスプロセスの結果を踏まえて、今度はP5―ピーファイブというものが出てきて、これは政府の諮問機関のようですけれども、予算をある程度持った格好で、どれからやろうかという優先順位を議論して答申するということで、このスノーマスプロセスとP5―ピーファイブは、非常に重要なプロセスだと言われています。
 来年7月にこのスノーマスプロセスの報告書が作成されると聞いています。ILCをサポートするというのが前回の評価でした。これがどうなるのかが一つの国際協力の目安になると思いますけれども、これについて県はどのような関心を持っているでしょうか。
 また、今週月曜日には4回目のILCに関する有識者会議が開かれて、各国との意見交換の中身についても報告があったようです。県では、これをどう把握し、分析しているのか、あわせてお尋ねします。
〇ILC推進局長(高橋勝重君) 米国では、現在、アメリカを中心とした世界の研究者が参加し、素粒子物理の将来研究計画に関する学会活動、スノーマスが進められております。また、その結論を受けて、政府が諮問委員会、通称P5―ピーファイブを開催し、研究計画の優先順位が議論されます。
 まずは、このスノーマスの議論の段階でILC計画が継続して優先されることが重要であると考えておりまして、研究者と連携し、海外に向けた建設候補地に関する情報発信等に取り組みながら、来年7月の取りまとめに向けて動向を注視してまいります。
 また、欧米4カ国との意見交換について、文部科学省からの報告では、米国は、日本の誘致表明を前提に支持する一方、欧州は、現状として、自国の研究計画や財政事情にも言及しつつ、日本の意思の明示のない現段階では、慎重な姿勢であることがうかがわれます。
 今後も、適切な時期に意見交換を行うことが重要と確認されておりまして、県としては、文部科学省、KEK―高エネルギー加速器研究機構等から直接、情報収集を進めながら、状況の把握に努めてまいりたいと考えております。
〇18番(岩渕誠君) ILCについての最後に、今後の進め方についての見通しと課題を取り上げてまいります。
 現在、我が国においてILC建設の是非をめぐる議論は、文部科学省が所管して進めています。これは、あくまでILCが学術プロジェクトだという位置づけであります。
 しかし、岩手県におけるILCの位置づけは多岐にわたっており、復興プロジェクトの性格のほか、未来型の産業振興を支える基礎研究との一面も強く持ち合わせています。
 私は、ILCは世界と未来に貢献するもので、学術プロジェクトであることは間違いないものの、それをはるかに超えるスケールでの議論があって当然だと考えています。これまで述べてきた多岐にわたるプロジェクトの性格に加えて、経済安全保障上も、我が国と価値観を共有する民主国家にとって極めて重要であります。アメリカではILCの窓口を、エネルギー省もやっていますけれども、実はアメリカ合衆国国務省も交渉窓口にしているというのは、全くその証左だと私は思います。
 学術プロジェクトを超えた議論は、やはり政治の見識を持って行うべきです。超党派でつくる国会議員の推進議員連盟も執行部体制の見直しが迫られる状況であることもあわせて、積極的に多角的な議論をハイレベルで行う重要な時期が来たと感じますが、県の考えをお示しください。
〇知事(達増拓也君) ILCは、世界の学術フロンティアを先導する大型プロジェクトであり、ILCの日本での実現は、国内での魅力ある研究拠点の形成と国際頭脳循環を進め、イノベーションの源泉である基礎研究力の強化に大きく貢献するものであります。
 また、気候変動や新型コロナウイルス感染症など、地球規模の課題解決に向けて、国際社会の協調、連帯がますます重要となる中、世界中の研究者や技術者が集まるILCの実現は、国際社会における日本のプレゼンスを高め、議員御指摘のように、総合的な安全保障の観点も考慮した新たな科学技術外交の展開にもつなげるよう、日本政府が、機を逃さず積極的に取り組むことが重要であります。
 現在、文部科学省が進めている米欧4カ国との意見交換においては、参加国からは、ILCに関する日本の意思の明示と国際的な議論が求められており、県としては、ILC準備研究所活動が開始され、日本が主導した国際協力の具体的な政府間協議に移行することを期待しています。
 県では、ILCの意義と多様な効果に鑑み、省庁横断の連携体制を強化し議論を加速するよう関係省庁等に働きかけており、今週月曜日には、文部科学省を初め、内閣府や復興庁、財務省等に出向き、私が直接、省庁を超えた積極的な対応を要望したところであります。
 県としては、引き続き、研究者の活動を支援するとともに、超党派国会議員連盟等の動きに連動し、国の政策全体の動向も踏まえて、関係省庁に臨機に働きかけるなど、ILC実現に向けて全力で取り組んでまいります。
〇18番(岩渕誠君) やはりこれは日本政府が表明するかどうかにかかっているわけでありますから、各国の協力体制も、これはもう政治の責任の部類に入ってきたと思いますので、ぜひ活動を活発化させていただきたいと思います。
 また、あわせて、ILCを念頭にした動きとすれば、県南地域の工業高校の統合新設もあるわけであります。学科の編成、立地についても、ILCはもう来るのだということで検討を早急に進めていただければと思います。これは要望しておきます。
 最後に、生殖補助医療、一般的には不妊治療のうち高度医療に当たる部分ですが、これについて伺います。
 生殖補助医療は、来年4月から保険適用となるべく、政府において具体的な検討が進められているのは御承知のとおりです。経済的負担から子供を諦めざるを得なかった人にとっては、一つの前進と言える部分もあると思います。
 私も、基本的に保険適用を進めるべきだと思いますが、課題も多いと思います。とりわけ保険適用ということで言えば、費用負担は本当に下がるのか、子供を望む人にとって成果の上がるものなのか、そして、かかりたいときにかかれる医療機関が身近にあるのかというのが課題だと思っています。
 県としては、生殖補助医療の保険適用についてどのような課題認識を持っているのか、まずお示しください。
〇保健福祉部長(野原勝君) 不妊治療のうち特定不妊治療に係る保険適用については、現在、厚生労働省の諮問機関であります中央社会保険医療協議会におきまして審議が始まったところでありますが、現時点では具体的な内容が明らかになっていないところであります。
 県としては、この保険適用に当たりましては、有効性、安全性が確認されている治療について幅広く適用されること、また、現行の助成制度と同等以上に保険診療が適用され、治療費負担の軽減につながることが必要であると認識しており、引き続き、国の議論を注視してまいります。
〇18番(岩渕誠君) 今お話があったとおり、標準的な医療、保険適用の範囲をどうするかは、依然議論が続いていますけれども、特定不妊治療の助成対象になっている医療行為については、保険適用に置きかわると見るのが常識的だと思います。その場合、幅広く医療を受けられる可能性が広がる一方で、現在治療している患者にとっては、保険適用の4月に助成金が打ち切られるとなると、かえって負担が増加するということが言われています。
 現状で自由診療となっているどの部分を標準治療の範囲とするかによっては、保険適用の自己負担部分に加えて自由診療分を支払うことになりかねませんから、現在、国が認めていない混合診療を生殖補助医療に適用して、負担軽減に努めるべきとの議論も活発になっています。
 また、何よりこうした医療を受けられる医療機関が不足しているのが現状です。岩手県内では、生殖補助医療の治療は、盛岡市内の二つの機関でしか受けられません。東北各県と比べても全く足りません。
 特定不妊治療助成事業の実績を見ると、新型コロナウイルス感染症の影響や盛岡市内に新たに医療機関ができたこともあって、昨年度こそ県外での受診率は2割を割り込みましたけれども、今年度は全体の4分の1が県外の医療機関で治療を受けています。
 経験者や医療関係者の話をお伺いすれば、一口に生殖補助医療といっても、患者一人一人、本当にこれはオーダーメードの治療でありますし、かつ、エビデンスに基づく生殖医療の範囲は非常に限られていますから、実際に対応できるかどうか、これは医療機関の治療法の違いにつながっていまして、これをもとに、本当に私の希望がかなえられるかどうかということで患者はそこを選びますから、これは、県内にどんなにあっても、県外に行ってしまうケースは多いのです。
 こうした現状を見ますと、やはり通院負担が大きくなることから、単に保険適用を喜べる環境にはまだなくて、人口減少対策として見た場合には、地域の医療状況に応じた支援の継続や時限的な助成事業と保険適用の選択可能性も議論されてしかるべきだと思っています。要は、自分の負担がどこまであるのかということをもう少し議論すべきだと思っているのですが、県の認識を伺います。
〇保健福祉部長(野原勝君) 保険適用と助成事業等との選択可能性についてでありますが、現在、国の中央社会保険医療協議会におきましては、保険適用の運用に係る課題として、患者の定義、年齢や治療回数に係る要件、不妊治療を実施する医療機関の設置基準のあり方などについて、これまでの国の特定不妊治療支援事業における取り扱いなどを踏まえて議論がされております。
 現時点では、保険適用範囲などの詳細が明らかとなっていないことや保険適用前後の移行期については助成制度を継続する方針は示されているものの、その後の助成制度の取り扱いが未定となっていることなどから、子供を望む方一人一人の支援につながる制度となるよう、国においてしっかり検討していただきたいと考えております。
〇18番(岩渕誠君) この問題は非常にデリケートでありまして、お金の部分もどうなるか非常に注目しているわけであります。特に、新型コロナウイルス感染症で通院したくてもできなかった人たちが、ここに来て県外にどんどん行っている状況ですから、余計に負担感が出ているわけです。これが、保険適用によって本当に軽減されるのだろうかというのは、早く方針を示して、それにあわせた対策をぜひ打っていただきたいと思います。
 これは、負担の問題のほかにも、岩手県の場合は、何といっても医療偏在が大きな課題だと思います。本来は保険適用とあわせて、国はナショナルミニマムとして生殖補助医療の地域的均てん化を図ることは、非常に重要な責務だと思うのです。ところが、それは全く聞こえてきません。とりあえず保険適用しようという話だけです。
 生殖補助医療はほぼ民間が担っている状況で、現状では、全く公的なものとしての位置づけにはなっていません。しかし、誕生する子供の16人に1人が、何らかの治療を受けて誕生しているという報告もありますし、少子化そのものが大きな課題になっていることを考えれば、環境は大きく変化しており、民間に任せておけばいいというような状況ではないと思います。
 通常医療でも均てん化が進まない中で、先端医療までは非常に難しいというのも現実だと思いますが、まさに足らざるを憂えるのではなくて、等しからざるを憂うという観点からの政策展開に私はぜひ期待したいと思うのですが、生殖補助医療の地域的均てん化について県の考えをお示しいただきたいと思います。
〇保健福祉部長(野原勝君) 不妊治療のうち、特定不妊治療を行う医療機関として県内で指定されている医療機関は、議員からも御指摘いただいたとおり、現在2カ所となっております。特定不妊治療は極めて高度な先進医療であり、各地域に指定医療機関を拡充していくためには、施設、設備の整備や従事する医師、胚培養士等の専門人材の養成が課題と考えております。
 こうした課題に対応するためには、やはり国レベルでの対応が必要であると考えており、政府予算提言・要望におきまして、施設、設備の整備や専門人材の養成など、治療提供体制の充実を図るための支援を要望してきたところであり、県内で希望する治療が受けられるよう、引き続き国に働きかけてまいります。
〇18番(岩渕誠君) これは、通常医療の均てん化もそうですけれども、国は、職業選択の自由あるいは憲法上の話を持ち出してなかなか進まないのが現実なのですが、やはり地域医療基本法の制定も提言していますし、その延長線でぜひ強く言っていただきたい。
 特に、子供が欲しいという方にとってみれば、今、公的部門がこれを担っていないので、余計にこれを何とかしてくれという話が多いので、きちんと公的セクターが責任を持って均てん化を行っていただくように要望をして、終わります。(拍手)
〇副議長(小野共君) 以上をもって岩渕誠君の一般質問を終わります。
   
〇副議長(小野共君) この際、暫時休憩いたします。
   午後4時14分 休 憩
   
出席議員(44名)
1  番 千 田 美津子 君
3  番 小 林 正 信 君
4  番 千 葉   盛 君
5  番 千 葉 秀 幸 君
6  番 岩 城   元 君
7  番 高橋 こうすけ 君
8  番 米 内 紘 正 君
9  番 武 田   哲 君
10  番 高 橋 穏 至 君
11  番 山 下 正 勝 君
13  番 高 田 一 郎 君
14  番 佐々木 朋 和 君
15  番 菅野 ひろのり 君
16  番 柳 村   一 君
17  番 佐 藤 ケイ子 君
18  番 岩 渕   誠 君
19  番 名須川   晋 君
20  番 佐々木 宣 和 君
21  番 臼 澤   勉 君
22  番 川 村 伸 浩 君
23  番 千 葉 絢 子 君
24  番 ハクセル美穂子 君
25  番 木 村 幸 弘 君
26  番 吉 田 敬 子 君
27  番 高 橋 但 馬 君
28  番 小 野   共 君
29  番 軽 石 義 則 君
30  番 郷右近   浩 君
31  番 小 西 和 子 君
32  番 高 橋 はじめ 君
33  番 神 崎 浩 之 君
34  番 城内 よしひこ 君
35  番 佐々木 茂 光 君
36  番 佐々木   努 君
37  番 斉 藤   信 君
38  番 中 平   均 君
39  番 工 藤 大 輔 君
40  番 五日市   王 君
41  番 関 根 敏 伸 君
42  番 佐々木 順 一 君
44  番 岩 崎 友 一 君
45  番 工 藤 勝 子 君
46  番 千 葉   伝 君
48  番 飯 澤   匡 君
欠席議員(3名)
2  番 上 原 康 樹 君
43  番 伊 藤 勢 至 君
47  番 工 藤 勝 博 君
   
説明のため出席した者
休憩前に同じ
   
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
   
午後4時38分再開
〇副議長(小野共君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
   
〇副議長(小野共君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
   
〇副議長(小野共君) 日程第2、一般質問を継続いたします。川村伸浩君。
   〔22番川村伸浩君登壇〕(拍手)

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