令和3年9月臨時会 第16回岩手県議会臨時会会議録

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〇36番(佐々木努君) いわて県民クラブの佐々木努です。
 議案第1号令和3年度岩手県一般会計補正予算(第5号)の専決処分に対し、委員長報告に反対の立場から討論を行います。
 議案第1号は、新型コロナウイルス感染症の拡大により、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく営業時間短縮要請に応じた盛岡市の飲食店に対する協力金の支給に必要となる予算を計上したものであります。自治体の時短要請に応じた飲食店への協力金の支給は、国の緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の適用となった都道府県で一般的に行われているものであり、今回の時短要請によって影響を受ける飲食店に対し協力金を支給することは、当然であり、理解できるものであります。
 しかしながら、今回の時短要請は妥当なものだったのか、時短要請以外に感染拡大防止対策はなかったのか、時短要請を行うに至った経緯に透明性はあったのか、そして、議会での審議も経ずに専決処分を行ったことが適正であったのかについて、我が会派は大きな疑問を感じています。
 まず、今回の措置は、県が国にまん延防止等重点措置を要請したものの、適用除外になったために、県が単独で行うことにしたものです。国の措置の対象外の都道府県が対象になった都道府県と同様の取り組みをするには、県民が納得できる根拠が必要であるはずです。しかし、県が8月12日に独自の緊急事態宣言を出すに当たり、時短要請は効果が薄いとして行わないこととしたにもかかわらず、一転して効果が薄い対策にかじを切った根拠は、果たして何でしょうか。先ほどの飯澤匡議員の質疑の中から、明確で納得のいく回答を得ることはできませんでした。
 確かに、これまで県内において飲食店のクラスターは発生しており、飲食店由来の感染も数多く確認されています。しかし、県のいわて飲食店安心認証制度が始まって以来、飲食店におけるクラスターの発生が大幅に減少するなど、飲食店の努力はもちろん、利用する側の感染対策によって県内の感染拡大は最小限に抑えられてきました。
 そのようなときに突如として行われた飲食店への時短要請は、これまでの飲食店の懸命な努力に水を差すものであり、飲食店や関係業者の方々に与える影響は甚大なものと考えます。そうでなくても、県独自の緊急事態宣言発出後、いわての食応援プロジェクトは停止となり、飲食店の利用客は一気に減少しました。この措置で、さらに客足は遠のき、飲食店が一層苦しい状況に追い込まれることは間違いありません。
 飲食店の感染防止策は時短要請しかなかったのか、それが最善の策であったのか、いわて飲食店安心認証制度の評価や個々の飲食店への感染防止の啓発など、先にやるべきことがあったのではないでしょうか。
 盛岡市のみを対象としたことにも疑問を感じます。飲食店は県内どこにでもあり、現に盛岡市以外でもクラスターは発生していることから、一概に人口の多い盛岡市の飲食店だけがリスクが高いとは言えません。今回の措置に盛岡市以外の地域の飲食店からは、盛岡市の時短要請があってから自分のところも客が減った、早目に店を閉めるようにしているが、盛岡市だけ協力金がもらえるのは不公平ではないかなどの声が数多く聞こえてまいります。先も見えず厳しい経営を続けている方々の思いとしては、当然のことです。
 そのような問題が生じることが想定される中で、盛岡市だけにこだわったのはなぜでしょうか。予算の都合だったのではないでしょうか。まん延防止等重点措置に該当しない我が県が、県独自の時短要請を全県に広げることは財政的に不可能です。そうであれば、地域限定の措置には、より慎重になるべきだったのではないでしょうか。
 この措置が、どこでどのように決められたのかも不明瞭です。知事は、8月18日、みずからのツイッターでまん延防止等重点措置の要請を行うことを明言されました。そのような重大な決断と公表が、何の予告も説明もなく個人のSNS上から発信されたことは驚きでした。その発信方法に問題があることは質疑の中で飯澤匡議員が指摘したとおりでありますが、それ以上に問題なのが、誰が、どこで、どのように決めたのか、明確なプロセスが示されないことです。最終的にまん延防止等重点措置の要請が今回の時短要請につながったわけですから、透明性を高めるためにも、この要請決定までのプロセスを示すべきではないでしょうか。県庁内部でみんなで決めましたでは、県民も我々もとても納得できません。
 最後に、時短要請にかかわる予算等を専決処分にしたことについてでありますが、専決処分は、いわば議会の事後承諾であるため、特に緊急性があるものに限られるとされています。先ほどの質疑で県当局は、今回の措置は特に緊急性があったと答えましたが、今回のような飲食店の営業の自由を奪うような重大な事案は、緊急性以上に慎重性が求められるのではないでしょうか。その意味で、重大な政策であるこのような措置が、議会での審議を経ずに専決処分で行われたことに大きな疑問を感じます。そして、何よりこのような重大な施策の決定に議会としてかかわれなかったことが残念であり、県民から負託をいただきこの場にいる者として、県民に対して申しわけなく思っております。
 以上が反対の理由です。最後に、我々の指摘が県における政策決定の透明化につながるとともに、新型コロナウイルス感染症の早期の収束と苦境に立たされる飲食業を初めとした多くの県民の方の力になることを願い、反対討論といたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〇議長(関根敏伸君) 次に、佐々木朋和君。
   〔15番佐々木朋和君登壇〕

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