令和3年9月臨時会 第16回岩手県議会臨時会会議録

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〇22番(臼澤勉君) 議案第1号令和3年度岩手県一般会計補正予算(第5号)の専決処分に関し承認を求めることについての委員長報告に対して、反対の立場から討論いたします。
 我々が反対する最大の理由は、議会の本来的な権限である議決権の中でも最も重要な予算議決事件に対する当該専決処分の正当性の根拠が極めて疑わしいからであります。知事による専決処分の恣意的な運用を認めることは、議会の権限が制約され、二元代表制の趣旨から、議会のチェック機能が適切に果たせなくなります。
 地方自治法第179条では、地方公共団体の長が専決処分できる場合は、次の四つに規定されております。一つ目は、普通地方公共団体の議会が成立しないとき、二つ目は、第113条ただし書きの場合においてなお会議を開くことができないとき、三つ目は、普通地方公共団体の長において議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき、四つ目といたしまして、議会において議決すべき事件を議決しないときの四つに定めております。
 今回の専決処分を判断した理由は、この四つのどれに該当するのでしょうか。当該事件の専決処分をするには、三つ目の、特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認められる必要があります。つまり、当該事件が緊急を要し、議会を招集し、その議決または決定を経て執行していたのでは、その時期を失するような場合であります。したがって、事が急を要し、議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであるというのは、例えば、前日、招集告示を行い、翌日、議会を招集し議決または決定したとしても、なお時期を失するような極めて切迫した事態であると言えます。
 この議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであるか否かの認定は、改めて申すまでもなく、地方公共団体の長である知事が行うことになりますが、その認定には客観性がなければなりません。これを誤った場合には、当該専決処分は違法であります。
 改めて、反対する論点は、緊急を要し、議会を招集する時間的余裕がないと知事が判断した客観性のある根拠についてであります。議会の招集には、具体的にどれくらいの時間的余裕が必要となるのでしょうか。県が独自の緊急事態宣言を発出した8月12日あるいはまん延防止等重点措置の要請の準備に着手した8月19日時点で、なぜ飲食店の時短要請と協力金を検討し議会を招集しなかったのか。招集しないと判断した理由は何でしょうか。
 1週間10万人当たり新規感染者が25人を超えた8月19日時点は、予想よりもさらに速いスピードで感染者がふえているという極めて切迫した事態であり、知事も記者会見でそのような認識を述べられておりました。12日から緊急事態宣言、19日、まん延防止等重点措置要請準備開始、30日から時短要請。これらは、10万人当たり新規感染者数の推移とどのような相関関係になっているのでしょうか。
 26日に、重要なお盆期間で見送った時短要請を盛岡市のみで実施することを突然打ち出されました。戦略性と公平性に欠けていると指摘せざるを得ません。政府や市町村との意思疎通がきちんとできているのか疑念が残ります。
 そもそも7月9日、警戒宣言を発出した際、感染状況を踏まえて飲食店への時短要請、施設への休業要請を判断するとしていたではないでしょうか。議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認定するには、客観性に欠けると言わざるを得ません。
 専決処分の権限は、知事としての地位に固有の権限ではありません。当該事案のような緊急性が疑われるケースは、議会軽視につながりかねません。また、我々議会みずからが、議会の存在理由を否定することにつながりかねない極めて重要なことであります。行政実例によれば、専決処分の認定は、知事の自由裁量ではなく規則裁量に該当するもので、その認定には客観性がなければなりません。
 第2の理由は、政策決定プロセスが不透明であり、市町村や県民への理解と共有が進んでいない点であります。
 さまざまな災害や有事に対応されてきた知事だからこそ、新型コロナウイルス感染症の拡大を抑えるための対策を、県民一丸となって計画的、戦略的に取り組めると私は信じています。対策が後手後手に回らないよう、今からこの先に起こることを予測し、計画的に行動していただきたいと思います。
 知事は、8月12日の記者会見で、他県での営業時短要請の政策効果はなかなかうまくいっていないとの認識を示されておりましたが、今回の県独自の盛岡市全域を対象とした営業時短要請だけで、本県の感染拡大を防止できるとお考えでしょうか。感染拡大防止対策としての協力金を含め、県内の飲食店等の売り上げ減少等の影響をしっかりと把握し、早急に総合的な対策を行うべきではないでしょうか。
 8月12日の岩手緊急事態宣言から本日の県議会臨時会本会議までの政策決定プロセスにおいて、基準が不明確な上、唐突でちぐはぐな印象を受けるのは私だけでしょうか。また、事業者への経済対策においても、これまで市町村と緊密な連携を図りながら取り組んでまいりましたが、それにもかかわらず、今回の盛岡市のみを対象とした対策について、十分な説明や理解、共感が得られていないため、県のこれまでの事業の進め方に対する不信感が聞かれております。これまで経験したことのない危機に直面している状況だからこそ、多様な意見を踏まえ、さまざまな視点から県政に対する意見を聞き、政策の質を高めていくことが求められております。
 我々議会は、県の追認機関ではなく、議会と行政はつかず離れずの関係でなければなりません。今後の感染状況に応じて必要十分な対策を講じていく必要があります。
 以上のとおり、議会の本来的な権限である議決権の中でも最も重要な予算議決事件に対する当該専決処分の正当性の根拠が極めて疑わしいこと、政策決定プロセスが不透明であり、市町村や県民への理解と共有が進んでいないことから、極めて丁寧に、客観性を持った根拠に基づき行われるべきとの判断により反対をいたします。
 議員各位の御賛同を心からお願い申し上げまして反対の討論といたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〇議長(関根敏伸君) 次に、菅野ひろのり君。
   〔16番菅野ひろのり君登壇〕

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