令和3年6月定例会 第15回岩手県議会定例会会議録

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〇12番(千葉絢子君) いわて県民クラブの千葉絢子です。
 このたびは、一般質問の機会をいただきましたこと、先輩、同僚議員に心から感謝を申し上げます。
 初めに、新型コロナウイルス感染症対策を初め、夜間、休日もお骨折りいただいている職員の皆さん、医療関係者の皆さんと、現場に赴く方をお支えしているその御家族、また、日々を懸命に生きている県民の皆様お一人お一人に、改めて心からの愛をお伝えしたいと思います。
 1年前、私はこの場で、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、生活環境ががらりと変わり、仕事や生きがい、あるいは大切な命を失わなければならなかった人やその家族など、県民に今どのような幸福を語り、ともに生きていこうと勇気づけられるだろうかと知事にただしました。その際、知事は、県民をマッチ売りの少女に例え、貧しい人たちこそが本当の幸せの意味を知っている。マッチ売りの少女は最後には死んでしまいますがと答弁されました。私はその答弁を聞き、がっかりしてしまいました。それなのに、この知事の答弁は、なかなか一般の県民には伝わらない仕組みになってしまっていることが心から残念でしたし、希望や幸福を感じるどころか、みずからの精神を病んでしまいかねないほど絶望したものでした。
 あれから1年がたち、少しは改善しているだろうと思われた新型コロナウイルス感染症の影響は、変異株の感染拡大による第4波の影響で、1年前よりもさらに悪化しています。
 こうした中でもいいニュースと言えば、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金によって県の財政も若干持ち直したほか、4月の企業倒産はゼロ、そして、5月も新型コロナウイルス感染症関連の企業倒産はなかったということです。しかし、この状況は極めて限定的であり、東京商工リサーチの倒産情報では、今後の見通しとして、中小企業は疲弊感を強めていて、継続の意思はあるものの、資金や人手不足で倒産せざるを得ない息切れ倒産が現実味を帯びてきていると指摘しています。
 緊急事態宣言が発出されている地域以外であっても、不要不急の外出、特に、旅行や飲食店の利用に対し自粛を求めるムードが全国的に高まっている中、岩手県は、必要以上の自粛を求め、知事による明確な指針やメッセージもないまま、県内の飲食店はもとより、観光、宿泊業、また、地域の個人経営のサービス業など、幅広い分野で県民の経済生活が脅かされている状況は、真綿で首を絞めるように、じわじわと県民経済をむしばみ、経営者の高齢化が著しい本県では、倒産や廃業など力尽きてしまう寸前の事業所が日々募り続け、今にも防潮堤を乗り越えそうなほどに、じわりじわりとそのかさが増してきているように感じています。
 この新型コロナウイルス感染症は、少子化の流れに一層さお差す事態となっています。県内企業は人件費を抑えるのに頭を抱える、その一方で、新卒を初めとした求人も思うようにならず、会社の存続さえ脅かし始めています。経営者にありがちな、少子化は女が子供を産まなくなったから、個人の勝手な所業のせいだろうという意識から転換せねばならず、社会インフラの維持や、そもそも地域の存続の根底さえも揺るがしかねない大きな、そしてかなり身に迫っている危機であり、喫緊の課題であると、全ての年代においてこの問題の大きさを改めて認識すべきであります。
 昨年の合計特殊出生率は1.34、出生数は統計史上最少となりました。ことしの妊娠届も振るわないのは岩手県も同様であると想像でき、このままでは年間一人も子供の生まれない自治体が出てくる、あるいは既に出てきているのではないかと心から危惧し、基礎自治体の維持、存続が今後さらに厳しい状況になっていくのではないかと、子供たちが生きる将来の岩手県の姿におそれを抱いています。
 私が望んでいるのは、1年前の一般質問の詭弁の再現ではありません。最上のものは過去ではなく未来にこそあるという考えで私はこの場におりますので、県当局のいつもどおりの現在の施策ありきでの御答弁ではなく、未来志向のやりとりになることを心から御期待申し上げるものであります。
 それでは、以下、通告に従って質問いたします。
 先日、知事は、母校の盛岡第一高校の新1年生を対象に、お互いに幸せを守り育てる希望郷いわてと題して、毎年恒例の特別講演をなさったと伺いました。その際、知事は、メーテルリンクの青い鳥の話をされたのです。講演を聞いた高校生に話を聞いたところ、知事は、ふだんは生活の中にある当たり前の幸せに気づかないが、新しいいわて県民計画(2019〜2028)においては、その幸せに気づけるようにしていきたいこと、ほかには、県民計画に出てくる用語の説明をしたかったようだったが、全体として知事の話はわかりにくかったと感想を述べていました。知事の話を理解できなかったのは、高校生の理解力に問題があるからだと知事は思われますか。同じ話を県民が聞いたとして、県民計画や知事の話を同じように理解できない状況であったとしたら、果たして知事は、県民の理解力に問題があると思われるのでしょうか。
 知事がこの講演で子供たちに伝えたかったのは、どんなメッセージなのでしょうか。もはやマッチ売りの少女や青い鳥の話に見られるような観念で幸福を語ることしかできないのが、知事にとっての今の岩手県なのではないでしょうか。もしそうだとしたら、県民にとっては、幸福とはもともとそこにあるものだが、マッチ売りの少女のように手に入らない、あるいは青い鳥のようにそこにあるのに気づかないなど、その人のありようによって実感できるか否かの違いで、新たに努力してつくり上げるものなどではなく、現状に満足すること、すなわち分をわきまえて暮らすということが、幸福を守り育てるという意味なのでしょうか。
 知事が指揮をとられる県政全般、さまざまな政策の根幹をなすとても大事な前提条件ですので、改めて、県民に伝えたい幸福とは何なのか、この点について伺うことから始めたいと思います。
 以下の質問は質問席より行います。
   〔12番千葉絢子君質問席に移動〕
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 千葉絢子議員の質問にお答え申し上げます。
 いわて県民計画(2019〜2028)では、東日本大震災津波の経験に基づき、引き続き復興に取り組みながら、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわてを基本目標に掲げ、岩手の幸福指標研究会から示された幸福の実感に関連する領域をもとに、10の政策分野に整理して、それぞれに目指す姿を示した上で具体的な政策を列挙するとともに、幸福関連指標や具体的推進方策指標を設定し、これらの指標の向上を通じて、県民や岩手県にかかわる人々が、互いに幸福を守り育てるようにするものであります。
〇12番(千葉絢子君) どんなによくできた文章でも、観念的な言葉を繰り返すだけでは、どんどん耳からこぼれ落ちて印象にも記憶にも残りません。私にとって今の御答弁は、知事のおっしゃる県民の幸福が、よりよいものを探求するものではなく、今あるものを守り、つないでいく、現状維持をベースにしているのかと、よりよい未来を目指そうという希望がそがれてしまうような答弁でございました。
 知事の言葉がこれからの岩手県を担う高校生の心を捉えるものではなかったということは、知事の落ち度ではなく、単に高校生の聞く力がなかったのかもしれません。でも、もしかしたら違うかもしれません。
 盛岡第一高校では、探究の活動を通して、研究課題を自分で探し、秋ごろまでにまとめる自主的な学習に取り組んでいます。これはSGHのころから行われていることですが。この学校に子供を通わせる親の一人としては、岩手県の現状に満足することなく、探究活動を通して世の中を変えていく力になることを心から望んでいるものでありまして、そうした子供たちにとって、入学間もないころに初めて触れる知事というとうとい立場の方からのこの青い鳥の話、到底満足できるものではなかったという感想を持ったことを私は知事にお伝えしたいと思っております。
 社会的な立場が上に上がれば上がるほど、また、年をとっていけばいくほど、苦言を呈してくれる人は周りにいなくなってきます。組織のトップと言われる人が孤独だと言われるゆえんが、ここであろうと思います。組織のトップに対する陰口は、本人には伝わらず、水面下でその交代劇が用意されるからです。
 知事のお立場は十分にお察しいたします。そして、私は、本日のように時折知事にこうやって苦言を呈することがありますけれども、それは、現状維持の幸せではなく、もっとよい世の中を子供たちに手渡していかなければいけないと、親としてその責任を使命として感じているからです。
 どうか知事には、今の世の中、そして子供たちが置かれている将来の状況をもっと主観的に捉えていただきまして、一人一人の苦しみに寄り添った、血の通った為政者であっていただきたいと心から願っています。
 次に、東日本大震災津波の発生からこの3月で丸10年が過ぎました。改めて、犠牲となられた方々の御冥福と行方不明となっている方の、せめて魂だけでも一日も早く御家族のもとへ帰られるよう願うばかりです。
 当時アイーナの8階で高校生対象の医学部進学セミナーの取材中だった私は、窓ガラスさえ湾曲するような横揺れの中、この建物と私は心中してしまうのではないかと、初めて自分が死の恐怖にとらわれるような中でこの震災を経験いたしました。また、報道機関のアナウンサーという当時の仕事上、揺れの長さを計測しながら、これは大変なことが起きた、早く帰社して災害報道に移らなければという思いに駆られ、揺れを感じてから20分後には、スタジオで終わりの見えない災害報道に取りかかっておりました。
 福島県の沿岸部からのヘリコプターによる中継で、押し寄せる津波にのみ込まれていく田畑や車、そして仙台空港の映像を信じられない思いで見ながら、ひたすら伝え続けました。誰がこの放送を見てくれているのだろう、そういう自問自答をしながらです。
 あのとき、私は生後8カ月の次女を抱え、育児休暇から復帰して11日目でした。報道の現場にいるということは、家族を放って仕事に当たらなければならない過酷な使命を負います。あの日、私は保育園に通い始めたばかりの次女を迎えに行くこともできませんでした。信号機がストップした国道を2時間かけて、主人の父が内丸から保育園に次女を迎えに行ってくれましたが、そのとき次女は、なれない保育園で、保育士に抱かれ、薄暗い中を一人残って迎えを待っていました。それから1週間、私は24時間体制で報道に当たり帰宅できない日々が続きましたが、次女は、私の顔を見るまで1週間、笑顔を見せなかったと義理の母から聞きました。私は、親として失格なのかもしれません。
 また、私の実母は、4月7日の余震の際、脳腫瘍の治療のため岩手医科大学附属病院に入院していましたが、揺れに驚いた拍子に腫瘍が破裂し、脳内で広がった出血が運動神経を損傷したために半身不随になってしまいました。余震の直後に主治医があわてて私の職場に呼び出しの電話をかけてきましたが、私は、報道で現場を離れることができず、また、会社の災害有線電話を使って父に連絡することもはばかられ、電話口で取り乱す母を翌朝まで放っておかざるを得なかったことは、それから亡くなるまで7年の間、闘病しながらずっと毎日、死にたいと言わせてしまったこと、娘として失格だった、私の今生で一番の親不孝であったと、今も毎日、自分を責め続けています。
 これまで、県議会という場で震災の悲惨さや悲しみ、また、やり場のない怒りについて語ることができるのは、沿岸の方々だけであろう、私にはその資格がないと思ってきました。けれども、あの震災から10年がたち、私が当時から報道を通して見てきたこと、感じてきたこと、また、1人の岩手県民として経験して考えたことを語り、その教訓とこれからの防災のあり方を次世代につないでいく使命を果たす時期に来たのではないかと考えるようになりました。
 岩手県の防災におけるスピリット、信念と悔悟について伺っていきます。
 県では、今年度から復興防災部を設置しました。設置の意義と一番の目的は何でしょうか。
〇知事(達増拓也君) 県では、今年度から復興防災部を設置しました。設置の意義と一番の目的は何でしょうかという質問でしたので、そこのところにお答え申し上げますけれども、東日本大震災津波からの復興を引き続き県の最重要課題と位置づけて、復興の着実な推進に取り組むとともに、東日本大震災津波や台風災害からの教訓、知見を危機管理事案の対応に生かし、迅速な復旧、復興につなげていくため、復興防災部を設置したものであります。
 復興防災部においては、復興推進の司令塔としての役割を引き続き担っていくとともに、消防、防災対策の総合調整に加え、災害救助法に基づく避難所の設置や応急仮設住宅の供与に関する業務などを一元的に所管することとし、大規模自然災害の発生時においても、これまで以上に迅速な対応が可能となる体制としたところであります。
 また、自然災害以外の危機管理事案発生時においても、復興防災部の統括のもとで、各部局が専門性を発揮し、迅速かつ的確な施策を展開できる体制としたところであります。
〇12番(千葉絢子君) 復興防災部をつくられたときには、東日本大震災津波への対応として全く間違っていなかったというような前提でつくられたのでしょうか。私は、この10年間の歩みを見てまいりました。ハードの面では、若干のおくれはあるけれども、当初の予定どおり進めていこうと尽力されているのはわかります。ただ、実際にどのような後悔のもとに立って、同じような災害に県民を遭わせない、生命と財産を守るのだというようなスピリットが、この復興防災部の根底にあるかというところが、今の知事の御答弁では全く見えてきませんでした。
 今回の津波被害が初めてではありません。岩手県の沿岸部は、記録が残っているだけでも1000年以上前の貞観地震のときから繰り返し津波に襲われてきました。中でも1896年の明治三陸大津波の際には2万人を超える犠牲者が出ました。また、昭和三陸大津波、チリ地震津波でも大きな被害が出ているにもかかわらず、このたびの東日本大震災による大津波では、現代日本において、また世界の津波被害においても最大の被害が出てしまいました。
 津波の伝承や教訓は今に始まったことではなく、これまでの被害から得てきた教訓があるのに、今回も未曾有の被害になってしまった、その理由をどのようにお考えでしょうか。
〇復興防災部長(戸舘弘幸君) 東日本大震災津波におきまして未曾有の被害となってしまった要因についてでありますけれども、平成24年2月に東日本大震災津波に係る災害対応検証報告書をまとめております。その中で避難行動の原因分析を行っていますけれども、主なものといたしましては、防潮堤、防波堤などへの過信、今回の津波の大きさに対する過小評価、過去の津波警報等発令時のいわゆる空振りによる油断、家族の安否確認のための一時帰宅、こういったことによって、避難をしなかったことや避難した場所が結果的に被災したということが上げられています。
〇12番(千葉絢子君) 防災のために避難訓練とか避難計画とか、そういったものを行政が率先して繰り返し住民に働きかけていくこと、その策定に関してもリーダーシップをとることが望まれているわけですけれども、結局それをしてこなかった。そのために避難しなかった人が出てしまった。また、防潮堤、防波堤の過信につながってしまったというような、これは、県が感じている悔悟の部分であろうと私は拝察するわけですけれども、この部分をどう少なくしていくかというのが、私たちに課せられたこれからの防災対策であると考えております。
 20年以上前に私が大学で受けた社会学のフィールドワークの講義の中で、宮古市の津波の被災地がテーマになっていたことがありました。この社会学の教授は、宮古市内を歩き回って聞き取りや被害のあった場所を実際に調査しながら、過去にどのような津波があって、地域の人たちにはどのような教訓が伝えられてきたか細かにまとめていました。
 その際、私が気になったのが、宮古市の先人たちは、津波からの被害を免れるためには逃げるのが一番だと考えていて、これより下に家を建てるななどの石碑を津波到達ラインに置いて戒めとしていた。けれども、いつしかその言い伝えと戒めは忘れ去られ、開発のためにその石碑がゆえんのない場所に移されたり、1カ所にまとめられたりしていて、もうそれがもともとどこにあったのかわからなくなってしまって、人々は海岸周辺にまでおりてまちを形成してしまっている。こうした地域は、いずれ津波被害が予想されていて、一たび過去の規模での津波が襲ってきたら甚大な被害が起きるだろうと、私は大変に危惧しているという教授の話でした。
 果たして、私が就職してから10年、そのときの危惧がまさに現実のものになろうとは。また、その津波被害を自分が伝える仕事についていようとは、何という因果かと思ったものです。
 そのとき、ある災害対策本部のメンバーは、このような被害は想定外だったと私の後輩記者に話したそうです。我々は、津波の被害の大きさにまず目を疑ったばかりだったのに、今度は耳を疑いました。想定外、そのようなことがあっていいのかと。
 私たちも、当時は手探りで報道に明け暮れました。避難している人の名前と住まい、遺体安置所の場所を信じられない思いで伝え続けたこと。そして、避難所の取材では、家族全員が津波で亡くなってしまって、自分一人だけが残ってしまった、これからどうやって生きていったらいいのだと、涙ながらに袖をつかまれて絶望を訴えられたこと。また、御自身のお父さんの遺体が屋根の上に上がってしまって、自衛隊の方におろしていただくまで1週間そのまま雨ざらしにしてしまう。それは私、親不孝だよね。同年代の女性に泣かれたこともありました。
 また、御自分の消防の仕事を優先する余り、家族を救助できなくて、数日後の遺体安置所で、ベビー服を着ていた我が子をようやく見つけたという消防団の方。その子供は、奥さんが着せていたベビー服を着ていたので自分の子供とわかったそうなのですが、目を開いて、両手を差し伸べるようにして砂まみれになってかたくなっていた。そういう話を聞くにつけ、その一人一人の失った幸せを考えると、私は、想定外というような言葉で片づけられたくはなかったと強く感じたものです。
 その後の対応では、過労により、みずから命を絶った町の職員、県庁の職員もいました。その後の孤独と絶望の中で命を絶った県民がいました。避難しなかった人、避難できなかった人を減らすために、どうしたらよかったのでしょうか。これまでの災害対応における反省点を踏まえ、今後に生かすべき教訓や課題をどのように捉えているのか、知事に伺います。
〇知事(達増拓也君) 震災からの教訓、課題についてでありますが、東日本大震災津波の経験を踏まえ、再び犠牲者を出すことがないよう、過去の津波のみにとらわれず、最大クラスの津波を想定しつつ、さらに想定を超える可能性も前提として、ハードとソフトを適切に組み合わせた多重防災型まちづくりを進め、安全の確保に努める必要があること、被災直後から中長期的に被災者及び支援者の心のケアに取り組む必要があることなどの教訓、課題を得たところであり、これらを踏まえた取り組みを進めてきたところであります。
 特に、ソフト対策については、津波を初め災害から身を守るためには、早目により安全な場所に避難するなど適切な避難行動が重要であることから、県民一人一人の適切な避難行動を促すための防災意識の普及啓発や防災教育の推進、高齢者や障がい者など誰もが余裕を持って避難することができるよう、避難場所や避難路、避難の手法等を定めた避難計画の策定の促進、市町村と連携した広域的かつ実践的な住民参加型の総合防災訓練の実施などの取り組みを進めてきたところであります。
〇12番(千葉絢子君) 10年たって、その取り組みは確実に成果を出していますか。防災教育、意識啓発、これで人々の命や財産を本当に守れるのでしょうか。
 私は震災後2週間ずっと報道に携わった切りで、初めて被災地に足を運んだのは3月25日の陸前高田市が最初でした。そこで陸前高田市の人たちは、果たしてこのまちに住み続けていいのだろうか、そういった不安を私に話してくださいました。
 災害が起きた場所に住み続けていくための防災意識の向上、普及啓発なのか、それとも先人の教えに習って、これより下に家を建てない、漁業従事者の方には、内陸の会社員の方などと同じように通勤に10分、15分、30分ぐらいかけて沿岸の仕事をするなりわいの場所まで通っていただくようなまちづくりをするのか。そういったことを一つ一つ検証されてきたのかと私は改めて問いたいと思います。
 当時の岩手県の防災施策において、東日本大震災津波が本当に想定していない規模だったとしたら、私は、これから先も、県民の財産はおろか、命なんて守ることは到底できないと思います。
 後ほど伺いますが、当時を振り返ること、また、何が足りなかったのか、これからの備えはどうあるべきか、復興防災部はその反省をどこに生かしてこれからの教訓とするのか、しっかり考えていただきたいと思います。
 予定よりも少し時間が早く進んでおりますので、私のこの後の質疑をお聞き取りいただきながら御答弁を考えていただいて結構かと思います。ぜひ、用意された原稿ではない、本当の本音の部分をお伺いしたいと思います。
 私は、震災後、沿岸を訪れるたびに、海岸線に築かれた万里の長城のような防潮堤には違和感を覚えてなりません。子供たちを連れて海を見たいと出かけても、海岸らしい海岸が岩手県にはほとんどなくなってしまいました。この防潮堤は、東日本大震災クラスもしくはそれ以上の津波が来た場合に、海が見えないという目隠しや、防潮堤があるから大丈夫だという、先ほど復興防災部長が御答弁なさった過信につながり、かえって避難行動の判断を誤らせてしまうのではないかと不安に感じています。
 私たちはよく、自然の猛威とか自然への畏敬の念とか、そういう言葉を口にしますが、壊れたままの震災遺構あるいは新たに築かれた万里の長城のような人工構造物に違和感がある一方で、それ以外の自然の地形に目をやると、自然の回復力、生命力の強さをかえって実感するものであります。
 近い将来、10年前を上回る規模の津波が来て防潮堤が壊れた場合、また新たに防潮堤を築くのでしょうか。この営みを延々と繰り返していくのが、岩手県の津波対策としてこれからもスタンダードとして残っていくのでしょうか。
 また、佐々木茂光議員からの質疑にもありました陸前高田市のかさ上げも、同じぐらいの津波が襲ってきたらどうなるのでしょうか。あれだけの時間と費用をかけても人の営みが戻ってこない現状も、皆さんごらんになって思うところがたくさんあるのではないかと思います。
 新しく陸前高田市の市役所庁舎もできました。けれども、あそこは浸水想定区域です。またあそこに津波が襲ってきたら、役所の機能はまた奪われてしまうのでしょうか。人の命が奪われてしまうのでしょうか。そういうふうに言い切れるのでしょうか。
 県は、この二つの事業をどのように総括しているでしょうか。それは過去の教訓にまさるような復興策と考えているのか伺います。
〇知事(達増拓也君) 防潮堤やかさ上げ事業の総括についてでありますが、県では、ハードとソフトを適切に組み合わせた多重防災型まちづくりを進め、被害をできるだけ最小化するという減災の考え方によって、地域の安全の確保を図ることを津波対策の基本としています。
 御質問のハード面については、防潮堤やかさ上げの津波対策の考え方として、数十年から百数十年の比較的頻度の高い津波に対しては、防潮堤等で人命、財産を守ることを目標として施設の整備を行い、最大クラスの津波に対しては、防潮堤とともに、かさ上げによるまちづくりと一体となって被害減少を図ろうとするものであります。
 震災の教訓を踏まえ、防潮堤については、最大クラスの津波に対して破壊されにくい、いわゆる粘り強い構造を導入したこと、また、かさ上げによるまちづくりについては、宅地の整備は完了しており、市街地の津波へ備える力が向上するものと認識しているところであります。
 震災から10年が経過し、ハード整備は着実に進みましたが、防潮堤等への過信はよくないということも震災の教訓であったことを踏まえ、再び津波による犠牲者を決して出さないという考えのもと、津波に対しては、何よりも避難することを基本とした多重防災型まちづくりに取り組んでいくことが重要と考えております。
〇12番(千葉絢子君) では、なぜ人の営みが戻ってこないのでしょうか。その辺についてはどのように総括していらっしゃいますか。
〇知事(達増拓也君) 人の営みというのが、既に完了した宅地にまだ家が建っていないという意味であれば、それは、かさ上げなど、やはり津波による被害の場合に、住宅の再建に時間がかかったところから、当初、その宅地への住宅建設を予定していた方々でも、さまざま予定の変更等あり、当初想定されていたような戻り方にはなっていないということが、まずあると考えます。
〇12番(千葉絢子君) 家が建っていないということを申し上げているのではないのです。そういうことではなくて、人の営みが戻ってこないのは、その地域の将来像が皆さんに見えないからだと思うのです。ここのまちに住み続けていくことによって、どんないいことがあるのか。ここのまちにどうしても戻りたい、そういう意欲につながらない、そのまちに対する将来のビジョンが見えないというのが、一番の理由ではないかと私は考えております。
 震災から2週間後、陸前高田市立高田第一中学校に私は慰問いたしました。そのときの住民の皆さんは、これから先も本当にここに住み続けていいのか、未来への指針が欲しいということをお話になっていました。
 その後、私は3人目を妊娠中に、新聞社の企画でドナルド・キーンさんにインタビュー取材をする機会をいただきました。そのときキーンさんが語ったのは、私は、津波被害のあったところは、今までよりもすばらしいまちに復興していくだろうと信じている。日本は戦争からもすばらしい復興を遂げることができた。私は日本人の力を信じているから、希望を持って生きていってほしいと勇気づけられたものです。
 私はこの10年、その言葉をかみしめながら岩手県の復興を見てきました。果たして現状は、キーンさんが私に想像させてくれたような、美しい、すばらしい復興で、その復興を本当に遂げることができるだろうかという疑念を湧かせています。これまでの復興事業についての総括がなく、将来この地域はこんなふうになるという希望が見えないのだと思います。
 美談ではない、真実の伝承こそ私は必要だと思います。総合防災復興プロジェクトなどお祭り気分で復興イベントを実施しても、それはその場限りの満足感に終わります。次の防災や意識の向上にはつながっていかないのです。私たちの経験を振り返り、悔い改めていない。次の時代の防災に我々のこの後悔をどう生かすのか、そこを論じて実行に移すプロセスが丸々抜けているので、沿岸の人たちは、忘れられるという危機感を持ってしまうのではないかと思います。
 よく県の施策でPDCAサイクルと言います。私は以前、特別委員会で、県は、プラン、ドゥーまではやるけれども、チェック、そしてアクションはなかなかしない。これは、この防災施策に関しても同じことが言えるのではないでしょうか。プランして、ドゥーはしています。ただ、チェックはしていますか。本当によかったのだろうか。それをアクションにつなげる、そのサイクルができているでしょうか。
 物流がストップして、県民が食料やガソリンを確保するために長い列をつくり、奥州市では、娘さんが次の日出勤するために使う車に給油しておこうと並んだ車内で、1晩中待っていた間に寒さで凍死した人もいました。津波被害のなかった場所では、次の日から出勤しなければいけない人もいたのです。けれども、その人たちの苦難は、震災復興の蚊帳の外で見返ることもされなかった。
 そういう生き残った人たちの通常の暮らしを回すための施策は、どの程度できているのでしょうか。守るだけではなく、これから同じことを起こさないための過去に学ぶ計画をつくっていくことこそ私は重要だと考えますが、復興防災部において、そのような次の災害からの復興に備えたまちづくりや被災地以外の生活機能の維持については、どの程度検討されているのか、また検討していく必要性について認識を伺います。
〇復興防災部長(戸舘弘幸君) 災害からの復興に備えたまちづくり等についてでありますけれども、甚大な被害をもたらした東日本大震災津波を初め、平成28年台風第10号災害や令和元年台風第19号災害など大規模な自然災害が繰り返される現状を踏まえまして、県では、次なる災害への備えから復旧、復興までを見据えて、対策の強化、充実を図ることが重要であると認識しています。
 そのため県では、東日本大震災津波等からの経験や教訓を踏まえて策定した岩手県国土強靱化地域計画に基づいて、津波防災施設等の整備や治水対策などの防災、減災対策に取り組みますとともに、物流機能のお話がございましたが、この維持、確保、エネルギー供給体制の強化、水道施設の防災機能の強化など災害時における生活機能を維持するための取り組みや、災害廃棄物処理対策、復旧、復興を担う人材育成、地域コミュニティー力の強化など、災害からの地域社会、経済の迅速な再建、回復の取り組みを今推進しているところであります。
 また、復興に備えたまちづくりに向けまして、平成30年7月に国が策定した復興まちづくりのための事前準備ガイドラインというものがありますが、これを県内市町村に周知いたしまして、昨年7月現在で、11市町村がガイドラインに示された事前検討などを行っているところでありまして、市町村の取り組みが加速するように、普及啓発や助言など必要な支援を行ってまいります。
〇12番(千葉絢子君) 災害時のエッセンシャルワーカーの人たちには家族がいます。仕事をしながら、どのように家族の命をつないでいったらいいのか、あのときは本当に皆さん苦労したと思います。県職員もそうだったと思います。そういった方々の生活をどう支えながら業務に当たってもらうか、そのあたりもぜひ、この復興防災部では考えていただきたいと思っております。
 次に、学校における避難計画、そして、これからの防災教育のあり方について伺います。
 近年、豪雨による洪水や土砂災害も全国で頻発し、県内でも多くの地域で被害や犠牲者が毎年のように出ています。これまでは大きな河川の氾濫などが想定されてきましたが、近年の傾向としては、山合いの小さな沢が一気にあふれて集落を襲う被害も出ています。
 こうした中、大雨による浸水や土砂災害で被害が生じるおそれのある全国の公立学校のうち、2割程度が避難確保計画を策定していないことが先月8日、文部科学省による初の調査でわかりました。この計画に基づく訓練も3割程度が実施していなかったということですが、災害のおそれがある、または災害が起きた場合、学校は避難所に指定されているケースも多く、立地や標高、そして避難のしやすさなどについて、県内の各学校においても総点検をし、災害が発生した際に犠牲者を出さないために、津波だけではない、自然災害から身を守るための防災教育についても、復興防災部と県教育委員会が連携して計画的に進めていく必要があると考えます。
 復興防災部と教育長の認識について、まず復興防災部長に伺います。
〇復興防災部長(戸舘弘幸君) 学校における避難計画、防災教育についてでありますけれども、児童生徒の生命と健康を守り、学びを保障する観点からも、学校における避難確保計画の策定やその実効性を高めていくための避難訓練を含む防災教育は、大変重要と考えております。
 本県における浸水想定区域及び土砂災害警戒区域内に所在する公立、私立学校の避難確保計画の策定率は、御紹介のありました調査ですけれども、令和2年10月1日時点で74.2%、令和3年4月1日時点では73.5%となっていまして、この避難確保計画に基づく訓練の実施率は、令和3年4月1日時点のデータとなりますが58.0%となっています。
 復興防災部では、定期的に県教育委員会を含む庁内関係室課との連絡会議を開催し、防災に関する情報共有や取り組みに係る意見交換を行っておりますほか、市町村と連携しまして、計画策定率の低い市町村での学校管理者等を対象とした講習会を開催するなど、避難確保計画の策定を支援しています。
 また、県教育委員会等と連携しまして、教職員を対象とした研修会の開催、学校への地域防災サポーターの派遣による避難所運営演習や避難訓練への助言などを実施しています。
 今後も引き続きこうした取り組みを進め、各学校における避難確保計画の策定や防災教育を支援してまいります。
〇12番(千葉絢子君) では、続いて教育長、お願いいたします。
〇教育長(佐藤博君) 防災教育につきましては、いわての復興教育プログラムに基づき県内全ての公立学校で取り組んでいるところであり、これまでも、県防災担当部署と連携して、防災教育研修会や要配慮者利用施設の避難確保計画作成研修などを開催してきました。
 このことにより、要配慮者利用施設に指定された公立学校における避難確保計画については、昨年10月の調査時点の作成率は98.2%となっておりましたが、本年4月までに全て作成済みとなっています。一方、計画に基づく訓練は、本県は83.3%となっています。
 また、平成28年台風第10号豪雨災害で甚大な被害を受けた岩泉町において、岩泉町教育委員会、岩手大学地域防災研究センターと連携した調査をもとに、全国初となる学校版タイムラインの作成方法を開発しまして、研修用リーフレットであるとかDVD等を作成しまして、これを活用しながら県内全ての公立学校に周知してきたところです。
 引き続き、自然災害から児童生徒の身を守るため、復興防災部を初め、家庭、地域、関係機関、団体等と連携を図りながら、防災教育の推進を図ってまいります。
〇12番(千葉絢子君) 救わねばならない命というのは人間だけではありません。一般社団法人ペットフード協会の調べによると、今や世帯の5分の1が犬や猫を飼っていると見られる中で、東日本大震災津波やそれ以降の災害時に、ペットを避難所に連れていけないために車中避難を続けた人、また半壊の自宅を離れられなかった人がいたほか、福島県の原発事故では、放置されたペットが問題となりました。
 また、避難所においては、ペットを所有していない避難者や動物アレルギーのある避難者への配慮、鳴き声、においなどへの配慮も避難所運営上の大きな課題となっています。
 青森県では、ペットの損害保険会社と連携して、ペットと一緒に避難できる避難所マップの作成に着手しています。岩手県は、10年前の震災をきっかけに、ペットとの同行避難の課題について、動物愛護の観点からもその必要性をどう認識し、どのように改善できているのか伺います。
〇復興防災部長(戸舘弘幸君) ペットとの同行避難についてでありますけれども、災害発生時にペットを連れて避難ができることは、御紹介にありました動物愛護の観点に加えて、飼い主である避難者の心のケアの観点からも重要と考えております。
 東日本大震災津波以降、市町村の地域防災計画に愛玩動物の救護対策が規定されるよう働きかけを行うとともに、総合防災訓練の際にペット同行避難訓練等を行っているところであります。
 また、平成26年3月に策定いたしました市町村避難所運営マニュアル作成モデルにおきまして、ペット飼養に係る避難所の空間配置や生活ルールづくり等についても例示をし、市町村に提供しています。
 こうした取り組みによりまして、現在、32市町村の地域防災計画に愛玩動物の救護対策が規定されておりますほか、26市町村が、避難所運営マニュアルにペットを連れた避難者への対応を盛り込んでいるところであります。
 県といたしましては、避難者がちゅうちょなくペットと同行避難でき、全ての避難者が安心して避難所での生活を送ることができるように、今後も研修会などさまざまな機会を通じ、市町村の取り組みを支援してまいります。
〇12番(千葉絢子君) このコロナ禍において、ペットに癒しを求めるような家庭もふえていると承知しております。きっとこれから、災害時にペットを連れての避難を希望する方がどんどんふえてくると思いますので、独居の方もそうですけれども、ぜひこういった対策を進めていただきたいと思いますし、それが原因で命を失うというようなことにつながらないよう心から願っております。
 今さまざま御答弁いただきました。ただ、私たちの子供や孫は、この先、いつ沿岸に暮らし、あるいは原発のある場所に住むことになるのか、そして、たとえ津波の心配や原発のない地域に暮らしていたとしても、いつ、どんな災害がそのまちを襲うか、私たちには全くわかりません。次世代へつないでいくべき自然への畏敬の念とともに、災害の恐怖と教訓の伝承が途絶え、過去の災害が人ごとになった結果が、今回の未曾有の被害、またその後の避難生活を含めた生活の困難だったと捉えますと、私は、幼いころからの防災教育は本当に必要だと思っております。
 日本や世界の人たちを災害から守るために、岩手県が10年前に経験したものが果たす役割は大きく、それを伝えるために三陸防災復興プロジェクト2019が開催された、または開催されていてほしいと私は思っているわけです。しかし、県の復興事業の振り返り、そして津波伝承施設の伝え方、三陸防災復興プロジェクト2019は、ちょっとした事実と多くの美談がベースになっておりまして、本当のこと、恐怖とか、私が今、皆様に問いかけてきました悔い、悔悟の部分が正しく伝承されていかないのではないかと危惧しています。
 津波や災害からの復興を伝承していく上で大切なことは、災害のおそろしさを実感し、自分の命を守り、親しい人や生き物の命を守るための知を継承していくことだと考えております。
 生きていく希望はもちろん必要なのですけれども、何があったのか、その悲惨さも含めて正しく伝承していくべきです。震災をきっかけに、私たちは多くの県民や仲間を失い、ふるさとの当たり前の日常が奪われた悲しみと悔しさとしっかりと向き合って、この11年目の復興と未来の防災に取り組んでいただきたいと思っております。
 私たちが何を経験し、どんな教訓を得たのか。同じ思いをする人を一人でも減らしたいという気持ちが知事にもあるのであれば、美談ではなく、ああすればよかったというようなことを、日本中、世界中に発信し、自分ごととして考えてもらうよう働きかけていくのが、津波を初め、自然災害で亡くなった人たちから受け取った使命だと私は考えております。どうか、今から次の災害への備えとまちづくりのプランの検討を始めるよう求めて、この項目を終わりたいと思います。
 さて、世界中で新型コロナウイルス感染症への対策が何よりも優先されていて、岩手県でも、今年度は新型コロナウイルス感染症対策が一番の課題となっています。どこも頭を悩ませているのが、感染予防と経済活動の両立です。まずは、感染予防について伺います。
 過日、私が委員長を仰せつかっている産業振興・雇用対策調査特別委員会の調査で、新型コロナウイルス感染症の抗原検査キットを製造、販売している盛岡市のセルスペクト株式会社を視察してまいりました。その際、社長に64歳以下の接種を優先することについての見解を伺ったところ、人の流れのあるところにウイルスが存在することが証明されているので、社会的活動量の多い年代から接種することが妥当だとの見解をいただきました。
 県では、市町村の接種体制を補完する集団接種の実施については、7月3日から接種券を持つ18歳以上65歳未満の県民に拡大すると発表しました。今後さらに加速させるため接種体制の拡充も必要になってくると考えていますが、一方で、市町村においては、ワクチンの打ち手、すなわち医療従事者が少ないためにスケジュールが見通せないという事情もあると伺っています。
 また、市町村でのワクチン集団接種を進めるために、県内の医療機関に勤務する医師や看護師のもとに市町村からの派遣要請が相次いでいるようですが、これについて日当が医師は10万円、看護師は5万円から8万円が出ると聞いていますが、この額については市町村によってばらつきがあると伺っています。
 県では医療関係者の調整などの業務もしていると伺っていますが、市町村によって日当が異なる理由と、またその財源はどうなっているのか、さらには、医療関係者が額の高い市町村に集中し、接種スケジュールなどに影響が出てくるのではないかと危惧していますが、県の考えを伺います。
〇保健福祉部長(野原勝君) ワクチン接種に係る医療従事者等の確保についてでありますが、市町村の集団接種会場に従事する医療従事者等については、集団接種の実施主体である市町村が確保することとされておりまして、その報酬、手当等の額は、国庫負担金を財源に、市町村がそれぞれの状況に応じて設定することが基本とされております。
 一方、本県におきましては、市町村や県医師会等から医療従事者等の報酬単価が地域によって異なることについて懸念が寄せられたことから、県では、本年4月9日に、集団接種会場に従事する医療従事者等の派遣に係る標準的な報酬単価を示したところであります。
 現時点で、報酬等の水準を理由として接種スケジュールに影響が出ている等の事例は把握していないところでありますけれども、今後、仮に何らかの影響が出るようであれば、県として必要な調整を行っていく考えであります。
〇12番(千葉絢子君) ぜひ偏りが出ないようにしていただきたいと思っております。
 また、先日、医療的ケア児を抱えるお母様から相談がありました。医療機関以外が経営する訪問介護サービス事業所のスタッフは、今回の医療関係者の優先接種の対象外になってしまったところもあり、そういった事業所が県に問い合わせたところ、一般の方と同じ時期に接種するようにと言われたということです。この事業所は難病支援にもかかわっていらっしゃるところでもありますけれども、例えば、施設が満床だとか、地域包括ケアの進展に伴って在宅での介護を受ける人も多い中、患者、利用者の命にかかわる介護サービスなのですけれども、従事者に陽性者が出た場合、サービスを受けられなくなるおそれがあることを心配しています。
 日本介護福祉士会では、1月に厚生労働大臣宛てに在宅系介護従事者へのワクチン優先接種を求める要望を行っているほか、5月20日付で早期の実現を求める声明を発表しています。県民の利便性を考え、県でも各自治体に対して早期実施を求めていく必要があると思いますが、この見解を伺います。
〇保健福祉部長(野原勝君) 在宅系介護従事者のワクチン優先接種についてでありますが、居宅サービス事業所等の従事者への接種については、国の手引がございまして、それによりますと、市町村が介護サービス等の継続が必要と判断した場合で、サービス事業者及び従事者がサービス提供を行う意向がある場合には、当該従事者を優先接種の対象である高齢者施設等従事者に含めることができるとされております。
 また、それに加えまして、県内の一部の市町村におきましては、地域の特性や感染状況、接種の進捗等を踏まえまして、独自に居宅サービス事業所の従事者への優先接種を進めているものと承知しております。
 議員から御指摘いただきましたとおり、居宅サービス事業所等の従事者が感染した場合に、在宅の療養患者への継続的なサービスの提供が困難になることが懸念されますことから、実際に県内においても、クラスターの発生によりサービスの提供が停止した例もございます。
 県としても、市町村との意見交換等を通じまして、先ほど御紹介した県内市町村の取り組みの事例でありますとかクラスターの事例等についても、しっかりと情報共有を図っていきたいと考えております。
〇12番(千葉絢子君) 私のところに相談が寄せられたのが先週の話でしたので、やはりまだ現状でも受けられていない方、またそのサービスの提供に不安を抱えていらっしゃる介護の利用者の方がいらっしゃるということを、もう一度お伝えしたいと思って質問いたしました。
 次は、通告はしていなかったのですが、64歳以下への接種の方針が拡大になったことを受けまして、本来、高齢者の後にそもそも優先接種が行われる方針だった基礎疾患のある人、または障がいのある人たちの接種がおろそかになっていくのではないかという懸念が、障がい者の支援に当たっている方から寄せられました。
 在宅介護を受けている人たちの中には接種会場に行けない人もいると思うのですけれども、ここが切り捨てられたというような声も聞かれたため、通告していませんが、このあたりの接種方針がどのようになっているのか、可能であればお伺いしたいと思います。
〇保健福祉部長(野原勝君) 国が示しました接種方針については、高齢者の次の順番が基礎疾患を有している方々です。それについては市町村も十分理解、把握しておりまして、基礎疾患を持っている方々は、まずは、かかりつけ医の先生を通じて接種を受けていただくことを考えております。
 市町村もでも基礎疾患を有している方は次の順番だということで接種券を発行しているところであり、そこについては、県も市町村も医療従事者も共通認識のもと、優先するように進めているところであります。
 また、確かに、御指摘のとおり、在宅介護を受けらえている方々がおられます。そうした方々については、在宅医療をされている医師の方、また、訪問看護ステーションの方々などが、この方をどうしようかという形でさまざま工夫されながら接種を進められているところでございます。そういった本当に必要な方々にきちっと接種が進みますように、県としても、市町村ときちっと情報共有しながら進めてまいりたいと考えております。
〇12番(千葉絢子君) ぜひ心配のないように、県民に向けてもメッセージをいただければと思っております。私の母も、亡くなるまでは在宅で介護を受けておりました。月に1回ぐらい岩手医科大学附属病院に受診するのに父が連れて行きましたけれども、ワクチンの接種となると、多分私の亡くなった母も難しかっただろうと思います。身近で困っている方にどう寄り添うかという、お一人お一人の顔を、それからその状況を思い浮かべながら、きめ細かい施策を展開していっていただきたいと願うばかりでございます。
 では、続いて経済との両立について伺います。経済の維持のために、岩手県では、いわての食応援プロジェクトといわて旅応援プロジェクトが展開されていますが、この基本的な考え方について伺います。
 日々暮らしている県民は、飲食店を利用すれば白い目で見られ、旅行に行くのも大っぴらに推奨されるものでもなく、そこで万が一新型コロナウイルス感染症の陽性と判明すれば、気の緩みだとか自業自得だと社会的に批判される恐ろしさから、必要以上の自粛、監視、うわさ、陰口につながっていて、日々の生活が息苦しさでいっぱいになっています。
 何をどうすれば飲食店は助かり、観光産業がうまく回るのか、それは、一日も早い経済の正常化がもたらされることです。休業を前提とした補助金は、この状況がだらだらと続けば、いつかはなくなってしまうのではないか。業績不振による倒産や休業などで、あすの糧さえ手に入らず、旅行どころでない人たちもふえています。
 県民が、今まで岩手県で暮らすことで手にできていた所得を回復させるためには、県内市町村と県が運営する大規模接種センターにおけるワクチン接種スケジュールの見通しや職域、職場、年代別接種についての進め方に関する岩手県の方針、また、具体的な感染予防の効果を可視化し、正常な県民生活を回復することが必要であり、県民の命と財産を守る知事が、リーダーシップを発揮すべきと考えます。
 経済活動との両立に向け、我々県民は具体的にどのように飲食店を応援し、観光産業を応援すればいいのか、知事としてどのように県民を導いていくのか、我々にも県民にもわかりやすく、具体的にお示しください。
〇知事(達増拓也君) 岩手県における1週間人口10万人当たりの新規感染者数のこれまでの最大値は、全国で3番目に低い12.0人であるなど、全国でも低い水準の感染状況を維持しています。
 このような中で、Go To イートキャンペーンやいわて旅応援プロジェクトも、中断などを行うことなく実施できており、特に宿泊施設の方々から、事業継続に役立っているとの声が届いています。
 このような状況は、多くの県民が基本的な感染対策をしっかり実践してきたことによるものであり、旅行や外食などを行うかどうかにかかわらず、県民一人一人の感染対策が、飲食店や宿泊施設の応援につながっていると考えます。
 飲食業や観光産業を取り巻く環境は極めて厳しい状況が続いていますが、引き続き、県民の皆様には、常時マスクの着用や手洗い、検温といった基本的な感染対策を実践していただき、飲食店や宿泊施設の方々には、支援金や補助金を活用して店舗や施設の感染対策を徹底していただく中で、希望する方のワクチン接種を速やかに進め、また、今般、補正予算案に盛り込んだいわて飲食店応援事業などの実施により、一日も早い経済回復を目指していきたいと考えます。
〇12番(千葉絢子君) 行っていいのかだめなのかというところで皆さん迷っているのだと思います。なので、その見通しとか目安を少しでも知事が発信してくださることで、飲食店を応援できるとか観光産業を応援できるとか、そう思っている方も多いのです。生活に密着した情報、後ろ指とか白い目で見られたりとか、そういうものを避けるためにも、生活に密着した情報は、知事が御自身で皆さんに語りかけていただくような方法をとっていただきたいと望んでおります。
 次に、子供の貧困対策における学校との連携について伺ってまいります。
 先月25日、新型コロナウイルス感染症の影響で減収した世帯に生活資金を特例で貸し付ける制度で、累計支出決定額が1兆130億円を超えたことが、厚生労働省などの集計で明らかになりました。累計支給決定件数は236万件に上るということで、生活苦に陥る世帯が後を絶たない状況にあるわけですが、岩手県内でも、非正規雇用のひとり親世帯などを中心に、困窮する世帯が増加していることは想像にかたくありません。
 支援団体の一つ、フードバンク岩手によると、昨年1年間に支援機関から要請があったのは852件。この支援機関などを介した食料支援世帯は1、922世帯、5、500人に上り、支援した食料の重さは37トンにも達しました。
 フードバンク岩手では、盛岡市などと連携して、市内の小中学校と子ども応援プロジェクトを去年から始めました。支援対象世帯を学校の協力を得て見出し、困窮する世帯へ確実に支援につなげようというこの事業では、昨年度、盛岡市だけで169件が公的な支援につながったということで、ことしはこの取り組みに賛同する学校が市内18校に広がりました。
 県内五つの自治体で同様の取り組みが行われていますが、支援団体の名前を知らない、信用度がない、児童生徒の個人情報の提供については教育委員会に問い合わせないとわからないなどの回答から、協力を得られないケースがまだ多くあります。
 食料支援を必要としている家庭の状況について、学校が支援団体と協力する体制の必要性について、教育長のお考えを伺います。
〇教育長(佐藤博君) 学校と支援団体との協力体制についてでありますが、これまでも、貧困等、家庭に起因する児童生徒の問題に対しましては、各市町村の要保護児童対策地域協議会を中核としながら、福祉部局に加え、学校や教育委員会も参画し、児童生徒や家庭が抱える問題について、関係機関で情報共有を図り、緊密に連携を図っているものと承知しています。
 貧困等の問題を抱えた児童生徒や家庭の支援のためには、福祉部局と市町村教育委員会とが連携し、家庭の支援ニーズや要望を把握しながら、適切な支援が行われることが必要であると考えており、盛岡市で取り組んでいる子ども応援プロジェクトなどについては、県教育委員会と市町村教育委員会との意見交換会の場などを通じまして紹介するなど、連携強化に向けた取り組みを促してまいりたいと考えております。
 また、県教育委員会としても、それぞれの地域の実情を踏まえて、スクールソーシャルワーカーの継続配置や取り組みの充実を図りながら、連携の推進に努めてまいります。
〇12番(千葉絢子君) 昨年暮れの押し迫ったころ、盛岡市内の中学校で、毎日お弁当を物すごく早く食べ終わる子供がいることに担任の先生が気づいたそうです。すると、その子は毎日、空のお弁当箱を持ってきていたということがわかったのです。どうして早く言わないのだとその子供に言ったところ、先生に知られると親に連絡が行く。親を悲しませてしまうのが申しわけないと話したそうなのです。来年進学を迎えるその子供は、進学にはお金がかかるので、自分は勉強が嫌いだから働くと言い出すのではないかと周囲は危惧しているということです。そういった世帯は、どうやって支援とつながったらいいのかそもそもわからないというケースが多いのです。
 フードバンク岩手の食料支援活動を通じて適切な支援につながるケースも、御紹介したように、盛岡市だけで去年169件あったという事実をぜひ重く受けとめて、学校と福祉の連携を進めていただきたいと思っております。
 去年も伺いましたが、保健福祉部として、県教育委員会と連携して、学校を介してそのニーズを掘り起こして支援につなげていく取り組みを、子供の貧困対策として県内全域に広めていただくことはできないでしょうか。改めて、福祉の観点から学校との連携の必要性をどのように認識しているか、また、さらなる取り組みが必要か伺います。
〇保健福祉部長(野原勝君) 教育と福祉の連携及び取り組みの拡大についてでございます。
 県では昨年度、子どもの貧困対策の推進に関する法律に基づく計画として、岩手県子どもの幸せ応援計画を策定いたしまして、市町村や学校、民間団体、関係機関が相互に連携し、教育の支援や生活の安定に資するための支援などの取り組みを進めていくこととしております。
 計画では、教育や福祉を初め、各分野の連携による総合的な施策の推進が重要でありますことから、子供の学校生活などに関する支援として、学校と家庭、地域、関係機関が連携し、支援が必要な状況にある子供たちを早期に把握し、適切な支援につなげる体制を強化すること、また、早期の段階で生活支援や福祉制度につなげることなどを掲げているところであります。
 こうした取り組みに当たりましては、日常的に子供と接している学校などとの連携が極めて重要と認識しておりまして、議員から御紹介がありました事例を参考とさせていただきまして、教育委員会や市町村との連携、情報共有を強化しながら子供たちを支援していく考えであります。
〇12番(千葉絢子君) フードバンク岩手によりますと、支援要請をした世帯の中で43%以上が公共料金を滞納しているほか、借金を抱えている世帯の割合は昨年度36%に上っていて、支援する食べ物の量も、先が見通せないので例年より1割増しぐらいで支援をしているということです。
 現在の貧困対策は、実際に貧困が起きてから対症療法的に支援する取り組みが大半のように感じております。ただ、大切なことは、このままでは困窮していく心配のある家庭をいかに早く見つけて、貧困に陥らせないかというようなところではないかと思っております。
 おなかをすかせた子供たちが、あすや未来の不安なく大人になっていくように、個人情報の壁を超えた子供の貧困対策にさらに力を入れてくださるよう、教育と福祉の連携の推進を求めたいと思います。
 次に、昨年度フードバンク岩手で寄附した食品は37トン余りに上ることは先ほど御紹介いたしましたが、この食品は、食品メーカーなどの企業や公共団体、市町村、それから市民から直接寄せられるもののほか、県内49カ所のフードポストに寄せられたものを、この活動に賛同するあるメーカーから、そのメーカーの販売店への物流網を使ってトラックのドライバーが回収するシステムになっていると伺いました。
 フードポストを見た人から、この食べ物はどうやったらもらえるのかという問い合わせが年間数十件フードバンク岩手に寄せられているということです。そこから公的支援につながるケースも出ているということで、このフードポストの取り組みは、食品ロスをなくすという側面もあり、山口県などでは、県庁内にもフードポストを設置して、職員や来訪者も食品ロスと支援に協力しているということです。
 県内では、盛岡市役所や盛岡市保健所などにもフードポストが設置されていますが、県庁にはまだありません。岩手県内の食料支援事情を見れば、おかずになる食品の寄附が少なくて、主食は足りているそうですけれども、フードバンク岩手では毎年100万円以上のおかずを購入して食料支援に当たっているということです。
 県庁内にもぜひフードポストを設置して困窮世帯への支援の一助としてはいかがかと思いますが、可能性について伺います。
〇保健福祉部長(野原勝君) 県庁へのフードポストの設置についてでありますが、事業者や個人などから集めた食料品により、支援を必要とする世帯に食料の提供を行ういわゆるフードバンク事業について、本県では、県や市が設置する全ての生活困窮者自立相談支援機関において、フードバンク事業者と食料品支援に関する協定を締結し、生活困窮世帯に食料品を提供しているところでありまして、生活困窮者支援の一つとして大切な取り組みであると認識しております。
 この取り組みに係るフードポストの設置は、県内の市町の庁舎を初めとして年々増加しているところでありますが、県としても、生活困窮者支援の重要性に鑑みまして、積極的に参画することが必要と考えておりまして、食品衛生面を初めとするフードポストの適切な管理の方法や、集めた食料品の円滑な回収の方法などについて、既に実施しております自治体の例を参考に検討するほか、フードバンク事業者とも調整を図りまして、県庁舎内への設置に向けて取り組んでまいります。
〇12番(千葉絢子君) ありがとうございます。前向きに取り組んでいただけるということで、本当に飢えた子供たちがいなくなるように、親としては心から願っているところです。
 今週末、フードバンク岩手では、盛岡市内の高校生ボランティアを募って、長期休暇中の食料支援の梱包作業を行います。この活動に参加した高校生たちは、成長して、公務員になったりメーカーに就職したりして、職場を巻き込んで支援する側に育っていると伺っております。この週末、私も子供とともにこの活動に参加する予定にしています。救える子供を救いたい、また、子供にも、同年代の子がこういうふうに困っているのだということを実際目の当たりにしてほしいと思っているからです。
 どうか、県としても本腰を入れて、子供と親の貧困対策、自立支援の有効な手だてを考え、実行してくださるようお願い申し上げたいと思いますし、今後も、貧困家庭の実態をこの場を通じてお伝えしていきたいと思いますので、より有効な手だてを打ってくださるようにお願い申し上げます。
 最後に、県職員の働き方改革について伺います。
 ことし5月、霞が関で働く若手官僚が、河野行政改革担当大臣と面会し、官僚の長時間の残業をなくすためには管理職の意識改革が必要だとして、対策の強化を要望しました。官僚の働き方をめぐっては、長時間の残業の解消などが課題となっていて、厚生労働省や総務省などで働く若手官僚6人が、河野大臣と面会いたしました。
 この中で、若手官僚でつくるグループが、東京霞が関で働く管理職の官僚48人に行ったアンケート調査によりますと、長時間労働の是正に向けた取り組みを実行できていない理由で多く聞かれたのは、削減できる業務がない、仕事が忙しく残業の削減まで手が回らないなどという声でした。
 このため、管理職の意識改革が重要だとして、研修を実効性のあるものに見直すとともに、管理職が残業削減の取り組みを検討できる時間を確保するなどの環境の整備を要望しました。
 県職員の年代別構成を見てみますと、50代の職員数に対して、20代はその約6割、30代は約5割の人数になっているということがわかりました。現在の上司が同年代のときよりも確実に少ない人数で、それよりも多い業務を抱えていること、慣例的に行われている業務が多いことなども過重労働の要因の一つになっていると思われますが、県職員の長時間労働の現状と業務量の削減や改善の取り組みについて伺います。
〇総務部長(白水伸英君) 業務量の削減や業務の効率化についてであります。
 令和2年度の職員1人当たりの月平均の超過勤務時間は、新型コロナウイルス感染症への対応により、前年度と比べ、保健福祉部等では増加しておりますが、知事部局全体では、おおむね同水準で推移しているところであります。
 業務量の削減や改善に係る令和3年度の具体的な取り組みにつきましては、新型コロナウイルス感染症への対応として、業務継続計画、いわゆるBCPの実行により、イベント開催や不要不急の出張の取りやめ、会議のリモート開催等を行ってきましたほか、保健福祉部等への業務支援、保健師等の専門職の採用増を図ってきたところであります。
 また、全庁的な県職員の長時間勤務の是正のため、民間経験者の採用など必要な人材の確保に努めるとともに、適切な業務マネジメントの徹底や部局への総務部からのヒアリング等によりまして、業務の見直しや適切な勤務時間の管理を進めることとしております。
〇12番(千葉絢子君) イベント開催の場合は、そのイベントに動員される職員も結構多いと伺っておりますので、それも残業に入ってしまうのではないかと懸念しております。ですので、イベント型の事業をやめてはどうかと私どもは会派を挙げて言ってきているわけですけれども、それはそれとして、総務部が去年9月に知事部局、労働委員会事務局、収用委員会事務局の職員5、000人余りを対象にアンケート調査を行っています。それによりますと、20代の職員の不安内容で多かったものの中に、職場の上司との人間関係が挙げられています。
 長時間労働や職場の人間関係などにより、精神疾患による療養者も昨年度は110人と5年前の2倍に増加していて、特に40代の療養者が多くなっています。職員の不安解消やメンタルヘルスケアについて、県庁では、原因の分析を含めどのような対応をしているのかお伺いいたします。
〇総務部長(白水伸英君) 職員のメンタルヘルスケアについてであります。
 議員御指摘のとおり、精神疾患による療養者は年々増加しておりまして、令和2年度は、特に40代に増加傾向が見られるところであります。
 その要因については、昨年度実施いたしました働きやすい環境づくりに係る職員アンケートによりますと、環境の変化や仕事、人間関係の悩み、また、個人的な問題、あるいはこれらが複合的になっていることなどが考えられます。
 これまで、全職員を対象にしたストレスチェック、長時間労働による健康障害防止のための保健指導、産業医、精神科嘱託医、外部臨床心理士等による個別面談などを実施し、心の病気の未然防止や重症化予防などに努めております。
 今年度は、健康サポートルームに心理相談専門員を新たに配置し、心理的な面に寄り添った相談対応を行うとともに、外部の臨床心理士等と連携し、職員の年代や職位に応じた個別面談や研修会などの取り組みの充実強化を図ってまいります。
〇12番(千葉絢子君) 自分の経験からも申し上げますと、本当に助けを求めている、助けが必要な人というのは、外部に助けを求める余裕もないのです。ある日突然、命を絶ったりするのです。ぜひ、周りの方々が、ほかの人たちの業務にも気を配ってあげられるような環境をつくっていくこと、声をかけ合っていくということが、ちょっと今の県庁内では少ないのかなと私はお見受けしております。ぜひ、隣の人がどういう仕事をしているのか、どんなことが趣味かというような人間関係を築けるような、その余裕を何とか皆さんに持っていただけるように職場環境を改善していく必要があるのではないかと思っております。
 国では、若手職員の要望を受けて、河野大臣が、公務員志望者が顕著に減っている状況なので、何とかしないといけないと思うと述べています。岩手県庁でもこうした傾向と、若手職員の離職、なり手不足は同様と聞いておりますが、このような状況にどのような危機感を持っているか、総務部長に伺います。
〇総務部長(白水伸英君) 県職員の採用状況等についてであります。
 本県における採用試験の申し込み者数は、近年の少子化や民間企業の採用意欲の高まりなどを背景といたしまして、国や他の自治体と同様に減少傾向にあります。
 また、若手職員の離職につきましては、東日本大震災津波の発災以降、多くの職員の採用を進めていることもあり、本人の意向等を全て把握しているわけではございませんが、転職や家庭事情等を理由として若手職員の退職者が増加している状況にあります。
 こうした中で、県政を担う人材の確保や若手職員の離職防止については大きな課題と捉えておりまして、県として、インターンシップの実施やU・Iターン希望者への採用情報の提供など県行政の魅力を伝える機会を設け、志望者の確保に努めてまいりますとともに、働き方改革を進めながら、メンター制度の充実など、若手職員が意欲を持って職場で活躍できるよう職場環境の改善を進めてまいります。
〇12番(千葉絢子君) 自分や家族の体の健康のほかに、若くなるに従って心の健康を不安視する割合が高いこと、そして30代、40代は子育てとの両立、50代になりますと介護との両立に不安を抱えていることがアンケート調査でわかりました。
 国家公務員に対するアンケート調査では、数年以内に辞職したいとの回答が5.5%であり、働き方改革、育児、介護と両立して活躍できるための改革、女性の活躍推進のための改革、この三つの実感度が低いと辞職の意向がより高くなる傾向が明らかになっています。
 国では、テレワークのさらなる導入や働く時間についての議論が始まっていますが、岩手県庁では、働き方改革の必要性や議論はどの程度進んでいるのでしょうか。
〇総務部長(白水伸英君) 県庁における働き方改革についてであります。
 働き方改革は、出産、育児、介護など生活の状況や、職員の年齢構成の偏在を初めとする組織体制を取り巻く環境変化に適切に対応し、組織として高いパフォーマンスを発揮し続けていくために必要な取り組みであると認識しております。
 県では昨年6月、働き方改革推進会議を立ち上げまして、効率的な業務遂行や多様な働き方の推進に向け効果的な取り組みの検討、実施を進めるとともに、令和5年度までの働き方改革ロードマップをことし3月に策定したところであります。
 今年度は、このロードマップに基づいて、職員1人1台端末のノートパソコンへの更新等によるペーパーレス化やリモートワーク環境の整備等の業務効率化を推進いたしますとともに、フレックスタイム制の導入に向けた検討を進めるほか、男性育児休業の取得促進等の勤務環境向上のための取り組みを行っております。
 また、これらの取り組みを一層促進する組織風土を醸成するため、管理監督職員向けの研修の実施などマネジメント力の向上にも取り組み、ワーク・ライフ・バランスに配慮し、職員が明るく生き生きと働くことができる職場環境を実現してまいります。
〇12番(千葉絢子君) 私と同年代、40代の職員は、振り返れば、就職氷河期を乗り越えて採用され、子育てや介護との両立に悩みながら膨大な業務量と日々戦っていると拝察いたします。また、20代の若手職員の給与水準は決して高くないことも存じ上げております。
 そのような中、心を病むほど業務に追われている人が、心身を病んで現場から去っていく。さらなる負担が同僚や後輩職員に背負わされる。そんな状況を放っておくわけにはいかないと私は思っております。行政サービスは無限ではないのだということを改めて県民の皆さんにもわかっていただく時期なのかなと思っております。
 人口減少の時代にあって、若手職員は、この県庁にとっても岩手県にとっても宝であると私は思います。県庁はもっと仲間を大切にしていいと私は思っております。
 日々、県民の未来のために仕事をしてくださっていることに感謝を申し上げ、そして、皆様一人一人の心と体の健康を大切にこの難局を乗り切っていく知恵を出し合って、私たちもともに岩手県の未来をつくっていきたいとエールを送りまして、質問を終わりたいと思います。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
〇議長(関根敏伸君) 以上をもって千葉絢子さんの一般質問を終わります。
   
〇議長(関根敏伸君) この際、暫時休憩いたします。
   午後2時29分 休 憩
   
出席議員(47名)
1  番 千 田 美津子 君
2  番 上 原 康 樹 君
3  番 小 林 正 信 君
4  番 千 葉   盛 君
5  番 千 葉 秀 幸 君
6  番 岩 城   元 君
7  番 高橋 こうすけ 君
8  番 米 内 紘 正 君
9  番 武 田   哲 君
10  番 高 橋 穏 至 君
11  番 山 下 正 勝 君
12  番 千 葉 絢 子 君
13  番 高 田 一 郎 君
14  番 田 村 勝 則 君
15  番 佐々木 朋 和 君
16  番 菅野 ひろのり 君
17  番 柳 村   一 君
18  番 佐 藤 ケイ子 君
19  番 岩 渕   誠 君
20  番 名須川   晋 君
21  番 佐々木 宣 和 君
22  番 臼 澤   勉 君
23  番 川 村 伸 浩 君
24  番 ハクセル美穂子 君
25  番 木 村 幸 弘 君
26  番 吉 田 敬 子 君
27  番 高 橋 但 馬 君
28  番 小 野   共 君
29  番 軽 石 義 則 君
30  番 郷右近   浩 君
31  番 小 西 和 子 君
32  番 高 橋 はじめ 君
33  番 神 崎 浩 之 君
34  番 城内 よしひこ 君
35  番 佐々木 茂 光 君
36  番 佐々木   努 君
37  番 斉 藤   信 君
38  番 中 平   均 君
39  番 工 藤 大 輔 君
41  番 関 根 敏 伸 君
42  番 佐々木 順 一 君
43  番 伊 藤 勢 至 君
44  番 岩 崎 友 一 君
45  番 工 藤 勝 子 君
46  番 千 葉   伝 君
47  番 工 藤 勝 博 君
48  番 飯 澤   匡 君
欠席議員(1名)
40  番 五日市   王 君
   
説明のため出席した者
休憩前に同じ
   
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後2時48分再開
〇議長(関根敏伸君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。木村幸弘君。
   〔25番木村幸弘君登壇〕(拍手)

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