令和3年6月定例会 第15回岩手県議会定例会会議録

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〇11番(山下正勝君) 自由民主党の山下正勝でございます。
 このたび、自由民主党会派から初めての一般質問の機会をいただきました。一般質問の機会を与えてくださいました先輩、同僚議員の皆様に感謝申し上げます。地域の皆様の思いをしっかりと受けとめ、郷土の発展に全力で努めてまいりますので、よろしくお願いします。
 それでは、通告に従い順次質問させていただきます。
 初めに、御所野遺跡の世界遺産登録と観光振興の推進について伺います。
 先般、一戸町の御所野遺跡を含む北海道・北東北の縄文遺跡群は、令和2年1月にユネスコへ推薦書が提出され、令和3年5月には、ユネスコの諮問機関イコモスから世界文化遺産への登録勧告があったところです。7月に開催される世界遺産委員会における審議を経て正式登録となれば、本県では、平泉、釜石市の橋野鉄鉱山に続く3件目の世界文化遺産が誕生することになり、奈良県に並んで国内最多となります。
 今回の登録勧告は、これまで登録を目指し取り組んできた方々の努力が実を結ぶ大きな前進と受けとめており、地元では既に登録後の観光振興への効果に期待する声が広がっています。しかしながら、世界遺産は既に国内に23カ所あり、また、世界ツーリズムは、国内外の遺産と観光客を取り合う競争でもあることから、世界遺産効果で観光客はふえる可能性は高いですが、一過性で終わらせないよう、観光インフラやサービスの充実を図ることが急務と考えられます。
 そこで、新型コロナウイルス感染症の収束後、3件の世界文化遺産、さらには東日本大震災津波の記憶を伝える震災遺構や三陸ジオパークなど県内の貴重な文化資源を活用した観光振興の推進が、疲弊した地域経済を回復するための起爆剤になると考えますが、知事のお考えを伺います。
 また、世界遺産登録を目前に控えた北海道・北東北の縄文遺跡群は、自然との共生のもと、1万年以上前から定住が開始され、発展、成熟した人類史上極めてまれな先史文化を現代に伝える貴重な遺産であります。
 本県の候補地である御所野遺跡は、特にその価値を伝えており、こうした文化財に係る調査研究や保存活用、管理はとても重要ですが、県は、今後どのような支援を講じていくのか伺います。また、世界遺産を保存していく上で、市や町とどのように連携していくのか伺います。
 次に、県北・沿岸地域の振興方針について伺います。
 昨年、知事から県北・沿岸地域の振興方針について、県北・沿岸振興を県政の重要課題に位置づけ、県北・沿岸振興本部を中心に全庁挙げて取り組みを進めていること。また、成果として、県北地域では、食品関連産業や造船業等の業容拡大、農林水産物のブランド化、アパレル産業の認知度向上など、すぐれた地域産品の魅力発信を通じて地域産業の振興が図られていること。沿岸地域では、東日本大震災津波からの復興の取り組みによる新しい交通ネットワークや漁業生産基盤の整備のほか、復興支援を契機とした国内外の多様な主体とのつながりが構築されてきた旨の答弁があったところです。
 そこで伺いますが、全県と比べ進行が速い人口減少と高齢化、また、復興需要の減少などの問題があり、全庁挙げての取り組みが膠着状態と思われることから、いわて県民計画(2019〜2028)に掲げるゾーンプロジェクトの目指す姿の実現に向けて、さらに力強く取り組むべきと考えますが、知事のお考えを伺います。
 また、ゾーンプロジェクトの実現は、市町村や関係団体等の協力がなければ成り立たないものと考えます。市町村や関係団体等の協力体制はどのようになっているのか伺います。また、県としてどのような支援を講じていくのか伺います。
 次に、漆を核とした地域産業の振興について伺います。
 本県は国内随一の漆の生産地であり、その中心地域である安比川流域が、昨年6月に、漆文化を伝える“奥南部”漆物語〜安比川流域に受け継がれる伝統技術〜として日本遺産に認定されたことは、今後、国内外に対し戦略的に情報を発信でき、地域の活性化や振興につなげる絶好の機会を得られたものと考えます。
 また、これまで関係機関との連携により、KOUGEI EXPO IN IWATEの開催や海外の見本市等への漆のPRブースの出展などを通じて、本県の漆産業と漆文化を発信し取り組んできた成果とも考えられます。
 日本遺産に認定されたことを生かし、今後も引き続き、地域の活性化につながる魅力的な文化として、関係機関や団体等との強固な連携のもと、漆産業の振興や国内外の多くの方々が県北地域の漆文化に親しめる観光地域づくりなど、漆を核とした地域産業の振興につなげていく必要があると考えますが、県の考えを伺います。
 次に、ハロウインターナショナルスクールの開校について伺います。
 英国の名門私立学校ハロウスクールと岩手ホテルアンドリゾートが提携し、八幡平市安比高原に建設を進めるインターナショナルスクールについて、昨年6月27日に起工式を行い、来年8月の開校に向け校舎等の建設を進めているところです。
 一部の新聞報道では、JR安比高原駅近くの約10ヘクタールに3階建て校舎と生徒が暮らす寮棟を建て、予定では、英国の教育制度による11歳から18歳の7学年制で、将来的に生徒数は900人程度、また、学校運営の教員や事務職、警備員らを含めると2、000人程度が定住する見通しとされております。
 そこで伺いますが、既に開校のインターナショナルスクールは、北京、上海、香港、バンコクの大都市が中心となっていますが、今般、自然豊かな安比高原に建設され開校されることになったことについての知事のお考えを伺います。
 また、当該スクールには東南アジアや英国など欧州からの入学が期待され、あわせて生活スタイルが異なる多様な人々が集まることから、それらに合わせた環境整備等が必要となり、地元を含めた地域の活性化も期待されます。
 また、スクールの開校は、富裕層の注目の的となり、安比高原を初めとする観光振興への追い風も期待できることから、今後、隣接の二戸地域のほか県内経済への波及効果も期待できると考えられますが、県ではどのようにお考えか伺います。
 次に、県北地域の振興につながる道路整備について伺います。
 県北地域においては、歴史的、文化的に深いつながりがある青森県南地域との結びつきが一層強くなっており、県の区域を越えた広域的な連携の強化、地域活性化の必要性が高まっています。
 東日本大震災津波に伴う復興事業により、かつてないスピードで整備された三陸沿岸道路や東北横断自動車道釜石秋田線、宮古盛岡横断道路などが開通し、移動時間が大幅に短縮されたところであり、北海道・北東北の縄文遺跡群の世界遺産登録を見据えると、一戸町の御所野遺跡や青森市の三内丸山遺跡など、岩手、青森両県に点在する構成資産間を往来する観光客や、平泉、釜石市の橋野鉄鉱山を合わせた三つの世界文化遺産をめぐる広域的な観光客の増加が期待されることから、それらへのアクセスの向上が求められます。
 また、県北地域や青森県南地域は畜産に適した冷涼な気候であり、養鶏が主要産業となっています。令和元年の岩手県の農業産出額2、676億円のうち、ブロイラーは約550億円で20%余りを占めていますが、このうち県北地域のブロイラーは約320億円で県全体の60%を占めており、飼料の運搬やブロイラーの出荷に際しての物流ネットワークの強化が重要と考えます。
 こうした豊かな地域資源を有する一方で、県北地域は、全県に先行して人口減少と高齢化が進行しており、産業分野における生産性の向上や特徴的な歴史、文化を生かした地域の活性化などが課題となっているところです。
 県北地域のすぐれた地域資源を生かし、地域の活性化、産業の振興を図るためには、人流、物流の基盤となる道路ネットワークの強化が必要です。いわて県民計画(2019〜2028)においては、広域振興圏や県の区域を越えた広域的な連携の強化について取り組むこととされておりますが、県として、県北地域の振興につながる道路整備にどのように取り組んでいくのか伺います。
 次に、鳥獣保護管理施策について伺います。
 中山間地域の人口減少や高齢化による人間活動の低下、餌場や隠れ場所となる耕作放棄地の増加等により、全国的に多くの野生動物が生息域を拡大しており、人家周辺への出没や人身被害、農林業被害などが多く発生し、人間とのあつれきが生じています。
 本県においても同様に被害が発生していることから、県では、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律に基づき、これまでに第12次鳥獣保護管理事業計画並びに第二種特定鳥獣管理計画を策定し、対策を講じてきたものと認識しています。
 そこで、県が目指す鳥獣保護管理施策について伺いますが、野生動物が相手であり、人間の思いどおりに管理できない状況下において、昼夜を問わずの対応を求められ、真摯に取り組んでいる関係者の皆様には敬意を表するところです。
 県においては、これまでも被害に遭った地域住民の方々等の要望等に対し、関係機関と連携し対応を図ってきたと思われますが、これまでの課題認識をもとに、県が目指す鳥獣保護管理施策について、知事のお考えを伺います。
 次に、ツキノワグマによる人身被害の状況と対策について伺います。
 ツキノワグマは、西アジアからヒマラヤ山脈を含むインド亜大陸北部、東南アジア北部、中国北東部、海南島、極東ロシア、韓国、台湾に分布し、国内では本州以南に生息する森林性哺乳類の最大の種です。
 また、ツキノワグマは、地域的な減少が懸念されており、九州の個体群は絶滅したと考えられており、国際的には、ワシントン条約で取引が規制されているとともに、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律では、国際希少野生動植物に指定され、譲渡等が規制されています。
 そのツキノワグマによる人身被害は毎年発生しており、既に県内においても人家周辺への出没や、人間が誤ってツキノワグマのテリトリーに入り込むことによる偶発的な被害の発生等も報道などされています。
 県では、第4次ツキノワグマ管理計画に基づき、個体数調査や生息動向調査を実施し、令和元年度末時点での生息頭数は4、000頭と推定しており、あわせてツキノワグマの捕獲に当たっての方針を示すとともに、人身に対する危害が発生した場合または危害が発生するおそれがあり、かつ緊急を要すると認められた場合については、市町村に捕獲許可の権限を委譲し迅速な対応を可能としているところです。
 このような状況を踏まえ、本県における近年の人身被害の状況と傾向、また今後の対応について伺います。また、有害捕獲に当たり、関係する市町村等からどのような要望等が寄せられ、その際、どのように対応していくのかあわせて伺います。
 次に、イノシシによる農業被害の状況と対策について伺います。
 本県におけるイノシシは明治中期から末期に絶滅したとされており、平成13年3月に発行したいわてレッドデータブックでは、本県におけるイノシシは絶滅と記されておりました。しかしながら、平成23年に一関市で有害捕獲された以降、近年、県北部でもイノシシの出没が認められる等、生息域が拡大傾向にあることから、今後さらに農業被害等の増加が懸念されています。
 そこで、近年におけるイノシシによる農業被害の状況とその対策について伺います。
 次に、捕獲の担い手の確保について伺います。
 ツキノワグマやイノシシ、鹿等、県では管理計画に基づき個体数管理に努めているところですが、狩猟や有害捕獲の重要な担い手である狩猟者の高齢化により、将来にわたる人材確保が難しい状況と考えます。
 県ではこれまで、捕獲の担い手となる人材の確保に向け各種の施策を講じてきたところですが、その成果と今後の取り組みについて伺います。
 次に、農村地域の振興について伺います。
 本県では、農業従事者の高齢化や減少により農業生産や農地、農業用施設の管理の継続が難しくなっていることに加え、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって農業所得の減少等が懸念されるなど、農業、農村を取り巻く環境がより一層厳しさを増しています。
   〔副議長退席、議長着席〕
 さらに、ため池を含む農業水利施設等の老朽化が進む中、大規模地震や気象変動の影響による豪雨災害が頻発するなど、災害の激甚化は今後も続くことが危惧されています。
 こうした状況は全国的な課題でもあり、国では、令和3年度から7年度にかけて、激甚化する気象災害への対策やインフラの老朽化対策を強化するため、防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策に取り組んでいるところです。この対策では、人命、財産の被害を防止、最小化するための対策として、農業水利施設の整備や水田の貯留機能向上などによる流域治水対策や防災重点農業用のため池の防災、減災対策などが盛り込まれています。
 本県でも、国土強靱化地域計画を本年3月に改定し、農村地域における防災対策として多面的機能の維持、発揮に向けた農地や農業水利施設等の生産基盤整備の着実な推進とともに、ため池等の保全対策やハザードマップの作成支援を重要事項として盛り込んでいるところです。
 そこで、県内にある868カ所の防災重点農業用ため池におけるハザードマップ作成状況の進捗と今後の見通しについて伺います。
 また、ため池の補修や改修といった維持、保全対策には相応の事業費が必要となりますが、防災、減災対策の加速化の推進が求められる中で、今後どのように進めるお考えか伺います。
 次に、田んぼダムについて伺います。
 水田の貯留機能対策、いわゆる田んぼダムについて、その取り組みは、新潟県の水田地帯において下流域の洪水被害の軽減を目的として積極的に取り組まれ、成果を上げていると聞いています。
 本県における田んぼダムの取り組みはこれからという状況でありますが、豪雨災害が頻発する中にあって、農業、農村の多面的機能の一つである水田の貯留機能を向上するためには、地域の合意形成と協働力の発揮とともに、流域上流における圃場整備の重要性がますます高まると考えています。
 そこで、県として、田んぼダムの取り組みをどのように評価しているのか伺います。また、田んぼダムを県内各地で取り組めるよう圃場整備を進めるべきと考えますが、県の考えを伺います。
 次に、新型コロナウイルス感染症対策について伺います。
 いまだ衰えを見せない新型コロナウイルス感染症について、感染力が強く重症化しやすい新型コロナウイルス変異株が約60カ国以上に広がっていることがわかり、これまで従来株の抑え込みに成功した国々でも猛威にさらされており、さらに感染しやすく変異したとの報道もありました。
 また、国内では、感染拡大が懸念される新型コロナウイルスのいわゆるインド株―デルタ株について、いわゆる英国株―アルファ株よりも感染力が高く、従来のウイルスに比べて約1.8倍に高まったとの報告もあり、さらに7月中旬にはデルタ株が国内の半数を超え、7月末には割合が8割程度に達すると予測されており、デルタ株の割合がふえることで国内での感染スピードも上昇し、従来株が主流のときと比べ拡大のスピードが1.5倍超になる可能性もあると予測されています。新型コロナウイルス感染症の収束には、まだまだ時間を要するものと思われます。
 外出や飲食を伴う会合等の制限、また、ふだんから手洗い、マスクの着用、密集、密閉、密接の基本的な感染症対策の徹底が求められている中、全国で職場接種や合同接種も可能とするワクチン接種が始まりました。
 県内でも、65歳以上の高齢者を対象としてワクチン接種が政府方針の7月末完了に向け動き始め、さらに、希望する全国民、全県民が11月末までにワクチン接種完了の実現を目指し動き始めたところです。
 県では、県医師会、岩手医科大学等の協力のもと、高齢者のワクチン接種の早期完了に向け、対象者が多い県央と県南の両地域の3カ所に集団接種会場を設置し、7月末完了を目指すこととしました。
 また、市町村では、接種がスムーズに進むよう、独自に集団接種会場を設定するなど努力しており、そのような中で、地域住民の要望に応え独自に集団接種をする病院も出てきています。
 そこで伺います。一部市町村では、医療従事者の確保が困難などの理由から7月末完了が困難との話があり、高齢者の接種が加速しない場合、64歳以下の一般接種の開始時期にも影響を及ぼすおそれがあると考えます。県民全てが接種を終える時期をどのように見込んでいるのか、また、そのために市町村をどのように支援していくのか伺います。
 また、ワクチン管理について。国内で新型コロナウイルスのワクチン接種が急ピッチで進む中、温度管理の失敗や希釈方法の間違いなどにより廃棄されるワクチンも相当数になり、新聞報道等から、これまでに1万8、000回分以上のワクチンが管理ミスにより廃棄されたとのことです。管理ミスによる廃棄は避けなければなりませんが、接種業務に従事する方々の業務実情やストレス等を考えると、ヒューマンエラーもやむを得ないものと思われます。
 予約が込み合い接種予約ができない状況にある本県としては、ワクチンの管理ミスによる廃棄は最小限に抑えなければならないと考えますが、これまでの廃棄状況と管理ミスを未然に防止するための取り組みについて伺います。
 最後に、道路施設の計画的な維持管理について伺います。
 広大な面積を有し、ほぼ全域が積雪寒冷地であり、険しい峠などの難所も多数存在する本県において、県土の均衡ある発展を支える社会基盤である道路の整備は、人口減少、少子高齢化や社会資本の老朽化が進む中で、安全・安心や産業、観光振興を支えるためになくてはならない整備事業の一つとなっています。
 県では、道路が担う対策として、いわて県民計画(2019〜2028)でさまざまな施策を展開しており、安全・安心を支える社会資本の整備として、災害に強い道路ネットワークを構築するため、県土の縦軸、横軸となる高規格幹線道路や地域高規格道路の整備、緊急輸送道路の通行危険箇所や隘路の解消、橋梁の耐震化や道路防災施設の整備等を推進しているところです。
 また、日常生活を支える安全・安心な道づくりのため、救急医療等を支援するための救急搬送ルート等の整備や冬期間の安全で円滑な道路通行の確保のための道路除雪、歩行者の安全な通行を確保するための歩道の整備などを進めています。
 また、産業や観光振興の基盤となる社会資本の整備として、物流の効率化など生産性向上を図るため、内陸部と港湾を結ぶ道路や工業団地やインターチェンジへのアクセス道路の整備も進めるとともに、観光の振興を図るため、都市間や主要な観光地を結ぶ道路の整備もあわせて行っており、県土の発展に大きく貢献していると認識しているところです。
 このような状況の中、県が管理する道路は4、200キロメートル、特に橋梁は約2、800橋に達するなど、道路ストックが増大しています。今後、高度経済成長期に集中して整備された大量の橋梁が高齢化を迎えることに伴い、維持管理予算の確保が課題であり、計画的かつ効果的な維持修繕と更新費用の平準化等が必要であると考えます。
 平成25年11月に国の関係省庁連絡会議で決定されたインフラ長寿命化基本計画を受け、地方公共団体では、保有する全ての公共施設等を対象に、中長期的な取り組みの基本方針を定める公共施設等総合管理計画を策定することとされました。
 これを受け、県では、平成28年3月に岩手県公共施設等総合管理計画を策定し、この個別施設計画として、令和3年3月に橋梁などの長寿命化修繕計画を策定または改定されたとのことです。
 ついては、特に管理施設数が多い橋梁の長寿命化修繕計画の概要や取り組み状況、課題についてお伺いします。
 以上で質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〇議長(関根敏伸君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 山下正勝議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、文化資源等を活用した観光振興についてでありますが、御所野遺跡は、縄文文化が1万年以上続いた先史文化を現代に伝える貴重で価値の高い遺産であり、これまでの地域一体となった取り組みが実を結び、世界遺産の登録勧告を受けたことは大きな喜びであり、登録実現により、さらに国内外から注目されることとなります。
 また、世界遺産は、平泉、橋野鉄鉱山と合わせて時代の異なる三つを有することとなり、さらに、東日本大震災津波の遺構は、震災の経験や教訓を学ぶことができるほか、三陸ジオパークは、三陸復興国立公園と重なり雄大な自然を実感できるなど、岩手ならではの大きな財産です。
 県では、これらの資源を結びつけた広域観光ルートの構築や旅行商品の造成、世界遺産と震災学習を組み合わせた教育旅行の誘致などの取り組みを進めており、こうした取り組みを通じて、国内外の多くの方々が岩手県を訪れ、その魅力を実感し、学んでいただき、交流を活性化させることで、地域の活力をさらに高めていきたいと思います。
 次に、ゾーンプロジェクトの目指す姿の実現についてでありますが、県では、県北・沿岸振興の着実な推進のため、いわて県民計画(2019〜2028)に掲げる北いわて及び三陸のゾーンプロジェクトにより、全庁挙げて取り組んでいます。
 具体的には、県北地域では、引き続きアパレルや漆など特徴的な地域資源を活用した地域産業の振興を図るとともに、久慈市沖等の海洋再生可能エネルギーによる発電事業に向けた取り組みの推進などに取り組んでいるところです。
 特に、今年度は、御所野遺跡の世界遺産登録を契機とする記念イベントを開催するほか、八戸地域や鹿角地域などと連携した情報発信や周遊観光を推進するなど、県北・沿岸地域に人の流れを呼び込むような取り組みも促進していく考えです。
 沿岸地域では、引き続き、新たな交通ネットワークや港湾機能を活用した企業誘致、産業振興を進めるとともに、東日本大震災津波から10年の節目を迎える中、防災推進国民大会2021、いわゆるぼうさいこくたい開催にあわせて、県として併催事業を実施し、国内外からの復興への支援に対する感謝や防災、復興に力強く取り組んでいる地域の姿を発信することとしています。
 今後も引き続き、市町村や大学、団体、企業など多様な主体と連携しながら、地域の特性や資源を生かした施策を展開し、持続的に発展する地域の創造に取り組んでまいります。
 次に、ハロウインターナショナルスクールの開校についてでありますが、ハロウスクールは、伝統と格式を誇るイギリス屈指のパブリックスクールであり、アジアの各地域に開校している関連校は、いずれも都市部に立地していると伺っています。
 一方、安比校は、自然豊かなハロウスクール本校と同様に、安比高原の豊かな自然環境の中に開校されるものであり、四季を通じてさまざまなアクティビティーを体験できる環境が整っています。
 また、県内各地に視野を広げれば、東日本大震災津波伝承館や震災遺構を通して震災について学ぶ機会や、世界文化遺産や伝統芸能などさまざまな文化に触れることができる環境にも恵まれています。
 そのようなすばらしい環境の中で、次世代のリーダーや世界に貢献する人物を育み、新たな歴史と伝統を築き上げていくことは、岩手にとっての大きな財産になるものと考えます。
 また、地域貢献にも積極的に取り組んでいる同校と地域のさまざまな交流が行われることにより、本県の児童生徒の学力向上やグローバル人材の育成、国内外との交流の促進、地域活性化につながることを期待しています。
 次に、県が目指す鳥獣保護管理施策についてでありますが、県では、人と動物及びそれを取り巻く環境である生態系が相互につながっていることを踏まえ、人と鳥獣との適切な関係を構築し、生物多様性の保全やすぐれた自然環境を次世代に引き継いでいくことを目的として、法律に基づき、鳥獣保護管理事業計画を定め、さまざまな取り組みを行っているところです。
 また、著しく生息数が増加し生息域が拡大している鹿、イノシシ等については、第二種特定鳥獣管理計画を作成し、生息数や生息域を適正な水準に減少させるための対策を講じているところです。
 しかしながら、鹿等による農林業被害の増加が続いていることや熊の人身被害の増加、また、イノシシによる豚熱の拡大などの新たな課題に対応するため、専門家等の意見を踏まえ、本年度、次期管理事業計画及び第二種管理計画を策定することとしています。
 今後も、希少種を含む野生鳥獣の生息状況把握に努めながら、有害鳥獣の個体数管理や被害防止を含む総合的な対策について、市町村や関係機関とともに進めてまいります。
 その他のお尋ねにつきましては、企画理事及び関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔企画理事兼環境生活部長石田知子君登壇〕
〇企画理事兼環境生活部長(石田知子君) ツキノワグマによる人身被害の状況と対策についてでありますが、近年、ツキノワグマの出没や農林業被害が高い水準で続き、昨年度は過去最多の29名の方が人身被害に遭われたところです。被害の傾向としては、里山付近や子連れの熊との遭遇などが増加しております。
 県では、希少野生生物であることに配慮しながら、被害の抑制を図るため、生息数調査に基づく捕獲上限数の引き上げや県民への注意喚起、電気柵の設置などの防除の促進等に取り組んでおります。
 また、市町村からは、捕獲許可手続の迅速化に係る要望が寄せられており、県としては、許可事務を簡素化する特例許可の配分頭数の引き上げ等により、緊急時の円滑な対応を支援しているところであります。
 次に、捕獲の担い手の確保についてでありますが、本県の狩猟免許所持者のうち60歳以上の割合は、令和2年度時点で全体の約6割を占めていることから、将来の捕獲担い手の確保が重要な課題であると認識しております。
 県では、新たな担い手確保を図るため、狩猟への興味や関心を高めることを目的とする研修会や、法令等の知識、猟銃の取り扱いに関する予備講習会を県内各地で開催しております。
 この結果、新規取得者における40歳未満の割合が近年3割を超える状況となっており、今後も、猟友会や市町村と連携し、担い手確保に向けた情報発信や狩猟免許を取得しやすい環境の整備を進めてまいります。
   〔文化スポーツ部長熊谷正則君登壇〕
〇文化スポーツ部長(熊谷正則君) 御所野遺跡の調査研究や保存活用、管理のための支援策についてでありますが、県ではこれまで、北海道・北東北の縄文遺跡群の世界遺産登録に向け、御所野遺跡の発掘調査などの調査研究や縄文竪穴建物の復元を含む公園整備、御所野縄文博物館の整備などの技術支援や財政支援を行ってきたところです。
 今後も、4道県並びに関係市町等で構成する縄文遺跡群世界遺産保存活用協議会と岩手県を事務局とする岩手県世界遺産保存活用推進協議会の場において情報共有を図りながら、御所野遺跡の価値を十分に伝えることができるよう、児童生徒への教育活動やフォーラムなどの普及啓発活動を通じ、保存活用に取り組んでいきます。
 また、釜石市、平泉町、一戸町の3市町とは、住民生活と調和した遺産の保存管理と活用を進め、全ての人々にとって魅力のある世界遺産となるよう、遺産の保存と活用について相互に情報共有しながら取り組んでいきます。
   〔ふるさと振興部長熊谷泰樹君登壇〕
〇ふるさと振興部長(熊谷泰樹君) まず、ゾーンプロジェクトに係る市町村や関係団体等との協力体制等についてでありますが、県北地域においては、県と北岩手の13市町村で構成する北いわて未来戦略推進連絡会議を、また、沿岸地域においては、県、沿岸市町村、関係団体等を構成員とする三陸振興協議会をそれぞれ設置し、連携した取り組みを実施してきたところでございます。
 具体的には、県北地域においては、9市町村と横浜市が連携した北岩手循環共生圏やIoT技術を活用したドローン物流の実証実験、持続可能な地域コミュニティーの構築に向けたモデル事業などに取り組んできたほか、新たに、公共交通の利用促進と地域活性化のため、いわて次世代モビリティサービス実証事業を行うための予算を本定例会に提案するなど、市町村や関係団体と連携した取り組みを推進することとしております。
 また、沿岸地域におきましては、東日本大震災津波から10年の節目に、市町村が実施する復興への感謝を伝える事業や、持続的な三陸地域の振興につなげる関連事業に優先的な支援を行っているほか、防災推進国民大会2021の併催事業において、地域防災力の向上や沿岸地域の魅力の発信に連携して取り組んでいくこととしております。
 今後も引き続き、多様な主体との連携体制のもと、市町村や関係団体における地域資源を活用した産業振興や交流人口の拡大、持続可能な地域づくりなどの取り組み状況を共有しつつ、プロジェクトで掲げる目指す姿の実現に向けた取り組みが一層効果的に推進されるよう、県と市町村の連携、協働体制を強化してまいります。
 次に、ハロウインターナショナルスクールに係る県内経済への波及効果についてでございますが、ハロウインターナショナルスクール安比校の開校により、本県の進める多様な分野における人材育成を初め、地域振興、国際交流、ILCの実現への寄与など、地元八幡平市にとどまらず、県内に大きな波及効果が見込まれるものと認識しております。
 また、本年4月の新聞報道によりますと、安比高原エリアにおいて、新たに国際的な観光ホテルが建設中であると伺っており、そのような動きとも相まって、地域としての魅力がさらに高まることが期待されます。
 現在、令和4年8月予定の開校に向けた準備が進められていると承知しておりますが、今後、関係者と意見交換を行いながら、県内への波及効果を高められるよう、地元八幡平市等とも連携しながら取り組んでまいります。
   〔商工労働観光部長岩渕伸也君登壇〕
〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) 漆を核とした地域産業の振興についてでありますが、県では、二戸市や八幡平市、関係団体、研究機関と連携し、漆産業の振興体制の強化や職人の人材確保に取り組みつつ、昨年度から、日本遺産奥南部漆物語推進協議会や北いわて産業デザインアカデミー、北いわてテロワールなどの新たな取り組みも開始しております。
 具体的には、二戸市、八幡平市とともに、漆を生かした観光地域づくりに取り組んでいるほか、漆や御所野遺跡などの資源を生かした地域づくりを牽引する人材や、地域情報の発信などの取り組みを踏まえた関係団体等におけるビジネスプランの策定への支援、さらに、日本酒と漆器、漆文化を組み合わせた新たなサービスや商品開発に取り組む企業への専門家派遣などを行っております。
 こうした取り組みを通じ、漆を核とした北岩手の地域産業の振興を進めていく考えであります。
   〔県土整備部長中平善伸君登壇〕
〇県土整備部長(中平善伸君) まず、県北地域の振興につながる道路整備についてですが、県では、主要な観光施設へのアクセス向上を図るため、昨年12月には、くずまき高原や平庭高原に通じる国道281号岩手町大坊の2工区を開通させ、本年3月には、小袖海岸へアクセスする野田長内線の久慈市小袖から大尻工区の隘路の解消を図ったところです。
 さらに、今年度新たに、御所野遺跡から安比高原への周遊ルートとなる二戸五日市線の二戸市柿ノ木平工区の整備に着手しました。
 また、地域の産業振興を図るため、県北地域から青森県県南地域に集積する養鶏業の物流ルートの整備に向けて青森県と連携して取り組んでおり、今年度、国の広域連携事業の採択を受け、国道395号の久慈市侍浜町から洋野町阿子木地区までの線形改良に新規に着手しました。
 引き続き、県北地域の観光や産業振興に資する道路整備を着実に進めてまいります。
 次に、道路施設の計画的な維持管理についてですが、県が管理する橋梁約2、800橋については、5年に1度のサイクルで点検を行うことが道路法で義務づけられており、点検の結果、早期に修繕等の対策が必要な橋梁については、岩手県道路橋長寿命化修繕計画において、点検から5年以内に対策を完了することを目標としています。
 この計画において、早期の修繕等が必要な212橋については、国の防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策などを活用し、部材の交換や補強等の対策を重点的、集中的に進めており、今年度末には約5割が完了する見込みです。
 今後の対応については、建設後50年を経過する橋梁がこれから20年間で約900橋から約2、000橋に増加となり、維持管理コストが増大していくことから、損傷が深刻化する前に早期に対策を講じる予防保全型インフラメンテナンスへの転換を着実に進め、施設の長寿命化と中長期的なトータルコストの縮減を図ってまいります。
   〔農林水産部長佐藤隆浩君登壇〕
〇農林水産部長(佐藤隆浩君) まず、イノシシによる農業被害の状況と対策についてでありますが、県内では、平成22年度に初めてイノシシによる農作物被害が確認されて以来、生息域が拡大し、農作物被害が増加しており、令和元年度の被害額は約1、800万円と前年度に比べ約300万円の増となっています。
 県では、イノシシの捕獲対策に向け、市町村の鳥獣被害対策実施隊員等を対象に、イノシシの生態やわなの使用方法など、捕獲技術を習得するための研修会の開催のほか、より効果的な捕獲に向けたドローンによる生息状況の調査やICTを活用した箱わな捕獲の現地実証などに取り組んできたところであり、昨年度の捕獲頭数は約670頭と前年度の約2倍となっています。
 また、捕獲とともに、食害などから農作物を守り、さらに集落に寄せつけない対策が重要であることから、侵入防止柵の設置や里山周辺の除間伐など、地域全体で取り組む被害防止活動を支援しており、今後とも、市町村や関係団体等と連携しながら、イノシシによる農作物被害防止対策の一層の充実強化に取り組んでまいります。
 次に、防災重点農業用ため池のハザードマップの作成状況等についてでありますが、県では、県内868カ所全ての防災重点農業用ため池の浸水想定区域図を作成し、ハザードマップの作成主体である市町村に提供しており、本年3月末までに278カ所でハザードマップが作成されているところであります。残る590カ所のため池についても、市町村が開催するワークショップにおいて、想定される浸水の状況を踏まえ、避難経路や避難場所の設定を助言するなど、ハザードマップが早期に作成されるよう支援してまいります。
 また、ため池の維持、保全対策でありますが、県では、今後10年間における本県のため池の補修、改修に係る取り組み方針を定めた防災工事等推進計画を本年3月に策定したところであり、この計画に基づき、地震や豪雨による決壊の危険性などの評価を行い、市町村と役割を分担しながら計画的に防災工事を実施していきます。
 さらに、利用実態のないため池については、廃止に向けて、市町村や管理者等との調整を進めてまいります。
 今後においても、住民の安全・安心を確保するため、こうした防災工事等を可能な限り前倒しで実施できるよう、国に対し、必要な予算の確保について強く求めていきます。
 次に、田んぼダムについてでありますが、田んぼダムは、流域治水の一つの取り組みとして近年注目されていることから、その効果を確認するため、県では、圃場整備が完了した平場及び中山間地域において、実証試験に取り組んできたところです。
 これまでの試験の結果、降雨の状況によっては、一時的に水田へ雨水を貯留させることにより、ピーク時の排水量を抑制させる効果が確認されたところであり、今後、こうした効果を有する田んぼダムの取り組みが県内で広がっていくよう、水田の耕作者はもとより、農村地域に居住する住民にも広く周知していく必要があると考えています。
 また、生産性の向上等を目的として区画拡大や排水口、畦畔の改良を行う圃場整備は、水田における雨水の貯留機能も高めることから、下流域の浸水被害リスクの低減にもつながるものと認識しています。
 近年、全国的に集中豪雨が激甚化、頻発化する中、本県においても、こうした田んぼダムの有効性を踏まえつつ圃場整備を進めていくことが重要であると考えていることから、県では、市町村や土地改良区等と連携し、圃場整備の効果などを地域住民に説明しながら、引き続き計画的に圃場整備を推進してまいります。
   〔保健福祉部長野原勝君登壇〕
〇保健福祉部長(野原勝君) まず、新型コロナウイルスワクチンの接種完了見込みとその対応についてでありますが、県では、市町村における高齢者を対象としたワクチン接種の早期完了を支援するため、県医師会や岩手医科大学、県医療局などの関係機関、団体と協力し、市町村の実情に応じたニーズ等を把握し、医師や看護師など医療従事者の広域的な派遣調整などを行っております。
 また、市町村の接種体制を補完するため、6月19日から盛岡地域、同月26日から県南地域において、県が実施主体となる集団接種会場を設置し、県内の高齢者を対象とした集団接種を実施しているところであります。
 高齢者を初め、接種を希望する県民全ての11月末までの接種完了に向けて、各市町村の取り組みを引き続き強力に支援していくため、県が実施する集団接種の継続及び拡充や、医療機関による個別接種の促進などに取り組むこととし、本定例会において補正予算案を追加提案する準備を進めているところであります。
 次に、ワクチンの管理についてでありますが、現在確認している県内でのワクチン管理ミスによる廃棄については、市町村の集団接種において、ワクチン接種管理者とシリンジへの充填担当者との連絡ミスにより、31回分の廃棄が生じた例があったところであり、その再発防止策として、ワクチン管理担当者の明確化や情報共有の徹底などの対策を講じたと報告があったところであります。
 こうした管理ミスによる廃棄の防止に向けて、国の新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引きにおける、予防接種を適切に実施するための間違い防止チェックリストを積極的に活用するよう、市町村等に対しまして、機会を捉えて注意喚起を行っているところであります。
   
〇議長(関根敏伸君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後5時16分 散 会

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