令和3年6月定例会 第15回岩手県議会定例会会議録

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〇35番(佐々木茂光君) 自由民主党の佐々木茂光でございます。
 令和3年6月定例会に当たり、登壇の機会を与えていただきました先輩、同僚議員の皆様に、心から感謝を申し上げます。
 時は流れて幾千秋、治乱興亡夢の跡。心に刻まれしあの壊滅から立ち上がること10年を迎えた被災地。そして今、先の見えぬ新型コロナウイルス感染症に被災地の現状を案じ、通告に従い一般質問を行います。知事並びに関係部局長には、県民に向かい、誠意ある答弁をお願い、また期待をするものであります。
 初めに、東日本大震災津波からの復興についてお伺いいたします。
 震災後10年を経過し、全国各地で甚大な災害もさまざま発生するようになり、東日本大震災津波の被災地以外では、震災の記憶も薄れようとしているのではないでしょうか。マスコミ報道も、節目節目の時期以外は、ほとんど取り上げることもなくなっているような気がするのは、私だけでしょうか。
 国や岩手県には、各地の震災の記憶を伝承するための施設をつくっていただきましたが、被災者は、このまま忘れ去られるのではないかという不安を感じております。地域のコミュニティーから孤立した被災者も少なくありません。復興でおくれているのは、被災者の心のよりどころではないでしょうか。
 今の復興の現状を踏まえて、知事は、震災後10年を経過して、これまでの取り組みをどのように受けとめ、被災者に対してどのようなメッセージを語りかけたいか、知事の考えをお伺いいたします。
 次に、被災跡地の利活用についてお伺いいたします。
 令和3年1月末時点で防災集団移転促進事業を実施した7市町村において、買い取り対象となった移転元地328.5ヘクタールのうち35%に当たる116.7ヘクタールが、活用構想のない状況にあると聞いております。また、土地区画整理事業により宅地供給においても、令和2年12月末現在で、造成完了済み面積297.8ヘクタールのうち46%に当たる137.8ヘクタールが、いまだ活用されていない状況にあります。それらを復興まちづくりのため有効に活用することが、今後の大きな課題となっております。
 これら被災跡地の利活用については、沿岸部の市町村において活用策を検討していることと思いますが、対応に苦慮しているのが実態であると思われます。これら市町村の取り組みに対し、本県においても積極的に支援を行っていくべきであると考えます。本県の支援の状況と今後の取り組みの方向性についてお伺いいたします。
 東日本大震災津波で被災した方のために、岩手県には31団地、1、760戸の災害公営住宅を建設していただきました。県営災害公営住宅の入居率は、令和3年4月末現在で県全体で81%ほどですが、中には数十戸単位で空き室が発生している団地もあると聞いております。
 災害公営住宅への入居者においては、令和3年1月から収入要件が適用されることになりました。また、入居者のうち収入基準を超過した入居者の中には、将来に不安を感じている方もいらっしゃいます。また、空き室数が増加していけば、引き続き災害公営住宅で暮らし続けようと考えている方も、不安を覚えるのは当然のことだと思います。
 入居されている方の退去による災害公営住宅の入居率の低下を防ぎ、コミュニティーを守っていく必要があると考えますが、災害公営住宅の空き室の解消に向けた取り組みについてお伺いいたします。
 次に、被災地の人口減少対策について伺います。
 震災後10年が経過し、沿岸部被災地の人口は大きく減少いたしました。これまで、移転した人口を取り戻そうとさまざまな取り組みがされております。一方、岩手県ふるさと振興総合戦略の第2期が始まり1年余りが経過しました。本県の社会減ゼロや出生率の向上を図り、人口減少に歯どめをかけていくために、ふるさと振興の取り組みをより一層強化していく必要があります。
 私は、まちの活力の源、その一つは人口であると考えます。基本は人であります。産業もまちの活性化も、人が集まって生み出されるものであります。
 被災地の復興に当たって、これからの10年は、被災地に人を取り戻す、活力を取り戻す取り組みが大きなものと思います。一方で、これまで取り組んできた人口減少対策は、十分に効果を上げてきたとお考えでしょうか。また、あわせて、これからの人口減少対策の強化の方向性についてどのように考えているか、知事の御所見をお伺いいたします。
 県内各市町村において、移住、定住の取り組みが行われております。若い方が地域社会の仲間に加わり、ともに生活していくことは、地域を明るくし、未来へ希望をつないでくれるものと思います。このような明るい動きが県内全体に広がっていくことを期待するものであります。
 県では、いわて暮らしサポートセンターや岩手県U・Iターンセンターなどで岩手県への移住や就職を希望する方の相談に応じているところですが、コロナ禍での相談の状況と被災地への移住、定住に取り組む市町村や団体への支援について、どのように取り組んでいくのかお伺いいたします。
 次に、本県の組織では県北・沿岸振興室を設けており、県北・沿岸振興というフレーズは、かなり以前からうたわれております。しかしながら、その成果は乏しいのではないかと感じております。特に、被災した沿岸地域は、東日本大震災津波から10年が過ぎ、住宅再建が進み、まちづくりも相応に進展し、高速交通網なども整備され、生活環境は整いつつありますが、震災後の転出などによって人口減少や少子高齢化が顕著となり、主力産業である水産業の不振、コロナ禍による観光客の激減などによって、地域の社会経済情勢は厳しい状況が続いております。
 沿岸地域の振興を進める上での課題、そして振興策についてお示し願います。そしてまた、市町村への財政的な支援の拡大も必要と考えますが、いかがでしょうか。
 次に、東日本大震災津波から10年、三陸沿岸道路の整備が今年度内に完了し、復興道路として整備された岩手県内359キロメートルが、いよいよ全線開通することになります。沿岸各都市間、内陸部と沿岸部の所要時間が大幅に短縮されることになります。
 コロナ禍の現在、人の流れはとまり、観光需要は激減しておりますが、新型コロナウイルス感染症が収束すれば、再び観光需要は大きく回復すると考えます。その機を捉え、積極的に観光振興策を推進していくべきであると考えます。
 復興道路が全線開通することにより、これまでにない広域周遊観光が可能となります。岩手県には、世界遺産である平泉、橋野鉄鉱山に加え、一戸町の御所野遺跡も間もなく正式に登録されることとなります。また、被災地の震災遺構や内陸部の観光地を結ぶ観光ルートの設定など、さまざまな可能性が広がっていくものと考えます。
 三陸沿岸道路の全線開通を見据え、県内広域観光ルートを整備していくべきと考えますが、本県の観光振興にどのように取り組んでいくのかお伺いいたします。
 次に、コロナ禍における復興の推進について伺います。
 新型コロナウイルス感染症は、被災地の復興の完遂にも影を落としております。被災地のハード整備は進みましたが、防潮堤など海岸保全施設はおよそ9割まで整備が進み、令和2年12月をもって災害公営住宅の整備は全て完了し、応急仮設住宅は、令和3年3月をもって供与を終了しております。
 令和3年東日本大震災津波からの復興に関する県民意識調査では、54.7%の方が県全体の復旧、復興が進んだと感じていると回答しております。しかし、なりわいの再生や被災者の心のケアなど一人一人の心の復興については、まだ道半ばであり、復興の完遂にはほど遠いのではないでしょうか。
 引き続き支援を継続していく必要がありますが、それに加えて、新型コロナウイルス感染症の影響により、今は、人の流れは停止し、他地域との交流や経済活動も著しく停滞しております。被災地だけの話ではないかもしれませんが、皆、苦しみ、救いの手を求めております。
 コロナ禍の中で被災地の復興をどのように推進していくべきか、知事の御所見をお伺いいたします。
 次に、国土強靱化と道路交通ネットワークの整備について伺います。
 近年の気候変動に伴い、災害は激甚化、頻発化する一方、インフラの老朽化が進んでおります。令和3年度から防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策の取り組みが始まりましたが、広大な県土を有する岩手県内には、まだまだ改善を要する危険な箇所が多くあります。
 災害に強く信頼性の高い道路ネットワークの構築や落石、崩落の危険のあるのり面の対策、橋梁の耐震補強、河川改修等の治水対策を着実に行い、その対策を急ぐ必要があります。
 国の令和2年度第3次補正予算では、東北地方整備局の公表資料によれば、本県配分額は358億5、500万円と東北6県で最も多く配分していただいております。令和4年度以降も引き続き事業費の確保を国に強く要望していく必要があると思います。事業の計画的な推進と公共事業予算の確保について県のお考えをお伺いいたします。
 次に、内陸部を結ぶ道路ネットワークについて伺います。
 三陸沿岸道路や宮古盛岡横断道路の整備は進みましたが、沿岸部の中でも気仙地区の道路ネットワークの整備は取り残された感があります。宮守インターチェンジから気仙地域への道路ネットワークが整備されれば、沿岸部と県央部とのアクセスが改善し、大船渡港などから県央部への物流機能が大きく向上すると考えております。
 特に、白石峠は、トンネルの幅員が狭くカーブしているため、コンテナ運搬車などの大型車両同士のすれ違いに大きく支障があるほか、急勾配もあるため、大型の物流車両等にとって通行の難所となっております。この白石峠が整備されれば、道路ネットワークの強化につながると思いますが、白石峠地区の今後の事業化の見通しについてお伺いいたします。
 次に、ILCを見据えた新笹ノ田トンネルの整備についてお伺いいたします。
 国道343号は、平成31年4月に国土交通省から重要物流道路制度の代替、補完路と位置づけられ、沿岸部と内陸部をつなぐ道路として、平常時、災害時を問わず安定した輸送が求められる重要な路線であるほか、産業振興や交流人口の拡大に不可欠な路線となっております。
 しかし、笹ノ田峠付近は、幅員が狭く急勾配であり、急カーブと交通の難所となっており、新笹ノ田トンネルの整備は、沿岸自治体住民にとっては悲願の道路であります。また、ILC建設の際には、港湾から資機材を搬入するための重要な役割を果たす道路となることは明らかであり、建設に向け、今から着実に国道343号の難所を解消していく必要があると考えます。
 世界の主要な加速器研究所の所長等でつくる国際将来加速器委員会が昨年8月に設置したILC国際推進チームは、本年6月1日にILC準備研究所提案書を公開しました。これによりILCの国際推進チームは、日本における国際リニアコライダー実現に向けて、さらなる一歩を踏み出したということでございます。
 日本政府に対し地元の意気込みを示し、政府の決断を促す意味でも、新笹ノ田トンネルを整備し、国道343号の抜本改良を行う必要があると考えますが、県の御所見を伺います。
 次に、第1次産業の振興について伺います。
 近年の海洋環境の変化等によるものか、主要魚種の秋サケを初め、サンマ、スルメイカ等の不漁に加え、アワビの漁獲減、ホタテガイの麻痺性貝毒による出荷規制が長期化するなど、沿岸部の基幹産業である漁業、水産業は非常に厳しい状況が続いております。
 各漁港で話を聞いておりますが、異口同音に厳しいとの声が返ってきますし、漁業協同組合からの聞き取りでも、令和元年度と2年度における秋サケの記録的な不漁は、経営に大きな影響を与えており、秋サケ資源の回復は、まさに喫緊の課題であると考えます。
 加えて、東日本大震災津波から10年目の節目を迎え、これまで漁業協同組合が経営再建のため系統金融機関から借り入れた資金の償還も順調に行われてきたと伺っていますが、近年の秋サケ等の主要魚種の不漁や販売手数料の減少等により、今後、漁業協同組合の財務状況が悪化することが懸念されております。このような状況が今後も続くようであれば、漁業協同組合自体の経営に深刻な影響を及ぼすおそれがあります。
 そこで、近年の海洋環境の変化を踏まえ、特に秋サケの資源回復に向けたこれまでの取り組みと今後の対応についてお伺いいたします。あわせて、現在の漁業協同組合の経営状況を県はどのように捉え、漁業協同組合の経営課題に対する県の取り組みや経営改善に向けた支援について、どのように考えているかお伺いいたします。
 一方、秋サケの不漁が続く中、本県においては、サケ、マスの養殖に活路を見出し、平成31年の久慈市を皮切りに、宮古市、大槌町、釜石市の計4市町で海面養殖試験に取り組まれております。
 私は、秋サケ資源回復に向けた取り組みに加え、安定的な漁業収入の確保に向けて、まさにサーモンの養殖をこれから推進していくべきと考えます。一方で、これまでの経緯や他の養殖を営む事業者との調整など、さまざまな課題があることも承知しております。
 サーモンの養殖について、これまでの取り組みの現状と今後の見通しについて県の御所見をお伺いいたします。
 次に、水産業の基盤である漁港は東日本大震災津波による甚大な被害を受けましたが、岩手県や市町村等の尽力により漁港の復旧は完了し、震災前と同様に漁業活動が可能となりました。今後は、これまでに整備された漁港施設を最大限に活用していくことが重要であると考えております。
 本県沿岸地域は、三陸沿岸道路を含む復興道路がほぼ完成したことにより、県内はもとより県外からのアクセスが大幅に向上するなど、交流人口の拡大が大いに期待されております。このため、漁港については、水産業の基盤として本来の機能向上を図ることに加え、地元で漁獲された新鮮な水産物を提供する直売所等の設置やイベントや祭り等の開催の場として利用するなど、地元市町村や漁協等と手を組みながら、漁港を観光資源として積極的に活用するなど、交流人口の増加へつながる取り組みを進めていくことが必要ではないかと考えております。
 ついては、沿岸地域での水産振興や地域振興に資する漁港の有効活用について、これまでの県の取り組み状況と、今後どのような取り組みを行おうとしているのかお伺いいたします。
 次に、藻場の再生について伺います。
 藻場は、魚や貝のすみか、産卵の場となっております。近年、磯焼けによりワカメや昆布などの海藻が育たなくなったり、ワカメや昆布を餌とするアワビの成長が悪い状況が続いております。一方、北海道の増毛町などで、鉄分の豊富な鉄鋼スラグに人工の腐植土をまぜて海岸に埋設し、海藻に不足する鉄分を供給し、昆布などの海藻資源を再生する取り組みなどが行われていると聞いております。
 また、県内の海域において海藻の種苗の供給を行った事例の中で、大量のウニに食い荒らされ、なかなか藻場の再生が困難となったところもありますが、一方で、海藻を食い荒らすウニを駆除して蓄養し、ウニの身入りを回復させて商品とするという取り組みもなされているところです。
 藻場を再生することによりアワビなど磯根資源の回復も可能になります。藻場の再生は、漁業者にとって喫緊の課題であります。県の藻場の再生に向けた取り組みの状況についてお伺いいたします。
 総じて、農林水産業全般において、生産現場の労働力不足が深刻な状況になっております。漁業の現場では、養殖されたカキの1次処理に従事するいわゆるむき子や、定置網漁船の乗組員などが不足している状況にあります。本県の漁業を持続的に発展させるためには、新規就業者を安定的に確保し、作業手順や経営のノウハウを習熟させながら、将来の漁業担い手に育て上げるような取り組みが求められます。
 また、近年の本県沿岸部の人口減少は、内陸部より速いスピードで進行しており、地元で新規就業者を募集してもなかなか集まらない状況にあり、地域内や県内にとどまらず、地域外や県外からの希望者を積極的に掘り起こして、受け入れる対策が必要であります。
 このような状況を踏まえ、岩手県では、漁業生産の現場を支える就業者を確保し、将来の担い手として育成することをどのように進めようとしているのかお尋ねいたします。
 次に、地域医療と福祉について、特に医療人材や訪問看護人材の確保について伺います。
 沿岸部では、医師や看護師などの医療人材が不足し、医療サービスへのアクセスが十分でなく、また、訪問看護等の福祉サービスにも支障がある状況であります。限られた医療人材の中で、新型コロナウイルス感染症患者の受け入れやワクチン接種により、ますます業務は逼迫しております。
 県立病院はと言えば、常勤医師のいる科が少なく、内陸の病院を受診せざるを得ないのが現状であります。また、県立高田病院は、訪問診療に力を入れていますが、医療人材や訪問看護人材の不足により、必要な医療サービスの提供が困難となっていることに悩まされております。
 福祉関係者から、医療と福祉の連携を進めていくべきだが、気仙地域では、ゆとりを持って在宅医療をサポートできる人材的余裕がないという悲痛な訴えが私のところにも届いております。訪問看護総合支援センターの設置を目指す動きもありますが、医療人材の不足によりなかなか進まないという声も聞いております。
 内陸部と沿岸部では、医療を受ける環境に大きな格差があり過ぎます。医療サービスを受けるために何時間もかけて内陸部や他の地域まで通院しなければならない状況にあります。高齢化がますます進む中で、若い人たちが被災地でも安心して暮らしていける条件には、医療の充実も必ず入っております。
 そこで、医療や訪問看護人材の確保に向けた県の取り組みの状況についてお伺いいたします。
 最後に、公共交通の確保について伺います。
 先ほど申し上げましたが、内陸部と沿岸部の医療サービスの偏在により、診療科目によっては、内陸部の病院、例えば盛岡市の県立中央病院や矢巾町の岩手医科大学附属病院まで通院することが必要になる場合があります。一方で、令和2年の岩手県における65歳以上の方の運転免許証の自主返納者数は4、796人となっております。高齢者にとっては、内陸部の病院に通院するのも大変な状況にあります。さらに、運転免許証を返納した高齢者にとって、沿岸部と内陸部の都市間をつなぐ公共交通機関に頼らざるを得ない場合もあります。
 また、新型コロナウイルス感染症の影響による外出自粛等により、バス事業の運賃収入が大幅に減少しているなど、高齢者の通院の貴重な交通手段であるバス路線をいかに維持していくかが、大きな課題となっています。
 そこで、岩手県内の広域バス路線の接続の現状と今後の路線の維持に向けた県の取り組みについて、お伺いいたします。
 また、地域内交通の確保についてでありますが、地域の公共交通は、利用者の減少、路線の収支悪化、サービス水準の低下、利用者の減少という負の連鎖により、利用者の少ない路線が増加する状況にあります。このような中、市町村では、地域内の交通を維持し、地域住民の利便性を向上させるため、コミュニティーバスやデマンドバスの運行など、さまざまな取り組みを行っているところです。
 そこで、これらの地域内交通の確保に取り組む市町村に対する県の支援の状況についてお伺いいたします。
 以上で質問は終わります。答弁次第では再質問とさせていただきます。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 佐々木茂光議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、東日本大震災津波の被災者に対するメッセージ等についてでありますが、震災から10年、これまで、犠牲になった方々の果たせなかった思いを引き継ぎ、県民が、未来のために力を合わせて、よりよい地域を創造し築いていくことに一丸となって取り組んでまいりました。
 その結果、被災した公立学校や漁港の復旧、復興まちづくりの面整備や災害公営住宅の整備など、計画された復興事業の多くは完了し、いのちを守り海と大地と共に生きるふるさと岩手・三陸の創造という復興の目指す姿を実感できる場所や機会はふえてまいりました。一方で、被災者の心のケア、新たなコミュニティーの形成支援、なりわいの再生などの中長期的な課題もあり、引き続き取り組んでいく必要があります。
 これまで、全国から駆けつけていただいた自衛隊や消防、警察の方々による活動、ボランティアや企業などによる生活再建やなりわい再生への支援、また、海外からは多くの義援金のほか、鉄道や施設の復旧支援、被災地の子供たちとの交流などをしていただき、国内外の方々とのきずなや人と人が支え合うことの大切さを実感しました。
 このようなつながりを大切にしながら、犠牲となったお一人お一人のふるさとへの思いを継承し、引き続き復興の取り組みを進めるとともに、国連の持続可能な開発目標SDGsの理念のもと、誰ひとり取り残さないように、被災者一人一人の復興に力を尽くしてまいります。
 次に、被災地の人口減少対策についてでありますが、沿岸被災地の復興の推進は、人口減少対策でもあると考え、よりよい復興、ビルド・バック・ベターの実現に向け、復興まちづくりなどの安全の確保、住宅や雇用の確保などの暮らしの再建、水産業、商工業などのなりわいの再生に取り組んでまいりました。
 その結果、復興道路や港湾の整備により、企業立地の進展やコンテナ取扱貨物量の拡大が図られるなど、復興のハード整備の波及効果があらわれているほか、大型商業施設の開業や被災事業所の再開も進んでいます。
 また、東日本大震災津波伝承館いわてTSUNAMIメモリアルや三陸ジオパークを生かした観光誘客、三陸の豊かな食材、食文化の情報発信や大型イベントの開催を市町村や関係団体と連携して実施するなど、交流人口の拡大に向けた取り組みが着実に進んできたと認識しております。
 県では、今後とも、復興の取り組みにより大きく進展した交通ネットワークや港湾機能を活用した企業誘致、産業振興を進めるとともに、三陸地域の多様な魅力を発信し、国内外との交流を活性化していくほか、U・Iターンを希望する方々に対する就業や移住経費の支援など、移住、定住の促進の取り組みを強化し、持続的に発展する地域の創造を目指してまいります。
 次に、コロナ禍における復興の推進についてでありますが、復興途上にある被災地において、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、例えば、観光入り込み客数の大幅な落ち込みや、会食の自粛等により、観光、飲食、運輸、サービス業など幅広い事業者に大きな減収が生じていること、県外の業者との打ち合わせができないなどの理由により、グループ補助金の交付決定を受けた被災事業者の工事のおくれが生じていること、災害公営住宅などでの生活支援相談員等の訪問活動や対面での交流活動に制約が生じていることなど、さまざまな影響が生じています。
 これまで、昨年度から数次にわたって補正予算を編成し、売り上げが減少している中小企業等への支援金の支給や資金繰りに対する支援、旅行代金の割引や買うなら岩手のもの運動などの消費喚起策を講じてきたほか、さきに実施した令和4年度政府予算提言・要望においては、工事のおくれが生じている被災事業者が、令和4年度以降もグループ補助金を活用できるよう、必要な予算措置について要望したところであります。
 また、生活支援相談員がコミュニティー支援や訪問支援を行う際に、感染防止策を講じながら活動できるよう、マニュアルを作成し、活用を促してまいりました。
 コロナ禍においては、県民一人一人の命と健康を守ることを最優先に、必要な感染症対策を講じながら社会経済活動を支援して、新しい働き方、暮らし、学びを進めることが重要であり、そのことが、被災地においては東日本大震災津波からの復興につながっていくものと考えており、復興が一日も早くなし遂げられるよう、引き続き取り組んでまいります。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔復興防災部長戸舘弘幸君登壇〕
〇復興防災部長(戸舘弘幸君) 被災跡地の利活用についてでありますが、移転元地やかさ上げされた造成地などの被災跡地は、沿岸部において貴重な平地であり、地域産業の再生や住民の暮らしの向上を図るための重要な地域資源であることから、これを有効に利活用することが重要と認識しています。
 移転元地については、これまで県は、市町村に対し活用事例や各種施策の情報を提供するとともに、津波立地補助金や復興特区税制などの活用を促してきたところでありまして、周年型の栽培施設や農業テーマパーク、食品製造工場などの立地が進んでいます。
 また、かさ上げされた造成地については、まちなか再生計画の策定を支援するとともに、津波立地補助金の活用を促してきたところであり、山田町のオール、釜石市のうのポート、大船渡市のキャッセン大船渡、陸前高田市のアバッセたかたといった大型商業施設などが整備され、約52ヘクタールの土地活用とまちなかのにぎわい創出が実現しています。
 今後に向けては、令和4年度政府予算提言・要望におきまして、移転元地の集約や整地に要する費用への支援や、移転元地への産業施設の整備を促進するための復興特区税制や津波立地補助金などの継続、拡充を要望したところであります。
 また、今年度は、新たに復興庁が行う土地活用ハンズオン支援事業に県も参画し、事業採択された3市町における取り組みを支援しており、引き続き、復興庁と連携しながら、市町村における産業の振興や地域の活性化に向けて土地利活用を支援してまいります。
   〔県土整備部長中平善伸君登壇〕
〇県土整備部長(中平善伸君) まず、災害公営住宅の空き室についてでありますが、災害公営住宅に入居されている被災者の方々への対応については、沿岸部の民間賃貸住宅が不足していることに鑑み、世帯収入が基準を超過した場合でも、引き続き入居していただくことを可能とする取り扱いとしているところです。
 災害公営住宅の入居率の向上を図る対応については、被災者以外の方を対象とした募集を開始しており、沿岸地区においては令和2年7月から、盛岡地区を除く内陸部においては本年5月から開始したところです。
 また、入居時期については、これまで年数回の定期的な募集をしていたところですが、本年7月からは、入居の状況を踏まえ、いつでも入居を受け付けることとしたところです。
 今後は、これらの効果を踏まえつつ、入居者のニーズや市町村の意見を聞きながら、災害公営住宅の空き室の解消に向けた取り組みの検討を進めてまいります。
 次に、国土強靱化についてですが、近年、激甚化、頻発化する自然災害から県民の安全・安心な暮らしを守るため、社会資本を整備し、適切に維持管理を図ることが重要と考えております。
 このため県では、昨年12月に第2期岩手県国土強靱化地域計画を、また、昨年度末までに岩手県公共施設等総合管理計画に基づく全ての分野の個別施設計画を策定し、これらの計画に基づき、住田町成沢地区の砂防堰堤整備を初めとする防災、減災対策や河川や道路等の老朽化対策を5か年加速化対策の国費等を最大限活用して推進しているところであります。
 これらの取り組みを着実に進めていくためには、公共事業予算の安定的な確保が重要でありますことから、今月17日に実施した令和4年度政府予算等に関する提言・要望において、防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策について、必要な予算を当初予算において別枠で確保するよう要望したところです。
 今後も、さまざまな機会を捉え、国に強く働きかけるなど、公共事業予算の安定的、持続的な確保に努めてまいります。
 次に、内陸部と沿岸部を結ぶ道路ネットワークについてでありますが、大船渡市から宮守インターチェンジ間の国道107号は、重要港湾大船渡港とものづくり産業が集積する内陸部を結び、産業振興を支える上で重要な路線と認識しております。
 このうち大船渡市と住田町間の白石峠地区は、白石トンネルの前後が急勾配や急カーブとなっていることに加え、トンネル内の幅員が狭いなど、港湾を利用する大型車等にとって走行上の課題が多いことから、円滑な物流の確保を図るため、トンネルを含めた新たな道路を計画したところです。
 去る6月8日には、事業化に必要な手続である公共事業の事前評価について、岩手県大規模公共事業評価専門委員会に諮問したところであり、今後の委員会の審議の中で事業の必要性や重要性等に理解が得られるよう、計画の実現に向けて引き続き取り組んでまいります。
 次に、ILCを見据えた新笹ノ田トンネルの整備についてですが、国道343号は、沿岸地域の復興や県民の安全・安心な生活、観光振興等を支え、ILCを推進する上でも重要な位置づけを持つ路線と認識しており、本年3月には渋民バイパスの開通を図ったところです。
 また、6月には、地域の将来像を踏まえた広域的な道路交通の方向性などを定める新たな広域道路ネットワーク計画を策定したところであり、この計画の中で国道343号を一般広域道路として位置づけ、気仙地域と県南地区の拠点都市間の連絡強化を図る路線としました。
 笹ノ田峠に新たなトンネルを整備することについては、安定的な事業予算の確保が課題となるとともに、事業効果などを確認することが必要であると考えているところでありますが、今回のこの計画への位置づけを踏まえつつ、ILCの実現に向けた取り組みの進展、特に、ILC関連施設の立地場所や規模、これら施設へのアクセスルートなどの検討状況を重視してまいります。
   〔商工労働観光部長岩渕伸也君登壇〕
〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) まず、移住、定住の取り組みについてでありますが、令和2年度の移住相談件数は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う緊急事態宣言や、全国規模のイベントの中止などの影響で一時的に大幅な減少となったものの、7月以降増加に転じております。
 また、被災地を初めとした本県への移住、定住の促進に当たり、市町村とは、首都圏に設置している移住相談窓口と市町村における一元的な相談窓口である岩手県移住コーディネーターとの連携強化を図っているほか、移住相談会やセミナーなどを連携して開催しております。
 さらに、NPO等に対しては、移住者との交流、移住に関する連絡会議や移住促進に関する勉強会の開催といった移住の受け入れ環境の整備を行う場合に要する経費の補助を行っております。
 今後とも、市町村やNPOとの連携を一層強化し、被災地への移住、定住を推進してまいります。
 次に、広域観光の推進についてでありますが、三陸沿岸道路の整備が進み、例えば、陸前高田市から宮古市までの移動時間が1時間強となり、より広域的な周遊観光が可能となったことから、首都圏や仙台圏から多くの人が訪れている東日本大震災津波伝承館を起点として、釜石市の橋野鉄鉱山や鵜住居復興スタジアム、さらには、宮古市の浄土ケ浜などを組み合わせた周遊コースの設定や、バスツアーの運行支援などに取り組んでいるところです。
 また、三陸と内陸を結ぶ横断道路の整備も進んだことにより、さらに多様なニーズに対応した観光ルートの設定が可能となっており、食、自然、体験などの観光コンテンツのさらなる発掘や磨き上げを行い、より広く周遊し、より長く滞在し、より深く体験できる広域観光を推進してまいります。
   〔ふるさと振興部長熊谷泰樹君登壇〕
〇ふるさと振興部長(熊谷泰樹君) まず、沿岸振興方策等についてでありますが、東日本大震災津波の発生から10年が経過し、復興需要の減少や全県と比べ進行する人口減少と高齢化を見据え、持続的に発展する沿岸地域の創造に向けて取り組んでいくことが重要と認識しております。
 これまで沿岸被災地では、復興まちづくりの面整備、新しい交通ネットワークや漁業生産基盤の整備などハード整備が着実に進んできたところであり、この復興の取り組みにより大きく進展した交通ネットワーク等を生かした地域産業の振興を図るとともに、三陸地域の多様な魅力の発信による国内外との交流を活発化することに取り組んでおります。
 今後におきましては、震災学習列車を初めとした三陸鉄道の企画列車の運行、ジオパークを活用したフォトロゲイニングの開催、三陸の食の振興を図る三陸国際ガストロノミー会議など、三陸の地域資源を生かした魅力ある事業を展開するとともに、サケ、マス類の海面養殖やウニの効率的な蓄養手法の確立などの取り組みにより、地域経済の活性化を図ってまいります。
 また、沿岸市町村等を構成員とする三陸振興協議会において、市町村のニーズや課題を共有しながら沿岸振興に向けた取り組みを連携して進めるとともに、地域経営推進費の三陸防災復興プロジェクト枠を積極的に活用するなど、市町村の支援に取り組んでまいります。
 次に、広域バス路線の維持についてでありますが、令和2年度の補助対象広域バス路線は、国庫、県単合わせて54路線となっているところでございます。また、沿岸部と内陸部を結ぶ広域バス路線は、大船渡市と盛岡市を運行する大船渡盛岡線、二戸市と久慈市を運行する二戸久慈線など、補助対象と対象外合わせて8路線となっており、このうち6路線が、岩手医科大学附属病院や県立病院への通院等の乗り継ぎ拠点である盛岡駅に接続しています。
 バス路線の維持のための取り組みについては、県ではこれまで、国や市町村と連携し運行欠損額に対して補助を行ってきたところでございます。また、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、令和2年度の国庫、県単補助路線につきまして、補助要件を緩和する等の特例措置を講じるとともに、補助対象外路線を運行するバス車両も対象とした運行支援交付金を交付したところです。
 今年度におきましても、運行支援交付金に係る予算案を本定例会に提案させていただいております。
 今後も引き続き、市町村や公共交通事業者とも連携しながら、免許返納者や高齢者等の通院や買い物等の移動手段の確保が図られるよう、これらバス路線の維持、確保に向けた取り組みを進めてまいります。
 次に、地域内交通の確保に取り組む市町村への支援についてでございますが、県では、市町村がコミュニティーバスやデマンド交通の実証運行等を行う場合に、地域公共交通活性化推進事業費補助により支援を行っているほか、個別の地域課題の解決に向けた助言を行う有識者の派遣などを通じて、市町村の地域公共交通体系の構築を支援しています。
 また、県や市町村で構成する地域内公共交通構築検討会におきまして、市町村が抱える課題に対する解決策等の検討を行っており、令和2年度に、補助路線から転換した代替交通の確保、維持に係る補助制度を創設したほか、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている県単補助路線について、補助要件を緩和する特例措置を講じるなど、公共交通の確保に取り組む市町村への支援を行っております。
 持続可能な交通体系を構築するためには、地域内公共交通の維持、確保が重要でありますことから、引き続き、市町村の地域内公共交通体系の構築に向けた取り組みに対して必要な支援を行ってまいります。
   〔農林水産部長佐藤隆浩君登壇〕
〇農林水産部長(佐藤隆浩君) まず、秋サケの資源回復に向けたこれまでの取り組みと今後の対応についてでありますが、これまで県では、秋サケの資源回復に向け、稚魚の生産に必要な種卵を確保するため、県下全体のふ化場や定置網漁業者と協力して定置網で漁獲されるサケを積極的に活用してきたほか、北海道など県外からの種卵の移入調整に取り組んできたところです。
 また、高い水温でも回帰する北上川水系のサケの遺伝子情報等を活用した種苗生産技術の開発に取り組むとともに、生残率が高いとされる遊泳力の高い稚魚の生産に向けて、効果的な飼育環境や生産技術の研究を積極的に進めてまいりました。
 今後は、春先の海水温の上昇の影響を受ける前に放流ができるよう、稚魚の生産開始時期を早めるほか、遊泳力の高い稚魚の生産等に向けた研究で得られた成果を順次生産現場に取り入れていくなど、引き続き、サケ資源の早期回復に全力を挙げて取り組んでまいります。
 次に、漁業協同組合の経営状況についてでありますが、各漁協では、震災以降、繰越損失金の解消など経営改善に向けた取り組みを進めてきましたが、近年の海洋環境の変化に伴う秋サケ等の主要魚種の水揚げの減少などにより、収益を十分に確保できず、県内24漁協の令和2年度の決算は、13漁協が当期損失金を計上し、全漁協の損益の合計は2億1、000万円余の損失となる見込みです。
 こうした状況を踏まえ、県や県漁連等の関係団体とで構成するJF経営指導岩手県委員会では、経営が厳しい漁協等に対して、新たに経営改善計画の策定を求めることとしており、今後、県では、委員会による計画の進捗管理などを通じて経営改善を指導していくほか、借りかえ資金を活用した場合の利子補給などの支援を行っていきます。
 なお、漁業関係団体では、コンサルタントを活用した漁協の経営環境分析を行う予定と聞いており、県としても、その分析結果を確認しながら経営改善に向けた指導、助言を行っていきます。
 また、収益の確保に向けては、漁協の主な収益源となっている定置網等の漁業自営事業の強化を促すなど、漁業関係団体と連携して、漁協経営の安定化に向け取り組みを進めてまいります。
 次に、サケ、マス類の海面養殖のこれまでの取り組みと今後の見通しについてでありますが、現在、久慈、宮古、大槌、釜石の4地区でサケ、マス類の海面養殖試験が行われており、県では、試験計画の立案段階から助言、指導を行うとともに、試験期間中は、魚病対策や漁場環境調査等の取り組みを支援してきたところです。
 今後の見通しについてでありますが、久慈、宮古、大槌地区においては、地域の漁業関係者や港湾管理者等との調整が図られたことから、令和5年度の漁業権の切りかえ時期を待たずに、本年10月に漁業権の免許を取得し、試験養殖から本格的な事業に移行する予定となっております。
 さらに、山田地区では、ことしの秋からサケ、マス類の海面養殖試験を実施する意向であり、県では、円滑に養殖試験が開始できるよう必要な助言、指導を行っているところです。
 今後も、こうした海面養殖の取り組みを他の地域に普及、拡大していくなど、本県の新しいつくり育てる漁業を積極的に推進してまいります。
 次に、漁港の有効活用についてでありますが、県ではこれまで、漁港内の静穏水域を活用したアワビ、ウニ増殖場の整備に取り組んでいるほか、修学旅行生等を対象とした漁業体験学習の場や観光船発着所などとして漁港の利用促進を図っているところであります。
 また、今年度からは、陸前高田市の広田漁港で、地元漁協が主体となった陸上水槽によるウニの蓄養が開始されるほか、大槌町の吉里吉里漁港が岩手大槌サーモン祭りの会場となるなど、地域のにぎわい創出に向けて漁港の活用が進められています。
 今後とも、新たな増養殖や交流人口の拡大に資する取り組みが漁港を核として展開されるよう、漁協等関係団体や市町村と連携を図りながら取り組んでいくなど、地域ニーズに対応した漁港の有効活用を積極的に進めてまいります。
 次に、藻場の再生についてでありますが、これまでの県の調査では、本県における磯焼けは、近年、冬場の海水温が例年よりも高目に推移したため、ウニ等が活発に活動し、この時期に発芽した昆布等が、成長前に食べ尽くされたことが要因と考えています。
 このため県では、衰退が著しい藻場の再生に向けて、ブロック投入により藻場を造成するハード対策や、その周辺の漁場で過剰なウニの間引きを行うなどのソフト対策を盛り込んだ岩手県藻場保全・創造方針を本年3月に策定したところです。
 今年度は、宮古市田老地区において、地元漁協と連携しながら藻場造成に向けて試験的にブロックを投入し、藻場の生育状況などを確認するほか、昆布の養殖技術を応用した海中林と呼ばれる昆布の森づくりなどに取り組むこととしています。
 今後とも、ハード、ソフト両面の対策を総合的に推進し、海域の状況に応じた藻場の再生がより効果的に進むよう、他県で行われている事例も参考にしながら、市町村、漁業関係団体と一丸となって取り組んでまいります。
 次に、漁業就業者の確保と将来の担い手の育成についてでありますが、県では、漁業の次代を担う意欲ある新規就業者を確保、育成するため、漁業関係団体や市町村と連携し、平成31年4月にいわて水産アカデミーを開講したところです。アカデミー研修生の募集に当たっては、県内外から広く募集するため、沿岸地区の高等学校の個別訪問やホームページ等で情報発信を行うほか、首都圏で開催される全国漁業就業支援フェアやU・Iターンフェアへの出展などに取り組んできたところであり、これまでの研修生20名の内訳は、県内出身者が13名、県外出身者が7名となっています。
 アカデミーでは、漁業指導者から直接指導を受ける現場実習を中心とした地元密着の充実したカリキュラムを提供しているほか、各市町村の漁業就業者育成協議会では、地元定着に向けた支援を行うなど地域ぐるみの取り組みが進められており、昨年度までに研修を終えた13名全員が、本県漁業の第一線で活躍しております。
 また、岩手県漁業担い手育成基金では、漁業の担い手の確保、育成に向け、児童生徒を対象とした漁業体験学習や青年漁業者グループが行う研究活動への助成のほか、アカデミー修了生の長期研修を受け入れる指導漁業者に対する経費の助成などを行っているところです。
 今後とも、こうした取り組みの充実強化を図りながら、漁業関係団体や市町村と連携して県内外から漁業就業者を確保し、将来の本県の漁業を牽引する担い手として活躍できるよう、きめ細かな支援を行っていきます。
   〔保健福祉部長野原勝君登壇〕
〇保健福祉部長(野原勝君) 医療人材の確保についてでありますが、本県の医療施設従事医師数は、平成28年の2、458人から平成30年の2、503人と45人増加している一方、県内においては、盛岡以外の医療圏が医師少数区域となっていることから、県医師確保計画に基づき、即戦力医師の招聘や奨学金による医師養成など、医師確保の取り組みを進めているところであります。
 このうち奨学金養成医師については、平成28年度の配置開始以来、年々増加し、今年度当初には104名が公的病院等に配置されており、そのうち沿岸、県北地域には45名と、沿岸地域等への配置割合も年々増加しています。
 令和3年度に義務履行を開始する養成医師から沿岸地域等への配置を必須化しており、今後さらに沿岸地域等への配置人数の拡大が見込まれることから、県内の地域偏在の状況は解消に向かうものと考えております。
 訪問看護人材の確保については、看護職員修学資金の貸し付けなどにより、訪問看護人材を含む看護職員の確保に努めてきたことなどにより、平成28年度には375人であった県内の訪問看護従事者数は、令和元年度には518人となるなど、年々増加傾向にあります。
 また、岩手県看護協会の協力を得ながら作成した訪問看護人材育成プログラムを活用するなど、新卒から訪問看護師として育成できる環境を整備し、訪問看護人材の確保に努めているところです。
〇35番(佐々木茂光君) 答弁ありがとうございました。それでは、何点か再質問をさせていただきたいと思います。
 知事からは、東日本大震災津波から10年ということで、実際、現場の話だけなのです。これは常々言っていることですが、復興が終わったときにどのような形になっていれば、本当の復興というものが完遂したという状況になるのか、知事から発してもらいたいと思います。
 そもそも予算立ての中では復興完遂という言葉を使って、もう5年ぐらいになります。現場でのおくれは、そのときそのときの状況によってあるので、何でもそうですが、おくれた分をどのぐらいのスピードで取り戻すかということです。私たちが期待するところは、本当に復興が終わったときの姿というのが一日でも早く来てくれという思いで皆さん生活しているわけで、その辺の被災地の取り組み等に対し、期待する言葉というものをメッセージとしてかけていただきたいのであります。
 今、またコロナ禍ということで、まさに目に見えないものに取りつかれているような状況の中で、復興そのものの状況も今、少し消えてきているのではないかと心配するわけであります。
 こういう考えになっていきますと、復興と新型コロナウイルス感染症の収束―新型コロナウイルス感染症の場合、収束という言葉がいいのかですけれど、そのような状況になったときに、今度はいろいろ経済を回復する人の動きも出てくる。今、岩手県では、その動きをとれる準備がに取り組んでいるのか、その辺も知事からお話をいただければと思います。
 これは、やはり復興と、コロナ禍が明けることによってどう動いていくのか、どういう方向に向かって動き出せるのか。それはある意味、すぐ動かないと、またこれだけ弱った岩手県をもとに戻せなくなる。だから、コロナ禍が明けると同時に、まちの経済をこういう形で回す、人の動きもこういう形で回すというものを明確にして県民にお示しする必要があるのではないかと思うのでありまして、その辺を1点、知事から御所見をいただきたいと思います。
 それから、これはいつもする話ですが、新笹ノ田トンネル―トンネルと言っていいのかというところでありますけれども、このごろのILCの取り組みでは、関係する研究者の方を含めて、その人たちが、国に出向き、自分達でまとめた報告書を提示するところまで来ているということです。まさに、最後は国の判断をお願いするというところまで来ていると承知しておりますが、この期に及んで、これからまた条件をそろえてから事業をするというのはいかがなものかと思います。
 要するに、受け取る側としては、岩手県としてやるという姿勢が岩手県としての強いメッセージになるのではないかと思うのですが、これはILCの所管部局に、どのように県土整備部とのかかわり、道路整備とのかかわりがあるか考え方をお聞きします。
 やはりこれは県土整備部だけの問題ではないので、知事にその辺もお尋ねしたいと思います。
 それから、第1次産業の中でも漁業について、主力魚種の秋サケから始まって、あらゆる産物で不漁な状況が続いている。その中で、農林水産部長の答弁では、単位漁協を含め漁業関係者の経営が非常に思わしくなくなってきていることを、半ば承知しているということであります。
 沿岸部は東日本大震災津波でかなりのダメージを受けて、そしてまた動き出して、10年になるところで、新たに新型コロナウイルス感染症という見えないものに追われたような形の中でも、今まで漁業を支えてきたというところを捉えて、しっかりと立ち上がるよう、支えるということが本当に大事ではないかと思うのです。
 改めて、その辺の支援のあり方について、どういった観点に立って支援をするのかということが重要であり、漁業者や関係する方々と膝詰めした中で、余り苦労をかけないような形で支援をしていただきたいと思うので、その辺についても御答弁をいただきたいと思います。
 それからもう一点は、新型コロナウイルスワクチン接種の集団接種会場は、既に設置され、動いているようですが、内陸部に3カ所になるのです。私は、なぜ沿岸部に集団接種会場が設けられなかったのかと思うのです。それぞれ業界、各団体ごとの取り組みということに力を入れているようでありますけれど、収束させていくということは、当然沿岸部や郡部は他県に隣接しているわけです。それでいて人も少ないのですね。新型コロナウイルスワクチン接種を加速化させていく意味でも、沿岸部、それから郡部等に集団接種会場を設置して、今以上に新型コロナウイルスワクチンの接種を進めていくという取り組みも必要ではないかと思いますが、この辺の考え方、取り組み方について御質問させていただきます。
 先ほど公共交通ということで、岩手医科大学附属病院が矢巾町に移転したことによって、沿岸部から盛岡市の岩手医科大学附属病院に来られていた方々にとって、病院に行くということはかなり労力が必要になることなのです。沿岸地域から盛岡駅まで来て、盛岡駅で乗りかえて矢巾町の岩手医科大学附属病院に行くというお話でしたが、それを、今度は矢巾町の岩手医科大学附属病院を経由するような形で盛岡市に入ってくるような路線もつくらなければならないのではないかと思いますが、その辺もあわせて検討されているのか、お尋ねしたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 新型コロナウイルス感染症が収束し、そして復興が終わったときの岩手県沿岸地域の姿ということでありますが、おととし、県では三陸防災復興プロジェクト2019、そしてラグビーワールドカップ2019日本大会岩手・釜石開催に取り組んできたところであります。この一連の流れにより、復興道路や各市町村の中にできた新たなにぎわい、そして三陸鉄道など、復興の成果を生かしながら、将来、岩手でどのようなことができるかをいろいろ試しにやってみようということで、宮古市に岩手県内のお祭りが集まっていわて絆まつりをやるとか、釜石市に、首都圏の先端的な演劇人や有名俳優が来て、いわて絆まつりと同じ日の夜に宮沢賢治の作品を題材にしたオペラをやる、それを宮古市に行った人が釜石市に見に行って間に合うということがありました。そして、食のイベントや三陸ジオパークを活用したイベントなど、新たな交通ネットワークを活用して、地域資源の活用や交流人口、関係人口の増大といったことを、沿岸全市町村はもちろん、オール岩手を巻き込み、かつ全国各地ともつながりながら行っていく。
 先ほどの答弁で、いのちを守り海と大地と共に生きるふるさと岩手・三陸の創造という復興の目指す姿を実感できる場所や機会はふえてきたと申し上げましたけれど、そういうところをおととしの一連の事業の中で体験、経験していただけたのではないかと思っております。
 ちなみに、三陸防災復興プロジェクト2019の成果は、そのまま県民計画の三陸復興ゾーンプロジェクトなど計画の中にも盛り込まれ、今も取り組んでいるところであります。
 そして、国道343号とILCとの関係につきましては、先ほど県土整備部長から答弁がありましたように、新たな広域道路ネットワーク計画の中で国道343号が一般広域道路として位置づけられたところであります。これが重大なことでありまして、これを踏まえつつ、ILC関連施設の立地場所や規模、これら施設へのアクセスルートなどの検討状況を注視していくということであります。
〇農林水産部長(佐藤隆浩君) 水産業の関係でございます。東日本大震災津波で大きなダメージを受け、そして新型コロナウイルス感染症の関係、そして最近の主要魚種の不漁ということで、第1次産業、特に水産業は非常に大きなダメージを受けていると思っております。
 県といたしましては、三つの大きな柱を持って取り組みを進めていきたいと考えておりまして、その一つ目が、主要魚種の資源回復、こちらは、先ほど来お話しさせていただいておりますが、サケの資源回復に向けた取り組みでございます。それから、二つ目が、増加している資源の有効活用、これはマイワシなどがどんどん来ているということでございますので、こういったものの有効活用。それから、新たな漁業、養殖業の導入、サケ、マス類の養殖。これを基本の大きな三つの柱として取り組んでおります。
 現場のニーズとこれらが全然乖離しているということであれば意味がないということがありますので、やはりできるだけ現場に足を運んで、漁業者、漁協の方、それから漁協の組合長とか、いろいろな方の現場の生の声を拾って、求められている方向が何か、県としてやっていこうとしている方向が乖離していないかというところをきちんと酌み取りながら、現場の状況に求められるニーズに対応するよう丁寧に取り組んで、少しでも早く浜に漁業の現場の活気が戻るような取り組みを進めてまいりたいと考えております。
〇保健福祉部長(野原勝君) ワクチン接種について御質問いただきました。県では、新型コロナウイルスワクチンの高齢者向け接種の加速化を図るため、県が実施主体となる集団接種会場を6月19日から設置しているところでありますが、その設置場所については、議員から御紹介いただきましたとおり、特に接種対象者が多い盛岡地域及び県南地域の2カ所、3会場としたところでございます。
 この設置地域以外につきましては、各市町村の状況に応じた接種体制の強化を図るために、6月1日に県で設置いたしましたワクチン接種市町村支援チームによりまして、医師会や各地区の県立病院等と連携した医療従事者の広域的な派遣調整による支援を実施しているところでありまして、沿岸市町村の集団接種会場への派遣も行っております。
 こうした取り組みによりまして、沿岸地域におきましても、各市町村、そして地域の医療関係者の御努力もありまして、7月末までに高齢者接種の終了が見込まれているところであります。
 今後におきましても、医療従事者の広域的な派遣調整などを継続しながら、沿岸地域を初めとする県内の市町村の接種の支援に取り組んでまいりたいと考えております。
〇ふるさと振興部長(熊谷泰樹君) これまで、岩手医科大学附属病院へのアクセス性の充実強化に向けた取り組み、それから、IGR岩手銀河鉄道によるJR矢幅駅までの直通乗り入れの可能性等について、バス事業者、鉄道事業者、市町村と意見交換を行ってきたところでございます。
 また、事業者におきましても、岩手医科大学附属病院とアクセス性の充実強化に向けた意見交換を行っていると伺っておりまして、それらを踏まえ、岩手医科大学附属病院へ乗り入れる路線バス、それからコミュニティーバスのダイヤ改正が行われたと伺っております。
 一方で、議員からもお話がありましたとおり、沿岸地域の方々から、岩手医科大学附属病院へのバス路線の改善を求める声もございますことから、今後も引き続き、市町村や公共交通事業者と連携しながら、岩手医科大学附属病院へのアクセス性の充実強化に向けて、さまざま意見交換し取り組んでまいりたいと思っております。
〇35番(佐々木茂光君) 答弁をいただきましてありがとうございます。
 知事が注視していますと言うのはおかしいと思います。それは県土整備部が言うのであればわかりますが、今まさに岩手県としてILCに飛びついてやっているわけです。そういった中で、ここまで来た。どのレベルまで行ったら、この道路をやろうという意思を知事は示すのでしょうか。どの時期まで待つというのか、そういうふうに判断せざるを得ないのですが、その辺まで詰めた考えを持っていないということなのですか。
 ILCが北上山地を中心にほぼ決定されている中で動き出しているわけです。その中で、国道343号が一番重要な路線になるということを踏まえて、何とかあわせての改良、新笹ノ田トンネルの整備ということを言っているのですが、県土整備部は、今までのように、国の動向を注視しながら考えますということですが、知事は、今の時点では笹ノ田の道路等についての整備の考えは持ち得ていないのでしょうか。例えばここまで動き出したと時点という考えを持っているのかどうかもあわせて質問したいと思います。
〇知事(達増拓也君) 国道343号とILCの関係という質問と理解しましたので、国道343号が一般広域道路として岩手県新広域道路交通計画に位置づけられ、それとの関係でILC関係施設の立地場所や規模、これら施設へのアクセスルートなどの検討、そちらは、さまざま、道路の幅や曲がり方、大きい車両がどのくらい通れるかというようなことを調べたりまとめたりという作業も行われておりますので、ILCの側から見れば、そういう作業を続けていく、国道343号のほうから見れば、ILCの検討状況についても注視していくということです。
   
〇議長(関根敏伸君) この際、暫時休憩いたします。
   午後2時29分 休 憩
   
出席議員(47名)
1  番 千 田 美津子 君
2  番 上 原 康 樹 君
3  番 小 林 正 信 君
4  番 千 葉   盛 君
5  番 千 葉 秀 幸 君
6  番 岩 城   元 君
7  番 高橋 こうすけ 君
8  番 米 内 紘 正 君
9  番 武 田   哲 君
10  番 高 橋 穏 至 君
11  番 山 下 正 勝 君
12  番 千 葉 絢 子 君
13  番 高 田 一 郎 君
14  番 田 村 勝 則 君
15  番 佐々木 朋 和 君
16  番 菅野 ひろのり 君
17  番 柳 村   一 君
18  番 佐 藤 ケイ子 君
19  番 岩 渕   誠 君
20  番 名須川   晋 君
21  番 佐々木 宣 和 君
22  番 臼 澤   勉 君
23  番 川 村 伸 浩 君
24  番 ハクセル美穂子 君
25  番 木 村 幸 弘 君
26  番 吉 田 敬 子 君
27  番 高 橋 但 馬 君
28  番 小 野   共 君
29  番 軽 石 義 則 君
30  番 郷右近   浩 君
31  番 小 西 和 子 君
32  番 高 橋 はじめ 君
33  番 神 崎 浩 之 君
34  番 城内 よしひこ 君
35  番 佐々木 茂 光 君
36  番 佐々木   努 君
37  番 斉 藤   信 君
38  番 中 平   均 君
39  番 工 藤 大 輔 君
40  番 五日市   王 君
41  番 関 根 敏 伸 君
42  番 佐々木 順 一 君
44  番 岩 崎 友 一 君
45  番 工 藤 勝 子 君
46  番 千 葉   伝 君
47  番 工 藤 勝 博 君
48  番 飯 澤   匡 君
欠席議員(1名)
43  番 伊 藤 勢 至 君
   
説明のため出席した者
休憩前に同じ
   
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後2時53分再開
〇議長(関根敏伸君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。千葉秀幸君。
   〔5番千葉秀幸君登壇〕(拍手)

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