令和3年2月定例会 第12回岩手県議会定例会会議録

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〇13番(高田一郎君)日本共産党の高田一郎でございます。請願第37号、第38号について賛成討論を行います。
 請願第37号は、75歳以上の医療費窓口負担について原則1割負担の継続を求める請願であります。
 菅内閣は、75歳以上が支払う現行1割の医療費窓口負担を2割にすることを柱とした医療制度改定一括法案を今国会に提出いたしました。窓口負担の対象は、単身では年収200万円以上、どちらも75歳以上の夫婦では年収320万円以上の世帯であり、これによる負担増となる高齢者は全国で370万人にもなります。
 今、社会保障に求められているのは、第4波と言われるコロナ禍に立ち向かっている医療関係者を支援し、国民の命と暮らしを守ることであります。とりわけ感染リスクが高いとされる高齢者の命を守ること、これが最優先であります。こんな時期に後期高齢者の医療費負担を議論している場合ではありません。
 高齢者は、消費税増税や、あるいは年金引き下げ、介護の負担増のもとで生活費を切り詰めて暮らしています。最近の内閣府の国民生活基礎調査では、高齢者の55.1%が生活が苦しい、こう答えています。しかも、コロナ禍のもとで、人に迷惑をかけてはいけないとみずからの行動や健康維持にとりわけ気を配って生活をしています。どうしてこんな時期に医療費の負担増を急いで決めなければならないのでしょうか。
 日本医師会の中川会長は、原則1割から倍にする議論をすること自体、そもそも問題。受診控えを生じる政策で高齢者に追い打ちをかけるべきではないと指摘しています。
 後期高齢者は、複数の病気を抱え、治療も長期に及ぶ人が少なくありません。だからこそ高齢者の自己負担はこの間軽減されてきました。年をとると入院もふえ、医療負担は現役世代などの3倍から7倍近くになってしまいます。窓口負担の引き上げを求めることで、高齢者の受診抑制がさらに深刻化することは避けられません。
 生活保護世帯が増加するなど高齢者の貧困化が確実に進んでいる中で、年収200万円とはいえ、余りにも命を軽視する無慈悲な政策であります。国民皆保険制度の根幹を揺るがすものではないでしょうか。
 政府は、社会保障給付費は2025年、141兆円、2040年には190兆円に膨らむとして、抑制と負担増は必至だと宣伝し、負担増を合理化しています。しかし、その国の社会保障給付費は、実額ではなく対GDP比で考える必要があります。GDP比では、2025年、21.8%、2040年には24%の水準は、日本よりも高齢化率が少ないスウェーデンやフランスが負担している水準よりも低く、厚生労働省の前事務次官も、国民が負担できない水準ではない、こう月刊誌の座談会で述べております。
 高齢化率が世界でトップクラスなのにGDPによる社会支出は欧州諸国よりも低い、つまり高齢者に必要な給付が行き届いていないことこそ問題であります。そもそも後期高齢者医療費の国庫負担を45%から35%に引き下げ、現役世代の保険料負担で肩がわりさせるという制度設計そのものに問題があると言わなければなりません。
 後期高齢者医療制度の保険者である全国後期高齢者医療広域連合協議会は、医療費の窓口負担の現状維持を求める要望を国に行っています。史上空前の利益を上げる大企業に、もうけに応じた税と社会保険料の負担を求め、所得の再分配機能を強めることこそ必要であります。
 長年にわたり社会のために尽くしてきた高齢者に対して、医療費の2割負担を求めることは撤回させ、誰もが安心して医療が受けられるようにするために政府に強く求めるべきであります。
 次に、請願第38号コロナ禍をのりこえるためにもジェンダー平等施策を強めることを求める請願であります。
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、非正規雇用が多く、家族のケアをより多く担う女性にとりわけ厳しい影響を与えました。解雇や雇いどめ、育児や介護などの負担の集中、暴力や虐待の増大が女性を襲いました。女性の自殺が急増したことは、深刻な事態であります。
 昨年は、日本が女性差別撤廃条約を批准してから35年の節目でありました。条約を生かす立場で歴代政権がまともに取り組んできたら、これらの女性たちの苦しみはかなり軽減されていたはずであります。経済効率が最優先で、医療や福祉など人間が生きる上で最も重要であるはずのケアが大切にされない。雇用の場では、女性を初め、育児、介護などを担う労働者は、低賃金の補助的労働が宛てがわれ続ける。意思決定の場には女性が少な過ぎる。こうした社会の大幅なおくれを自民党政権は長年放置してきました。それが日本をジェンダー・ギャップ指数121位のジェンダー平等後進国にし、性別や家族の形態などによって差別されず、多様な生き方が求められる社会の実現を拒んでいるのであります。
 このような現状において、おかしいという声を上げ、行動に踏み出す運動は、新たな広がりを見せています。性暴力を訴えるフラワーデモ、職場での女性へのパンプス強制禁止や、あるいは選択的夫婦別姓、性暴力事件の無罪判決など、社会の空気を確実に変えてきました。
 しかし、政府の第5次男女共同参画基本計画では、選択的夫婦別姓の文言を削除して、同姓を強要する現行制度に固執し続けています。夫婦同姓を民法で義務づけているのは、世界で日本だけであります。女性差別撤廃条約第16条は姓を選択する権利も含まれており、女性差別撤廃委員会からは、再三にわたり法律改正の勧告まで受けております。
 内閣府の調査でも、夫婦別姓に賛成は43%と、必要ないの29%を大きく上回り、50代以下では過半数をはるかに超えております。事実婚では一方の親権がない、姓が変わったため資格の再取得が必要など不利益も起きており、一刻も早い解決が必要であります。
 夫婦同姓の義務は、明治憲法で男性優先の家族内秩序がつくられ、女性は法的に無能力者とされた男尊女卑の社会でつくられたそのもので、そもそも時代錯誤であります。
 女性差別撤廃条約の実効性をさらに高め補強するために、1999年につくられたのが選択議定書であります。権利救済を求める個人の通報制度と国連の女性差別撤廃委員会が関係国を調査できる制度も設けています。この議定書を批准することは、裁判でも救済できない事件の解決や裁判所も条約に沿った判断を出すようにするなど、日本におけるジェンダー平等を前進させる大きな力になるものであり、早期の批准が求められています。
 請願事項である選択的夫婦別姓や選択議定書を批准させ、国のジェンダー施策を強めることを国に求めることは、おくれている日本のジェンダー格差を着実に克服し、実効性あるものにしていく上で大きな力になるものであります。
 以上が請願に対する賛成理由であります。議員各位の御賛同をお願い申し上げ、私の賛成討論といたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〇議長(関根敏伸君)次に、斉藤信君。
〔37番斉藤信君登壇〕

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