令和3年2月定例会 第12回岩手県議会定例会会議録

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〇22番(臼澤勉君)自由民主党の臼澤勉です。
 請願陳情受理番号第38号コロナ禍をのりこえるためにもジェンダー平等施策を強めることを求める請願における請願事項の一部に対して、反対の立場から討論いたします。
 請願事項二つ目、女子差別撤廃条約の選択議定書を批准することにつきましては、現在、政府において、女子差別撤廃条約選択議定書の早期締結に向けて真剣な検討がなされているところであります。我が国の司法制度や立法制度との関連において検討すべき課題について、関係府省庁間で連携して調整を進めている段階であり、反対するものではありません。
 また、請願事項の三つ目、女性の貧困やDV対策など国のジェンダー施策を強めることにつきましても、昨年12月に閣議決定いたしました第5次男女共同参画基本計画において、女性の貧困やDV対策に対して具体的かつ着実な施策が盛り込まれていることから、賛成いたします。
 一方で、請願事項の一つ目、夫婦別姓を選べる制度を取り入れる民法改正を行うことに関しましては、より一層の慎重な議論を行うべきであり、民法改正を県民の総意として国へ意見書を提出することは、時期尚早と考える立場から反対をいたします。
 現在の夫婦同姓制度においては、姓を変えることにより社会的な不利益をこうむったり、事実婚を選択せざるを得ない事態が生じたりするなどの理由から、選択的夫婦別姓の導入を求める意見も多く見られるようになりました。一方で、夫婦別姓を取り入れる民法改正については、家族のあり方の根幹にかかわる問題であり、伝統的な家族観を壊してしまうものではないかといった懸念や、子供の姓をどうするのかといった家族をめぐるさまざまな問題が生じることから、慎重な検討が必要となります。
 そもそも夫婦同姓制度自体は、明治31年に旧民法が制定されてから120年程度の歴史であるものの、戸主と家族から成る日本古来の家を規定する戸籍制度は、645年の大化の改新以降、1、300年以上続く日本の伝統であり、世界でも日本を含めて数カ国しかありません。戸籍制度は、まさに日本古来の伝統的な家族観を形成しているものであります。だからこそ、戸籍制度と一体不可分であるこの現在の夫婦同姓制度における民法改正に関しては、我々は慎重かつ丁寧な議論が必要であると考えています。
 直近の国の調査は、2017年に内閣府が行った家族の法制に関する世論調査であります。この調査においては、全体では、夫婦は同じ姓を名乗るべきであり、法律を改める必要がないと答えた人が29.3%、法律を改めても構わないと答えた人は42.5%、夫婦は同じ姓を名乗るべきだが、婚姻前の姓を通称として使えるように法律を改めることは構わないと答えた人が24.4%でありました。
 法律を改めるべきと答えた人が42.5%と多かったものの、同姓であるべき、あるいは同姓であるべきだが、婚姻前の姓の使用を正式利用できるように法整備すべきと答えた人が合わせて53.7%と半数を超えており、意見が割れている状態であります。
 また、年代別で見ると、20代から30代では、男女ともに法律を改めても構わないと答えた人が半数以上いる一方で、70代以上の男性で半数、女性では半数以上が、夫婦は同姓であるべきと回答しております。このように年代間でも意見が割れていることから、各年代、各地域において、丁寧な実態調査を行った上で議論を深めていく必要性があります。
 最近では、選択的夫婦別姓制度に関して民間のアンケート調査もふえ、70%以上が選択的夫婦別姓に賛成するという結果を示しているようなものもありますが、それらの調査は、婚姻前の姓を婚姻後も法的に利用できるようにするという選択肢が恣意的に除外されているものであり、回答者にとってフェアな選択肢が与えられていたとは考えられません。
 この選択肢は、2017年の内閣府の調査において、どの年代においても約25%、4人に1人が回答していた選択肢であります。こうした選択肢が意図的に削除されたような全国調査をもとに、選択的夫婦別姓制度の導入に関して、機は熟したとの意見もありますが、そもそも全国調査の結果を岩手県民の意見と決めつけ、岩手県民の現状を知る調査もしていない段階で機は熟したと言うことは、大きな危険性をはらんでいるものではないでしょうか。
 今、我々が行うべきは、岩手県民における家族の姓に関する意識調査ではないでしょうか。調査もせずに、何のエビデンスもなしに、国に対して、岩手県民の総意として民法改正を要望するのは、いささか乱暴ではないでしょうか。
 1、300年以上の伝統を持つ戸籍制度と一体不可分の現在の制度の変更を一朝一夕で議論する必要もなければ、岩手県民の意向を調査もせず、議会が結論を急ぐ必要もありません。岩手県民の各年代、各地域の意向を調査した上で、夫婦別姓を取り入れる民法改正の機運が高まっていれば、改めてそのデータをもって国へ意見書を提出すればいいのです。
 自由民主党においては、本日、選択的夫婦別姓に賛成する議員連盟が設立、そして、来週には、婚姻前の氏の通称使用拡大、周知を促進する議員連盟を設立する動きがあります。国会においてもさまざまな意見がある中で、岩手県からそのようなデータ、県民の意向を伴った意見書を提出されれば、その意見書はより一層重宝されるものとなるでしょう。
 以上のとおり、我々は請願事項の一つ目、夫婦別姓を選べる制度を取り入れる民法改正を行うことに対して、岩手県民の意向を十分に調査した上で、国により活発な議論を促すべきとの判断から反対をいたします。
 議員各位の御賛同を心からお願い申し上げまして反対の討論といたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〇議長(関根敏伸君)次に、佐藤ケイ子さん。
〔18番佐藤ケイ子君登壇〕

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