令和3年2月定例会 第12回岩手県議会定例会会議録

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〇3番(小林正信君)公明党の小林正信です。
 一般質問の機会をいただいたことに感謝申し上げ、これまでの皆様の御質問と重複する部分もございますが、通告に従って質問させていただきますので、どうかよろしくお願い申し上げます。
 まず、東日本大震災津波からの復興についてお伺いします。
 東日本大震災津波発災から10年がたとうとしております。まずは、震災により無念の思いを残して亡くなられた全ての皆様の御冥福を心よりお祈り申し上げます。また、いまだ癒えない心の傷を抱えた多くの皆様、被災された全ての皆様にお見舞いを申し上げます。
 我々公明党は、この10年間、被災された方最後のお一人が立ち上がるその日まで寄り添い続けるという決意で、人間の復興をテーマに活動を進めてまいりました。
 被災者の皆様にとって、この10年の復興の歩みは簡単に言葉にできないものであり、今なお心の傷を抱え苦しんでおられる方も多くいらっしゃると思います。さらには、このコロナ禍も相まって、経済的にも大変な思いをされておられる方も多いと伺っております。
 震災からの復興はいまだ道半ばであり、被災地の急激な人口減少を考えたとき、これまでの復興の取り組みが果たして十分であったのか、再度検証する必要もあるかと思います。
 今年度から始まる第2期復興・創生期間において、心の復興、なりわいの再生を通じ、震災前を上回る創造的復興の実現をなし遂げていかねばなりません。
 以前も取り上げさせていただきましたが、道路交通網が充実した現在、被災地にとっては大きなチャンスと捉えるべきと考えます。第1次産業への十分な支援と同時に、積極的に企業誘致を図るなど、新たな産業振興に取り組む必要があります。そして、先ほども述べたように、急激な人口減少にどのように対応していくかが、被災地の復興において重要な喫緊の課題であります。
 今後における、企業誘致の促進を初めとした沿岸被災地の人口減少に資する大胆な産業振興施策について、知事にお伺いします。
 これまで、震災により深い心の傷を負った方々、また、子供たちの心のケアのために、岩手県こころのケアセンター、いわてこどもケアセンターが中心となって取り組みを進めてまいりました。私も改めて震災を経験された方々のお話を伺いましたが、10年たった今でも、当時の惨状や亡くなられた方々の夢を見るとのお話を伺いました。
 今後は、被災された方や子供たちの心のケアがますます重要となってくることは、論を待たないと思います。その上で、両センターのこれまでの取り組み状況と今後予定されている取り組みについてお伺いいたします。
 新たに沿岸被災地に設置される予定の(仮称)いわて被災者支援センターについてお伺いします。
 センターの設置は、今後の被災者の伴走型支援の充実に大事な役割を果たすものと期待しております。また、先ほども述べたように、最後のお一人が立ち上がるまで寄り添い続ける取り組みとして、充実した事業となるよう期待しております。
 その上で、支援すべき方の掌握など、センターと各被災市町村との連携も重要になってくるかと思いますが、県としての連携についてのお考えをお伺いします。
 続いて、新型コロナウイルス感染症対策について質問いたします。
 新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大によって、我々の社会のさまざまな脆弱性が浮き彫りとなり、未来への不安が高まっております。
 特に、困難を抱えた多くの方々が、コロナ禍によってさらに孤立化し、同時に、社会の分断、対立がより表面化していると感じております。このコロナ禍に対応し、持続可能な社会、誰ひとり取り残さない社会を築くために、我々公明党は、一人一人が社会とのつながりを強め、適切な支援やサービスにつながる仕組みづくりや、さまざまな制度の安定性、持続可能性を高める支え合いの基盤の強化が重要と考え、つながり、支え合う社会へとのテーマのもと、新たな政策ビジョンを提示しました。
 このコロナ禍を一刻も早く克服し、ポストコロナを希望と安心の時代へと変えていくためにも、さまざまな主体が協調、連帯し、共存、共生の社会を築いていかねばなりません。
 以下、ポストコロナを見据えつつ、先ほど述べたテーマに基づいて幾つか質問をさせていただきます。
 現在接種が進められているワクチンの効果が社会全体に行き渡るまで、感染拡大、また重症者や死亡者の発生を万全の体制で防いでいかねばなりません。
 県としても、さまざまな媒体を通じて県民に感染拡大防止を呼びかけておりますが、感染症による死亡率、重症化率を抑えるためには、特に高齢者、また基礎疾患を抱える方へのアプローチが重要と考えます。
 県として、重症化のリスクを抱える方々への新型コロナウイルス感染症感染防止のための情報発信、情報提供の強化を行うべきと考えますが、御所見をお伺いします。
 新型コロナウイルスワクチンに関してお伺いします。
 国からワクチンの詳細については順次情報提供がなされているかと思いますが、県としても接種の準備を十分に整え、混乱なく進めていく必要があります。
 優先接種となる医療従事者に関しては、県が接種の調整を行っていると伺っております。県としては、優先接種の経験を生かし、市町村への情報提供、接種のサポートを行っていくかと思いますが、例えば福井県では、全市町村に担当をつけ、調整する支援班等の設置を進めていると伺っております。
 市町村へのサポート体制について、医療従事者の確保なども含め、県の役割をどのように考えておられるのかお伺いします。
 生活にさまざまな困難や課題を抱えた方々が、コロナ禍によってさらに困窮、孤立化し、十分に支援が行き届かない状況もある中で、そうした方々を包括的に支援する取り組みが、今後さらに重要性を増すと考えます。
 その上で、最前線でさまざまな対応、相談支援をされておられる各社会福祉協議会や生活困窮者自立相談支援機関の機能強化、人員体制の充実は必須と考えます。
 今後の県としての社会福祉協議会、生活困窮者自立相談支援機関との連携、支援について、お考えをお伺いします。
 続いて、ポストコロナを見据えた脱炭素社会の実現についてお伺いいたします。
 このたびのコロナ禍においては、近年の急激な気候変動や森林伐採による生態系の破壊が原因となって、未知のウイルスの発生や蔓延を招き、そうした感染症リスクの高まりが、世界的感染拡大の背景にあったとも言われております。
 感染症などの専門家は、今後、新型コロナウイルス感染症が終息したとしても、現在の世界の経済のあり方に変化がない限り、次々と新たな感染症が発生する可能性があると指摘しており、そうした意味で、パリ協定の求める脱炭素社会への早期移行、持続可能な社会の実現は、人類的な課題であります。
 欧州では、温室効果ガス排出を削減しながら、雇用創出とイノベーションを促進する成長戦略欧州グリーンディールを掲げ、2050年の気候中立、カーボンニュートラルを目指しております。
 政府においては、実行計画であるグリーン成長戦略を掲げ、重点14分野の実施機関、技術課題などを定めた工程表を作成し、政策の推進を期しております。
 岩手県においても、岩手県環境基本計画を策定し、多様性を重視し、環境と共生する持続可能な岩手県を目指しておりますが、それには県民お一人お一人の行動変容、また意識の変革も重要になってくると考えます。
 今後の県民に対する情報発信も含め、脱炭素社会に向けた県民の意識啓発について、県の取り組みをお伺いします。
 グリーン成長戦略においては、CO2排出のおよそ4割を占める電力の脱炭素化を目指し、再生可能エネルギーを最大限導入する方針が示されております。現在20%弱である再生可能エネルギーの電源比率を2050年には50%から60%に引き上げるとし、その切り札として洋上風力発電を位置づけております。
 岩手県としても2050年のカーボンニュートラルを目指し、環境基本計画では、再生可能エネルギーによる電力自給率を65%に引き上げる目標を示しておりますが、そのためには、洋上風力発電の導入推進に積極的にかかわっていく姿勢が必要と考えます。
 秋田県においては、既に3カ所が促進地域に指定され、さらに数カ所が将来有望な地域として調査が進んでいると伺っております。当然、地理的条件の違いはありますが、秋田県では、県内の関連企業、大学、企業支援機関等が連携し、関連産業の振興や雇用の創出を図る目的で、あきた洋上風力発電関連産業フォーラムを設立しております。
 岩手県ではこれまで、沿岸各地で調査が行われてまいりましたが、現在、洋野町また久慈市沖が有力候補地として挙がっております。本県としても、市町村や国とさらに連携を深め、洋上風力発電の導入推進に向け取り組みを充実させるべきと考えますが、知事の御所見をお伺いします。
 県は、平成27年の岩手県風力発電導入構想において、風力発電導入の可能性が高い地域を示し、事業化に向けた取り組みを進めていくとしております。脱炭素社会を目指す上で、今後は洋上風力発電同様、風力発電の拡充も重要なウエートを占めるものと思います。その上で、洋上風力も含め、関連産業の誘致、また育成は、県内の産業振興にも資するものと考えます。
 また、導入実績においては、釜石広域の風力発電の出力が42.9メガワットと県内でも大きなウエートを占めております。被災地支援という観点から、今後における沿岸被災地の風力発電の可能性について、県のお考えをお伺いします。
 脱炭素社会の実現においては、既存の取り組みに加え、新たな技術革新や制度が必要であり、CO2を回収、貯蔵するCCSや炭素の価格化、カーボンプライシングなどが国内でも研究、検討されているところであります。その中でも切り札と言われているのが水素の利活用であります。岩手県においても、水素利活用推進プロジェクトにより、その実現化に向けて取り組みを進めているところであります。
 県は、2025年をめどに県内に水素ステーションの設置を目指しているところではありますが、この設置については、採算がとれるかどうかという課題もあり、また、燃料電池自動車のある程度の普及、水素需要の増加も必要であります。同時に、県民の水素利活用に対する認知度を上げる取り組みも必要になると思います。
 今後、例えば公用車に燃料電池自動車を利用するなど、県民へのアピールを活発に行い、県内の機運醸成を図りつつ水素の利活用を促進すべきと考えますが、県の今後の取り組みについてお伺いします。
 次に、デジタル化の推進についてお伺いします。
 コロナ禍によりさまざまな接触を防ぐという観点から、デジタル化が徐々に社会に受け入れられていると感じております。また、災害時における社会基盤の脆弱性、デジタル化のおくれが、コロナ禍により浮き彫りとなりました。ポストコロナに向け、いわゆるグリーンとデジタル、脱炭素化とデジタル化の推進は車の両輪とも言うべきであり、アフターコロナを見据え充実させる必要があると考えます。
 経済産業省は、国内企業がデジタルトランスフォーメーションの本格運用に取り組まなかった場合、2025年以降で年間最大約12兆円の損失が生まれるという2025年の崖問題を指摘しております。デジタル化は地方創生の推進に寄与する可能性も大きく、本県でも速やかに進める必要があります。
 知事は先日の所信表明において、デジタル化を一層推進するため、官民連携の推進組織と庁内推進本部を設置すると明言されました。その上で、今後、県庁内のデジタル化と並行して、県内33市町村のデジタル化も県が司令塔となって進めていくべきと考えます。
 国のデジタル化の動向を市町村と常に共有し、一方で、市町村の現在の課題を吸い上げ、国に上げていく体制整備を速やかに進める必要があります。
 また、行政のデジタル化において、専門人材の不足やセキュリティー対策等の懸念を各自治体等も抱えているのではないかと考えます。今後設置される組織において、市町村との連携、課題の吸い上げ、または人材、技術などの市町村への支援について、どのように考えておられるのかお伺いします。
 県内のデジタルトランスフォーメーションを進めていく上で、民間事業者のデジタル化も必須であります。事業者においても、デジタル化を進めるにおいては、やはり人材の確保や専門家からの助言が、その求めるところではないかと思います。
 県が設置する官民連携の推進組織において、企業のデジタル化についてはどのような支援を考えておられるのかお伺いします。
 今後必要とされるIT人材の育成について、宮崎県の地域密着型IT人材育成事業では、県内で就職や転職を考える方を対象に、国家資格や専門知識の取得のための講座を準備し、受講生には、IT企業の紹介など就職支援も行っているとのことです。東京都のIT人材育成支援事業も同様で、コロナ禍の影響で職を失った若者がIT分野に就職できるよう、職業訓練と就職支援を一体的に行う事業を進めております。
 岩手県においても、今後、コロナ禍に対応して雇用支援とIT人材育成を一体的に行う事業が必要と考えますが、御所見をお伺いします。
 また、以前にも取り上げさせていただきましたが、地域におけるデジタルディバイド解消を進めるデジタル活用支援員については、総務省の事業採択を受け、陸前高田市において現在取り組みが進められているところであります。
〔副議長退席、議長着席〕
 県内でも高齢者や障がい者の皆様に対するデジタル技術の活用支援について、今後充実させる必要があると考えますが、御所見をお伺いします。
 次に、産業振興についてお伺いします。
 このコロナ禍の中、県内では、PCR検査について民間企業の協力を得るなど、官民連携の取り組みも行われてきたことと承知しております。また、ドラッグストアを通じ、唾液により新型コロナウイルスの感染の有無を確認できるPCR検査キットの販売など、今後、医療機器関連産業の集積によって、感染症対策の取り組み、また県民の健康、安心・安全を守る取り組みも加速されるものと感じております。
 以前にも質問させていただきましたが、県としては、医療機器関連産業を県内ものづくり産業振興の第3の柱とする方向性を打ち出しております。
 これまでも、盛岡市などでは、民間のクラスターであるTOLICを中心に産業の集積が進んでおり、県内でも花巻市や奥州市、洋野町などで医療機器関連産業の企業集積が目立ってきております。TOLICでは、iPS細胞の研究者を頻繁にカンファレンスに招くなど、再生医療の研究に関して、岩手県、盛岡市における機運醸成に寄与する取り組みを進めており、今後こうした流れが加速すれば、例えば、岩手県においてもiPS関連のベンチャー企業などが誕生する可能性も期待されるところであります。
 今後、県としてもこうした動向を注視しつつ、ヘルステック・イノベーション・ハブを起点とした医療機器関連産業のさらなる振興について、どのようにお考えなのか、知事の御所見をお伺いします。
 県内全体の医療機器関連産業の集積のためにも、県内をリードする拠点であるヘルステック・イノベーション・ハブの存在は重要であります。現在11社が入居し、入居率は96%を超えると伺っておりますが、整備後からまだ1年という段階で、非常に好成績の入居率なのではないかと思います。
 今後、さらなる集積が進んだ場合、いわばヘルステック・イノベーション・ハブ2ともいうべき新たな施設の確保も必要と思います。県としても、予算の確保という点で厳しい面もあるかとは思いますが、盛岡市とも連携しつつ、民間の活用も視野に入れ、医療機器関連産業の第2の集積拠点施設、イノベーション・ハブ2の構想も今の段階から準備しておく必要があるかと思いますが、御所見をお伺いします。
 岩手県においては、令和2年度から岩手イノベーションベースを新たに開設し、起業家を支援、育成する取り組みを充実させており、私も今後の展開に大きな期待を抱いている一人であります。
 また、イノベーションベースの取り組みと並行して、地域で起業される方を支援する取り組みが今後さらに必要となると考えます。その意味で、来年度から予定されている沿岸被災地における起業支援、育成の取り組みは重要なものであり、時宜を得たものと評価いたします。
 地域おこし協力隊や地場の起業家を支える拠点が県内各地に必要であり、廃校や古民家を改修し、テレワークオフィスや起業家の拠点とする取り組みを市町村と連携して充実する必要があると考えますが、今後の県の起業家支援の取り組みについてお考えをお伺いします。
 続いて、人口減少対策についてお伺いします。
 昨年10月に共同通信が紹介した民間のアンケートによると、子育てにかかる平均月額は3万6、247円、前年に比べ4、440円減少したとのことです。また、子供をさらに欲しいと答えた割合は30.9%で、前年より9.2ポイント増加したそうであります。無論、民間のアンケートであり精査が必要ではありますが、幼保無償化を初めとする子育て支援施策が、少しずつではありますが子育て世代のマインドを変え、効果を生み始めていると感じております。とはいえ、出生率は年々過去最低を更新し、国においても、地方自治体においても、人口減少に対応したさらなる子育て支援策の充実が必要と考えます。
 フィンランドの子育て支援制度であるネウボラをモデルとして、ワンストップで妊娠から出産、子育ての相談に対応する子育て世代包括支援センターの設置が各市町村で進んでおります。センターの存在は、地域のつながりが薄れ、相談する場を失った母親の悩みや孤立感を取り除き、産後鬱や児童虐待防止にもつながるものでありますが、一方で、設置したものの、支援の質という部分でまだ十分ではない自治体も全国では見受けられているようです。
 相談支援強化と同時に、産前産後のサポート、産後ケアの充実に向けしっかりと予算を確保する等、機能強化を図っていくべきと考えます。
 東京都では、保健師の配置や産後ケア事業の費用を補助するゆりかご・とうきょう事業を平成15年から実施し、令和2年度からは、家事育児サポーターの派遣や多胎児家庭への支援を盛り込んだとうきょうパパママ応援事業を展開しているとのことです。財政力の違いがあるとはいえ、住む地域によって支援に格差があるというのは残念であり、それは県内各市町村の間においても同じことと言えます。
 今後においては、十分な子育て予算を確保すべきであり、例えば盛岡市などで積み立てている子ども未来基金のような、ある程度幅広い事業に使用できる基金の積み立てを県としても行うなど、県の子育て予算の確保策について、お考えをお伺いします。
 さて、政府は、人口減少対策の一環として、不妊治療に対する支援の充実に一層取り組む姿勢を打ち出しております。公明党といたしましても、1997年、我が党が初めて国会において不妊治療に対する支援を訴えてより、一貫して支援の拡充に取り組んでまいりました。
 特定不妊治療については、2022年をめどに保険適用がなされる予定となっており、それまでの間についても、所得制限が撤廃されるなど、従来の支援がより拡充される方向であります。近年の晩婚化が進む局面において、不妊症の頻度はさらに増してくると考えられ、人口減少、少子高齢化としての重要性は増してくるものと考えます。
 岩手県においても不妊治療の助成を行っておりますが、先ほど述べたような晩婚化の中、不妊に悩む皆様のために、例えば通院に係る交通費の助成や不育症検査の助成、がん患者の卵子や精子を冷凍保存する妊孕性温存療法など、今後さらに支援を拡大すべきと考えますが、御所見をお伺いします。
 岩手県は、現在、人口ビジョンを策定し、社会減ゼロを目指して取り組みを進めております。内閣府の調査では、新型コロナウイルス感染症の影響で地方移住への関心が高まったとの答えが全体の15%、東京圏の20代に限ると27.7%となっており、このコロナ禍を通して、大都市への一極集中の問題点が改めて指摘される中、地方が持つ持続可能性や分散型社会という考え方に注目が集まっていると感じております。
 しかしながら、東京都への過度な集中は緩和される傾向にあるとはいえ、東京圏に限定すると、相変わらず人口は集中している状況です。相馬市の復興支援アドバイザーでもある株式会社日本総合研究所の井上岳一さんは、著書日本列島回復論において、日本列島の自然の恵みを天賦のベーシックインカムと位置づけ、これにソサエティー5.0を組み合わせることで、豊かな自然を抱えた地方が、新たなフロンティアとして若い才能を引きつける可能性があると述べられております。
 また、昨年、久慈市で行われた若者との意見交換会において、若い世代は、自分が引き受けるべき仕事、自分でなければならない仕事を強く求めているのではないかと、お話を伺う中で感じました。移住者の受け入れ体制を充実させつつ、人口が減っていく地域を支える、地域を引き受けてくれる若い世代に対して、やるべき仕事を提示する、あるいは自身の能力を存分に発揮できる場を提供することが、移住、定住の促進、また、地域の持続可能性の担保につながると考えます。
 県としても、岩手とつながるをキーワードに、地域課題解決への参画プログラムを用意し、滞在型のツアーを組む新たな関係人口創出の取り組みを行う予定と伺っております。岩手県とつながった若い世代に対して、その個別のニーズを聞き取り、その若者に合った移住メニューを提示する取り組みについて、市町村と協力し、今後さらに充実させていく必要があると考えますが、県のお考えをお伺いします。
 最後に、ICTを活用した健康増進施策についてお伺いします。
 現在、矢巾町や八幡平市においては、新しい生活様式に対応した健康増進スマートシティを標榜し、基礎疾患の予防、高齢者の健康増進、オンライン診療の促進、これらの施策のドラッグストアの活用による周知等を産学官連携によって進め、今後は、矢巾町と八幡平市の連携も模索されているやに伺っております。
 脳血管疾患や循環器病を含めたあらゆる病の予防が課題となる中、最先端の医療機器とデジタル技術が連携することによって、事前に病気を防ぐ取り組みが進んできていると感じております。
 今後、2025年問題、さらには2040年問題を見据えたとき、介護、医療資源、人材の枯渇が進む状況を危惧するものです。こうした状況をカバーするためにも、本県においても、オンライン診療も含めICTを活用した健康増進施策の実施が急務であると考えます。
 県では、アプリを活用した健康増進施策を進めているところと伺っております。今述べたような県内各自治体の健康増進スマートシティの取り組みとも連携しながら、県が中心となってこうした動きを県内に広げ、県民の健康を守る取り組みを進めるべきと考えますが、御所見をお伺いします。
 以上で登壇しての質問を終わります。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君)小林正信議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、被災地の産業振興施策についてでありますが、沿岸被災地は、復興の取り組みにより大きく進展した交通ネットワークや港湾機能といった優位性を有しているほか、復興支援を契機とした国内外の多様な主体とのつながりが構築されているところであります。
 県では、これらを生かした被災地の産業振興を進めており、企業誘致については、平成23年度以降、食品、物流関係など50件の新増設があったほか、みちのく潮風トレイルや海洋体験などの体験型観光や三陸鉄道などの沿岸地域の観光資源を生かした観光誘客などに取り組んでいます。
 県としては、国や県の補助制度を活用した企業誘致や新型コロナウイルス感染症の拡大によるテレワークへの関心の高まりを生かしたサテライトオフィスの誘致に加え、東北デスティネーションキャンペーンや東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を契機とした情報発信と誘客拡大、震災学習を中心とした教育旅行の推進、プロフェッショナル人材の活用促進による水産加工業の生産性、付加価値の向上などに取り組み、産業振興を推進してまいります。
 次に、重症化リスクを抱える県民への情報発信についてでありますが、県ではこれまで、重症化リスクの高い高齢者や基礎疾患を有する方の感染防止が重要であることから、岩手県新型コロナウイルス感染症対策本部本部員会議における知事メッセージなどを通じて、御家族など周囲の方も含め一層の注意を呼びかけてまいりました。
 また、県内の新型コロナウイルス感染症患者の状況については、年代や性別、症状などを公表してきたほか、お亡くなりになられた方の状況についても、年代や基礎疾患等の重症化の主なリスク因子について分析し、記者発表等により公表してきたところであります。
 さらに、国の専門家会議からは、無症状や軽症の若年者が、気づかぬうちに家庭内の高齢者などに感染を広げた事例が多くあると報告されていることから、県では、LINEやTikTokなど各種SNSを活用し、若年層に向けた情報発信も強化してきたところであります。
 引き続き、感染拡大防止に向け、知事メッセージのほか、ホームページや広報誌などさまざまな媒体を活用し、効果的な情報発信に取り組んでまいります。
 次に、洋上風力発電の導入推進についてでありますが、県においては、温室効果ガス排出量の2050年実質ゼロの達成に向け、今定例会に提出している第2次岩手県地球温暖化対策実行計画において、2030年度における本県の再生可能エネルギーによる電力自給率65%を目標として掲げ、洋上風力を含む再生可能エネルギーのさらなる導入促進に取り組むこととしています。
 県内における洋上風力発電について、洋野町沖においては風況等の必要な調査を終え、発電事業者の誘致に取り組んでいるところであり、また、大規模な発電を想定している久慈市沖にあっては、2030年ごろの発電事業の開始を目指し、海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律に基づく促進区域の指定に向け、調査等を行っているところです。
 本県ではこれまで、海洋再生可能エネルギーの導入に向け、東京大学等の海洋に関連する学部等を有する大学や、岩手大学、岩手県立大学を初め、全国の海洋関連企業が参加する一般社団法人海洋産業研究会、海中での建設やメンテナンスを担う一般社団法人日本潜水協会等とのネットワークを構築しているほか、海洋関連産業についても、釜石市の企業等が研究会を設立し、県、釜石市とも連携しながら地域での産業化に向けた検討を進めているところです。
 県では、市町村を初め、大学、企業、関係団体等との連携を強化し、洋上風力発電の実現に向けて取り組んでまいります。
 次に、医療機器関連産業のさらなる振興についてでありますが、県では、医療機器関連産業のさらなる集積を促進するため、岩手県工業技術センターの敷地内にヘルステック・イノベーション・ハブを整備したところであり、医療機器関連企業を中心に順調に入居が進み、これら企業が県内企業と連携し、新型コロナウイルス感染症に関連した製品を開発するなど、新たな成果があらわれているところです。
 医療機器関連産業は、景気の動向に左右されにくく、高齢化の進展や医療、健康に対するニーズの高まりなどにより今後も成長が見込まれる産業であり、また、ヘルステック・イノベーション・ハブの入居企業を中心とした活発な共同研究開発や商品化の動きもあることから、県では、県内企業を中核とする研究開発や産業のさらなる集積と高度化を促進するため、新たな戦略の策定を進めているところです。
 この戦略には、ヘルステック・イノベーション・ハブを核として、入居企業や産業支援機関等との連携により、企業間や産学行政の連携による共同研究や製品開発を進めるとともに、県内サプライチェーンの拡充、医療機器メーカーの開発拠点の誘致、人材の育成、確保など、企業の取り組みに対する支援を盛り込むこととしており、この戦略に基づき医療機器関連産業の振興に資する各般の施策を展開してまいります。
 その他のお尋ねにつきましては、企画理事及び関係部局長から答弁させますので、御了承をお願いします。
〔企画理事兼環境生活部長藤澤敦子君登壇〕
〇企画理事兼環境生活部長(藤澤敦子君)まず、脱炭素社会に向けた県民への意識啓発についてでありますが、2015年にパリ協定が採択され、環境と共生する脱炭素で持続可能な社会を目指す取り組みが世界各国で進められておりますが、昨年の世界の平均気温が過去最高となるなど、地球温暖化に歯どめがかかっておらず、世界の気候は、今まさに非常事態に直面しております。
 こうした状況を踏まえ、県では、気候変動に対する危機意識を県民の皆様と共有し、県民一丸となって地球温暖化対策に取り組んでいくため、去る2月17日に、いわて気候非常事態宣言を発出したところです。
 また、気候変動を食いとめる温室効果ガス排出量の2050年実質ゼロの達成に向け、今定例会に提出している第2次岩手県地球温暖化対策実行計画において、省エネルギー対策の推進、再生可能エネルギーの導入促進を取り組みの柱に位置づけております。
 計画を着実に進めていく上では、県民一人一人の自主的な行動が重要であることから、県では新たに、省エネルギー住宅に関する相談窓口の設置によるセミナーの開催や住宅の断熱性機能等を評価する住宅省エネ診断の実施、次代を担う若者が気候変動の影響とその対策について理解を深めるシンポジウムの開催に取り組むとともに、引き続き地球温暖化防止活動推進センターを拠点とした地球温暖化防止活動推進員の派遣による普及啓発活動やホームページによる情報発信等に取り組むなど、脱炭素社会の実現に向けた県民の具体的な行動を促進するための普及啓発活動を一層推進してまいります。
 次に、沿岸被災地における風力発電の見通しについてでありますが、第2次岩手県地球温暖化対策実行計画に掲げる2030年度の再生可能エネルギーの電力自給率65%を目指すためには、風力発電を含む再生可能エネルギーのさらなる導入促進を行う必要があります。
 沿岸地域は風力発電のポテンシャルが高く、釜石市から遠野市、大槌町にかけて大規模な発電所の導入実績があるほか、運転開始を目指して複数の事業が計画されており、電力自給率65%の目標には、これらの事業計画の実現を見込んでいるところであります。
 今後も引き続き、国及び市町村と連携し、風力発電事業について許認可等の手続を通じた指導を行うとともに、環境アセスメントを適切に運用し、環境との調和に配慮した再生可能エネルギーの導入を図ってまいります。
 次に、水素利活用の促進についてでありますが、県では、水素利活用推進プロジェクトにおいて、本県の豊富な再生可能エネルギー資源を最大限に活用し、再生可能エネルギー由来の水素を多様なエネルギー源の一つとして利活用する取り組みを通じて、低炭素で持続可能な社会の実現を目指すこととしております。
 具体的には、再生可能エネルギーからつくられた水素を中山間地域などで利活用する再生可能エネルギー由来の水素の利活用推進、水素ステーションの整備促進に向けた研究会の開催や、燃料電池自動車の導入の働きかけを行う水素関連製品等の普及促進などの取り組みを進めることとしております。
 県内での燃料電池自動車の普及には、水素ステーションの整備が必要不可欠であることから、研究会開催による機運醸成の取り組みに加え、整備上の課題解決に向けた関係団体等との意見交換、水素関連企業訪問による水素ステーション整備に向けた意向調査などを行うこととしており、これらの取り組みを通じて、水素利活用推進プロジェクトを着実に進めてまいります。
〔保健福祉部長野原勝君登壇〕
〇保健福祉部長(野原勝君)まず、被災者の心のケアについてでありますが、岩手県こころのケアセンターでは、沿岸7市町村に震災こころの相談室を開設し、精神科医による相談支援を行っているほか、市町村の特定健診などで保健師等の専門職が相談対応しており、昨年度の延べ相談支援件数は7、611件で、おおむね横ばいで推移しています。
 いわてこどもケアセンターでは、沿岸3地域における巡回相談などを行っており、昨年度の延べ受診件数は1、509件で、同様に、おおむね横ばいで推移しています。
 被災地においては、時間の経過に従って被災者が抱える問題が複雑化、多様化しており、震災直後からの被災によるストレスに加え、復興の進展に伴う生活環境の変化が精神的な負担になっていると考えられ、中長期的な支援が必要と認識しています。
 このため県としては、第2期復興・創生期間においても見守り活動等と連携した相談支援体制を堅持し、被災者一人一人に寄り添った支援を継続するとともに、専門スタッフ確保やスキルアップ等により支援の質を高め、両センターを拠点とした心のケアに取り組んでまいります。
 次に、ワクチン接種に係る市町村への支援体制についてでありますが、住民を対象としたワクチン接種については、法令に基づき、市町村が実施主体となって体制整備を進めているところであり、県では、市町村において課題となっているワクチン搬送や相談、予約の窓口となるコールセンターの設置、医療従事者の確保などについて、市町村との意見交換会を開催し、県の取り組み状況等を情報提供するなど、課題解決に向けた支援を行っています。
 また、県では、地域の医療資源の状況に応じて、市町村に対して二次医療圏域内での共同接種の提案を行っているほか、他の医療圏からの派遣応援による医療従事者の確保などについても、関係機関と調整を進めております。
 今後においても、県の役割である医療従事者等への優先接種を円滑に実施するとともに、市町村や医師会、医療機関等と緊密に連携しながら、住民へのワクチン接種が、安全かつ迅速に実施できるよう取り組んでまいります。
 次に、困難を抱えた方々への支援についてでありますが、新型コロナウイルス感染症の影響により、県社会福祉協議会が実施する生活福祉資金の特例貸し付けや生活困窮者自立相談支援機関における新規相談の件数は大幅に増加しており、人員体制の確保が必要と考えております。
 県では、社会福祉協議会や自立相談支援機関において、支援に必要な人員体制が確保できるよう、令和3年度当初予算案において、生活福祉資金の特例貸し付けの実施等に要する経費及び自立相談支援機関の体制強化に要する経費を計上したところであります。
 今後は、貸し付けが終了した後の生活再建に向けた家計の見直しや就労に向けた支援など、包括的な支援がさらに重要となりますことから、社会福祉協議会と自立相談支援機関との連携強化や相談対応力の向上に係る支援も必要と考えており、県では、これらの機関の相談員等を対象とした研修会を開催し、事例検討を通じて具体的な連携のあり方や支援技術の取得等を支援することとしております。
 県としては、社会福祉協議会、生活困窮者自立相談支援機関における人員体制の確保や相談対応力の向上を支援しながら、引き続き、これらの機関と連携し、さまざまな困難を抱える方々に適切な支援が行えるよう取り組んでまいります。
 次に、子育て支援についてでありますが、議員御紹介の盛岡市子ども未来基金は、平成28年度に設置され、市からの出資金と住民と企業等からの寄附金を積み立て、市民等が行う子供、子育てを支援する活動に助成するものと承知しています。
 同様の取り組みとして、県、市町村、民間団体と共同で出捐し、平成21年度から、いきいき岩手支援財団が管理しているいわて子ども希望基金があり、その運用益を活用し、民間団体等が取り組む結婚を希望する男女の出会いの場づくり、子育て家庭の交流促進などの地域における子育て活動、いわて子育てにやさしい企業認証企業の子育てにやさしい職場環境づくりに支援をしているところであります。
 また、県においては、ふるさと納税制度に子どもの居場所づくり応援の寄附項目を設け、子ども食堂の開設などの支援を行っているところであります。
 いわて子ども希望基金やこうした寄附を有効に活用することで、民間団体や企業等による結婚、子育て、仕事と子育ての両立の取り組みを支援していく考えであります。
 次に、不妊治療の支援についてでありますが、県では、子供を持つことを希望する方々のため、不妊治療等を支援することが重要であると認識しており、県内で希望する治療が受けられるよう、施設、設備の整備や専門人材の養成など、治療提供体制の充実を図るための支援について、国に要望しているところでございます。
 また、不育症検査費用や妊孕性温存療法に係る費用への支援については、国において来年度から実施することとしており、県では、令和3年度当初予算案に必要な経費を盛り込んだところでございます。
 通院交通費支援については、本年1月から特定不妊治療に対する助成の拡充が図られたことに加え、令和4年度からは、特定不妊治療の保険適用が予定されており、さらに治療費の負担軽減が図られることから、まずはその状況を注視してまいります。
 次に、ICTを活用した健康増進施策についてでありますが、新型コロナウイルス感染症拡大によって、日々の健康管理の重要性は高まっており、このような変化に対応した新たな日常として、ビッグデータ活用やスマホなどのデジタル技術を活用した健康づくりの取り組みが重要であると認識しています。
 県では、健幸づくりプロジェクトにおいて、ICTを活用したデータヘルスの展開を図ることとしており、今年度は、健康、医療、介護データを活用するビッグデータの連携基盤の構築、個人の健康情報等をスマホなどで見える化するパーソナルヘルスレコードを用いた健康づくり西和賀モデルの構築、スマホビッグデータを活用した高齢者の社会参加促進モデルの構築などの事業を推進してきたところであります。
 今後、各自治体における健康増進に向けて、国保における健康と医療に関する分析データを市町村へ還元していくとともに、モデル事例の県内自治体への横展開を図っていくこととしており、データ活用支援やモデル事例から得られたノウハウ等の共有を図りながら、市町村や関係機関と連携して取り組みを進めてまいりたいと考えております。
〔復興局長大槻英毅君登壇〕
〇復興局長(大槻英毅君)(仮称)いわて被災者支援センターについてでございますが、支援の必要な方の把握につきましては、当センターに当然直接相談される方に加えまして、一般的な相談や被災者の日常的な見守りの対応をしております市町村や市町村社会福祉協議会から、専門的な支援を必要とする被災者の情報提供を受けることとしております。
 支援に当たっては、当センターの相談員が、市町村や市町村社会福祉協議会の職員とともに被災者の方々を訪問して、支援ニーズや状況を把握した上で個別支援計画を作成し、被災者一人一人の状況に応じた支援を市町村等との十分な連携のもとに行うこととしております。
 また、内陸、それから県外へ避難されている方々につきましては、避難先の市町村と連携しつつ、実態調査を行った上で、ふるさとへの帰還の意思の確認を行い、この帰還の御意思のある方々について帰還への支援を行うなど、避難者のニーズに応じた支援を行うこととしております。
 こうした被災者個々の状況に応じた専門的な支援の取り組みは、今後起こり得る大規模災害時の支援、それから市町村の福祉行政などに生かせるものと考えておりまして、市町村等とのノウハウの共有も図りながら、被災者一人一人に寄り添った支援に取り組んでまいりたいと考えております。
〔ふるさと振興部長佐々木淳君登壇〕
〇ふるさと振興部長(佐々木淳君)まず、デジタル化における市町村への支援についてでありますが、県におきましては、全市町村が参画する岩手県電子自治体推進協議会を設置し、これまで、岩手県情報セキュリティークラウドの導入や共同運用における情報セキュリティー対策、デジタル技術の能力向上に向けた研修会の開催等の支援を行ってきたところであります。
 今後、設置予定の官民連携の推進組織では、これまで市町村と連携し取り組んできた協議会の枠組みを生かしながら、国が策定した自治体デジタル・トランスフォーメーション推進計画に基づいて、自治体の情報システムの標準化、共通化やマイナポータルを活用した自治体の行政手続のオンライン化など市町村と共同で推進するとともに、こうした取り組みを支える自治体のデジタル人材の確保、育成等を支援していく考えであります。
 次に、デジタル化における民間事業者への支援についてでありますが、現在、県におきましては、県内企業の生産性向上に向け、東京大学等と連携したAI人材の育成や、企業ニーズに対応したIoT専門家の派遣等を行っております。
 また、国におきましても、ものづくり補助金やIT導入補助金などの各種補助制度や専門家派遣事業等により、中小企業のデジタル化の支援等に取り組んでいます。
 今後、設置予定の官民連携の推進組織では、県民ニーズや県内のデジタル化の状況、先進事例等について共有し、各業界のデジタル化、さらには業界を超えた連携によるデジタル化の推進に向けて、経済産業省や国土交通省等国の支援制度も活用しながら、企業のデジタル化を支援していきたいと考えております。
 次に、デジタル活用支援員の活用についてでありますが、今年度、国におきましては、デジタル活用支援員事業の実証事業が全国11カ所で展開されており、本県では、陸前高田デジタル推進協議会が本事業を実施しております。
 令和3年度には、今年度の実証事業の結果を踏まえ、誰ひとり取り残さない、人に優しいデジタル化に向け、国民がデジタル社会の利便性を実感できるよう、デジタル活用支援を6月ごろから展開することとしています。
 県といたしましては、こうした国の取り組みについて、関係者と情報共有し、利活用を働きかけていくとともに、ICTセミナーの開催を初め、県のアドバイザーと市町村が連携した高齢者等向け出前講座の実施など、デジタル社会の恩恵を高齢者など多くの県民が実感できるよう、デジタル活用支援に取り組んでまいります。
〔商工労働観光部長戸舘弘幸君登壇〕
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君)まず、IT人材の育成についてでありますが、社会全体のデジタルトランスフォーメーションが求められている中、これに対応するIT人材の育成も重要な課題であると認識しています。
 県では従前から、公共職業訓練において、地域の企業からのニーズ等を踏まえ、国家資格である情報処理技術者試験の合格を目指す2年間のコースのほか、ウエブやネットワーク技術の知識、技能等を習得する2カ月間から6カ月間のコースを設けています。
 これらの訓練におきましては、知識、技能等の訓練に加え、就職指導や求人情報の提供を行うほか、就職後においても、ヒアリング等を通じて定着支援等を行い、求職者の知識、技能の習得と就職を一体的に支援しています。
 また、産業技術短期大学校、高等技術専門校においても在職者向けの職業訓練を実施し、従業員の教育訓練や能力開発を支援しています。
 引き続き、こうした職業訓練の周知を図り、求職者や事業者に活用していただきながら、地域に必要なIT人材の育成に取り組んでまいります。
 次に、医療機器関連産業集積拠点の拡充についてでありますが、令和2年4月に開所したヘルステック・イノベーション・ハブは、医療機器関連企業やIT関連企業、ロボット関連企業など、これまでに11社が入居し、現在、貸し研究室の空室は1室のみとなっているところであります。
 入居企業では、県内外の企業や大学、試験研究機関等と連携した製品開発や最先端の共同研究が進められているほか、県内企業の新規参入や取引の拡大につながる取り組みも行われておりまして、ヘルステック・イノベーション・ハブを拠点とした製品開発の新たな仕組みも検討されているところであります。
 県といたしましては、まずは、入居企業等の共同研究による製品開発や県内企業との取引のさらなる拡大、産業を担う人材の育成、確保など、各企業の成長に向けた取り組みを支援し、イノベーションが継続的に創出されるよう取り組んでまいります。
 拠点施設のさらなる拡充につきましては、関係自治体とも連携し、企業の動向やニーズ等の的確な把握に努めてまいります。
 次に、起業家支援の取り組みについてでありますが、県では、商工指導団体、産業支援機関、金融機関等と連携して、起業に関する相談への対応や、いわて起業家育成資金による設備、運転資金の融資、岩手イノベーションベースにおける学びや交流の機会の提供などにより起業家を支援しています。
 支援に当たりましては、県内のどの地域においても起業し、成長することができる環境を整えることが重要と考えており、産業支援機関による起業相談や、岩手イノベーションベースにおける取り組みについては、オンライン会議システムを活用して、県内各地から起業家や起業を目指す若者等が参加しやすいようにしているところであります。
 拠点整備につきましては、国の地方創生テレワーク交付金を活用し、市町村と連携してテレワークオフィスの整備を進めているところでありまして、これら各地域における起業家支援の拠点において、先ほど述べたような各種支援策を活用いただきながら、起業準備から起業後の成長までの切れ目のない支援をしてまいります。
 次に、移住、定住の促進についてでありますが、県では、首都圏に岩手県U・Iターンセンターといわて暮らしサポートセンターを設置し、市町村において移住支援を行っている岩手県移住コーディネーターと連携して、移住希望者一人一人の相談内容に応じた情報提供を行っています。
 また、移住相談会やセミナーなどを市町村と連携して開催しており、各地域で活躍している地域おこし協力隊や、さまざまな仕事で生きがいを持って働く先輩移住者との交流や相談の機会を設けているところであります。
 さらに、移住希望者一人一人が、その能力を発揮し、やりがいを持って働き、暮らすことができるよう、地域おこし協力隊の募集情報や就職情報マッチングサイト、シゴトバクラシバいわて登録企業の求人情報も提供しながら、移住先や仕事のマッチングにも取り組んでいます。
 これらを進めていくに当たりましては、移住者を実際に地域で受け入れる市町村との連携が重要であり、今後とも、市町村に対し、移住支援等に係る情報発信の強化を促しながら、若者を初めとした移住希望者に寄り添い、きめ細かく支援してまいります。
〇3番(小林正信君)再質問させていただきます。
 東日本大震災津波の復興ということで、産業振興について知事から御答弁いただきました。サテライトオフィスやテレワークオフィスも設置していくような取り組みを応援していくということでしたが、以前、私は、研究拠点のあるところに産業集積が進むというお話をさせていただきました。昨年、大学の誘致やサテライトの設置について質問させていただきましたが、そのとき、当時の政策地域部長から幾つか大学から問い合わせをいただいていると御答弁をいただきました。
 昨日の岩城元議員の質問の中でも、東京大学や足利大学が洋上風力とか風力発電の実証の関係で来られているとお話がありました。また、この洋上風力については、さまざまな大学等との連携もあるということで、沿岸地域に大学の研究拠点として、例えば洋上風力発電の研究拠点などができる可能性もあるという気もしておりましたが、この大学のサテライトについて何か進捗があったのかということ。また、陸前高田市には廃校を利用した岩手大学のサテライトキャンパスがありますが、このように廃校などを活用した大学のキャンパスやサテライト誘致などについてのお考えもお伺いしたいと思います。
 もう一点、いわて被災者支援センターについてです。今回、およそ4、000万円の事業ということでした。令和2年度は内陸避難者支援センターと沿岸4地域の相談センターの事業について、7、300万円ということで事業が行われたところでありますが、相談支援について、内陸避難者支援センターがなくなって、沿岸地域に移ったという認識でありますが、この相談支援の部分でかなり予算が減っていることが気になりました。
 今回の新たな事業は、内陸避難者支援センターの取り組みを沿岸被災地に比重を置いて行うものという理解でおりますが、内陸避難者支援センターは、内陸避難者の支援をされている上に、沿岸の仮設住宅からなかなか出られない方を一軒一軒回って、自立に向けて一生懸命支援していただいて、かなり御苦労もされ、大変な仕事をしていただいたと思うのですが、これは、岩手モデルとして全国的にもかなり注目されていると伺っております。
 今回の支援は、伴走型支援として、これをまず1年間しっかりと行っていただき、必要性と重要性を確認していただいた上で、これは全額国から支援があると思いますので、この予算が7、300万円から4、000万円に下がったというのは残念だなと思うので、しっかりした予算措置をぜひ行っていただきたいと思います。
 あと、先日、小西和子議員も質問されておりましたが、内陸避難者の支援もまた継続してこの事業で行っていくということでしたので、内陸と沿岸に1カ所ずつ、県全体をフォローしていくためには必要かと思いますので、その部分を改めてお聞きしたいと思います。
〇ふるさと振興部長(佐々木淳君)サテライトの誘致でありますが、県では来年度、内閣府が中心となって開催する防災推進国民大会、それから県と市町村が行う併催事業を通じて、震災の教訓、復興支援への感謝の思いを発信するとともに、三陸地域が防災を学ぶ場とする取り組みを進めたいと考えております。
 また、内閣府の地方創生推進室では、昨年度に引き続き、今年度も地方へのサテライトキャンパス設置の可能性や意向確認調査を行っておりまして、県では手を上げさせていただいております。
 本県は多様な資源や研究フィールドを有していることから、防災を初め、例えばILC実現を見据えた分野など、現在、ネットワーク構築されています大学等も含め、本県にふさわしい分野の実現の可能性について、引き続き調査研究してまいりたいと思っています。
〇復興局長(大槻英毅君)これまで被災者の相談支援につきましては、沿岸に四つあった被災者支援センターと内陸避難者支援センターということで五つで行ってきておりましたけれども、相談支援センターの相談件数は平成25年がピークでございまして、これが6、000件を超える数でございました。これが、今年度は1月末の時点で370件という状況になっておりまして、その内容も、一般的な住宅や健康に関する相談が多くなってきているということで、実態としては、市町村の既存の各担当部署に紹介して対応しているケースが、ほぼ全てという格好になっております。
 一方で、複雑化、多様化した相談についても当然あるわけでございまして、これらにつきましては、令和元年度からは、いわて内陸避難者支援センターが、盛岡市から沿岸のほうに出向いて行っていたということで、今般、沿岸地区に設置するいわて被災者支援センターが行うことを予定しているものでございます。
 また、内陸避難者支援センターが担う県内内陸と県外避難者の支援でございますが、例えば、県外のみなし仮設住宅に入居していた避難者が、恒久的な住宅に4月からは皆さん移り住む格好になります。そうしますと、今度は、実態調査に基づきまして、本県に帰還の意思のある避難している方々を中心に支援するという格好になると思います。そのため対応する人数が減ってくると考えておりまして、一定程度の経費が圧縮されるものと考えてはおります。
 こうしたことから、当センターについては、何とか計上した当初予算額で運営可能とは考えておりますけれども、被災者のニーズ、それから、被災地の実情を踏まえまして、支援のあり方につきましては継続的に検討していくこととしておりますので、その検討の中で必要な見直しを図っていきたいと思っております。
〇3番(小林正信君)大学のサテライトに関してはぜひ、前にも鶴岡市の例を取り上げさせていただきましたけれども、鶴岡市長が、絶対大学を持ってくるという一念を持って、ここに慶應大学のサテライトができたという例もありましたので、ぜひ、県もリーダーシップをとっていただきながら、大学の誘致と研究拠点施設といった部分の沿岸振興を図っていただきたいと思います。
 また、いわて被災者支援センターについて、予算はこれが妥当という御答弁であると思いますが、ことし1年行っていただいた上で、今後も予算はしっかりと検討を図っていただけるようにお願いしたいと考えています。
 最後に、医療機器関連産業について、知事から戦略をつくっていくという御答弁をいただきました。
 今、盛岡市の新産業等用地の第二事業区の整備が発表されて、ここはもともと道明地区に医療機器関連産業の集積を図るものだったのだろうと私は勝手に考えていますが、この第二事業区に関しては、盛岡市としても、今度こそヘルスケア産業の拠点にしていくという思いがあるものと、これも私が勝手に感じています。そうした部分で、盛岡市もここを健康増進スマートシティのようにしていきたいという思いもあるかと考えています。
 例えば、ここにセンター的な何か、先ほど述べたヘルステック・イノベーション・ハブの第2棟目を持ってくれば、医療機器関連産業もかなり盛り上がっていくのかなという考えもありますけれども、そのあたりのお考えについてお答えいただければ助かります。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君)先ほど御答弁申し上げました拠点施設のさらなる拡充ということにつきましては、これから、その関係自治体とも連携しながら、企業の動向、ニーズを把握していきたいという考えであります。
 御紹介のありました盛岡市の新産業等用地第二事業区に医療機器関連産業の集積を図ることにつきましては、盛岡市との連携が重要だと考えておりますので、しっかりと連携してまいりたいと思います。
〇議長(関根敏伸君)以上をもって一般質問を終結いたします。
   
日程第2 議案第1号令和3年度岩手県一般会計予算から日程第98 議案第97号都市計画道路盛岡駅本宮線杜の大橋(上部工)工事の請負契約の締結に関し議決を求めることについてまで
〇議長(関根敏伸君)この際、日程第2、議案第1号から日程第98、議案第97号までを一括議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑の通告がありますので発言を許します。斉藤信君。

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