令和3年2月定例会 第12回岩手県議会定例会会議録

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〇47番(工藤勝博君)いわて県民クラブ、工藤勝博です。
 まず、あと1週間で東日本大震災津波発災から10年になります。この10年、たび重なる自然災害が数多く発生しました。多くの皆さんのとうとい命が失われております。そしてまた、昨年から新型コロナウイルス感染症による100年に1度というパンデミックでも、多くの方がとうとい命をなくしております。亡くなりました皆様にの場をおかりしまして哀悼の意を表したいと思います。
 それでは、通告に従って質問をさせていただきます。
 まず、コロナ禍における県財政といわて県民計画(2019〜2028)の施策についてお伺いいたします。
 令和3年度一般会計当初予算案が提案されました。総額は8、105億円で、東日本大震災津波後に編成されました平成24年度以降で最小規模であります。この10年、震災復興事業に大方のめどがついたのもつかの間、昨年から世界中に感染拡大して猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症の対策には959億円で、感染拡大の防止、医療体制の強化、経済活動支援などが計上されています。現下の最重要課題として感染対策を徹底して、一日も早い収束を願うものであります。
 県財政については、震災復興事業が拡大の折には県税収入も増加しておりましたが、事業規模の縮小とともに税収も減じております。さらに、新型コロナウイルス感染症感染拡大による不要不急の移動の制限がなされ、経済活動に大きなブレーキがかかっており、観光にかかわる事業、飲食業、食産業、農林水産業など多大な影響を受けており、今後の税収確保に影響を与える事態も想定されます。
 税収の減少は財政の硬直化を招き、政策の立案にも期待が持てなくなります。中期財政見通しで年90億円超の歳入不足が見込まれている中、県税収入の現状をどのように認識しているのか知事にお伺いいたします。また、このような状況にこそ、税収の確保を図るために政策を進めるべきではないでしょうか。見解をお聞きします。
 令和2年県の施策に関する県民意識調査の実施時期が新型コロナウイルス感染症感染拡大前の令和2年1月から2月であったことから、今の世情とは大分空気が違うと感じますが、県民の抱いている感情は素直に受けとめ、政策に反映させるべきと思います。
 県民意識調査の第1問は、生活の満足度についてです。広域圏ごとに平成28年、平成29年を境に県央広域圏、沿岸広域圏は満足、やや満足が不満、やや不満を上回っています。県北広域圏では、全ての調査時点で不満が満足を上回り、その差は拡大の傾向にあります。ここにしっかりと目を向け、成果の見える施策が必要と考えます。
 第2問は、暮らしにとっての重要度、満足度、ニーズ度についてです。重要度の高い項目は、交通事故の少ない社会づくり、犯罪への不安の少ない社会づくり、適切な医療体制です。満足度では、県ゆかりの芸術家やスポーツ選手の活躍、ごみ減量やリサイクルの定着、購入する食品の安全性に不安を感じない社会です。ニーズ度では、安定した就職環境、農林水産業の担い手確保、商店街のにぎわいの項目が高くなっています。
 第3問は、幸福度についてです。県平均では幸福の割合は56%、幸福と感じないと思っている方はほぼ一定で18%前後です。ただし、県北広域圏では、幸福を感じるは51%、感じないはおおよそ19%で、他の広域圏との差は歴然とあります。いわて県民計画(2019〜2028)の目指している互いに幸福を守り育てる希望郷いわては、かけ声倒れに終止しかねません。
 県民意識調査の結果が令和3年度予算案の施策にどのように反映されているのか、知事にお伺いいたします。
 いわて県民計画(2019〜2028)における10の政策分野については、先ほどの県民意識調査により、県民の実感を確認しながら政策評価し、それを踏まえて新年度事業に反映させていくことにしておりますが、県では、今年度新たに創設したふるさと振興部に県北・沿岸振興室を設置し、県北広域圏を中心としたゾーンプロジェクトである北いわて産業・社会革新ゾーンプロジェクトに取り組んでいると認識しております。
 そこでお聞きします。県北広域圏の課題をどう捉え、どのように取り組もうとしているのかお伺いいたします。
 以後の質問は、降壇して質問席で行います。
〔47番工藤勝博君質問席に移動〕
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君)工藤勝博議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、県税収入の現状認識と税収確保のための政策についてでありますが、令和3年度当初予算案における県税収入については、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う企業業績の減退等により、今年度の当初予算と比較して97億円余の減となる1、217億円余を計上しており、厳しい状況にあると認識しております。
 このような中、まずは、新型コロナウイルス感染症の影響により大きく収入が減少する事業者に対し、貸付金の融資や支援金の給付など事業継続に向けた支援を行うとともに、新しい生活様式に対応するための業態転換やオンライン販売等、生産性向上に取り組むための支援を行います。
 また、現在、あらゆる分野でデジタル化の進展や5Gなどの実用化が進んでおり、このような先端技術の活用は、本県産業の技術革新のエンジンとなり、企業の生産性向上にもつながることから、いわて県民計画(2019〜2028)のアクションプランに盛り込んだ施策や11のプロジェクトの取り組みを連動し、加速させながら、さらなる産業振興や新産業創出につなげてまいります。
 このような取り組みにより、ものづくり産業や農林水産業などの産業政策を総合的に展開することで、産業全体の底上げと地域経済の持続的な成長を促し、税収確保に結びつけていく考えであります。
 次に、令和2年県の施策に関する県民意識調査結果の反映についてでありますが、政策の推進に当たっては、いわて幸福関連指標の達成状況や県民意識調査で把握した県民の実感等を踏まえ、政策分野の評価や政策立案の検討を行い、次年度の政策に反映しているところです。
 幸福度に関する調査を開始した平成28年以降、県北広域振興圏の幸福度や生活満足度の県民実感は、他の圏域に比べて低い状況が続いており、このため、北岩手の持つすぐれた地域資源を活用した地域振興を図り、このような状況を改善していかなければならないと考えております。
 このような認識のもと、県民意識調査における重要度やニーズ度なども踏まえながら、県北・沿岸振興本部のほか、政策推進クロス・ファンクショナル・チームや北いわて産業・社会革新ゾーンプロジェクトワーキンググループにおいても、部局横断的に検討を行い、令和3年度当初予算案において、地域特性を生かした産業の振興、御所野遺跡の世界遺産登録を契機とした観光振興、再生可能エネルギーを生かした地域の活性化などを進めるための事業を盛り込んだところであります。
 次に、北いわて産業・社会革新ゾーンプロジェクトによる県北振興についてでありますが、北岩手は、豊かな地域資源を有する一方で、全県と比べ人口減少と高齢化が進行している地域であることから、ゾーンプロジェクトでは、北岩手の高いポテンシャルを最大限に発揮させる地域振興を図るとともに、人口減少と高齢化、環境問題に対応する社会づくりを一体的に推進しています。
 具体的には、アパレル産業における自社ブランド展開の支援や漆関連産業におけるインターンシップ研修、ブランド果物の販売促進、情報発信に取り組むほか、北いわて型スマート農業技術の導入促進など、地域特性を生かした産業振興に取り組んでいます。
 また、三陸沿岸道路の全線開通や御所野遺跡の世界遺産登録を見据え、八戸地域や鹿角地域との県境を越えた連携による情報発信や周遊促進など、広域的な交流人口の拡大に向けた取り組みを進めています。
 さらに、再生可能エネルギーを生かした地域の活性化を推進するため、北岩手9市町村と横浜市が締結した再生可能エネルギーの活用を通じた連携協定に基づく事業展開の支援などにも取り組んでいます。
 引き続き、こうした施策を北岩手の市町村や団体、企業など多様な主体と連携して進めることにより、あらゆる世代がいきいきと暮らし、持続的に発展する先進的な地域の創造に取り組んでまいります。
〇47番(工藤勝博君)財政についてちょっと踏み込んでお伺いいたします。
 県税の大幅な減収が見込まれることから、今年度予算でも一層の選択と集中ということで進められ、財源の重点的な活用に努めるということでありますけれども、その矛先が、私は農林水産部の当初予算案になっているのかなということで大変心配しております。例年にない33.2%の減ということで、それらを私もどう判断したらいいのか難しいなと思っていました。知事査定においての農林水産業予算、1次産業のその位置づけも含めて改めてお聞きしたいと思います。
〇知事(達増拓也君)来年度予算は、新型コロナウイルス感染症の対策と復興の新しいステージを着実に進めながら、いわて県民計画(2019〜2028)のそれぞれの政策分野の事業を進め、また、プロジェクトにも取り組んでいくという中で、農林水産業に関しましても、それぞれの現場でどのような事業が望まれているのか、継続させるべきもの、また新しく実施するものをそれぞれ吟味して、令和3年度予算案を編成したものであります。
〇47番(工藤勝博君)予算編成のかなめとして選択と集中ということで、以前もそういう方向で予算編成をしてきたと思いますけれども、行政の運営にとって選択と集中というのはいかがなものかと思って、改めてお聞きしたいと思います。
 この選択と集中は、1990年代から2000年にかけての日本のバブルが崩壊した後に、一般の企業が、経営改善ということでこの選択と集中を取り入れ、それぞれの会社にとっても経営戦略だということが言われております。
 行政においては、命と暮らしと、そして財産を守るのが大きな行政サービスのかなめだと思いますけれども、この選択と集中を行政の運営に取り入れ過ぎても、私はバランスを欠くのではないかという思いもしております。その辺の選択と集中の捉え方を改めてお聞きしたいと思います。
〇政策企画部長(八重樫幸治君)令和3年度当初予算案におきましては、県が担うべき行政サービスについて必要な経費を計上する一方で、施策の優先順位を洗い直し、予算を重点化することで、政策形成に重要な施策あるいは10の政策分野に係る事業等を検討し、施策のブラッシュアップと政策の重点化を図ったところでございます。
 農林水産業に関しましては、例えば、収益性の高い食料・木材供給基地をつくる取り組みであるとか、農林水産物の付加価値を高め販路を広げる取り組み、あるいは一人一人に合った暮らし方ができる農山漁村をつくる取り組みといったところに施策の重点化を図って、予算化をしたところでございます。
〇47番(工藤勝博君)一般の企業でも選択と集中を取り入れて成功した企業もあるということですけれども、それ以上に、行き詰まる、失敗している例も多々あるということを伺っております。それらを含めて、行政の運営の中での選択と集中は十分慎重にやるべきだろうと思いますので、次年度以降もよろしくお願いしたいと思います。
 次に、マイナンバーカードの普及推進についてお伺いいたします。
 マイナンバーカードについては、昨年、コロナ禍で、1人につき10万円の特別定額給付金をめぐる混乱など、自治体の行政手続の非効率性が改めて浮き彫りになっていました。暗証番号を忘れた人が再設定を求めたため市町村窓口が混雑し、給付先の口座情報の確認に手間取るなどして、オンライン申請を中止した自治体があり、問題視されています。このことからもマイナンバーカードの使い勝手、利便性が改めて見直された機会でもあります。
 国では、行政サービスのデジタル化推進の鍵は、マイナンバーカードの普及が必然と捉えています。全国の普及率は1月末現在で約25%にとどまっていますが、マイナンバーカード取得者がキャッシュレス決済で買い物やチャージをすると、利用額の2万円を上限に25%分、上限5、000円のポイントが付与されます。また、3月からは、健康保険証のかわりに本格的に使えるようになるほか、運転免許証との一体化も検討されています。
 このように、マイナンバーカードの普及は、行政サービスの向上と行政の効率化の切り札として期待されていることから、県の普及推進の取り組みが重要と考えます。
 県では、もっと利便性の拡大、ポイント付与事業などマイナンバーカードの周知を図り、普及につなげるべきと考えますが、県の取り組みについてお伺いいたします。
〇ふるさと振興部長(佐々木淳君)県におきましては、マイナンバーカードの普及拡大に向けて、市町村と連携し、上限5、000円相当となるマイナポイントによる消費活性化策について、チラシの作成、配布や新聞広告による周知に取り組んでまいりました。
 また、市町村におきましては、マイナンバーカードの交付に当たり、土日や平日夜間の開庁、出張による申請受け付けなどの取り組みを行っております。
 マイナンバーカードの普及率が伸びない原因として、取得のメリットが実感できないという声もありますが、議員御指摘のとおり、この3月からマイナンバーカードの一部医療機関での健康保険証としての利用が開始されることや、図書館の貸出カードとしての活用など、利便性向上の取り組みを引き続き進めながら、市町村と連携して、取得によるさまざまなメリットのPRを行うなど、マイナンバーカードの普及拡大に取り組んでまいります。
〇47番(工藤勝博君)国でも2022年までに全戸での普及を図るということで、2020年の補正予算でもかなりの額の事業計画を立てているようであります。ぜひとも、県でも率先して普及拡大に努めてほしいと思います。
 それから、3月からマイナンバーカードが健康保険証として利用されるということであります。県立病院の準備状況はいかがでしょうか。
〇医療局長(熊谷泰樹君)県立病院での準備状況についてでありますが、国においては、この3月から、マイナンバーカードを健康保険証として利用することにより、診療時における確実な本人確認と保険資格確認が可能となる、いわゆるオンライン資格確認の開始を予定しております。
 県立病院におきましても、この3月下旬から、各県立病院、地域診療センターにおきまして、従来の健康保険証に加えて、マイナンバーカードを健康保険証として利用できるよう、カードリーダー等の機器整備及び院内システムの改修を進めているところでございます。
〇47番(工藤勝博君)県立病院も含めて、他の医療機関もこういう方向に進むだろうと思います。その辺のリーダーとしても県立病院の役割は大きいと思うので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 次に、農業振興について3点ほどお伺いいたします。
 まず、令和2年12月からの大雪被害の対策についてであります。
 近年では、夏はゲリラ豪雨、巨大台風、冬は記録的な大雪、また爆弾低気圧の影響で暴風雪被害が頻繁に発生しています。雪害は雪国の宿命とはいえ、その事態を回避する知恵と行動が必要であります。気象情報の精度が格段に高まっている状況下でも、この被害を未然に防ぐ手段が少ないことも現実であります。
 私も現場に身を置く一人として、今回の大雪被害の対策には、国、県、市町村、また関係団体の総力での支援が必要です。園芸ハウス、育苗ハウス、格納庫等、農家の生産基盤でもあります。施設の復旧、営農再開への支援策の概要は示されておりますが、ただ原状復旧するだけの施設ではなく、異常気象に耐用できる施設にすべきだと考えます。
 持続可能な経営基盤を確保するためにも、県の再建支援の方策をお伺いいたします。
〇農林水産部長(佐藤隆浩君)大雪被害への対策についてでありますが、県では、被災したパイプハウスの撤去や再建等につきまして、国の支援策に県と市町村が上乗せして補助することとし、支援に必要な経費を盛り込んだ補正予算案を今定例会に追加提案したところでございます。
 被災したパイプハウスの再建に当たりましては、原形復旧のみならず、補強の取り組みも対象としております。また、今回の大雪被害対策とは別に、自然災害の発生にあらかじめ備えパイプハウスを補強する場合は、活用可能な国の補助事業が別にありますことから、こうした情報を生産者に提供することとしております。
 さらに、今般、低コストで農業用ハウスの強度を高める方法を写真やイラストを用いてわかりやすく解説いたしました農業用ハウスの補強マニュアルを1万部作成したところでありまして、現在、農業共済組合を通じて生産者等に配布を始めましたほか、多くの生産者が活用できるように県のホームページにも掲載しているところであります。
 今後は、こうしたマニュアルも活用いたしまして、パイプハウスの補強対策の研修会等を開催するなど、関係機関、団体と連携しながら、災害に強い産地づくりを進めてまいります。
〇47番(工藤勝博君)従来にないようないろいろな支援ということで、安心しました。ですけれども、今回の大雪被害は、岩手県を含め、日本海側の秋田県、山形県、新潟県あるいは北陸のほうまでのかなり広域的な被害でもあります。それらの資材の手配あるいは復旧に要する人材の確保等はどのような状況になっているのかお聞きしたいと思います。
〇農林水産部長(佐藤隆浩君)資材の確保でありますが、こちらは、広域的に被災をしたということで、パイプハウス等に要する資材が、全国的に同じ時期に一斉に必要となるような事態が想定されるということで、国におきましても、資材メーカー等に対して調達の要請をしているところであります。県も同じように、メーカー等に対しまして、迅速、円滑な資材調達を要請したところであります。
 また、人材の確保ということでありますが、こちらも、JAいわて中央会等が調整に入りまして、農業者や、認定農業者の方々も応援に入るということを聞いておりますので、こういったところで人材の確保等を図りながら、円滑な春の営農作業に向けた取り組みということで支援をしてまいりたいと思っております。
〇47番(工藤勝博君)もう春耕期が間近に控えております。できるだけ早く復旧をお願いしたいと思います。
 次に、農林業センサスから見る政策の展開についてお伺いします。
 2020年の農林業センサス調査の概数値が公表されました。確定値は間もなく公表されると思いますが、県内で農業を主な仕事とする個人経営の基幹的農業従事者が2月時点で4万4、429人となり、2015年の前回調査から1万4、733人、24.9%減少、平均年齢は前回調査よりも0.9歳上がり69.0歳、60歳以上が実に85%を占めています。
 一方、農業経営体のうち法人化したものは703経営体あり、15.2%ふえ、1経営体当たりの耕地面積が増加し、農地の集積と大規模化が図られています。
 また、産出額も2015年の2、494億円から毎年増加し、2018年には2、727億円で、東北地方では青森県に次いで第2位、全国では第10位の産出額を上げています。この背景には、2012年度から農産物の販売額3、000万円以上を確保する経営体を地域をリードするリーディング経営体と位置づけ、規模拡大や法人化に向けた支援を実施してきた成果であると私は強く感じています。
 しかし、残念なことに令和3年度の当初予算案には、積極的にリーディング経営体を育成する施策は見当たりません。私は、数値目標をしっかりと定め、それに向けた政策誘導をしていく必要があると考えますが、県の認識をお伺いいたします。
〇農林水産部長(佐藤隆浩君)リーディング経営体の育成についてでありますが、県では、販売額3、000万円以上または農業所得1、000万円以上を確保する経営体をリーディング経営体と位置づけまして、いわて県民計画(2019〜2028)の第1期アクションプランにおきまして、毎年度新たに15経営体を育成することを目標に掲げ、経営力の向上、経営規模の拡大などの取り組みを支援しております。
 具体的には、経営力の向上に向けまして、いわてアグリフロンティアスクールにおける経営感覚の醸成、農業団体等と連携して設置いたしました、いわて農業経営相談センターによる法人化、多角化に向けた税理士等の専門家派遣などに取り組むとともに、経営規模の拡大に向けまして、圃場整備や農地中間管理事業を活用いたしました農地の集積、集約化、いわて地域農業マスタープラン実践支援事業などによります機械、施設の整備支援などに取り組んでいるところであります。
 こうした取り組みによりまして、昨年度までの5年間で新たに72のリーディング経営体を育成したところでありまして、引き続き、本県農業を牽引する経営感覚にすぐれた経営体の育成に積極的に取り組んでまいります。
〇47番(工藤勝博君)農業の就労構造も変わりまして、かなり脆弱化してきました。この5年間に一層その度合いを強めており、地域農業の再構築が求められています。何よりも現状をきめ細かく分析し、それにとどまらず先々の見通しを立てる必要があります。県を初め関係団体が今回の農林業センサスの結果を有効に活用し、持続性のある農業のための支援、誘導が求められます。
 福島県では、新たに策定する農林水産業振興計画において、もうけて誇れる農業へを基本目標とし、将来目指すべき農林水産業の指針を定めているところでもあります。
 農林業センサスによると、県内で年間販売額3、000万円以上の経営体は970あり、前回調査から17.3%増加、また、年間販売額5億円以上は50経営体、3億円以上5億円未満は35経営体、1億円以上3億円未満は149経営体と大規模化がより進んでいます。
 今後5年、さらに経営の大規模化など大きな変化が予想されますが、県のこれらの先々の見解についてお伺いしたいと思います。
〇農林水産部長(佐藤隆浩君)地域農業の今後の見通しについてでありますが、県では、いわて県民計画(2019〜2028)の策定に当たりまして、本県農業の現状、社会経済情勢の変化、生産現場のイノベーション等の新たな動きなどを分析いたしまして、今後も、従事者の減少、高齢化が見込まれる中、本県の農業生産を維持、拡大できるよう、農地の集積、法人化の推進等により地域農業の核となる経営体を育成すること、次代を担う意欲ある新規就農者を確保すること、ICTの活用等による生産性、市場性の高い産地づくりを進めること、こういった内容を計画に盛り込んだところであります。
 先般公表されました2020年農林業センサスを見ますと、従事者の減少、高齢化が一層進行する一方で、販売額3、000万円以上の経営体や法人化した経営体の数が増加するなど、経営規模の拡大や経営の高度化が進んでおり、こうした傾向は今後も続いていくものと考えております。
 特に、経営規模の拡大が進む中で、必要となる労働力を補完し、生産の効率化や省力化につながる自動操舵やロボット、環境制御等のスマート農業技術が今後さらに高度化し、普及拡大していくものと見込まれているところであります。
 県では、こうした動きを的確に捉え、必要となる施策を講じながら、今後とも、地域農業を牽引する経営体の育成や新規就農者の確保、スマート農業の推進など、本県農業が持続的に発展していくよう全力で取り組んでまいります。
〇47番(工藤勝博君)今時点で平均年齢が69歳ということです。70歳になるとほとんどの方は離農し、現役から離れるというのが多いわけですけれども、ここ5年間にその流れがさらに加速度的に進むだろうと思っています。いろいろな担い手対策等も含めて、次世代の若い青年もふえていることは確かにふえているのですが、そういう若い世代に重点的な事業投入あるいは支援投入をしていくべきだろうと考えますので、ぜひとも、そういう取り組みを強化していただきたいと思います。
 それから次に、飼料用米の利活用についてお伺いいたします。
 2020年産米の作柄は、天候に恵まれ作況はやや良と全県的に豊作基調であり、稲作生産者にとっては収穫の喜びを感じたところであります。
 一方、新型コロナウイルス感染症の感染拡大などから緊急事態宣言が発出され、不要不急の外出自粛、飲食店の時間制限、外国人観光客の入国制限等から消費減が顕著になり、2020年産米の買い入れ価格が引き下がりました。予想を超える消費減、生産量の増加で需給バランスが崩れ、米価の下落につながって稲作経営に大変不安が広がっています。
 2021年産米においては、政府の需給対策を最大限に活用し、行政、JAグループ、稲作経営者、集荷業者などが一体となり、主食用米の需要均衡を図っていかなければなりません。
 県や農業団体で構成する県農業再生協議会は、2021年産米の主食用米生産目安を早期に公表しました。県は、主食用米から飼料用米などへ転換を促すための新規事業を提案しています。この事業を活用すると、国が県と同額を追加支援する助成と合わせ、生産者には10アール当たり1万円が支援されることになり、主食用米に劣らない収入が確保されるため、生産意欲の向上と水田のフル活用につながっていきます。
 また、畜産県でもある岩手県には、飼料用米の需要が相当数あると見込まれます。一時避難的な対応ではなく、この際、耕畜連携を強固にするまたとない機会ではないでしょうか。
 飼料用米の増産、利用拡大に向けた取り組みは過去にも実施しています。それらの経緯も踏まえながら、しっかりと飼料用米の利活用を構築すべきではないでしょうか。県の見解をお伺いいたします。
〇農林水産部長(佐藤隆浩君)飼料用米の利活用についてでありますが、県では、飼料用米の生産拡大を図るため、これまで、畜産経営体や飼料メーカーとのマッチングのほか、単収向上に向けた専用品種の導入拡大、作付の団地化、保管施設の整備への支援などに取り組んできました。
 こうした取り組みによりまして、飼料用米の作付面積は、平成28年に約4、700ヘクタールまで増加いたしましたが、近年、主食用米の価格が堅調であったことなどから、令和2年は約3、600ヘクタールとなっております。
 本県は、豚や鶏の飼養数が多く、また、飼料用米を活用して肉質等の差別化を図り、豚肉や鶏肉等のブランド化を進める取り組みも広まっており、飼料用米のさらなる需要が見込まれるところであります。
 令和3年は、主食用米から飼料用米等への大幅な作付転換が必要なことから、県では、飼料用米について、主食用米との収入差を補えるよう支援を拡充することとしております。
 今後とも、資料用米の継続的な利活用に向け、市町村や農業団体と連携しながら、需要が見込まれる畜産経営体等とのマッチング、安定供給に向けた複数年契約の推進など、飼料用米が積極的に利活用されるように進めてまいります。
〇47番(工藤勝博君)つい先日ですけれども、青森県の農業法人の事例が紹介されていました。米政策をフル活用することにより、飼料用米、そして、わらの回収で畜産農家と連携することで主食用米より多くの収入が得られる。こういう既に実践され高い成果を出している法人経営も参考にしながら、しっかりとした対策をとっていただきたいと思います。
 次に、観光産業の振興についてお伺いします。
 まず、このコロナ禍を乗り越える政策についてであります。
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大で世界中から観光客が消え、インバウンド客で急成長を遂げてきた日本の観光産業は、大きな転換期を迎えています。客数を追うこれまでのやり方は、もう通用しないと言う専門家もいます。この危機を教訓として、企業や自治体は何をどうすべきか、新型コロナウイルス感染症収束後の観光産業のあり方を示す必要が出てきたのではないでしょうか。
 令和3年度当初予算案の配分では、観光で稼ぐ地域づくり推進、質の高い旅行商品の開発、売り込み、外国人観光客の誘客拡大、売れる観光地をつくる体制の整備等の項目で予算が計上されています。まさに従来どおりの予算措置で、目新しさは全く感じられません。
 私は、二つの国立公園、三つ目を目指している世界遺産、豊富な温泉など他県に負けない観光資源があり、観光産業は、岩手県の経済を牽引している基幹産業だと思っております。今、コロナ禍で大変な状況ですが、これを乗り越える政策が求められています。県はどのように取り組むのかお伺いいたします。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君)コロナ禍を乗り越える観光施策というお尋ねでありますが、県では、平成31年3月に、みちのく岩手観光立県第3期基本計画を策定しております。本計画に定める観光で稼ぐ地域づくりの推進や質の高い旅行商品の開発、売り込みなどの基本施策に沿って、令和3年度当初予算案に、施策の遂行に必要な経費を盛り込んだところであります。
 これらの施策は、コロナ禍を乗り越えるためにも有効なものであると考えておりまして、令和3年度は、東北デスティネーションキャンペーンを一つの柱としまして、これまで地域で磨き上げてきた付加価値の高い旅行商品や観光コンテンツを広く発信しながら、周遊、滞在型観光を一層推進するほか、東北DCを機に、来県されるお客様に、質の高いサービスやおもてなしをすることによって満足度を高め、岩手ファンをふやし、将来のリピーター化につなげていきたいと考えております。
〇47番(工藤勝博君)当面はインバウンドの回復はほぼ見込めないという状況でもあります。そこで、国内旅行者の動向にかかっていると見ますけれども、知事は、先日の全国知事会議でGo To トラベルの再開を要望しておりますが、私は、東北ではもう始まっていいのではないかと考えます。それらをしていかないと、なかなか今の状況の中では打開策が見出せないという感じもしておりますので、その辺は、岩手県だけではなく、やっぱり東北という大きなくくりの中でやるべきだろうと思います。
 先日、佐々木朋和議員からもお話がありました。何といっても、やっぱり人が来ない、動かないのではどうにもならないということでもあります。それらも含めて、日本旅行業協会の前会長、もともとJTBの社長もした田川さんは、過去の例から予測すると人の動きは長くて3年、早ければ1年で戻ってくるだろう。問題は、回復したときに観光産業、ツーリズム産業の担い手が十分にいるかどうか。企業を存続させ雇用を守っていかなければ土台が崩れる。過去に戻るのではなく、ゼロから新しいマーケットをつくる。そのために歴史にヒントがあると言われています。江戸時代にどのように人の交流を育んだか、昭和20年、30年代の先達たちは、どのように生活の楽しみをふやしてきたのか、そのプロセスにコロナ禍後の足がかりがあると提言されています。
 人口減少が進む地方では観光産業の役割は大きく、観光産業が衰退したら地域の維持は難しいと考えます。コロナ禍後の県の観光産業の推進方策を、改めて現状も含めお伺いいたします。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君)コロナ禍後の観光産業の推進方策というお尋ねでありますが、先ほど答弁させていただきました、みちのく岩手観光立県第3期基本計画は、人口減少と高齢化の進展による将来的な国内観光需要の減少を見据えて策定したものであります。
 繰り返しになりますが、観光で稼ぐ地域づくりの推進や質の高い旅行商品の開発、売り込みなどを基本施策としたところであります。これらの施策は、コロナ禍後の観光施策にも有効なものであると考えておりまして、一層加速化していく必要があると考えますことから、DMOや市町村観光協会等と連携しながら、地域の観光資源をさらに磨き上げまして、付加価値を高めますとともに、ワーケーションやテレワークなどを契機とした周遊、滞在型観光を一層促進し、将来にわたり持続可能な岩手の観光をつくり上げてまいります。
〇47番(工藤勝博君)次に、県産品のマーケティング戦略についてお伺いいたします。
 30年近く岩手県にかかわってきたマーケティングコンサルタントの大滝克美さんは、県内でペンション経営を始め、埼玉県から移住した方です。人口減少が進む中、何が人を引きつけるのか、マーケティングのプロの目から見る岩手県の強みを見出してみたいと思います。広い県土、海、山、川、起伏に富んだ土地、歴史、そのバリエーションが強みで、人も多様で個性的、人を引きつける資源が豊富にある。それらを、今しかない、行ってみたいというライブ価値に高めていくと観光の可能性が無限に広がると言っています。
 例えば、自然の大地が繰り出す八幡平のドラゴンアイの人気は根強いものがあります。昨年は、コロナ禍であっても渋滞ができるほどの人出でありました。SNSでは、桜になぞらえて、8分咲きとか、天気が悪いからまた来週来ようなどと、2度、3度と訪れる様子が伝わってきます。
 高村光太郎は、岩手の人深沈牛の如しと記し、寡黙で真面目な面を表現しました。宣伝がうまくないと言われるのも、そうした県民性が底流にあり、ただ、それは愛すべき特性で無理に変える必要はない。
 都内の大手百貨店バイヤーは、北海道や沖縄県の物産展は盛り上がりが前半に集中する。でも、お客さんが長く続くのは岩手県だと言っています。魅力を伝え切れていない分、未知に何かがある。だからまた来ようという心理が働いているということです。
 大滝さんが指摘する岩手県にとっての課題は何だろう。物を加工する力を育てること、観光の先進地である北海道、沖縄県、長野県などは、さまざまなよい商品を出し、価格競争力もあります。岩手のものづくりは、素材にこだわり、手づくりでデザインに凝っていて品質は高いけれども、生産量や価格に課題があること。豊富な岩手県産原材料が県外の製造業を逆に支えている。これも誇りにしながら、安定的に供給できる加工業を県内にもっともっと育ててほしいと助言しています。
 県産品のマーケティング戦略について、県の見解を伺います。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君)県産品は、本県の歴史、文化や豊かな地域資源、素材のよさ、高度な技術等に支えられた品質の高さが評価されていることが強みである一方で、全国の地域産品との販売競走を勝ち抜くためのより一層の商品力や認知度向上、継続的な販路拡大が課題であると認識しています。
 このため、県産品が消費者からの高い支持を得られるよう、ライフスタイルの変化や新型コロナウイルス感染症の影響などの経済、社会情勢に的確に対応しながら、魅力ある商品づくりや情報発信、新たな購買層の開拓等に継続的に取り組んでいくことが重要であると考えています。
 県では、御紹介のありました大滝克美氏を含む商品開発や販路開拓等の専門家18名を産業創造アドバイザーに委嘱しております。事業者への助言、指導を行っていただくことによりまして、地域資源を生かした付加価値の高い商品づくりを支援いたしますとともに、県内外での商談会や物産展等の開催、アンテナショップやオンラインストア、買うなら岩手のものバーチャル物産展での販売などによりまして、県産品の情報発信や販路拡大を支援しているところであります。
 今後とも、関係機関と連携し、消費者ニーズを的確に捉えながら、売れる商品づくりから販路開拓までを総合的に支援し、県産品が国内外のより多くの消費者に選ばれるように取り組んでまいります。
〇47番(工藤勝博君)この県産品、特に食品関連に関しては、誰もが認める岩手県の産品だろうと思います。それらをうまく商品開発するにも、これから大きな可能性が潜んでいると思うのです。それらを誰かが背中を押してあげなければ気づかない点が多々あると思うのです。それらを、やっぱりこのコロナ禍による危機を機会に、その地域地域の皆さんに強く支援できるような形で、人的支援でも構わないと思うのです。先ほどコンサルタントが18人もいるという話ですので、それらも大いに活用しながら、岩手県のマーケティングを広げていただけるようにお願いしたいと思います。
 次に、気候変動に対する県の取り組みについて2点お伺いいたします。
 県では、2012年3月に温暖化対策地域推進計画と新エネルギービジョン、省エネルギービジョンを一本化した岩手県地球温暖化対策実行計画を策定し、2020年までに1990年比25%削減、2005年比で29%削減することを目標に、県民、事業者、国や市町村等との連携、協力のもと地球温暖化対策に取り組んできています。
 達成状況については、1990年比25%削減目標に対し、2017年度の実績はマイナス10.2%で、目標に対して約4割であり、これまでの普及啓発中心の取り組みでは、その効果は十分と言えない結果であります。特に家庭、産業、業務部門の二酸化炭素排出抑制が進んでいないことから、いかに実効性のある取り組みにすべきかが問われます。
 国では、新たに2050年までの温室効果ガス実質ゼロを打ち出しました。国においても、地球温暖化対策の国際ルール、パリ協定が目指す脱二酸化炭素社会に向け大きく動き出しています。
 パリ協定では、地球温暖化に伴う被害を減らすために気温上昇を産業革命前からの2度未満、できれば1.5度に抑えることを掲げており、そのために全ての国が温室効果ガスの削減目標などの対策を国連に提出し、5年ごとに見直しながら、今世紀後半に排出実質ゼロを目指す枠組みであります。世界中の取り組みが進まなければ、地球の未来は絶望の時代を迎えることになります。
 県では、排出実質ゼロを達成させるために、何をどのように展開していくのかお伺いいたします。
〇企画理事兼環境生活部長(藤澤敦子君)いわてゼロカーボン戦略についてでありますが、今定例会に提出しております第2次岩手県地球温暖化対策実行計画において、温室効果ガス排出量の2050年実質ゼロの達成に向けた2030年度における目標として、国の目標を上回る温室効果ガス排出量の削減割合と再生可能エネルギーによる電力自給率を掲げたところであります。
 この計画では、省エネルギー対策の推進、再生可能エネルギーの導入促進、森林吸収源対策などの多様な手法による地球温暖化対策の推進を目標の達成に向けた三つの柱とし、本県の強みである地域資源を最大限に活用した、地域経済や生活等の向上にも資する実効性のある施策を推進していくこととしております。
 具体的には、家庭向けの取り組みとして、住宅用の太陽光、蓄電池設備の共同購入を支援する事業の実施、令和3年4月に全面施行となる建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律の一部を改正する法律の建築士から建築主への戸建て住宅などの省エネルギー性能に関する説明義務制度の適切な運用、省エネルギー住宅に関するセミナーや相談事業の実施と住宅の断熱性能などを評価する住宅省エネルギー診断の実施、また、事業者向けの取り組みとして、県内の中小事業者等を対象としたLED照明や空調設備、給湯設備などの高効率省エネルギー設備導入に係る費用の補助、事業活動のエネルギー使用量の削減を図る地球温暖化対策計画書制度の強化などに取り組むこととしております。
 計画目標の達成に向けて、これらの取り組みを着実に進めるとともに、全県的な団体、機関で構成する温暖化防止いわて県民会議を中心に、県民、事業者、行政が一体となった県民運動を展開し、県民総参加による地球温暖化対策をこれまで以上に積極的に推進してまいります。
〇47番(工藤勝博君)いろいろな取り組みをなされるということを伺い、まさに今求められているそういう取り組みをしていかなければ、実質ゼロには結びつかないと思います。
 そういう状況の中ですけれども、岩手県は、家庭用の暖房に使用する灯油の消費量がかなり多いということであります。省エネルギー住宅あるいはオール電化住宅もふえていると思いますけれども、化石燃料の消費を減らす取り組みが、やはり喫緊の課題だろうと思いますが、そういう家庭の灯油、化石燃料を減量する手だてを考えているのかお伺いしたいと思います。
〇企画理事兼環境生活部長(藤澤敦子君)岩手県における平成29年度の1世帯当たりの灯油の二酸化炭素排出量は約1、300キログラムで、全国平均約400グラムの約3倍となっておりまして、これは、冬季の暖房用の灯油の使用量が多いことなどに起因するものと考えられます。
 同じエネルギーの中で、例えば、電気の二酸化炭素排出量は全国平均に比べて87%、そして、都市ガスとかLPガスを加えたガス総体に関しましては、岩手県の排出量が全国平均の1.07倍と、さまざまエネルギーの種類によってこういったデータが出ておりますけれども、エネルギーの中で灯油のみに着目してその使用量を減らすことは難しいと考えております。化石燃料全体として家庭全体のエネルギー消費量の削減に取り組むことが、灯油を含めた使用量の総体的な減少につながるものと考えております。
 家庭のエネルギー使用量の削減に向けましては、第2次岩手県地球温暖化対策実行計画において、住宅の省エネルギー化、省エネルギー性能の高い設備や機器の導入促進、そして、エネルギーの効率的な使用の促進に取り組むこととしております。
 具体的には、繰り返しになりますけれども、住宅用の太陽光、蓄電池設備の共同購入を進めたり、あるいは建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律の一部を改正する法律で、戸建て住宅の省エネ性能に関する設備をもっともっと進めていったり、また、省エネルギー住宅に関するセミナーや相談事業を実施していく中で、家庭のエネルギー消費量の削減に取り組んでまいりたいと考えております。
〇47番(工藤勝博君)ぜひとも、その実現に向けて御尽力をいただきたいと思います。
 次に、北岩手循環共生圏の取り組みということでお伺いいたします。
 冒頭、知事からもお話がありましたけれども、2050年までの温室効果ガス実質ゼロを目指すには、再生可能エネルギーの拡大が必須であると思います。日本エネルギー経済研究所によりますと、日本が化石燃料の輸入に支払った金額は、2018年度で年間19兆円を超える莫大な額に膨らんでいます。同じ2018年に私たちが支払った所得税の総額も19.9兆円で、ほぼ匹敵する膨大な金額が海外に流出しています。
 一方、地域の再生可能エネルギーを中心とした新しい社会では、再生可能エネルギー由来の電気に支払われるお金は海外に流れず、再生可能エネルギーで発電した電力は国内の地域に向かい、その中を循環します。海外流出から地域内循環へと変わり始めています。
 既に県内でもエネルギーの地産地消の取り組みが始まっています。久慈市では、市内の5社と市が設立した久慈地域エネルギーが、地元が掲げる2050年までの二酸化炭素の排出ゼロに一役買っているとともに、大手企業の間に高まっている再生可能エネルギー需要を売電などで取り込み、地域活性化につなげています。
 また、県北部の9市町村では北岩手循環共生圏を結成し、人口は合わせても11万人強ですが、風力、水力、木質バイオマスなどの再生可能エネルギーによる発電施設が幾つもあり、地域の特産品とともに共同で売り込むことを目的としています。相手は人口370万人の横浜市です。横浜市も2050年までに温室効果ガス実質ゼロの達成を掲げています。
 地域資源を有効に生かす取り組みでありますけれども、課題も多々あります。再生可能エネルギーの潜在能力は横浜市の年間消費量の4倍ありますが、既存の発電能力は横浜市の年間消費量の4%にすぎないということで、設備の増強が欠かせない。さらに、電力会社が、空き容量がないとして送電を制限しているケースが生じています。
 県では、久慈市を初め、北岩手循環共生圏の課題解決にどのように支援していくのかお伺いいたします。
〇企画理事兼環境生活部長(藤澤敦子君)北岩手循環共生圏の取り組み支援についてでありますが、この取り組みは、再生可能エネルギーの創出、導入、利用拡大や脱炭素化の促進を通じた住民、地域企業主体の相互の地域活力の創出を対象に、北岩手9市町村と横浜市が連携するモデル的な取り組みであり、二酸化炭素排出量の2050年実質ゼロに向けた取り組みとして、パリ協定の目標達成に地域から貢献する観点で重要であります。
 また、再生可能エネルギーとあわせて、北岩手の豊かな魅力ある自然や農林水産物、歴史、文化、観光などの地域資源を生かして、横浜市が主催するイベントなどで北岩手の魅力を情報発信することにより、横浜市との交流の広がりが期待されます。
 地域循環共生圏の実現を目指す北岩手9市町村は、再生可能エネルギーの高いポテンシャルを有する地域であることから、県として、北岩手9市町村と連携、協力し、引き続き、北いわて産業・社会革新ゾーンプロジェクトの施策と連動させながら、風力やバイオマスなどの再生可能エネルギーの導入促進に取り組むとともに、引き続き、送電網への接続制約等の課題解決に向けて国等への働きかけを行ってまいります。
〇47番(工藤勝博君)各地で、この再生可能エネルギーを地産地消で活用するという動きがどんどん進んでいくだろうと思います。それらの支援もあわせてお願いしたいと思います。
 次に、幹線道路ネットワークの整備についてお伺いいたします。
 幹線道路ネットワークの整備は、地域間の交流、連携や地域経済の活性化はもとより、防災、救急医療、福祉、教育、観光振興など多面的な分野の発展に大きく寄与するものであり、盛岡市より北の市町村住民17万人にとり、地域の発展に大きく寄与する社会基盤の一つでもあります。
 現在、県都盛岡以北において、内陸部の国道4号沿線から三陸沿岸北部を結ぶ路線は国道281号などがありますが、線形不良や隘路区間のほか、急カーブ、急勾配が連続する山間部を縫うように走る路網で、交通の難所でもあり、移動に多くの時間を要している状況であります。
 盛岡以北の市町村には、農林水産物や再生可能エネルギーなど魅力ある地域資源が数多くあるにもかかわらず、地方再生の取り組みで産地間競争が進む中、農山漁村と都市部をつなぐ社会基盤の整備のおくれが大きな影響を与えているものであります。岩手県全体を俯瞰したとき、県南地域の道路網との格差拡大が、地域経済はもとより人口減少にも深刻な影響を与えています。
 また、近年各地で多発している災害対策などの面から見ても、広い県土や北東北の日本海沿岸と太平洋沿岸が結ばれることは、地域間の連携が加速し、多分野において複合的な効果が生まれるものと期待されるところです。
 そのような背景のもと、令和2年10月に盛岡圏域以北の県内全19市町村が、八幡平市と野田村を結ぶ自動車専用道路の実現を目指す北岩手・北三陸横断道路整備促進期成同盟会総会と決起大会を開催し、整備に向けた調査促進と早期着工、国の特定広域道路としての事業採択の実現など3項目を決議し、国土交通省や県への要望活動を精力的に進めているところでもあります。
 昨年も同様の質問をしたところですが、県北地域の道路ネットワークのあり方について、関係市町村とともに幅広く検討してまいりますという答弁をいただきました。改めて知事の決意をお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君)県北地域の内陸部と沿岸部を結ぶ道路ネットワークのあり方については、県土整備部において、昨年度に引き続き、関係市町村と意見交換を重ねるとともに、昨年12月と先月には、北岩手・北三陸横断道路整備促進期成同盟会の市町村長と懇談し、県北地域の基幹となる道路における内陸と沿岸の拠点の考え方などについて共有したところであります。
 県北地域の道路ネットワークの強化は、災害に強い県土づくりに加え、物流の効率化や人の交流の活性化の面からも特に重要な課題と認識していることから、国道281号の下川井工区や今年度事業化した案内―戸呂町口工区において、河川沿いや落石等の危険箇所を回避したトンネルの整備を行っており、これらも踏まえ、県北地域の道路ネットワークのあり方について、引き続き関係市町村とともに検討してまいります。
〇47番(工藤勝博君)この新たな自動車専用道路の必要性を知事はどのようにお考えでしょうか。もういいのだ、要らないというのであれば、この北岩手・北三陸横断道路整備促進期成同盟会は全く体をなさなくなります。知事の判断だろうと思いますけれども、どうお考えでしょうか。
〇知事(達増拓也君)先ほど、県北地域の道路ネットワークのあり方について、引き続き関係市町村とともに検討していくと申し上げました。昨年12月と先月の県と北岩手・北三陸横断道路整備促進期成同盟会の市町村長との懇談においては、県北地域の基幹となる道路における内陸と沿岸の拠点の考えなどについて共有したところであり、今後もそういった検討を続けていきたいと思います。
〇47番(工藤勝博君)少なくとも県が調査するとか、そういう動きがないと、国は動きようがないということもお聞きしております。県選出の国会議員の先生方も、県のやる気がない、どうして国に働きかけるのだということも言われております。それらも含めて、ぜひとも積極的な前向きな検討をお願いしたいところでもあります。
 次に、インターナショナルスクールの開校に向けた環境整備についてお伺いします。
 令和2年6月27日に八幡平市安比高原でハロウ・インターナショナルスクール安比ジャパンの新築工事起工式が行われ、着々と開校の準備が進められています。開学は令和4年9月の予定です。安比高原の大自然を舞台に、自然やリゾートを最大限に生かしたカリキュラムが実践される学校となります。
 ハロウ校の教育理念の一つに、非常に重要な要素としてリーダーシップの育成があり、よい行いを通じて世界をよりよくするという意味のリーダーシップ・フォー・ア・ベター・ワールドを掲げており、その概念をコミュニティーの中で実践していくとしています。
 地域の人たちとただ触れ合うだけでなく、あらゆる方法で地域の人たちとつながりを持ち、その人たちによいことを率先して行うことが重要と考え、岩手県でも地域と積極的に交流することを望んでいます。
 開校後は、年々生徒数も増加し、定住人口の拡大が進んでいきます。地域でのコミュニティーのあり方が重要となってくると思いますが、スクールの生徒と地域の同世代の生徒の交流をどのように進めていくのか、県の見解をお伺いしたいと思います。
〇知事(達増拓也君)ハロウスクールによりますと、ハロウ・インターナショナルスクール安比ジャパンは、日本初の世界トップクラス、イギリス式全寮制インターナショナルスクールとされており、地域コミュニティーと一緒になって活動する時間を教育の一環として組み込むこととしています。
 同校と地域とのさまざまな交流の中で生徒同士の交流が行われることにより、本県生徒の学力の向上、文化の多様性の理解、グローバルな感覚の醸成などにつながることが期待されます。
 県としては、今後、他のハロウ・インターナショナルスクールで実施している交流事例も参考に、関係者と意見交換を行いながら、幅広い交流について検討してまいります。
〇47番(工藤勝博君)地元八幡平市では、スポーツとして相撲も大変盛んな地域であります。地区の神社では、それぞれの神社で奉納相撲があったり、特に小中学生が相撲、日本文化の継承に大変頑張っています。
 そういう中で相撲協会では、ぜひハロウ校の生徒たちとも交流をしたいとのことで、中高生ですから、その年代ごとの交流が当然できるのだろうと思います。公立ではなく私立ですので、その辺の状況、どういう展開になるのか私はちょっとわかりませんけれども、ぜひ積極的に県からも声をかけて、地元のそういう同世代の生徒たちとの交流を深めるような状況をつくっていただければと思います。
 もう一点です。来年、2022年開校になるわけですけれども、その開校に向けて、来年後半から生徒の募集に入る予定になっています。その募集の中である方から、せっかく岩手県にそういうすばらしい学校ができるので、岩手県から入学できるような環境整備はできないのか。3人なり5人なり、岩手枠というものをぜひつくってほしい。そして世界に羽ばたく人材を岩手県から輩出してほしいという声をいただいています。
 その辺、知事は、外交官もやったり、世界中で多分そういう状況を見て歩いているだろうと思いますが、その辺のお考えについて、通告しておりませんでしたけれども、お聞きしたいと思います。
〇知事(達増拓也君)現在、2022年、令和4年8月予定の開校に向けた準備が進められており、開校前までには、改めて運営母体となる学校法人の設立や各種学校設置の認可の手続を行う予定でありますので、県としては、計画者からの相談に応じ、適切に助言等を行うなど必要な支援を行っていきたいと思います。
〇47番(工藤勝博君)中高一貫の7年間ですけれども、それらに希望を持っている子供たちが、夢を持ってそういう学校で勉強したい、そしてまた、将来、岩手県、日本、世界のために頑張りたいという人材を輩出できるすばらしい学校になるだろうと期待しています。ぜひ、岩手県からもそういう人材ができるように取り組んでいただければと思います。
 それとあわせて、インターナショナルスクールの環境の中で、やはりインフラの整備がちょっとという声があります。というのは、高速道路は目の前を通っているわけですけれども、松尾八幡平インターチェンジと安代インターチェンジの間に、ぜひともスマートインターチェンジが欲しいという声も聞いております。
 生徒、教職員、そしてその家族、関係スタッフが定住し、それに関連した安比バレー構想も示されており、人々が生き生きと暮らし集う、そしてまた、観光、教育、健康のまちづくりを目指している。10年後には1万人程度の定住人口を見込んでもおります。
 それらも含めて、スマートインターチェンジの設置は、交流人口の拡大、そしてまた地域活性化につながることから、設置に向けた県の認識をお聞きしたいと思います。
〇県土整備部長(中平善伸君)松尾八幡平インターチェンジと安代インターチェンジ間のスマートインターチェンジの設置につきましては、八幡平市において平成30年10月に設置した検討会に県も参画しまして、必要性や整備方針など基礎的な検討が行われているところです。
 スマートインターチェンジは、高速道路の利便性の向上に加え、物流の効率化、観光振興などの面で地域に多様な効果をもたらすものと認識しておりまして、県としましては、引き続き、この検討会に参加しまして、広域的なネットワークの観点から見たスマートインターチェンジの必要性や具体の整備計画について、八幡平市へ助言を行うなど支援をしてまいります。
〇47番(工藤勝博君)ぜひ実現に向けて御尽力をお願いいたしたいと思います。
 最後に、冬季スポーツの振興ということで、特に今回、スキーに関しての質問をさせていただきます。
 全国高校スキー大会は来年、2022年、特別国民体育大会スキー競技会が再来年、2023年と連続して開催されます。スキー競技を開催できる都道府県は限りある中、本県で続けて開催できることは、施設や競技運営に高い評価をいただいているものと思っております。
 2016年の希望郷いわて国体から5年が経過し、レガシーが薄れているところに開催されることは、歓迎すべきことです。
 一方、本県における中学生、高校生のスキー競技者が減少しているという課題もあります。中学から高校にかけてスキーを続ける生徒は約30%、ジャンプコンバインド競技においては、小林龍尚選手が卒業し、今シーズンは高校生の競技者はゼロとなっています。
 このような状況は、中学校及び高校における部活動の体制が影響していると考えます。スキージャンプの小林兄弟のように、幼少期から高校まで地域の一貫した指導のもとに着実に力をつけ、世界に活躍しているすばらしい例もあります。
 スキー競技に限らず、中高生が自分の希望する競技に続けて取り組めるような、地域の特性や人材を最大限に活用した指導体制など、環境づくりが必要と考えます。今後の本県中学校及び高校におけるスポーツ活動について、どのようにお考えかお伺いします。
〇教育長(佐藤博君)本県の中学生及び高校生のスポーツ活動の環境整備についてでありますが、本県における中学生、高校生の状況について、スキー競技におきましては、令和2年度の県大会スラローム競技出場選手数で比較しますと、中学校男子が43名、女子が22名の計65名に対しまして、高校では、男子13名、女子4名の計17名の出場となっておりまして、中学校に比べ高校では選手数が大幅に少なく、競技力向上などの視点からも、競技者数の維持、拡大が課題であると認識しております。
 また、本県における部活動については、生徒数の減少等により学校単位での部活動運営が難しくなってきており、学校規模によっては、学校の部活動だけでは生徒のニーズに応えることが困難な状況にあるところです。
 このような状況を踏まえ、中高生が希望する競技を長く続けられるためにも、指導者を含めた地域の支えが重要であり、幼少期から高校までの幅広いカテゴリーで、多様なニーズに応じた地域単位でスポーツ活動を支える体制の構築が必要であると認識しております。
 県教育委員会としましては、幅広くスポーツ環境の整備等を進めていくこととし、文化スポーツ部と連携し、地域における合同部活動を推進するなど、中学校及び高等学校部活動の充実に向け取り組んでいく考えです。
〇47番(工藤勝博君)終わります。ありがとうございます。(拍手)
〇議長(関根敏伸君)以上をもって工藤勝博君の一般質問を終わります。
   
〇議長(関根敏伸君)この際、暫時休憩いたします。
   午後2時30分 休 憩

出席議員(48名)
1  番 千 田 美津子 君
2  番 上 原 康 樹 君
3  番 小 林 正 信 君
4  番 千 葉   盛 君
5  番 千 葉 秀 幸 君
6  番 岩 城   元 君
7  番 高橋 こうすけ 君
8  番 米 内 紘 正 君
9  番 武 田   哲 君
10  番 高 橋 穏 至 君
11  番 千 葉 絢 子 君
12  番 山 下 正 勝 君
13  番 高 田 一 郎 君
14  番 田 村 勝 則 君
15  番 佐々木 朋 和 君
16  番 菅野 ひろのり 君
17  番 柳 村   一 君
18  番 佐 藤 ケイ子 君
19  番 岩 渕   誠 君
20  番 名須川   晋 君
21  番 佐々木 宣 和 君
22  番 臼 澤   勉 君
23  番 川 村 伸 浩 君
24  番 ハクセル美穂子 君
25  番 木 村 幸 弘 君
26  番 吉 田 敬 子 君
27  番 高 橋 但 馬 君
28  番 小 野   共 君
29  番 軽 石 義 則 君
30  番 郷右近   浩 君
31  番 小 西 和 子 君
32  番 高 橋 はじめ 君
33  番 神 崎 浩 之 君
34  番 城内 よしひこ 君
35  番 佐々木 茂 光 君
36  番 佐々木   努 君
37  番 斉 藤   信 君
38  番 中 平   均 君
39  番 工 藤 大 輔 君
40  番 五日市   王 君
41  番 関 根 敏 伸 君
42  番 佐々木 順 一 君
43  番 伊 藤 勢 至 君
44  番 岩 崎 友 一 君
45  番 工 藤 勝 子 君
46  番 千 葉   伝 君
47  番 工 藤 勝 博 君
48  番 飯 澤   匡 君
欠席議員(なし)

説明のため出席した者
休憩前に同じ

職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ

午後2時48分再開
〇議長(関根敏伸君)休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。高田一郎君。
〔13番高田一郎君登壇〕(拍手)

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