令和3年2月定例会 第12回岩手県議会定例会会議録

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〇15番(佐々木朋和君)いわて新政会の佐々木朋和でございます。
 登壇の機会をいただいた県民の皆様、先輩、同僚議員に感謝申し上げ、質問をさせていただきます。
 最初に、命を守る幸福希望予算について伺います。
 県は、令和3年度当初予算案を命を守る幸福希望予算と位置づけ8、104億円規模の予算編成を行いました。復興関連事業の減などにより令和2年度予算に比べ13.1%の減となり、震災以降最小となりましたが、通常分は7、437億円余でプラス10.8%、公共事業通常分では2月補正予算と合わせてプラス290億円余、プラス54.2%を確保。コロナ禍の影響で県税収入などの不安を抱えながら、新型コロナウイルス感染症対策に958億5、000万円余を措置するなど、まさに命を守るために必要な事業予算を確保したものと評価します。
 また、新型コロナウイルス感染症対応により政策の優先順位が変動的で、社会の価値観の変化も著しい状況において、いわて県民計画(2019〜2028)の進捗や指標に柔軟性を持たせる方針を示したことも評価いたします。
 命を守るの言葉には、新型コロナウイルス感染症罹患による直接的な生命の危機に加え、コロナ禍による経済の冷え込みで生活が脅かされ、みずから命を絶つことがないようにというメッセージも読み取れます。
 知事の命を守る幸福希望の予算編成に込めた思いと予算執行にかける決意をお示しください。
〔15番佐々木朋和君質問席に移動〕
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君)佐々木朋和議員の御質問にお答え申し上げます。
 令和3年度当初予算は、新型コロナウイルス感染症対策や東日本大震災津波からの復興を着実に進め、県民の命を守り、いわて県民計画(2019〜2028)に掲げる、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわてを前進させる予算として編成いたしました。
 新型コロナウイルス感染症対策については、ワクチン接種を初め、感染拡大防止や医療提供体制の強化に万全を期すとともに、社会経済活動を支えるための貸付金や生活困窮者に対する支援金などの事業を盛り込んだところであります。
 あわせて、新型コロナウイルス感染症の影響により売り上げが減少している中小事業者の経営継続を早期に支援するため、今定例会に提案の2月補正予算案に、地域企業経営支援金支給事業を盛り込み、速やかな執行を目指しています。
 また、復興については、完成していない一部の社会資本の早期整備や被災者の心のケア、新たなコミュニティーの形成支援、水産業における水揚げ量の回復や商工業における販路の回復など、引き続き取り組むべき課題に注力してまいります。
 このように、コロナ禍においても引き続き復興に取り組みながら、お互いに幸福を守り育てる施策、事業を推進することで、県民一人一人が希望を持つことができる希望郷いわてを目指してまいります。
〇15番(佐々木朋和君)新型コロナウイルス感染症対策、特に経済支援については、予算化だけではなく、その執行が問われていると思っております。
 そこで質問させていただきます。新型コロナウイルス感染症対策についてですが、全国的に新型コロナウイルス感染症が蔓延する中、本県ではいまだにステージ2を維持しており、当局を初め、医療等の最前線で対応に当たられている全ての関係者の皆様に、心から敬意を表し、感謝を申し上げます。
 まずは、緊急事態宣言下での情報発信についてです。
 令和3年1月8日から緊急事態宣言が発出され、本県は緊急事態措置を実施すべき区域の対象とはなりませんでしたが、県内でのクラスター発生や連日のテレビ報道等で感染拡大地域の情報、また、Go To トラベルの停止などの宣言があり、県民の消費意識は落ち込みました。県は当初から、全国的な感染が拡大したとしても地域で経済が回るように、宿泊割事業を市町村単位、県単位、東北単位と小分けにして取り組んできました。Go To イートも本県では継続をしました。
 しかし、県が実施した12月の事業者アンケートの結果を見ると、県内の飲食店の55%が休業あるいは時短営業を実施しているほか、新聞報道では県内有名旅館、ホテル等の長期休業が報じられました。この間、県から経済活動の自粛などの要請はありませんでしたが、経済を地域内で回していきましょうというメッセージもなく、その結果、各種割引チケットは購入者が手に持ったまま事業者にはお金が行き渡らず、苦しい状況が続きました。
 県として慎重な対応は必要であるものの、国がGoTo トラベル事業予算をキャンセル補償に充てたように、経済刺激策の還元を事業者の支援に充てるなどの積極的な判断、メッセージが必要だったのではないでしょうか。
 そこで伺います。県の緊急事態宣言下における情報発信についての総括と、3月から4月の異動時期に向けて、県民にいつ、どのような情報発信を行うか知事に伺います。
〇知事(達増拓也君)感染対策については、本県においても、緊急事態宣言が発令された令和3年1月8日以降、発令されている地域との往来を起因とした感染や沿岸地域でのクラスターが発生していたことから、感染が拡大している地域への移動の自粛等や基本的な感染対策の徹底をお願いしてまいりました。
 また、医療関係者から、健康診断や受診を控えることによる病状の悪化が懸念されるとの提言を受け、早期の医療機関への受診などについても、知事メッセージや定例記者会見、各種媒体により発信してまいりました。
 経済対策等については、これまで累次の補正予算を措置してきたほか、今定例会に提案の補正予算案において、感染症対策に取り組みながら事業を継続しようとする事業者に対し、1店舗当たり40万円の支援金を支給するための予算などを計上し、令和3年度当初予算案と合わせたパッケージとして新たに取りまとめたところであります。
 今後においても、感染拡大の防止と社会経済活動を支える取り組みのため、必要な対応を講じるとともに、県民や事業者等による活用が図られるよう、適時、適切な情報発信に努めてまいります。
 また、年度末の異動の時期に向けた県民への情報発信については、近く岩手県新型コロナウイルス感染症対策本部本部員会議を開催し、感染状況等を踏まえ、県民の皆様に知事メッセージとして発信していく考えです。
〇15番(佐々木朋和君)ぜひ政策と連動した情報発信をお願いしたいと思います。
 お話もありました交付金関係のこれまでの活用状況をお聞きしたいと思います。
 県は令和2年度の国の新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を財源として、各種新型コロナウイルス感染症関連事業を展開してきました。これまで予算化しながら執行残となるものはどの程度か、執行状況を他都道府県と比べた場合の評価及び本県の執行率はどの程度か、また、国に返納するものはどの程度か、そして、今後活用できる残余額をあわせてお伺いいたします。
〇総務部長(白水伸英君)県におきましては、新型コロナウイルス感染症に対応するため、先ほど知事からも答弁申し上げましたけれども、これまで累次の補正予算を編成し、所要額を計上してきたところでございます。昨年10月時点で他県が実施した全国調査によりますと、臨時交付金の地方単独分の交付限度額に対する予算計上額は、全国の81.8%に対しまして、本県は93.5%となっておりまして、全国水準以上に活用していると考えております。
 また、令和2年度2月補正予算の編成におきましては、本県に配分された臨時交付金のうち地方単独分としてこれまでに予算化した189億円のうち、執行残として見込まれた55億円を、中小企業者等に対する支援金の支給や制度融資に係る保証料補給等に要する経費の基金への積み立てなど、感染者の発生状況や経済活動の状況を踏まえ、必要となる事業へ組みかえて計上したところでございます。
 その結果、地方単独分の交付限度額261億円のうち、令和2年度に200億円、令和3年度当初予算案に18億円、計218億円を活用しておりまして、国庫補助の地方負担分も含めた残額40億円余は、今後の感染状況や社会経済情勢を踏まえ、適時適切に活用していくこととしております。
〇15番(佐々木朋和君)国への返納分はないということで、使い切っていくということで安心した面があります。
 一方で、事業者は大変な状況にありまして、常に資金繰りとの戦いだと思います。予算化をして、またそれが93.5%ということで、他県に比して予算化をしていただいているということは評価いたしますが、やはり事業者への経済支援は、それが実際に使われているかというところが重要だと思っておりますので、次の質問をさせていただきます。
 県の中小企業者向けの支援策の執行状況は、資金繰り融資の執行額が多いので全体の底上げがされておりますが、個別の支援事業を見ると改善の余地があるのではないでしょうか。
 一般会計の第2号補正予算で行われた家賃補助については、4月からの3カ月分11億7、868万円余、約9、000件分を予算措置しました。現在1月から3月分も追加で募集を行っており、追加分は、県負担分が引き上げられていることもありまして、最終的には9億円程度の執行額になると聞いております。
 また、一般会計の第3号補正予算、感染症対策の10万円補助についてですが、こちらは30億2、377万円余、2万9、500件分が予算措置されましたが、最終的には14億円余、1万5、000件の執行にとどまる見込みとのことです。
 観光宿泊施設緊急対策事業費については、1月末精算時点において一般会計の第3号補正予算の残を引き継いで、第4次補正予算において地元割クーポン、おでんせ岩手券3、000円割を行いましたが、地元割クーポンの発行15万枚に対し利用実績が6万2、000枚、おでんせ岩手券が発行約9万7、000枚に対し利用実績が2万1、000枚となっており、Go To トラベル停止の影響で利用は伸び悩んでいます。締め切り間際になってこちらは伸びたかもしれませんけれども、3事業合わせると20億から25億円の残が出たのではないかと思っております。
 事業者が支援を欲していることに間違いはありません。これは要件が難しかったのか、ニーズに合った支援だったのか、または、そもそも最初の設定が過大だったのか、県は検証し、制度改善を行い、継続的な支援を行うべきと考えます。
 県は、この事業者支援策の執行状況をどのように評価し、今後の支援策につなげるのかお伺いいたします。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君)事業者支援策の評価と今後の支援策についてでありますけれども、まず、家賃補助につきましては、国の家賃支援給付金とあわせて年間を通じて切れ目ない支援となるよう対応するとともに、売り上げ要件を順次緩和してきたところでありまして、事業者の事業継続に効果があったと考えています。
 感染症対策等補助につきましては、岩手県生活衛生営業指導センターの12月の調査では、飲食店等において52%が申請済み、27%が申請予定と回答するなど、多くの事業者においてこれを活用しながら感染症対策が徹底されてきたと考えています。
 地元割クーポンにつきましては、制度設計当初から早期の効果発現を狙うとともに、令和3年3月7日を終期として設定し、県民に広く周知を図ったものでありまして、市町村もこれに連動して独自の支援策を講じるなど、一定の効果があったものと捉えています。
 今般、感染症の影響が継続する中、特に売り上げが減少している事業者に対しまして緊急の支援が必要と考え、これまでの支援策に寄せられた御意見も踏まえながら、さまざまな固定費や消耗品を含む感染症対策費用等にも充てられる使途を限定しない支援金を1店舗当たり40万円支給することとし、今定例会に提案した補正予算に必要な経費を盛り込んだところであります。引き続き、感染症対策を講じながら事業を継続していただきたいと考えております。
〇15番(佐々木朋和君)今、県としてはこれまでの事業を評価しているという話でございました。私もその点については異論がございません。ただ一方で、これから交付金の残が40億円となってきている、今、残りがそのようになってきている状況に当たって、やっぱりその精度を高めていただきたい。
 感染症対策も、お話に聞けば75%ぐらいは使いそうだということだったのですけれども、一方で30億円分の15億円ぐらいは余っている状況ということであれば、やはり最初の設定をこれからどんどん精度を高めていって、より多くの事業者が使えるように、また、より多くの支援策が打てるようにしていただきたいと思います。といいますのは、やはり今この感染症対策、特に飲食店については厚い支援をいただいておりまして、私はこれは評価させていただきますが、一方で、同じ支援をいただくところは国、県、市と支援が積み上がる。一方では、支援を受けられない事業者もいるといった中にあって、やはり制度設計をするに当たって、私は説明も必要なのだろうと思います。なぜ50%、30%の事業者に限定したのか。
 きのう、商工労働観光部長から国の制度にならってという話がありましたが、そうではなくて、なぜ今ここは50%減、30%減の厳しいところにやらないと大変なことになるのだと、やはり県民に説明が必要だと思うし、20%減の事業者には、どうして支援ができないのだと、そういったところも説明しながらやっていかないと、私は今、事業者間でも分断やあつれきが生まれていると思っております。
 きのう、私のところに夜、電話がございました。佐々木、飲食店ばかり回っていないで、商店街を端から端まで歩いてみろと。やっぱり商店街の中でも支援をもらっているところ、もらえないところ、いろいろな声があると。
 知事はきのうの答弁で、飲食店を職員と一緒に回ったと。すばらしいことだと思います。一方で、やはり支援をもらっていないところの声も聞きながら、市町村、国と支援がダブらないように、補完し合うような形もつくりながら、ぜひ制度設計をしていただきたいと思います。
 次に移らせていただきます。
 国では、緊急事態宣言解除直後のGo To トラベルの再開には否定的ですが、2月補正予算において地元割事業を予算化しなくて、機動的に動けるのでしょうか。
 4月から東北DCが始まります。それに連動したGo To トラベルまでのつなぎの制度も必要です。Go To トラベルや東北DCが終わっても効果を持続させるための地元割クーポンやキャンペーンも、急激に消費を冷え込ませないために必要と感じます。さらに、雇用調整助成金終了時の景気浮揚策も必要と感じますが、令和3年度当初予算案や令和2年度2月補正予算案にあらわれておりません。
 そこで、知事に伺います。緊急事態宣言解除後にどのように経済対策を進めていくのかお示しください。
〇知事(達増拓也君)事業者の事業継続と雇用の維持を図るため、今年度は、資金繰りの支援や感染症対策に要する経費の補助、県産品の消費拡大、観光需要の喚起など、感染防止を徹底しながら、経済社会活動を支える取り組みを進めているところであります。
 緊急事態宣言の解除後については、引き続き感染症対策を徹底しつつ、買うなら岩手のもの運動などによる消費喚起策等に加え、コロナ禍に対応し、足腰の強い産業構造への転換を図るための本業支援に取り組んでまいります。
 具体的には、商工指導団体、産業支援機関等と連携した支援体制を構築し、中小企業者における新しい生活様式に対応したビジネスモデルの構築、県内中小企業者に対するIoTやAI等を活用したビジネスモデルの転換や生産技術の高度化支援、人材育成、テレワークの導入に要する経費の助成による県内企業における働き方改革と、生産性向上の促進などの取り組みを推進してまいります。
〇15番(佐々木朋和君)知事にこの点を再質問させていただきますが、知事は、土曜日にインターネット開催の全国知事会で、国に対してGo To トラベルの県内あるいは東北ブロック内の限定的な再開を求めておりますが、知事は、景気刺激策そのものについて後ろ向きなわけではありませんよね。
〇知事(達増拓也君)現在も岩手県内の人が岩手県内の観光施設、宿泊施設を利用する地元割などをやっているわけでありまして、国に対しても、都道府県内の人が都道府県内を利用するGo To トラベルは、今再開できる状態なので、それを検討すべきということを、あわせて、東北ブロックという単位で、ブロック内の人がブロック内を利用することについても検討すべきということを申し上げました。
 そういう景気刺激策というものは、感染状況に応じてやれることはやるべきと考えております。
〇15番(佐々木朋和君)安心しました。4月からは東北全体でデスティネーションキャンペーンが始まります。それで今、知事には全国知事会を通じて国のほうに要望していただいたのは心強いですが、なかなかそこが動くかというのがまだ見えない状態なのですけれども、ぜひ、私は他県、例えば青森県や秋田県、北東北3県で今まで一緒にやってきたところでも、やっぱり予算化をして、もう計上しているのです。というのは、知事がおっしゃったように、コロナ禍で、今、経済を動かせるときに動かさないと、やっぱりアクセルとブレーキが大事だと思うのですね。そのスイッチをしっかりしていくことが大事なのですが、その準備のために今、他県では予算計上しているのかなと。いつ使うかは別にして、これまで見ていても、県民割事業などは、予算化してから制度に移るまでに二、三週間かかってしまいます。
 そういった意味でも、私は、令和2年度2月補正予算案には載せておりませんが、これからの中でも、今定例会中にでも予算化をして、いつでも経済が動かせるようにしっかりと予算計上していくべきだと思います。ぜひ、この点は要望させていただきます。
 次に、先ほど知事がおっしゃいました事業再構築に向けた支援策について伺いたいと思います。
 国は雇用調整助成金の特例措置の期限を示し、あわせて事業再構築補助金を今国会で審議しており、各事業者は、新しい生活様式に合わせた事業の再構築を迫られています。
 この補助金を活用するには、認定経営革新支援機関や金融機関と事業計画を策定することが求められており、県がその機関となる、いわて産業振興センターや商工指導団体に対する補助を行う中小企業事業再生支援事業を予算化したこと―先ほど知事が紹介いただいたものですけれども、評価をいたします。
 しかし、これが1、200万円規模というのは、内容とともに十分と言えるのでしょうか。計画策定にはコンサルタントや市場調査など、事業者が大変な経営の状況の中で、計画策定にさらなる経費の支出が伴います。中小企業再生支援協議会の新型コロナウイルス感染症特例リスケジュールも金融機関からの返済リスケジュール、あるいは設備投資資金の確保等に有用ですが、事業者負担が発生します。
 また、本来、休業中に従業員の教育訓練を行い、事業の再構築に向けて取り組んでいくべきところですが、本県の雇用調整助成金の教育訓練での活用率は1割ほどです。このままでは新型コロナウイルス感染症の影響を直接的に受けている業態の事業者が、事業再構築や新しい生活様式に合わせたビジネスモデルへの転換のチャンスを逸してしまうかもしれません。
 県として、事業の再構築や教育訓練に向けた支援を行うべきと思いますが、所見を伺います。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君)感染症の影響を受けている事業者が、国の事業再構築補助金を活用して行う新しい生活様式に対応した取り組みを促進していくためには、制度の周知はもとより、申請に必要な事業計画策定などのサポートを適切に行うための支援体制の充実が必要であると認識しています。
 このため、令和3年度当初予算案に専門家派遣や産業支援機関への経営支援スタッフの配置に必要な経費を盛り込んだ中小企業事業再生支援事業を提案したところでございます。
 この事業におきましては、商工指導団体が行う専門家派遣について、事業者の事業計画策定に係る経費等の軽減を図るため、3回までの派遣を無料とする方向で調整をしています。
 教育訓練につきましては、産業技術短期大学校、高等技術専門校におきまして従業員の教育訓練や能力開発を支援する在職者訓練を実施しておりますほか、県内の職業訓練協会においても同様の訓練が行われているところでありまして、県内各地で従業員の教育訓練の場が設けられています。
 県としましては、これら県や職業訓練協会の在職者向け訓練の活用を促していくほか、岩手労働局と連携して、先ほど紹介のありました雇用調整助成金を活用した教育訓練の実施についても働きかけて、企業における教育訓練を支援してまいります。
〇15番(佐々木朋和君)私は、ぜひ事業者へ直接的な支援をしていただきたいと思います。支援機関への人件費の充当はいいのですけれども、例えば、次の予算でも県はテレワーク推進の設備投資に1億円の予算をとっています。1事業者200万円、3分の2補助です。一方で、国のホームページを見れば、厚生労働省や経済産業省にも同様の支援事業があります。それぞれ300万円、100万円で、補助率はこちらのほうがよくて4分の3です。
 私は、そういった重複した支援をするよりも、今、直接的に困っているのは、テレワークができる事業者ではなくて、テレワークができない対面の事業者だと思います。その方々がしっかりと新しい生活様式の中で新規事業に取り組んでいかないと、なかなかこのコロナ禍は乗り切れないといった部分をぜひ県には理解していただいて、直接的な支援も検討をお願いしたいと思います。
 次に、感染症予防の観点から質問いたします。ワクチン接種について伺いたいと思います。
 住民からワクチン接種に対する不安や手続についての問い合わせが、市町村に殺到することが今後予想されます。特に今回のワクチンは、従来の不活化ワクチンではなく、メッセンジャーRNAワクチンという新技術です。専門的知見を有する県が県民に正しい情報を伝えることが重要であると思いますが、県は県民からの相談体制をどのように構築していくのか。ワクチン接種についてリスクとメリットをどのように評価し、県民にどのように伝えるのかお示しください。
〇保健福祉部長(野原勝君)新型コロナウイルス感染症に係るワクチン接種の県民への情報提供についてでありますが、現在、薬事承認されているファイザー社のワクチンについては、接種による集団免疫の効果はまだ十分に解明されていないものの、発症予防の効果と重症化防止の効果が認められるものであります。
 このワクチンは新しい種類のワクチンでありますが、国内外の臨床試験から得られた有効性や副反応等の安全性の知見について、国の専門機関による分析、評価により薬事承認がされたものであります。
 国では、薬事承認後においても、現在実施している医療従事者向けの先行接種などにおける副反応を疑う事例を収集し、安全性や有効性に関する情報を国民に対しホームページなどで随時発信しております。
 県では、県民からの医学的な相談に対応できるコールセンターを設置するとともに、引き続き、県民に対しまして、国から随時提供される情報に基づきまして、市町村や関係団体等と連携し、各種媒体を活用しまして、丁寧かつ迅速な周知に取り組んでまいります。
〇15番(佐々木朋和君)次に、PCR検査について伺いたいと思います。
 新型コロナウイルス感染症の蔓延から1年。未知の領域であったウイルスも、感染のメカニズムが徐々に解明されつつあります。
 感染させる可能性が高いのは、有症状と症状が出る2日前までの無症状者であり、これに対処することが蔓延防止やクラスター化を未然に防止することにつながると思われます。有症状者について、県は検査を判断する医師に対し、熱症状のある患者に対し検査につなげるよう呼びかけてきましたが、現在においても、診療機関を受診したがPCR検査に至らなかった事例も散見されます。
 また、本県では、クラスターの拡大防止策として、疫学的調査に接触者も加えてPCR検査を行っています。濃厚接触者が陰性となっても2週間の待機をお願いできますが、接触者には、国のガイドラインをもとにしたお願いができません。しかし、県内の事例でも、一度陰性となったが、その後に症状が出て陽性となる事例も散見されました。
 そこで伺います。県はこれまで、発熱者の検査や、一度陰性になったがその後に症状が出て陽性となった事例に対し、どのような取り組みを行ってきたのか。県民に対しPCR検査について広く啓発するとともに、接触者に適切な情報を提供する体制を構築するべきと思いますが、所見を伺います。
〇保健福祉部長(野原勝君)本県では、新型コロナウイルス感染者が確認された場合、国が定義する濃厚接触者より範囲を広げた検査を実施することにより、早期に感染者を発見し、感染拡大の防止に取り組んでまいりました。
 検査においては、検体採取の状況などにより、ウイルスが存在しているが不検出となる偽陰性、検体の粘性が高いなど検体の状態により、ウイルスが存在していないのに検出となる偽陽性が一定の割合で発生し、そのほかにも、感染初期でウイルスが排出されていない潜伏期間のために陰性となる事例がございます。
 このため、濃厚接触者については、今申し上げたとおり、ウイルスが不検出であっても感染しているリスクがあることから、患者等との最終接触から14日間の健康状態の確認、不要不急の外出の自粛を保健所から要請しております。
 また、濃厚接触者以外の検査対象者についても、同様に、感染を否定するものとは限らないことから、保健所からこの点について説明をいたしまして、行動自粛は求めないものの、検査後に健康状態が悪化したときの速やかな報告を要請しております。
 このように、各保健所では、疫学調査の対象者に対して、その結果の意義について丁寧に説明を行っており、また、県におきましても、各種検査法の感度といった特徴などについても、報道機関への情報提供などの機会を捉えまして周知をしているところでありまして、今後とも適切な情報提供に努めてまいります。
〇15番(佐々木朋和君)ぜひ、そういった情報を企業にも届けていただきたいと思うのです。
 医療機関や介護施設、行政機関等は、職員が感染者、濃厚接触者、接触者になった場合の対応マニュアルを整備していますが、中小企業が多い本県においては、有事の対応を決めていない企業も多く、感染のおそれを持つ従業員が会社に相談したり、休暇を取得しにくい状況にあると聞いています。
 県は、県内の商工指導団体と連携し、コロナ禍における中小企業の危機管理の対応や新たなビジネスマナーの取り組みを進めるべきと思いますが、所見を伺います。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君)事業者が事業を継続していくに当たっては、まずは感染症対策の徹底が重要でありますことから、これまで、業種ごとの感染拡大予防ガイドラインに基づく対策が徹底されるよう、商工指導団体と連携して事業者への普及啓発を行ってきたところであります。
 その上で、事業者が、有事を見据えて事前に策定する防災、減災に関する計画を国が認定する事業継続力強化計画認定制度に、昨年10月から感染症リスクが追加されたことを踏まえまして、商工指導団体と連携して、計画策定を促進するためのセミナーや具体的に計画策定手順を学ぶ勉強会を開催し、事業者の危機管理意識の醸成に努めてきたところであります。
 令和3年度におきましても、引き続き、商工指導団体と連携し、業種ごとの感染拡大予防ガイドラインの周知徹底を図るとともに、事業者が行う感染症を初めとしたさまざまなリスクに対応していくための事業継続力の強化に向けた取り組みを支援してまいります。
〇15番(佐々木朋和君)よろしくお願いしたいと思います。
 次に、観光振興について伺いたいと思います。
 東北デスティネーションキャンペーンが4月から9月まで展開されます。コロナ禍前の東北DCは、復興五輪を強く意識し、インバウント集客をDCとして初めて柱に掲げ、東北地方が一体となってインバウンドのゴールデンルートにというインバウンド需要獲得の集大成という位置づけでありました。
 しかし、コロナ禍の東北DCは、新しい生活様式の徹底をアピールしながら、感染防止対策と社会経済を両立させた新たな観光キャンペーンとしてスタートを切ります。県には、東北各県と協力をし合いながら、対外的に岩手県のよさとともに新型コロナウイルス感染症対策の徹底を伝えていかなければなりません。
 一方で、Go To トラベルの再開時期と重なれば、多くの来県者が期待できますが、受け入れ施設や一般県民による来県者に対する差別的な対応が起きないよう、理解を求めていくことも必要です。また、インバウンドや団体旅行の回復には時間がかかり、それを補う候補として有力なGo To トラベルや地元割クーポンの各事業で喚起された国内需要、個人旅行、マイクロツーリズム需要を確実なものとし、東北DCや各種割引が終わっても継続していくための足がかりをつくることも期待されます。
 東北地方全体としてのDCという枠組みも、東北域外からの誘客とともに、新型コロナウイルス感染症の蔓延や地域限定Go To トラベルの再開の状況によっては、東北域内での往来による旅行需要の創出も求められます。
 さらに、三陸沿岸道路の全面開通に伴い、料金無料の三陸沿岸道路が東北自動車道を超える本県の大動脈となり、被災地の経済活性化につながる有力な新観光ルートや、新たな沿岸から内陸への周遊ルートの開発も求められます。
 知事は、東北DCを県内外にどのようにアピールしていくのか。あわせて、東北DCを軸とした来年度の観光戦略、ウィズコロナ、アフターコロナの観光戦略をどのように描いていくのか伺います。
〇知事(達増拓也君)4月からの東北デスティネーションキャンペーンでは、震災から10年の節目に当たり、東北地方が一体となって復興に向かう姿や、これまでの国内外からの支援に対する感謝の気持ちを伝えるとともに、本県の二つの国立公園などの雄大な自然、世界文化遺産に代表される歴史文化、地域ならではの多彩な食文化など、世界に誇る岩手県の魅力や県民一丸となった旅行者へのおもてなしの心を発信してまいります。
 観光戦略については、県では、平成31年3月に、みちのく岩手観光立県第3期基本計画を策定しており、本計画に定める観光で稼ぐ地域づくりの推進や、質の高い旅行商品の開発・売込みなどの基本施策が基本戦略に当たり、新型コロナウイルス感染症の影響下においても妥当するものと考えております。
 このような基本戦略のもと、令和3年度は、東北デスティネーションキャンペーンを一つの柱として、これまで地域で磨き上げてきた付加価値の高い旅行商品や観光コンテンツを広く発信しながら、周遊、滞在型観光を一層促進するほか、質の高いサービスやおもてなしにより旅行者の満足度を高め、岩手ファンをふやし、リピーター化を促進してまいります。
 さらに、県内外の旅行者に、これまで以上に楽しんでいただき高く評価していただけるよう、DMOや市町村観光協会等と連携しながら、地域の観光資源を磨き上げるとともに、ワーケーションやテレワークなどを契機とした周遊、滞在型観光を促進し、将来にわたり持続可能な岩手県の観光をつくり上げてまいります。
〇15番(佐々木朋和君)では、具体的なところを部長にお聞きしたいと思いますが、県は、東北DCの役割の変化にどのように対応して計画を練ってきたのか、準備の進捗状況と知事の戦略を具現化する具体的な取り組み、そして、東北DC後の期待するレガシーをお示しください。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君)東北DCでは、議員御指摘のとおり、当初、外国人観光客の誘客拡大を柱の一つと位置づけて計画したところでありますが、新型コロナウイルス感染症の影響によりまして、海外との往来の制限があり、さらには国内における団体旅行にも制約が生じてきたことから、国内の個人旅行を中心とした誘客を一層意識した計画へと見直しをしてきました。
 これまで、東北6県と連携しながら、オンラインシステムによる商談や国内の旅行会社等を招待した現地視察会の開催、首都圏等の旅行会社へのキャラバン等によりまして、旅行商品の造成促進に取り組んできたところであります。
 また、県独自の取り組みとして、地域住民によるモニターツアーを通じた体験型コンテンツの磨き上げ、屋形船を活用した工場夜景クルージングなどの付加価値の高い旅行商品の造成の促進、さまざまな媒体を活用した情報発信やおもてなし機運の醸成に向けたあなわん運動を展開しているところであります。
 4月からの東北DCにおきましては、東北6県と連携したプロモーションなどにより、岩手県、東北地方の魅力発信を強化するとともに、県内外の旅行者には、東北DC期間中しか体験できない特別企画を質の高いサービスやおもてなしで体験いただくことで、岩手県の旅の満足度を高め、リピーター化を促進してまいります。
 東北DC後におきましても、地域で磨き上げてきた観光コンテンツや付加価値の高い旅行商品、オール東北の発信力や受け入れ態勢をレガシーとして、国内外の多くの方から選ばれ、より長く滞在していただき、もう一度訪れたい岩手を目指してまいります。
〇15番(佐々木朋和君)10年前、岩手DCがありました。予算を見ても、個人旅行へのシフトと今言っていただきましたけれども、まだなかなか見えてこないのかなと思っております。ぜひ、その点について丁寧に見える化をしていただいて、取り組んでいただきたいと思います。
 また、インバウンドから個人、東北管内周遊とか、マイクロツーリズムということがテーマになると思うのですが、5億円から7、000万円にインバウンド費が減っておりますけれども、まだインバウンドはつなげながらも、もっと私はマイクロツーリズムや個人旅行というものにシフトしながら、限られた予算を有効に使ってこのDCを盛り上げていただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 平泉世界文化遺産登録10周年の取り組みについて伺います。
 来年度の本県観光の目玉に世界文化遺産登録10周年の活用が挙げられますが、県は、関係自治体や関係団体と連携して、どのような企画を行っていくのか伺います。
 また、東北DCとのコラボレーションによる相乗効果も期待されますが、平泉の文化遺産ガイダンス施設は、展示開始が11月から12月とされておりまして、東北DC後、観光シーズン後の展示開始は残念に思われます。前倒しも検討すべきと思いますけれども、所見を伺います。
〇文化スポーツ部長(石川義晃君)平泉世界文化遺産登録10周年の取り組みにつきましては、岩手大学とともに記念フォーラムを実施し、改めて平泉の価値の普及を図るほか、中尊寺や毛越寺における特別展の開催、ガイダンス施設開館記念行事や県内外の郷土芸能団体による講演などが予定、検討されております。
 また、来年度は、東北DCや復興五輪が開催されることから、10周年のイベントについて全国的な情報発信を行い、交流人口の増加につなげたいと考えております。
 また、ガイダンス施設の展示開始時期についてでありますが、ガイダンス施設には、平泉で発掘された重要文化財を展示する予定であり、展示に当たりましては、ガイダンス施設の内装工事が完了する8月末から約3カ月をかけて、建物内の温湿度等の環境を安定させた後に搬入する必要があることから、11月から12月ごろの開館をめどに準備を進めております。
 このため、来年度の冬季観光キャンペーンでガイダンス施設を紹介いたしますほか、11月に開催されるぼうさいこくたい2021や、先ほど触れましたガイダンス施設開館記念行事などさまざまな形で情報発信を行い、多くの方々に、平泉のみならず県内各地を周遊いただけるよう取り組んでまいります。
〇15番(佐々木朋和君)乾燥させる時間があっていたし方ないということですけれども、前もってわかっていることですので、何とかならなかったのかと残念な思いがいたします。
 このガイダンス施設については、建設の際の住民説明会において町民から、折に触れて、町民に展示内容を説明する場の設置や、町民向けの講座等を開催願いたいとの声がありました。ガイダンス施設は県運営ですが、町外の観光客だけでなく町民にも愛される施設となることにより、観光客と町民をつなげ、地域間交流を生み、先ほど来知事もおっしゃっておりましたリピーターや関係人口の創出に資することも期待されます。
 また、平泉文化遺産は、一関市や奥州市にも関連遺跡が広がっています。既に柳之御所遺跡の調査は一定の成果が得られ、公園整備も進められているところですが、平泉文化の全体像はまだまだ未解明な点が多く、今後の研究が期待されます。
 県直営施設としてスタートしますが、一関市や奥州市、平泉町から人員も参加しての調査研究、そして、行く行くは県立の考古学研究所、東北地方初の国立博物館誘致と夢が広がるような体制こそ、東北6県を治めていた奥州藤原氏の研究にふさわしいと考えております。
 平泉の文化遺産ガイダンス施設の今後の運用の方向性について伺います。
〇文化スポーツ部長(石川義晃君)平泉の文化遺産ガイダンス施設の運用の方向性についてでありますが、ガイダンス施設は、来館者に平泉の世界遺産及び2市1町に広がる関連遺跡への理解を深め、周遊していただくとともに、将来の世代に伝えていく施設であり、国内外から多くの方々に訪れていただきたいと考えておりますが、まずは、地元市町の方々や県民に愛され、気軽に繰り返し訪れていただける施設にする必要があると考えており、そうした皆さんを対象とした講座や平泉ウオーキングなどを行いたいと考えております。
 また、本施設は、柳之御所遺跡発掘調査の拠点として、関係市町や団体、岩手大学などとも連携しながら、平泉文化の研究を発展させるとともに、研究成果を展示内容に反映させてまいります。
〇15番(佐々木朋和君)よろしくお願いいたします。
 では次に、新たな県立高等学校再編計画後期計画について伺います。
 今定例会に示された後期計画案の具体的な取り組みの中で、地域の産業教育の拠点となる専門高校等の整備について、両磐、奥州ブロックの専門高校を6学級にすると示しました。地域説明会では、現在設置している機械、電気、土木のほか、全国的に設置数の少ない設備システム、インテリアの特色ある学びを確保するとともに、これからのITやIoT、AIなどの技術革新に対応した学びを実現する学科の創設を検討すると説明しています。
 基幹学科に注目すると、一関工業高校、水沢工業高校の両校合わせて5学科あった基幹学科が3学科となり、実に2学級が縮減するということです。専門高校の機械、電気、土木等の基幹学科は、地域の存続になくてはならないインフラの維持、整備を担う人材や、ものづくり産業を支える地場企業への人材輩出を行っており、地域の地場企業がこれら人材を外から獲得してくるのは難しい状況です。
 県は、基本的な考え方に、生徒の希望する進路の実現と地域や地域産業を担う人づくりということを掲げております。それに従い、生徒の減少と出願率などのデータを参考にする一方で、人口減少下においても、地域の維持に必要な最低限の人材確保に資する専門高校や基幹学科の配置となるような検討が求められます。地域の維持に必要な人材及び地元就職率をどの時点でどの程度と想定し、県南地域に専門高校6学級、基幹学科3学級と記載しているのか説明が必要です。
 また、専門教育を行う学校の状況という将来推計データでは、令和7年の入学者を一関工業高校、水沢工業高校の2校で243人と推計していますが、示された学級規模は40人6学級だとして240人と想定しています。新たな魅力ある学科を創設するのに、普通科に流れる優秀な人材を獲得しようという考えがまるで感じられない設定ではないでしょうか。
 そこで伺います。県南地域に専門高校6学級、基幹学科3学級とした県の考えをお示しください。
〇教育長(佐藤博君)生徒数減少と専門高校の学級減の関係についてでございますが、今後も中学校卒業者数の減少が見込まれる中、このまま水沢工業高校と一関工業高校の両校を維持した場合、将来において学級減を伴う学科改編の可能性があり、両校の特徴的な学びが整理されることも想定されることから、後期計画後も見据え、県南地域に工業高校を新設する案としたものです。
 新設校におきましては、両校にある機械、電気、電子の学びに、水沢工業高校にある建築系のインテリア、設備システム及び一関工業高校にある土木の5学科を維持するとともに、時代に対応したIT等に関連した新しい学科を取り入れ、6学科の多様な工業の学びを配置することにより、産業人材のさまざまなニーズに対応した地域や地域産業を担う人材の育成を目指したいと考えているものです。
 仮に、現行のままそれぞれの工業高校を存続させた場合、将来的には中学校卒業者数の減少から、それぞれのブロック内の他の専門高校等との統合による学科の減少を伴う総合的な専門高校の整備になる可能性もございまして、幾つかの工業の学びがなくなることも考えられることから、県南地域の将来を見据え、現段階から県南地域の基幹となる工業高校の整備を検討し、当該地域の産業を支える人材の育成とさらなる産業集積に寄与する学校づくりを進めていくと考えているものでございます。
 特に、IT、IoT、AI等に関する学科に関しましては、地域検討会議において、産業界の代表者等から設置の必要性に関する意見をいただいたものであり、地域や産業界の意見を踏まえながら、具体的なあり方や内容について検討してまいりたいと考えております。
〇15番(佐々木朋和君)今、お答えをいただきましたけれども、産業界からAI、IoT等の人材が欲しいという声も真実でしょうが、また一方で、今まで地域を支えてきた基幹学科の子供たち、こういった人材もやはり不可欠だというのも、両方同じ地域の産業界からの声だと思います。私はその部分に、今、教育長が答えていらっしゃらないのではないかと思います。
 例えば、今、一関工業高校、水沢工業高校には、平成29年、また、令和元年卒の子供たちが611人基幹学科でいますが、そのうち地域に、岩手県内に就職していた子たちが222人です。これは36%ですね。これが基幹学科3学科になったとすると、同じパーセントだと130人になってしまって、3年間で92人の人材がなくなってしまうということです。これを、今までの人材を、人数を賄おうとすれば61%に地元就職率を上げなければいけないということです。
 私は、そういった検討がなされてこの結論を出したのかというところをお聞きしているわけであります。そこの部分に言及していただかないと、まさに地域の、あるいは地域の産業の人材をつくる、確保していくという基本的な考え方の一方が抜け落ちているのではないかと指摘せざるを得ません。
 そして、もう一つ伺います。今回の県南地域における大規模な工業高校の設置は、水沢工業高校と一関工業高校というブロックを越えた統合です。一つ例を挙げさせていただきます。一関工業高校土木科には、令和2年4月現在で一関市内の生徒が83人通学しています。一方で、ブロック内に土木科がない奥州市から土木科に通学している人数は、一関工業高校、黒沢尻工業高校、盛岡工業高校を合わせて14人です。実に6倍の差が開いているのです。一関市と奥州市は人口規模等が同じぐらいの自治体ですが、地域の高校で基幹学科がないと、これだけ人材の差が生まれてきます。ブロックを越えた統合がなされれば、基幹学科全てにおいてこのような懸念が生まれるのではないでしょうか。
 また、ブロックからものづくりへの入り口が消えることによって、専門高校全体として生徒確保数の減少につながるのではないでしょうか。県は、この懸念にどのように答えていくのか伺います。
〇教育長(佐藤博君)ものづくり産業人材の確保についてでございますが、さまざまな学びの選択肢を確保するため、専門高校等については学区を設定しないところでありまして、ブロックを越えた高校への進学も多くなってきているなど、中学生は進学先を幅広い範囲の中から選ぶ傾向も見られます。
 2月9日に開催されました、いわて産業人材育成会議におきましても、産業界からの出席者からは、少子化による工業の学びの縮小への危惧とともに、工業の学びをそろえることで、通学時間が多少長くなったとしても、この学校で学びたいと思えるような魅力ある学校をつくってもらいたいとの意見もいただいてございます。
 通学の利便性とあわせ、充実した教育活動ができる環境を整えられる場所に校舎等を整備しまして、多様な工業の学びをそろえるとともに、施設設備等の充実を図りながら、多くの生徒が希望する魅力ある学校となるよう、今後検討を進めていきたいと考えております。
〇15番(佐々木朋和君)魅力ある学校となるように検討を進めてまいると。ブロックを越えた統合を提案するのであれば、魅力ある学校を示して、どうかということを諮るのが、私は筋ではないかと思います。その辺が見えていないので地元から疑問の声も上がっております。
 まさに、先ほど、土木科で示しましたが、今までその入り口であった専門高校があった地域からそれが消えるということで、専門高校全体として、あるいはものづくり人材全体として、かえって縮小になってしまうのではないかという懸念が残るというところです。その点について、私は、もっと正確に答えていただきたいと思います。
 魅力ある学校とは何だというところを、ぜひ具体化していただきたいと思います。
 県は説明会において、県南地域における産業教育の拠点となる専門高校の整備において、統合校を盛岡工業高校、黒沢尻工業高校と並ぶ県南における工業教育の基幹校として整備すると説明しました。
 では、県は、これまでの基幹校化、大規模校化をどのように総括しているのでしょうか。そのメリットを具体的に示すべきだと思いますが、所見を伺います。
〇教育長(佐藤博君)基幹校化、大規模校化の総括についてでございますが、これまで開催しました地域検討会議等におきまして、産業界の動向やニーズを踏まえた高校再編、特色ある学科の維持や設置、複数の学科間で学び合う必要性など、産業教育の重要性や充実に関する意見を多数いただいたところでございます。今回の統合案は、これらの意見も反映したものとしております。
 この地域検討会議等での意見の中には、普通科への進学希望が増加し、工業学科への進学希望が減少していることは、地域産業の情勢と全く逆の方向であるという指摘もあって、地域産業のニーズを踏まえた工業系学科の設置が必要であるという御意見もありました。また、専門高校について、学科数が少ないと学校の活力がなくなる。学ぶ内容の異なる学科間の競争が必要であり、3学級は必要である。あるいは、一定規模を保った学校で学ぶことも大切だということで御意見をいただいております。
 盛岡工業高校、黒沢尻工業高校の両校は、一定規模を持つ基幹校として、さまざまな工業の学びをそろえているところでありまして、県南地域にも基幹校を整備し、両校と同様に工業の多様な学びをそろえることによって、ものづくり産業人材や社会インフラなど地域を支える人材等、多様なニーズに対応した人材の育成につなげていきたいと考えているものです。
〇15番(佐々木朋和君)今、基幹校のメリットということも示していただきました。ただ、一方で、この志願者数等を見ても、一関工業高校においては、その2校と遜色ない志願者数もあるところだと私は思っております。
 そういった中で、やはり基幹校化、統合校となったときの具体像が示されないと、単なるこれはコストカットと捉えてしまいます。この統合高校案の最大の問題は、これまでの高校で学ぶよりも生徒がよりよい環境で学べるのか、具体像が見えていないところです。県は、そのような批判を払拭するためにも、できるだけ詳細に統合校案の具体像を示すべきと思います。
 2校を統合校に集約することはコストダウンにつながることで、学びに必要な教育機材を高度化できるとの見方はありますが、どの程度のコストカットにつながり、どの程度の予算がそこから新設校舎、教育機材の整備に充当されるのか明らかではありません。
 なお、建設時は今の工業高校も教育機材は最新鋭だったはずです。問題は、技術革新に合わせて更新することができるのか、これが懸念されます。現在、設備投資に毎年3、000万円余の予算が確保されておりますが、統合校化すれば、その確保額がふえるのでしょうか。技術革新が目まぐるしい現代において、統合校にしても5年、10年で教育機材が陳腐化していたのでは、痛みを伴って統合校化することに応えたとは言えないのではないでしょうか。
 そこでお伺いします。これら新設校舎、教育機材の整備及び更新費用の現時点における予算の規模等をお示しください。
〇教育長(佐藤博君)新校舎整備の予算規模等についてでございますけれども、水沢工業高校は、昭和43年度に整備してから築52年が経過し老朽化が進んでおります。一方、一関工業高校は、昭和59年度に整備し、築36年経過でありますが、狭隘化しているなど、それぞれ課題がございます。
 私も一関工業高校には昨年、一昨年と2度お伺いしました。また、水沢工業高校についても、実際に出向いて校舎の状況等も確認してまいりました。大変老朽化が著しい、雨漏り等もしているという状況も水沢工業高校では見られましたし、それぞれの機械、設備も老朽化していて、生徒の実習にも支障を来していると。実際に計測するのではなくて、こういう使い方のマシンですよという、内容的に非常に設備が古くて、きちんとした工業の学びができない状況というところも見てまいりました。
 御質問の、将来、改築や設備等の更新をしようとする場合でございます。これについては、もしそれぞれ改築が行われるとすれば、数十億円規模の費用が見込まれますが、仮に両校統合し新たな工業高校を設置する場合、最先端の教育設備であるとか機材も導入ができますし、そういったことで整備を進める。ただし、現時点では明確な費用額は示せない状況でございますが、先ほど申しましたように、それぞれ整備するとすれば数十億円の費用がかかりますけれども、これを統合することによって、相当程度の整備費用の縮減が図られるものと考えております。
〇15番(佐々木朋和君)今、具体的な費用等については示すことがまだできないということでございましたけれども、今の施設を改善しなければいけないということは、もちろんそのとおりだと思います。一方で、それでは、統合でなければいけないのかと。統合したことによって、では、あいた分を全部専門高校の全体のプラスに使うのだと、そういう話までは聞かれませんでした。
 一方で、3、000万円ずつ毎年費用を使っているわけでありますけれども、国から9億円の、実に30年分だと言われるデジタル化の予算がつきました。その算定基準を見れば、別に大規模校だからこのぐらいというわけではなく、高校ごとの積み上げだということです。そういった意味では、私は、費用は圧縮されるかもしれませんけれども、では、統合校でないとそれが賄えないのか、あるいは統合校だからこそ、そのあいた分の予算が全部、全部とは言わなくても専門高校の子供たちに使われるのかと。そういった部分の担保はないのではないかと思います。この点はいかがですか。
〇教育長(佐藤博君)今後、老朽化していく県立高校の数が大変多いというお話も先日答弁しております。その中でも、この工業高校の統合によって、大規模な専門教育の多様な学びができる基幹校をつくりたいという思いでありますが、それぞれに残して、それぞれの施設をつくっていった場合ですと、先ほども答弁しましたように、規模が縮小していく、あるいは他の専門校と統合になって、本来学びたい工業の学びができなくなってくるという面もございます。
 そして、今回は国の第3次補正予算によりまして、国庫補助事業―これは3分の1補助でございますが、それを活用し9億3、000万円の予算を措置したところでございます。これは、国の経済対策で、デジタル化対応産業教育装置の整備事業というものが活用できます。文部科学省では、これまで地方交付税の中の機材措置の中で財政措置されてきたものを補助金化したと。そしてまた、補助裏のほうには補正予算債が充当でき、その元利償還金の50%が交付税措置されるという有利な財源が出たということで、今回、工業高校に限らず、農業、商業、水産、家庭、看護、情報、福祉に至るそれぞれの分野に、デジタル関係に対応できるようなさまざまな設備を導入するチャンスがありましたので、それを逃さず、子供たちにとって最新の設備等を備え、最新の学習に使えるよう措置しようとしたところでございます。
 そこから生み出たものを工業にという御指摘は、当然わかりますけれども、私どもは、各種有利な財源を活用して、子供たちのよりよい教育環境整備に努力しているところでございます。
〇15番(佐々木朋和君)わかりました。
 次の課題の説明をしていただきたいと思いますけれども、先ほど来、産業界から高度技術人材が求められているのだという話でございました。では、この高度技術人材の具体像について伺いたいと思います。
 県は地元説明会で、産業界から高度化が進む新時代に対応する力や生産性の向上に寄与する力を持った人材、いわゆる高度技術人材が求められており、それに対応するための基幹校化と説明しております。
 県の言う県内で求められている高度技術人材とは、どのようなスキルを身につけた人材なのでしょうか。それは、高校3年間で習得できるのでしょうか。進学やさらなる学びの必要はないのでしょうか。その場合は、高校での受験、編入支援体制はどうするのでしょうか。
 そして、重要なのは、現在、一体県内にどれほどの就職口があるのか、そして、将来どれほどに拡大していくかのということです。県内企業とのマッチング対策も必要であります。県の言う高度技術人材の具体像とキャリア形成のモデルをお示しください。
〇教育長(佐藤博君)高度技術人材の具体像についてでございます。県教育委員会でも、商工労働観光部との意見交換も行っておりますし、それから、最新の岩手県内の産業動向、企業誘致の動向等、そういったところを学ぶということで、商工労働観光部の職員も県教育委員会に招聘しまして、県内の動向についてもさまざま教えていただけるというところでございます。
 また、商工労働観光部との意見交換では、大手立地企業において、地場企業への部品や生産ラインの設計から生産までの一括発注の意向が強まっており、これに向けた三次元技術を基礎とした設計や生産技術の習得、さらには、IT、AI等の活用を図る技術が求められる状況にあるとの現状把握に基づきまして、県内工業高校出身者の中にはこれらの分野で活躍する人材が出始めているものの、今後、需要の拡大が見込まれることから、それに対応した人材の育成、確保が重要であるとの認識で一致しているところでございます。
 今後におきましては、本県におけるものづくり産業等の将来的な技術革新あるいは産業集積の動向を見きわめながら、時代に対応した新しい学びの創設についても検討を進め、県内企業のニーズに幅広く対応した工業教育の充実を図ってまいりたいと考えております。
〇15番(佐々木朋和君)今、お示しをいただきましたIT、IoT、AI等の活用による技術革新に対応した学びの実現のための学科の創設については賛同しますが、統合校ありきの議論では、その設置が逆に令和7年度以降になります。本県と同じくものづくり県である愛知県では、県内の専門高校に令和3年度からIT工学科を4校に新設、また、ロボット工学科を1校から7校に拡大します。愛知県では、その卒業生を令和6年度から産業界に送り出すのに対し、本県では、卒業生は最短でも今から7年後となる令和10年度となります。
 人材育成のおくれは、企業誘致や産業集積のおくれにつながります。ソサエティー5.0の技術革新の波におくれをとらないよう、統合校にこだわらない早期創設を実現すべきと思いますが、所見を伺います。
〇教育長(佐藤博君)IoT等の活用による技術革新に対応した学びの実現についてでございます。IoTやAI等の活用につきましては、地域の産業を初め、あらゆる産業にとって必要なものとなると考えております。
 技術革新が進む中におきまして、今後、その活用の幅はさらに拡大していくものと認識しておりまして、高校の再編にかかわらず、現在の学科等において、それぞれの学びの特性を生かしながら、時代に対応した学びを遅滞なく進めるとともに、時代に対応した新しい学びの創設についても検討し、あわせて、関連する施設設備等の教育環境の整備に努めていく考えでございます。
 これも今回の2月補正予算で、これまでなかなか更新ができなかった設備について措置をしましたので、こういったものを逃さず活用して、そして、地域の産業を牽引する人材の育成に活用していきたい、つなげていきたいと考えております。
〇15番(佐々木朋和君)先ほど来、この高度人材の育成や、あるいは高校の機材の高度化ということには賛同いたします。でも、それと、統合校がなぜくっつくのかというところが疑問でなりません。
 また、先ほど来、商工労働観光部との連携の中でも、あるいは、産業界からも高度人材の育成が叫ばれているのだという話は聞きますが、一方で、地域の商工団体から、今まで地域を支えてきた技術者、こういったものも地域で育成する機関が必要なのだと同じぐらいに声が上がっているのに、こちらのほうには全然耳をかしてくれないと。やっぱりそこが、私はいかがなものかと思っているところでございます。
 その中で、先ほど冒頭にお話しさせていただきましたブロックの中で、例えば、どちらのブロックになるかによって、やはり非常に地域の人材の偏り、大きな影響や変化をもたらす可能性があると指摘させていただきましたが、場所の選定方法について明確になっておりません。どのようなプロセス、基準で決められるのでしょうか。
 盛岡南高校、不来方高校については、場所の選定後に統合案を諮っておりますが、県南地域と違う理由も含めて、あわせてお示しください。
〇教育長(佐藤博君)統合校の整備地の選定についてでございますが、ブロックを越えた広域の統合となることから、新たな立地も含めて検討する必要があると考えております。
 その検討に当たりましては、生徒の通学の利便性とあわせまして、何度も申し上げているとおり、充実した教育活動ができる環境をつくることを重要な観点にして検討を進めてまいりたいと考えております。現時点では、まだ具体の候補地等についてはお示しできません。これからの検討作業ということになります。
〇15番(佐々木朋和君)充実した教育環境の整備という観点と場所というのは、どういう関係があるのですか。
〇教育長(佐藤博君)まずは、生徒の利便性、今回、千厩高校の産業技術科については、地域検討会議の意見等を踏まえまして、通学がなかなか難しいという課題がありましたので、そこについては統合の対象から外したところでございます。
 本県では、本当に通学が困難な生徒が多いということもございまして、まず、視点は通学の利便性ということ、それから、充実した教育活動ができる環境をということを考えているものでございまして、やはり施設設備、そしてグラウンド、いろいろな条件があると思いますけれども、そこは多くの関係者等からの意見も聴取しながら、統合検討会議というものがありますけれども、そういった場を使いながら、そしてまた、地域からのいろいろな御意見等も伺いながら検討してまいりたいと考えております。
〇15番(佐々木朋和君)充実した教育活動、広さ以外にはなかなか思いつかないのですけれども、私は、やはりブロックを越えて通学するということ、これに尽きるんですけれども、やはりブロックを超えても通いたいという、学校の設備云々プラス、やはりブランド化、今、普通科偏重になっている状況の中でも、そういった常識を打ち砕くぐらいの工業高校に通いたいといった思いを県全体で喚起した上で、こういった学級減だ、統合だという話にしないと、縮小、縮小の流れに、負のスパイラルに陥ってしまうと、私はそのように思います。
 その本質的な問いの1個前に、これを聞きたいと思います。後期計画案は令和3年度から令和7年度までの高校再編計画ですが、県南地区基幹校の開校時期は令和7年度以降となっており、後期計画期間を超える可能性がある時期も含んだ整備となります。
 今、お話をさせていただいた中でも、具体的な統合校の案、像というものが見えてこない。そういった中にあっても、令和7年度以降とされる県南地区の基幹校の整備について、ことし3月までに決定しなければならない理由をお示しいただきたいと思います。
〇教育長(佐藤博君)統合の決定時期等についてでありますが、中学校卒業者数の減少が進む中で、それにあわせた高校のあり方への対応は、早期の対応が求められると思います。
 生徒にとってよりよい教育環境を整備するという視点からも、遅滞なく計画を策定した上で進めていく必要がある。特に、県南地域に新設される工業高校につきましては、ただいま申し上げました設置場所がまだこれからの検討だということで、設置場所の選定から検討を進めることとなるため、準備期間に相当の期間が必要になってまいります。
 それから、施設設備の検討であるとか、まさしく魅力ある学校にしていくために、どういった形で整備していくかということは慎重に検討していかなければなりませんので、それを進める上でも、今回の後期計画に盛り込んだものでございます。
〇15番(佐々木朋和君)その慎重に検討していかなければならないことが残っているのに、統合するということをなぜ先に決めるのかということをお聞きいたしました。その答えはなかなか返ってこないと思います。
 先ほど申し上げた専門校の将来像について伺いたいと思います。
 愛知県では、専門高校再編を一地域の統合や改編の話ではなく、ものづくりのグローバル化、デジタル化の進展に伴う、あるべき専門高校像を県全体の統一ブランドとして示すべく、令和3年度より、工業高校等14校を工科高等学校に改称します。産業界のニーズの変化を踏まえ、現在の学科を専門高校全校で見直し、理工科を1校、IT工学科を4校、環境科学科を4校、生活コースを8校に新設し、ロボット工学科を1校から7校に拡大。また、全校既存の学科名の変更にも取り組み、情報技術科及び情報システム科を情報デザイン科、建築科を建築デザイン科、土木科を都市工学科に科名を変更することにより、県下の専門高校全てにおける改革とし、生徒数の減少下という限られたパイの奪い合いでも、優秀な人材を専門高校にという気概が感じられる改革としています。募集単位も見直し、中学生時点において将来の目標が明確でない生徒も多く存在し、それが普通科偏重を生んでいるとの状況を受け、ものづくりに興味のある生徒を広く集めようという観点から、入学後に専門学科を選択できるよう、募集単位を大くくり化しています。
 この愛知県の事例はわずか1行ですけれども、地域説明会の資料、県南地域における産業教育の拠点となる専門高校の整備についてという中にも記載されておりまして、教育長も御存じのはずです。
 生徒数の減少とソサエティー5.0の取り組みが進む中、ものづくり県として、よりよい教育の場を確保するという思い、方向性は同じだと思いますが、両者から受ける印象は随分と違います。
 県の後期計画案では、あるべき専門高校像が見えず、地域の統合、学級減の話に矮小化されているのではないでしょうか。さらに、ものづくりに興味のある生徒を多く集めるという観点では、ブロックを越えた統合により、ものづくりへの入り口が閉ざされることも懸念され、大くくり化した生徒募集を行う愛知県とは真逆の印象を受けます。
 県内の工業高校の志願者倍率等を見れば、近い将来、統合や学級減の課題が県南地区で終わりとなるのではなく、必ずや全県で顕在化してきます。そこに向け、一旦立ちどまり、検討の出発点を変え、ブロックごとのものづくりへの入り口は守りつつ、進学指導の充実も含めた普通科偏重を解消する専門高校としてのイメージアップ戦略、ブランド化戦略、高校間や高等教育機関、研究機関との連携による多様で高度な学びの場の確保、地場企業と連携したインターンシップ制度の創出、さらには、誘致企業や地場企業との協力や企業版ふるさと納税を活用した長期的な教育機材の購入のための財源確保等も含めたビジョンを策定するべきだと考えます。また、そのような議論をする諮問会議のような機関も創設するべきです。
 その中で、そのビジョンにあった、生徒の希望する進路実現と地域や地域産業を担う人づくりが両立されること、地域を担う人材を地域で輩出すること、岩手県のものづくり産業をけん引する高度技術人材を育成することの両立が図られる計画が策定されることを切に願います。
 そこで教育長に、専門高校の将来像、ビジョンについて伺います。
〇教育長(佐藤博君)専門高校の将来像、ビジョンについてでございます。専門高校におきましては、専門分野の知識と技術を確実に習得し、地域や地域産業を支え、地域の発展に寄与する担い手の育成や、ものづくり人材の育成等に大きな役割を果たしているものと認識しております。
 本県のものづくり産業に関しましては、いわて県民計画(2019〜2028)における北上川バレープロジェクトや、第2期岩手県ふるさと振興総合戦略における商工業振興戦略等により、産業分野、生活分野への第4次産業革命の技術の導入と新たな技術を拓く人材の確保・育成や産業の一層の集積と高度化を通じた、ものづくりのグローバル拠点化の推進等を図っているところでございます。
 専門高校は、このような県の施策の推進による産業集積の拡大や新たな技術の導入等にあわせまして、本県に集積するものづくり産業を担う人材の育成に対する期待に応えていく必要があることから、県教育委員会としては、今後も専門教育の充実を目指した教育環境の整備に努めながら、時代や社会の幅広いニーズに対応できる人材の育成の中核を担うよう、さらなる専門教育の充実を図ってまいりたいと考えております。
〇15番(佐々木朋和君)今、私は大きく専門高校、このビジョンをつくる方向を変える、ブランド化するチャンスだと思います。教育長には、ぜひ、一地域の二つの高校の統合の話ではなくて、全体の大きな改革につなげるその手腕に御期待して、質問を終わらせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
〇議長(関根敏伸君)以上をもって佐々木朋和君の一般質問を終わります。
   
〇議長(関根敏伸君)この際、暫時休憩いたします。
   午後2時29分 休 憩

出席議員(48名)
1  番 千 田 美津子 君
2  番 上 原 康 樹 君
3  番 小 林 正 信 君
4  番 千 葉   盛 君
5  番 千 葉 秀 幸 君
6  番 岩 城   元 君
7  番 高橋 こうすけ 君
8  番 米 内 紘 正 君
9  番 武 田   哲 君
10  番 高 橋 穏 至 君
11  番 千 葉 絢 子 君
12  番 山 下 正 勝 君
13  番 高 田 一 郎 君
14  番 田 村 勝 則 君
15  番 佐々木 朋 和 君
16  番 菅野 ひろのり 君
17  番 柳 村   一 君
18  番 佐 藤 ケイ子 君
19  番 岩 渕   誠 君
20  番 名須川   晋 君
21  番 佐々木 宣 和 君
22  番 臼 澤   勉 君
23  番 川 村 伸 浩 君
24  番 ハクセル美穂子 君
25  番 木 村 幸 弘 君
26  番 吉 田 敬 子 君
27  番 高 橋 但 馬 君
28  番 小 野   共 君
29  番 軽 石 義 則 君
30  番 郷右近   浩 君
31  番 小 西 和 子 君
32  番 高 橋 はじめ 君
33  番 神 崎 浩 之 君
34  番 城内 よしひこ 君
35  番 佐々木 茂 光 君
36  番 佐々木   努 君
37  番 斉 藤   信 君
38  番 中 平   均 君
39  番 工 藤 大 輔 君
40  番 五日市   王 君
41  番 関 根 敏 伸 君
42  番 佐々木 順 一 君
43  番 伊 藤 勢 至 君
44  番 岩 崎 友 一 君
45  番 工 藤 勝 子 君
46  番 千 葉   伝 君
47  番 工 藤 勝 博 君
48  番 飯 澤   匡 君
欠席議員(なし)

説明のため出席した者
休憩前に同じ

職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
   
午後2時47分再開
〇議長(関根敏伸君)休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。岩城元君。
〔6番岩城元君登壇〕(拍手)

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