令和3年2月定例会 第12回岩手県議会定例会会議録

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〇40番(五日市王君)希望いわての五日市王でございます。
 新型コロナウイルス感染症でお亡くなりになられた方々に謹んでお悔やみを申し上げますとともに、罹患された皆様の一日も早い御回復をお祈り申し上げます。
 昨年1月に日本で初めて新型コロナウイルス感染症の感染が確認されてから1年1カ月が経過をいたしました。この間、人類は医学や科学の英知を集め、驚くべきスピードでワクチンを開発し、いよいよ国家の大事業である待望のワクチン接種事業が始まりました。ワクチンの開発、接種によって、新型コロナウイルス感染症との戦いは、収束に向けて大きな節目を迎えることを期待しております。
 医療従事者を初めとする関係者の皆様におかれましては、国民、県民の命を守るため、さらなる御奮闘をお願い申し上げます。
 それでは、登壇の機会を与えていただきました先輩、同僚議員に感謝を申し上げ、以下、質問をいたします。
 初めに、コロナ禍後の県民生活について、移住、定住、関係人口について伺います。
 新型コロナウイルス感染症が確認されてから1年1カ月、本県におきましても、現在までに550人を超える患者が確認されておりますが、国内の感染の中心は、やはり東京都を中心とした大都市圏であり、まさに都市型の疾病であると言えます。
 こうした中、改めて東京一極集中の是正の必要性が指摘されており、知事も知事演述で述べられたとおり、地方への移住、定住の促進に向けた絶好の機会であると考えます。
 デジタル化の進展、そしてウィズコロナの時代を迎え、日本の企業のあり方、働き方も徐々に変化してきております。自然環境に恵まれ、食べ物もおいしい。そして、新型コロナウイルス感染症の感染リスクが少ないという、本県の持つポテンシャルを生かしながら、移住、定住の促進を進めるべきと思いますが、知事の所見を伺います。
 また、コロナ禍において、本県では、本年1月、県外からの転入が879人、転出が794人で、転入が85人上回り、7カ月連続で転入超過となりました。さらに、県内高校生においても、東日本大震災津波や新型コロナウイルス感染症などの影響で、地元志向が高まっているものと受けとめております。
 県では、新型コロナウイルス感染症対策事業の一環として、本県出身学生の就職活動支援として、帰県費用の助成を行っておりますが、他県では、首都圏からの里帰り直後の経過観察期間の宿泊代半額助成や、岩手県出身者で帰省を自粛している県外学生に米を贈るなど、ふるさとはいつでも君たちとともにあるという姿勢を打ち出しており、このことは、窮地に陥る宿泊施設支援や農林水産物の販売促進にもつながると思います。
 他県においてこのような取り組みも進めている中、岩手県では、本県出身学生のU・Iターンについて、今後どのように促進していくのか伺います。
 特定の地域と継続的にかかわる関係人口の増加が、地方への移住に結びつくと期待されております。国土交通省の調査では、地域を訪れる関係人口が多いほど三大都市圏からの移住者が多いという傾向であることが示されております。
 また、2019年の地方移住人気ランキングでは、1位が長野県、2位、広島県、3位、静岡県と、首都圏との近さや交通の便、豊かな自然が移住のポイントとなるようであります。
 これらのことから、移住、定住、二地域居住、老後移住などを進めるためには、これまでの施策に加え、東京から2時間の壁を突破することが必要と考えます。つまり、東北新幹線のスピードアップが早期に実現するよう求めていく必要があると考えております。
 東北新幹線は、昨年12月、全線開通から10年の節目を迎えました。現在、東京─盛岡間の最速は、上りは2時間10分、下り2時間11分でありますが、3月のダイヤ改正によりそれぞれ1分短縮され、上りは2時間9分、下りは2時間10分となる予定であります。これは、上野─大宮間での最高速度が時速110キロメートルから時速130キロメートルに速度アップすることに伴うものであります。
 このほかの区間の最高速度は、東京─上野間時速110キロメートル、大宮─宇都宮間時速275キロメートル、宇都宮─盛岡間時速320キロメートル、盛岡─新青森間時速260キロメートルとなっておりますが、盛岡─新青森間では、昨年10月に最高速度を時速260キロメートルから時速320キロメートルへ引き上げるための工事に着手、さらには、最高速度時速360キロメートルの新型車両の導入に向けた試験走行を進めていると聞いております。
 本県においては、盛岡市から県内各地まで、それ相応の移動時間を要することから、東京─盛岡間は2時間の壁を打ち破る必要があると考えます。東京─宇都宮間の速度アップを強く働きかける必要があると思いますが、見解をお伺いします。
 次に、広域振興局職員の勤務地居住についてお伺いいたします。
 私は、初当選以来、振興局職員はその勤務地に住むべきだとの主張を繰り返してまいりました。ここ数年は封印をしておりましたが、改めて見解を問いたいと思います。
 かつて、交通の便がよくなかったころは、広域振興局職員の地元居住率は高く、県職員と住民との距離は非常に近く、また地域経済にも大きく貢献をしていただきました。しかしながら、東北新幹線開通などによる交通の利便性の向上や、個々の職員の家庭事情等から、現在では、特に内陸部で通勤する職員がふえてきたことは残念であります。
 本年2月の調査によると、大船渡市、釜石市、宮古市、久慈市の沿岸部における居住率は80%を超えているのに対し、二戸市37.5%、奥州市37.4%、花巻市38.7%など、内陸部での居住率は50%以下というのが実情であります。
 広域振興局職員は、市町村から見れば大切な関係人口であります。県都一極集中の是正や地域経済への寄与の観点からも、広域振興局職員はその勤務地に住むよう促すべきではないでしょうか。
 また、運用や各種手当を見直すなどして、例えば夏季限定や冬季限定、週半分居住など、多様なスタイルを認め、県庁版二地域居住のあり方も検討してはいかがでしょうか。
 サプライチェーンの国内回帰について伺います。
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、マスクや防護服などの海外依存が明らかになりました。安全保障やリスク分散の観点から、海外進出企業やサプライチェーンの国内回帰が叫ばれており、国では、生産拠点の集中度が高い製品、部素材の供給途絶リスク解消のための生産拠点整備や、国民が健康な生活を営む上で重要な製品、部素材の生産拠点等整備について、重点的な支援を行うとしております。
 今、まさに本県への生産拠点整備、増強を図る絶好の機会と捉えますが、本県の現状と今後の見通しについてお伺いいたします。
 デジタル機器導入に対する子供たちへの影響について、教育長にお伺いいたします。
 国では、コロナ禍における教育機会を確保するため、GIGAスクール構想を加速、公立の小中学校では今年度中に1人1台端末を整備する方針であります。また、県においては、学校現場におけるICTの効果的な活用を協議する岩手県学校教育ICT推進協議会を設置し、GIGAスクール構想や1人1台のデジタル機器導入などへの対応を本格化させました。
 私は、これらの導入に異を唱えるものではございませんが、心配がございます。それは、スマートフォンやタブレット、パソコン、ゲーム機器、テレビなどのスクリーンを見る時間、いわゆるスクリーンタイムの長時間化が子供たちの成長に悪影響を与えるのではないかということであります。
 先般、日本で出版された、教育大国スウェーデンの精神科医アンデシュ・ハンセン氏著による、スマホ脳を読みました。その内容は、スクリーンタイムが長時間に及ぶことにより、記憶力、集中力、学力の低下、睡眠障害、うつ、依存症などを引き起こすリスクが高まり、脳に悪影響を与えるというものであります。このことは、我が家においても、二人の息子やその仲間たちを観察し、漠然と心配をしていたことへの医学的な裏づけとなると同時に、デジタル社会への警鐘であると受けとめております。
 詳しいデータや分析はぜひ本を読んでいただきたいので省きますが、興味深いのは、デジタル機器の開発を牽引してきたGAFA(ガーファ)を初めとするIT企業関係者たちのコメントであります。一部紹介します。
 アップル社創業者のスティーブ・ジョブズ氏は、アイパッドはそばに置くことすらしない。家では子供たちがデジタル機器を使う時間を制限している。ビル・ゲイツ氏は、子供が14歳になるまでスマートフォンは持たせなかった。アップル社幹部トニー・ファデル氏は、うちの子供たちは、僕がスクリーンを取り上げようとすると、まるで自分の一部を奪われたような顔をする。そして感情的になる。それも激しく。その後、数日間、放心したような状態になる。フェイスブックのいいね機能を開発したローゼンスタイン氏は、製品を開発するときに最善を尽くすのは当然のこと。それが思ってもみないような悪影響を与える。それに気づいたのは後になってからだとして、スクリーンが子供たちを夢中にさせる点に関し、後悔ともとれる発言をしております。
 ICT化を進めるに当たっては、スクリーンタイムの時間制限が必要であると確信を持ったところですが、教育長の認識と今後の方針について伺います。
 県北振興について伺います。
 県北地域への企業誘致については、これまで企業立地促進奨励事業補助金の要件緩和や、平成29年度創設の県北広域産業力強化促進事業などの対策を行ってきましたが、新規立地件数は、過去5年間で4件と苦戦しております。
 先月、八幡平市の松川地熱発電所から発生する温水を活用した水耕栽培によるバジル栽培ハウスを視察いたしましたが、ここではIoT次世代施設園芸地熱温水ハウスを新たに12棟建設し、長年未活用となっていた熱水ハウスの再生に取り組むとともに、地域資源である地熱を活用することで、持続可能な農業の実現を目指しているとのことであります。
 県北地域では、このような最新の栽培技術と資源循環型の自然エネルギーを組み合わせる大規模農業や、既に稼働している鶏糞を利用したバイオマス発電所など、北岩手のポテンシャルを最大限に生かした取り組みが進んでおり、例えば、企業立地補助金を農業や環境の分野にも幅広く広げることや、国庫補助事業の県費かさ上げなど、今後もこういった産業を創出、育成することが、北岩手の産業振興に必要であると考えます。
 北岩手のポテンシャルを生かした産業振興について、部局横断的に推進すべきと思いますが、見解をお伺いいたします。
 アパレルの聖地は、コロナ禍の影響で受注生産が激減し、深刻な状況にあります。このような中、県の支援も後押しとなり、自社ブランドに活路を見出す取り組みが広がっておりますことは、明るい話題であると思います。コロナ禍の教訓を踏まえ、今後のパンデミックに備えるためにも、マスクやガウンなどの生産は国内にシフトしていかなければなりません。
 また、私たち県民も、アパレルの聖地応援のため、アパレル製品の地産地消を進め、着るなら岩手のものの意識を高めていかなければなりません。ちなみに本日着用のスーツは県北産でありますが、こういったスーツやワイシャツ、ネクタイ、警察、消防の制服、県立病院の医療用ガウン、県内企業の制服や作業服など、できるところから県内産に切りかえていくという政策誘導が必要と思いますが、見解をお伺いいたします。
 漆振興について伺います。
 令和2年は、漆産業界にとりまして二つの大きな朗報がございました。
 一つは、昨年6月、二戸市と八幡平市の“奥南部”漆物語〜安比川流域に受け継がれる伝統芸術〜が日本遺産に認定されたことであります。本県では、令和元年に陸前高田市や平泉町を含む、みちのくGOLD浪漫─黄金の国ジパング、産金はじまりの地をたどる─が認定され、2年連続2件目の登録となります。中尊寺金色堂に浄法寺漆が使われているのはもちろんですが、日本各地に残る長者伝説には、黄金とともに漆が出てくることが多いことから、漆千杯、黄金千両と呼ばれ、漆は伝承世界の中では黄金と並ぶ憧れの対象でありました。これらの宝を永遠に、未来に受け継いでいかなければなりません。
 二つ目は、昨年12月、日本産漆生産・精製を含む伝統建築工匠の技:木材建造物を受け継ぐための伝統技術が、ユネスコ無形文化遺産に登録されたことであります。本県では、2009年早池峰神楽、2018年吉浜のスネカ以来の登録となり、さらに今後、盛岡市の永井の大念仏剣舞及び北上市、奥州市の鬼剣舞を含む風流踊が、2022年の登録を目指し、審査を待っている状況にあります。いずれも、関係者の皆様のこれまでの御努力に謹んで敬意を表します。
 これら二つの認定、登録から、匠の技の卓越した価値を再認識するとともに、伝統技術継承に向け、これまで以上に官民一体となった支援を強力に推し進めなければならないと考えております。
 そこで、知事にお伺いいたします。本県漆の伝統技術が、日本遺産、無形文化遺産に登録されたことに関する所感をお聞かせ願います。
 本県の生漆は、国内生産量日本一に加え、わずか7カ月の間に、日本の宝となり、世界の宝となりました。まさに名実ともにジャパンとなりました。時同じくして、ことしは一戸町の御所野遺跡を含む北海道・北東北の縄文遺跡群が世界遺産登録へ向けて審査を待っております。漆と縄文文化は切っても切れない縁で結ばれており、世界遺産登録が実現すれば、これらの相乗効果と合わせ、県北、北岩手の地に大きな夢が広がります。
 そこで提案です。これらの文化的価値の伝承として、国立ジャパンミュージアム構想を立ち上げ、国にその実現を強く働きかけてはいかがでしょうか。
 国立の博物館は、昨年北海道に設置された国立アイヌ民俗博物館以外は東京、大阪周辺に集中しており、本州では千葉県より北には一つもございません。
 また、国立美術館も、石川県の東京国立近代美術館工芸館のほかは、東京都、大阪府周辺に集中しているのが現状であります。鉄は熱いうちに打つ必要があります。見解をお伺いいたします。
 令和5年に本県で開催が予定されている全国植樹祭は、漆を全国、さらには世界にアピールする絶好の機会でもあります。会場における、漆を含む本県木材のPRはもちろんですが、強力な発信が必要と考えます。式典においては、天皇皇后両陛下が苗をお植えになるお手植えやお手まきなど、注目を集める行事が行われますが、この中にぜひとも漆を取り入れてほしいと願うものですが、現在の検討状況及び全国植樹祭における漆の情報発信をどのように考えているのか、知事にお伺いいたします。
 漆産業の現状は、文化財修復等への国産漆の需要増などからニーズは高まっているものの、供給が追いついていない現状であります。
 地元二戸市でも、漆かき職人の育成や原木の植栽などの取り組みに加え、県においても、いわての漆産業新時代開拓事業を展開し、さまざまな取り組みを行ってきたところです。しかしながら、現在、原木不足などの課題に加え、漆かき職人の使う道具をつくる職人の不足など新たな課題にも直面しており、県有地や県有林への漆の植栽など、さらに踏み込んだ取り組みも必要と考えます。
 こうした状況を踏まえ、今後、県として漆産業全体の振興をどのように図っていくのかお伺いいたします。
 最後に、教育環境の整備についてお伺いします。
 新たな県立高等学校再編計画後期計画案で示された福岡工業高校と一戸高校の統合について、福岡工業高校のOBを初め地元経済界などから、単独校としての存続を求める声が上がっていたにもかかわらず、最終案では当初案どおりに提案されたことは残念であります。今後の協議に当たっては、生徒数の推移や関係者の声に耳を傾け、生徒の学習環境にとってよりよい方向性を導き出していただくことを御期待申し上げます。
 先般、岩手県立特別支援学校整備計画最終案が示されました。その中で、二戸地区における小中高等部一貫の特別支援学校の設置について、当初計画案では、本計画期間中の開校を目指すとありましたが、最終案では、本計画期間中に可能な限り早期の開講を目指すとされたことは、大きな前進であり、教育長を初め関係各位の御尽力に感謝を申し上げます。
 また、設置場所候補地につきましても、現在、新校舎建設と統合問題が同時に進んでいる福岡工業高校校地内を検討中と発表されました。
 現在、二戸市内では、小学部が石切所小学校、中学部が福岡中学校、高等部が福岡工業高校にそれぞれ分教室が設置されており、インクルーシブ教育の推進が図られてまいりましたが、これらの経過に加え、通学の便が非常によい二戸駅前という立地条件は、生徒や保護者にとりましても、現段階ではベストな選択と考えております。
 今後は地元関係者との協議が進むと思いますが、現時点での校舎整備に向けたスケジュールについてお伺いいたします。あわせて、文部科学省は、これまで設けていなかった特別支援学校の設置基準を新たに策定し、児童生徒数に応じた校舎面積の基準などを新設する方針ですが、新校舎建設に当たってこの対応はどのようになるのか、お伺いいたします。
 次に、安全で快適な学校施設の整備についてお伺いいたします。
 県立高校における耐震化による校舎改築工事は、現在建設が進んでいる福岡工業高校と伊保内高校で終了とのことであります。今後は、老朽化対策や、快適な学校施設環境の整備に力を入れていかなければなりません。
 そこで伺いますが、現在、老朽化した高校はどのくらいあるのか。特に、築50年を超す高校の具体名もお示し願います。また、新たな県立高等学校再編計画後期計画最終案の中でも、老朽化による校舎整備が複数掲げられておりますが、これらも含めた今後の整備の方向性をお示し願います。
 県では、今年度より、熱中症や新型コロナウイルス感染予防対策のため、県立高校の普通教室へのエアコン設置を本格化させました。昨年の9月定例会において、全66校のうち、当初計画14校から27校に前倒しで設置するとし、今夏までに、これまでの整備済みのものと合わせ、全体の半数の33校で使用できると聞いております。
 新型コロナウイルス感染症も収束が見えず、夏場でのマスク着用でも快適に授業が受けられる環境づくりが急務であると同時に、寒冷地では暖房機能としての役割も期待されております。今後の整備の方向性について伺う予定でしたが、本日提案の補正予算案に盛り込まれていることから、整備の見通しについてお伺いいたします。
 以上で質問を終わります。御清聴ありがとうございます。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君)五日市王議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、本県の魅力を生かした移住、定住の促進についてでありますが、国の第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略(2020改訂版)において、新型コロナウイルス感染症が都市部を中心に拡大したこともあり、東京圏などへの人口集中のリスクが改めて浮き彫りになり、地方への移住や就業に対しての国民の関心が高まるとともに、東京圏から地方への人の流れが見られるようになっており、地方創生の観点から、今後こうした動きを持続的なものにすることが重要であるとされています。
 岩手県は、コロナ禍において、いわゆる感染者ゼロを最も長く維持していたことから全国的に大きな話題となり、海外メディアも含め各種メディアで取り上げられ、岩手県のまじめ、素直、人柄がよいなどのよさが広く報じられました。
 県では、この機を捉え、恵まれた自然環境、空気や水、食べ物のおいしさといった健康的な生活環境や、農林水産業、ものづくり産業、観光産業等の幅広い産業基盤など岩手県の強みをPRするとともに、多様な働き方を実践する県内企業の紹介などを進め、岩手県が安全に安心して暮らし、働ける環境にあることを広く訴え、本県への移住、定住を促進してまいります。
 次に、漆の伝統技術の日本遺産、無形文化遺産の登録についてでありますが、本県における漆の伝統技術は、漆かき職人や木地職人、塗師など、漆職人の長年にわたる研さんと継承により培われてきたものであり、人類の宝として保存すべきものとしてユネスコ無形文化遺産に登録され、また、地域活性化につながる魅力的な文化として日本遺産に認定されたことは、本県にとって極めて誇らしく、これまで地域が一体となって、漆文化を守り、育ててこられた関係者の皆様に心から敬意を表します。
 我が国においては、国宝や重要文化財の保存、修理は原則として国産漆を使用することとされ、県産漆は、日光東照宮などの修復に用いられているほか、県産漆を使用したボールペンや衣料品など、新たな活用も図られているところであります。
 また、漆関連産業は、地域資源と匠の技による将来性の高い地域産業であり、地元市町村や国、関係団体と連携しながら、漆職人の仕事を体験するインターンシップなど、伝統技術の保存、継承の一層の促進に努めるとともに、県内外にさらなる漆の魅力を発信し、北岩手における地域産業の振興に取り組んでまいります。
 次に、全国植樹祭についてでありますが、天皇皇后両陛下の御臨席のもと、本県で開催する全国植樹祭は、岩手県の豊かで多様な森林のすばらしさを全国の皆様に実感していただき、日本全体の林業の未来や、森林環境の保全に向けた熱い機運を、岩手県からつくり上げていくという大きな意義があるものと認識しております。
 このため、県では令和元年8月に全国植樹祭岩手県実行委員会を立ち上げ、現在、式典演出等の具体的な内容を検討するなど、開催に向けた準備を鋭意進めているところであります。
 天皇皇后両陛下がお手植えやお手まきされる複数の記念樹は、全国植樹祭のシンボルとして大切に管理、育成することとしております。
 樹種の選定に当たっては、実行委員会の植樹専門委員会において、岩手県の気候風土に適し、本県の森林づくりのシンボルとして県民に広く親しまれ、植樹後においても管理、育成しやすい樹種の中から慎重に選定し、共催者である国土緑化推進機構等と協議の上、令和3年度末までに決定することとしております。
 また、日本一の生産量を誇る県産漆については、本県における漆の伝統技術が、人類の宝として保存すべきものとしてユネスコ無形文化遺産に登録され、改めて国内外から大きな注目が集まっているところであり、全国植樹祭の式典等において、映像等による紹介や記念品としての活用を検討しております。
 全国植樹祭は、県産漆の魅力を国内外に広く発信する絶好の機会でもあり、市町村、関係団体等と一丸となって取り組んでまいります。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔商工労働観光部長戸舘弘幸君登壇〕
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君)まず、本県出身学生のU・Iターンの促進についてでありますが、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う第1回目の緊急事態宣言の際に、知事から県外で就学している本県出身学生の皆さんに対し応援メッセージを発信したところであります。
 また、今年度、県ではシオクリ!イワテバコの販売など県産品を活用した取り組みや、県外大学に就学している学生の岩手県内での就職活動に対する助成を実施したほか、幾つかの市町村においても、地場産品の提供や奨学資金の貸し付けなどにより、修学の継続を支援していると承知しています。
 県では、令和2年9月にオープンしたオンラインストア、買うなら岩手のものバーチャル物産展において、今後、県産品による学生支援パッケージを企画する予定であり、県産品の消費拡大とともに、県外大学に就学している学生を支援していきたいと考えています。
 また、こうした支援情報を、岩手U・Iターンクラブ加盟大学等との連携や、LINEアカウントいわてとつながろうにより、就職イベント、企業情報などの就職活動や仕事に関する情報、さらには県外学生に寄り添ったメッセージなどとともに発信しながら、本県へのU・Iターンの一層の促進を図ってまいります。
 次に、サプライチェーンの国内回帰についてでありますが、世界的な新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、海外に依存したサプライチェーンの脆弱性を顕在化させたことから、国では、国内のサプライチェーンの強靱化を図るため、今年度第1次補正予算により、サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金を創設したところであります。
 この補助金については、これまで3、060億円の予算に対して、全国から1、670件、約1兆7、640億円の応募があり、このうち146件、約2、478億円が採択され、本県では、新型コロナウイルス感染症関連を中心に4件が採択されたところであります。
 国におきましては、第3次補正予算で、引き続き、同補助金などにより生産拠点の整備等に対し補助することとしており、これらの補助金に応募の意向を示している県内ものづくり企業も現時点で複数社ありますことから、県としては、このような意欲のある企業に対し、関係機関と連携し、積極的に支援してまいります。
 これらの取り組みは、県内ものづくり産業のさらなる成長につながるものであり、引き続きサプライチェーンの強靱化に向けた地場企業の参入支援などの取り組みを推進してまいります。
 次に、アパレル産業の振興についてでありますが、県では、昨年度は県のオリジナル防災服を、今年度は新型コロナウイルス感染症に対応するための布製マスクを県内縫製事業者から調達しており、これらを通じて、ロットや納期の設定など、地元調達に必要なノウハウを得たところであります。
 今後、県といたしましては、制服や作業服、医療用ガウンなどを納入できる縫製事業者の情報を集め、県の機関はもとより、市町村や県内事業所等に広く情報提供し、地元調達の協力要請を行うとともに、これまで県が培ったノウハウを生かし、縫製事業者の取引支援にも取り組んでまいります。
 さらに、今年度、自社ブランド展開を支援するイワテメイドアパレルプロジェクトにより、各社の商品を顧客が直接購入できる新たな仕組みを構築し、県内外から大きな注目を集め、販売も順調にスタートしているところでありまして、今後は御提案のあった制服や作業服なども開発テーマに取り上げ商品開発を促進するなど、アパレル製品の一層の地産地消に取り組んでまいります。
 次に、漆産業の振興策についてですが、県ではこれまで、漆ゆかりの市町や、大学等の研究機関、漆生産組合等と連携し、オール岩手の体制で、漆生産の拡大や人材の確保と育成等に取り組んできたところであります。
 こうした関係者が一丸となった取り組みにより、漆かき職人は、取り組み開始前の平成28年度から令和元年度までに14名増加し34名になったほか、生漆の生産量は同期間で553キログラム増加し1、488キログラムになるなど、着実な成果が上がっているところであります。
 今後、県といたしましては、さらなる漆の増産と、国内外に認められた漆文化を生かした産業振興に両輪で取り組むこととしておりまして、具体的には、漆の植栽地の拡大のための県有林の活用等への協力や、大学等と連携した新技術の導入などを通じて漆の増産を支援いたしますほか、二戸市と八幡平市で構成する日本遺産奥南部推進協議会に県も参画し、観光コンテンツの開発や漆製品の販路開拓、県内外の大学生を対象としたインターンシップによる人材確保などに、両市とともに取り組んでまいります。
 こうした取り組みによりまして、漆の生産から製品の製造販売、さらには、観光まで対応する漆関連産業の一大産地の形成を目指してまいります。
   〔ふるさと振興部長佐々木淳君登壇〕
〇ふるさと振興部長(佐々木淳君)まず、東北新幹線の高速化についてでありますが、JR東日本では、利用者のサービス向上や交流人口の増加等を目的として、新幹線の速度向上による所要時間の短縮に取り組んでいるところと承知しております。
 県といたしましても、速度向上による首都圏等との時間距離の短縮及び県内新幹線駅への停車便数増によるアクセスの向上は、県民の利便性向上に直結するものと考えています。
 市町村におきましては、臨時便を含め新幹線の停車便数増による、アクセスの向上を求める声があるところであります。
 一方、速度向上につきましては、現在、盛岡―新青森間の工事が行われておりますが、報道によりますと、騒音対策等が必要となり、その工事費は100億円を超えるものと聞いております。
 県といたしましては、引き続き、市町村の意向を踏まえ、JR東日本に対して新幹線の停車便数増を要望するとともに、速度向上につきましても、JR東日本と意見交換を行いながら、働きかけてまいりたいと考えております。
 次に、県北地域の産業振興についてでありますが、県では、県北・沿岸振興を県政の重要課題として位置づけ、県北・沿岸振興本部のもと、県北地域においては、これまで、食品関連産業等の業容拡大の支援、農林水産物やアパレル産業のブランド化、浄法寺漆などのすぐれた地域産品の魅力発信などに取り組み、県北圏域の製造品出荷額が、東日本大震災津波前の平成22年の1、136億円から直近の平成30年には1、248億円になるなど、地域産業の振興を図ってまいりました。
 また、いわて県民計画(2019〜2028)に掲げる北いわて産業・社会革新ゾーンプロジェクトにおいては、農林水産業や食産業、観光産業、エネルギー産業などの融合による新たな産業の創出に向け、市町村を初め多様な主体と連携し、部局横断でプロジェクトの推進を図っております。
 例えば、人口減少や高齢化などの地域課題解決に向けて、AI、IoTなど先端技術を導入した地域モデルの構築などに取り組んでおります。
 また、北岩手9市町村で構成される北岩手循環共生圏では、首都圏への再生可能エネルギーの供給とあわせ、特産品の販売、交流人口の拡大など、異なる分野を組み合わせることにより相乗効果を高める取り組みが行われております。
 今後とも、議員御指摘の企業誘致に取り組むとともに、企業誘致や業容拡大に向けた地域産業人材の確保、育成を初め、日本遺産に認定されております“奥南部”漆物語〜安比川流域に受け継がれる伝統技術〜や、県内で三つ目の世界遺産と期待されている御所野遺跡など、北岩手の特徴的な地域資源を活用し、県北地域で広く産業が展開できるよう、産学官が連携して積極的に取り組んでまいります。
   〔総務部長白水伸英君登壇〕
〇総務部長(白水伸英君)県職員の勤務地への居住についてでありますが、県職員は、地域社会の一員としての自覚を持って、主体的に地域課題の解決にかかわり、県民が主役となった地域づくりを支えていくとともに、現在、そして未来の県民全体の利益を考え、行動することが求められていると認識をしております。
 議員から御紹介のありました職員の居住について、その状況を申し上げますと、広域振興局に勤務する職員で、その管内に居住している者の割合は、従来から沿岸地域が他地域に比べ高い傾向にありましたが、直近の調査では、沿岸地域においても減少傾向にある一方、二戸地域など一部の地域では、管内に居住する者の割合が増加しているところでございます。
 職員が居住地を決定するに当たりましては、配偶者の勤務の状況や、子育て、親の介護など、職員個々の家庭事情もあることから、こうした事情を考慮することなく一律に居住地の誘導等を行うことは難しい面があるものと考えておりますが、一方で、議員御指摘のとおり、職員が勤務する地域に居住することは、地域の実情についての理解を深めることにつながり、また地域の活性化に寄与するものと考えられることから、職員のワーク・ライフ・バランスにも十分に配慮しつつ、職員の地域意識の醸成に努めてまいります。
 また、御提案のありました二地域居住につきましては、職員のワーク・ライフ・バランスの推進の面や、ふるさと振興への貢献の面からも、効果が期待される方策の一つと考えられますことから、その具現化の方法につきましては、他県の先進事例も参考としつつ、各種手当の見直しや時差通勤制度の拡充など、さまざまな面から検討してまいります。
   〔文化スポーツ部長石川義晃君登壇〕
〇文化スポーツ部長(石川義晃君)国立ジャパンミュージアム構想についてでありますが、本県の漆文化、伝統技術が、昨年、日本遺産及びユネスコ無形文化遺産に認定、登録され、さらに、御所野遺跡を含む北海道・北東北の縄文遺跡群が本年夏に世界遺産委員会で登録審査されることは、本県における地域振興を図る上でも、大きなチャンスと捉えております。
 現在、漆文化や縄文文化に関する施設については、二戸市立歴史民俗資料館や八幡平市博物館、御所野縄文博物館などのほか、漆の伝統技術を生かした天台寺などの建造物や文化財があり、こうした施設や、市町村、関係団体と連携しながら、面として、漆や縄文の文化的価値を国内外に普及し、後世に伝えていく必要があると考えております。
 また、本県には、漆や縄文文化に加え、平泉の世界遺産や橋野鉄鉱山を初めとした歴史遺産が数多く存在しており、県では、日本列島北部の歴史や文化に主題を置いた国立博物館など、調査研究、資料収集、展示公開等を目的とした総合的な研究拠点施設の設置について、国に要望してきたところです。
 漆や縄文文化を伝承する施設のあり方につきましては、議員の御提案を受けとめ、今後、地元市町などからの意向も伺ってまいります。
   〔教育長佐藤博君登壇〕
〇教育長(佐藤博君)まず、デジタル機器の子供たちへの影響についてでありますが、公益財団法人日本学校保健会が平成30年に実施した児童生徒の健康状態サーベイランス調査によると、睡眠不足を感じていると回答した理由に、テレビ、DVD、インターネット動画などの視聴が挙げられ、睡眠に影響を及ぼしていることが指摘されています。また、スポーツ庁の令和元年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果では、スクリーンタイムが長時間になると体力合計点が低下する傾向が見られたとされています。
 県教育委員会では、スクリーンタイムの長時間化が心身に及ぼす影響を児童生徒にしっかり理解させ、学校以外での長時間利用をみずから抑制する行動につながる指導を進めるとともに、教員に対しても研修等に努めているところです。
 また、学校における具体的な取り組みとして、今年度、全国健康づくり推進学校表彰の最優秀校を受賞した二戸市立福岡小学校においては、インターネットやゲームの時間を減らすメディアコントロールを実践するなど、課題解決に積極的に取り組んでいるところです。
 今後におきましても、学校と家庭、地域が連携し、デジタル機器の適正な利用を含めた、規則正しい生活習慣の確立に向けた取り組みを進め、児童生徒の健康の保持増進を図ってまいります。
 次に、二戸地区における小中高等部一貫の特別支援学校の設置についてでありますが、岩手県立特別支援学校整備計画最終案に掲げる施設整備については、まず釜石祥雲支援学校の新築移転を進めることとしており、二戸地区については、その整備の後、進めることとしたいと考えています。
 今後、新設校の設置に向けて、関係機関と調整を図りながら、早期の整備に向けて検討を進めてまいります。
 また、特別支援学校設置基準への対応については、現時点で国から具体的な基準は示されておりませんが、引き続き国の動向に注視しながら、適切に対応してまいります。
 次に、県立高校の老朽化対策についてでありますが、県立高校の多くは昭和40年代から昭和50年代にかけて生徒の増加に対応して整備されており、令和3年3月末現在で築50年以上の学校は11校、築40年以上は26校となっています。これは県立高校66校舎のうち6割近くを占める状況にあります。
 築50年以上の11校の内訳は、建築年数の長い順に、宮古商工高校商業校舎の58年を初め、水沢商業高校、福岡高校、宮古水産高校、水沢農業高校、岩泉高校、花巻農業高校、水沢工業高校、盛岡工業高校、久慈高校長内校舎及び軽米高校となっています。
 学校施設の老朽化が進む中で、一斉に改築、改修の時期を迎え、施設整備の需要が増大していくことから、今後は十分な安全性、防災性、防犯性や、衛生的な環境を備えた安全・安心な教育環境を目指すとともに、新たな県立高等学校再編計画後期計画との整合性を図りながら、施設の老朽化の状況に応じ計画的に整備を進めていく必要があります。
 また、必要な財源の確保も重要な課題であることから、引き続き国に対して、高等学校施設への財政支援措置について要望してまいります。
 次に、県立高校のエアコン整備の見通しについてでありますが、既に予算措置済みの県南地区の14校と大規模校13校については工事の発注手続を行っており、早ければことしの夏から稼働できるよう進めているところです。
 また、整備済み及び整備することとしている学校を除く残り34校についても、令和2年度2月補正予算案に設計費や工事費を計上したところであり、令和3年度中には設置工事を完了するよう、取り組んでいく考えです。
   
〇議長(関根敏伸君)この際、暫時休憩いたします。
   午後1時58分 休 憩
   
出席議員(48名)
1  番 千 田 美津子 君
2  番 上 原 康 樹 君
3  番 小 林 正 信 君
4  番 千 葉   盛 君
5  番 千 葉 秀 幸 君
6  番 岩 城   元 君
7  番 高橋 こうすけ 君
8  番 米 内 紘 正 君
9  番 武 田   哲 君
10  番 高 橋 穏 至 君
11  番 千 葉 絢 子 君
12  番 山 下 正 勝 君
13  番 高 田 一 郎 君
14  番 田 村 勝 則 君
15  番 佐々木 朋 和 君
16  番 菅野 ひろのり 君
17  番 柳 村   一 君
18  番 佐 藤 ケイ子 君
19  番 岩 渕   誠 君
20  番 名須川   晋 君
21  番 佐々木 宣 和 君
22  番 臼 澤   勉 君
23  番 川 村 伸 浩 君
24  番 ハクセル美穂子 君
25  番 木 村 幸 弘 君
26  番 吉 田 敬 子 君
27  番 高 橋 但 馬 君
28  番 小 野   共 君
29  番 軽 石 義 則 君
30  番 郷右近   浩 君
31  番 小 西 和 子 君
32  番 高 橋 はじめ 君
33  番 神 崎 浩 之 君
34  番 城内 よしひこ 君
35  番 佐々木 茂 光 君
36  番 佐々木   努 君
37  番 斉 藤   信 君
38  番 中 平   均 君
39  番 工 藤 大 輔 君
40  番 五日市   王 君
41  番 関 根 敏 伸 君
42  番 佐々木 順 一 君
43  番 伊 藤 勢 至 君
44  番 岩 崎 友 一 君
45  番 工 藤 勝 子 君
46  番 千 葉   伝 君
47  番 工 藤 勝 博 君
48  番 飯 澤   匡 君
欠席議員(なし)
   
説明のため出席した者
休憩前に同じ
   
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後2時17分再開
〇議長(関根敏伸君)休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。工藤勝子さん。
   〔45番工藤勝子君登壇〕(拍手)

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