令和3年2月定例会 第12回岩手県議会定例会会議録

前へ 次へ

〇28番(小野共君) いわて新政会の小野共です。
 このたび代表質問の機会を与えていただきました先輩議員及び同僚議員に感謝をいたします。
 まず初めに、東日本大震災津波から来月11日で10年を迎えます。改めて亡くなられた方々にお悔やみを申し上げます。
 そして、現在、世界中で感染が拡大しております新型コロナウイルス感染症により亡くなられた方々にお悔やみを申し上げ、罹患された全ての方々にお見舞いを申し上げます。
 通告に従い質問いたします。
 最初に、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種についての課題をお伺いいたします。
 一昨年の12月に、中国武漢市におきまして新型コロナウイルスの感染症が確認されてから1年が経過いたしました。世界の感染者は1億人を超え、感染力や毒性が強くなった変異種も発生し、感染の勢いはとどまるところを知りません。
 ワクチンへの期待は世界中で高まっており、既に世界77カ国でワクチンの接種が実施されております。日本政府は、アメリカのファイザー社、モデルナ社、そしてイギリスのアストラゼネカ社と、合計2億9、000万回分のワクチンの供給を受けることで基本合意しており、先週17日には、国内でファイザー社製ワクチンの先行接種が既に始まっております。
 一方、平成6年の予防接種法改正以降、この27年間、国内では全国一律の集団接種は行われておらず、予防接種の業務を実際に行う自治体においては、集団接種についてノウハウを失っているのが現状です。加えて、厚生労働省は、ワクチン接種の全国的な一元管理のために、ワクチン接種円滑化システムと呼ばれる新しいシステムを本格的な接種の時期が始まるまでに全国都道府県、市町村に導入する計画で準備を始めており、同じく内閣府も、マイナンバーとつなげる新たなシステムを導入する計画を発表しております。
 この厚生労働省と内閣府の二つの新システムの詳細はまだ都道府県や市町村に知らされておらず、戸惑っている市町村があるのも現実です。また、ワクチン接種による発熱や倦怠感、あるいはアナフィラキシーなどの副反応が起こることも心配され、そして何よりも当初予定されていたワクチンの供給時期もおくれております。
 質問いたします。ファイザー社製ワクチンの接種は始まっておりますが、実際に始まってみると、想像していなかった課題も見えてきたのだと思います。県内でのワクチン接種の状況はどうなっているでしょうか。そして、県内でのワクチン接種における課題、そしてそれに対する県の取り組みを聞かせてください。
 次に、新型コロナウイルス感染症の後遺症についてお伺いいたします。
 新型コロナウイルス感染症に罹患された方々の中に、退院または療養解除後、味覚障害や嗅覚障害、倦怠感、脱毛、うつに似た症状などに悩まされている方がいることが明らかになっております。新型コロナウイルス感染症の後遺症についての調査、研究が世界的に進んでいるとされるイタリア、ローマの大学病院の調査では、退院された方の87.4%の方々に、発症から2カ月たっても何らかの後遺症があるとの調査結果が報告されております。今月2月4日には東京都の会議で、国立国際医療研究センターを退院した新型コロナウイルス感染症患者の調査結果として、患者の76%に、せき、倦怠感、呼吸困難、味覚障害などの後遺症が確認されたことが発表されました。
 岩手県においては、おととい2月23日現在、県内の病院を退院または療養解除された方が495人いらっしゃいます。先ほどのローマの大学病院の事例で言えば、岩手で退院、療養解除された方の87.4%の方々、つまり433人の方が2カ月たっても何らかの後遺症に悩まされていることになります。そして、国立国際医療研究センターの事例によれば、76%の方々、つまり376人の方々が、岩手県において何らかの後遺症に悩まされていることになります。
 昨年12月21日に開催された災害対策連絡本部会議における私の質問に対し、保健福祉部の答弁では、現時点で退院、療養解除された方々から後遺症の相談があった事例は把握していないということでした。しかし、これは、県内の後遺症に苦しむ方々が、ただ単に県に相談していないというだけで、先ほどの国立国際医療研究センターの事例やローマの大学病院の事例を見れば、やはり岩手県においても新型コロナウイルス感染症の後遺症に苦しんでいる方々がいると考えるのが自然であります。
 質問いたします。岩手県においても、退院、療養解除された方々からの後遺症の相談を待つというのではなく、県の施策として、退院、療養解除された方々を対象にこちらから追跡調査をして、状況を把握し、そして必要があれば何らかの支援を考える必要があるのだと思います。現在、新型コロナウイルス感染症による入院や通院した際にかかる費用は全て公費で負担されることとなっておりますが、後遺症のための通院、療養の場合、その費用は公費負担の対象とはなっておりません。県の見解をお伺いいたします。
 今から7年前、平成26年、国は医療介護総合確保推進法を成立させ、都道府県による地域医療構想の策定を制度化いたしました。団塊の世代の方々が全て後期高齢者になる2025年に向け、それぞれの都道府県に医療体制の見直しを迫るもので、具体的には、病床の機能分化と、それによって生じた余剰病床の削減を求めるものでありました。2025年に向け、全国の病院の急性期の病床を今後急速に需要が高まるであろう回復期、慢性期の病床に転換し、余った病床の削減を求めるというのが、地域医療構想策定の趣旨でありました。
 県では、この法律に従い、平成28年に地域医療構想を策定し、平成37年つまり2025年に必要な病床数と平成32年時点での病床数の差である3、164床を機能分化により削減していくことといたしました。急性期病床から回復期病床等への病床の転換を伴うものです。地域医療構想の数字どおりに、もし県内でこの急性期病床の削減と病床全体の削減が進んでいたとすれば、結果的に今回の新型コロナウイルス感染症への対応は、さらに厳しいものになっていたのかもしれません。
 その3年後の令和元年9月、厚生労働省は、全国の再編、統合が必要であると独自で判断した全国440の公立病院を発表いたしました。しかし、昨年10月に開催された国の地域医療構想に関するワーキンググループの会議において、再編、統合が必要であるとされた全国440の公立病院の多くが、その地域の感染症の指定医療機関となっていることが発表され、今後このことを再編、統合の議論に反映させる必要があるとの議論になっているそうです。
 岩手県においても同様で、再編、統合の対象と指摘された県内の10の公立病院のうち三つの病院が感染症の指定医療機関となっており、現在、これらの病院は、その地域において新型コロナウイルス感染症の対応で重要な役割を果たしております。厚生労働省は昨年9月までに、この対象となった440の公立病院に対し、病床削減や機能転換または診療科の移転など何らかの対応をするよう求めておりましたが、現在の新型コロナウイルス感染症対策の問題を改めて整理するため、県内10の病院を含め全国440の病院の対応の国への報告は、ことし以降に持ち越されております。
 質問いたします。地域医療構想にしても、再編、統合すべきと指摘された県内10の公立病院にしても、その対応は、現在、国の議論でも出始めているとおり、感染症対応の視点を入れる必要があり、慎重に議論すべきであると思います。地域医療構想における病床の転換と病床の削減の進捗状況とその分析、そして、令和元年に厚生労働省から指摘された県内10の公立病院の対応を県は国にどのように報告しているのか明らかにしてください。
 全国的な新型コロナウイルス感染症の蔓延拡大の過程で、緊急事態宣言が出ている都道府県を中心に、新型コロナウイルス感染症患者が入院できる病院が少ないことが問題となっております。国内の病院の7割を占める民間の病院は中小規模の病院が多く、新型コロナウイルス感染症患者を引き受けることによる風評被害のおそれと、そもそも新型コロナウイルス感染症患者を入院させる病床が物理的に余っていないことが大きな理由であるとの報道がされております。患者の受け入れには大勢の医療スタッフが必要とされ、中小規模の病院では受け入れが難しく、結果として患者の受け入れが一部の大規模公立病院に集中しているというのが現状のようです。言いかえれば、急性期病床の不足と医療スタッフの不足が、患者を受け入れられない大きな原因となっているようです。
 岩手県においては、公立である県立の病院の多いことが県の医療体制の最大の特徴となっております。地域医療構想における病床削減の対象とされた県内各公立病院のふだんの病床使用率がそれほど高くなかったことが、誤解を恐れずに言えば、岩手県において今回、新型コロナウイルス感染症患者の病床確保のために、うまく対応できた理由の一つであると思います。県内各病院においてある程度の余剰のベッドを持っていたことが、結果的に、現在うまく対応できている大きな理由であったことは否定できないのだと思います。
 質問いたします。今の国の議論と同様、今後の都道府県、自治体の望むべき医療体制を考えるとき、感染症対策という視点が加わることは間違いありません。岩手県においても同様です。県は、感染症対策という視点を加えた今後の医療体制はどのようなものであるべきだと考えているのか。県内の保健福祉関係機関と連携をとる岩手県は、少なくともそのたたき台のようなものを考えておく必要があるのだと思います。率直な考えを伺います。
 あわせて伺います。県は、県内の医療体制を九つの医療圏に分割して考えております。この県内九つの医療圏の中で、感染症に対応する医療機関、つまり感染症の指定医療機関がないのは、釜石医療圏だけとなっております。今回の新型コロナウイルス感染症の蔓延拡大の中で、地域の住民はとても不安に感じております。昭和52年に新築移転された釜石医療圏の中核病院である県立釜石病院も、建設から44年経過し、老朽化も激しくなっております。今後の県内の医療体制を考える上で、釜石医療圏の感染症の指定医療機関の設置と、20の県立病院の中で最も古い釜石病院の新築について、県ではどのように考えているのか聞かせてください。
 次に、岩手の漁業、水産業の方向性について伺います。
 地球温暖化や乱獲の影響で、日本、そして岩手県の漁業の水揚げ高が減少の一途をたどっております。2020年のサンマは2年連続で過去最低を記録し、秋サケも過去最低だった昨年よりさらに悪く、アワビもウニも磯焼けの影響で数量と質が全く振るわず、スルメイカにしてもこの5年で漁獲高は3分の1にまで減少しました。
 サンマやスルメイカの低迷は乱獲がその一因とされているようですが、漁獲枠の管理は国同士の決め事であり、よってこれら魚種の今後の漁獲高を見通すのはなかなか難しいものです。国同士の漁獲高の交渉や、地球の温暖化による海洋環境の変化に伴う漁獲高の増減や、とれる魚種の変化など、我々の漁業生産を我々がコントロールできないもの、予測しがたいものに左右されるのではなく、私は今後の漁業生産は、できるだけ計画、予測しやすいもの、安定供給できるもの、安全性の高いものにシフトしていくべきなのだと思います。少なくともその視点を重視していくべきだと思っております。
 この視点で何点かお伺いいたします。
 現在、久慈市漁協ではギンザケ、宮古漁協ではトラウトサーモン、新おおつち漁協のギンザケ、釜石市がサクラマス、大船渡の盛川漁協ではサーモントラウトなど、岩手県沿岸においていわゆるご当地サーモンの養殖の調査事業が本格化しており、その事業化に向け、順調に進んでおります。
 一方で、既に全国的にご当地サーモンと呼ばれる養殖のマスやギンザケは、全国で50種類を超えているのが現状です。後発県である岩手県は、果たしてどのように戦うのかが、当然次の課題となります。
 岩手のご当地サーモンを他地域のものとどう差別化するのか。みやぎサーモンは刺身の生食にこだわっているそうですが、それでは岩手県ではどのように売るのか。
 岩手のご当地サーモンは、魚市場に上げるものあり、大手加工業者が買い取るものあり、大学との連携あり、形態や流通がさまざまです。岩手のご当地サーモンがそれぞれの地域で創意工夫され自然発生的に出たという経緯から見れば全く不思議ではないのですが、みやぎサーモンは年間2、000トン以上が市場に出ております。岩手県でも、果たして岩手三陸サーモンのような統一した名前にして、大量のロットを市場に入れて勝負すべきなのか、そして、そちらのほうが行政も支援しやすいのかなど、ご当地サーモンの事業化に向け整理しておくべき課題はさまざまです。
 しかし、秋サケ大不漁の今の岩手県において、サーモンの養殖がとるべき一つの方向性であることは間違いありません。県と市町村は、丁寧に、そして大事に、大切に、これを支援していく必要があります。
 質問いたします。県は、岩手のご当地サーモンの課題と今後の見通しをどう分析し、今後どう支援していくのか聞かせてください。
 次に、磯焼け対策について伺います。
 近年、全国的にも磯焼けが問題となっていることから、水産庁でも磯焼け対策ガイドラインをつくって全国的に取り組んでいるところであります。岩手県沿岸の海域でも磯焼けが問題となってきており、昆布等を餌とするウニの身入り不足や、アワビの身は小さく、特にアワビの個体数は減少しております。
 磯焼けの対策を立てるための課題の一つは、磯焼けの状況を示す客観的な基準がないことなのだと思っております。藻場がどれだけ消失しているかを、見た人の主観ではなく、客観的に示す一般的な基準がないことなのだと思っております。
 ことしの藻場の状況は、去年あるいは10年前と比較してどうなのか。そもそも磯焼け対策を考える県は、磯焼けの状況を客観的にどう把握しているのか。一言で磯焼けと言っても、大船渡市の状況、釜石市の状況、宮古市、久慈市の状況はそれぞれ違うのだと思います。そして、この藻場の状況の客観的な把握が、アワビとウニが生育する上で最適な藻場の状況とは果たしてどのようなものか、これを考える上での大前提となっているはずです。正しい磯焼け対策は、まさに藻場の正しい状況の把握から始まるのだと思います。
 質問いたします。水産技術センターでも毎年沿岸3海域で藻場の状況についてダイバーを使って観測しているのは存じておりますが、今後さらにその体制を充実させるとともに、客観的基準で示した藻場の状況を県内の漁業関係者と広く情報共有し、藻場における海藻の増殖を含め、根本的に、長期的に、県と関係者が一体となって、本腰を入れて藻場の再生に取り組んでいく必要があるのだと思います。県の見解を聞かせてください。
 また、沿岸の漁協では、磯焼け対策として、ウニ漁の後の9月から10月までウニの間引きを行っておりますが、この時期に間引いたウニは食べられる部分がなく、廃棄されておりました。しかし、この食べられる部分がない駆除されたウニでも、餌を与えれば食べられる部分が太っていくことを水産技術センターが確認したとのことでありました。県では、9月、10月に駆除したウニに餌を与え太らせ、通常の出荷時期だけでなく、ウニの需要が高まる年末と正月の時期にも出荷できる体制を準備するために、実証実験を始めました。現在、県内で種市漁協、久慈市漁協、田老漁協、綾里漁協が、このウニの蓄養事業に取り組んでおります。
 県が現在進めておりますこの黄金のウニ収益力向上推進事業の課題と、今後の見通しをお伺いいたします。
 次に、岩手の漁業生産に大きな影響を与えるであろう福島第一原子力発電所からの処理水の放出についてお伺いいたします。
 東日本大震災津波以後、福島第一原子力発電所の敷地内に、多核種除去設備いわゆるアルプスで、処理済みの水がたまり続けております。政府はこの処理水を、含まれる放射性物質の濃度を国の基準以下まで下げ、海に流す方針を固めております。
 昨年10月に開催された処理水の処分方法に関する政府の意見聴取会で、全国漁業組合連合会の岸宏会長は、我が国の漁業者の総意として、海洋放出に絶対反対であると述べたそうです。同じく、昨年10月下旬に、内閣府の担当者と東京電力の職員が岩手県漁業組合連合会に処理水の処分方法について説明しに来たときも、岩手県漁連の大井会長が、海洋放出に反対の意思を伝えたそうです。
 韓国の海洋水産部は、原発から出る処理水の海洋放出の決定は、排出国、つまり日本だけで決めることはできないとする意見を公表したそうです。そして、その意見にロシア、中国、カナダが同調したとの報道が昨年12月にされました。処理水の海洋放出の影響は、日本だけでなく周辺国にも大きな影響を与えると周辺国が考えるのは恐らく当然なことであり、日本はその対策を考えておく必要があります。一国の処理水の海洋放出の決定に対し、周辺国が反対する権利を持っているとするこの考えが、国際的にばかげていると考える国だけでないことは明らかなのだと思います。
 このような状況下、岩手県は国の処理水の海洋放出案についてどう考えるのか。たとえ海洋放出が行われるとしても、言わなくてはいけないことは当然言わなくてはいけません。岩手県漁業組合連合会に代表される岩手県沿岸の漁師の方々の意見を無視することはできません。
 処理水が海に放出されれば、間違いなく風評被害が起こることでしょう。岩手県産の海産物が売れなくなったとき、補償はあるのか。そして、そのときの補償額の算定の基準は何なのか。処理水が海に流された後と前とで、海水のモニタリング調査も必要でしょう。国と東京電力による十分な説明会を求めていくことも必要です。
 質問いたします。福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出に対し、まず県ではどう考えているのか。政府の海洋放出案に対し、岩手県は主張すべきことは主張しなくてはいけません。当然もろ手を挙げて賛成するわけにはいきません。政府の放出案について、何が問題で、何を準備しておかなくてはいけないのか、問題を整理しておく必要がありますが、県の考えをお伺いいたします。
 過去に国内で大震災と呼ばれた災害は三つあり、それらは、大正12年発生の関東大震災、平成7年発生の阪神・淡路大震災、そして平成23年発生の東日本大震災と言われているそうです。関東大震災は、我々国民に建物火災に対する備えを考えさせ、阪神・淡路大震災は、我々に災害時の家屋の倒壊に対する備えを考えさせ、東日本大震災津波は、言うまでもなく、我々に津波に対する備えを考えさせました。災害に対する備えはこれで十分というものはなく、我々は常に、次に来る災害は果たしてどのようなものか、これを考え、予測しておかなくてはならないのだと思います。
 地震学者であり物理学者の寺田寅彦先生は、その著書の中で、正しく恐れることの重要性を説きました。いたずらに恐れることなく、しかし、その状況を楽観視することなく、冷静に客観的にその状況に対応することの重要性を説いた言葉です。
 今、我々県民が皆で知恵を絞り、新型コロナウイルス感染症を正しく恐れ、落ち着いて対応することが肝要だと思います。新型コロナウイルス感染症の一日も早い収束を願い、会派を代表しての質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君)小野共議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、新型コロナウイルスワクチンの接種についてでありますが、県では、国から第1弾として供給されるワクチン量に応じて、医療従事者への接種を3月上旬に始めることとしています。第2弾以降については、ワクチン供給量や日程が示されていないところでありますが、供給状況に応じた円滑なワクチン接種ができるよう体制整備を進めているところです。
 また、市町村が実施する住民接種については、ワクチン搬送や相談、予約の窓口となるコールセンターの設置、医療従事者の確保などの課題があることから、県では、市町村との意見交換会を開催し、県の取り組み状況等を情報提供するなど、課題解決に向けた支援を行っているところです。
 今後においても、国、県、市町村や医師会等の関係機関が緊密に連携し、ワクチン接種が安全かつ迅速に実施できるよう取り組んでまいります。
 次に、新型コロナウイルス感染症の後遺症についてでありますが、これまで国内外で、嗅覚障害、呼吸困難、倦怠感などの症状が報告されており、現在、国において、全国的な調査を実施していると承知しています。
 県では、後遺症に限らず、メンタル面も含めた心身状態についても、実態を把握することが必要と考えております。そのため、本県で退院、療養解除された方々を対象とした調査を実施することを検討しているところであります。
 また、感染症の入院治療に要する医療費については、法令に基づき、感染症の蔓延防止等の公衆衛生上の観点から、入院勧告等に伴い公費負担を行っているものであり、療養解除後の後遺症の治療については、他の感染症と同様に、公費負担の対象となっていないものと承知しております。
 県では、全国知事会を通じ、後遺症についての科学的、専門的情報を迅速に提供することを要望しており、今後、後遺症の実態について明らかになってくると見込まれることから、必要に応じ、国に対する要望等の対応を行ってまいります。
 次に、公立、公的医療機関等の具体的対応方針の再検証等についてでありますが、県全体の病床数の状況については、平成26年度の1万3、859床から、令和元年度には1万3、352床となっており、507床減少しています。
 また、病床機能の転換状況については、急性期が473床の減、回復期では849床の増、慢性期では494床の減となっています。高齢化の進展による医療需要の変化を踏まえた病床機能の見直しや病床数の適正化が、着実に進められてきたものと考えます。
 次に、具体的対応方針の再検証の対象とされた10の医療機関についてでありますが、その大半において、既に病床機能の転換や病床数の見直しが進められており、直ちに統廃合やダウンサイジング等が求められるものではないと考えております。
 この考え方を踏まえ、現在協議中の胆江地域の3病院を除く7医療機関については、これまでの取り組みを継続することとして、令和2年4月に国に対して報告を行ったところであります。
 御指摘のとおり、10の医療機関のうち三つが感染症指定医療機関である等、今般の新型コロナウイルス感染症対応においても重要な役割を担っており、引き続き、各圏域の地域医療構想調整会議において、こうした個々の医療機関の機能や役割分担を踏まえた協議が進むよう、取り組んでまいります。
 次に、新型コロナウイルス感染症の対応を踏まえた県の医療体制についてでありますが、新興感染症等にも対応可能な医療提供体制を構築するためには、通常の医療体制の充実とともに、感染拡大時を想定した転用可能な病床やスペースの確保、専門人材の確保、医療機関の連携や役割分担の検討等、医療需要の変動に柔軟に対応できる体制づくりが必要と考えます。
 今後、国では、令和6年度からの次期医療計画に新興感染症等の医療対応を新たに盛り込み、具体的な取り組み事項や数値目標等につき検討を行う予定であり、県としても、国の動向を注視しながら、今般の新型コロナウイルス感染症への対応から得られた知見等を踏まえ、医療提供体制の構築に向けた検討を進めてまいります。
 次に、釜石保健医療圏の感染症指定医療機関の設置についてでありますが、今般の新型コロナウイルス感染症においては、各圏域においても、感染症病床に限らず、協力医療機関等の一般病床も含め、病床を確保し対応しているところです。
 今後、新興感染症等にも対応可能な医療提供体制の構築に向けて、感染症病床の設置も含め、次期医療計画及び感染症予防計画の策定過程で検討を進めていく考えであります。
 また、県立釜石病院の整備についてでありますが、県医療局では、今般実施した劣化調査の結果、釜石病院の建物の躯体については、今後50年程度の使用に支障がないものの、給排水整備や空調整備等において最も劣化が進んでいることから、優先的に検討を進める必要があるとしております。
 今後、医療局において、釜石保健医療圏に設置されている地域医療構想調整会議等で行われる、将来の病床数やそれぞれの医療機関が担う機能などに関する議論を踏まえつつ、建てかえと既存施設を改修した場合の投資規模やその効果、県立病院全体の経営に及ぼす影響など、さまざまな視点を考慮しながら、整備について具体的に検討を進めていくものと承知しております。
 次に、サケ、マス類の養殖への支援についてでありますが、本県水産業は沿岸地域の基幹産業であり、水産業が将来にわたり持続的に発展していくためには、近年、漁獲量の減少が続くサケ、サンマ、スルメイカなどの主要魚種の資源回復に取り組むとともに、海洋環境の変化に左右されない安定的な魚類の養殖など、新しい取り組みを進めていくことが重要です。
 現在、久慈、宮古、大槌、釜石の4地区でサケ、マス類の海面養殖試験が行われ、成果も着実にあらわれているところであり、県では、先行するこの4地区に加え、他の地域への普及、拡大を進めることとしております。
 冷水性のサケ、マス類の養殖は全国各地で行われていますが、先行する他産地では、6月までに出荷が終了する中、夏場の海水温が他産地よりも低い本県では、おおむね7月まで鮮魚として出荷できる強みがあります。
 また、サケ、マス類の養殖の推進により、地元の水産加工業者と連携した商品開発が期待されるほか、飲食店や宿泊施設での食材利用により、観光など地域経済の活性化にも寄与するものと考えています。
 このため、県では、令和3年度当初予算案に盛り込んでいる新しい増養殖モデル創出事業により、ICTの活用による生産性の向上とともに、マーケティングやブランディングに係るセミナー等を開催するなど、収益性の高いサケ、マス類の養殖事業が県内各地域で展開されるよう、積極的に取り組んでまいります。
 次に、藻場の再生への取り組みについてでありますが、藻場は水産生物の産卵や生息の場、餌場など、水産資源の増殖に大きな役割を果たしておりますが、本県では、近年、冬場の海水温が高めに推移し、ウニ等が活発に活動して昆布などの芽を食べ尽くしてしまう磯焼けの発生等により、藻場の面積が減少しており、藻場の保全、創造に資する対策を講じていくことが重要であります。
 藻場の状況については、毎年、潜水による定点調査を実施し現状把握に努めてきたところでありますが、調査範囲が限定的であったことから、令和元年度から新たにドローンを活用し、より広域的に藻場面積等を把握する実証試験に取り組んできたところであります。
 これまでの実証試験では、潜水調査と比べ、広範囲にわたって藻場の状況を把握できること、時間と労力が大幅に削減できることなど、その有効性が確認されたことから、今後は、潜水調査に加えてドローンによる調査を本格的に導入し、藻場の面積や密度、植生の変化などを詳細に把握するとともに、これらの情報を漁業関係者と共有し、各地域の漁場管理に活用してまいります。
 また、県では、国が策定した藻場・干潟ビジョンを踏まえ、より長期的な視点で藻場再生の取り組みを推進していくため、現在、岩手県藻場保全・創造方針の策定を進めております。今後は、この方針に位置づけるハード、ソフト両面の対策を総合的に推進し、海域の状況に応じた藻場の再生がより効果的に進むよう、市町村、漁業関係団体と一丸となって取り組んでまいります。
 次に、ウニの蓄養事業の課題と今後の見通しについてでありますが、県では、磯焼け状態の漁場に生息する過剰なウニを間引き、適正な密度に保つとともに、身入りが少なく商品価値の低い、いわゆるやせウニの有効活用を促進するため、令和2年度9月補正予算において黄金のウニ収益力向上推進事業を措置したところであり、現在、県内4地区の漁協と連携し、湾内の静穏域や陸上施設を活用した蓄養技術を確立するためのモデル事業を実施しております。
 通常のウニの出荷時期は、身入りが充実する7月から8月が中心ですが、この事業では全国的に国産のウニが品薄となる年末から春先に出荷することを目指しており、その実現には、蓄養するウニの身入りの安定とともに、市場の評価を得ることが重要となります。
 このため、令和3年度は、身入りの促進に最適な飼育密度や給餌量等の把握など効率的な蓄養手法を確立するとともに、蓄養したウニの食味などの評価を確認するため、流通事業者等を対象に試験販売を行うこととしています。
 本県のウニは、全国第2位の生産量を誇り、市場で高い評価を得ているところですが、これまでの夏場の出荷に加え、高値が期待される冬場にも出荷できる、いわばウニの二期作を早期に実現し、ウニの主産地として、漁場の生産力と産地の魅力を高め、さらなる漁業者の収益向上につなげてまいります。
 次に、東京電力福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出についてでありますが、処理水の取り扱いについては、昨年2月の多核種除去設備等処理水の取り扱いに関する小委員会の報告書や、国に寄せられた意見等を踏まえて、国の責任において処分方法が決定されるものと認識しております。
 一方、処理水を海洋放出する案に対しては、漁業関係団体が風評被害への懸念から反対意見を表明しているほか、海外からも早期に処分方法を決定することへの懸念が示されていると承知しております。
 処理水の処分方法は、本県の自然環境や漁業を初めとする産業に影響を及ぼすものであってはならないと考えており、これまでも全国知事会及び北海道東北地方知事会から、国に対し、正確な情報発信と具体的な風評対策を示すよう要望してきたところです。
 国においては、処理水の取り扱いについて、安全性の確保を大前提に、環境や風評への影響などを十分議論の上、慎重に検討を進めるとともに、漁業関係者を含む国内外の方々の理解を得る必要があると考えております。
〇副議長(中平均君)演壇の消毒のため、しばらくお待ち願います。
次に、佐々木努君。
   〔36番佐々木努君登壇〕(拍手)

前へ 次へ