令和2年6月定例会 第8回岩手県議会定例会会議録

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〇11番(千葉絢子君) いわて県民クラブの千葉絢子です。
 今回、改選後初めての一般質問の機会をいただきましたことに深く感謝申し上げます。
 初めに、新型コロナウイルス感染症対策に県を挙げて取り組んでくださっていることに心からの感謝を申し上げますとともに、日々、不安の中でそれぞれ懸命に模索を続けている県民の皆様に、心からのいたわりと寄り添う決意を新たにしていることを申し上げます。
 今回登壇するに当たり、自分の中でさまざまな葛藤がございました。その原因は、言うまでもなく新型コロナウイルス感染症によるものです。県庁を初め市町村に至るまで本当に少ない人数で行政サービスを担っているにもかかわらず、ニーズは星の数ほどあり、国の方針も曖昧で、現場の判断に委ねられる部分が多いことから、結局、県や市町村、事業者や学校など市民生活に一番近い現場が混乱に陥っていること、経営者や労働者、私の身の回りの普通の大人や子供たちの暮らし全般に影響が出ていること、世代間の分断が深まっていること、あすの糧や生きる意欲を失ってしまって途方に暮れる人たちに思いをはせ、これからの岩手をどう立て直していくか、できることは何か問い続ける日々を送ってまいりました。
 自分の中での政策形成の価値観も大きく揺さぶられています。このような中で見出す希望とは何か、幸福とは何か。それは耳に心地よい音として語られる理想なのか、それとも、あすも生きよう、子供たちの未来を切り開こうと思えるような勇気を奮い立たせてくれるものなのか。今この政治に求められている役割は何なのか。自分の発言や問題意識も、自分がその当事者でなくてよかったとか、しょせん、その立場とは一線を画していて、安全なところから議論する余裕のある人間の醜い欺瞞なのではないか。これは震災以降、私がひそかに心の中に抱き続けていた疑問と自問であり、その思いは日に日に大きくなっています。
 私は、震災以降この答えが出せなくて、この10年苦しんでまいりました。けれども、この艱難辛苦から私自身が逃げられたとしても、子供たちはこの後を生きていかなければなりません。その責任から逃れることはできないとおのれを奮い立たせて、議員としてこの場にいること、そして、県民の皆さんの御支持と託された希望を見出す使命をいただいたと思って2期目に臨んでいる覚悟をこの際申し上げます。
 このたびの質問は、不確実性しかないあすに向かって県民をどのように導いていくか、あと3年この岩手県政のかじ取りをする知事のお考えを聞くことを中心にさせていただきます。
 こうした状況の中でも、あすの岩手に希望を持つためにゴールを思い描いて語りたいものですが、今、最もやらねばならないことは何か、私には正解がわかりません。いわて県民計画の根幹である理想、誰ひとり取り残さないと言っても、知事を初め県職員、私たち議員のここでの議論や施策というものは、困窮し、もがく県民全員を救えるのでしょうか。私にはそうは思えません。実際に、私たちの周りでは、苦しみ、絶望しながら、人生を終える人が存在しているからです。
 私たちが考えることはしょせん人ごとであり、施策というのは策を施す、つまり、上位の者から民に対して、これがよいであろうと授けるものをあらわす言葉であるかもしれないという疑念があります。一度、知事や県職員、議員という立場を離れてしまえば、私たちもまた、この地域の構成員の一人であるにもかかわらず、自分の生活とはかけ離れたところで施策を練り、答弁を書く。それも、一定の任期と定年までの年数、そして、報酬を約束された安全な場所で。私たちのやりとりが県民の皆さんにどう響くのか、どう聞こえるのか、どう考えてもらうきっかけにするか、私は自分にも問い続けながら本日の登壇を迎えました。
 今回は、議会と執行部の対立の構図ではなく、知事初め県当局も、我々議員も、この地域の構成員の一人として、この地の子供たちの将来をともに考える機会になればと願っています。
 答弁検討してくださった職員には感謝の気持ちでいっぱいですが、私が求めているのは武装された簡潔な答弁ではなく、これからの行く末に対する考え方と、知事や岩手県として県民一人一人に語りかけるような、血の通った思いであることを冒頭に申し上げておきます。同意でなくても結構ですので、誠意ある、県民の皆さんの本当の希望と幸福につながるような御答弁をいただきたいと願っておりますし、我々の後にこの地を生きていく若者や子供たちの足元を確かに固めるような実のある政策談義をしたいと思っています。
 本日は、新型コロナウイルス感染症蔓延防止の観点から、執行部の答弁は簡潔にする旨再三伺っておりますので覚悟はしています。けれども、本日は一般質問の最終日です。知事の言葉が簡潔でわかりやすいものになるのは、本来の議論の形とメッセージとしては大変理想であります。使い古しの答弁では聞くほうも飽きますので、ぜひ簡潔で、知事の人間性と県の熱意、そして、意思の伝わる御答弁を心からお願いいたしまして、以下、通告に従って質問いたします。
 初めに、新型コロナウイルス感染症について伺います。
 国では、日本での感染が最初に確認されてから3カ月がたった4月7日にようやく緊急事態宣言を発出しましたが、現在まで日本全国で、岩手県のみいまだに感染者が確認されていないことについて、知事の所感をお伺いいたします。
 以降の質問は、質問席で伺います。
   〔11番千葉絢子君質問席に移動〕
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 千葉絢子議員の御質問にお答え申し上げます。
 岩手県において感染者が確認されていないことについてでありますが、岩手県においては、人口密度が低いことに加え、県民や岩手にかかわる全ての人が密閉、密集、密接の三つの密を避け、マスクの着用や丁寧な手洗いを励行するなど、基本的な感染対策を行っていただいたこと。また、外出自粛要請等を踏まえ、慎重かつ冷静に行動していただいたこと等が複合的に関連し、感染未確認という結果につながっているものと認識をしておりまして、県民の皆様に感謝申し上げます。
 さらに、欧州や米州に比べて日本全体の感染者が著しく少ないからこその結果と考えられ、日本の全ての方々に感謝を申し上げます。
〇11番(千葉絢子君) 岩手県でのみ感染者が確認されないという謎については、物珍しさも手伝って、国内複数メディアでは、知事の御経歴も時に取り上げながら、知事がジョンズ・ホプキンス大学で学ばれた知識が功を奏したのではないかという報道もなされていて、知事は感染症対策の専門家というような内容もTBSとフジテレビの報道で見られたところであります。
 ただ私の記憶では、知事は外務省時代に、この大学で国際関係について学ばれたように思うのですが、御自身はこの報道については御存じでいらっしゃると思いますし、どのように感じていらっしゃるのか。
 また、今回の感染症への対応において、そこで学ばれた専門性やこれまでに得られた知見のどのあたりが生かされたと思っていらっしゃるのかお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 私が外務省時代に留学していたジョンズ・ホプキンス大学は、米国で最初に公衆衛生大学院が設置されるなど、この分野において世界的にも歴史のある大学でありますが、私は国際関係論を学んでおり、特に危機管理について力を入れておりまして、取材にはそのように答えています。TBSの取材にもそのように答え、きのうの朝そのように報道されていたと記憶いたします。
 今回の新型コロナウイルス感染症はかつてない危機であり、かつてないような対策を行う必要があり、前例にとらわれないという視点で、感染拡大している地域との往来と来県後の行動について注意を促すなど、国の緊急事態宣言に先駆けて対応を行いました。
 また、答えは現場にあるという視点から、例えば東日本大震災津波を契機に発足したいわて感染制御支援チーム─ICATによる地域外来・検査センター設置の支援や、高齢者施設等における施設内感染防止のアドバイスを行っているところであります。こうした対応について、ジョンズ・ホプキンス大学で学んだ危機管理や東日本大震災津波等での経験が生かされたところもあるとは考えております。
〇11番(千葉絢子君) ただ、一般県民の中には、本当に知事が感染症の大家であるので岩手県はこのように新型コロナウイルス感染症の感染者が出ないのだ、やはり達増知事はすばらしいというようなお話をしている県民の方もいらっしゃるわけです。知事が学ばれたのは危機管理であり、今回その知見がこの感染症対策において生かされているという御答弁でありました。
 先般の東京都など感染者の多い地域で実施された抽出方式による抗体検査では、抗体のある人の割合が0.5%程度であり、集団免疫を獲得するには全く至っていないということが明らかになりました。これは一部で言われているような、岩手県民にはもともと生まれつき抗体があるのではないか、生活習慣によるところがあるのではないかというその根拠のないところが改めて否定されたと私は捉えておりますが、その後、岩手県立中央病院の研究チームが、院内の職員1、000人を対象に行った調査において、誰からも抗体が検出されなかったこともわかりました。
 この感染未確認の状況はいずれ途切れることが予想され、ほかの地域と同じように感染者も発生するのではないかと思うわけですが、その際、これまで県民の真面目さによる努力のたまものだと考えられているままでは、恐らく最初の感染者に対しては、県民の努力を水の泡にした、けしからんなど物すごい批判の声が寄せられることは想像にかたくありません。
 また、今後、新たな感染症の流行なども心配されるところです。中国では、新しい豚の感染症が見つかったということで、早くもこれもパンデミックを起こすのではないかという警鐘が鳴らされているわけですけれども、この岩手県の長期にわたる感染未確認の状況がどんなことに起因するものなのか、ウォール・ストリート・ジャーナルに書かれたように単なる幸運に過ぎないのか、それとも日本のミステリーというような話題に終わってしまうのか、今後の感染症対策にも重要なデータになり得ると思いますので、岩手県としても何らかの研究をすべきではないかと思いますが、この点についていかがでしょうか。
〇保健福祉部長(野原勝君) 感染未確認の要因分析でございます。新型コロナウイルス感染症の世界的感染拡大には著しい地域差が見られ、また、病態として十分解明されていない部分も多いことから、現在、世界中において研究、解析が進められているものと承知しています。
 疫学、統計学的アプローチによる人口密度や県民の基本的な感染対策の実施等の効果に関する定量的な評価については、これまで感染が確認されていない本県のみを対象とした解析が難しいため、例えば東北地方を対象とするなど、より広域での研究が必要と考えています。
 また、ウイルス学的アプローチによる地域の感染実態を把握する方法として、国が実施した抗体保有調査のほか、国内の複数の研究グループから、下水中のウイルスのモニタリングの試みが報告されています。
 今後の県内での流行に備え、こうしたウイルス学的アプローチも含めた地域の感染状況の比較分析は重要と考えておりますが、今、申し上げましたとおり、感染が拡大している地域も含めた広域的かつ多数の研究機関による共同研究が必要であり、こうした研究に本県が対象となるのであれば、県としても協力していきたいと考えております。
〇11番(千葉絢子君) 私たちが生きてきた中では、過去にどういうことがあったか検証するというのが、次の時代の未曾有の事態に立ち向かう中で一番大事な手がかりとなるわけです。この岩手県で感染者が未確認という状況を、ぜひ次の世代にも引き継ぐべくしっかり研究はしていただきたいと思いますし、この知見をぜひ後輩の職員、県民にきちんと承継をしていっていただきたいと願っております。
 この未知の感染症対策につきましては、感染拡大防止のためのリーダーシップとは何か、世界、そして国内の各リーダーのあり方について考えさせられた出来事であったと思います。
 中でも、我々一般国民においては、国の曖昧な学校の臨時休業の要請に始まりまして、緊急事態宣言の後においても、地域の実情に合わせた対応が求められるなど現場は大混乱、我々にとっては、都道府県知事による一般市民に向けたメッセージの重要性を改めて認識させられたところです。
 さて、ことし3月、県内を訪れていた方が北海道で感染が後に判明した際、県民は一斉に不安になりました。県では報道機関を集めて記者会見をしましたが、その際の説明に立たれたのは知事ではありませんでした。県民に不安が生じたとき、きちんと説明に立たれるのが首長としてあるべき姿ではないかと思いますが、なぜ、あのとき知事は会見の席に立たれなかったのでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 議員御指摘の3月の事例については、疫学調査を実施した小樽市保健所からの情報により、岩手県内での移動経路や濃厚接触者について正確に把握できており、感染拡大のリスクは極めて低いと認められておりました。濃厚接触者等の情報については、国の公表基準には当たらないものの、県民への情報提供の観点から感染者、濃厚接触者のプライバシーの保護に配慮しながら、担当部において公表をしたところであります。
 また、4月の陸前高田市の医療機関における事例についても、同様の対応を行ったものであります。
〇11番(千葉絢子君) なぜかとお伺いしているのです。
〇知事(達増拓也君) 感染拡大のリスクが極めて低いと認められたものであること、また、小樽市保健所とのやりとりなど、事務的なところを担当部において公表することが適当と判断したものであります。
〇11番(千葉絢子君) では、私が先ほど質問でお伺いした県民に不安が生じたとき、きちんと説明に立たれるのが首長としてあるべき姿ではないかという私のこのリーダー像というのは否定をなさるわけですね。そういう不安に駆られたときに、感染リスクが低いと判断したので、そこまでの不安ではないだろうと知事御自身は判断をして、御自身で会見をなさらなかった。県民の不安に応える必要は今はないと判断されたということなのでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 不安を解消する最大のポイントは事実関係を伝えることにあると思います。事実関係の伝え方には、その事情に精通した詳しい担当が発表するケース、また、特に危険性が非常に高く、大きな行動変容を県民に求めていくような場合には、ある種政治的なプレゼンスということで首長による発表が求められるケースもあるかと思いますが、議員御指摘の事例については、担当部において公表することが適当と判断したものであります。
〇11番(千葉絢子君) それでよかったのでしょうかという疑問はやはり残ると思います。知事は、その後、会見の際に、手話通訳を介して聴覚に障がいのある人へも情報が行き渡るように配慮なさっています。
 一方で、知事の発言の中身が複雑だったり、専門用語が多かったり、一つの文章が長いなどの理由でなかなか伝わらないという指摘もありました。私の身の回りで最も多かった反応は、知事はどうして御自分の言葉で語りかけないのだろうか、職員が書いたものを棒読みしている印象を受けるなど、知事のメッセージが耳に残らないという声でした。
 これは安倍総理の会見においても同じような声が上がっていますけれども、これは遠い存在だから仕方がないとしても、うちの知事はどんなメッセージをどのように伝えるのだろうかという、まさに不安な県民のわらにもすがる思いに応えていないと私は感じるわけです。
 知事が今回の新型コロナウイルス感染症に関するメッセージや会見で、御自身の見解を発出する際、最も重視しているのはどんなことでしょうか。御自分の言葉で語られないのはなぜなのでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 私も英語の通訳をやった経験があり、今回の新型コロナウイルス感染症関係の手話通訳に関しても、例えばクラスターをどう訳すかとか、ディスタンスというのをどう訳すかなどについては、手話通訳の皆さんで、全国的にこれはこう訳そうというのを決めてふだんはやったりしているそうなのですけれども、今回はそれが非常に大変だったということを聞いております。
 しかし、そういった言葉はやはり国民的に使われている言葉でありますので、そういう言葉は使わなければならないと思って使っていたところでありますけれども、一連のこの新型コロナウイルス感染症対策の中で、私というか、岩手県として気をつけていたのは、県から県民の皆さんへのメッセージ、県外の皆さんへのメッセージをきちんと明確にするということです。
 例えば知事メッセージを発するときも、それは文書できちんと確定させて、知事のメッセージがテレビやインターネットで流れると同時に、県のホームページにもその正式な文書が同時に載るように工夫いたしました。
 これは他県の例で、一体何の自粛を求めているのか、外出自粛という、不要不急、一体どういうときにどういうところにという、それを後から調べたいと思っても、文書になっていない、あるいは文書が公にされていないケースが結構あって私も困ったりしたのですけれども、岩手県の場合にはそういうことがないように、わからなくて不安にならないように、この不安を解消できるように、わからないときには、きちんとその文書に当たれば正確な自粛要請の内容等がわかるように工夫いたしました。
〇11番(千葉絢子君) ただいまの答弁も同様であると私は思っております。知事はいつも答弁原稿があるときは、その原稿以上のことをなかなかおっしゃいません。この5年間、私は知事の血の通った答弁をほとんど聞いたことがないのです。何だか話が現実的ではなく、浮世離れをしていて腑に落ちないのです。
 今回の新型コロナウイルス感染症対応に関するリーダーの資質として世界的に重視されたのは、ターゲットをしっかりと捉えているかどうか、また、簡潔で明確な真心のこもったメッセージであるかどうかだったと言われています。それはつまり、そのメッセージを発するときに、御自分のイメージを重視するか、あるいは、そのメッセージを受け取る人を思いやっているかどうか、そのどちらを重視するかというところに尽きるのではないかと思うのですが、書き言葉と話し言葉は、例えば議事録を見たときにわかるわけです。書き言葉は往々にして熟語、つまり漢字が多いのです。対して話し言葉は平仮名も多く使われています。知事の御発言は、この書き言葉による表現、それから、明言を避ける曖昧な表現が多いため、手話通訳を介して聴覚に障がいのある人に伝わりにくいのだと私は感じております。
 耳から入る音声で普通の人が理解できるのは大体一つの文章、一つのまとまりが10秒から15秒程度。漢字を少なく、話し言葉で大体中学2年生が理解できる内容でまとめるというのが、放送におけるニュース原稿の目安として存在しています。私もこのような議会の場でも、なるべく簡単な言葉で伝わりやすいことを一番に考えて質問、提言しています。
 今回の新型コロナウイルス感染症のような危機は今後も訪れるだろうことは十分に予想されますが、こうした非常時に限らず、記者とのやりとりや我々議員とのやりとりにおいても、一般の県民を相手にしているということを意識なさったほうがよろしいのではないかと思いますが、御自身で発する言葉の大切さをどのように考えていらっしゃるのか、改めてお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 今の新型コロナウイルス感染症対策に関する質問の流れの中での御質問と受けとめて、今、話を聞きながら出てくる答えもそれに関連しているのですけれども、人の命にかかわることでありますので、やはり正確さが大事だと思ってやってまいりました。
 三密─密集、密閉、密接についても、密接ということが、これは物によって2メートルだとか1メートルだとか手の届く距離だとかいろいろな書き方があったりして、県民の皆さんが具体的にどうすればいいのかわからない、そこから生じる不安は避けなければならないと思いまして、そういう意味で文書を、書き言葉を大切にしてきたところがございます。
 議員御指摘のように、話し言葉のよさというのも局面によっては大事だと思いますので、そういった工夫もしていかなければならないと思います。
〇11番(千葉絢子君) 今回、県民は知事のメッセージを知事御自身が感じている以上にしっかりと見ています。原稿を読み上げるだけなら知事はどなたでもいいのではないかと、今回の知事の会見内容やメッセージを映像で見て思った人は多かったようです。他県の知事との熱意や緊迫感に差があり過ぎるのですね。知事御自身が県民とともに苦しみながら答えを出そうとしていることをもっと県民に見せていただきたいと思います。
 御自身で県民を導いていく覚悟を、ひでりのときは涙を流し、寒さの夏はおろおろ歩き、その中からもがいて出していこうという、そういった姿を見せ、それを自分の言葉で述べ、指揮をとっていく。それが今望まれているリーダー像だと私は思っております。一緒に膝を交えて現場の職員とお話をすること、市町村の声に耳を傾けること、今こそ知事という名前の本質である、知ることと理想のリーダー像を御みずから実践していただきたいと私は願っております。
 次の質問です。6月19日から経済や日常生活の回復路線は全国的に新しいフェーズに入りまして、国内での規制はほとんどなくなっていくようです。しかし、多くの県民から、夜の街に出ていいのだろうか、観光をしてもいいのだろうかという声が聞かれています。こうした中、大阪府知事はメッセージを出して、どんどんまちに出て経済を回しましょう、新たな感染者が出たら、また、そのときは休業をお願いするかもしれないけれどもと、その迷いがある中でも府民に対してしっかりとメッセージを出しています。
 感染ゼロの岩手県の経済回復について、知事がどのようなメッセージを発するのか、明確な後押しが必要だという県民の声が出ています。落ちてしまった県内の経済をどのように立て直していくのか。また、自粛要請に従った飲食店を初めとした事業者や県民、子供たちへの明確なメッセージをお願いしたいのです。
〇知事(達増拓也君) 緊急事態措置解除後の経済や日常生活の回復のためには、新型コロナウイルス感染症が発生する前の状態に戻るのではなくて、さまざまな場面で感染対策が求められますので、知事からのメッセージとしてはそのような内容を発信してきたところであります。
 例えば、岩手県の緊急事態措置が解除された5月14日にあわせて、新しい生活様式の実践例に沿って行動し、感染拡大の防止と社会経済活動の維持を両立するという新しい段階に入ったこと、また、全国の緊急事態措置が解除された5月25日にあわせて、県境をまたいだ移動やイベントの開催を全国共通で段階的に緩和していくことなどについて発信しました。
 以上のメッセージに加えて、市町村や商工会議所等の関係団体が、それぞれの現場で感染対策を徹底し、経済や日常生活の回復に向けた取り組みを実施することが重要であり、特に、生活、仕事、学びの現場において、生活であれば家族が、仕事であれば職場の人たちが、そして、学びの場、学校であれば生徒と教職員の皆さんが力を合わせて感染対策をしっかりやることが大事でありますので、そのようなメッセージを発しながら、それを強力に支援する事業を令和2年度岩手県一般会計補正予算(第3号)等によって取り組みを進めてまいります。
〇11番(千葉絢子君) では、第2波、第3波の襲来が不安視されている中で、今備えるべきはどんな点であるとお考えでしょうか。
〇保健福祉部長(野原勝君) 今後の備えるべき点についてであります。岩手県新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針においては、地域の感染状況や医療提供体制の確保状況を踏まえながら、段階的に社会経済の活動レベルを引き上げることとしておりまして、経済社会活動の前提として、早期発見、早期対応のための相談、検査体制や医療提供体制の確保が不可欠と考えています。
 このため県では、サーベイランス体制の整備及び的確な情報提供、共有により、感染状況等を継続的に把握するとともに、感染が拡大する場合に備え、感染者の重症度に応じて、適切に医療を提供できる医療提供体制の確保に向けて、さまざまな取り組みを進めているところです。
 また、二次医療圏ごとに地域外来・検査センターを設置するなど検査機能の拡充や、保健所の体制強化、さらには、いわて感染制御支援チーム─ICATの派遣等によるクラスター対策等に取り組んでおります。こうした取り組みを通じ、国内の第2波に対応し、感染拡大防止と社会生活の両立を図ってまいります。
〇11番(千葉絢子君) では次に、これから目指す岩手の姿について伺います。
 新型コロナウイルス感染症の感染者が岩手県で未確認なのは、一方で、岩手県にとって大きなチャンスを迎えています。例えば、感染者が発生した電通などの大企業を皮切りにテレワークが実施されたほか、これを機に、今後も出社を前提とせず、一定数の従業員を基本的にテレワークに切りかえる企業の動きなども出てきていて、地方移住の相談も4月以降1割程度ふえているという報道がありました。
 まずは、この岩手県の感染者未確認という奇跡が移住、定住のマインドにどのような影響を与えていると県では捉えているか、その期待値を伺います。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君) 移住、定住マインドについてでありますけれども、内閣府が令和2年6月21日に発表した、新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査結果によりますと、東京23区に居住する20代の方の35.4%が、地方移住への関心が高くなった、やや高くなったと回答するなど、地方移住への関心がこれまで以上に高まっていると認識しています。
 さらに、岩手県はいまだ感染者が確認されていないことが連日マスコミに取り上げられるなど、本県が安全に安心して暮らし働ける環境にあることが、国民に浸透してきていると捉えておりまして、大きなチャンスを迎えていると認識しています。
〇11番(千葉絢子君) 20代を中心に関心が高くなっているということをお伺いいたしました。実際、それをどのように移住、定住に結びつけていくかというのが大事ですけれども、5月31日に行われたLOCONECT主催のオンライン全国移住フェアには、全国38道府県、138の自治体や民間団体が参加し、相談者は173人が訪れたということですが、このオンライン移住フェアでは、岩手県にはどの程度の興味、関心が寄せられたのでしょうか。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君) オンライン全国移住フェアにおける岩手県への関心度についてでありますけれども、LOCONECT主催の同フェアには、38道府県から138の自治体、民間団体が参加し、そのうち東北からは12団体、本県からは山田町と陸前高田市の特定非営利活動法人高田暮舎が参加したところであります。相談会全体の移住希望参加者173名のうち、本県への相談は山田町の1名であり、東北では参加12団体で、本県も含め8名の相談にとどまったと聞いています。
 県といたしましては、このようなオンラインフェアに、多くの市町村や移住に取り組む団体が参加し、本県の魅力を十分に発信できるよう、市町村等と連携して取り組んでまいります。
〇11番(千葉絢子君) 関心が高まっているというデータが出ていながら、移住に関する相談は山田町のお一人、そして、東北全体でも8人ということで、実際の行動に結びついていないなと。それは単に情報がなかなかうまくアピールできていないのかなと感じているわけですけれども、先日、盛岡広域振興局との地域懇談会で伺った際には、その移住フェアが開かれたことも御存じなかったようにちょっと感じたので、あえて伺ったわけですが、岩手のアピールポイントについては、きのうも質疑があったので、ここは割愛いたします。
 ただ、私は常日ごろから、知事や県当局がおっしゃる岩手の魅力は、美しく豊かな自然とおいしい食べ物、また、歴史と文化と言いながらも、ほかの県と何が違っているのか、その差別化においてうまくブランディングできていないのではないかなと感じております。
 移住の際にネックになるのは、初期費用が多いか少ないか、また、生活していく上での維持費、それに見合う所得を手にできるか。また、子育て世帯を呼び込むためには、子供の学力レベルや教育環境も大事になってまいります。さらには交通アクセスの問題も重要です。例えば、花巻空港もしばらく運休、欠航が続いて、国内への移動にも支障を来しておりました。岩手県が移住先として選ばれるために整備しなければならない条件について、県はどのように考え、取り組んでいくのでしょうか。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君) ただいま議員から御指摘のありましたような所得の問題、子育て、教育の問題、交通アクセスなど、さまざまな課題につきましては、県民の生活の質の向上の根幹に関することでありますことから、いわて県民計画(2019~2028)のもと、県政全般の課題として取り組んでいるところでございます。
 その上で、本県にとって、本県の魅力をアピールし、移住の促進を図る絶好のチャンスであることは先ほど申し上げたとおりでありますけれども、そのためには情報発信と受け入れ態勢の強化が必要であると認識しております。
 情報発信につきましては、今後、首都圏やオンラインでの開催を予定しています移住相談会や移住体験ツアーにおきまして、先輩移住者等に協力していただきながら、岩手の仕事の状況や岩手の豊かな生活環境、そして、岩手が安心して安全に暮らせる環境にあることを実体験を踏まえながら紹介していただくことが、岩手県の特徴を際立たせていくことになると思いますので、そういった情報発信に努めていきたいと考えております。
〇11番(千葉絢子君) まさに今、地方創生の本当の意味は何か、国民がようやく目を覚まし、目を向け始めた貴重な機会であると私は思っております。このマインドをぜひ逃すことなく、この感染未確認の地域であるという利点も生かしながら、さらに大きな移住、定住の呼び込みにつながる取り組みに期待をしているところであります。
 現在、岩手県と海外とを結ぶ直行便はわずかに二つの路線でありまして、ILCの誘致に関するCERN訪問の際にも、現地の研究者から交通の不便さを指摘する声がありました。ILCに関しては、CERN理事会が開催され、欧州素粒子物理戦略の更新について、日本におけるILCのタイムリーな実現は、この戦略に適合するものであり、その場合、欧州の素粒子物理学コミュニティーは協働することを望むとの評価があったという知らせがもたらされました。
 これを受け、KEK─高エネルギー加速器研究機構から、8月に国際推進チームを発足し、準備研究所の設置に向けて大学や研究所との交渉を行い、関係国の合意が得られれば5年後にもILCの研究所組織立ち上げと建設に着手するという現在の想定スケジュールが発表されたところであります。
 感染未確認地域として国内外から岩手県への移住や定住、大企業の本社移転へ向けた可能性とアピールなど、このチャンスをどう生かしていくのか、今、岩手県が考えている新たな戦略があれば示していただきたいですし、ILCの実現に向けて具体的なスケジュールが示されたことも踏まえ、今後、どのように具現化していくのかについて、ふるさと振興の観点からお伺いいたします。
〇政策企画部長(八重樫幸治君) ふるさと振興の観点での新たな戦略についてでありますが、首都圏を中心とした感染拡大により、東京一極集中の是正や地方の暮らしやすさが広く認識される契機となっていることに加え、テレワークを初めとする多様な働き方の加速化など、本県が目指すふるさと振興につながる新たな動きもあらわれてきています。
 また、岩手のよさや岩手が安全に安心して暮らし働ける環境にあることが、国内のみならず海外からも注目されている現状を踏まえ、オンラインを活用した移住相談会や多様な働き方を実践する県内企業の紹介など、第2期岩手県ふるさと振興総合戦略に掲げるふるさと移住・定住促進や関係人口創出、拡大の取り組みを積極的に推進するとともに、大企業の本社移転を通じた分散型国土やILC計画の具体化による国際研究、交流拠点の形成なども見据え、国への働きかけも行いながら、戦略に掲げる取り組みや受け入れ環境の整備について、臨機に見直しを行い、さらに加速して、ふるさと振興を進めてまいります。
〇11番(千葉絢子君) 地方創生のふるさと振興は、1期目に関しては、かえって都市部への一極集中をもたらしてしまった、これは失敗ではないかという指摘もされているわけですけれども、岩手県は安心して働ける、それから、所得が手に入る、この満足度をしっかり高めていくといった県外の方へのアピールにつながっていくような施策の充実を望むわけですけれども、次に、いわて県民計画について伺います。
 いわて県民計画(2019~2028)におきましては、計画策定の理念として、物質的な豊かさに加え、経済的な尺度でははかることができない心の豊かさや、地域や人のつながりなども大切にし、一人ひとりの幸福度を高める社会づくりを進めていく必要があると書かれています。
 計画実施から1年もたたないうちに、世界的に聖書の黙示録を思わせるような新型コロナウイルス感染症により世界中の価値観が変わろうとしています。知事のおっしゃる経済的な豊かさによらない幸福は、今こそ、その真価が問われるべきです。経済的な裏づけがなくなった人たちに対し、知事は今どんな形で幸福を語られますか。
〇知事(達増拓也君) いわて県民計画では、仕事・収入の政策分野において、いわて幸福関連指標として県民所得や完全失業率など物質的な豊かさを代表する指標を掲げております。その上で、経済的な尺度でははかることのできない心の豊かさや地域や人のつながりなど、ほかの分野のさまざまな要素を含めて総合的に評価しようということであります。
 今般の新型コロナウイルス感染症によって岩手県の経済は大きな影響を受けておりますので、構造的に大きく収入が減少する事業者に対する支援を行うなど、岩手県の経済を早期に回復させ、収入や働く場を確保することが極めて重要であります。
 このため、これまで3次にわたる補正予算を編成し、県民の命と健康を守ることを最優先にしつつ、社会経済への負の影響を抑えるための経済、雇用対策にも力を入れているわけでありまして、そのような施策を通じ、いわて幸福関連指標の向上を図り、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわての実現に向けた取り組みを進めてまいります。
〇11番(千葉絢子君) 幸福というのは、やはり一定の生活を営むことができてこそ考えられるものだと私は思います。ギリシャで哲学が生まれたときも、裕福な人がその生について考え、死について考え、人間のあるべき姿を問い続けて生まれたのが哲学だと私は思っております。
 知事、我々政治家、公務員は、一定の任期とその期間は報酬、給与に裏づけされた余裕があるから、幸福について考え、論ずることができるのだと私は思います。今、経営の危機にさらされている事業者、生活の糧を失ってしまった非正規労働者、就職活動や資格取得に支障を来している県民は、今、果たして幸福について考える余裕があるでしょうか。
 着る物、食べる物、住むところが保障された余裕の上でしか本当のところ人は幸福について考えられないのではないかと思いますが、知事は、価値観が変わっているこの現在も、今後も、予定どおりいわて県民計画を遂行していくことが可能だと思われているのかお尋ねします。
〇知事(達増拓也君) マッチ売りの少女の話は、主人公のマッチ売りの少女が、もう飢えて、寒くて亡くなってしまうわけですけれども、そういう状況の中で、最後にマッチをするたびに幸福のビジョンが、幸福の形がそこに描かれます。
 19世紀イギリスのディケンズが、産業革命が進んでどんどん産業化が進むイギリスにおいて貧富の格差が拡大する中、貧しい人たちに着目した小説をたくさん書きましたけれども、そういう時代の中での幸福の形を、より普遍的な多くの人に通用する形で描くのに成功しているのは、むしろ恵まれない環境にいる人たちであり、クリスマス・キャロルのスクルージのように、お金があって裕福な人のほうが、かえってお金もうけだけが幸福だというゆがんだ幸福感を持っていて、それもクリスマス・キャロルでただされるわけですけれども、そういうところがあると思います。
 今、コロナ禍の中で、経済的、社会的に困窮している方々が、その中で、本当は自分はこういうことがやりたいのだ、こういう仕事がしたい、こういう学びがしたい、こういう生活がしたいという、そこにこそ我々が実現すべき幸福の姿があり、そこにしっかり取り組んでいくことが、いわて県民計画の基本目標を達成することにもつながると考えます。
〇11番(千葉絢子君) 一見関連があるように見えて全く関係のない話をする、それを詭弁と言います。我々はマッチ売りの少女にはなれません。
 5月末時点での財政調整基金の残高は90億円に減少いたしました。さらに、中期財政見通しによると、今年度から80億円前後の収支ギャップに陥るということでしたが、県では毎年100億円程度を一般財源に繰り入れて予算編成をしていることに加え、ここへ来て、新型コロナウイルス感染症対策での基金からの繰り入れがふえていること、5億8、000万円ときのう答弁がありました。
 また、これは全国的にも同様であることを考えますと、現在の残高90億円は1年分の繰入額にも満たず、大変心もとなく感じております。このような現状をどのように考え、また、財源の確保に向けてどんなことに取り組んでいくのか。さらには、中期財政見通しの見直しも必要だと思いますが、この点について総務部長にお伺いします。
〇総務部長(白水伸英君) まず、現在の財政状況についてでございますが、社会保障関係費の自然増に加え、公債費が依然高い状況にあるほか、新型コロナウイルス感染症の対応も相まって、議員御指摘のとおり、財政調整基金の残高が100億円を下回るなど厳しい現状にあると認識をしております。
 構造的に依存財源の割合が高い本県といたしましては、まずは国に対し、国庫財源の拡充や地方一般財源総額の確保を求めていくほか、産業振興及び雇用の創出による税源涵養、未利用資産の売却など、あらゆる手段による財源確保に引き続き取り組んでまいります。
 また、中期財政見通しについてでございますが、現時点で新型コロナウイルス感染症の本県財政への影響を詳細に見込むことは困難な状況にはございますが、県税収の動向や地方財政に関する国の検討状況等を見据えつつ、適切に見直しを行ってまいります。
〇11番(千葉絢子君) 岩手県財政が非常に厳しい状況だということは、これはもう県民にお示しをしていかなくてはいけません。その中で、どのような行政サービスを取捨選択していくか、これは上から押しつける施策ではなくて、住民の議論にしっかりと落とし込んで、住民が一番満足するサービスを模索していく自治体戦略2040構想の形を我が岩手県も模索をしていくべきだと私は思っております。あと20年で2040年が参ります。そのときに自治体の戦略、考えに対して県民が意見をしっかり言えるような状況にしていくかどうか、それは我々のハンドリングにかかっていると思っております。
 現在、リーマンショックと同様あるいはそれよりも深刻だと言われている状況の中で、有効求人倍率は1.01倍に低下をしています。県内の雇用情勢の変化や交流人口拡大路線の実人員重視からの転換、予想よりも進んでいる少子化など、県民計画の政策推進の基本方向や指標も含めて見直しがだんだんに必要になってくるのではないかと思いますが、この点について、知事はどのようにお考えでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 岩手県の新型コロナウイルス感染症対策は、県民計画と軌を一にするものであり、基本方向や進む方向は、その意義や必要性をますます強めていると考えておりますが、一方で、計画に沿った事業の中には、延期や縮小、中止となる見込みのものも含まれておりまして、一部の指標については、見直しが必要となる可能性もあります。
 こうしたところ、今後の社会経済情勢の回復状況などを見きわめながら検討を進めてまいります。
〇11番(千葉絢子君) このように急激に社会情勢や財政状況が変わっていく中で、現行の計画を実行するためには、先ほど質問した収支ギャップをこれからどう埋めていくか、毎年15億円から25億円ふえていく社会保障費をどのように埋めていくか、そこもしっかり考えていかなければいけないと思います。
 また、財源対策基金残高の2022年度以降の見通しも立っていないまま、今後も計画を予定どおり実行していくとしたら、これは以前の総合計画の策定に関する質疑でも指摘をいたしましたとおり、後の世代から無責任だとのそしりを受けないでしょうか。私は計画の実行性を担保する財政的な根拠の部分で確信が持てませんが、この点は知事としてどのように考えていらっしゃいますか。
〇知事(達増拓也君) いわて県民計画を着実に実行していくためには、安定的な財源の確保が重要であります。今、中期財政見通しにおいて見込まれている収支ギャップについても、歳入歳出両面の取り組みによって毎年度縮減を図っていきたいと考えております。
 具体的には、企業誘致や中小企業の育成、強化などによる産業振興や人口減少対策など、あらゆる施策を通じた税源の涵養、事業効果や効率性等を踏まえた事務事業の精査、公共施設等総合管理計画に基づく県有施設の適正な管理や未利用資産の売却など、あらゆる手段による財源確保に引き続き取り組んでまいります。
 また、地方が自由な発想で長期的な取り組みを進める上では、地方交付税の増額を初め地方財政の充実が極めて重要であります。これに関し、国に対して、地方一般財源総額の確保、地方税財源の充実などを求め、いわて県民計画に盛り込んだ施策の着実な推進を支える、持続可能で安定的な財政運営を行ってまいります。
〇11番(千葉絢子君) 世界の価値観や我々の感じてきた生活の中での当たり前が、今これだけ大きな変貌を遂げている中にあって、いわて県民計画は以前の価値観のままというのは、私はいささか無理があるように感じております。
 論語の中にある有名な一節に、吾が道は一を以って之を貫く、夫子の道は忠恕のみという言葉がありまして、孔子の教えの中で最も大切だと言われています。忠恕とは誠実さであります。つまり、自分の良心に基づいた真心と思いやりのことです。
 ここにいる議員や職員の皆さんにとって、前言を撤回すること、また、自分の行いに疑問を持つことは非常に勇気の要ることだと私は思います。時には、これまでの政策が本当に県民の幸福につながっているか疑問を持ち、見直し、寄り添うために、思い切った軌道修正を行う必要があり、そのことに気づいていながら議論を避け、新たな策を施さず、大過なく務めを終えるのが今の私たちがとるべき道でしょうか。それは王道なのでしょうか。知事のお考えをお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 具体的にいわて県民計画のどの価値観をどう変えたほうがいいかという御指摘があれば、それに対する答弁をするところでありますが、私たちとしては、今のいわて県民計画に盛り込まれた価値観、広々とした県土で、豊かな自然の中で長い歴史の中で培われてきた文化や、また、県民性を大事にしながら、その上で進取の気性も発揮して、先端技術、情報通信技術を地方自治や地域振興に活用し、また、そういう方向性で発展しようとする誘致企業や地元の企業とも連携をしながら、岩手県で働きたい、岩手県で生活したい、岩手県で学びたい、そういう人たちについては、これはふやしていく努力をしていくと。そういう基本的な方向性については、今回の新型コロナウイルス感染症の問題の中で、今岩手が置かれた状況をよく見詰め、また、さまざまな困難の中で人間にとって何が大事なのか、社会にとって何が大事なのかと考えたときに、やはり昔からの岩手らしさ、そして、今それを守ろう、発展させようとしている方向性、これはさらに力を入れていくべきだということが見えてくるのではないかと思っております。
 今後、生活や仕事や学びのそれぞれの場で感染対策をきちんとやって感染者を出さない、広げないという、これは並大抵のことではないのですけれども、そういう苦労を重ねる中で、今申し上げてきたような岩手のよさを県民で共有し、県外にも発信しながら、地域振興、観光振興、経済振興といった実のある、いわゆるお金を稼げるようなことにもより役立てていければと思います。
〇11番(千葉絢子君) ただいま、前段で何の価値観を改めるべきか具体的な指摘があればとおっしゃいましたが、私、これまでの5年間の議論でたくさん提言をしてきたと思っております。自分のプライドや吐いてしまった言葉を守るために開き直るのは、我々の立場においては民に対する不忠であり、これからの県民や国民に対して最も罪深いことであると私は自責も込めて申し上げたいと思います。
 職員の皆さんが毎朝出勤してPCを立ち上げたときに目にするものに、岩手県職員憲章がありますね。私たちの五つの信条です。その二つ目には、創意工夫を凝らし、柔軟な発想で、新たな課題に果敢に挑戦しますとあります。新たな課題が何かというのは、私たちが指摘をするまでもなく、県民と接している、その行政サービスを提供する皆さんであれば敏感に感じていていただきたいと私は思っております。
 我々は総合計画の遂行に当たり、10年先を見るだけでいいのではありません。10年後に、我々の、そして、知事の後輩がどのような岩手に幸せを見出し、どんな10年後をさらに見出すことができるか、楽しみでわくわくするような未来を私たちが想像し、その目に浮かぶ情景を実現するために今どうしたらいいか、それが岩手県職員憲章の信条の向こうにある目指す姿であると私は思っております。
 どうか、職員の皆さんには失敗を恐れず挑戦をしていただきたい。その上で、議論できる土壌をともにつくっていきたいと思っております。前例のない未曾有の時代を生きていく私たちに求められているのは、新たなる先例をつくろうという挑戦への気概と、それを応援する風土の醸成であると申し上げまして、この質問を終わります。
 次に、岩手の教育について伺います。
 2月27日に総理大臣が緊急に記者会見を開き、週明けの3月2日より全国一律の学校休業措置を要請いたしました。県内でも4日前後から一斉休業が行われ、春季休業にそのまま入っていきましたが、現場は御存じのとおり大混乱でございました。
 この3月の休業において、学校現場で浮き彫りになった問題点にはどういうものがありましたでしょうか。
〇教育長(佐藤博君) 3月の一斉臨時休業におきましては、限られた準備期間の中で、感染症対策と学校行事の両立や家庭学習等、子供たちの自律的な学びを促す方策、児童生徒とつながるための手段の確保等の課題が明らかになったところです。
 そのような中、各学校におきましては、卒業式の規模を縮小しての実施や家庭学習への課題の準備など、現実に即しながら柔軟に対応し、諸行事の面でも学習面でもできる限りの対策を講じてきたと承知しています。
 なお、学習面については、現時点において著しいおくれは生じていないものと認識しているところです。
 県教育委員会としては、いわての復興教育が、各学校の教育活動の基盤として根づいているものと受けとめており、今般の臨時休業という非常事態においても、この状況に対応する力として生かされているものと捉えています。
〇11番(千葉絢子君) 感染未確認地域にもかかわらず休業要請に対応したことで、県教育委員会には学校や保護者などからのさまざまな問い合わせや意見も多かったと思っております。また、賛否両論あったと思いますが、その具体的な内容と、それでも休業措置に踏み切った裏にはどんな葛藤があったのでしょうか。
〇教育長(佐藤博君) 3月の臨時休業に対して寄せられた意見の中には、児童生徒の命を守り、健康、安全を第一に考え取り組んでほしいという意見がございました。また、児童生徒の学習を保障してほしいという意見等もあったところです。
 県教育委員会としては当時、新型コロナウイルス感染症に関する科学的な知見が限られた中で、児童生徒の健康、安全を最優先として臨時休業を措置したところでありますが、日々変化する状況の中で可能な限り弾力的に柔軟に対応しながら、児童生徒の学習を保障し、また居場所を確保するため、各学校や市町村教育委員会等と連携して取り組んできたところです。
〇11番(千葉絢子君) さまざまな葛藤があったと私は理解をしております。
 今回の長期休業において、首都圏などでは、私立学校に通う子供と公立学校に通う子供の教育の格差が広がったという指摘があります。幸い岩手県においては、ただいま教育長からの御答弁にもありましたように、授業進度に影響が余りない程度の休業措置となりまして、それでも、今年度受験を予定している子供たちにとっては、塾に通っている子とそうでない子の情報に格差があること、高校3年生にとっては大学のオープンキャンパスが、中学3年生にとっては高校のオープンスクールも、主に進学校で中止になっているなど、受験生にとってはそもそも情報が入ってこないという不安感が聞かれているところです。特に高校入試に関しては、昨年、出題傾向に変化が見られ、平均点が上がったという関係で、かえって進学の希望がかなえられなかったという声も聞かれているところです。
 中学3年生を例に挙げますと、今年度初めて行われる全体的な学力テスト、いわゆる白ゆりテストですが、これは7月5日が皮切りで、例年よりもスケジュールがおくれていることが不安要素となっています。
 また、今年度実施される英語検定などの資格試験や高校入試なども、例年どおり集団での受験になるのかどうかという心配もあるようです。
 こうした中、受験生に対してどのような配慮が必要だと考えていますか。
〇教育長(佐藤博君) 県立高校入試における受検者への配慮についてでございますが、文部科学省から高校入試の試験会場等の感染症対策、追検査等による受検機会の確保、試験の実施が困難な場合の対応等について留意するよう通知があったところです。
 県教育委員会としては、感染等によって受検できなくなった場合の追検査等の通知に沿った対応について現在検討を進めているところでございます。対応が決定した際には、速やかに、市町村教育委員会を通じて中学校や受検生への周知に努め、安心して受検に臨める環境を整えていきたいと考えています。
〇11番(千葉絢子君) 全国一斉の休業要請では、大人の命を守るために子供が犠牲になったとの見方もあります。自粛要請期間は、子供たちが外で遊んでいるだけで学校や市町村に苦情が行きました。子供は、いつになったら友達に会えるのか、学校の授業はいつ始まるのか、不自由な生活を強いられている一方で、大人たちは遊興施設に行ったり、海外旅行に行って感染症を発症したり、ある程度自由に回っているような社会を目の当たりにして違和感があったということです。
 ほかにも、自粛警察や平日昼間の買い占め騒動、医療従事者や子供への差別などのニュースを見て、大人に対する不満が大いに高まっていたのに対し、大人たちは、大人の命や経済活動を重視する余り子供を犠牲にしてしまったことに余りにも鈍感であったと、私も子供たちとの会話で大層反省をさせられました。
 子供たちは新型コロナウイルス感染症関連のニュースもかなり批判的に見るようになっています。休業でどんなことが問題になったか、ぜひ子供たちにも聞き取りをしていただきたい。今回の休業を強いられた子供たちも、やがて社会に出て、国や自治体職員あるいは政治家となる時期が必ず来ます。大人になって、彼らが再びこのような状況に直面したときに、どんな選択と決定をするだろうか。大人の事情だけではなく、子供たちの実感から次の最適解について検討しておく必要があると思います。
 我々大人が今から耳を傾けて検証し、未来の子供たちのための土壌を整備することが必要であると考えていますが、教育長に所感を伺います。
〇教育長(佐藤博君) 3月の臨時休業については、児童生徒の健康、安全を守ることを最優先とし措置したところでありまして、この考え方については現在も変わることはございません。あわせて、学びの保障、それから学校における教育活動を確保していく必要がございます。
 現時点では、これまでのさまざまな科学的な知見、児童生徒に感染が確認された場合の学校の対応事例等の蓄積、あるいは文部科学省のガイドラインの改訂を踏まえまして、県教育委員会としても、6月22日付で臨時休業措置の基本的な考え方等についてを改訂しまして、児童生徒等に感染者が確認された場合には、学校の全部または一部を休業することを基本としたところです。
 こうした考えを児童生徒の理解、保護者の理解と協力をいただくとともに、学校現場では学級担任や養護教諭等が中心となって、日ごろの教育相談に加え、三者面談などのさまざまな機会を活用して、休業期間の影響等についても丁寧に聞き取りを行い、県教育委員会としても、学校現場の状況を把握しながら、未来の子供たちのために適切に支援していきたいと考えております。
〇11番(千葉絢子君) 休業明け、首都圏では中高生の自殺のニュースが1日に5件、6件続いたことがありました。 これは9月1日の夏休み明けに自殺がふえるのと一緒で、学校に戻るということ、それから、学校に行きづらくなってしまっている子供に対して、今回の休業措置、もしかすると追い打ちをかけるような状況ではなかったかなと思っております。
 私は、施策という言葉は、大人が考えて子供に通達をするだけではなく、実際、子供は上から来たものに関しては従うしかないのです。学校は、先生と生徒との何ともならない上下関係がありますので、そこに異を唱えることは子供には無理なのです。なので、学校現場だけではなく、保護者からでも結構ですので、今回の休業措置は一体何が問題で、子供のためにはどういう選択をすべきだったか、教育者なり教育行政にかかわる皆さんが検証をするということが、次の感染症対策につながっていく一歩だと思いますので、ぜひ御検討をお願いしたいと思います。
 子供たちはよく我慢したと思っております。この地域や国の未来をしょって立つ子供たちのためにも、できることを一緒に考えていただきたいと思っております。教育長には、また後ほどお伺いをいたします。
 次に、本県の主要産業である農林水産業についてお尋ねいたします。
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、外出自粛や学校の長期休業措置などにより、飲食店や学校給食で使われる食材の需要が縮小し、また、店舗での食材販売の低迷など、県産農林水産物の消費や販路に大きな影響を与えていると思いますが、被害額、影響額はどれぐらいだったのでしょうか。
〇農林水産部長(佐藤隆浩君) 新型コロナウイルス感染症による県産農林水産物への影響についてでございますが、外食需要の減少等によりまして、牛肉、ホタテガイ、ウニなど県産農林水産物の販売単価が低下しているところでございます。
 具体的には、牛肉はやや回復基調にございますものの、東京食肉市場におけます5月の枝肉価格は、前年同月比でA5が19%、A4が23%それぞれ減となっております。また、水産物は、県漁連によりますと、ホタテガイの5月の販売単価が前年同月比で35%減であるほか、ウニの販売単価は前年同月比で3月が20%、4月が50%減となっており、4月下旬からは漁獲回数等を制限して出荷調整が行われたところでございます。
 県産農林水産物への影響額でございますが、多様な販売経路があり、流通形態とか出荷先がさまざまであることなどから、全体的な影響額を把握することは難しい状況でございます。
〇11番(千葉絢子君) 多分我々が把握しているよりもさらに多くの打撃が襲っているのではないかと私は推察をするところでありますが、災害の際は被害額などすぐに算定されております。今回の感染症による流通のストップは十分災害レベルだと思っておりますので、丁寧に聞き取りをして、本当に必要な支援策は何か模索をしていっていただきたいと思います。
 その中で、支援しやすい一律の補助金を出す取り組みや在庫を滞留させないために無償で買い上げて提供するなどの取り組みもありますけれども、本当は消費者の間に流通させて経済活動の正常化に寄与しながら、国内での生産地としての知名度アップのチャンスとしても生かす取り組みが必要であると思います。しかし、生産者が個々で動いても、小口取引の場合では送料の負担が問題だという声が私のところにも随分寄せられております。
 こうした中、農林水産省では、今年度、農林水産物の販売促進緊急対策事業として1、400億円の予算をとって、対象7品目のインターネット販売に係る送料を補助していますが、県内からは、小形牧場牛のすき焼きセットというわずか1社の製品のみが対象になっていると。つまり、1、400億円の送料支援事業がありながら、県内の生産者はほとんど買い手とつながっていないという残念な状況であるということが手持ちの資料にはあります。非常に残念です。
 では一方で、岩手県では新型コロナウイルス感染症関連で取引量が落ちた1次産業従事者や飲食店向けに食材を販売している事業者について、在庫を滞留させないための取り組みとして、現在どんな支援をしているのでしょうか。
〇農林水産部長(佐藤隆浩君) 在庫を滞留させない取り組みでございますけれども、県では、在庫の滞留が生じ、特に対策が必要な牛肉の需要回復を図るため、買うなら岩手のもの運動の一環といたしまして、農業団体と連携し、緊急的に5月から、県内の量販店や小売店等の114店舗におきまして、いわて牛を食べて応援フェアを開催し、販売促進に取り組んでおります。
 また、県内小中学校等の学校給食に県産牛肉を無償提供することとし、本日から盛岡市立北厨川小学校を皮切りに、いわて牛を使用した給食提供が始まっているところでございます。
 このほか、飲食店や宿泊事業者等に牛肉を販売する事業者や製パン事業者等との協働により、いわて牛を使用したコッペパンが7月4日から販売される予定であり、こうした民間企業等との連携も強化しながら、県産農林水産物の在庫、滞留が生じないよう、より一層の消費拡大に取り組んでまいります。
〇11番(千葉絢子君) 先日、県内2カ所でインターネットで農林水産物を販売しませんかといった1次産業従事者の方に対する説明会を開いたと思っておりますが、これは既存のサイトへの掲載を勧めるような説明会であったと思っています。この飲食店向けに販売されていた食材のサイトは、現状では、各事業者や個人がそれぞれ発信をしているのですけれども、いろいろなサイトがありまして、消費者もどれを選んだらいいのかわからないという声が聞こえてきております。
 これは岩手県でポータルサイトをつくることによって、このサイトを利用する消費者の安心度を高めてはどうかと思っています。観光支援で、例えば宿泊割引が適用されるように、県で新しくつくるそういった事業者とか生産者のものをまとめて販売するサイトを使って購入すると、その購入したときに割引が適用されるとか、業者の送料分を県が補助して無料にするという、農林水産省でやっている事業のもっと小規模なものでいいと思うので、きちんと一般の消費者と生産者が結びつくようなサイトを県がお墨つきを与えて運営するというようなことも提案したいと思うのですが、こういう取り組みを行ってみるのはどうなのでしょうか。
〇農林水産部長(佐藤隆浩君) インターネットの活用は、生産者が全国の消費者にダイレクトに商品をPRし、販売できますほか、消費者は自宅にいながらいつでも買い物ができるなど、双方にとって非常にメリットが大きいものと認識をしております。
 この5月には、民間事業者との協働によりまして、買うなら岩手のもの総合サイトを開設しており、こちらで消費者に対する県産品や生産者の情報等を提供しておりまして、このサイトの周知を図るとともに、内容の充実に取り組んでいくこととしております。
 また、議員から御紹介ございましたが、既存の通販サイトにつきましては、多くの消費者の利用が期待されますことから、生産者のノウハウ習得とサイトへの出品を支援するため、先月、大手通販サイト運営会社2社の協力を得まして、県内2会場でオンラインの説明会を開催したところ、県内から約50名の参加がございまして、参加者からは出品に意欲的な発言が相次いだところでございます。
 今後、県では、商品価格を30%割り引くオンラインや紙面による物産展等を実施することとしておりまして、こうした取り組みとあわせ、農林漁業者等を対象といたします国の経営継続補助金を活用したインターネット販売の取り組みを生産者に働きかけるなど、引き続き必要な支援を行ってまいりたいと思います。
〇11番(千葉絢子君) 次に、新型コロナウイルス感染症による学校の長期休業や非正規雇用など、不安定な労働者の家庭などから、食料支援を求める要請が子ども食堂や支援団体に寄せられていて、件数も例年に比べてふえております。
 特に母子家庭などひとり親世帯からの要請は深刻でして、困窮している家庭では、子供たちの栄養源は毎日の給食という子供も現実に存在しています。支援団体の一つ、フードバンク岩手によりますと、特に夏休みと冬休みの長期休業中の支援要請は平年でもほかの月の5倍にははね上がり、7月の食料支援提供量は5、000キログラムに上るということです。
 ことし3月に行われた学校の休業期間以降は、去年の同じ時期の2.5倍もの支援要請が寄せられているほか、間もなくやってくる夏休みに向けて、寄せられている食料が足りなくなるおそれがあることが報道されています。
 教育委員会では、こうした支援の必要な子供がいることについてどの程度把握しているのか、また、福祉による支援につなげる必要性についてどのように考えているでしょうか。
〇教育長(佐藤博君) 子供の安心・安全な生活を支援するためには、子供の置かれている環境の多様化と相まって、福祉を初め他の専門機関との連携が重要であると捉えております。また、学校では、児童生徒のサポートが重要であり、気になる児童生徒をいち早く捉え、早い段階で支援につなげることが重要であります。
 県及び各市町村では、福祉部局が主管となり、要保護児童対策地域協議会を設置しているところです。学校及び教育委員会もこの協議会の一員として、子供の養育に困難を抱えている家庭について情報共有を行っており、必要に応じて、福祉部局、医療機関等とのケース検討会議を持ち、支援方針を確認し、共同で個別の支援に当たっているところです。
 また、学校においては、民生委員等の協力を得ながら、家庭における子供の実態を把握するとともに、必要に応じてスクールソーシャルワーカーと連携して福祉につなぐ支援を検討するなど、子供の抱えている問題の改善に向けて取り組んでいるところです。
 今後も、学校と関係機関の緊密な連携が図られ、子供が抱える問題の解決に当たることができるよう支援してまいります。
〇11番(千葉絢子君) 県内の自治体の中には今年度、学校現場の不安を福祉による支援につなげようと、教育と福祉の連携に取り組み始めた自治体が複数あります。
 一方で、この取り組みは困窮家庭を支援する熱意のある関係者の理解と善意に頼った行動であり、子供たちに手を差し伸べる活動でありながら、学校では、教育委員会からの指針がないと取り組みにくいという回答で、協力を受けられない場合があるとの声が寄せられています。
 今後、根本的な子供の貧困の解決に向けた教育と福祉の連携、また、貧困を生まない労働環境の改善などを考えるワーキングチームによる連携支援の仕組みづくりが求められていると思いますが、このことについて教育長の見解を伺います。
〇教育長(佐藤博君) 教育と福祉の連携についてでありますが、今般、策定を進めている岩手県子どもの幸せ応援計画においても、重点施策として、子どもの就学に関する支援や子どもの学校生活等に関する支援等を盛り込むこととしており、今後も、関係部局と連携を図りながら、取り組んでいきたいと考えております。
〇11番(千葉絢子君) では、この連携支援の仕組みづくりについて、保健福祉部長の見解もあわせてお伺いしたいと思います。
〇保健福祉部長(野原勝君) ただいま、教育長から紹介がありました、子供の貧困対策を推進するための岩手県子どもの幸せ応援計画は、現在、策定を進めておりますけれども、この中で、苦しい状況にある子供たちを早期に把握し、適切な支援につなげるための教育と福祉の連携強化や、保護者に対する職業生活の安定と向上に資するための就労支援などを盛り込むこととしています。
 この計画を推進するため、福祉、教育、労働、女性活躍など関係部局の連携組織として設置をしております子どもの貧困対策連絡調整会議を活用いたしまして、計画の進捗管理や情報共有、総合調整を行いながら、子供の貧困対策に連携して取り組んでいく考えであります。
〇11番(千葉絢子君) 校長先生たちに伺いますと、校長先生お一人一回は校長室で子供たちに食事をとらせたことがあるとお話しになります。ただ、その家庭が福祉的な支援を受けているかというとそうではないケースも結構ありまして、これは保育園、幼稚園の場合は非常に目が行き届くのですが、小中学校になると、家庭の中に入ってしまって、なかなか立ち入ることができず、福祉関係者も教育関係者もなかなか手を差し伸べられないという現状があるのです。
 ぜひ、学校現場での不安を適切に解消して、子供を救うためにどうしていったらいいかということを真剣に考えていただきたいと思っているわけであります。
 次に、出生数の著しい低下と子育て支援策について伺います。
 先日、厚生労働省の人口動態統計において、昨年に生まれた赤ちゃんの数が本県では6、974人と、とうとう7、000人を下回ってしまったことがわかりました。2017年の出生数は8、175人、2018年は7、615人、そして2019年は6、974人、ここ2年で1、000人以上減少しているという非常事態です。出生数の減少の一番大きな理由と出生数の回復に必要な施策についてどのように考えているでしょうか。
〇保健福祉部長(野原勝君) 出生数の減少につきましては、深刻な状況と受けとめております。
 この理由につきましては、現在、分析を進めているところでございますが、国が公表している平成30年までの人口動態統計データによると、本県の出生数は、過去10年間で2、289人、23.1%減少しており、年代別で見ると、20代から30代の出生数が大きく減少し、女性の平均初婚年齢については1歳上昇しているところです。
 また、平成27年国勢調査データによりますと、本県の20代女性の有配偶率は全国上位にあるものの、30歳以上の有配偶出生率は全国下位となっておりまして、これらのデータから有配偶者の出産がふえていないことが要因の一つではないかと考えているところでございます。
 今定例会に提案しておりますいわて子どもプラン(2020~2024)に基づきまして、子供の医療費助成の拡大による現物給付の拡大による経済的支援、仕事と子育てを両立するための働き方改革や女性活躍支援を進めるとともに、結婚、出産、子育て等に関する情報を切れ目なく提供し、社会全体で子供を産み育てやすい環境づくりを推進していく考えであります。
〇11番(千葉絢子君) 秋ごろに市町村別のものも明らかになるそうですけれども、私は、もしかすると、ついに一人も子供が生まれなかった自治体が出てきているのではないかとひそかに危惧をしております。
 岩手県で働く女性の雇用、労働環境の充実は、この女性の生きにくさの改善に直結し、この女性の生きにくさの改善が少子化や人口減少をとどめる重要な一手になると考えております。
 また、福祉現場からは、子供の貧困対策の根本解決には、ひとり親や女性の所得向上を含めた労働施策の充実が必要であるとの声が上がっています。例えば、岩手県内の事業所において管理職の女性の割合は17%程度ですが、この割合を毎年年度ごとに目標化して段階的に引き上げる。あるいは、一般労働者において、男性を100とした場合の女性の給与水準の目標設定を80以上にするなど、焦点を絞ってKPIに取り入れて進めることが必要だと思っています。
 広島県の例で失礼いたします。ひろしま未来チャレンジビジョンでは、少子化対策の成果指標として、いつでも安心して子供を預けて働くことができる環境が整っていると思う人の割合という指標がありますが、この項目に主に取り組んでいるのは商工労働局であり、重視されるのは、子育て支援、女性の活躍、労働施策がかみ合って生まれる実際の県民の満足度につながっているかどうかです。
 また、同じ広島県の男女共同参画基本計画におきましても、職場における女性の活躍推進について、岩手県よりもはるかに高い目標と問題意識が感じられ、指標にもあらわれています。広島県も女性の働く割合は高く、給与水準は男性比75%と、岩手県とよく似ています。
 働く女性の労働施策を充実させ、岩手県での女性の生きにくさを改善できる県民の満足度、実感が伴う指標を採用していくべきと考えておりますが、具体的にどのような指標設定が有効であるとお考えか、商工労働観光部長に伺います。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君) 働く女性の労働環境を充実させる指標についてのお尋ねでありますが、第2期岩手県ふるさと振興総合戦略におきましては、安定的な雇用の促進のため、正規雇用の拡大に向けまして、正社員就職、正社員転換数についての指標を掲げております。この指標は事業所側の採用のあり方のみならず、子育てや介護休暇制度の充実、議員御指摘の給与水準の向上など労働条件を含むものを伴うものでありますことから、議員御指摘の女性の労働環境を充実させることにつながる指標と考えております。
 平成28年度から県と岩手労働局が連携して正社員就職、正社員転換の取り組みを行っておりますが、平成30年度までのハローワークによる正社員就職、正社員転換数は3万5、930人となっておりまして、男性を100とした場合の女性の賃金水準は、平成27年度の75.2から平成30年度には76.6に上昇しておりまして、このことからも女性の賃金水準の向上につながる有効な指標であると考えております。
 この指標を含めまして、現在の指標につきましては、いわて県民計画(2019~2028)第1期アクションプランの指標と整合を図っているところでありますけれども、今後の見直しにつきましては、状況の変化等も踏まえまして、必要に応じて対応してまいりたいと存じます。
〇11番(千葉絢子君) 終わります。(拍手)
〇議長(関根敏伸君) 以上をもって千葉絢子さんの一般質問を終わります。
   
〇議長(関根敏伸君) この際、暫時休憩いたします。
   午後2時32分 休 憩
   
出席議員(48名)
1  番 千 田 美津子 君
2  番 上 原 康 樹 君
3  番 小 林 正 信 君
4  番 千 葉   盛 君
5  番 千 葉 秀 幸 君
6  番 岩 城   元 君
7  番 高橋 こうすけ 君
8  番 米 内 紘 正 君
9  番 武 田   哲 君
10  番 高 橋 穏 至 君
11  番 千 葉 絢 子 君
12  番 山 下 正 勝 君
13  番 高 田 一 郎 君
14  番 田 村 勝 則 君
15  番 佐々木 朋 和 君
16  番 菅野 ひろのり 君
17  番 柳 村   一 君
18  番 佐 藤 ケイ子 君
19  番 岩 渕   誠 君
20  番 名須川   晋 君
21  番 佐々木 宣 和 君
22  番 臼 澤   勉 君
23  番 川 村 伸 浩 君
24  番 ハクセル美穂子 君
25  番 木 村 幸 弘 君
26  番 小 西 和 子 君
27  番 吉 田 敬 子 君
28  番 高 橋 但 馬 君
29  番 小 野   共 君
30  番 軽 石 義 則 君
31  番 郷右近   浩 君
32  番 高 橋 はじめ 君
33  番 神 崎 浩 之 君
34  番 城内 よしひこ 君
35  番 佐々木 茂 光 君
36  番 佐々木   努 君
37  番 斉 藤   信 君
38  番 工 藤 勝 子 君
39  番 中 平   均 君
40  番 工 藤 大 輔 君
41  番 五日市   王 君
42  番 関 根 敏 伸 君
43  番 佐々木 順 一 君
44  番 伊 藤 勢 至 君
45  番 岩 崎 友 一 君
46  番 千 葉   伝 君
47  番 工 藤 勝 博 君
48  番 飯 澤   匡 君
欠席議員(なし)
   
説明のため出席した者
休憩前に同じ
   
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後2時52分 再開
〇議長(関根敏伸君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。菅野ひろのり君。
   〔16番菅野ひろのり君登壇〕(拍手)

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