令和2年6月定例会 第8回岩手県議会定例会会議録

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〇15番(佐々木朋和君) いわて新政会の佐々木朋和です。改選後初の登壇の機会をいただいた先輩、同僚議員に感謝申し上げます。
 通告に従い質問させていただきます。
 日夜、新型コロナウイルス感染症対策へ奔走する達増知事を初め、県庁職員の皆様に心より敬意を表します。誰も経験したことのない危機への対処は完璧にはいきません。私もあらを探して鬼の首をとる気はさらさらありません。しかし、今後の蔓延防止策や経済対策を行うに当たり、検証すべきところは検証し、県民のため、足らざるところへは救いの手を差し伸べなければなりません。厳しい物言いになるかもしれませんが、課題解決のため率直な御答弁をお願いいたします。
   〔副議長退席、議長着席〕
 まず、新型コロナウイルス感染症対策のうち、水際対策について伺います。
 国は、武漢市から中国全土に感染が広がりつつあった中国からの入国規制を、中国国民が大移動する春節1月24日から30日の前に行うべきでありましたが、実際に行ったのは3月9日であり、その結果、1月28日には、武漢市からの観光客を乗せたバス運転手が日本人初の感染者となり、国内での感染拡大が始まりました。
 水際対策に成功したと言われる台湾では、春節が始まる前の1月22日に武漢市の団体旅行客の入国許可を取り消し、2月6日の中国国民の入台禁止に続き、2月7日には、中国に滞在歴のある外国人の入台禁止を行っています。
 また、2月5日から2週間、海上での検疫を実施したダイヤモンドプリンセス号において、健康観察期間を経て下船した乗客が陽性診断される事態となり、これが各県の感染者をふやす要因となりました。さらには、海外からの帰国者を空港で足どめできず、各県への帰省を許してしまった事実もあります。
 本県では、春節が始まる1月24日に、岩手県旅館ホテル生活衛生同業組合などに、旅行客発症の場合の適切な対応について要請するとともに、1月25日から2月8日まで、国による上海定期便機内での健康カード配付による自己申告と適切な受診勧奨を行うなどにより、水際対策に一定の効果がありました。
 ダイヤモンドプリンセス号に本県からの乗客もおらず、その後、海外からの感染者の入国もありませんでした。3月27日には、1都4県への移動自粛の要請や来県者に対する2週間の自粛要請、海外からの帰国者の2週間の自粛要請について知事メッセージを発信しました。さらに、県庁職員も、新規採用者や他県からの転勤者に2週間の自宅待機を徹底しました。
 これまでの取り組みを顧みると、中国の春節や年度末、ゴールデンウイークの人の移動が多い時期に徹底して水際対策を行ったことが、感染者ゼロの大きな要因となったものと考えられます。
 そこで伺いますが、知事は、国の水際対策をどのように評価しますか。また、本県における感染者がいまだゼロである要因をどう分析、評価しているのか伺います。
   〔15番佐々木朋和君質問席に移動〕
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 佐々木朋和議員の御質問にお答え申し上げます。
 感染防止の水際対策等についてでありますが、日本では、武漢方面からの中国人観光客を主とする第1波が2月上旬に始まり、欧米など海外からの帰国者を主とする第2波により3月中旬から流行が拡大したことが、ウイルスの遺伝子解析で明らかになっています。
 こうした状況に加え、院内感染や施設内感染、接待を伴う飲食店でのクラスター発生の影響なども指摘されており、国の専門家会議において避けなければならないとされた爆発的な感染拡大が、なぜ起きてしまったかについて検証すべきと考えております。
 また、岩手県において感染者が未確認である要因については、そもそも日本全体として、欧州や米州と比べると感染者数が著しく少ないという実態がある中で、人口密度が低いこと、県民及び岩手にかかわる全ての人が、密閉、密集、密接の三つの密を避け、マスクの着用や丁寧な手洗いを励行するなど基本的な感染対策を行っていただいたこと、さらに、外出自粛要請等を踏まえ、慎重かつ冷静に行動していただいたこと等が複合的に関連した結果であると認識しております。
〇15番(佐々木朋和君) これから人の移動が多いお盆の時期を迎え、感染防止と経済の両立に向けた行動が求められている現状において、本県が成功してきた今までのような行動規制などの徹底した水際対策は行えません。県民には三密の回避、ソーシャルディスタンス、マスク、手洗いの徹底の行動は伝わっていますが、ウイルスの特性の認知が進んでおらず、取り組みが形骸化する懸念もあります。
 県は、専門委員会と連携したウイルス感染のメカニズムの解明と県民へウイルスの実態を周知することも重要と思いますし、新たな施策の実行も必要と感じます。感染防止と経済の両立を図りながら、県が市中感染防止対策を講じていく肝は何かについて伺います。
〇保健福祉部長(野原勝君) 市中感染防止対策についてでありますが、県の基本的対処方針においては、全般的方針として、地域の感染状況や医療提供体制の確保状況を踏まえながら、段階的に社会経済の活動レベルを引き上げていくこととしております。
 このため、早期発見、早期対応のための相談、検査体制や感染者の重症度に応じて適切に医療を提供できる医療提供体制を確保するとともに、事業者に対し、業種ごとに策定される感染拡大予防ガイドライン等の実践を促し、社会経済全体に新しい生活様式の定着を図ることが肝要と考えています。
 加えて、県民が安心してさまざまな施設や店舗等を利用できる環境づくりを進めるため、県内で感染者が確認された場合に、SNSを活用して注意喚起や検査等のメッセージを配信する取り組みをあす7月1日から開始する予定でございます。こうした取り組みを通じ、感染防止と経済の両立を進めてまいります。
〇15番(佐々木朋和君) ただいま紹介いただきましたSNSの新たな取り組み、プラスして、やはり冒頭述べていただきました検査というものが重要だと思っております。
 そこで、PCR検査、医療体制について伺います。
 これまで県は、国の示す基準に従ってPCR検査を実施してきたと答弁しています。確かに、症状のある陽性患者が県内にいたとすれば隠し切れるものではなく、また、医師、看護師1、000人に行った抗体検査も抗体保有者なしとの結果が出ていますが、一方で、そのPCR検査の数の少なさから、検査能力や医療資源を勘案し、検査対象を絞ったのでないかと一部の県民に不安の声が上がっており、県は、県民に対しもっと説明を尽くすべきであったと思われます。
 そこで、PCR検査の範囲について伺います。県では、4月28日まで岩手県新型コロナウイルス感染症対策専門委員会の合議で検査の必要性を判断してきましたが、他県に例を見ない判断方法です。委員長の櫻井教授は6月16日の毎日新聞の取材に対し、専門委員会での合議制において検査をするかどうか判断することとした理由について、搬送に人員や時間がかかるためと答えていますが、一方で、決して検査を拒んだのではなく、審査したもの全て検査したと答えています。
 そこで伺いますが、合議制により過半数に至らなかったものも結果的に全て検査したのか。また、県はPCR検査の初期段階において、検査能力を勘案し、検査範囲を吟味したことはなかったのか伺います。
〇保健福祉部長(野原勝君) PCR検査についてでございます。
 県では、令和2年2月7日に岩手県新型コロナウイルス感染症対策専門委員会を設置し、医学的に病態像が十分に解明されていない状況下において、その検査を適切に実施するため、症状や行動歴から新型コロナウイルス感染症を疑う患者については、全て専門委員会に対して行政検査の要否を協議し、必要性を精査していただいたところでございます。
 検査体制を見直し、専門委員会への協議を省略することとした4月28日までの協議件数は376件であり、うち過半数が賛成した343件について検査を実施しております。残りの33件については、PCR検査前に他の疾患と診断が確定したことなどにより検査取り下げとなったものであり、委員の過半数が検査不要と判断し、検査に至らなかったといった例はないものであります。
 また、専門委員会における協議は、臨床症状、医療機関における検査所見、行動歴等により適切に判断されていたものと承知しており、県としても、当時の検査能力を理由に検査をしないと判断したものはございません。
〇15番(佐々木朋和君) 検査取り下げ以外は全て検査をしたということでございますね。了解いたしました。
 では、現在のPCR検査体制について伺いたいと思います。
 地域外来・検査センターは、5月18日の一関圏域、宮古圏域を皮切りに設置が進んでおり、きのうの答弁では、全圏域において4月中には設置されるということでありまして、県、市町村、そして医師会の皆様に心から敬意を表します。
 議会を通じて保健福祉部に地域外来・検査センターの設置目的を確認したところ、検査の充実を図る、発熱患者が開業医のところに集まることを防ぐの2点でありました。
 検査等の充実については、各二次医療圏において、帰国者・接触者外来以外で検体を採取できる状況となったことは一歩前進ですが、国が、行政検査の検査基準に医師が必要と判断した場合という要件を加えたことは、患者が望む場合に広く受けられるという趣旨であり、真に検査の充実を図るには、検査の有無の判断は医師会登録医療機関等の医師が行うべきと考えますが、判断を帰国者・接触者相談センターに委ねている地域もあります。また、センターから帰国者・接触者外来や医師会登録医療機関等を紹介されたほとんどの患者が検査に至っており、外来受診の判断をもう少し緩和すべきとも思われます。
 また、発熱患者が開業医のところに集まることを防ぐことについては、かかりつけ医の診療が電話やICTを活用したものでも了となっていますが、肺のレントゲン撮影や季節性インフルエンザなど各種検査は医療機関を訪問しなければならず、遠隔診療がどこまで普及しているのか疑問があります。
 市中の病院では、駐車場で検温をする患者の姿が見受けられ、目的が徹底できているとは言えません。現在は、各二次医療圏の状況を踏まえ、その地域に合ったやり方を導入していますが、本当に本県に患者が出た場合―フェーズ1や、フェーズ2以降の段階となった場合、帰国者・接触者外来は治療に専念するべきで、開業医での二次感染を防ぐためにもPCR検査センターをさらに進めた発熱外来が望まれます。
 そこで伺います。検査体制については、全国平均に近い検査数を行っている福島県では週に500件から700件の検査を行っていますが、実際に感染者が出た場合、どの程度の検査体制が必要となり、今後どの程度の検査体制を整備する予定なのか、県の地域外来・検査センターの現状と課題もあわせて伺います。
〇保健福祉部長(野原勝君) PCR検査体制についてでありますが、これまで、県における検査については、岩手県環境保健研究センターに配備した4台のPCR検査機器により1日80件の検査体制としており、これまで県で実施した最大検査件数は1日26件だったところであり、また、民間検査機関や医療機関への検査依託の拡充にも努めてきたところでございます。
 6月19日に、国からの事務連絡で、3月、4月の国内流行状況を踏まえた新たな流行シナリオが示されたことから、本県におけるPCR検査需要等について改めて精査をしているところでございます。
 県としては、新たな流行シナリオに基づき算出した検査需要に対応し、帰国者・接触者外来における検体採取能力、地域外来・検査センターの検査対応能力の向上を図るとともに、県内民間検査機関等でのPCR検査体制の強化、抗原検査の導入などにより、最大ピーク時に対応できる検査体制の強化に努めていく考えであります。
 地域外来・検査センターについては、これまでに両磐、宮古、胆江、釜石及び盛岡の5医療圏において運用開始され、残る4医療圏についても7月中を目途に設置される見込みでございます。
 運用に当たりましては、資機材の調達が課題として挙げられたことから、今後においても、県が調達して配付するなど、引き続き支援していくとともに、インフルエンザが流行いたします冬季に向けまして、地域外来・検査センターの体制につきましても、各地域の意見を伺いながら検討していく考えでございます。
〇15番(佐々木朋和君) 今の点について再質問させていただきたいと思います。
 今、インフルエンザの蔓延期という話がありました。インフルエンザの蔓延期になりますと新型コロナウイルス感染症の類似患者が出てくるわけでありまして、それについての対応をこれからしていくということでありましたが、今、まず発熱外来とPCR検査センターは、それぞれに機能が別でありまして、発熱外来のほうは、そこで診療とPCR検査の判断、そして検体採取ができる。一方で、PCR検査センターは、検体を採取するのみで、その前にかかりつけ医、市中の病院にかからなければいけないわけでありますね。
 そういった中で、今、発熱外来は盛岡市、奥州市、釜石市のみとなっているわけで、そのほかはPCR検査センターだと認識しておりますが、そのPCR検査センターというような形でこの蔓延期を乗り切れるものなのか、この点について部長の所感をお伺いしたいと思います。
 そして、もう一点あります。今は検体数が少ないわけでありまして、これから経済を回しながら市中の感染防止をやっていくためには、やはりPCR検査の積極的な運用が必要だろうと思っております。
 この前、新聞報道によりまして、岩手県内の教育委員会で子供たちへの自粛要請があったという話がございました。そのころはPCR検査の検査をする要件が厳しかったわけでありますが、今は、医者が判断をすればできるわけでありますから、これからは、そういったときに積極的にPCR検査を運用していくことが重要であろうと思っております。
 そういったPCR検査の積極的な運用、この2点について確認をさせていただきたいと思います。
〇保健福祉部長(野原勝君) 議員御紹介のとおり、県内の地域外来・検査センターにつきましては、一種の診療を行う機能を持っているもの、検査に着目した機能で運用しているもの、さまざまございます。
 一方で、今、検査の体制は過渡期と言える状況でございます。一番精度の高い検査はやはりPCR検査なわけでございますが、抗原検査、これは季節性インフルエンザ等で、かかりつけ医等で通常に採用している手法でございます。30分程度で検査結果が出るという手法、こちらについても精度が確認されて、実際そちらの検査の結果におきましても診断が可能という評価が国から示されたところでございます。
 さらに、この抗原検査については、PCR検査でも可能なのですが、唾液での検査ということも国から承認されました。
 これまで、地域外来・検査センターを設置した目的としては、一般の患者と疑い患者が同じ医療機関で動線を一にして院内感染を起こさないということが主要な視点でございました。もう一つが、検体を採取するに当たり、咽頭拭い液等を採取するのはやはりリスクが高い行為でございますので、それに精通した体制で検体を採取する、この2点の視点で検査センターを運用してまいりました。
 しかしながら、先ほど申し上げましたとおり、検査の内容が今過渡期で、新しい検査が順次導入されています。例えば唾液での抗原検査が可能となりますと、これは検体採取の負担もかなり低減されます。また、30分程度での判断も可能となってまいります。そうした新しく導入された検査を上手に組み合わせながら、今後、地域外来・検査センター、発熱外来について体制強化を進めていきたいと考えています。
 先般開催しました専門委員会の中でも、こうした新たな検査をどのように組み合わせて活用していくかということを御議論いただいたところでございます。今さまざま運用がされているところでございますけれども、そうした体制がある程度固まってくると思いますので、そうしたことを見きわめながら、先ほど申し上げましたことしの冬、インフルエンザと同じ時期に―これは症状で区別できませんので、はやった際に適切に診断をでき、院内感染を回避できるセンターの体制強化に向けて取り組んでまいります。
〇議長(関根敏伸君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
〇保健福祉部長(野原勝君)(続) 済みません、もう一点御質問がございました。PCR検査体制の評価でございます。
 例えば大規模クラスターが発生した場合、国内でも100人規模の院内感染、施設内感染の事例がございます。こうした際は、例えばでございますけれども、1人当たり5人ぐらいの濃厚接触者がいると仮定しますと、1日当たり500件程度の検査をしなくてはならないことになります。我々もそういった大規模クラスターに十分対応できるようなPCR検査体制を整備しなくてはならないと認識しておりまして、現在、先ほど答弁申し上げましたさまざまな取り組みにより、その体制強化に向けて取り組んでいるところでございます。
〇15番(佐々木朋和君) 前向きな答弁をいただいたと思っております。
 済みません、1点、積極的なPCR検査というところで私が申し上げたかったのは、例えば無症状者であっても、こちらに転移してきた場合に、行動制限ができない分、PCR検査等で安心を確保することも必要ではないかという意味の積極的検査でございますが、その点についてだけお答えいただきたいと思います。
〇保健福祉部長(野原勝君) PCR検査をどこまで拡大していくかというのは、さまざまな議論があると承知しています。例えば、今、海外に渡航しようとした場合、PCR検査が必須になってまいります。経済活動を進めていくに当たり、PCR検査できちんと陰性を確認していくことを求めていくという視点がございます。
 一方で、極論を申し上げますと、完全に感染していないかどうか確認するには、日本国民全員、2週間ごとにPCR検査をしなくてはならないことにもなってしまいます。また、無症状者に対するPCR検査は非常に精度の高い方法ではあるのですが、一定の割合で偽陽性者、偽陰性者が発生いたします。偽陽性者に関しては、本当は患者でないのに陽性となりますので、2週間の隔離が求められてしまいます。偽陰性者に関しては、本当は疾病を持っているのに陰性と判断されるために、自分は大丈夫だという認識で周りの方に感染させてしまうといったリスクもございます。
 こうしたことも十分に見きわめながら、どういった方までを対象としていくのか。我々としては、例えばリスクの高い医療従事者であるとか妊婦であるとかは、そういうことが必要ではないかということで、さきの令和2年度岩手県一般会計補正予算(第3号)の中で妊婦に対する検査の充実を盛り込んだところでございますが、そういったリスクの高いところからまずやっていくという視点で今後取り組んでいきたいと考えております。
〇15番(佐々木朋和君) では次に、新型コロナウイルス感染症に対応した医療体制について伺いたいと思います。
 帰国者・接触者外来を担うある県立病院は、一つの病棟を新型コロナウイルス感染症対応に特化し、一般患者が入院する病床を別の病棟に用意、その結果、回復期リハビリ病床をなくしました。地域包括ケア病床で対応可能とのことでしたが、県立病院の経営面、県民への一般医療提供、院内感染のリスクについて、今後の影響が心配されます。
 新型コロナウイルスは感染症であり、かつ、肺炎の症状が出ることから、感染症と肺炎双方に精通したドクターと施設設備が必要となりますが、本県の県立病院のインフェクションコントロールドクター、呼吸器内科医、感染症対応の陰圧可能な病床、人工呼吸器やECMOの配置状況はどうなっているのかお示しください。
〇医療局長(熊谷泰樹君) 県立病院の医療体制についてでありますが、現在、県立病院に勤務している院内感染対策などを専門的に取り扱うインフェクションコントロールドクターは、中央病院や圏域の基幹病院などに36名おり、また、肺炎等呼吸器疾患を専門的に治療する呼吸器内科医については18名配置しているところであります。
 また、新型コロナウイルス感染症患者に対応できる陰圧可能な病床につきましては、現在、感染症指定医療機関など14病院に合計80床を有しており、人工呼吸器については、感染症指定医療機関のほか、中央病院や圏域の基幹病院などに合計155台、ECMOについても7台保有しております。
 今後の感染拡大にも対応できるよう、さらに機器等の整備を進め、感染患者の受け入れ態勢及び診療機能の強化を図りながら、県立病院に与えられた役割をしっかりと果たしてまいります。
〇15番(佐々木朋和君) 新型コロナウイルス感染症医療体制検討委員会の資料によりますと、フェーズ2の発生拡大期になると、無症状、軽症患者は宿泊施設等、中等症は感染病床、重症患者は感染病床または基幹病院となり、最重症は高度医療機関へ入院することとなっています。しかし、症状が急激に変化することもあると言われるこの感染症において、果たして3度の転院が可能なのかどうか疑問が残ります。
 県内病院の経営面、県民への一般医療提供、院内感染リスクの不安もあわせて払拭するために、新型コロナウイルス感染症専門病院の設置をすべきとの意見もありますが、フェーズの段階の進行に対応した県内医療機関の対応をお示しください。
〇保健福祉部長(野原勝君) 県内の医療体制についてでありますが、県では、患者の重症度や感染拡大のフェーズに応じた医療体制を構築するため、現在、二次医療圏における病院の役割分担を進めております。
 酸素投与が必要な中等症の患者や人工呼吸器が必要な重症患者については、二次医療圏内の感染症指定医療機関または基幹病院に入院することとし、また、体外式膜型人工肺―ECMO等による治療が必要な最重症患者については、複数のECMOを運用可能な高度医療機関に入院することとしています。
 無症状者も含めて感染者については、原則、医療機関に入院することとなりますが、年齢や基礎疾患の有無などのリスクと患者の症状の経過を医師が十分に見きわめた上で、必要に応じて、重症度に応じた医療機関や軽症者療養施設へ転院することとなります。
 今後、大規模クラスター等の発生も想定し、さらなる体制強化のため、医療機関または病棟単位で感染者を受け入れられる重点医療機関の設置について検討を行ってまいります。
〇15番(佐々木朋和君) ぜひ県民に安心を与えられるような医療体制を構築していただきますようお願いしたいと思います。
 次に、社会経済活動及び観光振興について伺います。
 政府は、4月16日に緊急事態宣言の対象を全国に拡大し、県は翌17日、第11回新型コロナウイルス感染症対策本部を開催し、休業要請や施設使用の制限、行動自粛について、関係団体や市町村等から意見を聞きながら検討するとしました。
 休業要請について、要請範囲が決定したのは4月23日木曜日15時過ぎで、ゴールデンウイークに向けて4月25日からの休業要請でした。人の移動が多くなるゴールデンウイーク期間の休業要請について決断したことは支持しますが、行政が機能する平日は金曜日の1日しかないというぎりぎりのタイミングでした。
 休業要請先に入った道の駅では、報道で知ったという事業者が多く、野菜等仕入れの約束をしており、休業となれば農家にも被害が及ぶと困惑していました。結果的に、市町村との話し合いで、生活必需品を売っているということで産直施設は開店したところが多かったのですが、休業要請が出ているのになぜあけているのかと地域からの声もありました。県は、混乱を避けるため、早期に決定するか、少なくとも事業者には前もって告知を行うべきだったと思います。
 また、休業要請の範囲は東北で一番狭い範囲となりました。休業要請先を決定した4月23日の第12回新型コロナウイルス感染症対策本部会議資料には、ゴールデンウイーク期間中に営業自粛をする91の観光施設、11のわんこそば店等の営業自粛を決めた店舗名を記載しています。ウイルスを県内に持ち込んではいけない、従業員の健康を守らなければいけないという思いから、書き入れどきに苦渋の決断をなされたのだと思います。
 これら多くの事業者は、もう自粛をしているのだから休業要請先に入れなくても大丈夫だと考えたのだとしたら、それは考え方が違うと思います。多くの店舗が自粛を決めている分野においては、休業要請をし、協力金を支払うことが、事業者に寄り添うことではないでしょうか。
 範囲の境界線についても、接待を伴う飲食店を風営法1号許可営業店という縛りにしたことはわかりにくく、風営法1号許可営業店には休業要請書が送られてきていますが、要請対象とならない店舗は、そのようなことがわからず、ゴールデンウイーク中休業したが協力金がもらえないことを後から聞いたという事業者もおりますし、逆に、コンパニオンを迎えるために風営法1号許可を取っているホテルや宴会場にも休業要請書が送られていたそうです。
 ちなみに、風営法1号許可の有無で区別しているのは東北では本県のみで、他県では、夜8時以降の営業店を同一に扱っています。運動施設についても、休業要請先となったスポーツクラブ、ヨガスタジオの類似施設から自分のところは入るのかと私のところにも多くの問い合わせがありました。
 要請範囲を狭め協力金を厚くしたかと思えば、1施設10万円は東北で最低ランクです。協力金の予算総額も、青森県23.5億円、秋田県21億円、宮城県58億円、山形県10.5億円、福島県30億円、さらに延長追加分で14.8億円のところ、岩手県は1億円です。
 休業や協力金について自分の店舗が当たるのかどうか行政に問い合わせたくても、ゴールデンウイーク中のことです。また、休業要請そのものは保健福祉部、協力金については商工労働観光部という担当も、事業者からすれば困惑の種となりました。
 そこで伺います。検討から決定までの4月17日から4月23日まで、関係団体や事業者とどのような話し合いを行い休業要請の決定に至ったのでしょうか。また、その上で、緊急事態宣言下での休業要請の範囲について、どのような観点から決定し、ゴールデンウイーク中も含め休業についての相談体制はどのようになっていたのか伺います。
〇保健福祉部長(野原勝君) 休業要請の経緯、範囲、相談体制についてでございます。
 まず、休業要請の範囲については、新型インフルエンザ等対策特別措置法において、感染症の蔓延防止などの対策を実施する際、国民の自由と権利に制限が加えられるときであっても、その制限は必要最小限のものでなければならないとされております。
 本県においては、感染者が確認されていないことも踏まえ、休業の協力を要請するに当たっては、関係団体の意見を聞いた上で、現にクラスターが発生していた接待を伴う飲食店等と、大型連休期間中に営業することにより他県からの住民の往来につながる可能性を有する施設に絞って選定したところでございます。
 相談体制につきましては、対象事業者からの問い合わせ、相談に対し、商工労働観光部等と連携し、大型連休期間中も事業者からの個々の相談内容に応じた丁寧な対応に努めたところであります。
〇15番(佐々木朋和君) 他県との往来のもとになるような施設についてはということでしたが、観光事業者は自粛という形であったわけであります。やはりそこについて、しっかり県としても手当てをすべきではなかったかと思います。
 また、休業要請が解除されたにもかかわらず、行動として、県民には接待を伴うような飲食店には行かないようにというような自粛も出ていたわけです。そこも私はダブルスタンダードだったのではないかと感じています。
 そこで次に、県は令和2年度岩手県一般会計補正予算(第3号)によって、売り上げが50%減少した宿泊事業者に100万円の給付を行うことを決めました。休業要請に当たらなかった部分についても、後からこのように手当てをしたことは評価させていただきたいと思います。
 商工労働観光部がまとめた事業者に対する影響調査では、4月よりも5月の状況がより悪化しており、特に宿泊業の悪化はすさまじく、売り上げが81%から100%落ち込んでいる事業者が42%おり、61%から80%減分を足すと実に77%になります。一方で、81%から100%減の事業者は、飲食業で15%、サービス業で11%、小売業で6%、それぞれに存在します。
 先日、平泉町の役場、商工会、観光協会、事業者に新型コロナウイルス感染症の影響調査に伺ってまいりました。平泉町における客層の多くは観光客であり、宿泊業に限らず、飲食業、サービス業、小売業ともに宿泊業と変わらない落ち込み幅であると痛感しました。
 また、同じサービス業、飲食業でも大変な状況に追い込まれているのが、冠婚葬祭にかかわるホール業、仕出し業等でございました。結婚式、宴会は延期、縮小、キャンセルが続き、頼みとしていた夏の初盆法事も自粛傾向が顕著と言われています。これら業種は、冠婚葬祭、宴会、仕出し等、宿泊業と業態はかぶりますが、宿泊施設と同等の支援は受けられませんでした。
 また、県境をまたいだ移動が自粛されていた間、公共交通事業者はもとより、同じ飲食業でも駅弁を扱う事業者は売り上げがゼロに近かったと聞いています。宿泊業と同等に厳しい売り上げ状況にある事業者に対し、さらなる支援金の給付を考えるべきと思います。
 国は、1次、2次補正予算を合わせた本県の地方単独分を189億9、200万円分配分することに決定しました。令和2年度岩手県一般会計補正予算の第1号、第2号及び第3号で予算化した金額を引いた約106億7、600万円の追加補正が可能となります。
 そこで伺います。本県経済は大変な状況にあり、事業者への経営支援や社会全体への景気刺激策が必要な状況にありますが、県は、この予算をいつ、どのように活用していくのか、既存予算の組み直しや3基金の取り崩しの可能性も含めて知事にお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 県では、これまで3次にわたる補正予算による事業者への経営支援策として、3年間無利子かつ保証料を全額補給する貸付金や家賃補助、感染症対策等への補助のほか、県産品の消費を促進する買うなら岩手のもの運動や、観光需要を喚起する地元の宿応援割などを実施しており、まずは、これらの支援策が事業者に迅速かつ確実に届くよう努めます。
 今後も、感染症の状況や事業者の経営状況等を踏まえ、既存予算も活用しながら、適時適切に追加の予算措置を講じることとし、その財源については、財政運営の持続可能性の観点から、財源対策3基金の残高に配慮しつつ、地方創生臨時交付金などの国の財源措置を最大限活用してまいります。
〇15番(佐々木朋和君) もう少し具体的に、ぜひ出すべきだと思うのですけれども、これから商工労働観光部長と議論させていただいて、その後にもう一回知事に聞きたいと思いますので、ぜひ議論を聞いていてください。
 次に、市町村との連携について伺いたいと思います。
 県は、令和2年度岩手県一般会計補正予算(第3号)だけでなく、4月30日に可決された令和2年度岩手県一般会計補正予算(第2号)においても、緊急事態宣言解除後、機動的に経済を動かすべく対策を盛り込んだことは大いに評価しますが、内容については使い勝手のよいものだったのか疑問です。
 令和2年度岩手県一般会計補正予算(第2号)の内容を見ると市町村事業への補助が目立ちます。5月14日現在で雇用調整助成金の上乗せを行った市町村数は19、家賃補助は21、地元宿応援割は1となっており、特に財政規模の小さい自治体は、臨時交付金の割り当ても少なく、県単独でできるところは単独で行ってほしいとの声も聞こえます。
 自治体と連携した事業化には、市町村議会の日程もあり事業者の手元に届くまでに時間がかかります。今回のような緊急時には、市町村との役割を明確化し、それぞれ事業化するほうが機動的であるとも思います。さらには、市町村との連携により事業化する上では各市町村と事前の調整が不可欠と思いますが、公式な連携の場は、4月14日の県と市町村との意見交換会のみの状況です。
 そこで伺います。今般の中小企業者に対する支援策の策定に当たり、県単独で行うもの、市町村と連携して行うもの、市町村が行うべきものの整理の考え方をお示しください。また、その際、市町村とどのように連携していたのか、広域振興局の果たした役割も含め、どのように評価し、今後発展させていくのか伺います。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君) 市町村との連携についてでありますけれども、基本的な考え方といたしまして、県単独で行う事業は、全県を対象とし広域的に実施する必要があるもの、市町村と連携して行う事業は、限られた財源の中で、市町村ごとの受益の度合いに応じ一定の負担を求めることが実質的に公平で効果的と判断されるもの、市町村が行うべき事業は、各地域の実情に応じて自立的、主体的に立案、実施することが効果的と判断されるものと考えております。
 市町村との事前の調整につきましては、例えば、市町村との意見交換会―議員御指摘の意見交換会でありますが―におきまして、市町村から県と連携して実施したいとの意見のあった飲食店等に対する家賃補助などにつきましては、市町村と県とが共同実施する経済対策事業として制度を構築し、市町村に事前にメールや電話で趣旨を説明しながら事業化を働きかけ、市町村事業への補助制度として予算措置したところであります。
 市町村との連携において、広域振興局は、本庁と市町村の橋渡しの役割を担っておりまして、事業化に当たりましては、本庁と広域振興局がそれぞれの役割を果たし、時間のない中ではありましたが、できる限りの調整が図られたものと考えております。
 今後とも、本庁と広域振興局が一体となって、市町村の考えを丁寧に酌み取りながら、緊密に連携してまいりたいと存じます。
〇15番(佐々木朋和君) 4月11日ですか14日ですか、意見交換会がありました。これは令和2年度岩手県一般会計補正予算(第2号)前であったわけですけれども、令和2年度岩手県一般会計補正予算(第3号)の6月11日の前には、市町村とのこういった連携の場あるいは個別に調整の場というのはなかったのですか。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君) 令和2年度岩手県一般会計補正予算(第3号)の前には、それぞれの担当室課から、それぞれの市町村に事前に連絡をいたしまして、こういった金額でどうでしょうか、補助割合でどうでしょうか、そんな調整をさせていただいたところであります。
〇15番(佐々木朋和君) 令和2年度岩手県一般会計補正予算(第2号)は、予算額は大きかったですけれども、令和2年度岩手県一般会計補正予算(第3号)は、やはりメニューが豊富で、まさに各事業者のかゆいところに手が届くようにしなければいけないものでありましたし、もっと市町村あるいは事業者の使い勝手のいいようにしていただきたかったという思いがあります。
 そこで、観光振興について伺いたいと思います。
 外出自粛ステップ2後の初の週末、6月20日、私の父は母を連れて車で実家の山形県まで里帰りをしました。山形県は、道の駅やそば屋、サクランボ狩りスポットなど、そのほとんどが山形ナンバーでありましたが、人であふれていたそうです。その光景の要因は、山形県のこの日に向けた準備。宿泊割引とサクランボ狩りというコンテンツにあると思います。
 山形県は、県民県内お出かけキャンペーンという県内の観光立ち寄り施設で2、000円分の買い物ができるお出かけクーポンを1、000円で発行する事業を行い、緊急事態宣言が解除された5月15日に1万2、500枚、5月23日に1万7、500枚を販売、利用を開始しています。さらに、県民泊まって応援キャンペーンでは、6月第1週から予約可能な5、000円のクーポン5万枚、5万人分を5月15日から販売し、6月15日からは7月に使えるクーポンを販売していました。
 福島県でも、7、000円以上の宿泊に対し5、000円補助する県民割事業を展開し、2万4、000人泊が1週間で完売し、15万人泊分の追加をしたところです。
 本県においては、4月30日の2次補正で、市町村民が市町村の宿に泊まった場合、市町村と県で合わせて2、000円補助する地元の宿応援割事業と各事業者に前売り宿泊券の印刷費等の10万円を補助する前売り応援宿泊券の販売支援補助事業をいち早く事業化したのですが、これまで活用例が少なく、県全体としての旅行需要の喚起につながっていないことが残念でなりません。市町村内での宿泊という要件や前売りチケットにプレミアム部分がないなど、制度設計に問題はなかったのでしょうか。
 6月11日、令和2年度岩手県一般会計補正予算(第3号)で地元の宿応援割事業を拡充し、県民が県内宿泊施設に宿泊した場合、20万人泊分、2、000円を補助する事業が実施されますが、現在、宿泊割を39都道府県で実施または実施予定となっております。富山県では最大で1万5、000円の割引を行っております。県民に限定しない割引を行っている県も14県と、他県の状況を見れば見劣り感は否めません。
 また、6月11日に可決された本事業は、6月26日現在、その開始期間が明らかとなっておらず、県民がこの事業をいつ利用できるのか不透明となっております。ことし2月に実施されたいわてふっこう割は、閑散期対策としては周知時間や宣伝広告に課題があったと思います。
 そこで伺います。県は、いわてふっこう割の経験を今回の事業の制度設計にどのように生かしたのか、開始時期も含めてお示しください。また、他県の状況と比較して割引額のアップやさらなる支援策を検討すべきと思いますがいかがでしょうか。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君) 県内宿泊者への助成等についてでありますが、いわてふっこう割では、取り組み期間が非常に短かったことや比較的少額の予算でありましたことから、それぞれの宿泊施設が割引宿泊プランを作成し、販売する仕組みとしたところであります。ふっこう割を実施した令和2年2月は、全国的な新型コロナウイルス感染症の影響が広がる中、全国の延べ宿泊者数が前年同月比14%減となる一方で、本県は5.8%減にとどめておりまして、一定の効果があったものと認識しているところであります。
 今回の県事業の宿泊助成につきましては、比較的長期の取り組みを想定しているところでありますことから、この7月から1泊2、000円の割引クーポンを発行する予定とし、テレビや新聞などさまざまな媒体を活用して、多くの県民に利用を促すこととしております。
 割引額につきましては、現在、市町村と共同で実施している地元の宿応援割と合わせると、1泊当たり6、000円以上の割引も可能なものとなっておりまして、当面、これにより観光需要の喚起を図りながら、観光関係事業者の皆様との連携によってコンテンツの磨き上げも行いながら、今後予定されている国のGo To キャンペーンにつなげてまいりたいと考えております。
〇15番(佐々木朋和君) きのうもGo To キャンペーンにつなげるという答弁をされておりましたが、今現在で、いつ使えるかということがわからないわけですね。一体いつごろ県民の皆さんの手元に届く予定になっているのですか。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君) 今、事業の具体的な設計をし、そして、最後の事務的な、クーポンをどう発行していくかというところの詰めをしている段階であります。7月のできるだけ早い時期に実行できるように努めてまいりたいと思います。
〇15番(佐々木朋和君) 先ほど申し上げた山形県は、5月15日から販売しているわけであります。そして、特別警戒地域になった北海道は、その後に第2波の危機もあったわけでありますけれども、6月28日、おとといに旅行代金の1人当たり最大1万円を割り引く道民割を7月1日から使えるようにやっているわけであります。本県は、県内に新型コロナウイルス感染症の感染者がいないという中にあって、どうしてこんなに時間がかかってしまうのか疑問でなりません。
 その中で、先ほど、いわてふっこう割は期間が短かった、そういった反省もあるという中で、せっかくクーポンに変えたのですけれども、そんなに時間がかかっては意味がないのではないかと思ってしまいます。
 そこで、知事にお伺いしたいと思います。先ほどから指摘させていただきました協力金が他県に比して少なかった、そして、宿泊施設のように80%から100%落ち込んでいる事業者もある。こういったところが宿泊割のような経済対策を受けられないまま―県は受けているのに、受けられないまま、この6月、7月と過ごして、私は、Go To キャンペーンまで事業を継続していけるのか不安であります。そういった意味でも、即刻、補正予算をしっかりとこういったものをやるというところを見せなければいけないと思います。
 もう一つ、私が懸念しているのは冬です。冬場対策、オフシーズンでございます。これから観光のオフシーズン、11月以降、あるいは飲食店は忘年会、新年会が終わる2月、そこに新型コロナウイルス感染症の不安が合わさったときに、多くの事業者が事業継続を諦めてしまうのではないかといった懸念を持っております。
 国の雇用調整助成金の特例が9月30日までになっていますし、そこは県としてもしっかりと国に要望しながらも、今のうちから県としてもしっかりとそのかさ上げをしていく、あるいは融資についても劣後ローンも考えていく、そういったメッセージを発していく。そういったことを含めた補正予算、このことを発信していくべきと思いますけれども、知事の所見を伺いたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 休業補償ないし休業協力金につきましては、そもそも休業要請を受けずにそれ以前の段階からさまざま自粛していた店、さらには、自粛はしていないけれども客が激減して収入が減っている店、そういったところの損失を、休業要請を受けたということだけではなく、過去の損失にさかのぼり、また、これからの予想される損失についても、きちっと公が補っていかなければならないというのが基本的な考え方であります。そして、休業要請については、これはもう極力最低限にしなければならないと考えたのは、先ほどの保健福祉部長答弁のとおりであります。
 そして、先ほど議員からも御指摘いただきましたように、さまざま業種ごと、あるいはまた、その業種の中での業態ごとに損失のあり方が非常にきめ細かく対応が求められるようになっております。県の基本的な考え方としましては、商工会議所あるいは商工会のエリアの中、これはほぼ市町村と重なる部分がありますけれども、その中できめ細かく、どの業種がどのくらい痛んでいる、どの業種のどのような業態が困っているということがお互いわかる中で、例えば、ある県北の町の場合には、町職員が交代で町内の飲食店を利用するというようなやり方で消費の拡大を図っているところもあります。
 そのような市町村ごとのきめ細かい対応が、まず、一人も取り残さない、一軒も取り残さないというやり方、これは他方、国の10万円一律給付のように、全ての国民に対し一定の給付を行うやり方が一方にあるわけですけれども、それ以外に、一人も取り残さないやり方は、市町村単位できちっとやっていく、それを県が補助すると。これは、平成28年台風第10号災害のときにもそのようなやり方を、久慈市、宮古市、岩泉町など被害の大きかったところで、市町村が、その中でクリーニング屋が特に痛んでいると思えばクリーニング屋に特に重点を置くとか、商店街が特に痛んでいると思えば商店街に重点を置くとか、市町村ごとにきめ細かくやれる資金について、県がそれを支援するというやり方で乗り越えたことなども参考にしているところであります。
 観光については、消費拡大については、まず、観光現場から、いきなり全国から、あるいはオール岩手というよりも、やはり市町村単位で始めるほうがいいということでもありましたので、そのようにやり、市町村ごとにかなり成果が出ていると、先ほど部長答弁にもありましたように、宿泊者もそれなりの数字が出ていると聞いております。
 一方で、宿泊関係、ホテル、旅館などは、当初90%の収入減など大変大きな損害があり、議員も先ほど申された劣後ローンのようなファンドの形で公的資金を注入する形が好ましいような大きな損害に対しては、それを早い段階から国に求めておりましたし、また、今、県内経済界とも調整し、そうした融資、支援、消費の拡大、さらにファンドの活用といったあらゆる手段を講じて、一人も取り残さないような対策を岩手において進めてまいります。
〇15番(佐々木朋和君) その一人も取り残さないという言葉は頼もしいと思います。一方で、その分の県と市町村の先ほど言った役割分担をしっかりしないと、やはり経済規模の大きい県にはどーんとしたところをやってもらって、細かいところについては、かゆいところに手が届くのは市町村というのはいいと思うのですけれども、そこの役割分担がしっかりしていないから、それぞれで政策がダブってしまったり、あるいは時間がかかってしまったりといったところがあるのではないかと思っています。
 先ほどおっしゃっていただいた市町村ごとに成果が上がっていると言いながら、先ほど名須川議員もおっしゃっていましたが、各市町村が横出しをして、日帰り温泉も大丈夫にする、あるいは県内の宿泊までよくする、そういったところを今一所懸命やっているのだと思います。しっかりと県としてキャンペーンを張るのと各市町村が頑張るでは、県民全体の消費の喚起という意味では規模が違うのだろうと思いますので、ぜひともそこは考えていただきたいと思います。
 そこで、新しい観光宣言等について伺いたいと思います。
 本県において観光入り込み客数が震災前の状況に戻るのに4年かかりました。今回は、インバウンドの状況を考えるとそれ以上の時間を要すると考えます。平成30年の本県の観光入り込み客数のうち、インバウンドは34万4、140人回で、金額にして78億5、500万円となりますが、その分をこれまで海外に行っていた日本人やマイクロツーリズム、つまり県民による県内の観光需要の喚起で埋めなければなりません。
 岩手県は四国4県に匹敵する広さがあり、新幹線で東京に行くよりも県内の車移動のほうが時間を要します。不便なようですが、考えようによっては、泊まりがけで旅行するコースとして魅力あるコースに仕立てることも可能と思います。あとは、旅の目的となる山形県の例で示したサクランボ狩りのような魅力的なコンテンツを県民に示すことができるか否かだと思います。そして、県民によって新たに見出された岩手県の魅力は、将来の国内やインバウンド誘客にとって大きな力となるはずです。
 知事は、6月19日に行われた観光再開セレモニーにおいて新しい観光宣言を行いましたが、その中で、感染症対策、新たな観光キャンペーンの展開に加え、岩手のよさを県内外で共有することに言及されました。県内という言葉を入れた意図は、私が言わんとするところと共通するように思います。
 また、6月から東北・新潟応援!絆キャンペーンが、8月からは国のGo To キャンペーンが始まりますが、夏祭りが行えない東北や本県が、これから夏季シーズンに何を売りに誘客をしていくのか。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響から観光が立ち上がるには、マイクロツーリズムから国内、そしてインバウンドへと、感染症対策との両立を含めた数年にわたる緻密な戦略が必要です。観光事業者に希望を与えるためにもコロナ戦略を策定するべきと考えます。
 知事の新しい観光宣言に込めた思い、知事が考える県民による県内観光のテーマ、この夏の東北や岩手の観光の売りと宣伝戦略とあわせ、コロナ戦略の作成について知事の所見を伺います。
〇知事(達増拓也君) 新しい観光宣言等についてでありますが、新型コロナウイルス感染症が終息しない中で、宿泊施設や観光施設等が県内外のお客様とお互いに配慮し合い、安全・安心な県、岩手の観光を実現し、将来にわたり持続可能な岩手の観光をつくり上げるため、いわての新しい観光を宣言いたしました。
 県民による県内観光については、県民の皆様にいわてのよさの再発見ということで、豊かな自然、歴史、文化、食、温泉、体験プログラムなどを体感していただくこと。さらに、その魅力を発信していただけるよう、観光コンテンツを磨き上げることで、将来の国内外からの誘客につなげようとするものであります。
 この夏の観光については、安全、安心と魅力の再発見をコンセプトに、東北観光推進機構が実施する東北・新潟応援!絆キャンペーンと連携し、二つの世界遺産、二つの国立公園を初め、復興のシンボルである三陸鉄道、世界に誇る岩手の食など、岩手ならではの観光資源を生かした情報発信と徹底した感染症対策により、岩手のよさを実感していただく旅を提案してまいります。
 今後の観光戦略については、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえ、いわての新しい観光宣言に沿って、県内観光からインバウンド誘客まで段階的な取り組みの工程を策定し、市町村や観光事業者と共有してまいります。
〇15番(佐々木朋和君) ぜひ、知事初め県の皆さんに宣伝をしっかりとやっていただきたいと思います。遠くからお客様に来ていただくことも大変ですけれども、マイクロツーリズム、今まで県民の方が県内を旅行した、そこに旅行する場所と頭に入っていなかった人に来ていただくというのは大変難しいことですし、また、市町村内で泊まるということも、私はさらに難しいことだと思います。割引だけではなくて、しっかりとしたコンセプトを打ち出していくことが重要だと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 県民に岩手のよさを再認識していただく魅力の一つは、やはり豊かな農林水産物、食文化であります。一方、和牛を初め高級食材が、新型コロナウイルス感染症による販路縮小の影響を受けており、県は、買うなら岩手のもの運動を発展させ、ウエブ物産展等を開催し、売上代金の30%を割り引く事業を実施することとしました。
 私は、牛、豚、鳥の肉類、三陸の高級食材、豊富な野菜、果実、原木シイタケなどの食の魅力を県民による県内観光にうまく組み込むことで、農林水産業を助け、県内観光の魅力の柱とすべきと考えます。そこには農林水産業と観光産業の連携が必要となります。
 さらには、今の時代だからこそ、事業者がさまざまな工夫によって新たなサービスを創出しておりますし、行政も、部局の垣根を越えてさまざまな形で事業者支援を行っています。このような事業を効果的に進めるためには知事のリーダーシップが重要と考えます。
 そこで伺います。観光産業と農林水産業が連携し、どのように観光の取り組みを進めていくのか、知事の所見を伺います。
〇知事(達増拓也君) 産業間の連携についてでありますが、本県の多彩な食材や食文化は世界に誇る観光素材であり、いわて県民計画(2019~2028)においても、産業間の連携を強化し観光振興に活用することとしております。
 これまでも、国内外で開催される商談会での食と観光を組み合わせたツアーの売り込みや、食をテーマにしたJR東日本や三陸鉄道の企画列車の運行などに取り組んでまいりました。
 さらに、昨年6月には、東北地方で初となる国際的な食イベント、三陸国際ガストロノミー会議2019を開催し、海外の著名なシェフ等から、本県の食材やそれを使った料理を高く評価いただいたところであり、現在、このような高品質な食を組み込んだ付加価値の高い旅行商品の造成に取り組んでおります。
 今後におきましても、観光産業や農林水産業の関係団体等を構成員として、知事が会長を務めますいわて観光キャンペーン推進協議会の事業等を通じて、産業間の連携を強化しながら、一層の観光振興、地域経済の活性化に努めてまいります。
〇15番(佐々木朋和君) 次に、いわて県民計画(2019~2028)及び第2期岩手県ふるさと振興総合戦略について伺います。
 知事は、6月4日の全国知事会で、感染症対策として東京一極集中の是正が必要と発言され、8日の定例記者会見で、思い切った改革をするならば、首都機能移転こそふさわしいと発言、10日の政府要望にも盛り込みました。
 この新型コロナウイルス感染症の影響は地方にも甚大な被害を及ぼしていますが、必ずこのような大きな災害があると、世の中の価値観が大きく変わる節目となります。我々地方に住む者は、その変革をふるさと振興につなげていかなければなりません。知事の発言は、そのような意識、意欲のあらわれと解釈いたしました。
 一方、新型コロナウイルス感染症による国や県の税収の落ち込みと国からの交付金や県歳出予算への影響も心配されます。
 そこで伺います。ウィズコロナ時代にどのように価値観の変化や社会の変革が起き、いわて県民計画(2019~2028)や第2期岩手県ふるさと振興総合戦略の方向性や目指すべき姿にどのような影響をもたらすか、また、これにどう対応していくのか、知事の見解を伺います。
〇知事(達増拓也君) 今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、地方の生活や経済にまで負の影響を及ぼす一方、テレワークや在宅勤務を初めとする多様な働き方の加速化や、インターネット販売の浸透等によるICTを活用した新しいビジネスの創出などで、地方の暮らしやすさが広く認識される大きな契機になったと考えております。
 こうした動きは、東京一極集中を是正し、地方の暮らしや仕事を起点とする政策を進めようとするいわて県民計画(2019~2028)や第2期岩手県ふるさと振興総合戦略と方向性を一にするものであります。
 このため、今後におきましても、県民計画や総合戦略に掲げる取り組みについて、関係人口の創出、拡大や移住、定住の促進など、さらに加速させるべき施策や新たに追加するべき事業などをしっかり見きわめながら、臨機に対応してまいります。
〇15番(佐々木朋和君) 国の第2次補正予算に高度無線環境整備促進事業として約500億円が計上され、対象地域の範囲も拡充されました。本県のFTTH(Fiber To The Home)の利用可能世帯率は、全国98.8%に比して95.5%と少し低いくらいですが、市町村別に見ると地域により格差が生じています。ウィズコロナ時代のテレワークやワーケーションの普及拡大を受け、利用者が県内宿泊施設等を訪れること、その先の移住も期待されるところでありますが、特にGIGAスクール構想や在宅学習の推進にとって、インターネット環境の整備は必要不可欠なものと思いますが、御所見を伺います。
〇ふるさと振興部長(佐々木淳君) ICT環境の整備についてでありますが、県では、いわて県民計画(2019~2028)の10の政策を支える社会基盤として、その整備促進に取り組んでおりますが、新型コロナウイルス感染症に対応し、新しい生活様式を実践しながら本県のふるさと振興を推進する上で、ICT環境の整備は、これまで以上に重要性が高まってきていると認識しております。
 国においては、令和5年度末を目標に国内ほぼ全世帯に光ファイバー回線を整備することとしておりましたが、今般、在宅勤務やオンライン診療、GIGAスクール構想の推進等、新型コロナウイルス感染症への対応を進めるため、その目標年次を2年前倒しし、制度を拡充したところであります。
 このため、県といたしましては、国の支援制度の活用を事業主体となる市町村や通信事業者等に対し積極的に働きかけるとともに、市町村へのアドバイザー派遣やICT技術の普及啓発などを行い、情報通信基盤の整備を促進してまいります。
〇15番(佐々木朋和君) 次の質問に移らせていただきます。
 ウィズコロナ時代のふるさと振興については、特に社会減対策への取り組みが急務であります。大企業はインターネットを使った遠隔面接などを推し進め、また、東京一極集中が進む中で、今後の地域再生のキーワードとして地方への移住、定住やテレワーク、ワーケーションなどの取り組みを推進することは重要であり、既に利用者の囲い込みについて自治体間の競争が始まっております。
 また、東日本大震災津波以降、岩手県と首都圏等とのつながりや取り組みを支えてきたNPOの活動などが、新型コロナウイルス感染症の影響により停滞しており、これらを早急に支援しなければ、これまで培ってきた岩手の強みは失われてしまうおそれがあります。
 そこで関係部長に伺います。ウィズコロナ時代の人口社会減に向け、本県の移住、定住等の取り組みについてどのように進めていくのか。また、関係人口の拡大をどう認識し、どのように進めていくのか伺います。
〇商工労働観光部長(戸舘弘幸君) 移住、定住の取り組み推進についてでありますが、内閣府が令和2年6月21日に発表した新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査によりますと、東京23区に居住する20代の方の35.4%が、地方移住への関心が高くなった、やや高くなったと回答するなど、地方移住への関心がこれまで以上に高まっていると認識しております。
 このため、岩手の暮らしに関する情報発信や移住体験ツアー、岩手版ワーキングホリデー等の取り組みに加えまして、オンラインを活用した移住相談会を実施いたしますほか、テレワーク等、新しい働き方を実践する県内企業の紹介、コワーキングスペースやシェアオフィス、住宅に関する情報など、新しい働き方を実践できる仕事と暮らしに関する情報発信を強化いたしまして、本県への移住を促進してまいります。
〇ふるさと振興部長(佐々木淳君) 関係人口の拡大に向けた取り組みについてでありますが、県では、東日本大震災津波を契機に育まれた多様なつながりを生かしながら、関係人口の創出、拡大に向けた取り組みを進めておりますが、ただいまの内閣府の調査結果など、改めて地方への関心が高まってきていると認識しております。
 このため、SNSを活用し情報発信を行う岩手つながり創造本部の拡充を初め、首都圏の人材と県内企業等をつなぐ遠恋複業におけるリモートでの積極的なマッチング、県内宿泊施設を活用したワーケーションのための通信環境の整備の支援などを実施してまいります。
 今後とも、市町村やNPOとも広く連携して、いわゆるコロナ社会にも対応しながら、関係人口の質的、量的な拡大に取り組んでまいります。
〇15番(佐々木朋和君) 震災復興あるいは関係人口の創出に頑張っているNPO、交流人口ができなくて収入をなくしている団体も多いですので、ぜひ、しっかりとその主体を守るということも一緒にやっていただきたいと思います。
 次に、平泉の文化遺産について伺います。
 6月29日、きのうは世界遺産の日、来年は平泉世界文化遺産登録10周年を迎えます。平泉の文化遺産ガイダンス施設については、地元平泉町において、柳之御所遺跡を初めとする平泉文化を知ること、そして、平泉文化の形をなす関連施設をめぐるゲートウエーとしての機能を期待しており、それにあわせた平泉文化遺産センターの展示内容の変更、そして、将来的な国立博物館誘致にもつなげる第一歩となることを期待しています。
 そこで伺います。ガイダンス施設の展示物の内容は、隣接する柳之御所遺跡の説明のみならず、一関市や奥州市の今後の世界遺産候補も含めた平泉の文化思想をあらわす遺産全体としてのゲートウエー機能を持たせるべきと考えますが、ガイダンス施設の役割をどのように考えているのか伺います。
〇文化スポーツ部長(石川義晃君) 平泉の文化遺産ガイダンス施設(仮称)の役割についてでございます。
 この施設は、世界中から訪れる人たちに平泉の価値を広く伝えるとともに、平泉の文化遺産を人類共有の財産として後世へ継承するための拠点施設としての役割を担うものでございます。
 具体的には、平泉の文化遺産の各構成資産の価値や特徴をわかりやすく伝えるガイダンス機能、柳之御所遺跡から出土した資料の展示、収蔵機能、平泉文化にかかわる調査研究機能、柳之御所史跡公園等を活用した体験学習機能など多様な機能を持つものであり、世界遺産に登録された五つの構成資産のほか、拡張登録を目指す一関市の骨寺村荘園遺跡や奥州市の長者ケ原廃寺跡についても紹介することとしております。
〇15番(佐々木朋和君) 道の駅にも隣接しており、場所的には、やっぱりゲートウエー機能として期待されているのだと思っております。今ある世界文化遺産センターを超える施設となるよう、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。
 次に、ILC誘致について伺います。
 6月19日、欧州の素粒子物理学の研究指針となる次期欧州素粒子物理戦略が公表され、ILCの位置づけについては、戦略に適合するものであり、日本でタイムリーに実現される場合、協働することを望むことが明記されました。
 これまで費用分担について、米国は現物貢献を申し出ているのに対して、英国、ドイツ、フランスからは、現時点でILC計画に参加する資金的な余力はないとのコメントがあったとされておりますが、欧州素粒子物理戦略の結果で考えの変化もあるのではないかとも言われています。
 県は、このような動きをどのように受けとめているのか、所見を伺います。
〇ILC推進局長(高橋勝重君) ILC計画の国際的な分担について、文部科学省がことし2月に、英国、ドイツ、フランスとの4者での意見交換を初めて行い、その後の国会答弁において、欧州の主要国の考え方は、欧州素粒子物理戦略の内容によって変わっていく可能性に言及しております。
 今般公表された戦略では、ILCについて、これまでの戦略よりも積極的な姿勢が示されており、これは、先ほどの3カ国を含む23カ国の政府代表と研究者で構成されるCERN―欧州合同原子核研究機関の理事会で決定されたものであります。
 これまでのアメリカからの支持の表明に続き、ヨーロッパからも協働して取り組みたいとの意向が表明されたことで、国際協力に関する具体的な協議の進展ができるものと考えております。
〇15番(佐々木朋和君) 本年2月、ICFA(国際将来加速器委員会)は、ILC研究所の設立などに向けた準備段階への移行を促進するための国際推進チームの設立を提言しました。6月26日、それを受けてKEK(高エネルギー加速器研究機構)は、ILC誘致実現に向けた想定スケジュールを発表。第1段階の国際推進チームの活動期間を1年から1.5年、第2段階の世界の研究所間での準備研究所設立、活動期間を4年。関係国の政府間合意が得られれば5年後にも研究所の組織立ち上げと建設着手を見込むとしました。行程が明確化され、県民としても目標が示されたことは喜ばしいことです。
 一方、KEKの岡田安弘理事は、各国が新型コロナウイルス感染症の影響で財政出動を迫られている現状に関して、15年、20年というスケールで世界の情勢を見ながら段階的に上げていくとも答えています。
 県は、公表された想定スケジュールについて、どのように受けとめているのか伺います。
〇ILC推進局長(高橋勝重君) 今般、KEK―高エネルギー加速器研究機構は、ILCの建設準備段階に移行するためにICFA―国際将来加速器委員会から提案があった国際推進チームの設置について、ことし8月に承認予定であることを公表しております。
 このチームの具体的な活動内容等とあわせて、その先の建設準備、建設段階における国際協力体制、活動期間も示しており、現時点の研究者の想定ではありますが、この夏を起点とし運用開始に至る具体的な全体スケジュールとともに、ILCの実現に向けた国際協力による推進体制強化の道筋が明らかにされたものと受けとめております。
 県といたしましては、国際推進チームの中心となるKEKや全国的な推進組織等とも十分に情報交換しながら、関係自治体、大学等と連携し、建設候補地としての準備を進めていくとともに、早期の意思表明を政府に要望していくなど、ILCの実現に向けて取り組んでまいります。
〇15番(佐々木朋和君) 新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延により、人々の往来は制限され、被害各国には大きな財政的な負担となっています。また、ウィズコロナ時代の環境変化によりテレワーク社会が到来すれば、ILC研究施設が立地、集積しても、想定していた地域経済への波及効果も縮小傾向になるのではないかと危惧されていますが、一方で、このような時代だからこそ、日本発展の起爆剤として、日本での国際研究施設の誘致は意義深いものがあると思っております。
 知事は、ウィズコロナ時代のILC研究施設のあり方の変化をどのように予想し、また、誘致実現の意義について、国や県民等にどのように説明していくのか伺います。
〇知事(達増拓也君) 国際プロジェクトであるILCには、科学技術の進展を初め、多文化共生社会の実現や次世代の人材育成、イノベーションの創出など多くの意義があります。
 ILCのモデルとなる国際研究所CERNは、第二次世界大戦後、疲弊したヨーロッパを科学の力で復興させようと、ヨーロッパの国々が共同で設立したものであります。現在、4、000人以上の職員と世界から1万人以上の研究者などが集う最先端の研究拠点であり、素粒子物理学における多くのすぐれた研究成果に加えて、世界各地の研究者がデータなどを相互に活用できるよう、ワールド・ワイド・ウエブを開発するなど、世界の科学や社会の進展に大きく貢献しています。
 新型コロナウイルス感染症により人の往来に制約はありますが、情報通信技術によりプロジェクトの国際協力には問題なく、5月半ばからは現場での活動を段階的に拡大していると聞いています。
 この感染症の世界的な流行は、人々の活動が国境を越えグローバルにつながっている現実と、治療法やワクチンの開発など世界規模の課題解決には、科学技術の英知の結集が不可欠であることを改めて示しています。
 ILCには、科学技術創造立国・日本、新しい東北のシンボルとして、世界とつながる科学の力で、社会の構造的変化やその進展にも応じて人類に大きく貢献する可能性があります。東北、岩手の地で、世界の人々とともに人類共通の課題解決に挑戦する契機ともなるものであり、こうしたILCの意義、ポテンシャルを広く訴えながら、ILC実現の機運を高めてまいります。
〇15番(佐々木朋和君) 大変すばらしい意義づけがあったと思います。しっかりと我々議員も、その思いを共有しながら推進に向け取り組んでまいりたいと思います。
 最後に、県立高校の統合について伺いたいと思います。
 水沢工業高校、一関工業高校、千厩高校の各校専門学科の統合が発表されました。一関工業高校は学科の再編をしたばかりということもあり、地元では驚きをもって受けとめられています。
 さきの2月定例会予算特別委員会の総括質疑において、高卒者の就職者全体に占める県内製造業への就職者割合は、2014年3月の卒業者の実数で709人、割合で19.7%。5年後、2019年3月の卒業者の実数で968人、占める割合が29.7%と県内製造業への就業者数が人数、割合とも増加しているとの答弁があったところですが、県として集積を推し進めている製造業に人材を輩出している専門高校等を1校に集約するその目的と統合高校のコンセプトをお示しください。
〇教育長(佐藤博君) 2月に公表した新たな県立高等学校再編計画後期計画案では、地域や地域産業を担う人づくりを基本的な考え方の一つとし、本県の産業振興の動向を踏まえ、地域の産業教育の拠点となる専門高校等の整備のための統合を行うこととしています。
 県南地域の工業高校の設置は、盛岡工業高校、黒沢尻工業高校と並ぶ工業教育の基幹となる学校の整備を目的としているものです。
 新設校においては、現在、統合対象校にある学びに加え、時代に対応したITやIoT、AI等に関する新たな学びの創設も検討しながら、本県に集積するものづくり産業等のニーズに幅広く対応した工業教育の充実を図ることにより、地域の産業を支える人材の育成を進めていきたいと考えています。
〇15番(佐々木朋和君) 誘致企業への人材輩出等は重要ですが、多くの普通高校からの入社も確認できます。一方、地元企業の人手不足は深刻で、地域から専門高校がなくなった場合の地元企業への影響を心配する声が多く聞かれます。産業の集積には誘致企業が中心になることはそのとおりですが、それを支え、部品を供給する地元企業が立ち行かなくなっては元も子もありません。
 製造業への人材輩出には、統合高校に施設設備を集約し最新のものづくり環境に対応できるようにすることも理解できますが、他県においては、地方創生交付金を活用し、専門高校と地域が連携して、大規模な長期インターンシップを展開している事例もあります。
 教育環境の充実よりも、地域に近く実践的な学習ができる専門高校も魅力的だと感じますが、県の今後の製造業への人材輩出、育成についての考え方を伺います。
〇教育長(佐藤博君) ものづくり人材の育成についてでありますが、専門高校は、地域産業を担う人材育成において大きな役割を果たしており、各地域に多様な専門分野の学びを確保することは重要なことと認識しております。
 後期計画の策定に向けた地域検討会議等においても、地域産業の担い手育成に向けた専門高校への期待が大きく、こうした意見や産業振興の動向等も踏まえ、宮古、二戸地域においては、地域の学びをできる限り維持しつつ産業教育の拠点となる高校を、県南地域においては大規模な工業高校をそれぞれ整備することとしたものです。
 今後も、各専門高校において、地域の産業界や関係機関と連携しながら、生徒、保護者が県内企業を知り、理解を深める取り組みや、インターンシップの推進等を図ることにより、製造業を含めた地域産業を担う人材の育成に努めてまいりたいと考えております。
〇15番(佐々木朋和君) 以上で終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〇議長(関根敏伸君) 以上をもって佐々木朋和君の一般質問を終わります。
〇議長(関根敏伸君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後5時54分 散 会

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