令和2年6月定例会 第8回岩手県議会定例会会議録

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〇35番(佐々木茂光君) 自由民主党の佐々木茂光でございます。令和2年6月定例会の一般質問を行います。
 登壇の機会を与えていただきました先輩、同僚議員の皆様に心から感謝を申し上げます。
 東日本大震災津波から時は流れ、丸9年が経過し、復興は進めどいまだ途上にある本県に、聖書の黙示録を思わせるような災いが降ってきたと知事は解釈をされております。本県のみならず世界中に降り注いでいる、まさに本県にとっては二重三重の苦であります。
 それでは、通告に従い順次質問をしますので、知事並びに関係部局長の答弁をお願いするものであります。
 初めに、東日本大震災津波からの復興についてお伺いいたします。
 ことし6月5日国会で復興庁設置法等の一部を改正する法律が成立し、復興庁の設置期限が10年間延長されたところであります。知事は、その際、復興庁は東日本大震災津波からの復興を一緒に進めてきたパートナーであり、体制の存続が確認されてよかった。これからも協力関係のもとで復興をさらに進めていきたいと語っておりましたが、引き続き、国、県、市町村が連携しながら一体となって被災地の復興を完遂してもらいたいと思います。
 応急仮設住宅等の入居者数も、ピーク時には4万3、738人であったものが、ことしの5月31日現在で356人まで減少したほか、災害公営住宅の整備も内陸の1カ所を残すのみとなり、暮らしの再建に向けた取り組みは着実に進んでおります。
 一方、被災者の心のケアなど、一人一人の心の復興が求められるとともに、地域コミュニティーの再生、さらに、なりわいが再生して初めて復興したと言えると思っておりますが、被災地では、津波により壊滅的な被害を受けたところから自力再建を目指し、やっと軌道に乗りかけた方々、また、途中の方々も多くおられます。そこへの今回の新型コロナウイルス感染症による社会経済への影響は、はかり知れません。
 知事は、コロナ禍の中で復興完遂をどう捉えているのか御所見を伺います。
 次に、移転元地の利活用について伺います。
 平成23年の東日本大震災津波の発生から、集中復興期間、復興・創生期間と、震災からの復興を目指した取り組みを、国、県、地元市町村が連携しながら10年続けてまいりました。令和2年岩手県の東日本大震災津波からの復興に関する意識調査において、進んでいる、やや進んでいると実感していると回答した方々が沿岸部で50%を超える結果となったように、復興が進んでいるものと感じております。
 しかし、ふと市内を見渡すと、復興まちづくりという面では、活用ニーズがないためか使われていない移転元地と思われる空き地がまだまだ点在しているように見受けられます。
 そこで、復興・創生期間後も使途の見込みが決まっていない移転元地の利活用に向けて、県はどのように対処し、復興につなげていこうとしているのかお伺いいたします。
 ことしの4月21日に有識者による内閣府の日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震モデル検討会から、日本海溝、千島海溝沿いの最大クラスの断層モデルの検討結果や津波高、浸水域等の推計が公表されました。最大規模はマグニチュード9クラスとなり、本県では南部の一部で震度6強が想定されています。東日本の太平洋沿岸の極めて広い範囲で大きな津波が想定され、本県には10メートルから20メートル以上の津波が到達すると見込まれており、東日本大震災津波により大きな被害を受けた我々県民は、この発表により大きな衝撃を受けたところであります。
 県はこの発表をどのように捉えたのか。また、県では有識者による小委員会を設置し津波浸水想定などを検討していくとのことですが、県民一人一人の命を守るためには、一刻も早く津波浸水想定を設定し、公表すべきと考えますが、県はどのように取り組まれているのかお伺いいたします。
 次に、漁場の海中瓦れきの撤去についてでありますが、東日本大震災津波で流出した家屋や漁船、養殖施設、漁具などが瓦れきと化して漁港や漁場へ大量に浮遊、堆積し、漁業の早期再開に支障を来しました。県や市町村には、発災以来、壊滅的な被害を受けた水産業の復旧、復興に向け、漁港や漁場に浮遊、堆積した瓦れきの撤去を優先的に取り組んでいただき、漁業の早期再開へ大きく前進することができました。
 一方、これまでに例のない大量の瓦れきが海中に流入したことから、台風や低気圧等の波浪により、周辺海域、海底から瓦れきが漁場に再流入することも時折あるなど、漁業活動に支障を来している例もあると聞いております。
 つきましては、漁場における海洋、海中瓦れきの撤去についてのこれまでの県の取り組み状況と、今後の撤去の予定等についてお伺いいたします。
 次に、第1次産業の振興について伺います。
 初めに、林業の振興について伺います。
 本県は、県土の8割が森林を占める森林県で、戦後造林された人工林を中心に本格的な利用期を迎えております。震災後の応急仮設住宅や災害公営住宅などの復興に伴う住宅需要の増加に対応して、県内の木材需要は伸びており、製材工場等での素材需要量に対する県産木材の比率は80%前後で推移するなど、県産木材の利用はある程度進んだものと認識しておりますが、今後においては、復興需要に陰りが生じてくるものと思われます。
 さきの2月定例会において、岩手県県産木材等利用促進基本計画が議決されたところですが、県では今後、県産木材の利用促進や販路拡大に向けてどのように取り組んでいくのかお伺いいたします。
 次に、水産業の振興について伺います。
 本県の水産業を取り巻く環境は、近年厳しさを増しており、令和元年度の主要な水産物の生産量を見た場合、サケについては平成30年度比22%の約2、300トン、サンマについても平成30年度比33%の約7、800トンと、大幅に減少しております。本県全魚市場の水揚げ金額からも平成30年度比で約50億円少ない約150億円となっております。
 東日本大震災津波により被災した漁船や養殖施設などの漁業基盤の整備はおおむね完了しているものの、漁業就業者の減少や高齢化による生産体制の脆弱化が進む中、この記録的な不漁を踏まえ、どういう方向性で県内の水産業の発展を図っていくのかお伺いいたします。
 本県の秋サケは沿岸地域の経済を支える重要な水産資源ですが、昨年度は、ふ化放流事業が本格化した昭和50年代以降、最低の大不漁となり、漁業者はもとより流通、加工業者などの多くの関係者にとって非常に厳しい経営を強いられる状況となりました。
 また、近年の海洋環境の変動により、先ほど申し上げたとおり、秋サケだけでなく、サンマやイカなどの主要魚種の不漁が続き、本県漁業は危機的状況にあります。漁業生産量を早期に回復させるため、積極的に施策を打つ必要があります。
 世界の漁業生産は、今や半分以上が養殖によるものと言われており、特にサケ、マス類はヨーロッパや南米を中心に約250万トンも生産されており、国内では宮城県の銀ザケを筆頭に、いわゆるご当地サーモンが約100カ所で養殖されております。本県では、昨年度から、久慈、宮古、大槌の3地域でサケ、マス類の海面養殖試験が実施され、漁業者、流通、加工業者が高い期待を寄せているところであります。
 つきましては、本県のサケ、マス類の海面養殖試験の状況と県の支援についてお伺いいたします。
 近年の海洋環境の変動により本県沿岸の海水温が高い傾向にあることや、ウニの食害による藻場の消失が進んでおります。藻場の消失や磯焼け解消は、原因追及を含め早々に対策を講じていかなければ磯地は守れないのであります。
 つきましては、藻場の再生に向け、県はどのように取り組んでいくのかお伺いいたします。
 次に、漁港の有効活用についてでありますが、水産業の基盤である漁港は、魚市場や荷さばき施設、水産加工工場等を立地しており、水産業の基盤としての機能を有するとともに、地域活動などにも利用されております。震災以降、漁業者の離職、規模縮小等により空き地が散見されております。
 これまでも漁港の利活用について伺ってきましたが、漁船の安全係留や水産物の効率的な陸揚げ等、その本来的機能に加え、産直施設や交流施設などの立地を促進し、交流人口の増加を図るなど、まちづくりの核として、漁港そのものを資源として活用していくことが必要ではないかと考えます。
 浜のにぎわい創出に資するよう、水産振興の一つの方策としての漁港の有効活用について、今後どのような取り組みを行っていくのかお伺いいたします。
 次に、新型コロナウイルス感染症対策について伺います。
 新型コロナウイルス感染症の感染者が国内で確認されたときから、全国で感染症対策として、感染リスクを低減するための行動がとられてまいりました。
 県でも、世界的に聖書の黙示録を思わせるようなで始まる基本的対処方針を策定し、現在まで感染者ゼロの状態が続いております。ウイルスの感染拡大には人口密度と関連があるなどの報告例もありますが、県や県民の取り組みによって、なぜ新型コロナウイルス感染症を抑えることができたのか、県が、これまでの対策などを含めあらゆる検証を行い、次のステージに向かって積極的にアピールしていくべきと考えますが、知事は現状をどう捉えているのか、御所見を伺います。
 世界的な新型コロナウイルス感染症の流行により、日常生活も大きく変化しようとしております。新型コロナウイルス感染症の感染防止対策として、在宅勤務やテレワークの導入が進み、新しい働き方のスタイルとして、あらゆるところでオンラインの活用が進んできております。そういう中で、オンラインによる業務ができるのであれば、地方に住むという方々もいると聞いております。
   〔副議長退席、議長着席〕
 少子高齢化の進展、労働力人口の減少、若年者の県外流出が課題となっている中で、そもそも新型コロナウイルス感染症の感染確認者がいない岩手県は、そのこと自体が強みであり、知事が先頭に立って他県からの移住、定住者に向けて積極的にアピールしていくべきと考えますが、御所見を伺います。
 医療圏ごとの発熱外来等の検査体制が整ってきており、一関市、宮古市、奥州市のほか、他の圏域も体制整備に動いていると聞いております。緊急事態宣言が解除され、6月19日からは、全ての都道府県において県境をまたぐ移動の自粛が解除されたことから、徐々に県外から来訪者がふえてくると思われます。新型コロナウイルス感染症は小康状態になってきているようではありますが、完全な終息では必ずしもないのでありますから、次に来る第2波に向けた防止対策を早々に全県に講じていく必要があると考えますが、県の体制をお伺いいたします。
 全国各地で毎年のように異常気象による災害が多発しております。気象台から、6月14日には岩手県も梅雨入りしたと見られるとの発表があり、季節的に大雨などに警戒していかなければなりません。それら避難においてもあらゆる防止対策を講じた対応が求められるわけであります。その避難所は、一義的には避難所開設に向けた準備は市町村が手当てしていくものとは思いますが、市町村によっては既に動き出しているところもある中、県民全体の安全の確保という面から、県としての支援はどのように考えているのかお伺いいたします。
 次に、地域包括ケアの推進について伺います。
 団塊の世代が75歳以上となる令和7年には県民の3人に1人が高齢者になると見込まれています。年齢を重ね、仮に介護や支援が必要な状態となっても、可能な限り住みなれた土地で、その地域で一緒に暮らしてきた人たちとともに安心して暮らせることがとても大切であります。
 特に医療資源の乏しい地域においては、包括的な医療が求められております。県では、これまでも地域包括ケアシステムの構築を進め、取り組んでまいりました。地域包括ケアシステム全体の現状をどのように認識し、今後、どのように取り組んでいくのかお伺いいたします。
 次に、ILCの誘致について伺います。
 平成31年3月7日の政府によるILCへの関心表明、ことし1月の日本学術会議のマスタープランの公表、2月の国際将来加速器委員会の日本への建設期待の表明など、国内外でILC実現に向けた動きが活発化していたところであります。6月19日には、欧州素粒子物理戦略の中で、ILCの実現は欧州素粒子物理戦略に適合するものであり、日本がタイムリーに進めば欧州はILCに協力すると表明されました。
 これを受け知事は、ILCの実現に向けて極めて意義深いものであると評されております。ILCの誘致は国際研究拠点の実現による波及効果はもちろんのこと、東日本大震災津波より大きな被害を受けた被災地の創造的な復興にも資するものであることから、ILCの誘致の実現には、誘致に向けた取り組みを常に切らさぬよう継続することが大事であるとともに、知事の本気度が伝わるよう、知事が率先して世の中に見えるようにしていく取り組みが今こそ必要と考えますが、知事の御所見をお伺いいたします。
 次に、交通ネットワークの整備について伺います。
 初めに、公共事業の見通しについて伺います。
 震災からの復興に向け、沿岸地域の復興道路や防潮堤を初めとする海岸保全施設の復旧、復興工事などに全力を挙げて取り組んでいただいているところであります。一方、復興事業の進捗に伴い、沿岸被災地の地域経済を支えてきた公共事業の事業量が確実に減少しており、今後、さらに縮小していくことが見込まれるなど、建設業にとって厳しい局面に直面することが予測されております。
 自然災害が頻発している昨今の状況を踏まえ、さらなる公共事業予算の確保が必要と考えますが、今後の見通しについてお伺いいたします。
 次に、内陸部と沿岸部を結ぶ道路ネットワークの整備について伺います。
 復興・創生期間の最終年度である今年度末までに、三陸沿岸道路を含む県内359キロメートルの復興道路が全線開通いたします。復興道路が整備されることにより、県内はもとより県外からの移動に要する所要時間の短縮など利便性が大幅に向上することから、世界遺産登録を目指している一戸町の御所野遺跡や既に登録となっている橋野鉄鉱山、平泉などの岩手が有しているさまざまな資源の有効活用が期待されているところであります。
 私は、これら世界遺産の価値を知ってもらうとともに、東日本大震災津波からの教訓の伝承のため、高田松原津波復興祈念公園や東日本大震災津波伝承館もあわせて周遊できるルート整備が必要と考えております。
 広大な県土を持つ岩手県を効率よく北から南まで回るためにも、東北横断自動車道釜石秋田線の宮守インターチェンジから気仙沿岸に至る道路の整備が必要と考えますが、御所見をお伺いいたします。
 次に、国道343号新笹ノ田トンネルの整備について伺います。
 国道343号は、平成31年4月に国土交通省から重要物流道路制度の代替補完路の指定を受け、平常時、災害時を問わず安定した輸送が求められる路線となり、改めて、その路線の重要性が認識されたところであります。今さら言うまでもなく、同路線は産業振興や交流人口の拡大に不可欠な路線であるとともに、沿岸の気仙地区と内陸の県南部を結ぶその性質に鑑みれば、ILCの実現のためにも一日も早い基幹的な道路としての機能発現が待たれるところであります。
 去る6月23日の知事記者会見において、欧州原子核研究機構がILCの実現は欧州素粒子物理戦略に適合すると発表したことについて、ILCの実現に向けて極めて意義深いと評価するとともに、国内外の枠組みが進展することを期待すると話しておりました。
 ついては、その早期整備に向けた国の決断を促す観点からも、抜本的な改良整備として新笹ノ田トンネルを整備することについて、御所見を伺うものであります。
 次に、県道釜石住田線について伺います。
 昨年3月の東北横断自動車道釜石秋田線の全線開通から1年以上が経過しました。沿岸部と内陸部が初めて自動車専用道路でつながり、三陸自動車道と結ばれたことで、物流や観光を中心に地域経済の活性化に大いに寄与しているところであります。
 私は、この釜石自動車道から物や人の流れを気仙地域に呼び込み、地域の活性化につなげるためには、滝観洞インターチェンジから国道340号に至る県道釜石住田線の整備が重要であると以前から申し上げているところであります。
 県道釜石住田線は、台風などの大雨があれば、川の氾濫により冠水や沢からの土砂流出により道路が寸断され、冬場は、のり面からの湧水による路面の凍結、一刻を争う救急救命、消防活動等に支障を来し、たびたび集落が孤立するなど、課題山積の路線であります。
 これまで、未改良区間については、道路の現況を把握するためカーブや幅員等の調査を行っているところと伺っておりましたが、国道340号から滝観洞インターチェンジまでの未改良区間の今後の整備の予定についてお伺いいたします。
 最後に、教育政策について伺います。
 私は、これまで子供たちに接するたびに、将来を担う子供たちが心豊かに学び、未来を切り開いていくための生きる力を身につけること、我々がこうした環境を整えてあげることが重要であると感じてきたところであります。
 新型コロナウイルス感染症の影響もあり、国のGIGAスクール構想を活用した学校教育におけるICT化が県内でも急速に進んでいくことになると思います。整備されたICT機器等を教員がどのように授業で活用し、児童生徒の学びにつなげていくかが、これからますます重要になってくると考えております。ICTを活用した新たな学びによって、子供たちの学力の向上を今後どのように図っていくのかお伺いいたします。
 また、子供たちを取り巻く環境として、少子高齢化により生徒数が減少し、県内の学校規模が今後さらに縮小することが懸念されておりますが、県では、地域検討会議や県民との意見交換を経て、新たな県立高等学校再編計画後期計画を今年度中に策定することとしているところですが、その後期計画の基本的な考え方として、生徒の希望する進路の実現と、地域や地域産業を担う人づくりを挙げているところであります。
 岩手県教育振興計画にも、社会を創造する人づくりを基本目標としており、それには、高校が市町村、小中学校、地元企業、地域住民等と一体となっていくことが必要であります。
 県では、今年度、高校の魅力化促進事業として、地域とともに小規模校の活性化に取り組むこととしておりますが、魅力ある学校づくりが高校の存続にどのようにかかわりがあるのか、御所見を伺います。
 以上で質問を終わります。答弁次第では再質問させていただきます。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
〇議長(関根敏伸君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 佐々木茂光議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、東日本大震災津波からの復興についてでありますが、復興道路の区間開通が順次進むほか、内陸を含めた災害公営住宅も完了する見込みであるなど復興が大きく進んでいる一方で、心のケアやコミュニティーの形成支援、まちづくり後の事業者支援など、引き続き中長期的に取り組むべき課題もあります。
 東日本大震災津波や相次ぐ台風災害からの復興途上にある中で、今般の新型コロナウイルス感染症の蔓延により、例えば資材の輸入が滞ること等により被災者の住宅再建におくれが生じていること、交流事業が実施できず、コミュニティー形成支援の取り組みに支障が生じていること、復興支援活動を行う特定非営利活動法人等において、事業中止により運営費が逼迫していること、企業債務を抱えている事業者に大幅な減収が生じていることなど、大きな影響が生じています。そのため、復興大臣との会談、意見交換や、令和3年度政府予算提言、要望等において、新型コロナウイルス感染症の影響を含め被災地の実情を踏まえた特段の支援等について要望したところであります。
 新型コロナウイルス感染症対策を進めるに当たっては、一人一人の生活、学び、仕事のあり方を改めて見詰め直し、必要な感染症対策を講じながら社会経済活動を支援することが重要であり、その対策をしっかり進めることは、東日本大震災津波からの復興につながっていくものと考えており、被災地の復興を一日も早くなし遂げられるよう全力で取り組んでまいります。
 次に、感染症対策の検証についてでありますが、新型コロナウイルス感染症については、人口密度や気象条件が感染の拡大、収束に影響するとの報告があります。そもそも日本全体として、欧州や米州と比べると感染者数が著しく少ないという実態がありますが、岩手県においては、人口密度が低いことに加え、県民及び岩手県にかかわる全ての人が、密閉、密集、密接の三つの密を避け、マスクの着用や丁寧な手洗いを励行するなど、基本的な感染対策を行っていただいたこと、さらに、外出自粛要請等を踏まえ、慎重かつ冷静に行動していただいたこと等が複合的に関連し、感染未確認という結果につながっているものと認識しております。
 新型コロナウイルス感染症は世界的に感染拡大が続いており、また、病態として十分解明されていない部分も多いことから、全国知事会に設置された新型コロナウイルス対策検証・戦略ワーキングチームに参加し、他県と情報共有しながら検証を進めてまいります。
 次に、移住、定住の促進に向けた県の取り組みについてでありますが、内閣府が令和2年6月21日に発表した新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査結果によりますと、東京23区に居住する20代の方の35.4%が地方移住への関心が高くなった、やや高くなったと回答するなど、地方移住への関心がこれまで以上に高まっていると認識しております。
 県では、昨年度から、いわて県民計画(2019~2028)のもとで移住、定住に力を入れて取り組んでおり、本年3月に策定した第2期岩手県ふるさと振興総合戦略においても、ふるさと移住・定住促進戦略を掲げ、一層強力に取り組みを進めているところであります。
 新型コロナウイルス感染症の拡大により、新しい働き方や新しい生活のあり方が強く求められていることを踏まえ、移住、定住の取り組みをさらに強化すべく、既存の取り組みに加え、オンラインを活用した移住相談会や、テレワーク等新しい働き方を実践する県内企業の紹介などを実施することとしております。今、改めて、岩手県のよさや、岩手県が安全に安心して暮らし働ける環境にあることを広く訴えてまいります。
 次に、ILCの実現についてでありますが、県では、1990年代からリニアコライダーに関する情報収集や研究者とのネットワークの構築等を進め、これまで建設候補地として、地質等の基礎調査や外国人研究者等の受け入れ環境の整備、県内外での普及啓発活動などに取り組んでまいりました。この間、超党派国会議員を初め、東北、全国の産学官などの多くの推進団体が発足し、県も連携し、政府要望を初めとするさまざまな活動を展開し、また、積極的な交流、情報発信により海外との関係も強化されてきています。
 今月実施した令和3年度政府予算に係る提言、要望では、インターネットのウエブ面会システムを取り入れ、関係省庁の大臣、副大臣、政務官に面会し、ILC実現に向けた政府の早期意思表明などを要望したところであり、北村誠吾内閣府地方創生、規制改革担当大臣を初め面会した皆さんからは、ILCに理解ある発言をいただいております。また、その様子は可能な限り報道機関に公開、取材対応し、多くの方々にILC実現に向けた県の取り組みを知っていただくことができたと考えております。
 こうした県や多くの関係者の取り組みが昨年3月の日本政府による初めての関心表明やその後の国内外での動き、さらに、今般のヨーロッパからのILC計画への協力姿勢の表明につながったものと考えており、今後も国内外の動向に臨機に対応し、長年の取り組み実績と関係者のつながりを生かしながら、政府へのさらなる働きかけや国民理解の増進など、ILCの実現に向けて取り組んでまいります。
 その他のお尋ねにつきましては関係部局長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔復興局長大槻英毅君登壇〕
〇復興局長(大槻英毅君) 防災集団移転促進事業による移転元地の利活用についてでありますが、本年5月末現在で、市町村による買い取り対象の移転元地約324ヘクタールのうち約60%は、トマトの大規模栽培施設などの産業用地や多目的広場として具体の活用策が決まっており、約36%が利活用計画を検討中、残る約4%が事業予定なしとなっているところであります。
 県では、市町村に対しまして、移転元地の活用事例を情報提供するほか、国と合同で市町村を訪問し、復興交付金の活用について助言を行うなど、移転元地の利活用の実現に努めてきたところであります。
 さきの令和3年度政府予算提言、要望におきましては、復興・創生期間後も見込まれる移転元地の集約や整地に対しまして、財政支援措置を講ずるよう要望を行ったところであり、引き続き市町村に対しましては、地方創生推進交付金を活用してイチゴ栽培施設を整備した例などもありますことから、こうした事例を紹介しながら事業化に向けた助言を行い、利活用の取り組みを支援してまいります。
   〔県土整備部長中平善伸君登壇〕
〇県土整備部長(中平善伸君) まず、津波浸水想定についてでありますが、現在整備を進めている防潮堤等では防ぎ切れない最大クラスの津波に対しては、ソフトとハードを総動員した多重防御の考え方により、住民の避難を軸とした取り組みを進めていくことが重要と考えております。
 この最大クラスの津波に関し、国から示された日本海溝、千島海溝沿いの巨大地震モデルについては、県が行う津波防災地域づくりに関する法律に基づく津波浸水想定に当たり、非常に高度で新たな知見であると認識しており、この国のモデルを活用し、津波浸水想定の検討を速やかに進める必要があると捉えております。
 この津波浸水想定は、市町村が避難対策の見直しをする上で重要な情報となることから、東日本大震災津波も含めた最大クラスの津波を対象として、学識者から成る技術的、専門的な意見を伺いながら検討を進めるとともに、その内容については市町村とも協議をしながら、できるだけ早く公表できるよう取り組んでまいります。
 次に、公共事業の見通しについてでありますが、県民の安全、安心な暮らしを守り、地域産業や経済の振興に資する社会資本の整備や適切な維持管理などの観点から、公共事業については、安定的に必要な予算を確保していくことが重要と考えております。
 今後の公共事業費は、復興事業の進捗に伴い減少していくと見込んでおりますが、昨年3月に策定したいわて建設業振興中期プラン2019において、建設投資額の確保を施策に掲げ、令和2年度当初予算の通常分の公共事業費については、防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策に係る予算を確保しまして、前年度比約7.6%の増額としたところであります。この防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策は、今年度で終了しますが、近年の水害等の頻発化、激甚化に対応する必要がありますので、令和3年度政府予算要望において、国に対し国土強靱化の取り組みの継続と予算の確保について働きかけをしたところであり、公共事業予算の安定的、持続的な確保に努めてまいります。
 次に、内陸部と沿岸部を結ぶ道路ネットワークの整備についてですが、宮守インターチェンジから気仙地域に至る主要なルートとしては、大船渡市へ向かう国道107号と住田町世田米で分岐し陸前高田市に向かう国道340号があり、これらは気仙地域の安全、安心な生活や周遊観光などを支える重要な路線と認識しております。
 このうち国道107号については、道路構造や交通の状況等の調査を進めまして、走行上の課題の多い区間として白石峠区間を選定したところであり、交通量の推移や公共事業予算の動向等を見きわめながら、どのような整備が可能か検討してまいります。
 また、国道340号については、復興事業として、住田町の山谷工区を供用し冠水区間を解消したほか、陸前高田市の(仮称)今泉大橋工区は令和2年度内の供用を目指して整備を進めまして、道路ネットワークの強化を図ってまいります。
 次に、国道343号新笹ノ田トンネルについてですが、国道343号は気仙地域と内陸部を結び、沿岸地域の復興や県民の安全、安心、観光振興等を支える路線であり、ILCを推進する上でも重要な位置づけを持つ路線と認識しているところであります。笹ノ田峠に新たなトンネルを整備することにつきましては、多額の事業費が必要と見込まれていることから、安定的な事業予算の確保が課題になるとともに、事業効果などを確認することが必要と考えているところでございます。
 次に、県道釜石住田線の整備についてであります。
 国道340号から滝観洞インターチェンジまでの区間については、滝観洞へのアクセス路であるとともに、沿線地域の日常生活を支える大切な路線であると認識しております。このうち約6キロメートルの未改良区間については、道路現況調査の結果や復興道路開通後の交通の流れの変化、公共事業予算の動向等を踏まえまして、どのような整備が可能か検討をしてまいります。
 また、この区間には落石対策など防災対策が必要な箇所がありますので、現在、下寒倉地区と中埣地区で防災事業を計画的に進めているところでありますので、引き続き、日常生活を支える安全な道づくりを推進してまいります。
   〔農林水産部長佐藤隆浩君登壇〕
〇農林水産部長(佐藤隆浩君) まず、漁場の海中瓦れきの撤去についてでありますが、県では、秋サケ等の定置網漁業やワカメ養殖の早期再開を図るため、発災直後から定置網や養殖施設の設置などの漁業活動に支障となっていた瓦れきの撤去を進め、平成23年度は沿岸12市町村の定置漁場など118カ所において約20万立方メートルを撤去したところです。
 平成24年度以降は、潮の流れ等により海中に堆積していた瓦れきが漁場に再流入し、漁業活動の支障となっている場合に、撤去の時期や範囲などを関係漁協と協議しながら、国庫補助事業を活用し撤去を進めてきました。
 今年度は、広田湾内の養殖漁場において、船舶や車両などの瓦れきを撤去することとしており、地元漁協と緊密に連携しながら、早期に完了できるよう取り組んでまいります。
 次に、県産木材の利用促進と販路拡大についてでありますが、県ではこれまで、関係団体と連携しながら、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の選手村施設への県産木材製品の提供や、名古屋城天守閣復元工事への高品質なアカマツ材の供給など、県産木材のさらなる評価向上に取り組むとともに、新たな付加価値の創出を図るため、県産アカマツCLT製造技術等の研究開発を進めてきたところであります。
 また、関係団体においては、県産木材のさらなる販路拡大を図るため、台湾や中国への輸出に向けた取り組みを進めており、県ではこうした取り組みを支援しております。
 今後とも、県が整備する公共施設等について率先して木材利用を進めるほか、県内外の工務店等へ県産木材製品のパンフレットを配付するなど、全国一の生産量を誇るアカマツや豊富で多様な広葉樹など、魅力あふれる県産木材の特徴を発信しながら、国内外への販路拡大に向けて積極的に取り組んでまいります。
 次に、不漁対策についてでありますが、県では、主要魚種の資源回復、増加している資源の有効利用、新たな漁業、養殖業の導入の三つを大きな柱として取り組みを進めることとしております。
 まず、一つ目の主要魚種の資源回復では、秋サケ資源の回復に向け、高い水温でも回帰する北上川水系のサケの遺伝子情報等を活用した種苗の開発を進めるとともに、国の資源管理と連動したサンマ、スルメイカ等の資源回復に取り組んでいます。
 二つ目の増加している資源の有効利用では、昨年からマイワシを対象とした小型漁船の試験操業を実施しており、2年目となることしは、効率的な操業方法や収益性等について確認することとしています。
 三つ目の新たな漁業、養殖業の導入では、市場性の高いサクラマス資源の造成や早期収穫が可能なワカメの大型種苗の普及を進めるほか、サケ、マス類の海面養殖を推進することとしています。
 今後とも、こうした取り組みを積極的に推進し、次代を担う若者が希望を持って就業し、活躍できる収益力の高い水産業の実現に向けて全力を挙げて取り組んでまいります。
 次に、サケ、マス類の海面養殖の状況についてでありますが、養殖試験は昨年から、久慈、宮古、大槌の3地区において新たに取り組まれているもので、これまで順調に成育しており、久慈は昨年7月、宮古はことし5月、大槌は6月に、それぞれ地元の魚市場に初水揚げされ、鮮度や肉質のよさから流通、加工業者の評価は高く、高値で取引されているところであります。
 現在、県では、効率性の高いサケ、マス類の海面養殖の実現を目指し、今年度当初予算で措置した新しい増養殖モデル創出事業により、ICTを活用した餌の自動投与システムの実証試験や成長の早い種苗の開発などを進めているところです。今後は、先行する3地区に加え、他の地域への普及、拡大を進めることとしており、本県の新しいつくり育てる漁業を積極的に推進してまいります。
 次に、磯焼け対策についてでありますが、近年の磯焼けの発生は、岩手県水産技術センターの分析によれば、冬場の海水温が例年よりも高目に推移したため、ウニ等が活発に活動し、この時期に発芽したコンブ等が成長前に食害されたことが要因の一つとされています。
 藻場の再生については、コンブの養殖技術を応用した海中林と呼ばれるコンブの森づくりや、漁場からのウニ等の間引きが有効で、県では、磯焼け状態の漁場におけるコンブの胞子の放流や過剰なウニ等の駆除など、漁協と漁業者による藻場の再生活動を支援しております。
 また、藻場の再生に向けた新たな取り組みとして、岩手県水産技術センターが開発したワカメなど大型人工種苗を活用した海中林の造成試験を行うこととしており、こうした取り組みを積極的に推進することにより漁場の生産力を高め、漁業者の収益向上につなげてまいります。
 次に、漁港の有効活用についてでありますが、県ではこれまで、プレジャーボートの係留や観光船発着所等として漁港の利用を促進しているほか、漁港内の静穏水域を活用したアワビ、ウニ増殖場の整備に取り組んでいるところであります。また、今年度から新たに、県内の3漁港において、磯焼け対策として、駆除したウニを用いて増養殖試験を行うとともに、当該試験により身入りをふやしたウニを漁獲体験等のイベントで活用する方策を検討するなど、漁村の活性化に資する調査に取り組むこととしています。
 今後とも、漁協等関係団体や市町村と連携を図りながら、漁港を核とした漁村のにぎわい創出に向けて、地域ニーズに対応した漁港の有効活用を進めてまいります。
   〔保健福祉部長野原勝君登壇〕
〇保健福祉部長(野原勝君) まず、新型コロナウイルス感染防止対策についてでありますが、検査体制については、全ての医療圏における地域外来・検査センターの設置に向け取り組みを進めているほか、唾液によるPCR検査や抗原検査など、検査体制の充実を図っているところです。
 医療体制については、簡易陰圧装置などの整備による感染症対応の病床確保を進めているほか、重点医療機関の設置について検討しているところであり、また、軽症者等が療養する施設として、県内に1施設85室を確保しており、合計300室の確保に向け調整を進めております。
 保健所につきましても、OB職員を採用するなど体制の充実を図ったところであり、さらに、いわて感染制御支援チーム―ICATを派遣し、施設内の感染防止対策など、保健所の活動を支援していくこととしております。
 これまでも感染者の発生に備え、適切な医療を提供できるよう体制整備を進めてきたところであり、次なる波に備えた医療体制の充実に努めてまいります。
 次に、避難所開設への支援についてでありますが、開設に当たっては、一般の避難者、感染リスクが高く、重症化しやすい高齢者や基礎疾患を有する者及び妊産婦等の要配慮者、発熱、せき等の体調不良者などがそれぞれ互いに接触しないよう、受付、避難エリア、トイレ等を区分するほか、マスクの着用、パーティションや段ボールベッド等の設置、共用部分の消毒などについて周知し、助言するなど、市町村を支援しているところであります。
 これら避難所運営に必要な物資は、それぞれ市町村において調達、備蓄が進められているところでありますが、県として、市町村の対応を補完する観点から、開設時に必要なマスク、消毒液、パーティションや段ボールベッドなどの感染対策物資について一定量の備蓄を行うこととしています。
 次に、地域の医療と福祉についてでありますが、県では、地域包括ケアのまちづくりを推進しており、現在、全ての市町村で取り組みが進められているところであります。地域包括ケアの取り組みを一層推進していくためには、医師、介護職員、リハビリテーション専門職など、地域包括ケアに携わる人材のさらなる確保や多職種による連携の強化が課題と認識しています。
 このため、県では、人材の育成、確保のための介護人材キャリア支援による求人、求職のマッチングシェア、多職種連携のための研修の実施や介護予防への医療従事者の参画の調整など、市町村単独では対応が難しい課題を中心に取り組んでいるところであります。
 引き続き、岩手県地域包括ケア推進会議などを通じて、関係機関、団体と情報共有を図りながら、地域の実情に応じた地域包括ケアの取り組みが推進されるよう市町村を支援してまいります。
   〔教育長佐藤博君登壇〕
〇教育長(佐藤博君) まず、ICT等を活用した学力向上についてでありますが、県内各市町村においては、国の緊急経済対策を活用した小中学校の児童生徒1人1台端末の整備等に向けた取り組みが行われているところであり、県立学校については、一関第一高等学校附属中学校、特別支援学校小学部及び中学部の全児童生徒を対象とした1人1台端末の整備や、県立高校等20校に大型提示装置や実物投影機等を整備、また、全県立学校に無線LAN環境を整備することとしています。
 今後は、ICT機器等が整備された教育環境の中で、どのように児童生徒の学びに結びつけていくかが重要であることから、国立大学法人岩手大学及び公立大学法人岩手県立大学と大型提示装置等を活用した授業づくりや、オンライン教材を活用した個別最適化された学びの実現を目指す共同研究や教員研修などにより、子供たちの主体的、対話的で、深い学びの実現に向けて、ICTを活用した授業改善や児童生徒の確かな学力の育成を推進してまいります。
 次に、小規模校の魅力ある学校づくりについてでありますが、県を挙げて本県のふるさと振興を推進している中で、高等学校には、それぞれの地域を支える人材を育んでいくという役割もあり、高校の魅力化をより一層図る観点からも、地域と学校との協働は極めて重要であると認識しているところです。
 県教育委員会では、今年度から高校の魅力化促進事業を立ち上げ、小規模の県立高校28校を事業対象校としています。事業対象校では、普通高校における地域課題の解決に向けた探求活動や専門高校と地元産業界等との連携による地域資源の活用等を実施する予定としています。
 また、地域住民や地元小中学生を対象に探求活動等の成果を発表することにより、学校の魅力についての理解を促進するとともに、進学意識の醸成へつなげていこうとしており、将来の地域の人材育成に高校と地域が協働して取り組むことで高校の魅力化が図られるものと考えています。
   
〇議長(関根敏伸君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後5時26分 散 会

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